JPH0745238A - 低圧水銀ランプの点灯方法および低圧水銀ランプの点灯装置ならびにこれを用いた紫外線照射装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】低圧水銀ランプを高周波点灯する場合に効率の
向上が可能となる点灯方法および点灯装置ならびにこれ
を用いた紫外線照射装置を提供する。 【構成】石英ガラスより構成された発光管２の両端に電
極４を封装するとともに、上記発光管内に水銀および希
ガスを封入した低圧水銀ランプ１において、上記ランプ
は、ランプ電流が３Ａ以上であり、希ガスの封入圧が１
Torr以下であり、この希ガスの封入圧をＰ（Torr）、ラ
ンプ内径をＤmmとした場合、Ｐ×Ｄ≦３５の条件のもと
では５０ｋＨｚ以上の高周波で点灯することを特徴とす
る。 【作用】５０ｋＨｚ以上の高周波で点灯するから電子温
度が高くなり、効率が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、低圧水銀ランプの点灯
方法および低圧水銀ランプの点灯装置およびこの点灯装
置を用いた紫外線照射装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】最近、各種気体や液体の浄化、または有
機物の分解等に紫外線（ＵＶ）を照射する方法が採用さ
れており、例えば上下水の浄化処理や殺菌処理の分野で
は、浄化・殺菌しようとする水に紫外線照射ランプから
紫外線を照射する手段が用いられている。この紫外線照
射用の光源としては、低圧水銀ランプが知られている。

【０００３】低圧水銀ランプは、発光管バルブの両端に
フィラメント電極を封装してあるとともに、内部に所定
量の水銀とアルゴン等の希ガスを封入した構造をなして
おり、発光管を構成するバルブ材料が遠紫外線の透過性
に優れた石英ガラスを用いている点、およびけい光体被
膜を備えていない点で、一般照明用けい光ランプとは構
造が異なる。しかし、その他の点では一般照明用けい光
ランプと同様な構造をなしており、かつ同様な放電・点
灯作用を奏する。このような低圧水銀ランプは、放電に
より発光管内の水銀原子が電離および励起され、この時
に水銀共鳴線である１８５nmおよび２５４nmの紫外線を
放射し、この紫外線が発光管の管壁を透過して外部に放
出されるようになっている。

【０００４】開発初期の低圧水銀ランプは、ランプ電流
が０．５Ａ以下であり、電極間距離１cm当りの入力は１
Ｗ以下であり、ランプ１灯当りの全入力もせいぜい１０
０Ｗ程度の低ワットであったが、最近では水の殺菌能力
や有機物の分解能力の向上が望まれ、紫外線出力の大き
な低圧水銀ランプが要求されるようになってきた。この
ような要請に応えるため、各ランプメーカでは高出力低
圧水銀ランプの開発、研究を進めており、例えばランプ
電流を上げたり、封入ガス圧を下げる等により、最近で
はランプ電流が１Ａ以上、例えば５〜１０Ａで、アルゴ
ン等の希ガスの封入圧を１Torr以下にし、従来の低圧水
銀ランプに対して単位発光長当り数倍の紫外線を出力で
きる低圧水銀ランプも実現されるようになってきた。

【０００５】しかしながら、上記のような高出力形紫外
線放射用の低圧水銀ランプは、ランプ電流を高くしたた
めチョークコイル形安定器の大形化が必要になり、重量
や寸法が従来の安定器に対して数倍の安定器を使用しな
ければならない。

【０００６】また、大電流用の電極構造が必要になり、
電極が大形化する。そして、ランプ電流を高くすると陽
極と陰極を分離構造にする必要があり、つまりバルブの
両端部にそれぞれ陽極と陰極を設け、半サイクル時に一
方の陽極と他方の陰極との間で放電を発生させるととも
に次の半サイクル時に一方の陰極と他方の陽極との間で
放電を発生させるようにしなければならない。これは、
電極が陽極モードのとき、陽極降下電圧にランプ電流を
乗じた値の電力が入力されて加熱されることになるが、
ランプ電流が大きいと電極が過昇温し、電極に塗布され
ているエミッタが飛散する問題があり、温度上昇する陽
極と陰極を分離し、陰極にエミッタを塗布する等の対策
が必要になるためである。しかし、陽極と陰極を分離構
造にすると、電極構造がきわめて複雑になる。

