JPH0739344A - 容器詰め茶碗むし用加工食品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 蒸煮して製造するのと同等の外観と品質を有
する茶碗むしを、電子レンジで短時間に製造できるよう
にすること。 【構成】 容器の内側面と内底面の交差部を曲面に形成
してある上面開放容器に具材を加えた希釈卵液を満杯充
填してあり、かつマイクロ波遮断材からなる蓋を被せて
密封してあることにより、上記目的を達成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、容器詰め茶碗むし用加
工食品、より詳しくは、電子レンジで加熱しても、蒸煮
して作った茶碗むしと同等の外観と品質を有する茶碗む
しに仕上げることができる容器詰め茶碗むし用加工食品
に関する。

【０００２】

【従来の技術】電子レンジは、短時間で料理を温めなお
したり、加熱したりできるので、手間をかけずに調理す
ることができる加熱調理器として普及している。ところ
が、通常の手順どおり茶碗むし用の容器に卵液などの材
料を入れ、蓋をした後、蒸煮する代わりに電子レンジを
用いて茶碗むしを作ろうとすると、電子レンジにかけた
場合は、加熱ムラが生じやすい上、加熱が急速に進むの
で、卵液と容器との接触面が非常に固くなって容器と固
着し、表面に亀裂が生じたり、いわゆるス（茶碗むしの
表面がアバタ状となる）が入ったり、ひどい場合には上
層は十分に加熱されていても中層や下層は液状のままと
なりやすく、蒸煮して作った茶碗むしと同等の外観と品
質を有する茶碗むしを電子レンジを用いて作ることは難
しいとされている。このため、容器の上部をアルミ箔な
どで被覆して加熱することにより余分なマイクロ波をカ
ットし、卵液全体をマイクロ波で均一に加熱しようとす
る加熱調理法が知られている。また、特公平５−２０３
０７号公報には、容器上部およびこれと連続する側面の
一部の両方をマイクロ波遮断材で被覆して、電子レンジ
の長所を生かしたまま内容物を均一に加熱するよう工夫
した容器が記載されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ように工夫された加熱方法や容器を用いると、一応電子
レンジにより茶碗むしを作ることができるものの、加熱
管理の難しい卵料理のためか、上記の問題を完全に解決
することはできない。そして、家庭用の倍の出力を有す
る業務用電子レンジではその傾向が強くなる。このよう
な状況に鑑み、本発明は、電子レンジで加熱調理して
も、蒸煮によって作られた茶碗むしと同等の外観と品質
を有する茶碗むしとなし得る容器詰め茶碗むし用加工食
品の提供を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記の目的にそって、本
発明者らは鋭意研究した結果、本発明を完成した。すな
わち、本発明の容器詰め茶碗むし用加工食品は、容器の
内側面と内底面との交差部を曲面に形成してある上面開
放容器に具材を加えた希釈卵液を満杯充填してあり、か
つマイクロ波遮断材からなる蓋を被せて密封してあるこ
とを特徴とする。

【０００５】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明において、容器の内側面と内底面との交差部を曲面
に形成してあるとは、容器の内側を形成する側面から底
面に至る間を滑らかに曲面状に形成してあることを言
う。例えば、容器の内側において、側面・底面はほぼ平
面であり、側面と底面との接続部が曲面である容器のほ
か、側面・底面ともに曲面からなり、内側を半球状に形
成した容器もこれに相当する。このように容器の内側面
と内底面との交差部を曲面に形成することにより、容器
の内側面と内底面との交差部を角状や稜状に形成した場
合に比べ、交差部付近で希釈卵液が過熱されることがな
く、したがって著しく速く沸騰（部分沸騰）をはじめる
ことがない。それゆえ、茶碗むしの下層部に多数の空洞
が生じたり、また茶碗むしの表面に亀裂が多数生じた
り、さらに角状部の茶碗むしが過熱のため容器に強く付
着して食べにくくなるとか、過熱により茶碗むしが変質
して食感の悪いものになるといった種々の問題点を極力
抑えることができる。なお、容器外側の形状は、マイク
ロ波を著しく阻害しない限り任意の形状としてよい。

