JPH0730399B2 - 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH0730399B2 JP2121766A JP12176690A JPH0730399B2 JP H0730399 B2 JPH0730399 B2 JP H0730399B2 JP 2121766 A JP2121766 A JP 2121766A JP 12176690 A JP12176690 A JP 12176690A JP H0730399 B2 JPH0730399 B2 JP H0730399B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方
法に関する。
〔従来の技術〕
一方向性電磁鋼板は、主として変圧器、発電機その他の
電気機器の鉄芯材料として用いられ、磁気特性として励
磁特性と鉄損特性が良好でなければならないことの他、
良好な皮膜を有するものでなければならない。
一方向性電磁鋼板は、二次再結晶現象を利用して圧延面
に{110}面、圧延方向に〈001〉軸をもつ所謂ゴス方位
を有する結晶粒を発達させることによって得られる。
前記二次再結晶現象は、周知のように、仕上焼鈍過程で
生じるが、二次再結晶の発現を十分なものとするために
は、仕上焼鈍過程における二次再結晶発現温度域まで一
次再結晶粒の成長を抑制するAlN,Mns,MnSe等の微細な析
出物、所謂インヒビターを鋼中に存在させる必要があ
る。従って、電磁鋼スラブは、インヒビター形成元素、
例えばAl,Mn,S,Se,N等を完全に固溶させるために、1350
〜1400℃といった高温に加熱される。前記スラブ中に完
全に固溶せしめられたインヒビター形成元素は、熱延板
或は最終冷間圧延前の中間板厚の段階で焼鈍によって、
AlN,MnS,MnSeとして微細に析出せしめられる。
このようなプロセスを採るとき、電磁鋼スラブは前述の
ように高温に加熱されるから、溶融スケールの発生が多
量なものとなり、加熱炉補修の頻度を高め、メインテナ
ンスコストを高くするのみならず設備稼動率を低下せし
めさらに、燃料原単位を高くする等の問題がある。
このような問題を解決すべく、電磁鋼スラブの加熱温度
を低いものとし得る一方向性電磁鋼板の製造方法の研究
が進められている。
例えば、特開昭52-24116号公報には、Alの他に、Zr,Ti,
B,Nb,Ta,V,Cr,Mo等の窒化物形成元素を鋼中に含有させ
ることにより、電磁鋼スラブの加熱温度を1100〜1260℃
とする製造方法が提案されている。
また、特開昭59-190324号公報には、C含有量を0.01%
以下の低いものとし、S,Se,さらにAlとBを選択的に含
有させた電磁鋼スラブを素材とし、冷間圧延後の一次再
結晶焼鈍時に鋼板表面を短時間繰返し高温加熱する、所
謂パルス焼鈍を行うことにより、電磁鋼スラブの加熱温
度を1300℃以下とすることが提案されている。
さらに、特公昭61-60896号公報には、Mn含有量を0.08〜
0.45%、S含有量を0.007%以下として〔Mn〕〔S〕積
を低くし、さらにAl,P,Nを含有せしめた電磁鋼スラブを
素材とすることにより、スラブ加熱温度を1280℃未満と
する製造プロセスが提案されている。
これは一次再結晶粒の成長を抑制する、所謂インヒビタ
ーを脱炭焼鈍以降において造り込むことを特徴としたも
のであるが、この技術思想に基づいて例えば、特願昭63
-100111号には一次再結晶完了後、高温仕上げ焼鈍以前
の段階でストリップを走行せしめる状態下で窒化する方
法が提案された。また特願平1-82393号には一次再結晶
粒の粒径と製品の磁束密度に極めて強い相関があり、一
次再結晶粒径によって窒化条件を変える必要があること
を述べている。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、電磁鋼スラブの加熱温度を1200℃以下の低い
ものとして高温スラブ加熱に起因するメインテナンスコ
ストの上昇、設備稼働率の低下、さらには生産性の低下
を抑え、高生産性下に優れた磁気特性を有する一方向性
電磁鋼板を安定して生産し得る製造方法を提供すること