【０００７】このような欠点を回避するため、高出力形
低圧水銀ランプを高周波により点灯する検討が進められ
ている。高周波点灯の場合は電子インバータ回路を使用
することができるので、安定器の小形、軽量化が図れ、
また電極構造も簡単になる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の高周波
点灯は４０ｋＨｚ程度であり、このような周波数で点灯
する場合は、安定器の小形および軽量化を実現できて
も、効率の向上が望めない不具合があった。

【０００９】この点について種々の検討を行ったとこ
ろ、この種の高出力形低圧水銀ランプは、けい光ランプ
に比べてランプ電流が高く、希ガスの封入圧が低いこと
に関係し、周波数の低い高周波で点灯しても効率が向上
しないものと推測される。

【００１０】すなわち、一般のけい光ランプは、ランプ
電流が０．５Ａ以下であり、アルゴン等の希ガスの封入
圧は２〜３Torrであり、バルブの内径は１５〜３８mm程
度である。このようなけい光ランプは４０ｋＨｚの高周
波で点灯すれば効率が向上する。これに対し、高出力形
紫外線放射用の低圧水銀ランプは、ランプ電流は３Ａ以
上であり、アルゴン等の希ガスの封入圧は１Torr以下と
されており、バルブの内径は２０mm以上である。このよ
うな高出力形紫外線放射用の低圧水銀ランプでは、４０
ｋＨｚの高周波で点灯しても効率が向上しない。

【００１１】この原因を調べたところ、高出力形紫外線
放射用の低圧水銀ランプは、希ガスの封入圧が低くいの
でランプ内の電子が自由運動しやすく、よって管壁に逃
げやすく、電子温度が時間の変化に応じて変化しやすく
なる。すなわち、この種の低圧水銀ランプは希ガスの封
入圧が１Torr以下であるため、ランプ内の電子が管壁に
逃げやすい。よって４０ｋＨｚ程度の高周波では電子温
度の時間的変化が生じ、電子温度が十分に高くならない
ため、効率が向上しないものと考えられる。

【００１２】また、ランプ電流が高いためランプ内の水
銀が全てイオン化してしまい、励起により発光する水銀
原子がなくなり、いわゆる水銀原子が枯渇する現象を生
じ、このため光出力が飽和してしまうことも考えられ
る。

【００１３】すなわち、本発明の課題は、安定器の小形
や軽量化、および電極構造の簡素化のために、低圧水銀
ランプを高周波点灯する場合、効率が向上しない点が問
題であった。

【００１４】したがって、本発明の目的は、低圧水銀ラ
ンプを高周波点灯する場合に効率の向上が可能となる低
圧水銀ランプの点灯方法および低圧水銀ランプの点灯装
置ならびにこれを用いた紫外線照射装置を提供しようと
するものである。

【００１５】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、石英
ガラスより構成された発光管の両端に電極を封装すると
ともに、上記発光管内に水銀および希ガスを封入した低
圧水銀ランプにおいて、上記ランプは、ランプ電流が３
Ａ以上であり、希ガスの封入圧が１Torr以下であり、こ
の希ガスの封入圧をＰ（Torr）、ランプ内径をＤmmとし
た場合、Ｐ×Ｄ≦３５の条件のもとでは５０ｋＨｚ以上
の高周波で点灯することを特徴とする。

【００１６】請求項２の発明は、ランプ電流が３Ａ以上
であり、希ガスの封入圧が１Torr以下であり、この希ガ
スの封入圧をＰ（Torr）、ランプ内径をＤmmとした場
合、Ｐ×Ｄ≦３５の条件を満足する低圧水銀ランプと、
このランプに５０ｋＨｚ以上の高周波数を供給する高周
波供給装置とを具備したことを特徴とする。請求項３の
発明は、請求項２に記載の低圧水銀ランプの点灯装置を
紫外線照射装置に適用したことを特徴とする。

