JPH0742700B2 - アンカーの緊張定着装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はアンカーの緊張定着装置に係り、特に複数の引
張材を有する永久及び仮設アンカーの各引張材にプレス
トレスを同時に与えて緊張するアンカーの緊張定着装置
に関するものである。

〔従来の技術〕

従来より、建築工事などの土留め、地滑り抑止、斜面安
定及び各種構造物の補強などの種々の目的で永久及び仮
設アンカーが用いられてきた。

第３図に示すように、この種のアンカー１は、PC鋼材等
の引張材２の一端を地盤３に挿入し、セメントペースト
やモルタル等の定着材４を注入して定着部５を形成し、
他端を土留壁等の構造物６に固定して、上記定着部５と
構造物６との中間部分の引張材２を自由にしておき、こ
の中間部分の引張材２に外部から緊張ジャッキ等でプレ
ストレスを与えて緊張するようにしたものである。

このように、引張材２の定着部５が一箇所である場合、
プレストレスによる引張荷重がこの定着部５に集中して
掛かり、定着材４に引張材２と直交する方向の横クラッ
クが発生することがあった。

そこで、第４図に示すように、複数本の引張材2a,2bの
各一端部を地盤３に注入し定着させて複数の定着部5a,5
bを形成し、上記引張荷重を各定着部5a,5bに分担させる
ことが創案された。

図示するように、地盤３に定着された引張材2a,2bが二
本である場合、まず、長い自由長Laの引張材2aにプレス
トレスを与えて緊張した後に、短い自由長Lbの引張材2b
にプレストレスを与えて緊張していた。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところで、上述のように複数本の引張材2a,2bを有する
アンカー1aを定着固定して各引張材2a,2bに別々にプレ
ストレスを与えて緊張することは、施工上煩わしいとい
う問題があった。

また、各引張材2a,2bに別々にプレストレスを与えて緊
張すると、構造物６や地盤３が変形崩壊することがある
ため、引張荷重を全く同一として緊張力を与えることは
できないという問題があった。

したがって、複数本の引張材を同一引張荷重で同時に緊
張することが理想である。

しかし、従来の緊張ジャッキを用いて、第５図に示すよ
うに、同一の引緊張荷重Ｆで複数本の引張材2c,2d,2eを
同時に緊張すると、各引張材2c,2d,2eの伸びが略同じに
なるため、外側に位置した引張材に大きな緊張力が掛か
り、内側に位置されるにしたがって緊張力が小さくなり
（2c＜2d＜2e）、緊張力が不均一になるという問題があ
った。

尚、図中７は定着体、８は緊張ジャッキのチャック装
置、９は締付リングである。

上述のような課題に鑑み、本発明は、複数本の引張材を
有するアンカーの各引張材に、均一な緊張力を作業性良
く発生させることができるアンカーの緊張定着方法を提
供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するため、本発明のアンカーの緊張定着
装置は、複数の引張材を緊張する緊張ジャッキと、定着
用クサビを押し込む定着クサビ押込装置と、緊張ジャッ
キと定着クサビ押込装置とを連結し引張材案内路を形成
するラムチェアを備えており、ラムチェアの引張材案内
路が、定着用クサビ押込装置から緊張ジャッキに向けて
末広がり状の傾斜角度を有して形成され、緊張ジャッキ
が、複数の引張材に対応した複数のシリンダと、各シリ
ンダ内にピストン部を有してシリンダ室を上下に区画す
るセンターホールラムとを備え、シリンダの各上部シリ
ンダ室がラム戻し用連絡通路で連結されると共に、各下
部シリンダ室が緊張用連絡通路で連結され、各シリンダ
のピストンストロークが各引張材の変位に応じて可変す
るように構成されている。

また、この緊張ジャッキは、複数の各シリンダ内を摺動
自在に設けられたセンターホールラムの下端部が、各シ
リンダの底部から垂下するラム回転防止装置にそれぞれ
係合されている。

〔作用〕

上記構成によれば、定着部と構造物との間の中間部分に
位置する各引張材に、同一に引張荷重で同時にプレスト
レスを与える。

したがって、アンカーが引張材を複数本有していても別
々にプレストレスを与えないので、施工が煩わしくな
く、作業性が良い。

そして、各引張材の自由長の伸びを任意に発生させて緊
張定着するので、各引張材に同一の引張荷重で同時にプ
レストレスを与えても、当該各引張材に均一な緊張力を
発生させることができる。

