JPH0736B2 - 脂質の加工法 - Google Patents

脂質の加工法

Info

Publication number
JPH0736B2
JPH0736B2 JP4245505A JP24550592A JPH0736B2 JP H0736 B2 JPH0736 B2 JP H0736B2 JP 4245505 A JP4245505 A JP 4245505A JP 24550592 A JP24550592 A JP 24550592A JP H0736 B2 JPH0736 B2 JP H0736B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fatty acid
reaction
raw material
lipase
immobilized
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP4245505A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0662876A (ja
Inventor
敏光 中嶋
晋 京谷
秀樹 福田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneka Corp
Original Assignee
Kaneka Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kaneka Corp filed Critical Kaneka Corp
Priority to JP4245505A priority Critical patent/JPH0736B2/ja
Publication of JPH0662876A publication Critical patent/JPH0662876A/ja
Publication of JPH0736B2 publication Critical patent/JPH0736B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酵素による脂質の加工
法に関し、更に詳しくはリパーゼを用いて原料油脂と原
料脂肪酸を反応させ、油脂中のアシル基を原料脂肪酸の
それと交換するエステル交換反応を用いた脂質の加工法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】脂質加工の基本的手段としては、水素添
加、分別、エステル交換などが従来より知られている。
このうちエステル交換反応については、近年脂質分解酵
素であるリパーゼを用いる方法が活発に研究、報告され
ている。この方法は、リパーゼの作用位置特異性を利用
することで、従来のアルカリ金属触媒を用いるエステル
交換では困難であったトリグリセライドの特定部位に特
定の脂肪酸を導入することが容易であるので、油脂化学
工業界で注目されているポテンシャルの高い脂質加工技
術の一つである。
【0003】この加水分解酵素であるリパーゼは、その
反応系に多量の水が存在すると加水分解反応が主として
進行し、トリグリセライドである脂質を脂肪酸とジグリ
セライド、モノグリセライドあるいはグリセリンに分解
する。一方、蛋白質である酵素はその活性な立体構造を
維持するために最低量の水の存在が不可欠であることが
最近、多くの研究によって明らかになりつつある。例え
ば、Dordick, J. S. :Enzyme Microbiol. Technol., 1
1,194(1989)、 Zaks,A.et al.:J.Biotechnol.,8, 259
(1988) 、Klivanov, A. M.: Chemtechnology,16, 354(1
986) 参照。したがって、脂質の加工技術として高いポ
テンシャルを有するエステル交換反応を効率的に実施す
るには、リパーゼ酵素のまわりにその活性な立体構造を
維持するに必要な最低量の本質的な水を保持しつつ、反
応系全体でみれば水分量の非常に低い状態を実現する、
いわゆる微水反応系を構築することが非常に重要とな
る。
【0004】このような微水反応系を工業的に実現する
には、既にセライト、パーライト、セルロースパウダ
ー、カオリナイト、活性炭などの担体をリパーゼ水溶液
に加え、リパーゼをこれらの担体に物理吸着させたの
ち、水溶液から分離し、乾燥させて担体内水分を調整す
るという手段が開示されている。また、このような担体
固定化リパーゼを用いてエステル交換反応を実施する反
応器としては、これらの担体が微粒子であるという性格
から、充填槽型のカラム反応器が一般的に用いられてい
る。例えば、特公昭57-27159号公報、特公昭63-22795号
公報、特公昭63-22798号公報、特公平3-44757 号公報、
