JP3480706B2 - 軽量発光担体 - Google Patents
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Description
て、CO2 の増加や人口の増加等に伴う食糧危機が懸念
されている。本発明は、藻類等の光合成生物に光を効率
よく照射供給して培養する光合成培養装置に使用するの
に適した軽量発光担体であって、CO2 を生物的に固定
化して、大気中のCO2 を低減しつつ、得られる生物を
食糧や有用物質生産の資源として利用することができる
光合成培養装置に使用される軽量発光担体に関する。
化する各種の方法の中でも、生物による光合成を用いる
方法は、エネルギー源に太陽光を用い、環境に調和した
技術として知られている。
は、古くからオープンポンド方式が知られている。しか
し、この方法では、培養が進むにつれて生物濃度が高く
なり、光供給不足による増殖速度の低下を防ぐために、
液深を浅くする必要があり、結果として広大な設置面積
が必要であった。
ため、光を適度に希釈する方法が学術的に知られてお
り、この知見をもとにして培養液内に光を伝送する際の
照射効率向上の各種の方法が考案されている。例えば、
特開昭51−106783号公報では採光体を培養槽に
投入した考案がある。同様に、特開昭52−10527
7号公報では導光体を培養液に収容した考案がある。
適な発光担体(平板状光散乱体とも呼ぶ)を採用した光
合成培養装置により、オープンポンド方式と比べて少な
い設置面積で効率よく、また集光方式と比較して建設費
を大幅に削減できることを示した(特開平8−2622
31号公報、特開平8−262232号公報、特開平1
0−191956号公報)。
を生物的に固定化して大気放出を低減しつつ、得られる
生物を食糧や有用物質生産の資源として利用することを
前提とした光合成培養装置の提供を鑑みると、処理量の
多さから装置規模は必然的に大きくならざるを得ない。
また、光合成培養装置のスケールアップは、通常、培養
容積あたりの照射面積を一定としなければならないとい
う制限があり、このことも装置の大型化の要因となって
いる。加えて、発光担体における受光面積と照射面積の
比は光の希釈率の関係から一定もしくはある範囲に制限
されるため、結果として発光担体自体の形状や容積も自
由に変更できない制限がある。
CO2 収支バランスを考えると、装置建設初期において
光合成培養装置を設置すること自体がCO2 を発生する
ことを意味している。従って、CO2 を低減するという
本来の目的に照らすと、光合成培養装置はできるかぎり
小さいことが望ましい。とりわけ、光合成培養装置にお
ける主要構成品である発光担体に用いる材料使用量の削
減は、その効果が期待される。
板厚を薄くすることは、構造的に強度が弱くなるという
問題や、空洞容積が増えて比重が小さくなるため、発光
担体を培養液中に沈めて使用するために、増大する浮力
に抗して設置する新たな課題が発生するほか、下記の比
較実験で述べるように、中空状発光担体であっても、光
学特性が箱状の光学特性に近似して、悪くなるという新
たな問題が発生する。
培養のスケールアップとそれに用いる発光担体の材料使
用量の削減といった相反する技術的な制限の中で、光合
成培養装置に使用される発光担体として要求される光学
的な特性を保ちつつ、しかも必要な構造的強度を保つこ
とができる中空状発光担体を提供し、且つ培養液中に浸
漬した場合の浮力の問題を解決できる中空状発光担体を
提供することを目的とする。
ために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の構造を
基本とする新規な軽量発光担体を発明するに至った。
幅広方向と縦長方向からなる面に光分散フィルムが設け
られ、かつ該中空体内に液体が封入されていることを特
徴とする軽量発光担体である。
の発光担体と比べて、従来使用していた本体構成素材の
正味の使用量を削減した、すなわち相対的に軽量化した
ことを表すために便宜上使用している。すなわち、発光
担体の総量自体が小さくなることを意味するものではな
い。
化した例を図1に示す。1は光学特性に優れる透明な中
空体であり、底部に白板5を有し、中空体1内に幅広方
向と縦長方向からなる面に光分散フィルム2が設けられ
