JPH0745411A - ペロブスカイト型複合酸化物磁性材料、それを用いた温度スイッチ及び温度変化検出素子 - Google Patents

ペロブスカイト型複合酸化物磁性材料、それを用いた温度スイッチ及び温度変化検出素子

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JPH0745411A
JPH0745411A JP5204554A JP20455493A JPH0745411A JP H0745411 A JPH0745411 A JP H0745411A JP 5204554 A JP5204554 A JP 5204554A JP 20455493 A JP20455493 A JP 20455493A JP H0745411 A JPH0745411 A JP H0745411A
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temperature
magnetic
magnet
magnetic material
composite oxide
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JP5204554A
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Yoshio Matsuo
良夫 松尾
Naoki Kitou
直樹 亀頭
Toyohiko Shimizu
豊彦 清水
Irin You
伊林 葉
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Original Assignee
FDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 0℃以下の低温域でほぼ規則的に磁気特性の
変化する、具体的には、そのキュリー温度が組成に応じ
てほぼ規則的に変化するペロブスカイト型複合酸化物磁
性材料を提供する。また、かかる磁性材料を利用した0
℃以下の温度で動作する温度スイッチ及び温度変化検出
素子を提供する。 【構成】 組成式AB0.5 B′0.5 3 で表されるペロ
ブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物であって、A
サイトがCe,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,
Tb又はHoからなり、B及びB′サイトがそれぞれ異
なる遷移金属元素からなる、0℃以下の温度で磁性の変
化するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、組成式AB0.5 B′
0.5 3 で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する
複合酸化物磁性材料に関し、より詳しくは、Aサイトが
特定のランタノイド元素、B及びB′サイトが遷移金属
元素からなるペロブスカイト型複合酸化物磁性材料、こ
の磁性材料を利用した温度スイッチ及び温度変化検出素
子に関する。
【0002】
【従来の技術】ABO3 型酸化物でAイオンのイオン半
径がBイオンよりも大きいものにみられるペロブスカイ
ト型結晶構造をもつ複合酸化物において、Aサイトが希
土類元素のLaであるLaMnO3 は、低温において反
強磁性的性質を有することが知られている。一方、La
MnO3+X (xは0.0006〜 0.068程度)と酸素リッチの
複合酸化物、LaMnO3 のLaの一部をアルカリ土類
金属で置換した複合酸化物(La1-X X )MnO
3 (Eはアルカリ土類金属)、LaMnO3 のBサイト
であるMnを他の遷移元素で置換したLa2 MnMO6
(M=Co,Ni,Cu)については、低温において強
磁性を示すことが知られている。
【0003】また、ペロブスカイト型結晶構造をもつ複
合酸化物であって、Aサイトが3A族元素、Bサイトが
3A族元素以外の遷移元素を含み、かつAサイト欠陥を
有する強磁性材料が知られている(特開平4−5320
6号公報)。しかし、該特開平4−53206号公報に
おいて、その磁気的特性について具体的に示されている
