JPH0737101B2 - 内燃エンジン等のガスケットの生産方法 - Google Patents

内燃エンジン等のガスケットの生産方法

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JPH0737101B2
JPH0737101B2 JP1015064A JP1506489A JPH0737101B2 JP H0737101 B2 JPH0737101 B2 JP H0737101B2 JP 1015064 A JP1015064 A JP 1015064A JP 1506489 A JP1506489 A JP 1506489A JP H0737101 B2 JPH0737101 B2 JP H0737101B2
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【発明の詳細な説明】 (発明の目的) この発明はエラストマー層で被覆したステンレス鋼板を
有する耐熱ガスケットの生産方法に関するものである。
例えば内燃エンジンなど、高温の燃焼ガスや冷却液のよ
うな化学物質との接触や強い振動のような過酷な条件の
下で運転される機械装置の機密性を確保するため、従来
アスベストを主材とするガスケットが多用されて来た。
しかしながら、アスベストはその公害性のゆえ、近年著
しく使用規制を受けるようになったので、これに代替可
能な特性をもつ素材が模索され、機械強度、耐食性、市
場供給性、コストなどの面からみてステンレス鋼板も優
れた代替素材の一つであると考えられている。ただし、
前記のようなガスケットの主材にステンレス鋼板を採用
する際はそれが装着される機械構造材への密接性を確保
するため、これに高密度で弾性あるライニングを施す必
要がある。このようなライニング素材としては各種の合
成樹脂又は合成ゴムのエラストマーが知られており、ス
テンレス鋼板をこれらのエラストマーにより被覆するこ
とは容易である。
しかしながら、従来エラストマーで被覆したステンレス
鋼板を用いる前記のガスケットの生産に成功した事例は
未だ報告されていない。前記したように、ステンレス鋼
板にエラストマーのライニングを施すこと自体は容易で
あるが、このようなライニングは母材であるステンレス
鋼板との密着性が弱く、そのため、前記のような過酷な
条件下で運転される機械のガスケットとして使用すれ
ば、ライニング層の剥離により著しく短寿命だからであ
る。従って、前記のような過酷な条件下で使用すること
のできるガスケットを実現するためには母材であるステ
ンレス鋼板とライニング層との密着性を格段に改善する
必要がある。
さて、ステンレス鋼板にあらかじめニッケルメッキを施
すことにより母材に対するライニング層の密着性が改善
されることは既知(日刊工業新聞社昭和55年12月25日発
行「ステンレス鋼便覧第856〜858頁参照)である。しか
しながら、その知見にもかかわらず、内燃エンジンなど
過酷な条件下で使用可能なガスケットが未だ実現してい
ないことは前述した通りである。
この発明はステンレス鋼板にエラストマーライニングを
施すための前述した従来の技術水準に鑑み、内燃エンジ
ンのシリンダーガスケットとして実用に耐えるような、
ステンレス鋼板を母材とするガスケットを提供するた
め、母材から剥離しがたい強固なライニング層を形成す
る手段を追究し、優秀な成果を得たものである。
(発明の構成) 第1図に内燃エンジン用ガスケットの一例を示すが、こ
の発明によればこのような所望する形状のステンレス鋼
板を母材1とし、この母材1をニッケルメッキ被膜と亜
鉛メッキ被膜とからなる複層のメッキ被膜により被覆す
る。単独の各メッキ被膜の膜厚は0.2〜1.5μmの範囲内
であることが必要である。ついで、前記した複層のメッ
キ被膜に対し250℃以上の温度において耐熱エラストマ
ー塗料を焼き付けることにより、母材1の面にニッケル
・亜鉛合金層2を形成すると同時に、前記合金層2の面
にエラストマーライニング3を施す。
この発明方法の要旨は上述の通りであるが、母材に前記
した複層のメッキ被膜を施すにあたり、メッキ作用を円
滑にして良好な複層の被膜を得やすくするため、通常は
ニッケルメッキを最初に行い、次に亜鉛メッキを施すの
がよい。