【０００６】また、本発明では、上面開放容器に具材を
加えた希釈卵液を満杯充填してある。上面開放容器と
は、容器上部を開口部として形成してある容器を言い、
例えば、碗、カップのような形状の容器を挙げることが
できる。なお、その材質は電子レンジ加熱に適したもの
であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリカーボネイト、ポリエステル、ナイロン、さら
に紙や前記した各種ポリマーをコーティングした紙、ガ
ラスなどを挙げることができる。

【０００７】本発明において具材を加えた希釈卵液と
は、茶碗むしの材料となる食品原料のことを言い、具材
としては、鶏肉、海老、銀杏、蒲鉾、うずら卵、椎茸、
人参、筍、みつば、きぬさやえんどう豆などを、希釈卵
液としては、卵黄、卵白、全卵をだし汁や清水などで希
釈したゲル化していない卵液を挙げることができる。さ
らに本発明においては、酒、塩、砂糖、調味料、香辛
料、澱粉、増粘多糖類、乳化剤などの通常使用される食
品原料をも使用することができる。容器に具材と希釈卵
液を充填するには、あらかじめ混合してから充填して
も、別々に充填してもかまわない。

【０００８】本発明において満杯充填とは、容器上部の
開口部まで具材を加えた希釈卵液を充填してあることを
言い、実質的に容器内に空気相を有しないことを言う。
ここで実質的にとは、空気を全く含まないと言うことで
なく、具材を加えた希釈卵液を開口部まで充填して施蓋
するにあたり、通常の温度・圧力下で施蓋した際に一緒
に封入される程度の空気は含んでもよいことを言う。こ
の程度の僅かな空気であれば、電子レンジ加熱中におい
て、空気だけでなく希釈卵液の凝固したゲル自体も膨張
するので、このゲルの中に空気が取り込まれるのか茶碗
むしの表面に亀裂やスが生じることがなく、本発明の目
的を損なうことはない。ただし、工業的に大量に製造す
る場合は、種々の工程で具材や希釈卵液に大量の空気が
混入することになり易いので、施蓋をする前に脱気処理
をしたり、減圧状態で施蓋するようにするとよい。特に
凍結品として製造し、これを直接電子レンジで加熱する
場合には、具材や希釈卵液に混入する空気が少ないほど
よい仕上がりとなるので、脱気処理を行う方が好まし
い。

【０００９】本発明は、さらにマイクロ波遮断材からな
る蓋を被せて密封してあることを特徴とする。ここでマ
イクロ波遮断材とは、マイクロ波を透過しない材質のこ
とを言う。具体的には、アルミニウム、ニッケル、クロ
ム、鉄、亜鉛、スズ、またこれらの合金を挙げることが
できる。したがって、マイクロ波遮断材からなる蓋を被
せて密封してあるとは、上記の材料で形成した蓋を上面
開放容器に被せて、容器の内外を完全に遮断してあるこ
とを言う。この際、容器の側面までマイクロ波を遮断す
ると、希釈卵液の凝固を阻害する傾向となるので好まし
くない。また、上記の各材料は単体で蓋として用いて
も、またマイクロ波透過材などと層状に重ねて全体を蓋
として形成してあってもよいことは言うまでもない。な
お、容器と蓋を密封するには、加熱融着、巻締、接着剤
などの公知の手段を用いればよい。

【００１０】このようにして製した容器詰め茶碗むし用
加工食品は、常法にしたがい、凍結して冷凍保存しても
差し支えない。 ［作 用］本願発明に係る容器詰め茶碗むし用加工食品
は、以上のような構成としてあるので、これを電子レン
ジで加熱すると、マイクロ波遮断材からなる蓋を被せて
密封してあるため卵液の表面が過熱されず、全体が均一
でソフトに調理される。また容器の内側面と内底面の交
差部を曲面としてあるので、交差部付近にある具材や希
釈卵液が過熱されることがなく、他の部分と同様に均等
に加熱されるので、電子レンジで見られる突沸や部分沸
騰が起こり難く、容器内面に卵液が固着し難くなる。さ
らに、具材を加えた希釈卵液を満杯充填した上、密封し
てあるので、加熱による突沸、沸騰が抑えられ、茶碗む
しに空洞や亀裂が防止される。