ものは(La1-y Sry X MnO3-δ(0.85≦x
≦0.96、0.24≦y≦0.50、δは正の微小
値)であり、La以外の希土類元素に置き換えたものの
磁気的特性については示されていない。
【0004】また、ペロブスカイト型結晶構造をもつ複
合酸化物において、これらはいずれもAサイトの希土類
元素がLaに関する組成物の磁気的性質についての報告
例であるが、Aサイトの希土類元素をLa以外の元素に
置き換えた組成物について、その磁気的性質がどの様に
変化するのかについては報告例がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者はA
サイトをLa以外の希土類元素に置き換えた一連のペロ
ブスカイト型複合酸化物を合成し、かかる組成物につい
て磁気的特性を調べたところ、これら一連の組成物は、
その常磁性から強磁性に変化するキュリー温度が、0℃
以下であって、希土類元素のイオン半径が減少するとと
もにほぼ直線的に低下し、また、低温域において強い強
磁性を示すことを発見した。
【0006】従来、ペロブスカイト型結晶構造を有する
複合酸化物において、0℃以下の低温域でそのキュリー
温度が規則的に変化する一連の磁性材料は知られていな
かった。このような磁性材料を利用すれば、0℃以下の
低温域で、そのキュリー温度に対応した温度スイッチと
して利用でき、また、温度変化がキュリー温度前後であ
るとき、磁束変化による誘導起電力が発生するので、こ
れを検出して、極めて簡単な構成による温度変化検出素
子として利用できる。
【0007】そこで、本発明の目的は、0℃以下の低温
域でほぼ規則的に磁気特性の変化する、具体的には、そ
のキュリー温度が組成に応じてほぼ規則的に変化するペ
ロブスカイト型複合酸化物磁性材料を提供するととも
に、かかる磁性材料を利用した0℃以下の温度で動作す
る温度スイッチ及び温度変化検出素子を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、Aサイトを
La以外の希土類元素に置き換えた、組成式AB
0.5B′0.5 3 (B及びB′サイトがそれぞれ異なる
遷移金属元素)で示される一連のペロブスカイト型複合
酸化物を合成し、かかる組成物について磁気的特性を試
験した。その結果、これら一連の組成物の常磁性から強
磁性に変化するキュリー温度は、0℃以下であって、希
土類元素のイオン半径が減少するとともにほぼ直線的に
低下すること、またこれら一連のペロブスカイト型複合
酸化物は低温域において強い強磁性を示すことを見出し
た。かかる磁性材料の磁気特性を利用すれば、極めて簡
単な構成で、温度スイッチや温度変化検出素子として利
用することができる。本発明は、これらの知見に基づい
て完成されたものである。
【0009】すなわち、本発明のペロブスカイト型複合
酸化物磁性材料は、組成式AB0.5B′0.5 3 で表さ
れるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物であ
って、AサイトがCe,Pr,Nd,Sm,Eu,G
d,Dy,Tb又はHoからなり、B及びB′サイトが
それぞれ異なる遷移金属元素からなる、0℃以下の温度
で磁性の変化するものである、ことを特徴としている。
【0010】本発明の実施の態様として、BサイトがM
nからなり、B′サイトがCr,Fe,Co,Ni又は
Cuからなるものとすることができる。
【0011】本発明の他の態様における0℃以下の温度
で動作する温度スイッチは、不活性ガスを充填した密閉
管内に温度変化によって磁性の変化する磁性体とマグネ
ットとが対向して配置され、前記マグネット及び前記磁
性体には前記密閉管外へ延びるリード線がそれぞれ接合
され、前記マグネットと前記磁性体の少なくとも一方は
弾性体を介して前記リード線に接続されてなる温度スイ
ッチであって、前記磁性体が上記のペロブスカイト型複
合酸化物磁性材料から形成されたものである、ことを特
徴としている。
【0012】また、本発明のさらに他の態様における0
℃以下の温度で動作する温度変化検出素子は、温度変化
によって磁性の変化する磁性体の両側にマグネットが配
置され、該マグネットの他側に鉄心が接合されて磁気閉
回路が形成され、前記磁気閉回路の少なくとも一部にコ
