JPH07303466A - 脱酸素剤及びそれを用いる飲食物の劣化防止方法 - Google Patents

脱酸素剤及びそれを用いる飲食物の劣化防止方法

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JPH07303466A
JPH07303466A JP5332229A JP33222993A JPH07303466A JP H07303466 A JPH07303466 A JP H07303466A JP 5332229 A JP5332229 A JP 5332229A JP 33222993 A JP33222993 A JP 33222993A JP H07303466 A JPH07303466 A JP H07303466A
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孝久 矢嶋
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 飲食物の酸化による劣化を防止する手段を提
供する。 【構成】 飲食物にアスコルビン酸を酸化する酵素を添
加するか、又はアスコルビン酸を酸化する酵素とその基
質とを添加し、これによって飲食物中で脱酸素を行うこ
とを特徴とする飲食物の劣化防止方法;飲食物と、アス
コルビン酸を酸化する酵素及びその基質とを直接相互に
接触しないように同一容器内に密封することを特徴とす
る飲食物の劣化防止方法;並びに開口を有するか又は少
なくとも一部分が気体透過性材料により構成されている
容器に、アスコルビン酸を酸化する酵素とその基質と
が、使用前にはこれらが相互に反応しないようにして収
容されていることを特徴とする脱酸素剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アスコルビン酸を酸化
する酵素とその基質との反応による酸素の消費を利用し
た飲食物の劣化防止方法及びそのための脱酸素剤に関す
る。
【0002】
【従来の技術】飲食物の劣化に酸素が関与することが知
られており、劣化防止のために飲食物中の酸素を無機鉄
剤で除去する方法が知られている。しかしながら、この
方法には無機鉄剤が非食性材料であることに基く種々の
制約及び問題点が存在する。無機鉄剤に代る脱酸素剤と
して酸素消費性の酵素であるグルコースオキシダーゼ又
はアルコールオキシダーゼを用いる方法がある。しかし
ながら、これらの酵素はその基質と反応する際に有毒物
質である過酸化水素を生成せしめ、これが飲食物に混入
するという欠点を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な欠点を有しない酸素消費性酵素としてアスコルビン酸
を酸化する酵素を用いることによる飲食物の劣化防止方
法、及びそのための脱酸素剤を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明は、飲食物にアスコルビン酸を酸化する酵素
を添加するか、又はアスコルビン酸を酸化する酵素とそ
の基質とを添加し、これによって飲食物中で脱酸素を行
うことを特徴とする飲食物の劣化防止方法を提供する。
本発明はさらに、飲食物と、アスコルビン酸を酸化する
酵素及びその基質とを直接相互に接触しないように同一
容器内に密封することを特徴とする飲食品の劣化防止方
法を提供する。
【0005】本発明はさらに、開口を有するか又は少な
くとも一部分が気体透過性材料により構成されている容
器に、アスコルビン酸を酸化する酵素とその基質とが、
使用前にはこれらが相互に反応しないようにして収容さ
れていることを特徴とする脱酸素剤を提供する。上記の
方法及び脱酸素剤は、アスコルビン酸を酸化する酵素と
その基質との反応により過酸化水素ではなく水が生成す
るため前記の欠点を有しない。
【0006】
【具体的な説明】本発明において、アスコルビン酸を酸
化する酵素として、アスコルビン酸オキシダーゼ及びポ
リフェノールオキシダーゼ(ラッカーゼ)等を使用する
ことができる。
【0007】アスコルビン酸を酸化する酵素の一種であ