【００１７】

【作用】本発明者らは、前記した通り、高出力形紫外線
放射用の低圧水銀ランプを高周波点灯する場合に効率が
向上しない原因を調べてところ、この種の低圧水銀ラン
プは、希ガスの封入圧が低くかつ管径が大きいこと、お
よびランプ電流が高いことが原因して、電子温度が時間
の変化に応じて変化しやすく、かつ励起される水銀原子
が枯渇するものと推測された。したがって、これらの現
象を防止するため、むしろ周波数を高くすることに注目
した。すなわち、点灯周波数を高くすれば、休止期間が
短くなるので電子温度の変化が少なくなり、電子温度が
高くなって効率が向上するものと考えられる。そして、
周波数を高くする条件を研究したところ、ランプ電流が
３Ａ以上であり、希ガスの封入圧が１Torr以下であり、
この希ガスの封入圧をＰ（Torr）、ランプ内径をＤmmと
した場合、Ｐ×Ｄ≦３５の条件のもとでは５０ｋＨｚ以
上の高周波で点灯すればよいことを見出だした。

【００１８】したがって、請求項１および請求項２の発
明によれば、Ｐ×Ｄ≦３５の条件のもとでは５０ｋＨｚ
以上の高周波で点灯するのでランプ効率が向上する。ま
た、請求項３の発明の紫外線照射装置は、効率の高い低
圧水銀ランプを光源として使用したので、紫外線の照射
効率が向上する。

【００１９】

【実施例】以下本発明について、図面に示す一実施例に
もとづき説明する。図面は低圧水銀ランプ１を水の浄化
装置としての紫外線照射装置の光源に用いた例を示し、
１０は浄化槽、２０はこの浄化槽１０に浸漬された冷却
管である。冷却管２０は遠紫外線を透過する石英ガラス
により構成されており、内部が窒素、アルゴンなどのよ
うな不活性ガスの雰囲気に保たれている。そして、この
冷却管２０内には紫外線照射光源としての低圧水銀ラン
プ１が収容されている。

【００２０】低圧水銀ランプ１を説明すると、図におい
て２は合成石英ガラスからなる発光管バルブであり、内
径Ｄが３０mmに形成されている。この発光管２はＵ字形
をなしており、両端部はステム３、３により封止されて
いる。なお、ステム３、３は合成石英ガラスにより構成
される場合と、他のガラスにより構成される場合があ
る。これらステム３、３にはフィラメントからなる電極
４、４が取付けられており、これら各フィラメント電極
４、４は、それぞれ一対のウエルズ５…に架設されてい
る。

【００２１】これらウエルズ５…はステム１１を気密に
貫通して外部に導出されており、一組のウエルズ５、５
は高周波供給装置としての公知のトランジスタインバー
タからなる高周波点灯回路３０に接続されている。そし
て、この高周波点灯回路３０は商用電源３１に接続され
ている。上記高周波点灯回路３０は、上記低圧水銀ラン
プ１の５０ｋＨｚ以上の高周波数の電磁波を供給するよ
うになっている。また、他の一組のウエルズ５、５は始
動回路３２に接続されている。なお、上記電極４、４に
はバリウムＢａ、ストロンチウムＳｒ、カルシウムＣａ
の酸化物を主体とするエミッタ（図示しない）が塗着さ
れている。

【００２２】上記発光管２には、Ｕ字形に曲げられた屈
曲部に細管６が接続されており、この細管６にはアマル
ガム７が収容されている。上記紫外線照射装置では、ラ
ンプ１の点灯中に発光管２の管壁温度が１５０〜２００
℃にも達するので、発光管２から細管６を突出してこの
細管６に水銀７を収容することにより、水銀７の温度を
最適動作温度の４０℃前後に維持し、発光管２内の水銀
蒸気圧を最適に保つようになっている。なお、冷却管１
は水と接している。上記発光管２内には上記水銀７のほ
かに、１Torr以下、例えば０．５Torrのアルゴンなどの
希ガスが封入されている。

【００２３】このような構成の低圧水銀ランプ１は、こ
れを点灯すると電極４，４間の放電により発光管２内の
水銀原子が電離および励起され、この時に水銀共鳴線で
ある１８５nmおよび２５４nmの紫外線を放射し、この紫
外線は発光管２および冷却管２０の管壁を透過して外部
に放出される。このため、浄化槽１０の水を紫外線によ
り浄化、殺菌する。