イルが巻回されてなる温度変化検出素子であって、前記
磁性体が上記のペロブスカイト型複合酸化物磁性材料か
ら形成されたものである、ことを特徴としている。
【0013】発明の具体的説明 組成式AB0.5 B′0.5 3 で表されるペロブスカイト
型結晶構造を有する複合酸化物において、Aサイトは、
Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Tb又は
Hoのいずれかのランタノイド元素からなる。ランタノ
イド元素のうち、Laについては従来その磁気特性につ
いて種々報告されており、またそのキュリー温度が室温
付近にあり0℃を超えるため、また重希土類側のEr〜
Luについては、組成式AB0.5 B′0.5 3 で表され
るペロブスカイト型結晶構造の単一相が得られ難く磁気
履歴を示さないため、本発明の範囲外とした。なお、H
oの場合、完全な単一層は得難いが大部分が単一層を形
成して磁気履歴を示すので、本発明の範囲に含める。
【0014】また、B及びB′サイトは、それぞれ異な
る遷移金属元素からなり、具体的にはBサイトがMn、
B′サイトがCr,Fe,Co,Ni又はCuからなる
ものが挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。
【0015】かかる組成のペロブスカイト型結晶構造を
有する複合酸化物は、AサイトがCe,Pr,Nd,S
m,Eu,Gd,Dy,Tb,Hoへと、低希土類側か
ら重希土類側へと原子番号が大きくなるに従って、すな
わち、イオン半径の減少とともにそのキュリー温度がほ
ぼ直線的に低下していく。そして、そのキュリー温度よ
り低い低温域において、本発明の磁性材料は強磁性を示
す。
【0016】ところで、従来、低温における電気回路の
スイッチング方法としては、(1)温度による電気抵抗
の変化を利用したサーミスター、(2)ゼーベック効果
による熱起電力を利用した熱電対、(3)キュリー温度
での磁気特性変化を利用する感温フェライト等を利用す
る方法がある。しかし、(1)及び(2)の方法を用い
て電気回路のスイッチングを行う場合、複雑な制御回路
が必要であり高価なものになり、また、(3)の方法に
ついては、低温域(233K程度以下)にキュリー温度
を有する適当な材料がなかった。しかし、本発明の磁性
材料を用いた素子によれば、温度変化による磁性変化を
利用して直接的に回路のスイッチングを行うことがで
き、極めて簡単な構成により0℃以下の温度で動作する
温度スイッチ素子として利用できる。
【0017】次に、本発明の温度スイッチの具体的構成
を図1に基づいて説明する。図1は本発明の温度スイッ
チ2の内部構造の説明図である。ガラス管等で形成され
た密閉管4内に温度変化によって磁性の変化する磁性体
6とマグネット8とを対向して配置し、マグネット8の
磁性体6に対向する反対側にはバネ等からなる弾性体1
0を介して密閉管4外に延びるリード線12を接合す
る。一方、磁性体6のマグネット8に対向する反対側に
は密閉管4外に延びるリード線12′が接合されてい
る。密閉管4内は、本温度スイッチユニット2が低温時
に、水分の固化によってマグネット8と磁性体6の接触
面の導電性が低下するのを防止するために、Arガス等
の不活性雰囲気としてある。そして、磁性体6は上述の
本発明のペロブスカイト型複合酸化物磁性材料から形成
される。
【0018】マグネット8と磁性体6の表面には接触時
の導電性を高めるために銅粉等の導電材をコーティング
しておくとよい。リード線12,12′は、密閉管4と
の接触部14,14′で固定されている。バネ等の弾性
体10の強度は、磁性体6が常磁性時には磁性体6とマ
グネット8とが非接触状態で、磁性体6が強磁性体にな
った時には接触状態となるように調整されている。な
お、弾性体はマグネット8側に設置してもよいし磁性体
6側に設置してもよく、或いはその両者に設置するよう
にしてもよい。
【0019】そして、磁性体6の温度が低下しそのキュ
リー温度以下になって強磁性体に変化すると、マグネッ
ト8はバネ等の弾性体10の弾性力に抗して磁性体6の
方向に移動し、磁性体6とマグネット8とが接触し通電
状態となり、一方、磁性体6の温度が上がりそのキュリ
ー温度を超えて常磁性体に変化すると、マグネット8は