るアスコルビン酸オキシダーゼは各種の植物に分布する
ことが知られており〔酵素ハンドブック(朝倉書店)1
58〜159頁〕、カボチャ(Men Hui Lee 及びCharle
s R.Dawson,J.Biol.Chem.,Vol.248,No.19,6596-6602,19
73; 並びにJean Dayan及びCharles R.Dawson,Biochemic
al and Biophysical Research Communication,Vol.73,N
o.2,451-458,1976) 、及びキュウリ (T.Nakamura,N.Mak
ino 及びY.Ogura,J.Biol.Chem.,Vol.64,No.2,189-195,1
968)から単離されており、本発明においてこれらを用い
ることができる。
【0008】微生物由来のアスコルビン酸オキシダーゼ
としてはミロセシウム・ベルカリア(Myrothecium verru
caria) の菌糸由来のもの、及びエーロバクター・エロ
ゲネス (Aerobacter aerogenes) 由来のものが知られて
おり(舟木ら、日本栄養・食糧学会誌Vol.40,No.1,47〜
51,1987)これらを用いることもできる。アスコルビン酸
オキシダーゼとして、特に、次の性質: (1)至適作用pHが3.5〜4.5である; (2)Fe++イオンにより活性化され、Cu++により阻
害される; (3)分子量:ゲル濾過法により85,000±5,0
00の分子量を示し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアク
リルアミドゲル電気泳動法において分子量23,000
±2,000のサブユニットを示す; (4)等電点:焦点電気泳動法により測定した場合pI
4.0を示す; (5)温度安定性:pH8.0、30分間反応で、60℃
以下で安定な活性を示す;並びに (6)pH安定性:4℃でpH4〜11の範囲で安定な活性
を示す; を有することを特徴とするアスコルビン酸オキシダーゼ
が好ましい。
【0009】このアスコルビン酸オキシダーゼは、アク
レモニウム(Acremonium) に属し、アスコルビン酸オキ
シダーゼを生産することができる微生物を培養し、培養
物からアスコルビン酸オキシダーゼを採取することを特
徴とするアスコルビン酸オキシダーゼの製造方法により
製造される。
【0010】新規なアスコルビン酸オキシダーゼ (生産株)低い至適pHを有するアスコルビン酸オキシダ
ーゼを生産する微生物を得るため保存株及び自然界から
分離した数千株について検索した結果、pH4付近に至適
pHを有するアスコルビン酸オキシダーゼを生産する菌株
が1株得られた。
【0011】この菌株は、理化学研究所の微生物同定委
託試験報告書に従えば、不完全菌亜門(Deuteromycotin
a)、不完全糸状菌網 (Hyphomycetes) に所属するAcremo
niumLink 属菌と同定された。すなわち、本菌株の光学
的顕微鏡による観察結果は以下のとおりである。フィア
ライド及びフィアロ型分生子を形成する。フィアライド
はゆるやかに先細りし、殆ど分枝せず、カラーは不明瞭
である。
【0012】フィアロ型分生子は無色、平滑、1細胞、
球形−亜球形(まれに楕円形−卵型)、直径1.5〜2
(〜4)μm、粘塊状となる。やや遅れて形成されてく
る閉子嚢殻様子実体は、不完全糸状菌網Agyriella Sac
c.属菌が形成する分生子座と類似したものである。この
子実体 (Conidiomata)は白色、亜球形−楕円形、直径1
mm以下であるが肉眼で確認でき、菌糸殻壁等により包ま
れていない裸生した分生子塊で、その内部には分枝した
菌糸上に形成されたフィアライドを有する。
【0013】フィアライドはフラスコ形で、基部は亜球
形、先端は極端に先細りし、湾曲しているものが多い。
フィアロ型分生子はAcremonium synanamorph のものと
形態学的には区別できないが、粘塊状で、非常に多産
で、分枝した菌糸間に蓄積される。よって、本菌株をア
クレモニウム・エスピーHI−25(Acremonium sp HI
-25)と呼ぶことにした。
