JPH0731483A - 昆虫細胞による可溶性IgE結合受容体α鎖の製造方法 - Google Patents

昆虫細胞による可溶性IgE結合受容体α鎖の製造方法

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JPH0731483A
JPH0731483A JP5201991A JP20199193A JPH0731483A JP H0731483 A JPH0731483 A JP H0731483A JP 5201991 A JP5201991 A JP 5201991A JP 20199193 A JP20199193 A JP 20199193A JP H0731483 A JPH0731483 A JP H0731483A
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以誠 谷田
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明 長谷川
Tomoyasu Ra
智靖 羅
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 可溶性ヒトFcεRIα鎖を効率よく製造す
ることができる方法を提供する。 【構成】 可溶性ヒトFcεRIα鎖をコードする遺伝
子がバキュロウィルスプロモーターの制御下に連結され
ているバキュロウィルス発現ベクターを組み込んだ組み
換えバキュロウィルスを感染させた昆虫細胞を培養し、
その培養物から可溶性FcεRIα鎖を採取することを
特徴とする、可溶性FcεRIα鎖の製造方法。 【効果】 哺乳類細胞CHOを使用する場合に比べて約
50倍多く可溶性FcεRIα鎖を発現することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可溶性ヒトIgE結合受
容体α鎖(可溶性FcεRIα鎖)の昆虫細胞宿主を用
いた製造方法、並びにこの方法に使用する発現ベクタ
ー、及び該発現ベクターにより形質転換された昆虫細胞
に関する。本発明の方法により製造される可溶性Fcε
RIα鎖は体外診断薬、例えばI型アレルギー抗原の診
断薬等に利用できるものと期待される。
【0002】
【従来の技術】ヒトの即時型(アナフィラキシー型)ア
レルギー(またはI型アレルギーとも呼ばれる)反応
は、およそ以下のような機序で起こると考えられてい
る。アレルギー抗原が体内に侵入すると、その抗原に対
する特異的なIgE抗体が体内に産生され、産生された
IgEは、好塩基球、肥満細胞表面に存在する抗体特異
的な受容体(FcεRI)を介して結合する。FcεR
Iと結合したIgEが抗原と特異的に反応することによ
り、受容体の凝集が起こり、蓄えられていたヒスタミン
などの活性アミンが細胞から放出され、続いてロイコト
リエン、プロスタグランジンや種々のサイトカインが合
成放出され、これらの物質により種々のアレルギー反応
が誘発される。この一連の反応のうち、鍵を握る物質の
ひとつはFcεRIといっても過言ではない。
【0003】FcεRIは1分子のα鎖、1分子のβ鎖
および2分子のγ鎖から構成される4量体として細胞膜
上に存在する。これらのサブユニットのうちIgEとの
結合に必要十分な機能を持つ分子はα鎖である〔Kinet,
J.P.(1990), Curr.OpinionImmunol.2. p499-505 〕。
ヒトのα鎖をコードしているcDNA配列は清水らによ
って報告された〔Shimizu, A., Tepler, I., Benfey,
P.N., Berenstein, E.H., Siraganian, R.P., and Rede
r, P.(1988)Proc.Natul.Acad.Sci.U.S.A.85, p1907-191
1、特公表平3−502878〕。
【0004】公表されている配列によればヒトα鎖は2
21のアミノ酸から成り立っていると考えられるが、分
離精製したα鎖は50〜60キロダルトンであること、
これをNグリカナーゼなどの酵素処理により糖鎖を除去
することにより分子量が小さくなることから、α鎖は著
しく糖鎖修飾された形で生体中において合成されてい
る。またコードされている配列から2箇所の分子内ジス
ルフィド結合を持つことが予想され、分子内に膜貫通領
