JPH0749107Y2 - タイミングベルトの張力調整装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はタイミングベルトの張力調整装置に関するもの
である。

〔従来の技術〕 第３図に示す如く、エンジンのエンジン本体（１）の側
面（1a）に突出したクランクシャフト（２）の端部及び
カムシャフト（３）の端部には、それぞれ、クランクプ
ーリ（４）及びカムプーリ（５）が取付けてあり、この
両者間にタイミングベルト（６）を架橋することによ
り、クランクシャフト（２）の回転に同期してカムシャ
フト（３）が回転するようにしてある。又、このタイミ
ングベルト（６）の外周側の所定の位置には、タイミン
グベルト（６）を押圧することにより、タイミングベル
ト（６）に所定の張力を与えるテンショナが配置してあ
り、クランクシャフト（２）とカムシャフト（３）との
同期がズレないようにしてある。

このテンショナ（７）は、第４図に示す如く、エンジン
本体（１）の側面（1a）にボルト（８）によって固定さ
れる内筒（９）と、内筒（９）の外周にベアリングを介
して回転自在に支持された、タイミングベルト（６）と
接触する外筒（10）とからなっており、上記内筒（９）
をエンジン本体側面（1a）にボルト止めするため、内筒
（９）に穿設するボルト穴（9a）は、外筒（10）の回転
中心（Ｐ）に対し偏心した状態にしてある。更に、内筒
（９）には、テンショナ（７）のエンジン本体側面（1
a）上での位置決め時に使用する、六角形状をした調整
穴（9b）が穿設してある。そして、このテンショナ
（７）によってタイミングベルト（６）に所定の張力を
与えるには、先ず、内筒（９）のボルト穴（9a）を貫通
するボルト（８）を用いて、テンショナ（７）をエンジ
ン本体側面（1a）に仮止めする。次に、テンショナ
（７）専用のQLレンチ（図示せず）の先端部を、テンシ
ョナ（７）の内筒（９）に設けた調整穴（9b）に挿入
し、このQLレンチを用いてテンショナ（７）をボルト穴
（9a）を中心として第５図に示す如く、タイミングベル
ト（６）側へ回動させ、テンショナ（７）によるタイミ
ングベルト（６）への押圧力が所定の値となった時点
で、この位置を保持し、ボルト（８）の本締めを行な
い、テンショナ（７）の内筒（９）をエンジン本体側面
（1a）に固定することにより、テンショナ（７）によっ
てタイミングベルト（６）に所定の張力を与えるように
している。

又、テンショナ（７）によるタイミングベルト（６）へ
の押圧力を所定の値にするため、テンショナ（７）をエ
ンジン本体（１）の所定の位置に取付固定するための他
の手段としては、エンジン本体側面（1a）に着脱自在に
取付可能な治具に、テンショナ（７）をタイミングベル
ト（６）側に押圧するためのエアシリンダを組付けてお
き、このエアシリンダの伸長動作によって仮止め状態に
あるテンショナ（７）を所定の押圧力でもってタイミン
グベルト（６）に押付け、この状態でテンショナ（７）
をエンジン本体側面（1a）の所定の位置に位置決め固定
するものもある。尚、このエアシリンダを用いてテンシ
ョナ（７）に所定の押圧力を加える形式のものとして
は、実開昭61-146652号公報に開示された、タイミング
ベルトの張力調整装置等がある。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記した如く、テンショナ（７）によってタイミングベ
ルト（６）を押圧し、タイミングベルト（６）に所定の
張力を与えるため、テンショナ（７）のエンジン本体側
面（1a）での取付位置を専用のQLレンチを用いて調整す
る方法を用いると、作業員が手作業でQLレンチを操作
し、テンショナ（７）がタイミングベルト（６）に所定
の圧力で接触するようにした後、この状態を保持したま
まボルト（８）の締付作業を行わねばならないため、こ
の締付けを行う瞬間に、テンショナ（７）が位置ズレを
起こし、タイミングベルト（６）が弛んだり、張りすぎ
たりすることがあるといった問題があった。又作業員が
手作業によってQLレンチを用いてテンショナ（７）の位
置決めを行い、この状態を保持したままボルト締めを行
うようにすると、作業員に大きな負担がかかるといった
問題もあった。

又、エアシリンダを用いた張力調整装置が対象とするテ
ンショナ（７）は、第４図に示すタイプのものではな
く、外筒の回転中心と、テンショナ固定用のボルト穴と
が同軸上にあり、このテンショナのボルト穴を、エンジ
ン本体側面（1a）のボルト穴に一致させる時に用いるも
のであり、テンショナ（７）を一方向に向けて押圧する
機能しか持っていない。従って、この張力調整装置を用
いて、第４図に示すタイプのテンショナ（７）を押圧し
ても、テンショナ（７）がボルト穴（9a）を中心として
回動することはない。従って、エアシリンダを用いた張
力調整装置を用いて、第４図に示すタイプのテンショナ
（７）の位置決めを行うことは不可能である。