【0014】次に、この株の菌学的性質を記載する。 (各培地における生育状態)培地4種類(ポテト、デキ
ストロース寒天培地、サブロー寒天培地、麦芽エキス寒
天培地、YpSs寒天培地)で、30℃14日間培養
し、各培地における生育状態は次の通りである。
【0015】〔ポテト・デキストロース寒天培地〕 イ.生育;遅く、直径6.0cm ロ.表面;白色、短絨毛状の気生菌糸を形成し密なコロ
ニーとなり、中心に放射状の溝を呈し、やや遅れて閉子
嚢殻様の子実体(Conidiomata)を形成する。しばしば表
面に淡褐色の水滴を生ずる。 ハ.裏面;シワ有り、クリーム色。 ニ.色素;生成なし。
【0016】〔サブロー寒天培地〕 イ.生育;遅く、直径5.6cm ロ.表面;白色、短絨毛状、中心の小隆起により放射状
の溝を呈す。 ハ.裏面;シワ有り、レモン色。 ニ.色素;生成なし。
【0017】〔麦芽エキス寒天培地〕 イ.生育;遅く、直径5.1cm ロ.表面;白色、短絨毛状、中心付近に放射状の溝を呈
す。 ハ.裏面;シワ有り、黄褐色。 ニ.色素;生成なし。
【0018】〔YpSs寒天培地〕 イ.生育;遅く、直径6.0cm ロ.表面;白色、短い綿毛状の気生菌糸を形成し、平坦
なコロニーとなる。やや遅れて閉子嚢殻様の子実体(Co
nidiomata)を形成する。しばしば表面に淡褐色の水滴を
生ずる。 ハ.裏面;シワ無し、クリーム色。 ニ.色素;生成なし。 (ポテト・デキストロース培地での生育条件)
【0019】〔最適生育条件〕 最適温度 28〜31℃ 最適生育pH 6.0〜7.0 〔生育の範囲〕 生育の温度範囲 15〜35℃ 生育のpH範囲 5.0〜7.8
【0020】なお、本アクレモニウム属菌は通商産業省
工業技術院微生物工業技術研究所特許微生物寄託センタ
ーに微工研菌寄第11236号として寄託され、そして
平成2年1月29日に微工研条寄第3124号(FER
M BP−3124)としてブダペスト条約に基く国際
寄託に移管された。なお、本発明のアスコルビン酸オキ
シダーゼの製造に用いられる菌株としては、上記の株の
みならず、その変異株、さらには本発明の酵素を生産す
る他の株をも使用することができることは言うまでもな
い。
【0021】(培養)次に、アクレモニウム属菌からア
スコルビン酸オキシダーゼを製造するための菌の培養法
としては、いかなる培養法でも良いが、例えば液体培養
法について以下に述べる。本発明に使用される培地とし
ては、アクレモニウム属に属し、アスコルビン酸オキシ
ダーゼを生産する微生物が生育することの可能な培地で
あれば、如何なるものでも良く、例えばカビ或は放線菌
の培養に用いられる培地が使用される。例えば、グルコ
ース、シュークロース、グリセリン、デキストリン、糖
蜜、有機酸等の炭素源、更に例えばアミノ酸、ビタミン
類、酵母エキス、肉エキス、麹汁、ポリペプトン、タン
パク質加水分解物等より選ばれた1種以上を使用し、更
に、カリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リン
酸塩、マンガン塩、鉄塩、亜塩、銅塩等の無機塩を添加
しないか或は一種以上適宜添加したものが好適に用いら
れる。
【0022】なお、培地の初発pHは、例えば約3.5〜
9.0、好ましくは約5.5〜6.5程度に調整し、培
養温度は通常15〜42℃、好ましくは約25〜35℃
程度で、1〜20日間、好ましくは3〜12日間程度培
養する。そして、好気的条件下、例えば振とう培養法も
しくはジャーファーメンターによる好気的深部培養法に
より培養することが好ましい。
【0023】(精製方法)次いで、このようにして得た
培養物より菌体を除去し、培養濾液を得る。培養物よ
り、菌体を除去する方法としては、如何なる方法でもよ
く、例えば通常の遠心分離法もしくは濾過法等が挙げら
れる。そして、このようにして得た培養濾液からアスコ
ルビン酸オキシダーゼを単離し、本発明のアスコルビン
酸オキシダーゼを得る。
【0024】まず、培養濾液からアスコルビン酸オキシ
ダーゼを単離精製するには、例えば硫安分画処理、アル
コール分画処理、DEAE−セルロース処理、セファク
