JPH07308185A - 微生物付着防止方法及びそれを用いた微生物培養装置 - Google Patents

微生物付着防止方法及びそれを用いた微生物培養装置

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JPH07308185A
JPH07308185A JP12592194A JP12592194A JPH07308185A JP H07308185 A JPH07308185 A JP H07308185A JP 12592194 A JP12592194 A JP 12592194A JP 12592194 A JP12592194 A JP 12592194A JP H07308185 A JPH07308185 A JP H07308185A
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light
culture
heat
wavelength
microorganism
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JP12592194A
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English (en)
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Kunihiro Ichimura
國宏 市村
Taisuke Toya
泰典 遠矢
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Ebara Corp
Original Assignee
Ebara Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 培養装置の培養液と接触する表面への微生物
の付着を防止することのできる全く新規な方法とそれに
よる微生物培養装置を提供すること。 【構成】 微生物の付着を防止する方法において、培養
液と接触する表面の少なくとも一部を感熱性高分子膜1
0で形成し、該感熱性高分子膜10に反復的に熱変動1
2を与えて相転移を惹起して、被覆膜構造10を運動さ
せることにより付着を防止するもので、前記感熱性高分
子膜は、培養する微生物の成育に重大な影響がない温度
範囲で相転移するものがよく、また前記方法を用いた培
養装置において、該装置1の培養液と接触する表面の少
なくとも一部を、培養する微生物の成育に重大な影響が
ない温度範囲で相転移する感熱性高分子膜10で被覆
し、該被覆膜に熱を供給する手段12を設けることとし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微生物付着に起因する
障害の防止に係り、特に微生物培養における微生物付着
防止方法及び微生物培養装置に関するものである。本発
明は、従来技術(方法、装置)とは根本的、本質的に発
想の次元を異にする新規な微生物の付着防止方法及び微
生物培養装置に関するものであり、例えば、極めて高効
率な炭酸ガス固定能により地球環境汚染、特に地球温暖
化防止にも著しく貢献する革新的な微生物培養方法及び
装置を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】微生物培養による反応装置を利用する技
術は種々の方面で使われている。例えば、ここ数年来、
地球環境問題、特に大気中の炭酸ガス濃度の増加による
地球温暖化の問題に対応する技術において、光合成微生
物による炭酸ガスの固定化は、自然の生態系に抵抗なく
受け入れられること、地球レベルでの物質循環に偏重を
来さないなどの多くの利点があるために、特に重点的に
研究されている。当然、高効率、かつ経済的な光合成微
生物培養装置に関する研究も同時並行的に進行してい
る。従来、光合成微生物の培養を目的とする培養装置
は、その殆どが培養槽の外部から棒状の白色蛍光灯によ
り光エネルギーを槽内溶液に供給するか、或いは培養槽
内部に棒状白色蛍光灯を取り付け、槽内溶液に光エネル
ギーを供給するタイプのものが主流となっていた。ま
た、最近では各種のハイテク技術が研究開発され、その
代表的な技術として、太陽光及び/又は人工光を光エネ
ルギーで濃縮、伝送し、伝送された光エネルギーを特殊
な面発光光ファイバー、又は樹脂製或いは石英ガラス製
の棒状ロッドに長さ方向に光の散乱溝を刻み込み、槽内
の縦方向に、かつ線状に光を拡散して光合成細菌及び/
又は微細藻類を培養する所謂培養装置が開発されてい
る。
【0003】これらの新しい培養装置でも、次に列挙す
るような従来の培養装置が宿命的に抱えている技術的問
題点は未解決のまま残されている。 培養槽外から蛍光灯で光エネルギーを供給する所謂
槽外型では、光合成微生物培養槽の内部壁面と内部器材
の表面に光合成微生物が濃厚に付着し、光の培養液への
拡散が阻害されると同時に、付着した光合成微生物は集
中的に強い光エネルギーに曝されて死滅するか或いは活
性が著しく劣化する。これに対して、槽内型においては
槽内壁だけでなく、内部に設置された蛍光灯の表面にも
光合成微生物が濃厚に付着し、槽外型以上の被害を受け
る。 培養槽内に光ファイバーにより光エネルギーを伝送
する新しい方式は、伝送できる光エネルギーの量は蛍光
灯方式よりも遙かに大きいが、微細で多数の光ファイバ
ーの表面に光合成微生物が多量、濃厚に付着し、経時的
に光の拡散機能を喪失し、さらに光ファイバー同士の間
隙が閉塞し、培養液の槽内循環も阻害される。また、微
細な光ファイバーを複数本(通常10本以下の本数)束
ねるか或いは光拡散体としてのプラスチック製のロッド
を束ねて保護管に入れても、保護管の表面に光合成微生
物が付着して前記の技術的問題点と同様な障害は解消さ
れない。以上のような培養微生物の壁面付着に伴う障害
は、特に、光供給を必須とする光合成微生物の培養装置
において顕著であるが、勿論微生物の壁面付着に伴う障