域を持つ膜蛋白質であることが示された。このα鎖遺伝
子をCOS7細胞を用いて一過性に発現させるために
は、γ鎖の同時発現のみで十分であった。
【0005】この分子内の膜貫通領域を除去した形で発
現できるようにしたcDNAをCHO細胞を用いて安定
的に発現させたところ、約40〜50キロダルトンのも
のが細胞外に分泌産生された。この可溶化されたα鎖は
IgEとの高い親和性の結合活性を持っており、Nグリ
カナーゼによって糖鎖を除去したものも同様のIgEに
対する高い親和性を示した〔Blank, U., Ra, C., and K
inet, J.-P.(1991)J.Biol.Chem. 266, p2639-2646 〕。
しかしながらCHO形質転換体で産生された可溶性Fc
εRIα鎖の産生量は約100μg/l程度であり、実
用性に乏しいことから、さらに大量に産生可能な系の構
築が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、可溶
性ヒトFcεRIα鎖を効率よく多量に製造することが
できる方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明は、可溶性ヒトFcεRIα鎖をコードする
遺伝子がバキュロウィルスプロモーターの制御下に連結
されているバキュロウィルス発現ベクターを提供する。
本発明はさらに、前記バキュロウィルス発現ベクターを
組み込んだ組み換えバキュロウィルスを提供する。本発
明はさらに、前記の組み換えバキュロウィルスを昆虫細
胞に感染させ、感染細胞を培養し、その培養物から可溶
性ヒトFcεRIα鎖を採取することを特徴とする可溶
性FcεRIα鎖の製造方法を提供する。
【0008】
【具体的な説明】組換えバキュロウィルスを発現ベクタ
ーとして用いた発現系はSmith らにより開発された系で
あるが(Smith et al., Mol.Cell.Biol., 3:2156-2165,
1983 、特開昭60−37988)、バキュロウィルス
を利用し昆虫細胞を宿主として外来蛋白質を産生させる
系では、哺乳類細胞などと同様に蛋白合成され、高次構
造形成され、糖鎖修飾が起こることから、ヒト由来の糖
鎖修飾される分泌蛋白質を、活性をもった形で分泌産生
させることが期待できる。
【0009】しかしながら組換えバキュロウィルスを発
現ベクターとして用いた発現系では、糖鎖修飾の様式が
厳密な意味において哺乳類細胞を宿主として用いた場合
と異なっており、糖鎖修飾が発現させようとする蛋白質
の活性、生体内安定性に関与している場合には、糖鎖修
飾が異なるために活性を持たなくなることが懸念され
る。つまり天然体ならば、糖鎖修飾されるような蛋白質
を組換えバキュロウィルスを発現ベクターとして用いた
発現系で発現させた場合に、その組換え産物が活性を持
つか否かを予測することは困難である。
【0010】可溶性ヒトFcεRIα鎖の場合には糖鎖
修飾されなくても、そのIgEとの結合活性は変化しな
いものの、異なった糖鎖修飾された場合にはIgEとの
結合活性を失ってしまうことが懸念される。可溶性ヒト
FcεRIα鎖を組換えバキュロウィルスを発現ベクタ
ーとして用いた発現系で発現させるためには、バキュロ
ウィルス染色体に該遺伝子を適当なプロモーターの制御
下に置いた形で導入することが必要である。
【0011】ここで可溶性ヒトFcεRIα鎖遺伝子と
しては、本発明においては、公表されているヒトFcε
RIα鎖遺伝子のアミノ酸配列のうち、分泌シグナル配
列、及び1−172アミノ酸をコードし、下流に翻訳終
止コドンを導入したものを具体例として用いているが、
他の1例としては、公表されているヒトFcεRIα鎖
遺伝子のアミノ酸配列190−210に存在すると考え
られている膜貫通配列を取り除いたものであり、かつ1
51残基目に存在するシステイン残基をコードする領域
までを含むものを用いることもできる。
【0012】またこれらの遺伝子断片は、ヒト肥満細胞
もしくはヒト肥満細胞株例えばKU812株から調製し
たpolyA−RNAを鋳型とし、通常の方法によって
合成したcDNAを、適当なベクターに導入し、標識し
た核酸を用いてスクリーニングして得られるものを用い
てもよく、ここからpolymerase chain reaction(PCR)法