特公昭62-43678号公報、特開昭62-61591号公報、特開昭
62-61582号公報、特公昭57-6480 号公報、特公平3-3143
8 号公報、特開昭57-198798 号公報参照。
【0005】しかしながら、上記のようなセライトなど
の担体に固定化したリパーゼを用いるカラム反応方式の
エステル交換反応プロセスを、工業的に実施する場合、
以下に示すような問題を有している。その一つは、この
分野の多くの研究者が指摘しているように、市販のリパ
ーゼ酵素の価格は他の加水分解酵素、例えばアミラー
ゼ、プロテアーゼなどに比べて高価であり、エステル交
換反応によって付加価値を付与された製品、例えばカカ
オバター代用脂の市場価格が際立って高価格というわけ
ではない現状においては、生産コストに占めるリパーゼ
酵素コストが如何にしても割高になってしまうという問
題を有しており、例えば、Macrae, A. R.:Biochem. So
c. Transactions, 17, 1146(1989)、Yamane, T.: J. A
m. Oil Chem.Soc., 64, 1657(1987)、橋本征雄 :バイオ
サイエンスとバイオインダストリー,47, 36 (1989) 、
間瀬民夫ら :バイオインダストリー, 7, 455(1990)参
照。したがって、安価なリパーゼ酵素の供給法の開発が
切望されていた。
【0006】第2に、カラム反応方式のエステル交換反
応では、反応器内の反応液の流れがプラグフローとな
り、その反応率は流れ方向に増大して行く。エステル交
換反応では副反応である加水分解反応とのバランスから
反応系の水分量が重要な操作因子となることは既に述べ
たとおりである。しかしながら、カラム反応方式では、
反応液がプラグフロー流れとなるので、カラム内で水分
濃度を一定値に制御することは装置の特性上、極めて困
難であり、如何にしてもカラム内に水分濃度の分布が生
じることは避けられない。本発明者らの検討結果によれ
ば、このような水分濃度分布の存在は副反応である加水
分解反応に影響があるばかりではなく、担体に固定化さ
れたリパーゼ酵素の失活にも顕著な影響があることが明
らかになり(Kyotani,et al.: J. Ferment. Bioeng.,71
286, (1991)) 、エステル交換反応において反応系の水
分濃度を一定値にコントロールできる反応システムの構
築、また、そのために必要かつ適切なリパーゼ酵素の使
用形態(固定化方法)の開発が望まれていた。
【0007】そこで、本発明者らはこれらの欠点を克服
するためにリパーゼ酵素として、微生物保持材に固定化
した菌体の菌体内リパーゼを利用するエステル交換反応
システム(以下、固定化菌体法という)を既に提案して
いる(特開昭60-34189号公報、特開昭62-118883 号公
報、特開昭63-146782 号公報、特開昭64-63385号公報、
特開平2-49582 号公報、特開平1-309689号公報、特開平
1-59078 号公報)。このような固定化菌体法では、培養
条件を調整することにより、安価に固定化リパーゼ酵素
剤を調製できる(特開昭62-118883 号公報、特開昭63-1
46782 号公報、特開平2-49582 号公報、特開平1-309689
号公報) 。また、固定化菌体法では、その特性を利用し
て、プラグフロー型、完全混合型のいかなる反応形式も
採用することが可能になり、固定化菌体を充填した反応
器内に反応液を高速で循環することにより、完全混合型
のプロセスを構築でき、更には菌体内(リパーゼ酵素近
傍)の水分濃度を任意にコントロールできる工業的に有
利なエステル交換反応プロセスを既に報告している(特
開昭64-63385号公報、特開平1-59078 号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、更にエ
ステル交換反応にはそれ自身の反応特性に由来する工業
的な問題が1つある。エステル交換反応の本質は作用す
る部位間の脂肪酸分布のランダム化(無秩序化)であ
る。よって、加工しようとする原料トリグリセライドと
目的とするトリグリセライドの間の作用部位の構成脂肪
酸の差が大きければ大きいほど大量の導入原料脂肪酸源
を必要とする(エステル交換反応は平衡反応である)。
即ち、一般的な工業プロセスでは、目的生成物の濃度は
高ければ高いほど、その回収工程での効率が良くなり望
ましいが、エステル交換反応では反応生成物を高濃度で
得ようとすれば、そのために導入しなければならない原
料脂肪酸量が極端に増加し、結局のところ回収工程で多
量に導入した原料脂肪酸を分離する必要が生じ、工業的
には際立った効果を奏しない。例えば、2−不飽和トリ
グリセリドとステアリン酸あるいはパルミチン酸のよう