前記したように、この発明方法によれば前記した複層の
メッキ被膜に対し耐熱エラストマー塗料を焼き付けるの
であるが、このような塗料の焼き付けの際の熱により前
記複層に形成されたメッキ被膜における2種類の金属分
子が相互に拡散し、合金化されて単相のNi・Zn合金被膜
に変化する。
この発明によれば、それぞれ単独にかつ複層に形成され
るNiメッキ被膜およびZnメッキ被膜の膜厚は前記したよ
うにそれぞれ0.2〜1.5μmの範囲内に限定される。各メ
ッキ被膜の一方の膜厚が0.2μmよりも薄い場合は、後
のライニング焼き付けの工程において加熱される際にお
いてZn分子とNi分子の相互拡散が各所において不均等に
なる結果ライニングの剥離の原因となる。Zn分子の存在
は元来鉄系の母材の耐食性の向上に役立つとしても、ラ
イニング材の密着性を低下させるのである。後述する剥
離試験の試験成績からも分かるように、この発明におけ
る複層メッキの代わりにNi・Zn合金メッキを施した場合
(対照試料Rf6)はZn分子の存在にかかわらず、後述す
る張力剥離試験においても、膨張剥離試験においても優
秀な成績を収めるが、合金層内において分子密度がZn側
に偏っていると思われる対照試料Rf5の場合は成績不良
である。なお、複層を形成する各単独のメッキ被膜の双
方がともに0.2μmよりも薄い場合は参照試料Rf2と同じ
程度に成績不良である。さらになお、複層を形成する各
メッキ被膜の一方又は双方の膜厚が1.5μmを超えると
きは加熱時において上層および下層の被膜の金属分子が
相互拡散により均等な密度となって母材の面に達するの
に長時間を要するので、同時に加熱されるライニング素
材の劣化を伴う欠点がある。すなわち、母材の密着性を
阻害するZn分子の存在にかかわらず、複層を形成するNi
およびZnの各メッキ被膜の膜厚が0.2〜1.5μの範囲内に
あるときに限って、単独のNiメッキ被膜で被覆した場合
(対照試料Rf3,Rf4)と比較してはるかに剥離し難く強
固に密着したライニング層を獲得できることが明らかに
なった。
以下、ライニングつきステンレス鋼板におけるライニン
グの密着固定性についての試験成績を述べる。
すなわち、まずこの発明の実施例Ex1,Ex2および対照例R
f1,Rf2,Rf3,Rf4,Rf5,Rf6においてそれぞれこれらに対応
するライニング加工前の中間試料Exm1,Exm2,Rfm1,Rfm2,
Rfm3,Rfm4,Rfm5,Rfm6を用意する。ここで、 Rfm1:無処理の母材 Rfm2:Rfm1を脱脂酸洗いしたもの Rfm3:Rfm2に膜厚0.05μmのニッケルストライクメッキ
を施したもの Rfm4:Rfm3に膜厚1.5μmのニッケルメッキを施したもの Rfm5:Rfm3に膜厚1.5μmの亜鉛メッキを施したもの Rfm6:Rfm3に膜厚1.5μmのニッケル・亜鉛合金メッキを
施したもの Exm1:Rfm3に膜厚1μmのニッケルメッキを施し、つい
でその上に膜厚0.5μmの亜鉛メッキを施したもの Exm2:Exm1を300℃において30秒加熱したもの である。ただし、前記した母材には厚さ0.2mmのSUS304
ステンレス鋼板を使用した。
上記の処理におけるメッキ浴の組成および処理の条件は
つぎの通りである。
Rfm3のニッケルストライク浴 塩化ニッケル 220g/ 塩酸 35g/ 液温 25℃ 電流密度 5A/dm2 Rfm4,Exm1のニッケルメッキ浴 硫酸ニッケル 280g/ 塩化ニッケル 45g/ 硼酸 45g/ pH 4 液温 50℃ 電流密度 5A/dm2 Rfm5,Exm1の亜鉛メッキ浴 硫酸亜鉛 350g/ 硫酸アンモニウム 30g/ pH 3.5 液温 50℃ 電流密度 15A/dm2 Rfm6のニッケル・亜鉛合金メッキ浴 硫酸ニッケル 150g/ 硫酸亜鉛 150g/ 硫酸ナトリウム 85g/ pH 2 液温 25℃ 電流密度 15A/dm2 前記した中間試料にそれぞれプライマーを塗着し、ライ
ニング素材としてニトリルブタジエンゴム(NBR)を塗
布、330℃において90秒間加熱して焼き付け、膜厚0.5mm
のライニング層を形成する。
このようにして完成した各試料につき次のようなライニ
ング層の張力剥離試験および膨潤剥離試験を行った。そ
れらの剥離試験の条件はつぎの通りである。
張力剥離試験 ライニング層を外側にした試料の母材であるステンレス