〔実施例〕

以下、本発明の好適な一実施例を添付図面に基づいて詳
述する。

本発明のアンカーの緊張定着装置は、第１図（Ａ）
（Ｂ）に示すような緊張ジャッキ10を有している。

この緊張ジャッキ10は、複数本の引張材11を同時に緊張
することが可能であること、上記引張材11と同数のシリ
ンダ12を有し、各シリンダ12のピストンストロークＳが
引張材11の変位に応じて可変であること、及び施工管理
の精度が良いことなどを考慮して製作されている。

図示するように、上記緊張ジャッキは、例えば六本の引
張材11を有するアンカーを緊張定着できるように形成さ
れている。

したがって、この緊張ジャッキ10には上記引張材11と同
数のシリンダ12が設けられている。

これらシリンダ12は、下部が縮径されたホッパ状の筒体
からなるラムチェア13の上部に、六角形を形成するよう
に環状に設けられている。

上記各シリンダ12内には、ピストン部14aの上下にシリ
ンダ室12a,12bを区画するセンターホールラム14がそれ
ぞれ摺動自在に設けられている。

これらシリンダ12の上部シリンダ室12b同士は、ラム戻
し連通路15で順次接続されている。そして、これら上部
シリンダ室12bのうちの一つにラム戻し油口16が開口さ
れている。

また、これらシリンダ12の下部シリンダ室12a同士は、
緊張用連通路17で順次接続されている。そして、これら
下部シリンダ室12aのうちの一つに緊張用油口18が開口
されている。

上記シリンダ12の下方のラムチェア13には、これを上下
方向に貫通するように、その側壁に沿ってPC鋼材等の引
張材11を挿通させるための引張材案内路20が形成されて
いる。

上記ラムチェア13の下部には、定着クサビ押込装置21が
取り付けられている。

この定着クサビ押込装置21は、押込用シリンダ22内にク
サビ押込用ラム23を摺動自在に設けて、ピストン部23a
で上部に区画形成した押込用上部シリンダ室22aに油口2
2cを開口し、上記ピストン部23aの下部に区画形成した
押込用下部シリンダ室22bにコイルスプリング24を設け
たものである。

この定着クサビ押込装置21によって、土留壁等の構造物
25のアンカー台座26に接触させて設けた定着体27にクサ
ビ28を押し込むようになっている。

上記定着体27の各クサビ28に上記引張材11が挿通され、
この引張材11は引張材案内路20及びセンターホールラム
14のセンターホール14bに順次挿通されて、当該センタ
ーホールラム14の上方に延出されている。

上記各センターホールラム14の上部には、チャック装置
29が設けられており、クサビ28によって上記引張材11が
当該各センターホールラム14に固定されている。

また、これら各センターホールラム14の下端部は、各シ
リンダ12の底部から垂下されたラム回転防止装置30にそ
れぞれ係合されている。

以上のように構成した緊張ジャッキを使用して本発明の
アンカーの緊張定着装置は第２図（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）
（Ｄ）に示すごとく、以下のように動作する。

まず、第２図（Ａ）に示すように、土留壁等の構造物25
を打設した地盤31に削孔し、この削孔32内に上記六本の
引張材11の各一端部を束ねて挿入する。

そして、第２図（Ｂ）に示すように、この削孔32内にセ
メントペースト又はモルタル等の定着材33を注入し、各
引張材11をそれぞれ定着固定して定着部34を形成する。

次に、第２図（Ｃ）に示すように、構造物25のアンカー
台座26に接触させて緊張ジャッキ10を設け、当該アンカ
ー台座26から外部に延出された引張材11を、定着体27、
クサビ28、定着クサビ押込装置21、ラムチェア13の引張
材案内路20、センターホールラム14のセンターホール14
b及びチャック装置29のクサビ28内に順次挿通させる。

また、上記センターホールラム14の上部に取り付けたチ
ャック装置29でクサビ28を引張材11に拘束する。

そして、上記シリンダ12の下部シリンダ室12a内に、緊
張用油口18から潤滑油等を注入して油圧を掛けてセンタ
ーホールラム14を上昇させ緊張作業を行う。

この緊張中には、上記定着クサビ押込装置21のコイルス
プリング24によってクサビ押込用ラム23のピストン部23
aを支持し、第１図（Ａ）に示す押込板35に荷重が掛か
らないようにして、定着体27と押込板35との間に所定の
間隙を与えておく。

このように、定着部34と構造物25との間の中間部分に位
置する各引張材11には、プレストレスが与えられる。

上記シリンダ12の下部シリンダ室12aが緊張用連通路17
で順次接続されているので、各センターホールラム14は
同一の油圧で同時に上昇し、定着部34と構造物25との間
の中間部分に位置する各引張材11は同一の引張荷重で同
時に緊張されることになる。