な飽和脂肪酸の混合物に1,3−位置特異性リパーゼを
作用させて、エステル交換反応を実施し、カカオバター
代用脂を生産する場合、製品であるカカオバター代用脂
の全グリセライド中での濃度を高めようとすると反応系
に多量の飽和脂肪酸を導入しなければならない。しかし
ながら実際問題として、これらの飽和脂肪酸はヘキサン
のような溶剤に対する溶解度が小さく、反応系に多量に
加えるのは困難である。また、反応系に多量の飽和脂肪
酸を導入するためには多量の溶剤を必要とし、結果的に
は反応器の容積効率の低下、大量の溶剤の回収が必要に
なるなど、工業的には不都合が生ずる。
【0009】このような問題を回避するために、無溶媒
系でのエステル交換反応が多く試みられているが、現在
のところ十分な耐熱性を有するリパーゼは得られておら
ず、また反応器全体を高温に保つために多量のエネルギ
ーを必要とするなど、工業的には不都合な点が多い。更
に本発明者らの検討結果によれば、高温でエステル交換
反応を実施すると、グリセライド分子内でのアシル基移
転速度が加速され、生産物収率の低下、製品の品質に対
し悪影響を及ぼすなど、工業的には新たに多くの課題が
生じ、好ましくないことがわかった。したがって、工業
的なエステル交換反応においては反応器の容積効率を低
下させずに目的生産物であるトリグリセライドの濃度を
高める方法の開発がその生産性を高める上で重要な検討
課題であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記のよう
な観点から鋭意検討を重ねた結果、原料油脂および原料
脂肪酸からなる混合物にリパーゼ酵素を作用させ、エス
テル交換反応を実施するに際し、エステル交換反応の進
行に伴い原料脂肪酸を連続的あるいは断続的に反応系に
添加することにより、反応器の容積効率を低下させるこ
となく、全トリグリセライド中の目的トリグリセライド
の濃度を高め得ることを見出し、本発明を完成するに至
った。このような脂肪酸を添加しながらエステル交換反
応を実施し、目的トリグリセライドの生産性を向上させ
る方法は、本発明者らの提案した固定化菌体を用いるよ
うな完全混合型のエステル交換反応プロセスにおいて極
めて効果的である。
【0011】エステル交換反応では、原料脂肪酸が原料
油脂中に取り込まれるため、反応系の脂肪酸組成、油脂
組成は反応の進行に伴い変化する。本発明は、このよう
な反応系の油脂組成、脂肪酸組成の変化に伴って、エス
テル交換反応開始時にはその溶解度が低いため多量、反
応系に導入することができなかった原料脂肪酸の溶解度
が増加する現象を利用し、反応系に原料脂肪酸をエステ
ル交換反応開始時の溶解度以上に導入し、目的生成物で
ある油脂の高濃度化を実現するものである。
【0012】本発明には原料脂肪酸として、自然界に存
在する炭素数2〜30の飽和、不飽和のあらゆる脂肪酸
を用いることが出来るが、本発明の効果が顕著に見出さ
れるのは炭素数12〜30の飽和脂肪酸を原料脂肪酸と
して用いた場合である。具体的には、ラウリン酸、ミリ
スチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン
酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタ
ン酸、メリシン酸などをその代表的なものとして挙げる
ことができる。
【0013】また、本発明には原料油脂類として、通常
の動植物油脂あるいは合成油脂が用いられる。具体的に
は、オリーブ油、パーム油、シア脂、大豆油、綿実油、
サフラワー油、サンフラワー油、ハイオレイックサンフ
ラワー油、ハイオレイックサフラワー油、椿油、山茶花
油、茶油、牛脂、ラード、魚油、サル脂、イリッペ脂、
マンゴ脂、コーカム脂、マウア脂、フルワラ脂、トリオ
レイン、トリパルミチン、トリステアリン、ジオレイ
ン、ジパルミチン、ジステアリン、モノオレイン、モノ
パルミチン、モノステアリンなどである。また、これら
の油脂が通常の分別晶析工程を経たのち得られるこれら
油脂の高融点部、中融点部、低融点部もまたそれぞれ原
料油脂として用いることができる。
【0014】そして、本発明においては、上記の原料油
脂、原料脂肪酸はn−ヘキサン、イソオクタン、アセト
ン、エタノール、メタノール、石油エーテル、酢酸エチ
ルのような有機溶媒に希釈してエステル交換反応に供さ
れる。
【0015】本発明において、エステル交換反応の進行
に伴い原料脂肪酸を反応系に添加する場合の添加方法
は、連続的、断続的のいずれの方法も適用できる。原料
脂肪酸が常温において固体あるいは粉末状である場合、
断続的に供給する場合はそのままの状態で添加できる
が、連続的に供給する場合は融点以上に加熱するか、あ
るいは上記の有機溶媒に溶かすなどして液体状態で添加