を目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕 本発明の要旨とするところは、重量%で、C:0.025〜0.0
75%、Si:2.5〜4.5%、S≦0.015%、酸可溶性Al:0.010
〜0.050%、N≦0.010%、Mn:0.05〜0.45%を含有し、
残部Fe及び不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを1200
℃以下の温度に加熱した後、熱間圧延し、一回または中
間焼鈍を介挿する二回以上の冷間圧延を施して最終板厚
とし、次いで脱炭焼鈍、窒化処理を行うが脱炭焼鈍後の
一次再結晶粒の平均粒径がdμmの場合の鋼板の〔N〕
量(ppm)を16d−90>N>60d−1400(下限値:100ppm)
の関係が満たされる条件下に窒化量を制御した後焼鈍分
離剤を塗布し、高温仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする
磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法にある。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、出発材料とする電磁鋼スラブの成分組
成の限定理由は、以下の通りである。
Cは、その含有量が0.025%未満になると、二次再結晶
が不安定となりかつ、二次再結晶した場合でも製品の磁
束密度(B10値)が1.80Teslaと低いものとなる。一方、
Cの含有量が0.075%を超えて多くなり過ぎると、脱炭
焼鈍時間が長大なものとなり、生産性を著しく損なう。
Siは、その含有量が2.5%未満になると、製品厚み0.30m
mで、W17/50で1.05W/kg以下の最高等級の鉄損特性を有
する製品を得ることができない、この観点からSi含有量
の下限は、望ましくは3.2%である。一方、Siの含有量
が4.5%を超えて多くなり過ぎると、冷間圧延時に材料
の割れ、破断が多発し、安定した冷間圧延作業を不可能
にする。
本発明の出発材料の成分系における特徴の一つは、Sは
0.015%以下、好ましくは0.0070%以下とする点にあ
る。
Sは周知の如くMnSを形成し粒成長を抑制する作用をす
る。本発明においては二次再結晶粒を発現させるに必要
なインヒビターは脱炭焼鈍以降で造り込むことを特徴と
しており、冷間圧延以前で微細な析出物が分散すること
は一次再結晶粒径を調整して高磁束密度を得る本発明に
おいては好ましくない。従ってSは0.015%以下として
いる。またS量を少なくすることは熱延時の耳割れの低
減にも効果が大きい。
AlはAlN又は(Al,Si)Nを形成して二次再結晶に必要な
析出物を形成するために必要であり、その量は0.010%
以上、0.050%以下とする。0.010%未満では高磁束密度
の鋼板が得られず、一方0.050%を超えると二次再結晶
粒の発達が不安定となる。
Nの含有量は0.010%を超えると、ブリスターと呼ばれ
る鋼板表面の脹れが発生する。
Mnはその含有量が0.05%未満と少な過ぎると二次再結晶
が不安定となり、一方0.45%を超えて多く含有すると高
い磁束密度をもつ製品が得難くなる。
なお、微量のCu,Sn,Cr,P,B,Tiを鋼中に単独または複合
で含有せしめることは、本発明の趣旨を損なうものでは
ない。
次に、製造プロセスについて説明する。
電磁鋼スラブは、転炉或は電気炉等の溶解炉で鋼を溶製
し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、次いで、連
続鋳造によって或は造塊後分塊圧延することによって得
られる。然る後、熱間圧延に先立つスラブ加熱がなされ
る。本発明のプロセスにおいては、スラブの加熱温度は
1200℃以下の低いものとして加熱エネルギ消費量を少な
くするとともに、鋼中のAlN,MnSは完全には固溶させず
不完全固溶状態とする。
加熱後、電磁鋼スラブは熱間圧延され、そのまま或は必
要に応じて焼鈍された後、1回または中間焼鈍を介挿す
る2回以上の冷間圧延を施され、最終板厚とされる。熱
延板を900℃以上、1200℃以下の温度で少なくとも30秒
以上焼鈍すると焼鈍しない場合に比べ磁気特性は向上す
る。
ところで、本発明においては、電磁鋼スラブは1200℃以
