JPH0746643Y2 - 吸音体 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、室内等の騒音を吸収する吸音体に関し、特
に、簡易な構成で、低周波数帯域から高周波数帯域に至
る広い範囲の騒音を吸音できるようにしたものである。

〔従来の技術〕

従来、騒音等を吸音するには、多孔質材料からなる平板
状の吸音材を、間隔（空気層）を開けて天井に取り付け
るのが一般的な手段であった。

即ち、室内の騒音は、多孔質材料と、天井及び平板状の
多孔質材料間の空気層とによって吸収される。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、天井に多孔質材料からなる平坂を取り付
ける構成では、取付作業に手間がかかるから、コストが
嵩むと共に、後付け施工は殆ど不可能であり、このた
め、多孔質材料や平坂に汚れや破損が生じても、交換や
補修は非常に困難である（事実上不可能である）。

また、天井と平坂との間に空気層を設けると、平坂の中
央部分が垂れ下がって美観を損なう恐れがあるし、取付
方法によっては落下の危険性もある。

さらに、上記従来の構成では、吸音できる音の周波数
は、多孔質材料の吸音特性と、空気層の吸音特性（即
ち、厚さ）とによって決まるため、広い範囲の音を吸収
するためには、いろいろな厚さの空気層を設ける必要が
あり、構成及び施工が複雑となるし、一種類の厚さの空
気層を設けただけでは、特定の音以外は吸収できないの
で不自然な音場となってしまう。

この考案は、このような従来の技術が有する未解決の課
題に着目してなされたものであり、取付作業等が容易に
行えると共に、簡易な構成で、低周波数帯域から高周波
数帯域に至る広い範囲の騒音を吸音できる吸音体を提供
することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案の吸音体は、内容積
の異なる複数の吸音室を有する吸音箱の外側を、多孔質
材料からなる吸音材で覆った。

〔作用〕

高周波数帯域の騒音は、多孔質材料からなる吸音材によ
って吸収され、低周波数帯域の騒音は、吸音箱の吸音室
によって吸収される。

そして、吸音箱は、容積の異なった複数の吸音室を有し
ているため、吸音室が良好に吸収する音の周波数は、各
吸音室の内容積で決まるから、広い範囲の騒音を吸音す
ることができる。

〔実施例〕

以下、この考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図は、本考案の第１実施例における吸音体１の正断
面図である。

即ち、この吸音体１は、内容積の異なる複数の箱2,…,2
を接着等により一体にした吸音箱３の外側を、多孔質材
料（例えば、グラスウールやロックウール等）からなる
吸音材４で覆ったものである。

さらに、各箱２の外側を向く面には、開口部2aが設けて
ある。

ここで、本実施例では、箱2,…,2が、本考案の吸音室を
構成している。

第２図は、騒音の周波数と、吸音体１の吸音率との関係
を示したグラフである。

即ち、吸音箱１の吸音率は、各箱2,…,2の吸音率と、吸
音材４の吸音率との総和である。そして、各箱２は、比
較的低周波数の騒音を吸収するのに適すると共に、良好
に吸収できる騒音の周波数はその内容積によって決ま
る。

従って、内容積の異なる箱2,…,2の吸音特性は、例えば
第２図のA,B,Cで示すように、少しずつ頂点のずれた特
性となる。

一方、多孔質材料からなる吸音材４は、比較的高周波数
の騒音を吸収するのに適していて、吸音材４の吸音特性
は、例えば、第２図のＤで示すように、低周波数帯域で
は低く、騒音の周波数が高くなるに連れて上昇する。

従って、吸音体１の吸音特性は、各箱2,…,2及び吸音材
４の吸音特性A,B,C,Dの包絡線である特性Ｅで示すよう
に、低周波数帯域から高周波数帯域に至る広い範囲で高
い値を示すことになる。

また、本実施例では、箱２の開口部2aをも吸音材４で覆
っているため、吸音範囲がさらに広がっている。

第３図は、吸音体１の施工の一例を示す図であり、多数
の吸音体１を、天井５に吊り下げたものである。

このような配設方法であれば、取付作業が容易であるか
らコスト高となることもないし、後付け作業も困難では
ないから、既存の天井５であっても容易に配設すること
ができる。従って、吸音体１に破損や汚れが生じても、
交換や修復は容易に行える。

第４図は、本考案の第２実施例における吸音体１の正断
面図である。なお、上記第１実施例と同様の部材及び部
位には、同じ符号を付し、重複する説明は省略する。

即ち、本実施例では、吸音箱３と照明装置６とを一体と
すると共に、いくつかの箱２内に、板材7a及び調整ネジ
7bからなる容積調整機構７を設けたことを除いては、上
記実施例と同様の構成である。

本実施例の構成であれば、吸音体１と照明装置６とが一
体となっているため、取付工事を一度に行えるから、施
工時の手間が省かれる。

さらに、調整ネジ7bを適宜回転させて板材7aを図中上下
動させれば、箱２の内容積が変化したことになるから、
任意の吸音特性を有する箱２とすることができる。この
ため、吸音体１の配設位置や周囲の環境に応じて、最適
な吸音特性を有する吸音体１とすることができる。

なお、吸音体１の形状は上記実施例で示したものに限定
されるものではなく、任意である。従って、意匠的に優
れた形状とすることにより室内のインテリアとして利用
することも可能である。

また、吸音体１の取付方法は、上記実施例のような吊り
下げに限定されるものではなく、他の方法であってもよ
いし、その取付位置も、天井５ではなく、壁面等であっ
てもよい。

さらに、例えば吸音体１を角錐形とし、音響エネルギの
最も高い室内の隅に取り付ければ、より高い吸音効果が
発揮される。

また、上記実施例では、複数の箱2,…,2を一体とするこ
とにより吸音箱３を構成した場合について説明したが、
例えば、多数の板材を適宜組み合わせることにより、吸
音箱３を構成することもできる。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案によれば、取付作業が容易
であるから、コストを低く抑えることができると共に、
既存の設備であっても容易に実施することができ、交換
や修理も容易であり、また、内容積の異なった複数の吸
音室と、多孔質材料からなる吸音材とを有するから、低
周波数帯域から高周波数帯域に至る広い範囲の騒音を吸
音することができるという種々の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例の構成を示す正断面図、第
２図は吸音体の吸音特性の一例を示すグラフ、第３図は
吸音体の施工例を示す斜視図、第４図は本考案の第２実
施例の構成を示す正断面図である。 １……吸音体、２……箱、３……吸音箱、４……吸音
材、５……天井、６……照明装置、７……容積調整機構

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】内容積の異なる複数の吸音室を有する吸音
   箱の外側を、多孔質材料からなる吸音材で覆ったことを
   特徴とする吸音体。