ている。中空体1内には、液体6が封入されている。中
空体1の形状・構造は、薄板またはフィルムによる6面
体構造が好ましい。
ム」は、厚さや、成形方法の違いを意味して用いている
が、機能的に同じであるため、以下、「薄板」と統一的
に記す。また、図1は6面体構造の例を示しているが、
本発明では形状を直方体に限定するものではない。すな
わち、6 面体の面が湾曲していてもよいし、角が丸みを
帯びていてもよい。
がよく、透明性が高く、太陽光線の影響を受けにくい透
明プラスチックやガラスがよい。プラスチックとして
は、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹
脂、ビニール樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸
セルロース、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリフ
ェニレン・オキサイドなどが用いられる。また、これら
素材を複合して使用してもよい。
て来た光を散乱させるものであって、フィルム状だけで
はなく薄板状であってもよい。本発明においては、光分
散フィルム2も光分散薄板も、光学分散において同様の
機能を有するため、以下「光分散フィルム」と統一的に
記す。光分散フィルム2は透明なプラスチックフィルム
(担体フィルム3と記す)を基板として、これに光散乱
率の高いフィルム(散乱フィルム4と記す)をパターン
状に設けて形成してもよい。散乱フィルム4の材質とし
ては金属フィルム、白プラスチックフィルム、スリ加工
フィルムがよい。 散乱フィルム4は担体フィルム3に
従来技術を用いて蒸着、溶着、接着、圧着することによ
り一体化でき、一体化したものは、光分散フィルム2を
構成する。また、散乱フィルム4をカット加工して光分
散フィルム2としてもよい。すなわち、散乱フィルム4
の素材のみで光分散フィルム2を構成してもよい。
開平8−262232号公報)などを参考として、軽量
発光担体用に最適化されたものを用いることができる。
体1内を伝送して下面に到達した光を反射させるための
反射効率の高い白色の板であり、中空体1の底部より上
へ光を散乱させて、最終的に散乱光が培養に寄与するた
めのものである。中空体1底部が透明のままでは軽量発
光担体中を伝送して来た光はそのまま、底を突き抜け、
外に出てしまい、光合成培養に有効に利用できなくなる
可能性が高くなる。特に、底部が培養槽に接している場
合にはその傾向が高い。
ィルム2を化学的に侵さず、また仮に中空体1が破損し
ても環境を汚染しないものを使用するとよい。液体6と
しては光学特性に優れた水、無機オイル、有機オイルな
どが使用できる。無機オイルとしてはシリコンオイルな
どがある。有機オイルとしては鎖式炭化水素などがあ
る。最も好ましくは水、または水を主成分とするのがよ
い。水は、従来技術による加熱処理、加圧加熱滅菌、放
射線照射滅菌、濾過滅菌などにより処理したものを用い
ることが好ましい。あるいは中空体1や光分散フィルム
2を侵さない殺菌効果のある防腐剤を添加してもよい。
また、使用する水、また水を主成分とする液体は、水
中、または液体中の溶存空気を除去す処理、例えば、加
熱処理、減圧脱気処理、透過膜脱気処理及び/又は超音
波印加脱気処理等の処理を行うことが好ましい。
を制限するものではない。また、液体中に光学的分散機
能を有する素材を混入して使用することを制限するもの
ではない。
空体1の形状を長さH、幅W、厚さDの6面体構造とす
ると、受光面積(W×D)と照射面積(H×2(W+
D))の関係から、太陽光は照射面積を受光面積で除し
た値に比例して希釈される。すなわち、本発明の軽量発
光担体を光合成培養装置の光供給のために用いる場合に
は、中空体1の上端面から受光した光は、中空体1内部
に導入され、光分散フィルム2で散乱され、中空体1の
表面全体から照射されるので、受光面積と照射面積の関
係を最適化して光利用効率を高めた条件下で培養を行う
ことが可能となる。
ける光強度分布が均一でがあることが必要である。本発
明においてこの光分布の均一性を実現するのが、光分散
フィルム2と液体6であり、両者のいずれが欠けても光
強度の分散特性は低下し、本発明は目的は達成されな