害は光合成微生物反応装置のみならず、問題となってい
る。例えば、付着微生物等による管閉塞やフィルター装
置における有害微生物の発生・堆積等の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この従来の
微生物培養装置の宿命的な欠陥である培養微生物の壁面
付着を防止し、全く新規な発想に基づく革新的な培養装
置への微生物の付着防止方法及び培養装置を提供するこ
とを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、微生物の付着を防止する方法におい
て、培養液と接触する表面の少なくとも一部を感熱性高
分子膜で形成し、該感熱性高分子膜に反復的に熱変動を
与えて相転移を惹起して、被覆膜構造を運動させること
としたものである。ここに言う培養液とは、微生物の生
育する液体を指し、必ずしも増殖用培養液のみを言わな
い。また、湿潤環境であればどんな薄い液膜でも良い。
前記方法において、感熱性高分子膜は、培養する微生物
の成育に重大な影響がない温度範囲で相転移するものが
よく、また、該高分子膜は450nm以下の波長の光線
を吸収する着色材を共存させるか、又は450nm以下
の波長の光線を吸収する着色層上に形成させるのがよ
い。
【0006】また、本発明では、微生物の付着を防止で
きる微生物培養装置において、該装置の培養液と接触す
る表面の少なくとも一部を、培養する微生物の成育に重
大な影響がない温度範囲で相転移する感熱性高分子膜で
被覆し、該被覆膜に熱を供給する手段を設けたものであ
る。前記装置において、感熱性高分子膜が、450nm
以下の波長の光線を吸収する着色材を共存させるか、又
は450nm以下の波長の光線を吸収する着色層上に被
覆させたものであり、該被覆膜に450nm以下の波長
の光線を供給する手段を備えているのがよい。なお、本
発明に用いる着色材を、特に光合成微生物の培養におい
て適用する時には、該光合成微生物の生育に必要な波長
の透過を極力さまたげないものを使用することが望まし
いことは言うまでもない。
【0007】本発明の対象とした光合成細菌及び微細藻
類などの所謂光合成微生物に限らず、微生物類は本来的
に菌体外に主として多糖系のポリマーを生産し、相互に
群落を形成するか或いは特定の表面に付着して相互扶助
的に生活し、さらに、体外に分泌される所謂体外酵素が
希釈媒体により希釈されて損失することを防止する手段
を自己防衛、自己存続のために保有している。しかし、
特定の、また固有の振幅、強度を持つ振動表面には通常
は付着しない。本発明は、微生物が嫌う生活環境を装置
工学的に創造することにより微生物付着防止を達成した
方法及び培養装置であり、その効果は絶大である。
【0008】本発明の要点は、微生物付着に起因する障
害を防止するため、特に問題を生じ易い部位を運動(振
動)させる革新的手段を提示したことにある。その革新
的手段とは、感熱性高分子膜に反復的熱変動を与えるこ
とである。これにより複雑な機構や構造を必要とせず、
また、既設の装置にも容易に機能を付加できる。また、
培養装置のいかなる部位も、くま無く対微生物付着処理
ができる。本発明は、直接熱伝導線(シーズヒータやリ
ボン式のヒータや自動車のデフォッグに用いられる熱線
の様なものが例に挙げられる)によって熱変動を与えて
も高周波や赤外線、可視光線、紫外線を含む電磁波、更
に気体や熱交換器等により得られた温水の流体等々、如
何なる伝熱手段をも使用できる。特に、本発明は光合成
微生物の培養において好適に用いられるものであるが、
その際の伝熱手段は光線そのものを使用することが好ま
しい。この点も本発明の特徴となっている。
【0009】次に、本発明の構成を、特に好適な適用態
様である光合成微生物培養を例として、UVによる熱伝
熱を行う場合を説明する。本発明では、光合成細菌及び
微細藻類などの光合成微生物を培養する光合成微生物培
養装置において、光の透過が可能な素材、通常は硬質ガ
ラスによって構成された槽壁を持つ微生物培養槽と太陽
光及び/又は人工光を伝送するための光ファイバーと、
光ファイバーによって伝送された光エネルギーを培養槽
内の培養液に均等に拡散させるための複数の光拡散体及
び培養槽内の培養液を攪拌するための攪拌装置、さらに
光を透過する素材により製作されている培養槽の表面及
び/又は内部器材、特に光拡散体に紫外線を間歇的に供
給するための長波長カットフィルターを具備した光波長
発生装置より構成されている。
【0010】さらに、光を透過する素材によって製作さ
れている光合成微生物培養槽及び槽内の光拡散体保護管
の表面の加工は本発明の中枢部分である。まず、光を透
過する素材表面に、光波長が450nm以下の太陽光及
び/又は人工光さらに光波長発生装置で発生した短波長
の光線(450nm以下の波長の光線)を選択的に吸収
する色材、即ち、紫外線吸収剤として知られているサリ
チル酸誘導体、2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体、
安息香酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、クマリン誘導体や黄
色及び/又は黄橙色を呈する顔料及び/又は染料を含有
する250nm以上の波長の光に透明な高分子膜或いは
ゾル−ゲル法で調整されるシリカ薄膜層を培養槽内壁表
面及び/又は光拡散体保護管の表面に均一に塗抹する。
次いで、この着色層上に、さらに光合成微生物の培養温
度の近傍で相転移する感熱性高分子膜を均一に重層せし
める。或いはまた予め紫外線(短波長光線)を吸収する
色材を含有してなる感熱性高分子膜を培養槽の内部壁面
上及び内部器材に均一に塗抹する方法を採用してもよ
い。
【0011】このように光透過可能な素材で構成された
培養槽の内壁表面及び内部に設置された光拡散体表面
に、450nm以下の波長光線を照射する方向の内面に
着色層、その外面に培養温度近傍で相転移する感熱性高