により、目的とする断片のみを取り出す、目的とする断
片の前後にin vitro突然変異法によって制限酵
素部位を導入し、その制限酵素で切断する方法によって
も取り出すことが出来る。またcDNAが持つ制限酵素
部位を利用するなどの方法も考えることが出来る。
【0013】さらに、合成したcDNAを適当なプライ
マーを用いて直接PCR法にかけることにより、目的と
する遺伝子断片を増幅させることによっても得ることが
可能である。増幅させた断片は適当なベクターに組み込
むことにより、安定的に供給されうることは自明であ
る。
【0014】1−172アミノ酸をコードし、下流に翻
訳終止コドンを導入した可溶性ヒトFcεRIα鎖遺伝
子断片は、多核体遺伝子プロモーターを持つ適当なベク
ター、例えばpAcYM1、のプロモーターの下流に挿
入し、得られたベクターをバキュロウィルスが感染可能
な昆虫細胞、例えば夜盗蛾由来の培養細胞、例えばSf
−9、に野生型バキュロウィルスDNAとともに感染さ
せる。
【0015】ここで上記感染は、燐酸カルシウム沈殿
法、電気穿盤遺伝子導入法、デキストラン法などの一般
に培養細胞で用いられている導入法により、培養細胞に
DNAを導入する方法により行なわれる。
【0016】感染後、適当な培地、例えば血清を含むG
race培地において感染細胞を48から72時間培養
することにより、培養上清中に可溶性ヒトFcεRIα
鎖遺伝子断片が導入された染色体を持つ組換えバキュロ
ウィルスを回収することができる。組換えバキュロウィ
ルスは培養上清から、例えばプラークアッセイ法、プラ
ークハイブリダイーゼーション法を用いることにより単
離することができる。
【0017】単離したバキュロウィルスは、適当なMO
Iで感染する細胞、例えばSf−9に感染させ、培養を
行なうことにより、増殖させることが可能である。ここ
で感染とは組換えバキュロウィルスをSf−9等の細胞
と1時間程度接触させることにより成立する。可溶性ヒ
トFcεRIα鎖は、単離、増殖させた組換えバキュロ
ウィルスを、MOI=5〜10で例えばSf−9に感染
させ、27℃に於て72時間培養することにより、感染
した細胞から培養上清中に分泌発現し、培養上清は細胞
を遠心等により分離することにより得ることができる。
【0018】得られた培養上清から、可溶性ヒトFcε
RIα鎖は硫安沈殿法などにより濃縮可能であり、得ら
れた沈殿物を例えばゲル濾過等のカラムクロマトグラフ
ィーにかけることにより、感染により生じる組換えバキ
ュロウィルスや、培地に含まれる例えば血清アルブミン
などと分離することが可能である。
【0019】このようなカラムクロマトグラフィーによ
り分離したヒト可溶性FcεRIα鎖は、さらに他のカ
ラムクロマトグラフィーにかけることにより分離精製す
ることが可能である。この際抗可溶性ヒトFcεRIα
鎖モノクローナル抗体を結合させた樹脂を用いたアフィ
ニティーカラムクロマトグラフィーにかけることにより
単一の分子種にまで精製することが可能である。また同
様にIgEを結合させた樹脂を用いたアフィニティーカ
ラムクロマトグラフィーにかけることにより単一の分子
種にまで精製することが可能である。
【0020】この際に他のアフィニティーカラムクロマ
トグラフィー、例えばレンチルレクチンカラムクロマト
グラフィーにかけることにより、効率良く精製すること
が可能である。上記記載の方法により作成された可溶性
ヒトFcεRIα鎖遺伝子を導入した組換えバキュロウ
ィルス、AcNTVをSf−9細胞に感染させ、感染さ
せた培養上清400mlから2mgの可溶性ヒトFcεRI
α鎖を回収することができ、この発現量は報告されてい
るCHOのものと比較すると約50倍量であり、このこ
とから本発明の効果は明らかである。
【0021】このような方法で発現、精製したヒト可溶
性FcεRIα鎖の、SDSポリアクリルアミドゲル電
気泳動から推定される分子量は35kDであり、CHOな
どの哺乳類培養細胞で産生されたものと比較すると小さ
く、過剰な糖鎖付加が起こっていないことは明白であ
る。また産生されたヒト可溶性FcεRIα鎖とIgE
との結合活性は、CHOで産生されたものと変わらぬこ
とが、CHOで産生されたヒト可溶性FcεRIα鎖と
のIgE結合競合活性により明らかとなり、組換えバキ
ュロウィルスで産生されたヒト可溶性FcεRIα鎖