した方が操作上便宜である。しかし、この有機溶媒に溶
解して添加する方法は、反応器の容積効率の低下を引き
起こすことから、工業的には粉末状態のまま断続的に、
あるいは融点以上に加熱して液状とし、断続的または連
続的に供給する方が好ましい。
【0016】本発明の方法において、エステル交換反応
を実施する際の反応触媒であるリパーゼの使用形態は、
エステル交換反応に要求される微水環境を実現できるも
のであれば特に限定されるものではない。例えば、リパ
ーゼ酵素を粉末状態で直接、あるいは公知の方法でセラ
イト、活性アルミナ、活性白土、ケイソウ土、活性炭、
パーライト、セルロースパウダー、カオリナイトのよう
な担体に物理的に吸着固定化した固定化リパーゼ、ウレ
タンプレポリマー、カラギーナン、アルギン酸ゲル、光
硬化性樹脂に包括固定化したもの、あるいはグルタルア
ルデヒドなどの架橋剤を用い、リパーゼを架橋固定化し
たものなどが適用される。更には、先に本発明者らが提
案したリパーゼを菌体内に包蔵した乾燥菌体も使用可能
である。乾燥菌体の場合は、乾燥菌体を直接、あるいは
既に報告しているように微生物保持材とともに培養し、
該保持材に培養と同時に固定化した後、乾燥した微生物
保持材固定化乾燥菌体として利用することも可能であ
る。
【0017】本発明の方法では、原料脂肪酸をエステル
交換反応の進行に伴って連続的あるいは断続的に添加す
るため、適用される反応器内は完全混合流れとなるのが
好ましい。上記の吸着固定化リパーゼ、包括固定化リパ
ーゼ、架橋固定化リパーゼを用いる場合、一般的にはプ
ラグフロー流れのカラム反応器が用いられるが、これら
の固定化リパーゼを用いても、例えば攪拌槽内あるいは
カラムを多段化して各段を攪拌するなどして、エステル
交換反応を実施すれば、本発明の方法は適用できる。強
攪拌条件下では固定化担体の破壊が起こり、高価なリパ
ーゼ酵素の回収利用、繰り返し利用が困難となるなどの
不都合が予想されるため、工業的には上記の公知の方法
でセライト、活性アルミナ、活性白土、ケイソウ土、活
性炭、パーライト、セルロースパウダー、カオリナイト
のような担体に物理的に吸着固定化した固定化リパー
ゼ、ウレタンプレポリマー、カラギーナン、アルギン酸
ゲル、光硬化性樹脂に包括固定化したもの、あるいはグ
ルタルアルデヒドなどの架橋剤を用い、リパーゼを架橋
固定化したものなどを完全混合流れ条件下で利用する際
に反応操作条件に留意する必要がある。
【0018】一方、本発明者らが提案した菌体内リパー
ゼを利用する方法、とりわけ微生物保持材固定化菌体を
用いる方法では、該固定化菌体を充填した反応器内を高
速で反応液を循環させたり、循環液量を適当量に設定す
ることにより、固定化微生物を流動させる事ができるの
で、攪拌機などの特別な設備を導入せずとも容易に完全
混合流れを実現でき、本発明の方法を適用するのに極め
て好都合である。更に、微生物保持材固定化菌体の場
合、既に報告しているように固定化操作によって菌体内
リパーゼ活性が著しく増幅されること(特開昭63-14678
2 号公報)、流加培養を行うことによって増幅された活
性が更に増幅されること(特開昭62-18883号公報、特開
平2-49582 号公報)、また、その反応システムではエス
テル交換反応で最も重要な操作因子である反応液中の水
分濃度のコントロールが容易である(特開昭64-63385号
公報、特開平1-309689号公報、特開平1-59078 号公報)
など、リパーゼ酵素が高価である現状において、工業
的、経済的に有利なエステル交換反応システムの構築が
可能であり、極めて好都合である。
【0019】本発明の方法によって高濃度にまで高めら
れた目的生成物(トリグリセライド)は常法に従い、蒸
発によって溶剤を回収し、減圧蒸留、例えば水蒸気蒸留
によって残存する原料脂肪酸および原料油脂よりエステ
ル交換反応の結果遊離してきた脂肪酸を分離した後、溶
剤分別晶析工程を経て、製品として回収される。このよ
うにして得られた脂肪酸混合物(残存原料脂肪酸および
原料油脂よりエステル交換反応の結果、遊離してきた脂
肪酸)あるいは製品として目的生産物を回収した残りの
油脂類は本発明の方法において再びそれぞれ原料油脂、
原料脂肪酸として利用した方が工業的には好ましい。と
りわけ、本発明の方法では反応液中に含まれる飽和脂肪
酸量が従来法に比べて多くなるので、飽和脂肪酸を回収
し、再利用する事が工業的には必要となってくる。した
がって、本発明の方法においては、上記の蒸留して得ら
れた脂肪酸混合物(残存原料脂肪酸および原料油脂より
エステル交換反応の結果、遊離してきた脂肪酸)から原
料油脂よりエステル交換反応の結果、遊離してきた脂肪
酸の中から不飽和脂肪酸を取り除き再利用した方が目的
生産物の収率を高める上で好ましい。このような飽和脂