〔課題を解決するための手段〕

エンジン本体側面に位置する、クランクシャフトと連結
したクランクプーリと、カムシャフトに連結したカムプ
ーリとの間に架橋したタイミングベルトを、その外側か
らテンショナによって押圧し、タイミングベルトに所定
の張力を与え、かつ、上記テンショナが、内筒と、内筒
の外周に回転自在に配置され、タイミングベルトと接触
する外筒とからなり、上記内筒に、テンショナをエンジ
ンに固定するためのボルト挿通用のボルト穴を、外筒の
回転中心に対し偏心するように穿設したタイプのものを
使用する形式のエンジンに適用するタイミングベルトの
張力調整装置を、上記テンショナ固定用のボルトと嵌合
するソケットが治具本体の前面に突出するようにして、
治具本体に取付けられたナットランナと、上記ソケット
と同軸となるようにして、ソケットの外周に回転自在に
配置された円筒状の回転筒と、テンショナの内筒に穿設
された調整穴と嵌合し、テンショナを、固定しない状態
にある上記ボルトを中心として回動させるため、回転筒
の周縁部から前方に向けて突設させた調整ピンと、上記
調整ピンを有する回転筒を、トルクセンサを介して、予
め設定されたトルクに達するまで回動させるためのサー
ボモータと、上記ナットランナ及び回転筒を有する治具
本体を、エンジン本体側面に位置決めするため、治具本
体の任意の位置から前方に向けて突設し、エンジン本体
上の所望の穴と嵌合する位置決めピンとによって構成し
たものである。

〔作用〕

上記した如く、テンショナの内筒に設けた調整穴と嵌合
する調整ピンを有する回転筒を、サーボモータにより所
定のトルクに達するまで回転させると共に、テンショナ
固定用のボルトを、上記回転筒と同軸上に配置されたソ
ケットを有するナットランナによって締付けることによ
り、テンショナによるタイミングベルトの張力調整及び
テンショナのエンジン本体への位置決め固定を自動化す
るものである。

〔実施例〕

第１図及び第２図は、本考案に係るタイミングベルトの
張力調整装置（20）を示すものである。同図に於いて、
（21）は平板状をした治具本体、（23）は治具本体（2
1）の背面に設置したナットランナ（22）の駆動部、（2
4）はこの駆動部（23）と直交し、かつ、先端に設けた
ソケット（25）が治具本体（21）の前面に突出するよう
に配置された、ナットランナ（22）の主軸であり、この
主軸（24）は駆動部（23）によって所定のトルクで回転
すると同時に、治具本体（21）の背面に配置した第１エ
アシリンダ （26）の作用により所定ストロークだけ軸
方向（第１図中矢印Ｉ方向）に前後動できるように支持
されている。（27）は主軸（24）と同軸となるようにし
て主軸（24）の外周に回転自在に配置された回転筒であ
り、この回転筒（27）も第１エアシリンダ（26）によ
り、主軸（24）と共に所定ストロークだけ前後動できる
ようにしてある。（28）は回転筒（27）の周縁部から治
具本体（21）の前面に向けて突出するように保持された
断面六角形をした調整ピンであり、この調整ピン（28）
と上記ソケット（25）との間隔は、テンショナ（７）の
内筒（９）に設けた調整穴（9b）とボルト穴（9a）との
間隔と同一にしてある。そして、テンショナ（７）の内
筒（９）に設けたボルト穴（9a）を貫通するテンショナ
取付用のボルト（８）の頭部に上記ソケット（25）を嵌
合させると、内筒（９）の調整穴（9b）に調整ピン（2
8）が嵌合するようにしてある。（29）は回転筒（27）
の外周面に設けた歯車部（27a）と噛合する歯車であ
る。この歯車（29）は、治具本体（21）の背面に取付け
た減速機構（30）の出力軸（30a）に固着されており、
又減速機構（30）の入力軸にはACサーボモータ（31）が
連結してあり、ACサーボモータ（31）によって調整ピン
（28）を有する回転筒（27）が回転するようにしてあ
る。又ACサーボモータ（31）と減速機構（30）との間に
はトルクセンサ（32）が組込まれており、このトルクセ
ンサ（32）によってACサーボモータ（31）のトルクを検
出することにより、調整ピン（28）を有する回転筒（2
7）を所定のトルクに達するまで回転させるようにして
ある。（33）は、治具本体（21）前面の側方に第２エア
シリンダ（34）によって前後動自在に支持された位置決
めピンであり、張力調整装置（20）をエンジン本体側面
（1a）にセットする時、この位置決めピン（33）をエン
ジン本体側面（1a）の所定の穴、この実施例では第３図
に示すオルタネータ取付用の穴（11）に挿入することに
より、張力調整装置（20）のエンジン本体（１）に対す
る位置決めを行うようにしている。（35）は治具本体
（21）の前面に設置した、第３エアシリンダ（36）によ
って作動するクランパであり、このクランパ（35）は、
張力調整装置（20）が位置決めピン（33）によってエン
ジン本体側面（1a）に位置決めされると、これに連動し
てエンジン本体（１）の任意の位置をクランプすること
により、張力調整装置（20）をエンジン本体側面（1a）
上に保持するものである。又、図中（37）は治具本体
（21）の両側に突設させたハンドル、（38）は治具本体
（21）の前面に配置したカバー部材である。