は、そのIgEとの特異的な結合活性を利用した、各種
の診断、治療に利用することができる。
【0022】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。実施例1.可溶性ヒトFcεRIα鎖遺伝子断片を持つ
プラスミドの調製 ヒトFcεRIα鎖遺伝子断片を持つプラスミドBS−
SK(+)herαから、DNA合成機(8700DNA Synt
hesizer, MilliGen /Biosearch)を用いて合成したプラ
イマーDNAを用い、PCR反応により目的とする可溶
性ヒトFcεRIα鎖遺伝子断片を調製した。プライマ
ーとしてはNTVプライマーとPASプライマーを作製
した。それぞれの配列は以下に示すものである。
【0023】NTVプライマー;5′−AAAAACTCGAGATG
GCTCCTGCCATGGAATCCCCTACT(配列番号:1) PASプライマー;5′−AAAAAGGATCCTTAAGCTTTTATTAC
AGTAATGTTGA(配列番号:2) PCR反応は次に示す条件で行なった。100μlの反
応液〔1ngプラスミドBS−SK(+)herαDN
A、1μMNTVプライマー、1μMPASプライマ
ー、10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM
KCl、1.5mMMgCl2 、0.001% gela
tin、200μM dATP、200μM dCT
P、200μM dGTP、200μM dTTP、
2.5U AmpliTaq DNA polymer
ase(宝酒造)〕を調製し、DNAThermal
Cycler(Perkin Elmer Cetus社)を用いて、94
℃にて1分間、50℃にて2分間、72℃にて3分間の
反応を30サイクル行なわせた。
【0024】反応液の一部20μlを0.8%アガロー
スにアプライし電気泳動を行なった。分離した約0.6
kbのDNA断片をアガロースからGeneCleanキ
ット(BIO101社)を用いて16μlのTE溶液〔10mM
Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA〕中
に回収した。そこに10Xの反応緩衝液〔100mMTr
is−HCl(pH7.5)、1.5M NaCl、70
mM MgCl2 〕を2μl加え、BamHI,XhoI
をそれぞれ1μl加え37℃において1時間反応させ
た。
【0025】反応液を65℃、10分間処理することに
より酵素を熱失活させた後、その一部5μlをBamH
IおよびXhoIで切断したクローニングベクターpT
3T7U19X(特願平3−106600号)10ngと
ともにDNAライゲーションキット(宝酒造社)A液3
0μlおよびB液6μlと混合し、16℃、1時間反応
させ両DNAを連結させた。得られたDNA溶液10μ
lを用いて大腸菌XL1−Blue(Stratagene社)を
Hanahanの方法〔DNA cloning:A practical appr
oach (ed.D.M.Glover), vol.1, p109-, IRC press (188
5)〕に従って形質転換させ、X−Galを含むL−am
pプレートに蒔き、白色のコロニーを選択することによ
りアンピシリン耐性で、βガラクトシダーゼ欠損のコロ
ニーを選択した。
【0026】選択したコロニーをL−amp培地で培養
し、ヘルパーファージVCSM13を感染させることに
より組換え体ファージを調製した。調製した組換え体か
ら一本鎖DNAを調製し、調製したDNA約0.8μg
をDNA Sequencing System/Taq polymerase(アプライド
バイオシステム社)を用い、メーカーの推奨する条件に
従い反応させ、反応産物をDNA sequencer Model 370A
(version 1.30、アプライドバイオシステム社)を用い
て分析し塩基配列を決定した。
【0027】またアルカリ溶菌法により調製した組換え
体プラスミドDNA約1μgをM13RP1プライマー
(アプライドバイオシステム社)を用い、Cyclin
gsequencing法(アプライドバイオシステム
社テクニカルマニュアル)によりメーカーの推奨する方
法に従い反応させ、反応産物をDNA sequencer Model 37