肪酸と不飽和脂肪酸の混合物から不飽和脂肪酸を分離す
るには公知の方法、例えば、溶剤分別、無溶媒分別、分
子蒸留、ゾーンメルティング、尿素付加法、吸着分離な
どの方法が利用できる。
【0020】また一方では、不飽和脂肪酸を分離せず、
公知の水素添加法により不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変
換して再利用することも可能である。この水素添加法
は、例えば、脂肪酸混合物に適当な触媒を加え、加熱攪
拌しながら水素ガスを通じることによって行われる。こ
の際、温度、圧力、触媒の種類、水素の量などをうまく
選ぶと水素添加反応は迅速に起こり、そのまま進行させ
ると最後には全ての不飽和脂肪酸の2重結合が飽和し
て、完全に水素添加してしまう。このような場合は、水
素添加して得られた飽和脂肪酸を本発明のエステル交換
反応の原料脂肪酸として再利用することもできる。しか
しながら、本発明の方法では、水素添加プロセスに供給
される脂肪酸混合物の大部分は飽和脂肪酸であり、水素
添加しなければならない不飽和脂肪酸の含有量は少ない
にもかかわらず、これらを同時に水素添加反応に供しな
ければならないため反応器容量がいたずらに大きくな
り、工業的には好ましくない。むしろ、上記の公知の方
法、例えば溶剤分別、無溶媒分別、分子蒸留、ゾーンメ
ルティング、尿素付加法、吸着分離などの方法で飽和脂
肪酸と不飽和脂肪酸をまず分離した後、不飽和脂肪酸の
みを水素添加した方が工業的には効率的である。
【0021】本発明者らの経験によれば、水素添加反応
においては、不飽和脂肪酸含有量が少なくなればなるほ
どその反応速度が減少するため、処理時間が膨大とな
り、工業的には完全に飽和脂肪酸にまで水添硬化するの
はむずかしい。水素添加が完全に完了していない時点で
得られた脂肪酸混合物を本発明の方法に限らずエステル
交換反応の原料脂肪酸として再利用した場合、目的生産
物の収率低下のみならず、目的生産物の品質をも低下さ
せるというような問題を引き起こすことになる。このよ
うな問題を引き起こす原因物質は、不飽和脂肪酸を水素
添加する際に生ずる異性化した不飽和脂肪酸であり、例
えばオレイン酸を水素添加する際に生ずる幾何異性体で
あるエライジン酸、オレイン酸の中央にある2重結合が
他の位置に移動した位置異性体などである。本発明者ら
の検討結果によれば、例えばエステル交換反応でカカオ
バター代用脂を生産する場合に、これらの異性化した不
飽和脂肪酸を含む脂肪酸混合物を原料脂肪酸として用い
ると、異性化した不飽和脂肪酸が目的生産物であるカカ
オバター代用脂内に取り込まれ、シャープな溶融性が損
なわれるなど、カカオバター代用脂の製品価値を低下さ
せる。本発明者らの経験によれば、このような現象は原
料脂肪酸中に異性化した脂肪酸がわずかに数%程度存在
すれば発現し、工業的には水素添加法により不飽和脂肪
酸を飽和脂肪酸に変換して本発明の方法に原料脂肪酸と
して再利用する場合は、異性化反応が起こらないように
その反応条件に留意しなければならない。上記の方法の
うち、異性化反応を抑制できる方法、例えば溶剤分別、
無溶媒分別、ゾーンメルティング、尿素付加法、吸着分
離などが工業的にはむしろ好ましい。
【0022】
【実施例】次に、本発明を実施例を用いて説明するが、
もとより本発明はこれらの実施例により何ら限定される
ものではない。
【0023】尚、以下の実施例において、微生物保持材
に固定化された菌体は、培養液より分離後、水道水で2
回洗浄し、次いでアセトンで2回洗浄した後、常温で4
8時間真空乾燥し、固定化乾燥菌体を調製した。
【0024】また、リパーゼのエステル交換活性につい
ては未だ一般的な測定法が確立されていないので、本発
明においてはオリーブオイル:ステアリン酸メチル:ヘ
キサン=1:4:2.5(重量比)からなる混合物を用
い、リパーゼ酵素剤を適量加えて40℃で一定時間反応
せしめ、生成したオレイン酸メチル量より、1分間当た
り1μmolのオレイン酸メチルを生成する酵素量を1
ユニット(1U)とした。
【0025】オレイン酸メチルおよびトリグリセライド
の組成は公知の方法によりそれぞれガスクロマトグラフ
ィー、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0026】固定化酵素あるいは乾燥菌体内に含まれる
水分量は公知のカールフィッシャー法により測定した。
【0027】(実施例1)市販のRhizopus delemarのリ
パーゼ(生化学工業(製))1部とケイソウ土2部を混
合したのち、冷水を適当量攪拌しながら散布して粒状と
なし、これを常温で真空乾燥し、水分2.3%のケイソ
ウ土固定化リパーゼを得た。同様の操作を市販のRhizop
us niveus のリパーゼ(天野製薬(製))とセライト、
