JPH0740954Y2 - 窯炉壁の倒壊防止装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、炉壁の炉内側への倒壊を防止するための倒壊
防止装置に関する。

（従来技術） 従来、ガラス、鉄鋼等を溶融する各種窯炉において、炉
壁の延命および張出し防止の観点から、ダボおよび引張
り部を設けた耐火煉瓦の採用が普及し、ダボおよび引張
り部を設けた耐火煉瓦は、隣接する耐火煉瓦が相互の連
結を強化して、稼働中の熱膨張による耐火煉瓦の迫り出
し倒壊を防止し、炉壁の延命が図られるが、例えば実開
昭61-164998号公報によれば、耐火煉瓦と該耐火煉瓦の
上部に設けられる耐火煉瓦との目地部に網状金属部材を
配設し、該網状金属部材の炉外側端部を固定することに
より耐火煉瓦の局部的な亀裂・割れの発生を防止して、
耐火煉瓦が相互の連結を強化し、炉命の延長が図られた
倒壊防止窯炉壁が開示されている。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら凹凸ダボおよび切欠部が設けてある前者
は、炉窯の熱上げや稼働時における炉内温度の変化を受
けて熱膨張を起し、熱膨張応力が凹凸ダボ部、または切
欠部に集中し、局部的に亀裂・割れが発生し、窯炉内壁
側に張り出し、ひいては倒壊に至る恐れがあり、後者は
目地間に網状金属部材を配しているため、炉壁煉瓦の倒
壊防止効果が少なく、また煉瓦と網状金属の熱膨張が異
なる為、ズレを生じる問題があった。

（問題点を解決するための手段） 本考案は、上記従来技術の問題を解消することを目的と
してなされたもので、バックステーで保持される多層構
造の窯炉壁中に、その内壁より外壁に向け貫通し、相対
する両側面が対称的かつ直線的に傾斜してなるテーパー
を設けた楔状煉瓦を配設し、該楔状煉瓦の炉外突端部に
設けた一対の挟持用凹部を挟持せしめる挟持緊締具によ
り炉外支持杆に緊締せしめた窯炉壁の倒壊防止装置を提
供するものである。

本考案の窯炉とは、ガラス溶融炉特にその蓄熱室を対象
にしたものであるが、各種窯炉の炉壁に同じように応用
することができるものである。

（実施例） 以下、本考案の１実施例を図面に基づいてさらに詳しく
説明する。

第１図は本考案の１実施例の要部を示す築炉中の斜視
図、第２図は炉壁構成の１例を示した背面図を示すもの
である。

図示されない炉床と、該炉床の上方に配置されている天
井アーチ１と、前記炉床から前記天井アーチに向かって
延びている側壁２をバックステー３で保持してなる窯炉
おいて、多層構造の側壁２は、例えば炉内側の第１層よ
り焼成アルミナジルコン煉瓦４、粘土質煉瓦５、断熱煉
瓦６、保温層７と構築するもので、隣合う煉瓦間には膨
張、収縮の逃がし、結合するための目地部８が設けら
れ、かかる目的を達成するための目地材が充填する。

第２図に示すように側壁２の所定の位置に楔状煉瓦９を
組積みするが、該楔状煉瓦は、くびれ部が無く、相対す
る両側面が対称的に傾斜してなるテーパーと、外壁側に
突出する幅狭な端部の上下面に設ける例えば凹部10と、
上下面が平行な形状で、側壁２の内側より外側へ貫通し
て該楔状煉瓦を上下、両脇共に挟みこんで多層に積み合
わされているものである。

楔状煉瓦９の両側面に積み上げる煉瓦は、炉内側より焼
成アルミナジルコン煉瓦４および粘土質煉瓦５の場所で
は焼成アルミナジルコン煉瓦と同等品煉瓦４′、断熱煉
瓦６および保温層７の個所には粘土質煉瓦相当品煉瓦
５′を用いるが、側面は楔状煉瓦９のテーパーにあわ
せ、合わせ目には目地部８を設けその位置に目地材を充
填する。