リル処理、セファデックス処理、TSKゲルDEAEカ
ラム処理等のいずれかを必要に応じて組合わせた処理を
行い、必要ならば脱水或いは乾燥を行ない目的とする酵
素を製造する。
【0025】(酵素活性測定法)本発明によって得られ
た新規なアスコルビン酸オキシダーゼ活性の測定方法は
以下に示すとおりである。0.5mMアスコルビン酸と
0.5mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含んだ
0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)1mlを30
℃で5分間予備加温した後、被検体の酵素液0.1mlを
加え、30℃で5分間反応させた後、反応停止液として
0.2M塩酸を3ml加え、245nmの吸光度を測定す
る。この時、未反応混合液の245nm吸光度の減少から
活性を求める。1ユニットは前述の酵素活性測定条件下
で1分間に1μmol のアスコルビン酸を酸化する酵素量
とする。
【0026】(酵素の性質)アクレモニウム・エスピー
HI−25が生産するアスコルビン酸オキシダーゼの性
質は次の通りであった。 (1)至適作用pH pH2.6〜7.0の範囲で種々の緩衝液を使用し、30
℃にて5分間反応させた場合、図1に示す結果が得られ
た。本発明の酵素はpH3.5〜4.5に至適作用pHを有
する。
【0027】(2)pH安定性 本酵素を種々のpHにおいて30℃又は4℃にて17時間
インキュベートした後の残存相対活性は図2に示す通り
であった。本発明の酵素は4℃にてpH4〜11の範囲で
安定である。 (3)至適作用温度 本酵素をpH4.0の酢酸ナトリウム緩衝液(0.5mME
DTA)中で種々の温度で5分間反応させた場合の相対
活性は図3に示す通りであった。本酵素はpH4.0にお
いては40℃〜55℃にて良好に作用する。
【0028】(4)温度安定性 本酵素を種々の温度で30分間、50mMリン酸緩衝液
(pH8.0)にてインキュベートした後の残存相対活性
は図4に示す通りであった。本酵素は上記の条件下で6
0℃以下で安定である。
【0029】(5)分子量及びサブユニット構造 TSKgel G2000 SW Glassカラムを
用い、分子量標準としてウシ血清アルブミン(分子量6
6,000)及びリボヌクレアーゼA(ウシ膵臓由来;
分子量13,700)を用いてゲル濾過法により測定し
た場合、約85,000±5,000の分子を示す。ド
デシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動法により、分子量標準としてホスホリラー
ゼb(ラビット筋肉由来;分子量94,000)、ウシ
血清アルブミン(分子67,000)、オバルブミン
(卵白由来;分子量43,000)、カーボニックアン
ヒドラーゼ(ウシ赤血球由来;分子量30,000)、
トリプシンインヒビター(大豆由来;分子量20,10
0)、及びα−ラクトアルブミン(牛乳由来;分子量1
4,400)を用いて測定した場合、分子量23,00
0±2,000に相当する単一バンドが認められる。従
って、本酵素はサブユニットの4量体であると推定され
る。
【0030】(6)酵素阻害剤の影響 下記の1mM濃度の阻害剤と共に30℃にて10分間イン
キュベートした後の残存相対活性は次の通りであった。
【0031】
【表1】
【0032】以上の通り、本酵素は硫化ナトリウム(N
2 S)及びアジ化ナトリウムにより失活するが、N,
N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム及びEDT
Aによっては失活しない。 (7)金属イオンの影響 各種金属イオン4.5mM濃度による影響は次の通りであ
った。
【0033】
【表2】 以上の通り、本酵素はCu++イオンにより失活し、Fe
++イオンにより活性化される。 (8)等電点 焦点電気泳動法により測定した場合、4.0の等電点を
示す。以上の結果を既知酵素と比較すれば次の通りであ
る。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】本発明においてアスコルビン酸を酸化する