Rhizopusjaponicus のリパーゼ(大阪研究所(製))
とパーライト、Aspergillus nigarのリパーゼ(天野製
薬(製))とカオリナイトに対して実施し、それぞれ水
分3.3%のセライト固定化リパーゼ、水分2.8%の
パーライト固定化リパーゼ、水分4.1%のカオリナイ
ト固定化リパーゼを得た。これらの固定化リパーゼ酵素
のエステル交換活性は表1に示すとおりであった。
【0028】
【表1】
【0029】これらの固定化リパーゼ500mgとオリ
ーブオイル:パルミチン酸:ヘキサン=1:4:10
(重量比)からなる反応混合物15gを50mlの容器
に加え、マグネチィックスタラーで攪拌しながら、40
℃で24時間エステル交換反応を行った。反応開始後、
6時間、12時間、18時間目にそれぞれ0.25gず
つパルミチン酸を粉末状態で加えて溶解し、エステル交
換反応を継続した。表2に各固定化リパーゼについてパ
ルミチン酸の添加回数をそれぞれ0回、1回、2回、3
回とした場合の24時間後のトリグリセライド中の反応
生成物である1,3−ジパルミトイル−2−オレオイル
グリセロール(POP)の生成量を示した。
【0030】
【表2】
【0031】パルミチン酸はヘキサンに溶けにくく、反
応開始時の反応液組成としては、オリーブオイル:パル
ミチン酸:ヘキサン=1:4:10(重量比)以上溶解
するのは困難であるが、反応途中に逐次、添加すること
によりトータル量を増加させることが出来、目的生産物
をより高濃度とすることが出来た。
【0032】(実施例2)特開昭63-146782 号公報の実
施例1に記載の方法と同様にして、Rhizopuschinensis
IFO 4768を1辺6mmのブロック状ポリウレタン微生物
保持材(ブリジストン(製)、商品名:エバーライトス
コットHR−40)に固定化し、固定化乾燥菌体を調製
した(エステル交換活性:15U/g−担体)。この固
定化乾燥菌体および市販の固定化リパーゼ(ノボ社
(製)、商品名:リポザイム;エステル交換活性:20
U/g−担体)を用いて、トリオレイン(和光純薬
(製))とベヘニン酸のエステル交換反応を実施した。
固定化乾燥菌体およびリポザイム300mgにトリオレ
イン:ベヘニン酸:ヘキサン=1:2:20(重量比)
の組成をもつ反応液を15g加え、本願の実施例1と同
様の要領で40℃で反応させた。途中、6時間、12時
間、18時間目にそれぞれ0.15gずつベヘニン酸を
添加した。表3に結果を示した。
【0033】
【表3】
【0034】表3より、ヘキサンに対する溶解度が極端
に低いベヘニン酸に対しても、本発明の方法は反応液の
容積効率を低下させず、目的生産物の濃度を高めるのに
効果的であることがわかる。この反応系では、反応開始
時の反応液組成としてトリオレイン:ベヘニン酸:ヘキ
サン=1:2:20(重量比)以上にベヘニン酸を溶解
するのは極めて困難であった。
【0035】(実施例3)リパーゼ生産菌Rhizopus niv
eus IFO 4759を特開平2-49582 号公報の第1図に示され
た気泡塔(Circulating bed fermentor )を用いて、1
辺10mmのブロック状セルロース微生物保持材(酒伊
エネックス(株)、商品名:SIC−CS)とともに培
養し、固定化菌体を調製した。ただし、気泡塔の通気口
としては特開平2-49582 号公報の第2図に示された多孔
板の代わりに焼結金属板(日本精線(株)製、商品名:
ナスロンフィルターメディアファインポア NF-06)を使
用した。培養方法は、特開平2-49582 号公報の実施例2
に記載の方法と同様にして行い、特開平2-49582 号公報
の参考例1に示された菌体濃度の予測実験式に基づいて
比基質(肉エキス)供給速度を0.06(g−肉エキ
ス)(g−cell)-1(h)-1に制御して培養した。
このようにして得られたセルロース微生物保持材固定化
乾燥菌体は19U/g−担体のエステル交換活性を有し
ていた。このセルロース固定化菌体を、特開平1-309689
号公報の第5図に示されたエステル交換反応装置内に充
填し、ハイオレイックサンフラワー油:ステアリン酸:
ヘキサン=1:3:12(重量比)の組成をもつ反応液
を仕込み、カカオバター代用脂の生産を行った。反応液
中の水分濃度は特開昭64-63385号公報、ならびに特開平
1-309689号公報に開示されている方法で反応全般を通じ
て、100ppmにコントロールした。RUN−1では
ステアリン酸を途中追加せず18時間回分反応を行い、
RUN−2ではRUN−1と同様の反応条件下、初期反
応液中に含まれるステアリン酸の30%相当量のステア
リン酸を溶融状態で反応開始後3時間目から15時間目
まで一定流量で連続的に反応系に添加し、18時間回分