上記構成からなる張力調整装置（20）により、テンショ
ナ（７）によるタイミングベルト（６）への押圧力の調
整及びボルト（８）の本締めを行うには、第２図に示す
如く、パレット（Ａ）に載置された状態のエンジン本体
（１）を製造ラインに沿って移動させるためのコンベア
（Ｂ）の上方に、コンベア（Ｂ）と平行するように配置
されたトロリー（Ｃ）に、昇降用シリンダ（Ｄ）を介し
て張力調整装置（20）を吊下支持することにより、張力
調整装置（20）をコンベア（Ｂ）の上方に配置してお
く。尚、この状態では、張力調整装置（20）の第１、第
２エアシリンダ（26）（34）は伸長させておき、ナット
ランナ（22）の主軸（24）、回転筒（27）に支持された
調整ピン（28）及び位置決めピン（33）は治具本体（2
1）の前面に最大量突出した状態となるようにしてお
く。そして、コンベア（Ｂ）によってボルト（８）によ
るテンショナ（７）の仮止めが終了したエンジン本体
（１）が張力調整装置（20）による作業位置まで搬送さ
れて来ると、昇降用シリンダ（Ｄ）によって張力調整装
置（20）を下降させ、張力調整装置（20）をエンジン本
体側面（1a）の直前に位置させる。次の、この状態で、
作業者が張力調整装置（20）のハンドル（37）を持ち、
手動によって張力調整装置（20）の位置決めピン（33）
をエンジン本体（１）のオルタネータ取付用の穴（11）
内に挿入し、かつ、ナットランナ（22）のソケット（2
5）を、テンショナ内筒（９）のボルト穴（9a）を貫通
しているボルト（８）の頭部に嵌合させると同時に、調
整ピン（28）を調整穴（9b）内に挿入する。次に、第３
エアシリンダ（36）を駆動させることにより、クランパ
（35）によってエンジン本体（１）の任意の位置をクラ
ンプし、張力調整装置（20）をエンジン本体（１）の側
面（1a）上に位置決め保持する。次に、ACサーボモータ
（31）を始動させ、減速機構（30）及び歯車（29）を介
して回転筒（27）を回転させることにより、回転筒（2
7）と調整ピン（28）を介して連結しているテンショナ
（７）の内筒（９）を、ボルト（８）を回転中心として
回動させる。この時、ACサーボモータ（31）は、トルク
センサ（32）の作用により、予め設定されたトルクに達
するまで回転し、設定トルクに達するとサーボロックが
働らき、ACサーボモータ（31）は回転を停止し、かつ、
その状態を保持するように構成してあるため、ACサーボ
モータ（31）から減速機構（30）、歯車（29）、回転筒
（27）及び調整ピン（28）を介して回動させられるテン
ショナ（７）は、タイミングベルト（６）を所定の押圧
力で押圧した状態でその回動を停止し、このことによっ
てタイミングベルト（６）には所定の張力が与えられ
る。上記のようにして、タイミングベルト（６）に所定
の張力が与えられると、後は、この状態でナットランナ
（22）を駆動し、ボルト（８）を締付けることにより、
テンショナ（７）のエンジン本体側面（1a）上への位置
決め固定を終了する。このようにして、テンショナ
（７）のエンジン本体側面（1a）上への位置決め固定が
終了すると、第１、第２エアシリンダ（26）（34）を短
縮させ、ソケット（25）を有する主軸（24）、回転筒
（27）に支持された調整ピン（28）及び位置決めピン
（38）を後退させると共に、クランパ（35）によるクラ
ンプを解除させた後、張力調整装置（20）をエンジン本
体（１）から分離し、昇降用シリンダ（Ｄ）によって張
力調整装置（20）を再び上昇させ、次のエンジン本体
（１）が来るまで張力調整装置（20）をコンベア（Ｂ）
の上方に待機させる。尚、張力調整装置（20）がコンベ
ア（Ｂ）の上方で待機している間に、第１、第２エアシ
リンダ（26）（34）を伸長させ、ソケット（25）を有す
るナットランナ（22）の主軸（24）、調整ピン（28）を
有する回転筒（27）及び位置決めピン（33）を再度前進
端に位置させておく。後は、上記動作を繰返すことによ
り、エンジン本体（１）の側面（1a）に仮止めされたテ
ンショナ（７）の位置決め固定を順次行なって行く。