0A (version 1.30、アプライドバイオシステム社)を用
いて分析し塩基配列を決定した。
【0028】両者の方法により決定した配列のうち、構
造遺伝子部分が既に報告されているヒトFcεRIα鎖
遺伝子のものと異なっておらず、翻訳開始コドンの前に
NTVプライマーによって導入されたXhoIサイトが
あり、かつコードされているアミノ酸配列の25番目の
バリンを第1位とした場合に第172位のアラニンをコ
ードするコドンの直後にPASプライマーによって導入
された翻訳終了コドンTAAとBamHIサイトがある
ことが確認された組換え体プラスミドpNTV2を得
た。
【0029】実施例2.ヒト可溶性FcεRIα鎖遺伝
子断片の単離 KU812細胞(4×107 細胞)からTotal RNA Sepa
rator Kit(Clontech社)を用い、メーカーの推奨する方
法に則り、RNAを抽出した。抽出したRNAからmRNA
Separator Kit (Clontech社)を用い、メーカーの推奨
する方法に従いpolyA RNAを精製した。40μ
gのpolyA RNAを得ることが出来た。このうち
5μgを用い、Time Saver cDNA 合成キット(ファルマ
シア社)を用い、メーカーの推奨する方法に従い、二本
鎖cDNAを合成した。
【0030】得られたcDNA液(150μl)の内の
一部、10μlを用いて、前述のNTVプライマー、P
ASプライマーを用い、100μlの反応液(1μM
NTVプライマー、1μM PASプライマー、10mM
Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、
1.5mM MgCl2 、0.001% gelati
n、200μM dATP、200μM dCTP、2
00μM dGTP、200μM dTTP、2.5U
AmpliTaq DNA polymerase
〔宝酒造〕)を調製し、DNA Thermal Cy
clerを用いて、94℃にて1分間、50℃にて2分
間、72℃にて3分間の反応を30サイクル行なわせ
た。
【0031】反応液の一部20μlを0.8%アガロー
スにアプライし電気泳動を行なった。分離した約0.6
kbのDNA断片をアガロースからGeneCleanキ
ットを用いて16μlのTE溶液〔10mM Tris−
HCl(pH7.5)、1mMEDTA〕中に回収した。そ
こに10Xの反応緩衝液〔100mM Tris−HCl
(pH7.5)、1.5M NaCl、70mM MgCl
2 〕を2μl加え、XhoI、BamHIをそれぞれ1
μl加え37℃において1時間反応させた。
【0032】反応液を65℃、10分間処理することに
より酵素を熱失活させた後、その一部5μlをXho
I、BamHIで切断したクローニングベクターpBl
uescriptIIKS(+)、10ngとともにDNA
ライゲーションキット、A液30μl、B液6μlと混
合し、16℃、1時間反応させ両DNAを連結させた。
得られたDNA溶液10μlを用いて大腸菌XLl−b
lueをHanahanの方法に従って形質転換させ、
X−Galを含むL−ampプレートに蒔き、白色のコ
ロニーを選択することによりアンピシリン耐性で、βガ
ラクトシダーゼ欠損のコロニーを選択した。
【0033】コロニーから調製したプラスミドDNA
1.5μgをDye primer cycling sequencing kit(アプ
ライドバイオシステム社)を用い、M13RP1または
−21M13プライマーをもちいて、メーカーの推奨す
る条件に従い反応させ、反応産物をDNA seque
ncer Model 373Aを用いて分析し挿入断
片の塩基配列を決定した。挿入された断片は報告の配列
と同じ配列を持ち、翻訳開始コドンATGの直前にXh
oIサイトがあり、第24位のバリンを第1位とした場
合に172位に存在するアラニンのコドンの直下に翻訳
停止コドンとBamHIサイトが挿入されていることが
確認された。このようにして得られたプラスミドは、実
施例2においてpNTV2の代わりに用いることが出来
ることは明らかである。
【0034】実施例3.可溶性ヒトFcεRIα鎖の発
現プラスミドの作製 可溶性ヒトFcεRIα鎖遺伝子を持つプラスミドpN
TV2 1μgを10μlの反応液中〔10mM Tri
s−HCl(pH7.5)、100mM NaCl、7mM