反応を行った。表4にRUN−1、RUN−2の各反応
時間の目的生成物であるカカオバター代用脂(SOS:
1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロー
ル)の濃度変化を比較した。
【0036】
【表4】
【0037】本実施例で使用したようなエステル交換反
応バイオリアクターでは、原料脂肪酸を溶融状態で連続
的に反応の進行に伴い添加して行くことによって、煩雑
な操作を要することなく、バイオリアクターの容積効率
はそのままで生産性を10数%上昇させることが出来
た。
【0038】(実施例4)実施例3におけるRUN−
1、RUN−2の反応終了後のそれぞれの反応混合物よ
り、常法に従い溶剤であるヘキサンを蒸発させて回収し
た。更に常法の減圧蒸留で脂肪酸と脂質であるトリグリ
セライドを分離した。分離されたトリグリセライドを更
に常法の分別晶析で高融点部、中融点部、低融点部に分
離し、製品であるカカオバター代用脂を中融点部に回収
した。この分別晶析の際の歩留り(収率)はカカオバタ
ー代用脂の濃度が高められたRUN−2の方が10数%
高く、本発明の方法はエステル交換反応工程での生産性
が上昇するばかりでなく、晶析などの後処理工程におけ
る回収率にも効果を奏した。
【0039】次に、上記の回収された脂肪酸を以下に示
す2種類の処理にかけ、エステル交換反応の結果、原料
油脂から遊離した不飽和脂肪酸を取り除いた。これらの
処理を施した脂肪酸を再び原料脂肪酸とし、上記のトリ
グリセライドの分別晶析で得られた低融点部を再び原料
油脂として、実施例3と同じバイオリアクターを用い、
同様の手順でカカオバター代用脂生産のためのエステル
交換反応を実施した。
【0040】(処理1)回収した脂肪酸を、再びヘキサ
ンに溶解し、晶析温度40℃、30℃、25℃で3段晶
析を行い、ステアリン酸を含む飽和脂肪酸を回収した。
沈澱したケーキ中に巻き込まれる不飽和脂肪酸を除くた
め、ろ過の際、ケーキをヘキサンで数回洗浄した。
【0041】(処理2)攪拌槽(実容量:10L)型の
水添装置で、ニッケル金属触媒を用い、温度160〜1
80℃で圧力3Kg/cm2が維持されるように水素を加え、
1時間水素添加反応を実施した。
【0042】初期反応液組成を中融点部:回収脂肪酸:
ヘキサン=1:2:8(重量比)とし、実施例3と同様
に処理1を施した脂肪酸を反応の進行に伴い、添加した
場合と添加しない場合の結果を表5、処理2を施した脂
肪酸を反応の進行に伴い、添加した場合としない場合の
結果を表6にそれぞれ示した。
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】実施例3で得られたカカオバター代用脂、
実施例4の処理1、処理2を施した脂肪酸を用いて得ら
れたカカオバター代用脂の品質を比較したところ、実施
例3、実施例4の処理1のものは従来品(シア脂より分
別晶析したもの)と比べ特に遜色はなく、むしろ従来品
よりもシャープな溶融性を示し良好であった。一方、実
施例4の処理2のものは、溶融性のシャープさが低下す
るなど好ましくない挙動を示した。
【0046】
【発明の効果】本発明の方法によれば、カカオバター代
用脂の生産のようにヘキサンなどの有機溶媒に対し溶解
度が低い飽和脂肪酸を原料脂肪酸として使用するエステ
ル交換反応において、反応器の容積効率を低下させるこ
となく目的生産物の高濃度化を実現し、その生産性を向
上させることができる。また、このような目的生産物の
高濃度化は、その後処理工程での歩留り(収率)の向上
につながり、工業的に極めて好都合である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料油脂および原料脂肪酸からなる混合
    物にリパーゼ酵素を作用させ、エステル交換を実施する
    に際し、エステル交換反応の進行に伴い原料脂肪酸を連
    続的あるいは断続的に反応系に添加することを特徴とす
    る脂質の加工法。
  2. 【請求項2】 原料脂肪酸が炭素数12〜30の範囲内
    にある飽和脂肪酸である請求項1記載の脂質の加工法。
  3. 【請求項3】 エステル交換した反応混合物よりトリグ
    リセライドである油脂と脂肪酸を分離し、該脂肪酸から
    エステル交換反応により原料油脂より放出された不飽和
    脂肪酸を更に除去したのち得られる飽和脂肪酸を原料脂
    肪酸として再利用することを特徴とする請求項1または
    請求項2記載の脂質の加工法。