鋼板を直径1mmの鋼線に密着させて180度折り曲げ、張力
によるライニング層の剥離の有無を検査する。
膨潤剥離試験 ライニング層にナイフで層底に達する切れ目を5mmの方
眼に縦横に入れた試料を100℃に保ったエチレングリコ
ールを主剤とする市販の不凍液に浸漬し、ライニング層
の膨潤剥離が始まるまでの時間を計測する。不凍液を使
用したのは、内燃エンジンのガスケットがこのような不
凍冷却液にさらされることが多いからである。
張力剥離試験の成績はつぎの通りである。
Ex1,Ex2,Rf6は全く剥離せず、ライニング層を母材に密
着状態を保っている。
Rf1,Rf2,Rf3は完全に剥離する。
Rf4,Rf5の多くは隔角部において剥離する。
膨潤剥離試験の成績はつぎの通りである。
Ex1,Ex2,Rf6は92時間以上経過しても膨潤による剥離は
全く認められない。
Rf1,Rf2,Rf3は10時間以内に膨潤による剥離が始まる。
なお、ライニング加工前の実施例中間試料Exm1とExm2と
の対比から分かるように、中間試料Exm1を加熱すること
なくライニング加工を施した実施例試料Ex1の成績は、
実施例中間試料Exm1を加熱処理することにより複層のメ
ッキ層を合金層に転化した後ライニング加工した実施例
試料Exm2の成績と較べ少しも劣っていないので、ライニ
ング加工前において、加熱処理を行う必要がないことが
分かる。さらにまた、Ni・Zn合金メッキを施した対照例
中間試料Rfm6にライニング加工を施した対照例試料Rf6
の試験成績は前記Ex1と較べて劣っていないけれども、
それぞれ単独のNiメッキおよびZnメッキの工程は、必ず
ニッケルストライクメッキを前提とするNi・Zn合金メッ
キの工程と較べて作業管理がかなり容易である点におい
て工業生産において著しく有利である。
(発明の効果) かくして、この発明方法によればステンレス鋼板を母材
とするので機械強度、耐食性が大きく、母材の面に対す
るライニング層の結合がニッケル・亜鉛合金層を介して
行われるので、きわめて強固で剥離し難いライニングが
施され、その結果耐久性、強度、耐食性、構造材への密
着性などの各性能に優れた優秀な内燃エンジンのシリン
ダーガスケット等、高温、振動および化学液剤との接触
下で使用される機械部材を提供することができる。のみ
ならずこの発明方法によればニッケル・亜鉛合金層はそ
れぞれ単独に形成したニッケルメッキ被膜および亜鉛被
膜の複層の加熱により形成されるので、あらかじめ前記
合金を準備する必要もなく、かつ単独金属の各メッキは
作業管理が容易であり、しかも前記複層の加熱はライニ
ング加工を施す際自動的に完了するので作業コストが低
く、内燃エンジン等のガスケットの生産において経済性
において優れた方法を提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明方法の一実施例によって生産したシリ
ンダーガスケットの一例の平面図、第2図は第1図のX
−Xで切断した拡大断面図である。 1は母材、2はニッケル・亜鉛合金層、3はエラストマ
ーライニング塗膜である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−148255(JP,A) 特開 平1−182669(JP,A) 特開 昭63−183838(JP,A) 特開 昭61−111378(JP,A) 実開 昭63−45456(JP,U)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所望する形状のステンレス鋼板を母材と
    し、ニッケルメッキ被膜と亜鉛メッキ被膜とからなる複
    層のメッキ被膜により、前記母材を被覆し、前記した単
    独の各メッキ被膜はそれぞれ0.2〜1.5μmの膜厚を有し
    てなり、前記複層のメッキ被膜に耐熱エラストマー塗料
    を250℃以上の温度において焼き付けることにより前記
    母材の面にニッケル・亜鉛合金層を形成すると同時に、
    前記合金層の面にエラストマーライニングを施すことを
    特徴とする内燃エンジン等のガスケットの生産方法。
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