い。この光強度の分散性については実施例、比較例で後
述する。
重要な効果が得られる。すなわち、本発明の軽量型発光
担体において、従来の発光担体の素材であるプラスチッ
ク樹脂やガラスの一部を液体6に代えることで、発光担
体の正味の材料使用量の削減が可能となる。とりわけ液
体6として水は安価な素材として適用でき、装置コスト
の削減はもちろんのこと装置設置に伴うCO2 発生量の
削減効果に寄与する。
が中空、すなわち気体である場合より安全に構造的強度
を得ることが可能となる。また、発光担体の素材の一部
を液体6とすることで比重を大きくでき、中空発光担体
における液体6がない場合の浮力対策等の使用上の不具
合を解消できる。
い腐敗や藻類の増殖が生じやすく、軽量発光担体で用い
る水の場合に同様の現象が軽量発光担体内部で発生する
と光透過率の低下を生じるため好ましくない。本軽量発
光担体では用いる水を滅菌処理することで、これらの不
具合を防止する作用がある。
変化により気泡が発生する場合がある。軽量発光担体内
部で気泡が発生すると、内部に付着したり、特に軽量発
光担体上部の受光面に空気層を形成したりして光強度分
布の不均一性の原因となる。軽量発光担体に用いる水を
脱気処理することにより、気泡の発生を防止する効果が
生じる。
cmとし、板厚を3mmとしたアクリル樹脂製の中空体
を用意した。中央に厚さ0.2mmのポリカーボネート
フィルムを担体フィルムとして設けた。この担体フィル
ムには、あらかじめ厚さ0.1mmステンレスフィルム
を散乱フィルムとして、既知の技術によりフィルムの幅
と間隔をパターン化したものを接着した。水は沸騰後、
冷却して封入することにより、本実施例1の軽量発光担
体とした。
は実施例1と同様にして「箱状発光担体+光分散フィル
ム」の軽量発光担体を製作した。
ず、水のみを封入した以外は実施例1と同様にして「箱
状発光担体+水封入」の発光担体を製作した。
けるそれぞれの担体表面光分布を測定した。その結果を
縦軸に光強度分布をとり横軸に軽量発光担体入口からの
距離をとったグラフとして、図2(実施例1)、図3
(比較例1)、図4(比較例2)に示す。
例1では軽量発光担体表面の全体から光照射が得られ
た。一方、比較例1では、太陽光は入射面付近の上部で
主に発光担体表面から照射され、光分布特性が悪かっ
た。また、比較例2では太陽光は入射面と反対側におい
て主に発光担体表面から照射され、光分布特性が悪いこ
とが分かった。
み、必要とされる光照射仕様を満足し、太陽光下におけ
る光合成培養装置の発光担体として適用できることが分
かった。
5〕材料削減率及び比重比較 軽量発光担体の外形サイズを長さ30cm×幅20cm
×厚さ3cmとし、板厚を3mmとしたアクリル樹脂製
中空体を用意した。白色アクリル樹脂フィルム(散乱フ
ィルムのみ)を既知の技術により幅と間隔をパターン化
してカッティング処理を行って、厚さ0.3mmの光分
散フィルムを作製し、該光分散フィルムを中空体の内部
中央に設けた。封入水にはシリコン透過チューブ式脱気
装置で処理した水に次亜塩素酸ナトリウム溶液を50p
pm添加して本実施例2の軽量発光担体とした。これを
図5に示す。
材料削減率と比重を下記の表1に示す。比較例として、
本実施例2と同じアクリル樹脂で製作し、外形とサイズ
を本実施例2と同じくした次の3種類の構造の発光担体
ユニットを用意した。即ち、図6の構造の板状発光担体
ユニットで全てアクリル板のもの(比較例3:板厚30
mm)、図7の構造のアクリル板の内側面にスリ散乱処
理した中空状発光担体ユニットで封入水がないもの(比
較例4:板厚10mm×2枚)、及び図8の構造の箱状
発光担体ユニットで封入水がないもの(比較例5:板厚
3mm×2枚)を用意し、これらの発光担体ユニットの
材料削減率と比重を下記の表1に併記する。ここで、ア
クリル樹脂材料の削減率は中空部分の存在しない比較例
3の板状発光担体ユニットを基準として表す。
削減率は28%であったのに対して、本実施例2の軽量
発光担体ユニットは75%と高い削減効果があった。比
較例5の箱状発光担体ユニットの材料削減率は76%と
本実施例2の軽量発光担体と同等であったが、比重が
0.29と培養液中に固定設置するのが著しく困難であ
った。本実施例2の軽量発光担体ユニットの比重は1.