分子膜を塗抹した二重層を形成せしめるか、或いは予め
色材を含有してある感熱性高分子膜の単層を形成せし
め、此等の層に対して、光合成微生物の培養過程におい
て培養期間中に間歇的に光波長発生装置からの紫外線
(450nm以下の短波長光線)を培養槽外部から照射
し、これと同時的に紫外線発生装置で発生した紫外線及
び/又は太陽光及び/又は人工光を培養槽に導入する過
程に設置された波長選択フィルターを経由せしめて、一
時的に450nm以下の波長の光線が優占的に存在する
光線を光拡散体に伝送し、光拡散体保護管を内部から外
部方向に照射することにより培養装置の内部表面と光拡
散保護管表面の温度を培養温度近傍において人為的に変
動せしめ、この操作を一定時間内で反復することにより
感熱性高分子ゲルの表面を物理的に反復運動(振動)せ
しめることにより培養装置の内部壁面と槽内の内部器
材、主として光拡散体保護管表面に光合成微生物の付着
を未然に防止することを可能とした新規で、優れた発想
による革新的な微生物付着防止方法、及びこの機能を持
った優れた微生物培養装置である。
【0012】本発明は太陽光或いは人工光の何れを使用
しても良いが、人工光としては通常白色蛍光灯、ハロゲ
ンランプ及びキセノンランプの何れを使用してもよく、
また光伝送には光ファイバーを伝送媒体として使用する
ことが好ましいが、これ以外のものを使用することも出
来る。また、光拡散体としては白色蛍光灯、プラスチッ
ク製のロッドを使用しても本発明を害なうものではな
い。本発明が微生物付着防止の機能を発揮するための技
術的中枢部分は、光を透過する素材によって製作されて
いる微生物培養槽の内壁及び培養槽内に設置されている
光拡散体保護管の外面に、紫外線(短波長光線)(波長
450nm以下)を吸収し、この短波長光線が保有して
いる光エネルギーを熱エネルギーに変換する着色層と、
温度変化により吸水性が変化する感熱性高分子ゲルの二
重層、或いは色材を予め含有させてある感熱性高分子膜
の単層を形成させるところにある。
【0013】そのために、まず、培養槽の内壁表面と光
拡散体保護管の外部表面に、紫外線を選択的に吸収する
吸収剤、例えば黄色或いは黄橙色の顔料を混練或いは結
合せしめた高分子膜、或いはゾル−ゲル法で調整される
シリカ薄膜を均一に結合・塗抹し、さらにこの活性表面
に光合成微生物の培養温度に対応して相転移する感熱性
高分子ゲルを結合・塗抹することにより前記の二重層が
形成され、表面温度の変化に応じて物理的に振動し微生
物の内外表面への付着を防止する機能が発現する。色材
を含有した感熱性高分子膜の単層でも同様の作用効果が
得られることは言を俟たない。
【0014】次に感熱性高分子について説明する。感熱
性高分子ゲルとは、低温側では水和により膨潤している
ゲルが、加熱により或いは自然条件により高温になると
脱水和して水をゲル外に放出する、感熱的に相転移を行
なう高分子ゲルの総称である。近年、この種の高分子を
不溶化し、吸水や脱水を行なわせる技術が進歩してい
る。不溶化の方法として、感熱性高分子に架橋構造を形
成せしめてゲルとする場合と、基材表面に感熱性高分子
をグラフト重合反応により結合するものとがある。この
ような機能を持つゲルとして感熱性高分子ゲル及びゲル
膜が挙げられる。この感熱性高分子ゲルの性質を利用
し、高性能の感熱性ゲルにより、温度格差或いは温度変
化を駆動力として高効率で、低コストの微生物付着防止
方法及び/又は光合成微生物或いは通常の微生物培養装
置が開発できた。
【0015】本発明における感熱性高分子層としては、
アクリルアミド系モノマーとメチレンビスアクリルアミ
ドのような2官能基を持つモノマーを共重合することに
より合成することが出来る。或いはアクリルアミド系モ
ノマーと架橋性モノマーとの共重合体を加え、加熱する
ことによって合成することができる。また、ポリビニル
メチルエーテルなどの感熱性高分子層を基材表面に形成
せしめてからγ−線或いは電子線を照射することにより
不溶化高分子層を生成することができる。さらには、基
材表面に公知の方法で感熱性モノマーをグラフト重合に
よって高分子化して結合することもできる。共重合する
モノマーの種類を選択し、共重合の量的比率を適切に設
定することにより、希望する相転移温度に対する感熱性
高分子層を合成できる。
【0016】以上の感熱性高分子層の合成法を要約する
と次の通りとなる。 ホモポリマー相転移温度が異なる複数のモノマーを
共重合することにより感熱性高分子層の相転移温度を設
定する。架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミドを
感熱性高分子モノマーの1%程度添加することにより不
溶化感熱性高分子とする。 架橋性モノマーとの共重合により合成した感熱性高
分子基材を所定の形にして加熱する。 感熱性高分子を基材表面に塗布してからγ−線、或
いは電子線を照射、架橋し、感熱性高分子を不溶化す
る。 感熱性モノマーを基材表面にグラフト重合反応によ
り結合して感熱性高分子層とする。
【0017】以上の方法により合成した感熱性高分子層
を適当な厚さで紫外線(短波長光線)を吸収する着色ポ
リマーの表面に重層するか、或いは色材含有感熱性高分
子膜に紫外線(短波長光線)(波長450nm以下の光
線)を培養槽の外部から培養槽表面を間歇的に照射する
ことにより、紫外線(短波長光線)のエネルギーが熱エ
ネルギーに変換され、結果として感熱性高分子膜全体に
温度変化が誘起され、感熱性高分子層の相転移温度を中
心として培養液の水が交互に水和、脱水和され膜全体が
物理的に振動し、微生物の付着を強力に妨害する。同様
な作用効果が培養槽内部に設置された光拡散体保護管の
外表面でも誘起され、光合成微生物培養槽内部の各部分
から微生物付着が排除される。
【0018】本発明の重要な構成要素である短波長発生
装置としては中圧水銀ランプを使用することにより、そ
の目的を達成することができる。通常、中圧水銀ランプ
は波長300〜360nmの可視光に近い範囲までの紫
