JPH07327505A - 育苗箱 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 根の成育性に優れ、洗浄性が良好であるとと
もに周壁付近の水保有性に優れた育苗箱を提供する。 【構成】 略矩形の底板部２と前記底板部２の外縁部に
垂在する周壁部３とからなる。前記底板部２に逆裁頭角
錐形の凹部４を多数連設されている。前記凹部４の上縁
の交点たる柱状部６が、少なくとも前記周壁に最も近接
する４辺１列分に形成された無孔部６Ａと、該無孔部６
Ａ以外の前記交点に上下方向に貫通する孔を形成した有
孔部６Ｂとからなる。 【効果】 籾の成育性が良好で根がらみ等が生じず、し
かも周壁付近の水保有性が良好である。また、田植が終
了して洗浄する際に前記凹部４に土などが残存したりし
ない。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は育苗箱に関し、特に水保
有性及び根の成育性に優れるとともに洗浄性が良好な育
苗箱に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の育苗箱としては、略矩形
の底板部と前記底板部の外縁部に垂在する周壁部とから
なり、前記底板部に逆角錐形の凹部を多数連設し、これ
ら凹部の上縁の交わる交点に孔を穿設したものが知られ
ている。この育苗箱は、前記各凹部内に籾を散在させ、
上部から適当な厚さに土を敷設して水を施すことにより
育苗すると、前記籾から発芽した根が前記孔部から外部
の土壌へと進出し、また芽が所定の大きさに成長したら
前記育苗箱ごと田植機に設置して、田植を行うものであ
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする問題点】前記従来の育苗箱に
おいては、田植が終了して翌年の田植まで保管する際に
育苗箱を洗浄しても、育苗ポットに相当する凹部が逆角
錐形であるので、該逆角錐形の頂部に付着した土が取れ
にくいという問題点がある。また、前記従来の育苗箱
は、凹部が逆角錐形であり、籾はこの錐部の頂点に位置
することになるので、根の成育方向が不均一となりやす
く、このため根がらみなどを生じることがあり、場合に
よっては田植時に苗の取りだしが困難になるという問題
点もある。

【０００４】本発明は、このような問題点を解決しよう
とするもので、根の成育性に優れ、洗浄性が良好な育苗
箱を提供することを目的とする。また本発明は水保有性
に優れた育苗箱を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１の育苗
箱は、略矩形の底板部と前記底板部の外縁部に垂在する
周壁部とからなり、前記底板部には逆裁頭角錐形の凹部
が多数連設されており、前記凹部の上縁の交点が少なく
とも前記周壁に最も近接する４辺１列分に形成された無
孔部と、該無孔部以外の前記交点に上下方向に貫通する
孔を形成した有孔部とからなるものである。