弾性体10の弾性力によって引き戻され磁性体6とマグ
ネット8とが非接触となる。従って、このユニット2は
磁性体6のキュリー温度に対応した温度スイッチとして
機能する。磁性体6の材料として上記ペロブスカイト型
複合酸化物磁性材料を適宜選択することによって、0℃
以下の所望の温度で動作する温度スイッチとなる。
【0020】また、本発明の磁性材料を用いて磁気回路
を形成しコイルを巻き付けておけば、該磁性材料のキュ
リー温度前後で温度変化があると磁束が変化するので、
コイルに誘導起電力が発生する。これによる誘導電流を
検出すれば、極めて簡単な構成により0℃以下の温度で
動作する温度変化検出素子として利用できる。
【0021】次に、本発明の温度変化検出素子の具体的
構成を図2に基づいて説明する。図2は本発明の温度変
化検出素子20の内部構造の説明図である。温度変化に
よって磁性の変化する磁性体22の両側にマグネット2
4,26を配置し、該マグネット24,26の他側に磁
性軟鉄等の例えばコ字上の鉄心28を接合して磁気閉回
路を形成し、この磁気閉回路の少なくとも一部にコイル
30を巻回する。そして、コイル30、磁性体22、マ
グネット24,26及び鉄心28を固定するために、こ
れらの表面には樹脂コーティングを施しておく。磁性体
22は上述の本発明のペロブスカイト型複合酸化物磁性
材料から形成される。
【0022】このように構成した本発明の温度変化検出
素子20の磁性体22の温度がそのキュリー温度前後で
変化すると、磁気閉回路の磁束が変化する。そのため、
コイル30に誘導起電力Eが発生し、これによる誘導電
流を検出すれば、磁性体22のキュリー温度前後で動作
する温度変化検出素子として機能する。磁性体22の材
料として上記ペロブスカイト型複合酸化物磁性材料を適
宜選択することによって、0℃以下の所望の温度で動作
する温度変化検出素子となる。
【0023】
【実施例】実施例1 出発物質として、Ln2 3 (Ln=La,Pr,N
d,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Y
b),Mn2 3,NiO(純度99.99%)を用
い、組成式LnMn0.5 Ni0.5 3 となるように所定
の割合に配合し、メノウ乳鉢中で十分に乾式混合し、そ
の混合物を成形し、大気中1523Kで72時間仮焼し
た。これを粉砕して成形し、大気中1523Kで72時
間焼成して試料を得た。得られた試料の一部を粉砕し、
粉末X線回折法を用いて相の同定を行い単一相か否かを
確認した。そして不純物相が確認された試料については
再度粉砕し、上記と同一条件で成形、焼成を行い、再合
成によっても単一相の得られないものについては、雰囲
気及び圧力を変えて合成を行った。その結果、Ln=L
a,Pr,Nd,Sm,Eu,Tbについては1回目の
合成プロセスで単一相が得られた。また、Ln=Gd,
Dyについては3回目のプロセスによって単一相が得ら
れた。しかし、Ln=Ho,Er,Ybについては単一
相は得られなかった。処理条件を表1に示す。
【0024】
【表1】 表1 La Pr Nd Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Yb 1回 ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × × × × 2回 × × × × × 3回 ○ ○ × × × 4回 × 1回,2回:1523Kで大気中3日間熱処理 3回:1523Kで酸素雰囲気中3日間熱処理 4回:1523Kで酸素雰囲気(4気圧)中3日間熱処
理 ○ :単一相を得た × :単一相が得られない
【0025】単一相の得られた各試料について、VSM
(振動試料型磁力計)で磁気特性を測定した。なお、L
n=Hoについては完全な単一相は得られなかったが、
大部分はペロブスカイト型結晶構造を有しており、低温
において磁気履歴を示した(図6参照)。
【0026】各試料のうちLn=Pr,Sm,Tb,H
oの場合(PrMn0.5 Ni0.5 3 ,SmMn0.5
0.5 3 ,TbMn0.5 Ni0.5 3 ,HoMn0.5
Ni0.5 3 )について、各種温度におけるM−H曲線
を図3〜図6に示す。図3からも分かるように、PrM
0.5 Ni0.5 3 について、低温域で明確な磁気履歴