酵素には前記の既知の酵素を含めての種々のアスコルビ
ン酸オキシダーゼ及びポリフェノールオキシダーゼ(ラ
ッカーゼ)が包含される。本発明はアスコルビン酸を酸
化する酵素による酸素の消費に基く飲食物の劣化防止方
法を提供する。この方法の第一の態様においては、アス
コルビン酸を十分に含有する飲食物にアスコルビン酸を
酸化する酵素を添加するか、あるいはアスコルビン酸を
含有しないか又は十分には含有しない飲食物にアスコル
ビン酸を酸化する酵素及びその基質、例えばアスコルビ
ン酸もしくはその塩又はイソアスコルビン酸もしくはそ
の塩を添加する。これにより、飲食物中のアスコルビン
酸等の基質がアスコルビン酸を酸化する酵素により酸化
される際に飲食物中の酸素が消費され、この結果飲食物
の劣化が防止される。
【0037】この方法においては、本発明の酵素及び前
記のごときすでに知られている酵素の内、任意のものを
使用することができる。しかしながら、果物ジュースな
ど酸性の飲食物においては、既知の酵素は十分に機能し
ないため、酸性域に至適作用pHを有する本発明の酵素を
用いるのが好ましい。使用する酵素の量は、飲食物の種
類等により異るが、一般に飲食物g又はml当り0.00
1ユニット以上であり、そして好ましくは飲食物g又は
ml当り0.02ユニット以上である。酵素量が多くても
食品の劣化等の不利益はないが、酵素を一定以上増加し
ても劣化防止効果がそれに応じて増加するとは限らな
い。
【0038】飲食物に添加するアスコルビン酸又はその
塩の量は飲食物の種類、飲食物に自然に含まれているア
スコルビン酸の量等により異るが、一般に、飲食物に対
して0.01〜1.0重量%、好ましくは、0.01〜
0.5重量%である。なお、アスコルビン酸の塩として
は、そのナトリウム塩、カリウム塩等を使用することが
できる。さらに、アスコルビン酸又はその塩に代えてイ
ソアスコルビン酸又はその塩を使用することができる。
【0039】本発明の飲食物の劣化防止法の第二の態様
によれば、アスコルビン酸を酸化する酵素及びその基
質、例えばアスコルビン酸もしくはその塩又はイソアス
コルビン酸もしくはその塩を水性媒体、例えば緩衝液に
溶解して酵素消費系を調製し、これと飲食物とを相互に
接触せしめることなく同一容器に密封する。この方法に
よれば、上記酸素消費系により容器内の酸素が消費さ
れ、その結果飲食物中の酸素が脱酸素される。
【0040】この態様において酸素消費系を構成する水
性媒体、例えば緩衝液として、使用する酵素の至適作用
pHと同じか又はそれに近いpH値を有するものを使用す
る。例えば、キュウリ由来のアスコルビン酸オキシダー
ゼは5.6付近に至適作用pHを有するため、pH5〜7の
リン酸緩衝液を用いるのが好ましく、本発明のアクレモ
ニウム属の株が生産する酵素は酸性域に至適作用pHを有
するため、例えばpH4〜5の酢酸緩衝液を用いるのが便
利である。
【0041】この第二の態様におけるアスコルビン酸を
酸化する酵素及びその基質と飲食物との量的関係は、前
記第一の態様の場合と類似するが、第二の態様において
は、飲食物中の酸素のほかにその環境中(すなわち容器
内)の酸素をも消費する必要があるため、酵素及びその
基質の量は第一の態様の場合のそれよりやや多くするの
が好ましい。
【0042】第二の態様の実施に当っては、酵素の溶液
及び基質の溶液を別々に調製し、これを混合した後に飲
食物貯蔵容器に入れ、この容器を密封することができ
る。しかしながら、酸素消費系による酸素の消費を飲食
物の脱酸素のために効率よく利用するためには、酵素と
その基質とを反応しない状態で飲食物貯蔵容器に入れ、
この容器を密封した後に酵素反応を開始するのが好まし
い。このためには、例えば酵素溶液と基質溶液とを別個
に収容して貯蔵容器に入れ、この貯蔵容器を密封した後
に一方の液を他方の液に注入することができる。
【0043】あるいは、酵素溶液と基質溶液とを隔壁を
隔てて収容し、貯蔵容器を密封した後、この隔壁を破壊
して両溶液を混合することができる。また、酵素及び基
質のいずれか一方を溶液として、他方を粉末として貯蔵
容器に導入し、貯蔵容器を密封した後に両者を混合する