【００２４】上記構成の低圧水銀ランプ１は、発光管２
の内径Ｄが３０mm、アルゴン等の希ガスの封入圧Ｐは
０．５Torrであり、Ｐ×Ｄの値は１５となっている。こ
のような条件の低圧水銀ランプ１は、高周波点灯回路３
０を用いて５０ｋＨｚ以上の高周波で点灯すると、効率
の向上が認められた。

【００２５】図２は、点灯周波数（ｋＨｚ）と、Ｐ×Ｄ
の値の関係で効率の向上が確認された領域を示すもの
で、ランプ電流は３Ａの場合である。紫外線高出力用低
圧水銀ランプは、希ガスの封入圧力が１Torr以下であ
り、Ｐ×Ｄの値は３５（Torr・mm）以下であるから、効
率の向上が可能な周波数の領域は５０ｋＨｚ以上であれ
ばよい。

【００２６】なお、封入希ガスは、アルゴンの外にネオ
ンであってもよく、またネオン−アルゴンのペニングガ
スであってもよい。したがって、上記のような低圧水銀
ランプであれば、高周波により点灯するから電子インバ
ータ回路を使用することができ、安定器の小形、軽量化
が図れる。

【００２７】また、高周波点灯により電子温度が上昇す
れば陽極降下電圧が減少して電極の過昇温が回避できる
ので、電極構造を陽極と陰極とに分離して構成する必要
がなくなり、電極構造が簡単になる。

【００２８】しかも、希ガスの封入圧が１Torr以下であ
るためランプ内の電子が管壁に逃げやすい性質を有する
が、点灯周波数を５０ｋＨｚ以上の高周波にしたから、
休止期間が短くなり電子温度が高くなる。このため効率
が向上する。

【００２９】なお、本発明は上記実施例に制約されるも
のではない。すなわち、低圧水銀ランプ１はＵ字形に限
らず、直管形であってもよい。また、本発明の低圧水銀
ランプは、水の浄化、殺菌用の紫外線照射装置の光源に
用いることに限定されるものではなく、その他、物質表
面の洗浄、灰化などの技術分野、または気体や水以外の
液体の浄化、殺菌などの分野で用いられる紫外線照射装
置の光源として用いることもできる。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように請求項１および請求
項２の発明によれば、ランプ電流が３Ａ以上であり、希
ガスの封入圧が１Torr以下であり、この希ガスの封入圧
をＰ（Torr）、ランプ内径をＤmmとした場合、Ｐ×Ｄ≦
３５の条件のもとでは５０ｋＨｚ以上の高周波で点灯す
るので、効率が向上する。また、請求項３の紫外線照射
装置は、効率が優れた低圧水銀ランプを光源として使用
するので、高い出力の紫外線を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る水浄化用紫外線照射装
置の概略的構成を示す断面図。

【図２】効率が向上する点灯周波数と封入圧力とバルブ
内径との関係を示す特性図。

【符号の説明】

１…低圧水銀ランプ ２…発光管
３…ステム ４…電極 ５…ウエルズ １０…浄化槽 ２０…冷却管 ３０…高周波点灯回路 ３１…商用電源 ３
２…始動回路

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 石英ガラスにより構成された発光管の両
   端に電極を封装するとともに、この発光管内に水銀およ
   び希ガスを封入した低圧水銀ランプにおいて、 上記ラ
   ンプは、ランプ電流が３Ａ以上であり、希ガスの封入圧
   が１Torr以下であり、この希ガスの封入圧をＰ（Tor
   r）、ランプ内径をＤmmとした場合、 Ｐ×Ｄ≦３５の条件のもとでは５０ｋＨｚ以上の高周波
   で点灯することを特徴とする低圧水銀ランプの点灯方
   法。
2. 【請求項２】 ランプ電流が３Ａ以上であり、希ガスの
   封入圧が１Torr以下であり、この希ガスの封入圧をＰ
   （Torr）、ランプ内径をＤmmとした場合、Ｐ×Ｄ≦３５
   の条件を満足する低圧水銀ランプと、このランプに５０
   ｋＨｚ以上の高周波数を供給する高周波供給装置とを具
   備したことを特徴とする低圧水銀ランプの点灯装置。
3. 【請求項３】 請求項２に記載の低圧水銀ランプの点灯
   装置を用いたことを特徴とする紫外線照射装置。