を示し(図3(a),(b))、キュリー温度の少し低
温側では僅かに磁気履歴を示している(図3(c))
が、キュリー温度を超えるとM−H曲線は直線になって
(図3(d),(e))常磁性に変わることが分かる。
SmMn0.5 Ni0.5 3 についても、図4から分かる
ように、同様の傾向を示している。LnがTb,Hoの
場合、低温と室温付近のM−H曲線のみを図示してある
が(図5,図6)、上記とほぼ同様の傾向を示した。ま
た、Lnがこれら以外の組成物についても、M−H曲線
はLn=Pr,Smにおける場合とほぼ同様の傾向を示
した(図示せず)。
【0027】そして、各試料について、キュリー温度付
近で温度を少しづづ変えて求めたM−H曲線につき、M
−H曲線が完全に直線になったときの温度をキュリー温
度とし、そのキュリー温度とLnのイオン半径の関係を
図7に示すとともに、表2にキュリー温度を示す。
【0028】
【表2】 表2 LnMn0.5 Ni0.5 3 における キュリー温度とLn(希土類元素)の関係 Ln La Pr Nd Sm Eu Gd Tb Dy キュリー温度 (Tc)K 299 223 214 178 157 141 127 114
【0029】これらの図7及び表2の値から分かるよう
に、各試料の常磁性から強磁性に変化するキュリー温度
は、AサイトのLnが、Ln=La,Pr,Nd,S
m,Eu,Gd,Tb,DyへとLnのイオン半径の減
少とともにほぼ直線的に低下することが確認された。従
って、Lnを変えることによって、キュリー温度を容易
にコントロールできることが分かる。
【0030】また、M−H曲線より求めた、一連の組成
物の低温(液体窒素温度(78K))における磁気特性
値(飽和磁化(Ms)、残留磁化(Mr)、保磁力(H
c))を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】表3に示した磁気特性値からも分かるよう
に、上記実施例に係る一連のペロブスカイト型複合酸化
物は、低温域において強磁性を示すことが分かる。な
お、Lnが重希土類側(Tb〜Ho)でMr,Ms,H
cの値が低くなっているのは、特性値の測定温度が、キ
ュリー温度に近づいてくるためであると考えられる。
【0033】このような強磁性的性質は、Bサイトイオ
ン−酸素イオン−B′サイトイオンの超交換相互作用に
より発現する。図8に組成式LnMn0.5 Ni0.5 3
(Ln=ランタノイド元素)の磁気モーメント(μeff
(exp))のLnのイオン半径による変化の様子を示す。
グラフ中にはμeff(Mn4+,Ni2+) 、μeff(Mn3+,Ni3+)
の理論値も共に示してある。ここで、磁気モーメント
(μeff(exp))の値は、ファラデー法によって、不均一
磁場中で物質が受ける力を測定し磁化率を求め、磁化率
の逆数と温度との関係よりキュリー定数を求め、この値
を次式1に代入して求めた。
【0034】
【式1】μeff(exp)=(8C)1/2 〔C:キュリー定数、8≒3k/(NA ・μB 2 )、μ
B :ボーア磁子、k:ボルツマン定数、NA :アボガド
ロ数〕
【0035】また、μeff(Mn4+,Ni2+) 、μeff(Mn3+
Ni3+) の理論値(μeff(cal))は、各々の磁性イオンの
μeff を次式2に代入して求めた。
【0036】
【式2】μeff(cal)={Σni( μeff,i)2 1/2
【0037】ここで、niは1分子中に含まれるiイオ
ンの数、μeff,i はiイオンの有効磁気モーメントであ
る。希土類イオン及びMn,Niイオンの3dイオンの
有効磁気モーメントの値は、岡本祥一著「磁気と材料」
21頁、23頁(共立出版)に示されている値を用い
た。
【0038】図8のグラフから分かるように、Euを除
く希土類では、ほぼμeff(Mn4+,Ni2+) に近い値を示す
ことが分かる。このことからLnMn0.5 Ni0.5 3
では、BサイトのMn4+−O2-−Ni2+の超交換相互作用に
より強磁性的性質が発現することが分かる。従って、本
発明の複合酸化物が低温において強磁性を示すのは、B
サイトにおいて、Bサイトイオン−酸素イオン−B′サ
イトイオンの超交換相互作用により発現するものと考え
られる。