したがって、本実施例のようにアンカー13が引張材11を
六本有していても別々にプレストレスを与えないので、
施工が煩わしくなく、作業性が良い。

ところで、上記シリンダ12は引張材11と同台数設けられ
ており、各下部シリンダ室12aが緊張用連通路17で順次
接続されて同一の油圧が掛かるようになっている。これ
は、前述したように、この緊張ジャッキ10は、複数本の
引張材11を同時に緊張することが可能であること、上記
引張材11と同数のシリンダ12を有し、各シリンダ12のピ
ストンストロークＳが引張材11の変位に応じて可変であ
ること、及び施工管理の精度が良いことなどを考慮して
製作されているからである。

したがって、定着部34と構造物25との間の中間部分に位
置する各引張材11は同一の引張荷重で同時に緊張される
が、各シリンダ12のピストンストロークＳが引張材11の
変位に応じて可変であるので、各引張材の自由長Ｌの伸
びは任意に発生して緊張定着される。

すなわち、各引張材11に同一の引張荷重で同時にプレス
トレスを与えても、各引張材11の自由長Ｌの伸びが任意
に発生すると、当該各引張材11に均一な緊張力が発生す
ることになる。

その後、上記定着クサビ押込装置21で定着体27に形成し
た孔内にクサビ28を押し込み、緊張状態の引張材11をク
サビ28で定着体27に拘束する。

具体的には、上記定着クサビ押込装置21の押込用シリン
ダ22の押込用上部シリンダ室22a内に押込用油口22cから
潤滑油等を注入して油圧を掛けてクサビ押込用ラム23を
降下させ、そのピストン部23aで押込用下部シリンダ室2
2b内に設けたコイルスプリング24を縮長させることによ
り、定着体27の孔内にクサビ28を押し込むものである。

以上のように緊張定着作業が完了した後、上記シリンダ
12の上部シリンダ室12b内にラム戻し油口16から潤滑油
等を注入して油圧を掛けると共に、下部シリンダ室12a
内の緊張用油口18から潤滑油等を排出してセンターホー
ルラム14を降下させ初期状態に戻す。

各上部シリンダ室12bは、ラム戻し連通路15で順次接続
されているので、各センターホールラム14は同時に降下
するものである。

最後に、第２図（Ｄ）に示すように、緊張ジャッキ10を
アンカー13から取り外し、引張材11の延出端を切断等す
ることになる。

〔発明の効果〕

以上述べたように、本発明のアンカー緊張定着装置によ
れば、複数本の引張材を有するアンカーの各引張材に、
均一な緊張力を作業性良く発生させることができるとい
う優れた効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のアンカーの緊張定着装置に使用する緊
張ジャッキを示し、（Ａ）はその側断面図、（Ｂ）は
（Ａ）の1B−1B線矢視図、 第２図は本発明のアンカーの緊張定着方法を示し、
（Ａ）は削孔内に引張材を挿入した状態を示す概略図、
（Ｂ）は定着材の注入状態を示す概略図、（Ｃ）は緊張
ジャッキによる引張材の緊張定着状態を示す概略図、
（Ｄ）は緊張定着作業の完了したアンカーを示す概略図
である。 第３図は従来のアンカーの緊張定着方法の第１の例を示
す側断面図、第４図は従来のアンカーの緊張定着方法の
第２の例を示す側断面図、第５図は従来のアンカーの緊
張定着方法の第３の例を示す概略図である。 11…引張材;13…アンカー;25…構造物;34…定着部;L…
自由長。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の引張材を緊張する緊張ジャッキと、
   定着用クサビを押し込む定着クサビ押込装置と、上記緊
   張ジャッキと上記定着クサビ押込装置とを連結し引張材
   案内路を形成するラムチェアを備えたアンカー緊張定着
   装置において、 上記ラムチェアの引張材案内路が、定着用クサビ押込装
   置から緊張ジャッキに向けて末広がり状の傾斜角度を有
   して形成され、 上記緊張ジャッキが、複数の引張材に対応した複数のシ
   リンダと、これらの各シリンダ内にピストン部を有して
   シリンダ室を上下に区画するセンターホールラムとを備
   え、 これらのシリンダの各上部シリンダ室がラム戻し用連絡
   通路で連結されると共に、各下部シリンダ室が緊張用連
   絡通路で連結され、 各シリンダのピストンストロークが各引張材の変位に応
   じて可変であるようにしたことを特徴とするアンカー緊
   張定着装置。
2. 【請求項２】前記緊張ジャッキの、複数の各シリンダ内
   を摺動自在に設けられたセンターホールラムの下端部
   が、各シリンダの底部から垂下するラム回転防止装置に
   それぞれ係合されていることを特徴とする請求項１記載
   のアンカー緊張定着装置。