ことができる。他の態様においては、酵素粉末と基質粉
末との混合物と、酵素反応用媒体例えば緩衝液とを別々
に貯蔵容器に導入し、貯蔵容器を密封した後に、前記粉
混合物と反応媒体とを混合することができる。また、水
と酸素を透過できる膜で酵素粉末と基質粉末との混合物
を包み込んだ状態で貯蔵容器に導入し、使用時に飲食物
と接触せしめることができる。
【0044】本発明はさらに、飲食物の劣化防止方法に
おいて使用するための脱酸素剤を提供する。この脱酸素
剤は、開口を有するか又は少なくとも一部分が気体透過
性材料により構成されている容器に、アスコルビン酸オ
キシダーゼ及びその基質が、使用前にはこれらが相互に
反応しないように収容されていることを特徴とする。こ
の脱酸素剤の容器は、その中でアスコルビン酸を酸化す
る酵素とその基質とが反応する場合に該酸素剤容器の外
の環境、例えば飲食物貯蔵容器の内部、の空気を消費す
るように、開口又は気体透過性部分を有する。前記酵素
とその基質とが該脱酸素剤の使用前に反応しないように
する手段として、種々の手段を用いることができる。
【0045】例えば、酵素溶液と基質溶液を別々の容器
に入れ、これらの容器を前記脱酸素剤容器に収容し、使
用時にこれらの溶液を混合できるようにすればよい。例
えば脱酸素剤容器を逆転する。あるいは脱酸素剤容器に
隔壁を隔て酵素溶液及び基質溶液を収容しておき、使用
時にその隔壁を破壊することができる。具体例としては
前記隔壁として容易に破ることができるフィルム又はシ
ートからできた袋を用い、これを使用時に、例えば針状
部材により破ることができる。
【0046】あるいは、酵素及びその基質の内一方を溶
液とし、他方を乾燥粉末として脱酸素剤容器に収容し、
使用の際これを混合することができる。別の方法として
は、酵素及びその基質を乾燥粉末状態で、反応用緩衝液
を入れた脱酸素剤容器に収容しておき、使用時に該緩衝
液と乾燥粉末とを混合することができる。上記の種々態
様において、粉末は例えばフィルム又はシートから作ら
れた袋に入れておき、使用の際にこの袋を針で破り粉末
と緩衝液とを接触せしめることができる。また、液状飲
食物に於いては酵素粉末と基質粉末との混合物を酸素及
び水を透過できるフィルム等でコーティングすることに
より、使用時に飲食物と接触させることで目的を達成す
ることができる。
【0047】
【発明の効果】本発明の方法によればアスコルビン酸を
酸化する酵素とその基質、すなわちアスコルビン酸もし
くはその塩又はイソアスコルビン酸もしくはその塩と反
応せしめることにより酸素を消費し、これによって飲食
物を脱酸素してその劣化を防止することができ、この場
合、上記酵素反応の結果過酸化水素が発生しないので、
グルコースオキシダーゼ等を使用するのと異り、飲食物
が有害な過酸化水素により汚染されることが無い。
【0048】また、アスコルビン酸を酸化する酵素及び
その基質は水溶液に溶解するため清澄な食品や飲料に添
加してもその外観を害することがない。さらに、アクレ
モニウム属微生物によって生産される本発明の酵素は酸
性域に至適作用pHを有するため、これを用いて果物ジュ
ース等酸性飲食物の劣化を防止することができる。
【0049】かくして、本発明により、味噌、醤油、ア
ルコール飲料等の醸造飲食物、オレンジジュース、トマ
トジュース等のジュース類、お茶、コーヒー等の嗜好飲
料、レトルト食品類、乳製品類、油脂類等広範な種類の
飲食物の劣化防止を行うことができる。次に、実施例に
より本発明をさらに具体的に説明する。
【0050】例1.(参考例) アクレモニウム・エス
ピーHI−25の培養 グリセロール1%(W/V)、ポリペプトン1%(W/
V)、肉エキス1%(W/V)、リン酸二カリウム0.
1%(W/V)及び硫酸マグネシウム7水塩0.000
1%(W/V)の組成からなる液体培地(pH6.0)を
各100ml宛、500ml容振とう培養フラスコ180本
に分注し、常法により滅菌し、次いで、これにアクレモ
ニウムsp.HI−25を接種した後、30℃10日
間、振幅7cm、120R.P.M で振とう培養し、アスコル
ビン酸オキシダーゼの比活性(蛋白質当りの単位、un