下の低い温度に加熱される。従って、鋼中のAl,Mn,S等
を不完全固溶状態としており、このままでは、鋼板中に
二次再結晶を発現させるための充分なAlN,(Al,Si)N
等のインヒビターが存在しない。故に、二次再結晶発現
以前に、鋼中にNを侵入させ、インヒビターとして機能
する(Al,Si)Nを形成する必要がある。特公昭62-4528
5号公報記載の方法では、鋼板の窒化は占積率が90%程
度のタイトなストリップコイルの形態でなされている。
このようなタイトなストリップコイルの状態では、板間
の間隙は10μm以下と狭く、通気性が非常に悪い。従っ
て、板間の雰囲気をドライな雰囲気に置換するのに長時
間を要するのみならず、窒化源としてのN2が板間に侵
入、拡散するためにも長時間を必要とする。また、コイ
ル内温度の不均一さに起因する窒化の不均一さ、窒化量
の制御も問題となった。かかる問題を解決するために特
願平1-91956号では、脱炭焼鈍後半にNH3雰囲気中でスト
リップを走行させる状態下で鋼板の窒化処理を行うこと
によって、インヒビターとして機能する微細な(Al,S
i)Nを鋼中に形成させる方法が提案された。
インラインで鋼板(ストリップ)を窒化することを考え
る場合、短時間(30秒間〜1分間)に鋼板を窒化処理で
きることが不可欠である。
脱炭焼鈍を行う前に鋼板を窒化すれば、窒素を容易に鋼
中に侵入させることができるけれども、それが脱炭焼鈍
中に生成する一次再結晶粒の成長を阻害し、ひいては製
品の磁束密度に直接的に関係する一次再結晶粒の方向性
或いは成長を阻害する結果となる。
一次再結晶粒径を一定の大きさに調整した後、例えば脱
炭焼鈍の後半で窒化処理を行えば理想的な窒化が可能と
なる。
本発明者等はこの技術を詳細に検討した結果、鋼板の一
次再結晶粒径と窒化量に一定の関係が成り立つ条件下で
磁気特性の特に優れた成品が得られることを見出した。
本発明は、この知見に基づいて完成された。
以下、本発明を実験結果に基づいてさらに詳細に説明す
る。
供試材として、C:0.054%、Si:3.3%、Mn:0.12%、酸可
溶性Al:0.028%、Cr:0.12%、N:0.0075%を含み、残部F
eおよび不可避的不純物からなり、S含有量を0.03〜0.1
5%の範囲に変化させた真空溶解材を1150℃に加熱し、
熱間圧延を施して2.0mmの厚さの熱延板を準備した。こ
の熱延板に、1120℃×60秒+900℃×120秒の焼鈍を施し
た後、100℃の熱湯で急冷却し、酸洗し、次いで冷間圧
延して0.23mm厚さの冷延板とした。然る後、800〜870℃
の温度で120秒間の脱炭焼鈍を湿水素、窒素雰囲気中で
行なった。この後750℃×30秒の窒化処理をH2:75%、
N2:25%のドライ雰囲気中でNH3の添加量を変えて行なっ
た。その後MgOとTiO2を主成分とする焼鈍分離剤を塗布
し、次いで1200℃×20時間の仕上げ焼鈍を行なった。第
1図にその結果を、一次再結晶粒径と窒化後〔N〕量と
磁気特性の関係で示す。
なお、結晶粒径の調整は素材のS含有量と脱炭焼鈍温度
の組合せで行ない、一方〔N〕量はNH3の添加量で調整
した。図において、○印は鉄損特性がW17/50で0.95w/kg
以上であり、●印は0.94w/kg以下の特性を示す。また△
印は二次再結晶粒の発達が悪く、磁気特性が非常に劣る
ものである。磁気特性の優れた成品の得られる領域は鋼
板の〔N〕量(ppm)をN、一次再結晶の平均粒径をd
μmとすると、16d−90>N>60d−1400の関係が成立つ
範囲にあり、かつNの下限は100ppmである。上限は好ま
しくは250ppm以下がよい。これを超えると被膜形成に悪
影響を与える傾向がある。この関係は成品板厚が変って
も適用可能である。
次に窒化条件について述べる。
鋼板を窒化するための温度は、700〜900℃、好ましくは
800℃前後である。900℃を超えると、鋼板(ストリッ
プ)の集合組織が変化するから二次再結晶不良となる。
窒化処理時間は、特にこだわらないがインラインで鋼板
を窒化することを考える場合、30〜60秒間程度が好まし
い。
雰囲気は、H2或はH2とN2の混合ガスにNH3ガスを添加し
たものとする。
雰囲気の露点は低い(ドライな)方が好ましい。
窒化処理後の鋼板に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を
