JPH0736483B2 - 平面アンテナ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［技術分野］ 本発明は、マイクロ波の送受信機器に適用される平面ア
ンテナに関するものである。

［背景技術］ 従来よりこの種の平面アンテナとしては、地導体層に誘
電体層を介してストリップ導体を配置したマイクロスト
リップアンテナが知られており、中でも、ストリップ導
体としてパッチ型の共振素子を複数備えたものや、クラ
ンク状に曲折したストリップラインを複数本備えたもの
等が考えられている。しかしながら、このような平面ア
ンテナでは、使用可能な周波数帯域が狭いという問題が
あり、まだ銅張り基板のエッチングによりストリップ導
体を形成しているから、インピーダンスの管理のために
エッチングの精度が重要であって、製造に困難な点があ
る。また、給電線の損失が大きいものであるから、アン
テナ効率が低いという問題もある。

このような欠点を解消するものとして、地導体層と給電
回路層と放射回路層との３層からなる、いわゆるトリプ
レート構造のアンテナが考案されている。このアンテナ
は、給電回路層と放射回路層とが電磁結合して動作する
ものであるが、３層構造であるから、各層間の間隔を保
った状態で各層を固定する必要があり、この固定作業が
面倒であるとともに、ねじ等の固定部材の材料コストが
高いという問題があった。

［発明の目的］ 本発明は上述の点に鑑みて為されたものであって、その
目的とするところは、各層間の位置固定を容易にし、か
つ材料コストを低減した平面アンテナを提供することに
ある。

［発明の開示］ （構成） 本発明に係る平面アンテナは、地導体層の表面に誘電体
材料の発泡体よりなる第１のスペーサを介して給電回路
層が積層されるとともに、給電回路層の表面に誘電体材
料の発泡体よりなる第２のスペーサを介して放射回路層
が積層されることにより、地導体層と放射回路層とが表
裏に露出する積層体が形成され、各層間の位置固定がな
されるように積層体の全体が合成樹脂の１枚のシート材
により包み込まれて成るものであり、地導体層と給電回
路層と放射回路層とをスペーサを介して積層しているこ
とにより、各層間の間隔を一定にできるようにし、また
この積層体全体を合成樹脂のシート材で包み込むことに
より、簡単かつ安価な方法で各層間を固定できるように
したものである。

（実施例１） 第１図に示すように、地導体層１の表面に第１のスペー
サ２を介して給電回路層３が積層され、給電回路層３の
表面に第２のスペーサ４を介して放射回路層５が積層さ
れる。給電回路層３および放射回路層５は、それぞれ可
撓性銅張り基板をエッチングして回路パターンを形成し
たものであり、放射回路層５の回路パターンとしては、
たとえば、適宜大きさのパッチ素子の周囲に環状スロッ
トを形成したアンテナ素子を多数個配列したものが用い
られる。スペーサ2,4は、それぞれ発泡ウレタン、発泡
ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡アクリル、発泡
塩化ビニルのいずれかを用いてボードとして形成されて
おり、均質な発泡体とするほか、格子状、ハニカム状な
どとしてもよい。格子状、ハニカム状の場合、給電損失
がさらに低減される結果、効率が向上し、また、スペー
サ2,4の誘電率が小さくなるから、周波数帯域を広くと
ることができるものである。このようにスペーサ2,4を
発泡体で形成していることにより、スペーサ2,4が適宜
剛性を有しているから、地導体層１と給電回路層３と放
射回路層５との間隔を略一定に保つことができるのであ
る。このようにして形成された積層体は、全体として１
枚のシート材６で包み込まれる。シート材６はアクリル
樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレ
ン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS
樹脂のいぜれか、または、これらいずれかの樹脂の繊維
との複合材料により形成されている。なかでも、耐候性
に優れたアクリル樹脂が好ましく、ポリエステル繊維で
補強すると一層よいものである。また、電波透過特性に
影響を与えないように、厚みは1mm以下とするのが望ま
しい。以上のようにして、地導体層１と給電回路層３と
放射回路層５と一対のスペーサ2,4との積層体を合成樹
脂のシート材６で包むことにより、各層間の位置固定を
行なっているから、各層間の固定作業が簡略化されると
ともに、ねじ等の固定具が不要となって材料コストが低
減できるのである。