its/A280)0.0589の培養物を得た。
【0051】例2.(参考例) アクレモニウム・エス
ピーHI−25からのアスコルビン酸オキシダーゼの精
例1で得られた培養物を東洋ろ紙No. 2を用いて濾別
し、培養濾液11.5lを得た。これを酵素液とし、1
1.5lに対し硫安を80%飽和になるように6.45
kg加え、冷蔵室で静置沈降を行なった。上澄部分は捨て
て、沈澱部分は遠心分離にかけ沈降区分を得た。これを
20mM酢酸ナトリウム−塩酸緩衝液(pH5.5)(以
降、酢酸ナトリウム緩衝液という)700mlに懸濁後、
一夜、水を外液として透析した。
【0052】更に透析後、酢酸ナトリウム緩衝液で平衡
化したDEAEセルロース1lを加えて、濾別した。得
られた沈澱区分に0.1M食塩を加えた酢酸ナトリウム
緩衝液2lで活性区分を溶出し、溶出液に80%飽和硫
安塩析を行ない、前述と同様沈澱区分を得た。これを、
酢酸ナトリウム緩衝液270mlに懸濁後、遠心分離によ
り、固形部分を除き、アスコルビン酸オキシダーゼ活性
区分265mlを得た。
【0053】さらに、この酵素液を、0.2M食塩を加
えた酢酸ナトリウム緩衝液で平衡化したセファクリルS
−300カラム(5×40cm)でゲル濾過を行ない、活
性区分を集めた。次にこの活性区分を20mM酢酸ナトリ
ウム緩衝液(pH5.0)に対して、一夜透析した。更に
透析後、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で平衡化し
たDEAE−セルロースカラム(5×9cm)にて食塩グ
ラジェント溶出を行ない、0.02〜0.08M食塩濃
度近辺の活性区分を得た。
【0054】この活性区分を減圧濃縮により12mlに濃
縮し、0.2モル食塩を加えた酢酸ナトリウム緩衝液
(pH5.0)で平衡化したセファデックスG−100カ
ラムでゲル濾過を行ない活性区分を集めた。次に、この
活性区分を酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で平衡化
したTSKgel DEAE−5PWカラム(5mm×5
cm)で食塩グラジェント溶出を行ない、0.04〜0.
06M食塩濃度近辺の活性区分に精製されたアスコルビ
ン酸オキシダーゼを得た。各精製段階の総タンパク質、
全活性、比活性及び収率は以下の表の如くであった。
【0055】
【表5】
【0056】例3.(実施例) みかん・バレンシアオ
レンジジュースの劣化防止 食品の一例として、濃縮還元のみかん・バレンシアオレ
ンジ混合100%果汁に例2に従って調製し凍結乾燥し
たアスコルビン酸オキシダーゼをpH4.0、0.1モル
酢酸ナトリウム緩衝液に溶解した酵素液とし(7.0u
nits/ml)、この10μlを、予じめみかん・バレ
ンシアオレンジジュースが充填され25℃にされた溶存
酸素測定セルに注入し脱酸素を行った。その結果は下記
のとおりであった。表中にはキュウリ由来のアスコルビ
ン酸オキシダーゼ(東洋紡(株)製)23units/
ml(pH6.0)の活性のものを10μl前述同様にセル
に注入し、脱酸素を行った結果も示す。溶存酸素の測定
は(株)東興化学研究所製DO−METER MODE
L TD−100を用いた。
【0057】
【表6】
【0058】みかん・バレンシアオレンジジュース(グ
リコ製)のpHは3.52であり、かかる低pHでのキュウ
リ由来のアスコルビン酸オキシダーゼによる脱酸素はほ
とんど行なわれなかった。しかし、アクレモニウム・エ
スピーHI−25由来のアスコルビン酸オキシダーゼを
用いると20分間で、0.01ppm の酸素濃度とするこ
とができた。
【0059】例4.(実施例) 牛乳の劣化防止 食品の他の例として、牛乳にアスコルビン酸0.1%を
添加溶解したものを、溶存酸素測定セルに注入し25℃
の恒温に保った。これに例2に従って調製し凍結乾燥し
たアスコルビン酸オキシダーゼをpH6.0、0.1モル
リン酸緩衝液に溶解した酵素液(7.0units/m
l)の50μlを注入して脱酸素を行った。その結果は
下記のとおりである。表中にはキュウリ由来のアスコル
ビン酸オキシダーゼ23.0units/ml(pH6.