外線を発生することが出来る。次に、紫外線吸収剤とし
て用いる色素含有量を、培養装置の内部壁面及び内部の
光拡散体の保護管に均一に塗抹する方法としては、次に
示す方法の何れかが適用される。色素含有層の形成に
は、色素含有層と感熱層との分離系、及びそれらを一体
化した色素含有感熱層とがある。当然、前者の方法にお
いては色素含有層と感熱層の二重層となり、後者の方法
では両者が一体化された単層となる。もちろんこれらの
層の上又は下に透明な保護層等を設けることは本発明の
意図する範囲に属する。なお、前述の可視光に対し、透
明な紫外線吸収剤を用いる場合も、以下の説明に準じて
行えば良い。
【0019】(1) 分離系・・・ゾル−ゲル法 顔料自体が吸収する波長領域を越える波長の光に対し
て、透明性が確保された微粒子顔料を分散したシリカガ
ラスをゾル−ゲル法によって硬質ガラス器壁或いはステ
ンレススチール上に設け、このゾルゲルガラス表面に
(放射線)グラフト重合などによって感熱性高分子層を
設ける。より具体的には、有機、若しくは無機黄色顔料
の微粒子をテトラアルキルシリケートの含水アルコール
溶液に分散し、より好ましくはエーテルなどの有機溶媒
を添加し、これに塩酸を添加して酸性条件下で加水分解
により塗布溶液を調整する。この溶液を硬質ガラス器
壁、或いはステンレススチール器壁上に塗布した後、1
00度から300度の範囲、より好ましくは150度か
ら250度の間で30分から5時間加熱する。
【0020】無機顔料としては、クロムイエロー、カド
ミウムイエロー、チタンイエロー、黄色酸化鉄の他にピ
グメントイエロー1、ピグメントイエロー2、ピグメン
トイエロー3、ピグメントイエロー4、・・・・・、ピ
グメントオレンジ1、ピグメントオレンジ3、ピグメン
トオレンジ13などが好適に用いられる。光合成微生物
の培養に必要な波長の光に対しての透明性を高める場合
には、顔料の粒子径を1μm以下、特に0.5μm以下
であることがより好ましい。顔料は分散を良好にするた
めに、予め公知の方法によって界面活性剤などで処理を
施すことが好ましいが、無機顔料は分散性が良いので、
通常界面活性剤による処理を必要としない。塗布膜の厚
みは紫外線吸収剤の質や光吸収度に依存するが、黄色顔
料を用いる場合、0.1〜10μmが好ましい。これ以
下であると十分な光吸収層が得られず、また、これ以上
であると、ガラス塗布膜がひび割れするなどの問題が生
ずる。
【0021】(2) 一体系・・・・・色素含有感熱性高分
子膜 感熱性高分子に顔料微粒子を分散したのち、これを硬質
ガラス器壁に塗布する。次いで高分子の適性に応じて加
熱処理を施して架橋反応を起こさしめて感熱層を設け
る。より具体的には、感熱性高分子を与える少なくとも
1種類のアクリル系モノマーを架橋性モノマー、例え
ば、N−メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリル
酸グリシジルと共重合させた感熱性高分子を製造し、こ
の高分子溶液に微細な顔料を分散させてから硬質ガラス
の器壁上に塗布する。これを加熱し、より好ましくは架
橋反応を促進する酸性雰囲気下で処理を行なうことによ
って、水に不溶な顔料含有感熱性高分子膜とする。この
高分子被覆膜と器壁との接着性を向上させるために器壁
表面を予め表面処理(公知技術としてのシリル処理)し
ておくことが好ましい。
【0022】さらに、もう一つの具体的方法として、染
色感熱性高分子膜の製造法について説明する。感熱性高
分子を与える少なくとも1種類のモノマーと架橋性モノ
マー、さらには染色性モノマー、例えばジメチルアミノ
エチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどの塩
基性モノマー或いはスチレンスルフォン酸などの酸性モ
ノマーとの共重合体を製造する。この高分子を硬質ガラ
スの器壁上に塗布し、これを加熱し、より好ましくは架
橋反応を促進する酸性雰囲気下で加熱処理を行なうこと
によって、水に不溶な顔料含有感熱性高分子膜とする。
この高分子被覆膜と器壁との接着性を向上させるため
に、器壁表面を予め表面処理しておくことが好ましい。
次いで、黄色、或いは黄橙色の染料で染色する。色材の
使用量は通常原料の総重量に対して1〜50重量%の範
囲である。紫外線吸収色素としては顔料と染料がある
が、耐光性の観点から顔料の方が遙かに好ましく、染料
では、培養液に染料自身が溶出する可能性もあり、その
選定には慎重を要する。
【0023】
【作用】本発明の作用について説明する。従来、例えば
太陽光及び/又は人工光をエネルギー源として、現在、
地球温暖化の元凶とされている大気中の炭酸ガスを固定
し、或いは各種の有用物質を生産する光合成微生物を培
養するにあたり、宿命的に回避することができない光合
成微生物の培養装置への付着問題がある。また、光合成
微生物以外にも培養中に混在する付着生物等による付着
による障害の問題がある。本発明では、この付着問題を
温度格差或いは温度変動により、感熱性高分子膜がその
相転移温度を中心として、その低温側及び高温側で培養
液の水を水和及び脱水和することにより物理的に振動す
るという特性を利用することにより、本来的に振動する
表面に付着、増殖することを忌避する微生物本来の性質
によりその付着を防止することを可能としたものであ
る。
【0024】また、本発明は、培養槽及び培養槽内部器
材の培養液に接触する表面にまず、約450nmまでの
光を吸収する着色層を塗抹し、その表面に前記の感熱性
高分子膜を重層した二重層、或いは予め色材を含有せし
めた感熱性高分子膜の単層を形成し、培養槽の外部から
約450nmまでの短波長光線を間歇的に照射すること
により、また、同時に着色色素を吸収する光線を光導入
器を経由して間歇的に内部の光拡散体に導入して光エネ
ルギーを熱エネルギーに変換せしめることにより感熱性
高分子膜の温度変化を増幅して微生物付着防止効果をよ
り確実、強力にしたものである。