以上のように、スペーサ2,4が発泡体であることから、
気泡を含まない場合に比較して給電線の損失が少なくな
り、高効率のアンテナが得られるのである。また、給電
回路層３と放射回路層５とがスペーサ４を介して離間し
ているから、電磁結合によって動作するのであり、その
結果、周波数帯域を非常に広くとることができるという
利点を有する。さらに、積層体全体が合成樹脂のシート
材６で包まれているから、シート材６がレドームとして
作用し、アンテナの耐候性が大幅に向上するものであ
る。

具体例として、給電回路層３と放射回路層５とをそれぞ
れ可撓性を有したポリエステル基材の片面銅張り基板を
エッチングして回路パターンを形成したものとする。放
射回路層５の回路パターンは、環状スロットを有し、島
部分が長方形のパッチ素子となった形状のアンテナ素子
を多数配列した形状に形成される。一方、2mm厚のアル
ミニウム板を地導体層１とし、地導体層１の上に2mm厚
の発泡ポリエチレンのシートをスペーサ２として載置す
る。さらに、この上に上記給電回路層３を積層した後、
上記発泡ポリエチレンのシートをスペーサ４として積層
し、ついで放射回路層５を積層する。このようにして形
成された積層体を、ポリエステル繊維複合塩化ビニルよ
りなるテント用シートでラッピングする。以上のように
して形成された平面アンテナは、300mm×300mmの大きさ
で効率が63％となり、最大利得から1dB下がった点での
周波数帯域として700MHzが得られた。

さらに、スペーサ2,4として、上記発泡ポリエチレンシ
ートを15mmピッチで10mm×10mmの大きさの孔を打ち抜い
たものを用いたところ、効率が約５％向上した。

また、テント用シートに代えて、100μｍ厚のアクリル
樹脂シートを用いたところ、同等の性能が得られた。

（実施例２） 本実施例では、第２図に示すように、地導体層１の表面
に凹所８が形成されており、この凹所８内にスペーサ2,
4と給電回路層３と放射回路層５とを納装したものであ
り、放射回路層５の表面が地導体装１の表面と略面一と
なるように設定されている。この構成では、各層を凹所
８内に装着することにより、互いの位置ずれが防止で
き、凹所８内に各層を順次装着すればよいから、製造が
容易になるという利点を有するのである。

本実施例の具体例としては、実施例１と同様の部材を用
い、地導体層１となるアルミニウム板の周部を立ち上げ
て箱状とし、この箱内にスペーサ2,4、給電回路層３、
放射回路層５を納装して平面アンテナを形成した。以上
の構成により、屋外に２年間放置しても特性の劣化がな
いことが確認された。

（実施例３） 本実施例では、、第３図に示すように、実施例１の構成
の放射回路層５の表面にさらに第３のスペーサ９を積層
した状態でシート材６で包むようにしたものである。こ
のスペーサ９は、他のスペーサ2,4と同様の材料で形成
されている。このように、シート材６と放射回路層５と
の間に発泡体よりなるスペーサ９を介装していることに
より、スペーサ９の弾力性により、シート材６から放射
回路層５に対して加わる圧力が均等に分散することにな
り、その結果、地導体層１、給電回路層３、放射回路層
５の各層間の間隔が一定となり、アンテナの特性が安定
するのである。また、放射回路層５の表面に対してシー
ト材６がスペーサ９の分だけ離間しているから、放射回
路層５における放射素子の波長短縮率が大きくなり、そ
れだけ周波数帯域を広げることができるのである。ここ
で、放射回路層５の表面側にスペーサ９を配設している
が、スペーサ９が発泡体であるから、アンテナの利得損
失が無視できる程度のものとなる。

本実施例の具体例としては、実施例１と同様の構成とし
た積層体を形成し、その積層体の放射回路層５の表面に
10mm厚の発泡ウレタンボードを積層した積層体を形成
し、この積層体をシート材６でラッピングして平面アン
テナを形成した。この平面アンテナについては、実施例
１と同等の効率が得られ、周波数帯域は最大効率から1d
B下がったところで、750MHzとなった。