【０００６】

【作用】前記請求項１の構成では、育苗ポットたる凹部
が逆裁頭角錐形であるので、洗浄時に凹部に土などを素
早く洗いながすことができる。また、前記凹部に撒かれ
た籾から発芽した根は逆裁頭角錐形の凹部の角部により
形成される谷線にある程度沿うような傾向をもって成長
するので根の成育性が良好であり、また根がらみ等を生
じることがない。さらに本発明者らは、前記凹部を逆裁
頭角錐形とした育苗箱について種々研究した結果、凹部
を逆裁頭角錐形にすると従来の逆角錐形の凹部の場合よ
りも、凹部が浅くなる分だけ水保有性が低下し、特に上
部からシャワー状等に水を散水した場合、前記周壁によ
り水が供給されにくいことから、周壁に近接する凹部の
苗の成育が遅延する傾向にあることを見出だした。さら
に、周壁部付近の凹部の水保有性を低下させない手段に
ついて検討した結果、凹部の上縁の交わる交点に形成さ
れる根出用の孔部は排水孔としても機能していることを
知見した。そこで前記凹部の上縁の交わる交点に形成さ
れる孔部を少なくとも周壁に最も近接する４辺１列に形
成しないことにより、この箇所の凹部の水保有性を良好
に維持することができる。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の第１実施例について図１乃至
図４に基いて詳細に説明する。育苗箱１は、略矩形の底
板部２と前記底板部の外縁部に垂在する周壁部３とから
なるトレー形状を有し、前記周壁部３は上端部で外側に
折り返され、手などで把持しやすくなっている。前記底
板部２には概ね正方形の底面部41及び開口部42を有する
逆裁頭角錐形の凹部４が多数、具体的には23行×46列連
設されている。前記凹部４の上縁である稜線５の交点に
は、前記凹部４の稜線５よりわずかに突出した円形の柱
状部６が形成されており、前記稜線５の交点たる柱状部
６は、育苗箱１の周壁３付近の４辺１列分は孔が形成さ
れていない無孔部６Ａとなっており、また前記無孔部６
Ａ以外の柱状部６には上下方向に孔７が形成されてお
り、これらが有孔部６Ｂとなっている。前記逆裁頭角錐
形の凹部４の開口部42の一辺の長さＬ₁ は、前記凹部４
が育苗ポットとして機能することを考慮すると10〜15mm
であるのが好ましく、特に約12mmであるのが好ましい。
また底面部41の一辺の長さＬ₂ は２〜３mm、特に約2.5
mmであるのが好ましい。前記底面部41の一辺の長さＬ₂
が２mm未満では、洗浄時に底面部41に付着した土を素早
く洗い流すのが困難となるばかりか、籾８から発芽した
根81が逆裁頭角錐形の凹部４の角部により形成される谷
線Ｖに沿って成長しにくくなるため好ましくない。一方
底面部41の一辺の長さＬ₂ が３mmを越えると籾８が底面
部41内で偏在しやすくなるため好ましくない。また、凹
部４の深さＨは３〜６mm、特に約４mmであるのが好まし
い。前記凹部４の深さＨが３mm未満では十分な水保有性
を付与するのが困難となり、一方６mmを越えると苗の成
育期間が長期化するため好ましくない。なお、凹部４が
従来のように逆角錐の場合には、この凹部４の深さＨは
約７mmであり本実施例ではわずかに浅くなっている。

【０００８】前記構成につきその作用について説明す
る。まず育苗箱１の各凹部４内に籾８を１粒もしくは数
粒を散在させ、上部から所定の厚さにまで土を敷設し、
水を施すことにより育苗する。前記籾８から発芽した根
81は、凹部４から前記柱状部６方向に成長するが、本実
施例においては、前記凹部４が逆裁頭角錐形であるの
で、根81は逆裁頭角錐形の凹部４の角部により形成され
る谷線Ｖに沿うような傾向をもって分岐してほぼ均等に
成長するので成育性が良好であり、しかも根がらみ等が
生じない。また、育苗箱１の周壁３付近の４辺１列分の
柱状部６を無孔部６Ａとしているので、凹部４を逆裁頭
角錐形とすることにより水保有性が低下しがちな周壁３
付近の凹部４の水保有性も良好なものとなっている。特
に本実施例においては、前記凹部４の稜線５の交わる交
点に前記凹部４の上縁の稜線５よりわずかに突出して柱
状部６が形成されているので、周壁部３の凹部４のみな
らず育苗箱１全体の凹部４の水保有性も良好である。こ
のようにして散水し所定の期間が経過して、苗が所定の
大きさにまで成長したら、前記育苗箱１ごと田植機に設
置して、田植を行うことができる。さらに、田植が終了
したならば、使用した育苗箱を洗浄する。洗浄は例えば
高圧水を育苗箱１にむけて噴射することにより行うこと
ができる。この際、前記実施例においては凹部４が逆裁
頭角錐形であるので凹部４の底面部41に付着した土など
を容易に洗い流すことができ、育苗箱１を衛生的に保管
することができる。

【０００９】以上詳述したとおり前記実施例による育苗
箱１は、略矩形の底板部２と前記底板部２の外縁部に垂
在する周壁部３とからなり、前記底板部２に逆裁頭角錐
形の凹部４を多数連設し、これら凹部４の稜線５の交点
たる柱状部６が前記周壁部３に最も近接する４辺１列分
に形成された無孔部６Ａと、該無孔部６Ａ以外の柱状部
６を上下方向に貫通する孔７を形成した有孔部６Ｂとか
らなるので、水保有性が低下しやすい周壁３付近の凹部
４の水保有性が特に良好なものとなっている。また、田
植が終了して洗浄する際に前記凹部４に土などが残存し
たりしないため衛生的である。しかも、前記柱状部６
が、前記凹部４の稜線５よりもわずかに突出して形成さ
れているので育苗箱全体の水保有性も良好なものとなっ
ている。