MgCl2 、12U XhoI、10U BamHI〕
で37℃において1時間反応させた。反応終了後フェノ
ール/クロロホルムによりDNAを抽出した後、エタノ
ール沈殿法により回収した。このDNA断片をDNAプ
ランティングキット〔宝酒造〕を用いて、メーカーの推
奨する方法により平滑末端化した。反応液を0.8%ア
ガロース電気泳動にかけ、分離した約10kbの断片をア
ガロース小片からGeneCleanキットを用いて1
0μlのTE液中に回収した。
【0035】一方バキュロウィルス発現ベクターである
pAcYM1(Matsuura,Y.ら、J.Gen.Virol. 68, p12
33) 1μgを10μlの反応液中〔10mM Tris−
HCl(pH7.5)、150mM NaCl、7mM Mg
Cl2 、10U BamHI〕で37℃において1時間
反応させた。反応液を0.8%アガロース電気泳動にか
け、分離した約10kbの断片をアガロース小片からGe
neCleanキットを用いて10μlのTE液中に回
収した。この回収した断片を含む溶液2μlと、pNT
V2から回収した断片を含む溶液3μlとをそれぞれD
NAライゲーションキットA液25μl、B液5μlと
混合し、16℃、1時間反応させ両DNAを連結させ
た。
【0036】得られたDNA溶液10μlを用いてそれ
ぞれ大腸菌XL1−blueをHanahanの方法に
従って形質転換させ、L−ampプレートに蒔き、アン
ピシリン耐性のコロニーを選択した。コロニーのプラス
ミドDNAの制限酵素部位を調べそれぞれの断片が連結
されたプラスミドを持つ形質転換体を選別することによ
りバキュロウィルス発現ベクターであるpAcYM1−
NTVを得た。
【0037】実施例4.可溶性ヒトFcεRIα鎖発現
組換えウィルスの単離 夜盜蛾腸培養細胞であるSf−9細胞株にバキュロウィ
ルス発現ベクターであるpAcYM1−NTV、10μ
gと天然型バキュロウィルスDNA1μgを燐酸カルシ
ウム沈殿法により感染させた。感染の方法は松浦(実験
医学8刊、p281−284,1990)の方法に従っ
た。感染後プラークアッセイ法によりポリヘドリンを合
成していないプラークを選択した。このプラークアッセ
イを3回行なうことにより組換えウィルスを単離した。
【0038】単離したウィルスをMOI(multiplicity
of infection)=1でSf−9細胞に感染させ、10%
FCSを含むGrace培地(Gibco社)中で72時間培
養し、培養上清の一部をウェスターンプロッティング法
により分析することにより、可溶性ヒトFcεRIα鎖
発現組換えウィルスであるAc−NTVを単離した。
【0039】単離したウィルスをMOI(multiplicity
of infection)=1でSf−9細胞に感染させ、10%
FCSを含むGrace培地(Gibco社)中で72時間培
養し培養上清を回収することにより、約1×108 pfu
/mlの組換えウィルスを回収した。
【0040】実施例5.発現及び発現産物の精製 組み換えウィルスをMOI(multiplicity of infectio
n)=5でSf−9細胞(4×108 細胞)に感染させ、
10%FCSを含むGrace培地(Gibco社)中400
mlで72時間培養し培養上清を回収した。回収した上清
中に硫安を飽和濃度60%となるように加えた後、4℃
で2時間保温した。10000rpm で30分間遠心し、
沈殿物を回収した。
【0041】回収した沈殿物をTBS(20mM Tri
s−HCl〔pH7.5〕、150mMNaCl)に溶解さ
せた後、同溶液に対して4℃、1夜透析した。透析後液
を回収し、TBSで平衡化したセファクリルS200カ
ラム(2.6cm×60cm)にかけTBSにて分離した。
分子量3万から4万付近に相当する分画を集めた。
【0042】抗FcεRIαモノクローナル抗体カラム
の作製を以下のように行なった。BrCN−activ
ated Sepharose4B(ファルマシア社
製)を1mM塩酸中で室温で15分間膨潤させた。1mM塩
酸を用いてグラスフィルター上で膨潤ゲルの洗浄と膨潤
を繰り返した後、カップリング緩衝液(0.5M塩化ナ
トリウム、0.1M重炭酸ナトリウム pH8.3)で洗
浄した。
【0043】直ちにこのゲル2mlを、カップリング緩衝