（実施例４） 本実施例では、第４図に示すように、地導体層１の表面
に凹所８を形成して、凹所８内に、給電回路層３、放射
回路層５、スペーサ2,4,9を納装し、スペーサ９の表面
と地導体装１の表面とを略面一にしたものである。した
がって、実施例２と同様に、位置決めおよび組立が容易
になるものである。

［発明の効果］ 本発明は上述のように、地導体層の表面に誘電体材料の
発泡体よりなる第１のスペーサを介して給電回路層が積
層されるとともに、給電回路層の表面に誘電体材料の発
泡体よりなる第２のスペーサを介して放射回路層が積層
されることにより、地導体層と放射回路層とが表裏に露
出する積層体が形成され、各層間の位置固定がなされる
ように積層体の全体が合成樹脂の１枚のシート材により
包み込まれて成るものであり、地導体層と給電回路層と
放射回路層とをスペーサを介して積層しているので、各
層間の間隔を一定にできるという利点を有し、また、こ
の積層体全体を合成樹脂の１枚のシート材により包み込
んでいるから、従来のように固定具を用いる必要がな
く、簡単かつ安価な方法で各層間を固定できるという利
点を有する。すなわち、シート材は積層体を包み込んで
天候変化や埃などから積層体を保護する機能と、ビスや
接着剤をほとんど用いることなく誘電体のスペーサを含
めて多層に積層された積層体の層間の位置固定を行なう
機能とを有し、箱状のレドームに積層体を収納する場合
に比較すれば、材料コストが少なく、しかもビスや接着
剤を用いないことで組立工数も少なくなるという利点が
ある。しかも、シート材で積層体を包むだけであるから
金型も不要である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例１を示す断面図、第２図は本発
明の実施例２を示す断面図、第３図は本発明の実施例３
を示す断面図、第４図は本発明の実施例４を示す断面図
である。 １は地導体層、２はスペーサ、３は給電回路層、４はス
ペーサ、５は放射回路層、６はシート材、８は凹所、９
はスペーサである。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】地導体層の表面に誘電体材料の発泡体より
   なる第１のスペーサを介して給電回路層が積層されると
   ともに、給電回路層の表面に誘電体材料の発泡体よりな
   る第２のスペーサを介して放射回路層が積層されること
   により、地導体層と放射回路層とが表裏に露出する積層
   体が形成され、各層間の位置固定がなされるように積層
   体の全体が合成樹脂の１枚のシート材により包み込まれ
   て成ることを特徴とする平面アンテナ。
2. 【請求項２】地導体層は表面側の中央部に凹所が形成さ
   れ、凹所の底面に第１のスペーサを介して給電回路層が
   積層され、給電回路層の表面に第２のスペーサを介して
   放射回路層が積層され、給電回路層と放射回路層と上記
   両スペーサとが凹所内に納装され、地導体層の表面と放
   射回路層の表面とが略面一に配設されて成ることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の平面アンテナ。
3. 【請求項３】放射回路層の表面とシート材との間に誘電
   体材料の発泡体よりなる第３のスペーサが積層されて成
   ることを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の平面ア
   ンテナ。
4. 【請求項４】地導体層は表面側の中央部に凹所が形成さ
   れ、凹所の底面に第１のスペーサを介して給電回路層が
   積層され、給電回路層の表面に第２のスペーサを介して
   放射回路層が積層され、放射回路層の表面に第３スペー
   サが積層され、給電回路層と放射回路層と上記３個のス
   ペーサとが凹所内に納装され、放射回路層の表面側に配
   設された第３のスペーサの表面と地導体層の表面とが略
   面一に配設されて成ることを特徴とする特許請求の範囲
   第１項記載の平面アンテナ。
5. 【請求項５】上記シート材は、アクリル樹脂、ポリエス
   テル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプ
   ロピレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂のいずれ
   か、または、上記いずれかの樹脂と繊維との複合材料よ
   りなることを特徴とする特許請求の範囲第１項、第２
   項、第３項、第４項のいずれかに記載の平面アンテナ。
6. 【請求項６】上記スペーサは、発泡ウレタン、発泡ポリ
   エチレン、発泡ポリスチレン、発泡アクリル、発泡塩化
   ビニルのいずれかよりなり、均質形状、格子状、ハニカ
   ム状のいずれかのボードとして形成されて成ることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項、第２項、第３項、第４
   項のいずれかに記載の平面アンテナ。