05と培養液中への固定がもっとも容易で設置コストが
もっとも安価であった。
の板状、実施例2の軽量、及び比較例5の箱状の各発光
担体中央に位置する発光担体表面の中心点Aを代表点と
して、太陽光下における担体照射光強度変化を示す、縦
軸に光強度、横軸に時刻をとってプロットしたグラフで
ある。
す太陽光光強度の変化に対する、箱状、及び板状発光担
体照射強度は、軽量発光担体の照射光強度と異なり、著
しく悪いことが分かる。すなわち、箱状発光担体では、
太陽高度が高い日中の短時間のみ発光担体中心点からの
照射が観察された。また、板状発光担体は、中心点での
照射は終日小さい値でしか観察されなかった。そして、
軽量発光担体のみ、太陽光光強度に追従した光照射が得
られた。このデータは、箱状、及び板状発光担体では光
強度特性が悪く問題であることを示している。なお、図
には示していない比較例4の中空状発光担体は、軽量発
光担体と同等の光強度特性であったが、前述のとおり、
軽量化がなされてない点で劣る。
cm×厚さ3cmとし、板厚を3mmとするアクリル樹
脂製中空体とした。中央に厚さ0 .2 mmのアクリル樹
脂フィルムを担体フィルムとして設けた。この担体フィ
ルムには、あらかじめ厚さ0.1mm白色アクリル樹脂
を散乱フィルムとして、既知の技術によりフィルムの幅
と間隔をパターン化したものを接着して、光分散フィル
ムとした。このようにして軽量発光担体を16枚作製し
た。このとき、121℃で加熱滅菌、且つ脱気し、冷却
した水を軽量発光担体内に密封したものを8枚と、放射
線照射滅菌、及び減圧・超音波印加脱気処理した水を密
封したものを8枚とした。これらの軽量発光担体を85
cm幅×17cm奥行き×30cm水深の培養液(改変
MC培地:水1LにKNO3 、KH2 PO4 、MgSO
4 ・7H2 Oを各1g、およびFe溶液、A5溶液各1
mLの割合で溶解)中に装着し、太陽光の下で、CO2
5%濃度の通気ガスを0.4vvmで通気撹拌して微細
藻類であるChlorella vulgarisの培養を行った。また、
同条件で軽量発光担体を装着しない、オープンポンド方
式の培養装置による比較培養を実施した。
過時間毎の培養液について吸光度で測定した培養曲線を
図12に示す。このときの培養期間における日射量平均
値は14.8MJ/m2 /dであった。図12に示すよ
うに軽量発光担体を用いた光合成培養装置では高濃度で
培養が行え、藻体回収における回収動力も削減できた。
CO2 換算固定量で性能を比較すると、軽量発光担体を
用いた光合成培養装置とオープンポンド培養装置ではそ
れぞれ、37.9g−CO2 /m2 /dと16.3g−
CO2 /m2 /dであった。すなわち、軽量発光担体を
用いることで約2.3倍の培養効率の向上効果が得られ
た。
て観察したが、6 ケ月の使用後も雑菌等の腐敗による透
明性の低下や、気泡の発生はいずれも認められなかっ
た。
される光学的な特性を保ちつつ、光合成培養装置におけ
る主要構成品である発光担体に用いる材料使用量につい
て高い削減効果を達成する。また、構造的に発光担体の
膜厚を確保することができるため、強度の低下といった
構造的な問題が無く、材料使用量の削減ができ、しかも
浮力の問題も発光担体内部に水を封入することにより解
決できる。
例を示す。
ィルム+水封入)を用いて太陽光照射における担体表面
光分布を示すグラフである。
ィルム)を用いて太陽光照射における担体表面光分布を
示すグラフである。
を用いて太陽光照射における担体表面光分布を示すグラ
フである。
ル板のものを示す図。
した中空状発光担体ユニットで封入水がないものを示す
図。
いものを示す図。
光担体表面の中心点を代表点として、太陽光下における
担体照射光強度変化を、縦軸に光強度、横軸に時刻をと
ってプロットしたグラフである。
担体表面の中心点を代表点として、太陽光下における担
体照射光強度変化を、縦軸に光強度、横軸に時刻をとっ
てプロットしたグラフである。
担体表面の中心点を代表点として、太陽光下における担
体照射光強度変化を、縦軸に光強度、横軸に時刻をとっ
てプロットしたグラフである。
ンド方式の培養方法により得られた培養経過時間毎の各
培養液について吸光度で測定した培養曲線を示すグラフ
である。
Claims (5)
- 【請求項1】 透明の中空体内の幅広方向と縦長方向か
らなる面に光分散フィルムが設けられ、かつ該中空体内
に液体が封入されていることを特徴とする軽量発光担
体。 - 【請求項2】 前記中空体が光学特性に優れる薄板また
はフィルムからなる6面体構造である請求項1記載の軽
量発光担体。 - 【請求項3】 前記光分散フィルムが担体フィルムに光
散乱率の高い散乱フィルムが設けられたものであること
を特徴とする請求項1記載の軽量発光担体。 - 【請求項4】 前記液体が水または含水液体であること
を特徴とする請求項1記載の軽量発光担体。 - 【請求項5】 前記液体が、滅菌、防腐剤添加、及び脱
気から選ばれたl種類以上の処理が施されたことを特徴
とする請求項1記載の軽量発光担体。
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