尚、上記実施例は、ACサーボモータ（31）から減速機構
（30）、歯車（29）、回転筒（27）及び調整ピン（28）
を介してテンショナ（７）に加える回転トルクが設定値
になると、ACサーボモータ（31）にサーボロックをか
け、テンショナ（７）をその位置に保持する例について
説明したが、減速機構（30）にウォームギヤが組込まれ
ている時は、従動側からのトルクにより駆動側が動かさ
れることはないため、この場合は、ACサーボモータ（3
1）にサーボロックがかけられるタイプを用いる必要は
なく、ACサーボモータ（31）によって生じるトルクが設
定トルクに達すると、ACサーボモータ（31）の回転を停
止するだけでよい。

〔考案の効果〕

上記した如く、本考案に係るタイミングベルトの張力調
整装置は、テンショナの内筒に設けた調整穴と嵌合する
調整ピンを有する回転筒を、トルクセンサを介してサー
ボモータにより所定のトルクに達するまで回転させるこ
とにより、テンショナによるタイミングベルトの張力調
整を行うようにしたから、従来のエアシリンダを用いる
タイプのものに比較し、張力調整を非常に正確に行うこ
とができる。又本考案に係る張力調整装置は、テンショ
ナ固定用のボルトと嵌合するナットランナのソケット
を、上記回転筒内に同軸上に配置し、回転筒によるテン
ショナの位置決めが終了すると、ボルトの締付けを自動
的に行えるようにしたから、張力調整装置をエンジン本
体にセットすれば、テンショナによるタイミングベルト
の張力調整及びテンショナのエンジン本体へのボルト止
め作業を自動的に行うことが可能となり、上記作業の作
業能率を大幅に向上できると同時に作業者への負担を軽
減できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に係るタイミングベルトの張力調整装
置の部分断面図、第２図は張力調整装置の使用状態を示
す側面図、第３図はエンジン本体の側面図、第４図及び
第５図はテンショナを示す側面図である。 （１）……エンジン本体、（1a）……エンジン本体の側
面、（２）……クランクシャフト、（３）……カムシャ
フト、（４）……クランクプーリ、（５）……カムプー
リ、（６）……タイミングベルト、（７）……テンショ
ナ、（８）……ボルト、（９）……内筒、（9a）……ボ
ルト穴、（9b）……調整穴、（10）……外筒、（20）…
…タイミングベルトの張力調整装置、（21）……治具本
体、（22）……ナットランナ、（25）……ソケット、
（27）……回転筒、（28）……調整ピン、（31）……AC
サーボモータ、（33）……位置決めピン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジン本体側面に位置する、クランクシ
   ャフトと連結したクランクプーリと、カムシャフトに連
   結したカムプーリとの間に架橋したタイミングベルト
   を、その外側からテンショナによって押圧し、タイミン
   グベルトに所定の張力を与え、かつ、上記テンショナ
   が、内筒と、内筒の外周に回転自在に配置され、タイミ
   ングベルトと接触する外筒とからなり、上記内筒に、テ
   ンショナをエンジンに固定するためのボルト挿通用のボ
   ルト穴を、外筒の回転中心に対し偏心するように穿設し
   たタイミングベルトの張力調整装置を、上記テンショナ
   に固定するボルトと嵌合するソケットが治具本体の前面
   に突出し、治具本体に取付けられたナットランナと、上
   記ソケットと同軸に、ソケットの外周に回転自在に配置
   された円筒状の回転筒と、テンショナの内筒に穿設され
   た調整穴と嵌合し、固定しない状態のテンショナを上記
   ボルトを中心として回動させるため、回転筒の周縁部か
   ら前方に向けて突設された調整ピンと、上記調整ピンを
   有する回転筒を、トルクセンサを介して、予め設定され
   たトルクに達するまで回動させるサーボモータと、上記
   ナットランナ及び回転筒を有する治具本体を、エンジン
   本体側面に位置決めするため、治具本体の任意の位置か
   ら前方へ穿設し、エンジン本体上の所望の穴と嵌合する
   位置決めピンとによって構成したことを特徴とするタイ
   ミングベルトの張力調整装置。