【0025】本発明では、短波長光線源として紫外線ラ
ンプを使用している。紫外線は、本来殺菌目的に使用さ
れ、微生物やヴィールスに対して最も強力な殺菌効果を
有する。紫外線の殺菌機構は、紫外線が微生物細胞の細
胞膜、細胞壁を透過し、生命の遺伝現象と生物機能を司
る核酸(DNA)に直接的に損傷を与え増殖機能・能力
を喪失せしめることにより微生物を死に至らしめること
による。本発明は短波長光線のこの殺菌効果に期待する
ものではなく短波長光線が保有している光エネルギーが
潜在的に保有する熱エネルギーポテンシアルに期待する
ものであり、そのために殺菌効果がなく、かつガラスを
透過する波長の光線を発生する中圧水銀ランプの短波長
発生装置(長波長カットフィルターを使用)を使用して
いるので、直接培養槽及び/又は光拡散体保護管を照射
しても炭酸ガス固定及び/又は特定の有用物質を生産す
るために培養している光合成微生物を死滅させる心配は
ない。
【0026】本発明ではたとえ如何なる波長の短波長光
線が外部、或いは内部から照射されても、これらの短波
長光線を完全に吸収する着色ポリマーをコーティングし
てあるので殺菌効果が顕在化することはなく、逆に、感
熱性高分子膜に熱エネルギーをより多量に供給するよう
に配慮されている。紫外線領域の短波長光線が保有する
熱エネルギーは大凡、その波長に反比例しており、例え
ば360nm波長の紫外線は340kJmol-1,45
0nm波長の光線は266kJmol-1の光量子エネル
ギーを保有している。しかし、何れの波長の紫外線を照
射するにしても、その照射は原則として間歇的、かつ短
時間であり、本発明の機能、作用効果を喪失させること
はない。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。 実施例1 図1は、本発明の光合成微生物の微生物培養装置の一例
を示す全体構成図である。図1において、1は光合成微
生物を培養する硬質ガラス製の培養槽である。この培養
槽1は素材として光を透過する硬質ガラスを選定した
が、実用レベルの培養槽ではその容積が1m3 程度とな
ることを前提として、素材は厚さ1mm程度のステンレ
ススチール製の培養槽、或いはステンレススチールと同
様に各種の波長の光線を透過しない素材で製作された培
養槽(反応槽)が用いられることがある。このような事
例では、黒色の染料、顔料或いは黒色染料を培養槽の外
壁に塗抹すると良い。或いは電熱式ヒータ(実施例5)
等をタンクに付設しても良い。
【0028】光合成微生物が増殖するに当り、必要な光
エネルギーは太陽光7及び/又は人工光7の何れを選定
してもよいが、両光源とも光合成微生物の増殖にマイナ
ス効果を与える紫外線及び/又は可視光部の赤外線及び
遠赤外線(波長700nm以上の光線)をフィルターに
よりカット、特に短波長カットフィルターを具備するこ
とが好ましい。人工光には通常、メタルハライドラン
プ、蛍光灯或いはキセノンランプ等が使用される。太陽
光及び/又は人工光7は通常光ファイバー8によって光
導入装置17に伝送され、適当に光の波長範囲を選定し
てから培養槽1に導入され、更に培養槽内に複数基設置
された光拡散体2に導入され、縦方向に槽内液に均一に
拡散し、分散される。
【0029】光拡散体2は光ファイバーを複数本束ねた
ものを鞘管(保護管)16で保護するか或いは鞘管16
により保護された合成樹脂、通常ポリメチルメタクリレ
ート製のロッドが採用される。図2に、この部分の拡大
図を示す。合成樹脂性のロッドには垂直方向に、ある一
定間隔で円周上に一定深さの溝(溝の間隔及び深さは、
深さ方向に疎に、かつ深くなるように加工されている)
を刻み、導入された光線が縦方向、即ち各深さから槽内
液に均一に拡散するように配慮されている。培養槽1の
内部には光合成微生物が槽内液即ち培養液13と均一に
混合されるように攪拌装置3とこれに連結されている駆
動装置6が取り付けてあり、ブロワー4から送気管5を
通じて培養槽1に送入される炭酸ガス富化空気20との
相乗効果により槽内液全体が均一に攪拌されるように考
慮されている。また、挿入された酸素富化空気20は排
気管15を経由して排気ガスとして培養槽1外に排出さ
れる。
【0030】本発明の最も重要な技術的要素である微生
物付着防止機構について述べる。まず、硬質ガラス製培
養槽1の内部壁面の表面に均一に短波長光線を選択的に
吸収する顔料及び/又は染料を混練及び/又は化学的、
電気的或いはイオン結合により結合せしめた色素含有層
11を均一に塗抹する。紫外線(短波長光線)(波長4
50nm以下の光線)12を選択的に吸収する色調は黄
色或いは黄橙色であり、この色調を呈する顔料及び/又
は染料が選定される。
【0031】本発明について、色素含有層11の表面に
塗抹する感熱性高分子膜10、即ち培養槽1内の培養液
13と直接接触する高分子膜には、前記したようにアク
リルアミド系とポリビニルメチルエーテル系のものがあ
るが、その何れを使用しても本発明の機能及び作用効果
を阻害するものではない。通常は、アクリル系モノマー
が使用されるが、培養する光合成微生物の培養温度近傍
の相転移温度となるように2種のポリマーを選定し、そ
れぞれを適量配合してメチレンビスアクリルアミドのよ
うな2官能基を有するモノマーと共重合することにより
合成される。
【0032】このようにして合成した感熱性高分子膜1
0を色素含有層11の表面に均一に重層する。(以後、
2重層方式についてのみ説明する)色素含有層11と感
熱性高分子膜の厚みは、色素(色材)の含有量に依存す
るが、熱伝導性を考慮して数μmから数百μmの範囲と
することが好ましい。また、培養槽1内部に設置された
光拡散体2の保護管16の表面も図2の拡大図に示して
あるように、培養槽1の内部表面の加工と全く同じ方法
により、保護管16の表面に色素含有層11と感熱性高
分子膜10の2重層を形成させる。培養槽1の外部には
色素含有層11を照射する長波長カットフィルターを取
り付けた短波長発生装置9が設置される。この紫外線発