積み上げられた後に楔状煉瓦９は、適宜緊締手段により
緊張せしめるが、その手段は楔状煉瓦９の端部の上下面
に設ける凹部10を例えば鋏状のトングス11で挟持し、該
トングスはバックステー３間に架設する着脱自在な支持
杆12に緊締するもので、該緊締方法は図示されないター
ンバックル等で張着するようにしてもよく、簡易な方法
としては針金13を用いて緊結するようにしてもよい。

楔状煉瓦９のテーパーは、内壁面側の幅と外壁面側の幅
との寸法差が目地部８の目地代と焼成アルミナジルコン
煉瓦４の膨張代とを加算した値より大きくすればよく、
また該楔状煉瓦を側壁２に組積みする目安は１ケ/0.6〜
0.9m²程度がよく、楔状煉瓦９により加わる荷重が壁面
の局部に集中しないように交互に配するほうが望まし
い。

以下、本考案の作用を説明する。

熱膨張率の異なった炉材を多層構造としている窯炉の側
壁２は、熱上げ時や稼働中に内部と外部との温度差を起
因として、さらに経年変化に伴い目地部８の目地材や焼
成アルミナジルコン煉瓦４の端部に発生する侵食等で炉
内方向へ迫り出す傾向を示すが、緊張手段、すなわち楔
状煉瓦９の凹部10を挟持するトングス11を、バックステ
ー３に取付けた支持杆12側に常に緊張した状態に張って
おくことにより炉内へ傾くのを防止できるものである。

楔状煉瓦９の緊張によって該煉瓦の側面は、楔作用で該
楔状煉瓦の両脇に配置する焼成アルミナジルコン煉瓦４
を両脇方向に押付ける荷重、すなわち分力が作用し、そ
の作用力は該焼成アルミナジルコン煉瓦の横張りに寄与
して緊張力との相乗作用により側壁２の張り出しを防止
するが、その範囲は前述したようにある程度限定される
ので、組積みする各楔状煉瓦９を順次緊張手段で調整す
ることによって、側壁２の倒壊を防止し、窯炉の延命を
図ることができるものである。

楔状煉瓦９の両勾配は側面に削設したが、上下面に、あ
るいは加えて上下面にも設けてよく、熱応力の集中する
のを考慮して単層、多層構造のいずれの炉壁にも設ける
ことができる。また前記楔状煉瓦の炉外突端部に一対の
挟持用凹部を設け、この凹部を引っ張ることにより煉瓦
が炉内に傾くのを防ぐものであるが、貫通孔や溝等を設
けたものではなく僅かな凹部のみとしたことにより、引
っ張り力や熱膨張によるびび割れ、破損もなく、煉瓦の
延命が図れるものである。

（考案の効果） 本考案は、引っ張り煉瓦の形状として相対する両面側が
対称的、かつくびれ部分の無く直線的に傾斜してなるテ
ーパーを設けた楔状という非常に単純な形状としたこと
により、製作コストも大幅に削減でき、また該楔状の緊
張煉瓦を炉壁に組み込むことにより熱上げ、稼働中の煉
瓦の熱膨張、目地材の侵食等で起因する側壁の張出し倒
壊を、簡易な構成で確実に防止することにより窯炉の延
命が図られ、さらに外壁側の目地部の拡開を阻止するこ
とで省エネルギーにつながる等実用的効果はきわめて大
きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の１実施例の要部を示す築炉中の斜視
図、第２図は炉壁構成の１例を示した背面図である。 ２……側壁、３……バックステー ９……楔状煉瓦、11……トングス 13……支持杆

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】バックステーで保持される多層構造の窯炉
   壁中に、その内壁より外壁に向け貫通し、相対する両側
   面が対称的かつ直線的に傾斜してなるテーパーを設けた
   楔状煉瓦を配設し、該楔状煉瓦の炉外突端部に設けた一
   対の挟持用凹部を挟持せしめる挟持緊締具により炉外支
   持杆に緊締せしめた窯炉壁の倒壊防止装置。