【００１０】次に本発明の第２実施例について図５に基
づいて詳細に説明する。第２実施例の育苗箱１は、無孔
部６Ａを周壁３付近の４辺２列に形成した以外、前記第
２実施例と同様である。すなわち、無孔部６Ａは前述し
た第１実施例のように周壁３付近の４辺１列分である必
要はなく、育苗箱１の大きさ等に応じて適宜変更するこ
とができる。なお、場合によっては周壁３付近の４辺の
３列、４列分の柱状部６を無孔部６Ａとしてもよい。さ
らには長辺側の周壁３付近の２列と、短辺側の周壁３付
近の３列の柱状部６を無孔部６Ａとするなど種々の組合
わせてもよい。ただし、育苗箱１全体の柱状部５におけ
る無孔部６の割合が多くなり過ぎると、こんどは逆に水
はけが悪くなり過ぎるため、例えば本実施例のように23
行×46列に凹部４を連設した場合には無孔部６を４列以
下、特に１列又は２列とするのが好ましい。

【００１１】以上本発明の育苗箱について添付図面を参
照して説明してきたが、本発明はこれに限定されず本発
明の要旨の範囲で適宜変更可能である。例えば、育苗箱
１の下面の形状については、特に制限はなく、射出成型
性や、金型形状等に応じて適宜設計することができる。
また、周壁部３や下面側には、必要に応じてリブなどを
適宜形成することができる。さらには、前記育苗箱１の
肉厚等も所望とする機械的強度に応じて適宜変更可能で
あることはいうまでもない。なお、本明細書において逆
裁頭角錐形の凹部４とは、基本的には開口部42と底面部
41とを有しその断面が台形をなすものであるが、前記凹
部４の角部により形成される谷線Ｖ（斜辺）がわずかに
曲線となっていてもよい。また、前記凹部４は前記実施
例のように正方形の開口部42と底面部41とからなるもの
に限らず三角形、六角形等の種々の形状の凹部に適用可
能である。

【００１２】

【発明の効果】本発明の請求項１の育苗箱は、略矩形の
底板部と前記底板部の外縁部に垂在する周壁部とからな
り、前記底板部には逆裁頭角錐形の凹部が多数連設され
ており、前記凹部の上縁の交点が少なくとも前記周壁に
最も近接する４辺１列分に形成された無孔部と、該無孔
部以外の前記交点に上下方向に貫通する孔を形成した有
孔部とからなるものであり、育苗ポットたる凹部が逆裁
頭角錐形であるので、洗浄時に凹部に土などは素早く洗
いながされ、取れにくいことがない。また、前記凹部に
撒かれた籾から発芽した根は逆裁頭角錐形の凹部の角部
により形成される谷線に沿うような傾向をもって成長す
るので根の成育性が良好であり、また根がらみ等を生じ
ることがない。さらにこの育苗箱は周壁付近の凹部の水
保有性を良好に維持することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による育苗箱を示す一部省
略平面図である。

【図２】前記第１実施例の育苗箱を示す部分断面図であ
る。

【図３】前記第１実施例の育苗箱の凹部を示す拡大であ
り、(a) は平面図、(b) Ａ−Ａ線断面図をそれぞれ示
す。

【図４】前記第１実施例の育苗箱の凹部における籾の成
育状態を示す概略図であり、(a) は平面図、(b) Ｂ−Ｂ
線断面図をそれぞれ示す。る。

【図５】本発明の第２実施例による育苗箱を示す一部省
略平面図である。

【符号の説明】 １ 育苗箱 ２ 底板部 ３ 周壁部 ４ 凹部 ５ 上縁 ６ 柱状部 ６Ａ 無孔部 ６Ｂ 有孔部 ７ 孔

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 略矩形の底板部と前記底板部の外縁部に
   垂在する周壁部とからなり、前記底板部には逆裁頭角錐
   形の凹部が多数連設されており、前記凹部の上縁の交点
   が少なくとも前記周壁に最も近接する４辺１列分に形成
   された無孔部と、該無孔部以外の前記交点に上下方向に
   貫通する孔を形成した有孔部とからなることを特徴とす
   る育苗箱。