生装置9は発生する紫外線の波長が300〜350nm
となる圧圧水銀ランプを採用することが好ましい。
【0033】本発明では、如何なる短波長の光線が照射
されても、色素含有層11によって全量が吸収され、熱
エネルギーに変換されるので培養する光合成微生物に活
性阻害を与えることはなく、この機構も本発明の重要な
特徴である。短波長発生装置9で発生した紫外線部領域
の短波長光線12は光ファイバー8によって培養槽1近
傍に伝送され、或いは光導入装置17によって培養槽内
部の光拡散体2に伝送され、外部及び/又は内部から色
素含有膜を間歇的に照射し、その外層に塗抹されている
感熱性高分子膜10の温度を高低せしめ、相転移温度を
交互に上下することにより感熱性高分子膜10を物理的
に振動せしめることにより、光合成微生物の付着を未然
に防止することが出来る。
【0034】また、培養槽1が、例えばステンレススチ
ールのように全ての波長の光線を透過しない素材で製作
されている場合、通常、実際規模の培養槽の場合には、
紫外線12を吸収する色素含有膜11或いは黄色或いは
黄橙色の塗料を培養槽1の外壁に塗抹する必要がなく、
全領域の波長を効率よく吸収する黒色の顔料或いは染料
含有膜か、さらには単に黒色塗料を外壁に均一に塗抹す
ればよい。この場合には、当然、短波長発生装置9から
長波長カットフィルターを取り外し、全波長領域の光線
を培養槽1の外壁に照射すればよい。
【0035】ステンレススチール等の鋼材は硬質ガラス
よりも遙かに熱伝導率、熱貫通率が大きいために、培養
槽1の内壁に塗抹された感熱性高分子膜10が相転移温
度を挟んで脱水和、水和することにより物理的に振動す
るのに十分な熱を確実に与えることができる。培養槽1
には培養液13が張り込まれ、目的により選定された光
合成微生物が接種され、光エネルギーを供給しながら連
続的及び/又は間歇的に培養される。増殖した所謂余剰
菌体は排出管14によって培養槽外に取り出される。培
養槽1の光合成微生物の濃度を高めるために、余剰菌体
を培養槽1に循環・返送する方法も本発明方法に包含さ
れる。
【0036】実施例2 図3は本発明の光合成微生物培養装置の他の例を示す全
体構成図である。図3の装置は基本的には図1に示した
ものと相違するところはないので詳細は図1の説明を参
照されたい。図3の培養槽1は図1の培養槽に対して、
光合成微生物が必要とする光エネルギーを白色蛍光灯に
より供給することを特徴とする培養槽である。培養槽1
の内部に円盤或いは正方形板に複数本の蛍光灯2を中心
振り分けに対象的に取り付け、これにより光合成微生物
に均一に光エネルギーを拡散する形式のものである(蛍
光灯は当然、鞘管16によって保護されている。図4に
その部分拡大図を示す。)
【0037】本培養槽1は光供給を電気エネルギーに依
存しているために、当然、図1の太陽光及び/又は人工
光7、光ファイバー8、光導入装置17を必要としな
い。図3の培養装置では培養槽内で蛍光灯を取り付けた
円盤或いは正方形板が蛍光灯2が取り付けられたまま駆
動装置6によって回転し、この回転によって槽内溶液が
均一に攪拌される。この場合、培養槽1の底部に設置さ
れた散気装置18からブロワー4と送気管5によって送
入される炭酸ガス富化空気の相乗効果によって完全な攪
拌が行なわれる。また、蛍光灯には電気エネルギー19
が回転軸を通じて供給される。さらに、培養槽1の外部
に設置された紫外線発生装置9で発生した紫外線の槽内
への伝送と導入は光ファイバー8と紫外線導入装置17
によって達成される。培養槽1のそれ以外の構成要素は
図1の培養槽1に準じて製作されている。
【0038】実施例3 (1) 図1に示した培養槽とそのシステムを構成して、微
生物付着防止実験を行なった。 培養槽の素材は硬質ガラス製、槽のガラス厚は5mmと
した。培養槽の寸法、その他の諸元は以下の通りであ
る。 *寸 法 : 10(cm直径)×42(cm深さ) *有効水深: 32(cm) *容 積 : 2.512(リットル) *有効容積: 2.21(リットル)
【0039】(2) 培養槽に導入する光エネルギーは、太
陽光は時々刻々変動し、得られたデータの正当な評価が
困難であるので、人工光としてキセノンランプを使用し
た。培養槽に常時導入する人工光は赤外線と紫外線をカ
ットするフィルターを取り付け、波長450nm以下、
波長700nm以上の光線を可能な範囲でカットした。
この波長範囲の光線を培養槽まで光ファイバーで伝送
し、槽内の光拡散体に供給した。光拡散体はポリメチル
メタクリレート製のロッド24本を直径1cmの光透過
製ガラス保護管で保護した。ロッドの長さは28cm、
発光面積は0.21(m2 )である。キセノンランプは
300(W)×2基、このランプにより培養槽内への入
射エネルギー量は概算で102(W/Hr)である。ま
た、光度、照度は概算で次の通りとなる。 *光 度: 4,177(lm) *照 度: 19,890(lx)
【0040】(3) 培養槽へ炭酸ガス富化空気(炭酸ガス
・・・5%)を3〜5リットル/時間供給した。 (4) 使用菌体は前記した通り、淡水性緑藻クロレラ ピ
レノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)を選択した。 培養槽に表1に記載した培養液を張り込み、予め予備培
養した菌株液を500(ml)接種し、最終的な濃度が
約5,000(mg/l)程度となった時点で付着防止
実験を開始した。培養槽は対照実験用を含めて2基製作
し、床面積4坪の恒温室に設置し、10日間連続培養を
行なった。恒温室の設定温度は25℃とした。
【0041】
【表1】 *上記の培養液に微量元素としてH3 BO3 、MnCl
2 、CuSO4 、Na2 MoO4 を微量添加する。
【0042】(5) 短波長発生装置としてはハノービア製
の中圧水銀ランプによる紫外線発生装置を使用したが、
紫外線波長はほぼ350nmに集約していた。この紫外
線発生装置からの紫外線により培養槽外表面を照射する
とともに、紫外線を分岐して培養槽内の光拡散体にも導
入した。培養槽外表面の照射及び光拡散体への紫外線の
導入条件は10秒照射、20秒休止を反復した。ハノー
ビア製紫外線発生装置の供給電力は0.6(kW)であ
る。 (6) 紫外線領域の短波長光線を吸収する色素物質として
は顔料を使用し、黄色を呈するピグメントイエロー5を
選定し、これをポリメチルメタクリレートに10%添加
して混練し、培養槽の内部壁面と内部器材(光拡散体保
護管の外表面)に約3μmの厚さに均一に塗抹した。
【0043】(7) 緑藻 Chlorella pyrenoidosa(クロレ
ラ ピレノイドーサ)の培養温度が25℃であるため
に、感熱性高分子膜の相転移温度がその近傍の25℃と
なるように2種のポリマーを選定し、架橋剤を加えて感
熱性高分子ゲルを得た。即ち、実験に供した感熱性高分
子ゲルの基材はN−プロピルアクリルアミドとN−アク
リロイルピペリジン及びN−メチロールアクリルアミド
を重量比で9:1:0.5となるように取り、それに重
合開始剤であるペルオキソ二硫酸アンモニウムを加えて
反応させ、N−プロピルアクリルアミドモノマーとN−
アクリロイルピペリジンの共重合体を形成させる。色素
含有層の形成は、前記の分離系・ゾル−ゲル法に準じて
行なった。この感熱性高分子膜の相転移温度は実測した
結果では殆ど25℃であった。
【0044】この感熱性高分子膜を前記の色素混練膜上
に約3μm厚に均一に塗抹重層し、クロレラ ピレノイ
ドーサ(Chlorella pyrenoidosa)の培養槽内部表面及び
内部の光拡散体の鞘管外表面への付着防止効果の検証実
験を行なった。 実験結果 前記の培養槽(素材は硬質ガラス製)、培養条件及
び培養システムにより、培養が定常状態に達してから1
0日間クロレラ ピレノイドーサ(Chlorella pyrenoid
osa)を連続培養し、適当な日を選定して本発明と対照の
培養槽の内部壁面及び培養液温度を16時間に渡り測定
した結果は次の通りである。
【0045】*培養槽内の液温は、培養槽を25℃に調
整した恒温室にセットしたため、殆ど25℃近傍に維持
されていた。 *本発明の培養槽の内壁表面に塗抹した感熱性高分子膜
の表面温度は、図5に示した通り設定温度の25℃を中
心にして約1.0℃〜1.5℃の範囲で変動し、その変
動幅は約2〜3℃となり、その高低の時間サイクルは4
〜5時間であった。この測定結果は、培養槽を紫外線で
照射することにより、照射エネルギーは色素混練膜によ
り確実に熱エネルギーに変換され、その外表面に重層さ
れている感熱性高分子膜に伝播されることを示してい
る。 *これに対して、対照の培養槽の硬質ガラスの内部表面
の温度は、実質的に培養槽の培養液の温度と同一であっ
た。
【0046】 微生物付着防止効果 短波長光線を間歇的に照射することによる感熱性高分子
膜の温度変化に対応しての物理的振動によるクロレラ
ピレノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)の壁面への付
着防止効果を検討した。得られた所見は次の通りであっ
た。 *本発明の培養槽の内部壁面(感熱性高分子ゲルの表
面)と光拡散体の保護管の外表面には、目視的には菌体
の付着は殆ど認められなかった。1サイクルの培養実験
が終了した時点で、培養槽の上蓋を開け、培養液と培養
液中に懸濁している菌体を排除したのちに、感熱性高分
子膜の表面を可及的正確に9cm2 切り取り、水洗浄に
より100mlのビーカーに移し取り、菌数を測定した
ところ1cm2 当たり僅か101 程度が付着しているに
過ぎず、本発明の顕著な効果が確認された。
【0047】*これに対して、対照の培養槽では目視的
に可成りの菌体の付着が認められ、しかもクロレラ ピ
レノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)がある厚みで付
着していた。本発明の培養槽の菌体付着測定方法と同じ
手法で菌体数を測定したところ105 /cm2 に達する
菌体が培養槽素材の硬質ガラス表面に付着していること
が確認された。測定結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】実施例4 (1) 本実施例では図3に示した培養槽を使用し、かつ、
培養槽の素材はステンレススチールSUS316Lを用
い、槽厚は1mmとした。直径6cmの円板に長さ20
cm、使用電力40Wの細型白色蛍光灯を中心振り分け
で8本取り付け、それぞれの蛍光灯は保護管で保護し
た。それぞれの蛍光灯の下部は安定性を維持するため
に、上部と同様に6cmの円板で固定した。円板の回転
数は毎分80回転、下部の散気装置からの炭酸ガス富化
空気との相乗効果により培養槽の内溶液を攪拌混合し
た。
【0050】(2) 本発酵槽は素材がステンレススチール
製であるため、紫外線を培養槽の内部壁面に透過させる
ことが出来ない。従って、培養槽の外壁を常用されてい
る黒色塗料で均一に塗抹し、短波長光線発生装置にセッ
トしてある長波長カットフィルターを取り外して、全波
長領域の光線により培養槽外壁を照射した。また、8本
の蛍光灯を培養槽に対して中心振り分け的に取り付けた
実験でも同様の効果が得られたが当然の結果であると云
える。この実験でも、蛍光灯の総電力は0.6kWに統
一した。蛍光灯を保護するための保護管の外部表面は実
施例3と同じく内部が色素含有膜、外部が感熱性高分子
膜の2重層を形成させた。 (3) その他の全ての条件は実施例3と同一である。
【0051】実験結果 本発明による培養槽は鋼材製であるために熱伝導率
がよく、その効果が期待された。紫外線照射による温度
変化について観察した結果は次の通りである。 *対照及び本発明の培養槽の液温は、実施例3と同様に
25℃の恒温室にセットしたことにもよるが、図6に示
してあるように殆ど一定である。 *本発明の培養槽は鋼材製であるために熱伝導率が高
く、図6からも分かるように、培養温度25℃を中心と