JP4245505A 1992-08-20 1992-08-20 脂質の加工法 Expired - Fee Related JPH0736B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4245505A JPH0736B2 (ja) 1992-08-20 1992-08-20 脂質の加工法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4245505A JPH0736B2 (ja) 1992-08-20 1992-08-20 脂質の加工法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0662876A JPH0662876A (ja) 1994-03-08
JPH0736B2 true JPH0736B2 (ja) 1995-01-11

Family

ID=17134674

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4245505A Expired - Fee Related JPH0736B2 (ja) 1992-08-20 1992-08-20 脂質の加工法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0736B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1400582B1 (en) 2001-06-26 2008-01-16 Fuji Oil Company, Ltd. Process for producing processed glyceride fat
KR101314682B1 (ko) * 2010-04-22 2013-10-07 씨제이제일제당 (주) 카카오 버터 유사 하드버터의 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0662876A (ja) 1994-03-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA1210409A (en) Rearrangement process
EP0035883B1 (en) Method for enzymatic interesterification of lipid and enzyme used therein
Schmid et al. Highly selective synthesis of 1, 3‐oleoyl‐2‐palmitoylglycerol by lipase catalysis
JPH0439995B2 (ja)
JPH0665311B2 (ja) ジグリセリドの製造法
JP2005287510A (ja) 不飽和脂肪酸のトリグリセリドを酵素合成するための方法
JPS6344892A (ja) 油脂類のエステル交換反応方法
JP2719667B2 (ja) エステル交換脂の製造法
Patel et al. Lipase-catalyzed biochemical reactions in novel media: A review
EP0666925B1 (en) Enzymic triglyceride conversion
JPH0736B2 (ja) 脂質の加工法
Kurashige et al. Modification of fats and oils by lipases
JPH0543354B2 (ja)
JP3844671B2 (ja) 油脂の加水分解方法
US8252560B2 (en) Process for producing useful substance with immobilized enzyme
US8173403B2 (en) Process for producing useful substance using immobilized enzyme
JP3509124B2 (ja) 固定化リパーゼを用いた油脂類のエステル交換方法
JP3510422B2 (ja) グリセリン脂肪酸エステルの製造法
KR101150433B1 (ko) 유지조성물의 제조방법
JP6859212B2 (ja) ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法
JPS6222597A (ja) 糖グリセロ−ルおよび脂肪酸の製造法
JPH04258291A (ja) 固定化酵素およびその製造方法
JPH01174384A (ja) 脂質分解酵素の固定化方法
US9896703B2 (en) Method for producing transesterified fat and/or oil
JPH0638753A (ja) 固定化リパーゼ、その製造方法及び該リパーゼを用いた油脂類のエステル交換方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees