JPH0753447B2 - インプリンタの刷版自動脱着装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、印刷紙面の本文の一部
に刷り込み印刷するインプリンタに係り、特に版面を有
するベースプレートの交換容易性、取扱性を向上させた
インプリンタの刷版自動脱着装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】百貨店、スーパー、コンビニエンススト
アー、カーディーラー、家庭電化製品販売店等は、共通
の商品を多店舗かつ広域販売により営業を展開してい
る。このような業種においては、各店共通のチラシ広告
が多く使われている。このチラシ広告を配布する際、あ
るいは新聞等に折り込んで宅配する際には、その地域の
店舗名や店舗独自の広告、例えば売出日、売出期間が刷
り込み印刷される。このようなチラシ広告の本文の一部
に刷り込み印刷する場合、輪転印刷機は本文を印刷する
カラー印刷ユニットの前後に刷り込み印刷用のインプリ
ンタが配置された構成になっている。

【０００３】例えば、インプリンタが印刷ユニットの前
に設置されている輪転印刷機では、給紙機の巻取紙から
供給される用紙をインプリンタに通して刷り込み印刷
し、その後複数の印刷ユニットにおいて多色、例えば４
色による本文の印刷が行われ、次いでドライヤーでイン
キを乾燥した後に折機に送られて切断され、枚葉紙また
は折帖の形で排出される。

【０００４】従来の凸版形式のインプリンタにおいて、
版胴に対する刷り込み版（以下「刷版」と記す）の取付
には、例えば版胴面に両面テープを使用して刷版を取り
付ける方法が用いられている。図１２は版胴への刷版の
取り付けの一例が示されている。版胴６には刷版７を位
置決めするための罫線８が引かれており、この罫線８に
合わて刷版が接着される。この刷版の接着位置は広告本
文のどの位置に刷り込み印刷するかによって決められ、
また用意する刷版の数も刷り込み場所が複数、例えば図
１２に示す２箇所のときは２枚７Ａ，７Ｂの刷版が用意
される。

【０００５】所定部数のチラシ広告を一定量の部数ごと
に異なる文，絵などを刷り込み印刷する場合、まずイン
プリンタの版胴に刷版を接着して印刷を行う。その印刷
が終了すると、輪転印刷機を一旦止め、版胴から刷版を
はがし取る。次いで別の刷版を接着し、引き続き印刷が
行われる。この刷り込み印刷が多くなる程、上記版の交
換回数も増えることになる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】インプリンタの版胴に
刷版を直接接着する方式における刷版の交換は、機内で
行わなければならないため、その作業性が悪くなり、し
かも予め刷版が用意できていても必ず版胴に接着した
り、はがし取る工程が入るため、特に多くの刷版交換を
必要とする場合にはその作業の為に長時間を費やすこと
になり、印刷効率の低下につながっていた。

【０００７】また刷版の装着後に実際の刷り込み印刷を
して刷版が正しい位置にあるか否かの確認を行ってい
る。このとき、刷版の位置がずれていれば、再び刷版を
はがし、改めて位置合わせが行われているため、刷版交
換に手間が掛かっていた。

【０００８】更に本文に対して刷り込み部分が少ない場
合でも、刷版は版胴の全幅サイズのものが使用されてい
るので、刷版が有効に利用されておらず、かつ大型サイ
ズによる刷版コストの上昇や再利用の為の保管スペース
も大きくなる。

【０００９】ところで、輪転印刷機において、刷版を自
動的に版胴に装着したり、版胴から離脱させる刷版自動
脱着装置は、例えば特開昭６２−２７１７４４号公報、
特開昭６２−７４６５４号公報などに開示されている。
しかし、従来の刷版自動脱着装置は、インプリンタの刷
版が版胴の全幅サイズのものに適用できても全幅サイズ
により小さいサイズを含む各種サイズの刷版を版胴の所
定位置に正確に装着したり、また装着されている場所か
ら取り外すことができるようには構成されていない。ま
た刷版の自動交換も版替ロボットと版胴が一対一の関係
で設置されているのが現状であり、この種の装置を１個
の圧胴に対して２個の版胴をもつインプリンタにはその
まま適用することができない。

【００１０】このような背景から、インプリンタの刷版
の脱着における特有な課題を解決するためにインプリン
タ用刷版自動脱着装置の開発が望まれていた。

【００１１】本発明の目的は、インプリンタの版胴の全
幅サイズにより小さいサイズを含む版面を有するベース
プレートを自動的に脱着させるインプリンタの刷版自動
脱着装置を提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は帯磁した外周面を有するインプリンタ用版
胴に複数個の位置決め穴を設け、不使用の位置決め穴を
マグネットピンで埋めると共に、位置決め穴により版面
を有する強磁性材のベースプレートを装着するインプリ
ンタの刷版自動脱着装置であって、前記版胴の位置決め
穴に一致して設けられた前記ベースプレートの長穴に貫
通させた後の回転により係止されるＬ形フックを有し、
該Ｌ形フックを前記版胴の位置決め穴に挿入した後に回
転させてベースプレートとの係止または係止解除を行う
版替ロボットを備えたものである。 またインプリンタ
用版胴は、外周面が帯磁され、または表面にマグネット
シートが取り付けられていることを特徴とする。

【００１３】またベースプレートは、版胴の全幅サイズ
より小さい板幅サイズを含んでいる。 また版替ロボッ
トは、１個の圧胴に対して２個の版胴をもつ印刷ユニッ
トに適用したことを特徴とする。

【００１４】また版替ロボットのハンドは、ベースプレ
ートを吸引する吸盤が設けられていることを特徴とす
る。

【００１５】更に版替ロボットのハンドは、ベースプレ
ートを版胴表面に押圧するためのプレート押しローラが
設けられていることを特徴とする。

【００１６】

【作用】ベースプレートは、異なる刷り込み印刷に応じ
て必要枚数が用意され、予め版を貼って準備する。また
版胴の不使用の位置決めピン穴は、マグネットピンを嵌
め込んで穴埋めする。版替ロボットはベースプレートを
ハンドのＬ型フックに係止し、予め定られた版胴の装着
位置にハンドを移動させる。この位置において、Ｌ型フ
ックが版胴の位置決め穴に差し込まれると、ベースプレ
ートは位置決めされ、プレート端部と版胴間の磁気的な
吸着によって保持される。次いでＬ型フックはベースプ
レートとの係止を解除できる位置まで回転させた後、ハ
ンドを後退させて引き抜く。そして版胴を回転させてベ
ースプレートを巻き付けることにより、プレート全体を
吸着によって取り付ける。ベースプレートの交換は上記
装着とは逆の動作により行うことができる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１は輪転印刷機に組み込まれた本発明のインプ
リンタの刷版自動脱着装置の全体構成図が示されてい
る。輪転印刷機は、給紙機から供給される用紙３をイン
プリンタ１の版胴２と圧胴４を通して刷り込み印刷した
後に多色印刷ユニットの最初のステージのカラー印刷ユ
ニット５によって１色目のカラー印刷が行われる。

【００１８】インプリンタ１の刷版自動脱着装置は、版
胴２に対してベースプレートを脱着させる版替ロボット
１０、ベースプレートを収納するストッカー３０および
ベースプレートをストッカー３０から取り出し、あるい
はストッカー３０への収納を行うピックアップユニット
４０により構成されている。

【００１９】版替ロボット１０はフレーム１１、このフ
レーム１１に支持されたアーム１２およびこのアーム１
２に設けられたハンド１４により構成されている。

【００２０】フレーム１１は、上部および両側部フレー
ムから成るアーチ形構造になっている。そして、フレー
ム１１はインプリンタ１の版胴２の長手方向に沿って平
行に配置されている。上部フレームの内側にはフレーム
に沿って吊持状態でアーム１２を移動させるハンド送り
機構１３が設けられている。

【００２１】アーム１２は、図２に示すように、ハンド
送り機構１３に連結されている基アーム１２Ａ、この基
アーム１２Ａの先端に第１アーム１２Ｂを、そして第１
アーム１２Ｂの先端に第２アーム１２Ｃがそれぞれ軸支
持されている。更に第２アーム１２Ｃには後述のベース
プレートを取り扱うハンド１４が装着されている。基ア
ーム１２Ａと第１アーム１２Ｂの軸支持部は、上版胴２
Ａと下版胴２Ｂのほぼ中間に位置され、ベースプレート
２５を上下いずれの版胴２にも脱着できるように構成さ
れている。

【００２２】ハンド１４は、図３に示すように、第２ア
ーム１２Ｃの先端に軸支持された基部１４Ａおよびこの
基部１４Ａの軸支持部方向に可動自在に設けられたベー
スプレート保持部材１４Ｂを備えている。またベースプ
レート保持部材１４Ｂは、版胴２に対向するように設け
られている。このベースプレート保持部材１４Ｂには、
版胴２の長手方向に沿った位置に一対のフック機構１５
が設けられている。

【００２３】フック機構１５は、ベースプレート保持部
材１４Ｂの表面側に取付部１５Ａが固定され、またベー
スプレート保持部材１４Ｂの背面側にロータリアクチュ
エータ１６が配置されている。図４に示すように、ロー
タリアクチュエータ１６の回転軸は取付部１５Ａを貫通
し、その軸端にベースプレート２５を引っ掛けるＬ型フ
ック１７が取り付けられている。ロータリアクチュエー
タ１６は、例えば空気式が使用され、Ｌ型フック１７を
図３の実線に示すベースプレート２５の係止位置と１８
０度廻して同図斜線で示すベースプレート２５との係止
解除位置に回転移動させる。

【００２４】フック機構１５の間のベースプレート保持
部材１４Ｂには、プレート押しローラ１８が配置されて
いる。このプレート押しローラ１８は、ベースプレート
保持部材１４Ｂの背面側に配置されているシリンダ（図
示せず）のピストンに取り付けられ、版胴２に位置決め
されたベースプレート２５を押して版胴表面への磁気的
吸着を確実にするためのものである。

【００２５】吸盤１９は、Ｌ型フック１７に引っ掛けら
れたベースプレート２５を吸引するために複数個、例え
ば４個設けられている。

【００２６】ストッカー３０は、予め用意されたチラシ
広告の刷り込み印刷に必要な版７を接着した複数枚のベ
ースプレート２５が印刷順に並べて収納されている。

【００２７】ピックアップユニット４０は、ストッカー
３０のベースプレート収納方向に平行したストッカーフ
レーム３１の矢印方向に移動できるように構成されてい
る。このピックアップユニット４０は、ストッカー３０
からベースプレート２５を取り出して版替ロボット１０
のハンド１４に装着し、あるいはハンド１４からベース
プレートを取り外してストッカー３０に収納する等のベ
ースプレート２５の受け渡しを行う。

【００２８】次に版胴、ベースプレートの構成について
説明する。

【００２９】版胴本体２０は、図５に示すように、胴表
面に回転軸線に平行に版取付け溝２１が形成され、この
版取付け溝２１を除く胴表面にはマグネットシート２２
が接着されている。胴の回転方向（図６中ａ矢印）とは
逆方向の版取付け溝近傍にはマグネットシート２２を貫
通し、版胴本体２０の所定深さに達する位置決め穴２３
が設けられている。位置決め穴２３は、ハンド１４のフ
ックが挿入できる穴径に形成されている。また位置決め
穴２３は、各種サイズのベースプレート２５や該刷り込
み印刷する場所に対応したベースプレート２５の取り付
け位置等により複数対、例えば３対（２３Ａ，２３Ｂ，
２３Ｃ）が所定間隔に配置されている。不使用の位置決
め穴２３には、図７に示すように、マグネットピン２４
が嵌め込まれる。

【００３０】マグネットピン２４は、ピン本体２４Ａに
永久磁石２４Ｂが固着されており、図８に示すように、
ピン本体のねじ２４Ｃを不使用の位置決めフック穴のね
じ２３Ａにねじ込んで取り付ける。このとき永久磁石２
４Ｂの一部表面は版胴表面にほぼ面一になるため、ベー
スプレート２５の端部近傍は位置決め穴２３によるマグ
ネットシート２２の版胴面の磁力の欠損を補うことがで
き、ベースプレート２５の浮き上がりが防止される。

【００３１】ベースプレート２５は、図９に示すよう
に、版胴の全幅より十分小さい必要最小限の板幅で、か
つマグネットシート２２の磁力により吸着される磁性材
料で作製される。このベースプレート２５は、図４に示
すように、一辺側に胴の版取付け溝２１に挿入係止され
る曲げ部２５Ａが形成されており、この曲げ部２５Ａに
沿った近傍にはＬ型フックが貫通する一対の長孔２５Ｂ
が設けられている。長孔２５Ｂの間隔は版胴の位置決め
穴２３の間隔、例えば２３Ａ間に等しくなっている。

【００３２】次にベースプレートの版胴本体への装着に
ついて説明する。図１０はベースプレート装着後の版胴
２が示されている。

【００３３】ベースプレート２５は、異なる刷り込み印
刷に応じて必要枚数が用意され、予め版７Ａ，７Ｂ…を
貼ってストッカー３０に印刷順に収納される。また版胴
２の不使用の位置決め穴２３は、マグネットピン２４を
嵌め込んで穴埋めされる。

【００３４】版替ロボットのハンド１４は、ベースプレ
ート２５の受け渡し位置に移動される。一方ベースプレ
ート２５はピックアップユニット４０によりストッカー
３０から取り出され、上記受け渡し位置に運ばれる。こ
こで、ハンド１４はベースプレート２５の長穴に係止解
除位置（図９Ａ参照）にあるＬ型フック１７を通した
後、係止位置（図９Ｂ参照）に回転させて引っ掛けて吊
持する。同時に吸盤１９によりベースプレート２５を吸
引して保持する。この状態でハンド１４は、ハンド送り
機構１３により移動され、ベースプレート２５を上版胴
または下版胴に対向させる。次いでハンドのＬ型フック
１７は、予め定められた版胴の位置決め穴に差し込まれ
る。これによりベースプレートの曲り部２５Ａは版胴の
版取付け溝２１に位置される。このときのベースプレー
ト２５は、曲げ部近傍が版胴のマグネットシート２２及
びマグネットピン２４に吸着された状態で支持される。
その後Ｌ型フック１７を係止解除位置に廻して位置決め
穴２３から引き抜く。ここで吸盤１９の吸引作用を解い
てベースプレート保持部材１４Ｂを版胴２から少し離
す。同時にプレート押しローラ１８を動作させベースプ
レート２５を版胴表面に押し付ける。その後版胴本体２
０を図１１に示す矢印ｂ方向に回転させ、ベースプレー
ト２５をプレート押しローラ１８の押圧状態で版胴２に
巻き付け、マグネットシート２２に吸着させて保持す
る。ベースプレート２５が版胴に装着されると、プレー
ト押しローラ１８の押圧は解除され、ハンド１４はベー
スプレートの受け渡し位置に移動する。

【００３５】このシーケンス動作は、刷り込み印刷の種
類、位置および部数等により予めプログラムされてお
り、このプログラムの実行により自動的にベースプレー
トの版胴への脱着動作が行われる。

【００３６】版の交換は、上記装着動作とは逆の動作を
行うことによりベースプレートを版胴から取り外し、別
のベースプレートを前述同様に装着する。

【００３７】本実施例では、版胴表面にマグネットシー
トを接着したもので構成されているが、版胴本体そのも
のを磁化させたものでも良い。

【００３８】本実施例では、版胴に版取付け溝が設けら
れているが、この版取付け溝は必ずしも設ける必要はな
い。この場合、ベースプレートは曲げ部のないものが使
用される。

【００３９】

【発明の効果】上述のように、本発明によれば、ベース
プレートの長穴に引っ掛けたハンドのＬ型フックを版胴
の位置決め穴に差し込んで版の位置決めを行うように版
替ロボットを構成したので、ベースプレートの受け渡し
が確実になり、かつ移動中にベースプレートがハンドか
ら脱落することがなくなる。

【００４０】また一台の版替ロボットで複数の版胴に対
してベースプレートの自動交換ができるため、版交換が
迅速にでき、印刷効率が向上される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示すインプリンタの版自動脱
着装置の構成図である。

【図２】インプリンタと版替ロボットの側面図である。

【図３】版替ロボットのハンドの斜視図である。

【図４】フック機構の側面図である。

【図５】版胴の斜視図である。

【図６】図５のＡ−Ａ線に沿った断面図である。

【図７】マググネットピンの位置決め穴に嵌め込まれた
状態を示す図である。

【図８】一部破断面を示すマグネットピンの構造図であ
る。

【図９】ベースプレートの平面図で、（Ａ）はＬ型フッ
クとの非係止状態を示す図、（Ｂ）はＬ型フックとの係
止状態および吸盤１９の作用時を示す図である。

【図１０】版装着時の版胴の斜視図である。

【図１１】図１０のＢ−Ｂ線矢視の側面図である。

【符号の説明】

１ インプリンタ ２ 版胴 ３ 用紙 ５ 印刷ユニット ７ 版 １０ 版替ロボット １３ ハンド送り機構 １４ ハンド １５ フック機構 １７ フック １８ プレート押しローラ １９ 吸盤 ２０ 版胴本体 ２２ マグネットシート ２３ 位置決め穴 ２４ マグネットピン ２５ ベースプレート ３０ ストッカー ４０ ピックアップユニット

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 帯磁した外周面を有するインプリンタ用
   版胴に複数個の位置決め穴を設け、不使用の位置決め穴
   をマグネットピンで埋めると共に、位置決め穴により版
   面を有する強磁性材のベースプレートを装着するインプ
   リンタの刷版自動脱着装置であって、前記版胴の位置決
   め穴に一致して設けられた前記ベースプレートの長穴に
   貫通させた後の回転により係止されるＬ形フックを有
   し、該Ｌ形フックを前記版胴の位置決め穴に挿入した後
   に回転させてベースプレートとの係止または係止解除を
   行う版替ロボットを備えたインプリンタの刷版自動脱着
   装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載において、インプリンタ用
   版胴は版胴表面にマグネットシートが取り付けられてい
   ることを特徴とするインプリンタの刷版自動脱着装置。
3. 【請求項３】 請求項１記載において、インプリンタ用
   版胴は外周面が帯磁され、または表面にマグネットシー
   トが取り付けられていることを特徴とするインプリンタ
   の刷版自動脱着装置。
4. 【請求項４】 請求項１記載において、ベースプレート
   は版胴の全幅サイズより小さい板幅サイズを含んでいる
   ことを特徴とするインプリンタの刷版自動脱着装置。
5. 【請求項５】 請求項１記載において、版替ロボットは
   １個の圧胴に対して２個の版胴をもつ印刷ユニットに適
   用したことを特徴とするインプリンタの刷版自動脱着装
   置。
6. 【請求項６】 請求項１記載において、版替ロボットの
   ハンドはベースプレートを吸引する吸盤が設けられてい
   ることを特徴とするインプリンタの刷版自動脱着装置。
7. 【請求項７】 請求項１記載において、版替ロボットの
   ハンドはベースプレートを版胴表面に押圧するためのプ
   レート押しローラが設けられていることを特徴とするイ
   ンプリンタの刷版自動脱着装置。