して1.5℃から2.0℃の高低範囲にあり、変動する
温度範囲は3.5〜4.0℃であり、実施例1よりも若
干変動幅が広い。但し、温度の高低の周期は5時間程度
である。 *対照の培養槽では、図6に記載してある培養槽液温と
殆ど一致し、温度変動は認められなかった。
【0052】 微生物付着防止効果 *本発明の培養槽は鋼材製であるために、実験中には培
養槽の内部を目視することが出来ない。従って、1サイ
クルの培養実験が終了した時点で上蓋を取り、目視した
結果では試験菌株の内部壁面及び蛍光灯の鞘管への付着
は実質的に認められなった。実施例3の手法に準じて、
内部壁面(感熱性高分子ゲルの表面)への付着菌数を測
定した結果、実施例3と同じく101 個/cm2 程度で
あり、本発明の有効性が実証された。 *これに対して、対照の培養槽では、SUS316Lの
表面に試験菌株が濃厚に付着しているのが目視された。
対照の培養槽における付着菌数は実測したところ107
個/cm2 であり、硬質ガラスよりもステンレススチー
ルの方が、より付着しやすいという所見が得られた。測
定結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】実施例5 本発明の装置は、熱変動を光エネルギーの吸収以外の方
法で行っても良い。図7には、電熱式ヒータ28をステ
ンレス容器に巻きつけた構成を示している。光拡散体を
内蔵する鞘管にも十分に細い熱線ヒータ28を間隙をあ
けて配設することにより熱変動をおこすことができる。
【0055】
【発明の効果】本発明は、詳述したように従来技術とは
発想の次元を全く異にする発明であり、本発明により次
のような効果を奏することが出来る。 付着微生物が付着する表面そのものが振動するた
め、確実に微生物の付着を防止できる。 表面の振動が微妙な熱変動により行なわれるため微
生物培養に影響がない。 光エネルギーを吸収して熱変動を生じさせるため、
特に付着障害が顕著な光合成微生物の培養に好適な透明
容器に好ましく用いることができる。 極めて薄い膜状物を塗付すれば良いので、いかなる
装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光合成微生物培養装置の一例を示す全
体構成図。
【図2】図1の光拡散体の部分拡大図。
【図3】本発明の光合成微生物培養装置の他の例を示す
全体構成図。
【図4】図3の光拡散体の部分拡大図。
【図5】硬質ガラス製培養槽における温度変動グラフ。
【図6】ステンレススチール製培養槽における温度変動
グラフ。
【図7】本発明の微生物培養装置の他の例を示す全体構
成図。
【符号の説明】
1:培養槽、2:光拡散体、3:攪拌装置、4:ブロワ
ー、5:送気管、6:駆動装置、7:太陽光及び/又は
人工光、8:光ファイバー、9:短波長光線発生装置、
10:感熱性高分子膜、11:色素含有層、12:短波
長光線、13:培養液、14:余剰菌体、15:排気ガ
ス、16:鞘管、17:光導入装置、18:散気装置、
19:電気エネルギー、20:炭酸ガス富化空気、2
8:電熱式ヒータ、

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物の付着を防止する方法において、
    培養液と接触する表面の少なくとも一部を感熱性高分子
    膜で形成し、該感熱性高分子膜に反復的に熱変動を与え
    て相転移を惹起して、被覆膜構造を運動させることを特
    徴とする微生物付着防止方法。
  2. 【請求項2】 前記感熱性高分子膜は、培養する微生物
    の成育に重大な影響がない温度範囲で相転移することを
    特徴とする請求項1記載の微生物付着防止方法。
  3. 【請求項3】 前記感熱性高分子膜は、450nm以下
    の波長の光線を吸収する着色材を共存させるか、又は4
    50nm以下の波長の光線を吸収する着色層上に形成さ
    せることを特徴とする請求項1又は2記載の微生物付着
    防止方法。
  4. 【請求項4】 微生物の付着を防止できる微生物培養装
    置において、該装置の培養液と接触する表面の少なくと
    も一部を、培養する微生物の成育に重大な影響がない温
    度範囲で相転移する感熱性高分子膜で被覆し、該被覆膜
    に熱を供給する手段を設けたことを特徴とする微生物培
    養装置。
  5. 【請求項5】 前記感熱性高分子膜が、450nm以下
    の波長の光線を吸収する着色材を共存させるか、又は4
    50nm以下の波長の光線を吸収する着色層上に被覆さ
    せたものであり、該被覆膜に450nm以下の波長の光
    線を供給する手段を備えたことを特徴とする請求項4記
    載の微生物培養装置。
JP12592194A 1994-05-17 1994-05-17 微生物付着防止方法及びそれを用いた微生物培養装置 Pending JPH07308185A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6767537B2 (en) * 2000-05-26 2004-07-27 Phil Arnold Nicolay Composition and method for the treatment of sinusitis
JP2014512832A (ja) * 2011-05-06 2014-05-29 アクタ アルガ 光合成微生物の培養のための閉じた環境での光バイオリアクター

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6767537B2 (en) * 2000-05-26 2004-07-27 Phil Arnold Nicolay Composition and method for the treatment of sinusitis
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