【0039】実施例2 図1に示したように、ガラス管で形成した密閉管4内
(Arガス雰囲気)にマグネット(φ2mm、厚さ2m
m)8と試料(φ2mm、厚さ2mm、Ln=Nd、実
施例1に示した方法により製造)6とを対向して配置
し、マグネット8にはバネ10を介して密閉管4外に延
びるリード線12を接合し、試料6には密閉管4外に延
びるリード線12′を接合して温度スイッチ素子ユニッ
ト2を作製した。なお、マグネット8と試料6の表面に
は銅粉をコーティングしてある。リード線12,12′
は、密閉管4との接触部14,14′で固定されてい
る。バネ10の強度は、試料6が常磁性時には試料6と
マグネット8とが非接触状態で、試料6が強磁性体にな
った時には接触状態となるように調整してある。
【0040】次いで図9に示すように、このユニット2
に豆電球16と電池18を直列に接続し、試料6とマグ
ネット8間とがオープンになった回路を作製した。そし
て、このユニット2を室温から液体窒素温度へ冷却し
た。その後再度室温へ戻した。この操作を数回繰り返し
た。その結果、ユニット2の冷却過程では、試料6のキ
ュリー温度(214K)付近以下の温度で試料6が強磁
性体に変化し、試料6とマグネット8とが接触して回路
が接続し豆電球16が点灯した。また、ユニット2の昇
温過程では、試料6のキュリー温度付近を超えて温度が
高くなると試料6が常磁性体に変化し試料6とマグネッ
ト8とが開いて豆電球16が消灯した。
【0041】試料6の材料として本発明のペロブスカイ
ト型複合酸化物磁性材料を適宜選択することによって、
0℃以下の所望の温度で動作する温度スイッチとなる。
Aサイトを別の希土類で置換すると、より広範な温度領
域でスイッチングが可能である。なお、試料6の大き
さ、バネ10の強さ等を適当に調整すれば精度を高める
ことができる。そして、このようなユニットをより小さ
く、かつ複数配備すれば、温度感知センサーとしての利
用も可能である。
【0042】実施例3 図2に示したように、試料(φ2mm、厚さ2mm、L
n=Sm、実施例1に示した方法により製造)22の両
側にマグネット(φ2mm、厚さ2mm)24,26を
配置し、該マグネット24,26の他側にコ字上の磁性
軟鉄28を接合して磁気閉回路を形成し、磁性軟鉄28
の一部にコイル30を80ターン巻回した。次いで、コ
イル30、試料22、マグネット24,26及び磁性軟
鉄28を固定するために、これらの表面には樹脂コーテ
ィングを施して、温度変化検出素子ユニット20を作製
した。
【0043】そして、このユニット20を室温から液体
窒素温度の間を数回往復させ、その温度変化によって起
電力(E)が発生するか否かを調べた。その結果、試料
のキュリー温度(178K)前後での温度変化によって
0.02mV程度の起電力の発生が確認された。かかる
起電力の発生により生じた誘導電流を検出すれば、直接
的に温度変化を検出する温度変化検出素子として利用で
きる。なお、試料部を積層化したり大きくしたりコイル
の巻数を増やすことにより、より大きな起電力を得るこ
とができる。試料22の材料として本発明のペロブスカ
イト型複合酸化物磁性材料を適宜選択することによっ
て、0℃以下の所望の温度で動作する温度変化検出素子
となる。
【0044】なお、Aサイト元素の異なる複数の試料を
積層化し、他は上記図2と同様に構成したユニットによ
れば、各試料のキュリー温度が異なるので、その異なる
キュリー温度に応じ広範囲な温度変化に対して起電力
(E)を連続的に得ることも可能である。これを利用し
て、従来のマグネットを動かすことによる磁性変化を利
用する動的方法での起電力の発生ではなく、温度変化だ
けによる、強磁性体を動かす必要のない静的な方法によ
る発電素子としての利用も可能である。
【0045】
【発明の効果】本発明は上記のように構成したペロブス
カイト型複合酸化物磁性材料であるから、0℃以下の低
温域で、そのキュリー温度が組成に応じてほぼ規則的に
変化する磁性材料を提供することができるとともに、か
かる磁性材料を用いれば簡単な構成により0℃以下の温
度で動作する温度スイッチや温度変化検出素子として利
用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の温度スイッチの内部構造の説明図。