【００１１】以下、本発明の容器詰め茶碗むし用加工食
品の代表的な製造方法について述べる。まず常法どお
り、容器に具材を加えた希釈卵液を充填する。卵液を、
だし汁あるいは清水で２〜６倍に、できるだけ空気を入
れないように希釈し、必要により裏ごししておく。別に
適当な大きさにカット、剥皮、必要により加熱・調味し
た蒲鉾、銀杏、海老、鶏肉といった具材を用意する。そ
して、容器内側における周側面と底面との交差部を曲面
に形成してある上面開放容器に具材を入れ、希釈卵液を
静かに容器口部まで充填する。ついでマイクロ波遮断材
からなる蓋にて密封すれば本発明の容器詰め茶碗むし用
加工食品を得ることができる。通常、茶碗むし１人前で
あれば、充填量は具材と希釈卵液を合わせて８０ｇ〜４
００ｇ程度となる。

【００１２】本発明の容器詰め茶碗むし用加工食品を電
子レンジで加熱調理するには、上記した充填量であれ
ば、電子レンジの出力により差が生じる他、製品の温
度、容器の深さや一度に加熱調理する個数により差が生
じるが、家庭用電子レンジで約１〜１５分程度、一般的
に家庭用より高出力な業務用電子レンジで約０．３〜１
０分程度で加熱を終了し、蒸煮して作った茶碗むしと同
等のものとなる。なお、本発明の容器詰め茶碗むし用加
工食品を凍結した場合は、解凍してから加熱調理しても
よいが、凍結状態のまま電子レンジにて加熱調理するこ
とができる。加熱時間は、上記の充填量であるとする
と、家庭用電子レンジで約３〜３０分程度、業務用電子
レンジで約１．５〜１５分程度で加熱済の茶碗むしとな
る。

【００１３】以下、本発明の実施例について述べる。 実施例１ 以下の配合の具材を加えた希釈卵液を準備した。 鶏卵 ２個（約１００ｇ） だし汁 ４００ｇ 鶏肉 薄切り４個 海老 ４尾 蒲鉾 ４切れ 生椎茸（小） ４個 容量約１００ｍｌの耐熱プラスチック製の容器４個に鶏
肉、海老、蒲鉾、生椎茸を等分に入れ、全卵とだし汁を
混合して裏ごししたものを各容器の開口部まで注ぎ入れ
た後、減圧室に１０分間静置し、これにアルミ蒸着フィ
ルム材からなる蓋を被せ、しっかりと密封シールして本
発明の容器詰め茶碗むし用加工食品を得た。

【００１４】これを家庭用の電子レンジで加熱したとこ
ろ、約２分で茶碗蒸しとなった。この茶碗むしは蒸煮し
て作った茶碗むしと同等の外観と品質を有するものであ
った。なお、密封シールしない以外は上記と同様に製造
し、これを蒸煮して茶碗むしを製造したところ約１０分
を要した。

【００１５】実施例２ 実施例１に準じて、本発明の容器詰め茶碗むし用加工食
品を２０個製造し、これをマイナス２５℃の冷凍庫に１
か月保存した。半数は流水解凍により解凍を行なって、
残り半数は冷凍庫より取り出してすぐに家庭用の電子レ
ンジで加熱をした。電子レンジでの加熱時間は、解凍品
約２分、冷凍品約４分であった。いずれの茶碗蒸しも実
施例１の茶碗むしと何の遜色もなかった。

【００１６】上記と同様に製造・凍結保存して本発明の
容器詰め茶碗むし用加工食品を得た。蓋に竹串で数カ所
穴をあけ、これを蒸煮することにより茶碗むしを製造し
たところ、できあがりの状態は非常に悪く、完全に固ま
るまで約３０分を要した。