塗布する。この焼鈍分離剤にTiO2等公知の添加物を加え
てもよい。
仕上げ焼鈍は、1100℃以上の高温で行い、二次再結晶粒
を発現させ、良好な絶縁被膜を鋼板に形成せしめる。
〔実施例〕
実施例1 重量で、C:0.050%、Si:3.3%、Mn:0.12%、Al:0.028
%、S:0.009%、Cr:0.12%、N:0.0075%、残部Feおよび
不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを、1200℃に加熱
して熱間圧延し、2.3mm厚さの熱延板とした。
この熱延板を1120℃×2.5分+900℃×2分焼鈍後、100
℃の湯中にて冷却した。次いで、酸洗し、冷間圧延し、
0.30mmの最終板厚とした。次いで脱炭焼鈍を800℃、830
℃、850℃、の温度で120秒間行なった。雰囲気ガスはN2
25%、H275%の混合ガスを用い、露点は50℃とした。
脱炭焼鈍後の平均結晶粒径はそれぞれ15μm、21μm、
26μmであった。次いでN225%、H275%のドライ雰囲気
ガス中にNH3を添加し、750℃×30秒の窒化処理を施し
た。窒化後の〔N〕量はほぼ、150ppm、220ppm、310ppm
であった。この後MgOとTiO2を混合した焼鈍分離剤を塗
布し1200℃×20時間の焼鈍を行なった。磁気特性を第1
表に示す。
各結晶粒径に対して本発明の条件を満すN量の範囲にお
いて磁気特性の優れたものが得られた。
〈実施例2〉 重量で、C:0.045%、Si:3.2%、Mn:0.10%、Al:0.030
%、S:0.005%、N:0.0070%、残部Feおよび不可避的不
純物からなる電磁鋼スラブを、1150℃に加熱した後熱間
圧延し、2.3mm厚さの熱延板とした。この熱延板を酸洗
し、冷間圧延し、0.35mmの最終板厚とした。次いで脱炭
焼鈍を820℃と850℃の温度で160秒間行なった。雰囲気
ガスはN225%、H275%の混合ガスを用い、露点は60℃と
した。脱炭焼鈍板の平均結晶粒径は19μmと25μmであ
った。この後N225%、H275%のドライ雰囲気ガス中にNH
3を添加し、750℃×30秒の窒化処理をし、窒化後の
〔N〕量はほぼ、150ppmと250ppmにした。この後MgOとT
iO2を混合した焼鈍分離剤を塗布し、1200℃×20時間の
焼鈍を行なった。磁気特性を第2表に示す。
本発明の条件範囲内にあるものが磁気特性が優れてい
る。
(発明の効果) 本発明によれば磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板が得
られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は一次再結晶粒径と窒化後のN量と磁気特性の関
係を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量でC:0.025〜0.075%、Si:2.5〜4.5
    %、S≦0.015%、酸可溶性Al:0.010〜0.050%、N≦0.
    010%、Mn:0.05〜0.45%を含有し、残部Fe及び不可避的
    不純物からなる電磁鋼スラブを1200℃以下の温度に加熱
    した後熱間圧延し、一回或いは中間焼鈍を介挿する二回
    以上の冷間圧延を施して最終板厚とし、ついで脱炭焼
    鈍、焼鈍分離剤塗布を行った後、高温仕上げ焼鈍を施す
    一方向性電磁鋼板の製造方法において、一次再結晶完了
    後高温仕上げ焼鈍以前の段階でストリップを走行せしめ
    る状態下で平均結晶粒径d(μm)における鋼板の窒素
    量〔N〕(ppm)を16d−90>N>60d−1400(下限値:10
    0ppm)の範囲になるように窒化量を制御することを特徴
    とする磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】熱延板を900℃以上1200℃以下で焼鈍する
    ことを特徴とする請求項1記載の磁気特性の優れた一方
    向性電磁鋼板の製造方法。
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