【図2】本発明の温度変化検出素子の内部構造の説明
図。
【図3】PrMn0.5 Ni0.5 3 の各種温度における
M−H曲線を示すグラフ。
【図4】SmMn0.5 Ni0.5 3 の各種温度における
M−H曲線を示すグラフ。
【図5】TbMn0.5 Ni0.5 3 の各種温度における
M−H曲線を示すグラフ。
【図6】HoMn0.5 Ni0.5 3 の各種温度における
M−H曲線を示すグラフ。
【図7】各試料のキュリー温度とLnのイオン半径の関
係を示すグラフ。
【図8】LnMn0.5 Ni0.5 3 の磁気モーメントμ
eff の、Lnのイオン半径による変化の様子を示すグラ
フ。
【図9】本発明の温度スイッチのスイッチング機能を確
認する装置の説明図。
【符号の説明】
2・・・温度スイッチ 4・・・密閉管 6・・・磁性体 8・・・マグネット 10・・・弾性体 12、12′・・・リード線 20・・・温度変化検出素子 22・・・磁性体 24、26・・・マグネット 28・・・鉄心 30・・・コイル E・・・起電力

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】組成式AB0.5 B′0.5 3 で表されるペ
    ロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物であって、
    AサイトがCe,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,D
    y,Tb又はHoからなり、B及びB′サイトがそれぞ
    れ異なる遷移金属元素からなる、0℃以下の温度で磁性
    の変化するペロブスカイト型複合酸化物磁性材料。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の組成式AB0.5 B′0.5
    3 において、BサイトがMnからなり、B′サイトが
    Cr,Fe,Co,Ni又はCuからなる請求項1に記
    載のペロブスカイト型複合酸化物磁性材料。
  3. 【請求項3】不活性ガスを充填した密閉管内に温度変化
    によって磁性の変化する磁性体とマグネットとが対向し
    て配置され、前記マグネット及び前記磁性体には前記密
    閉管外へ延びるリード線がそれぞれ接合され、前記マグ
    ネットと前記磁性体の少なくとも一方は弾性体を介して
    前記リード線に接続されてなる温度スイッチであって、
    前記磁性体が請求項1又は2に記載のペロブスカイト型
    複合酸化物磁性材料から形成されたものである0℃以下
    の温度で動作する温度スイッチ。
  4. 【請求項4】温度変化によって磁性の変化する磁性体の
    両側にマグネットが配置され、該マグネットの他側に鉄
    心が接合されて磁気閉回路が形成され、前記磁気閉回路
    の少なくとも一部にコイルが巻回されてなる温度変化検
    出素子であって、前記磁性体が請求項1又は2に記載の
    ペロブスカイト型複合酸化物磁性材料から形成されたも
    のである0℃以下の温度で動作する温度変化検出素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013501910A (ja) * 2009-08-10 2013-01-17 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 積層状の磁気熱量材料からなる熱交換器床

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013501910A (ja) * 2009-08-10 2013-01-17 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 積層状の磁気熱量材料からなる熱交換器床
JP2016040512A (ja) * 2009-08-10 2016-03-24 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se 積層状の磁気熱量材料からなる熱交換器床

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