【００１７】試験例 全卵とだし汁を１：４の割合で混合した希釈卵液を用意
した。湯のみ茶碗型の耐熱性プラスチック容器を用意
し、下記の条件で電子レンジ加熱を行った。 Ａ：本発明の容器詰め茶碗むし用加工食品。蓋はアルミ
箔ラミネートフィルム。 Ｂ：Ａと同じ容器に希釈卵液を８部目充填したもの。蓋
はＡと同じ。 Ｃ：Ａと同じ容器に希釈卵液を満杯充填したが、蓋をポ
リエチレンフィルム（アルミ箔なし）で密封したもの。 Ｄ：容器内側の周側面と底面との交差部が角張っている
容器に、希釈卵液を満杯充填したもの。蓋はＡと同じ。 Ｅ：Ａにおいて、蓋を密封シールせずに蓋の上からラッ
プをして、蓋が動かないようにしたもの。 加熱後、蓋を取り、茶碗むしの表面状態を確認し、皿の
上に茶碗むしの表面が下になるように出し、茶碗むしの
底部状態を確認し、さらに垂直に１／２にカットして茶
碗むしの内部状態を確認した。なお、シール強度は全て
同じとなるように設定し、電子レンジ加熱時間は全て同
じとした。

【００１８】試験結果は下記のようになった。 Ａ：表面状態−ゲルの固さはソフトで滑らかであり、凹
み、亀裂は見られない。茶碗むしならではの明るい黄色
を呈し、形状は全体がほぼ平ら。 底部状態−表面状態とほぼ同じ。ただし、容器底部の形
状をしている。 内部状態−表面状態とほぼ同じ。均一なゲルである。 Ｂ：表面状態−ゲルの固さはソフトで滑らかであるが、
凹みや亀裂が生じている。茶碗むしならではの明るい黄
色。形状は全体がほぼ平ら。 底部状態−ゲルの固さはソフトで滑らかであるが、亀裂
が生じている。茶碗むしならではの明るい黄色を呈し、
形状は全体がほぼ平ら。 内部状態−均一なゲルであるが、亀裂が認められる。 Ｃ：表面状態−表面より５ｍｍ程度までしかゲルを形成
していない。 底部状態−ゲルを形成せず希釈卵液のまま。 内部状態−ゲルを形成せず希釈卵液のままのため、観察
できない。 Ｄ：表面状態−ゲルの固さはソフトで滑らかであるが、
凹みや亀裂が多数生じている。茶碗むしならではの明る
い黄色。形状は全体がほぼ平ら。 底部状態−底部の外縁が崩れ、直径２〜８ｍｍ大の球状
の空洞が多数生じている。ほぼ容器底部の形状をしてい
る。 内部状態−表面状態とほぼ同じ。ただし、ゲルは均一。 Ｅ：表面状態−卵液が若干容器外に流出した。凹みや亀
裂が多数生じている。 底部状態−底部の外縁が崩れ、直径２〜８ｍｍ大の球状
の空洞が多数生じている。ほぼ容器底部の形状をしてい
る。 内部状態−直径２〜８ｍｍ大の球状の空洞が生じてい
る。 本試験より明らかなように、電子レンジでの加熱では、
本発明の容器詰め茶碗むし用加工食品のみが、蒸煮して
作った茶碗むしと同等のものになることがわかる。

【００１９】

【発明の効果】以上のように、本発明の容器詰め茶碗む
し用加工食品は、従来不可能であった蒸煮による茶碗む
しと同等の外観と品質を有する茶碗むしを電子レンジに
て短時間で製することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る容器詰め茶碗むし用加工食品の一
例（断面図）を示す。

【図２】本発明に斯かる容器詰め茶碗むし用加工食品の
他の一例（断面図）を示す。

【符号の説明】

図中、１．側面、２．底面、３．フランジ部、４．蓋、
５．具材を加えた希釈卵液、６．糸底。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 容器の内側面と内底面の交差部を曲面に
   形成してある上面開放容器に具材を加えた希釈卵液を満
   杯充填してあり、かつマイクロ波遮断材からなる蓋を被
   せて密封してあることを特徴とする容器詰め茶碗むし用
   加工食品。
2. 【請求項２】 脱気してあることを特徴とする請求項１
   記載の容器詰め茶碗むし用加工食品。
3. 【請求項３】 凍結してあることを特徴とする請求項１
   又は請求項２記載の容器詰め茶碗むし用加工食品。