液に溶解した精製抗FcεRIαモノクローナル抗体溶
液2ml(5mg/ml)に加え、室温で2時間穏やかに攪拌
した。上清を除き、0.2Mグリシン塩酸、pH8.0に
ゲルを懸濁し、室温で2時間穏やかに攪拌した。次にこ
れをカップリング緩衝液と0.5M塩化ナトリウムを含
む0.1M酢酸緩衝液 pH4.0で繰り返し洗浄し、抗
FcεRIαモノクローナル抗体カラムを得た。
【0044】ゲル濾過により得られた画分の抗FcεR
Iαモノクローナル抗体カラムによる精製を以下のよう
に行なった。0.5M塩化ナトリウムを含む20mMトリ
ス塩酸緩衝液 pH7.6で平衡化した抗FcεRIαモ
ノクローナル抗体カラムに、培養上清をゲル濾過して得
られたFcεRIαを含む画分をかけ、平衡化に用いた
緩衝液にてカラムを充分に洗浄した。次に、3Mチオシ
アン酸ナトリウムと0.5M塩化ナトリウムを含む20
mMトリス塩酸緩衝液 pH7.6でカラムからの溶出を行
ない、溶出された画分を0.1M塩化ナトリウムを含む
20mMトリス塩酸緩衝液 pH7.6に対して直ちに透析
し、可溶性FcεRIα断片精製標品を得た。
【0045】実施例6.精製標品の純度検定 精製標品の純度検定をSDS−ポリアクリルアミドゲル
電気泳動法を用いて以下のように行なった。精製標品を
濃縮し、試料用緩衝液(2%ドデシル硫酸ナトリウム、
5%2−メルカプトエタノール、7%グリセロール、
0.005%ブロムフェノールブルーを含む62.5mM
トリス塩酸緩衝液 pH6.8)に懸濁し、100℃で5
分間煮沸した。
【0046】この試料を分離ゲル濃度が10−20%の
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用濃度勾配平
板ゲル(第一化学薬品株式会社製)を用いて電気泳動
し、銀染色キット(第一化学薬品株式会社製)でゲルを
染色して蛋白質の検出を行なった。その結果、分子量3
0k〜35k付近に広がった単一のバンドが検出された
(図2)。
【0047】実施例7.IgEとの結合活性の測定 96穴プレート(Nunc Immuno Module Maxisorp F16)に
100μl/wellの割合でcoating buffe
r(0.3mg/l CHO細胞由来の可溶性FcεRI
α鎖、1. 59g/l Na2 CO3 、2.93g/l
NaHCO3、pH9.35)を加え、4℃で一昼夜保
温した。その後、coating bufferを捨
て、200μl/wellの割合でTTBS溶液〔20mM
Tris−HCl(pH7.4)、9g/l NaCl、
0.05% Tween20〕を加えることにより、各
wellを洗浄した。この洗浄操作をもう一度繰り返し
た。
【0048】洗浄後、200μl/wellの割合でブロッ
キング溶液〔20mM Tris−HCl(pH7.4)、
9g/l NaCl、1% BSA〕を加え、4℃で一
昼夜保温し、ブロッキングを行なった。ブロッキング溶
液を捨て、先に述べたTTBS溶液による洗浄操作を3
度繰り返した。次に、あらかじめ用意しておいた活性測
定用の一連のサンプル希釈液を、80μl/wellの割合
で加え、速やかに20μlのIgE溶液〔10ng/20
μl ヒトIgE(ヤマサ醤油)、20mM Tris−
HCl(pH7.4)、9g/l NaCl、0.05%
Tween20、0.2% BSA〕を加え、軽く攪
拌した。
【0049】室温で2時間保温した後、先に述べたTT
BS溶液による洗浄操作を3度繰り返した。次に、TT
BS−0.2% BSA溶液を用いて1000倍に希釈
したPeroxidase conjugated IgG Fraction Goat Anti-H
uman IgE(Epsilon Chain Specific:CAPPEL社)を10
0μl/well加え、室温で2時間保温した。
【0050】TTBS溶液による洗浄操作を4度繰り返
した後、TMB Peroxidase Substrate(KIRKEGAARD & PERR
Y LABOBATORIES社)とPeroxidase Solution B(KIRKEGAA
RD &PERRYLABOBATORIES社)を等量混合したものを、1
00μl/well加えて室温で10分間保温し、10%w
/vのH2 SO4 を25μl/well加えて、反応を停止
した。その後、A450を測定することにより、精製し
た可溶性FcεRIα鎖の測定を行なった。
【0051】これにより、活性のある可溶性ヒトFcε
RIα鎖がサンプル中に存在する場合、ヒトIgEと結
合することにより、ELISAプレートにコートされた
CHO細胞由来の可溶性FcεRIα鎖と結合するヒト
IgEが減少するためにA450の測定値が陽性コント
ロールに比べて低下する。この系に、スタンダードとし
て、CHO細胞由来の可溶性FcεRIα鎖をTTBS
−0.2% BSA溶液にて希釈した液をサンプル希釈
液の代わりに用いることにより、サンプル中の可溶性ヒ
トFcεRIα鎖の定量を行なうことができる。
【0052】この方法により、400mlから精製した可
溶性ヒトFcεRIα鎖は、2mgのCHO産生の可溶性
ヒトFcεRIα鎖に相当するIgE結合活性を持つこ
とが明かとなった。
【0053】
【発明の効果】上記のごとく、本発明によれば可溶性I
gE結合受容体α鎖を昆虫細胞において効率よく発現・
分泌させることができる。
【0054】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:38 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AAAAACTCGA GATGGCTCCT GCCATGGAAT CCCCTACT 38
【0055】配列番号:2 配列の長さ:37 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AAAAAGGATC CTTAAGCTTT TATTACAGTA ATGTTGA 37
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の発現生成物である可溶性Fcε
RIα鎖を示す電気泳動図であり、図面に代る写真であ
る。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 7/00 C12R 1:92) (C12P 21/02 C12R 1:91) (72)発明者 柳田 光昭 埼玉県入間郡大井町西鶴ヶ岡1丁目3番1 号 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 谷田 以誠 埼玉県入間郡大井町西鶴ヶ岡1丁目3番1 号 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 長谷川 明 埼玉県入間郡大井町西鶴ヶ岡1丁目3番1 号 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 羅 智靖 東京都文京区本郷2−1−1 順天堂大学 医学部免疫学教室内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可溶性ヒトIgE結合受容体α鎖(可溶
    性FcεRIα鎖)をコードする遺伝子がバキュロウィ
    ルスプロモーターの制御下に連結されているバキュロウ
    ィルス発現ベクター。
  2. 【請求項2】 前記可溶性ヒトFcεRIα鎖が完全な
    FcεRIα鎖の1位のアミノ酸Valから172位の
    アミノ酸Alaまでのアミノ酸配列から成るものであ
    る、請求項1に記載の発現ベクター。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の発現ベクターを
    組み込んだ組換えバキュロウィルス。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の組み換えバキュロウィ
    ルスを昆虫細胞に感染させた後、感染細胞を培養し、そ
    の培養物から可溶性FcεRIα鎖を採取することを特
    徴とする可溶性FcεRIα鎖の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US5847516A (en) * 1995-07-04 1998-12-08 Nippondenso Co., Ltd. Electroluminescent display driver device

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