0)の活性のものを50μl、前述同様にセルに注入
し、脱酸素を行なった結果も示す。
【0060】
【表7】
【0061】牛乳(雪印製)はpHが6.74と高いた
め、キュウリ由来のアスコルビン酸オキシダーゼでもア
クレモニウム・エスピーHI−25由来のアスコルビン
酸オキシダーゼに近い溶存酸素の除去が行われた。
【0062】例5.(実施例) pH4.5酢酸ナトリウ
ム緩衝液でのアスコルビン酸オキシダーゼによる溶存酸
素の除去 例2に従って調製し凍結乾燥したアスコルビン酸オキシ
ダーゼをpH4.5、0.1モル酢酸ナトリウム緩衝液に
溶解した酵素液(7.0units/ml)10μlを、
0.1%アスコルビン酸を含む0.1モル酢酸ナトリウ
ム緩衝液(pH4.5)に添加し25℃における溶存酸素
を測定した結果を下表に示す。表中、キュウリ由来のア
スコルビン酸オキシダーゼによる溶存酸素の除去につい
ても示した。キュウリ由来のアスコルビン酸オキシダー
ゼは23units/ml・pH6.0の活性のものを10
μl前述同様に添加し測定した。
【0063】
【表8】
【0064】pH4.5でのアスコルビン酸オキシダーゼ
による溶存酸素の除去は、25℃20分間の反応でアク
レモニウム・エスピーHI−25由来のアスコルビン酸
オキシダーゼによる場合0.02ppm まで、酸素が除去
されたが、キュウリ由来のそれは4.52ppm 酸素濃度
までにしか除去できなかった。
【0065】例6.(実施例) pH6.0リン酸ナトリ
ウム緩衝液でのアスコルビン酸オキシダーゼによる溶存
酸素の除去 例2に従って調製し凍結乾燥したアスコルビン酸オキシ
ダーゼをpH6.0、0.1モルリン酸緩衝液に溶解した
酵素液(7.0units/ml)10μlを、0.1%
アスコルビン酸を含む0.1モルリン酸ナトリウム緩衝
液(pH6.0)に添加し、25℃に於ける溶存酸素を測
定した結果、下表のごとくとなった。表中、キュウリ由
来のアスコルビン酸オキシダーゼによる溶存酸素の除去
についても示した。キュウリ由来のアスコルビン酸オキ
シダーゼは23units/ml、pH6.0の活性のもの
を10μlを前述と同様添加し、溶存酸素を測定した。
【0066】
【表9】
【0067】pHが高くなると、キュウリ由来のアスコル
ビン酸オキシダーゼでも、アクレモニウム・エスピーH
I−25由来のアスコルビン酸オキシダーゼと比較して
大差ない溶存酸素の除去が行なわれた。
【0068】例7.(実施例) アスコルビン酸オキシ
ダーゼによる容器内酸素の除去 20ml容ガラス容器に、Beckman OXYGEN ANALYZER の39
550 OXYGEN ELECTRODEを差し込み、容器内にアスコルビ
ン酸133mgと例2で調製したアスコルビン酸オキシダ
ーゼ8.0unitsとを、pH6.0で0.1モルリン
酸ナトリウム緩衝液で溶かして5mlとしたものを加え、
小撹拌子で常時撹拌しながら、密閉されたガラス容器中
の酸素量(O2 %)を測定した。なお、ガラス容器は2
5±0.1℃に制御された恒温中に保持した。この結果
を下表に示す。
【0069】表中、キュウリ由来のアスコルビン酸オキ
シダーゼによる容器内酸素の除去についても示した。キ
ュウリ由来のアスコルビン酸オキシダーゼの場合は4.
7unitsを用いた。これ以外の条件はアクレモニウ
ム・エスピーHI−25の場合に準じた。
【0070】
【表10】 pH6.0の緩衝液を用いた場合、容器内の酸素量はキュ
ウリ由来であろうがアクレモニウム由来であろうが、い
ずれとも脱酸素されていることが明らかである。
【0071】例8.(参考例) この参考例においては、酵素の乾燥安定剤BSA,ED
TA等の共存下でアスコルビン酸をアスコルビン酸オキ
シダーゼにより酸化する場合、アジ化ナトリウム(Na
3 )によるアスコルビン酸オキシダーゼの不活性化が
抑制され、NaN3 を含む測定系において本発明のアス
コルビン酸オキシダーゼが使用可能であることを示す。
【0072】各50mMバッファーに0.1%BSAを添
加した。そして、それぞれのアスコルビン酸オキシダー
ゼを加え、更にNaN3 添加区には0.2%になるよう
にNaN3 を添加した上、2日間5℃及び28℃に保存
後の残存活性を測定した。その結果が下表に示す通りと
なった。
【0073】
【表11】
【0074】バッファーのみの時を100とした相対活
性で見られるようにNaN3 添加による活性低下はアク
レモニウム由来の酵素の方が多いが、5℃保存を100
とした時の28℃残存活性及び調整直後を100とした
時の28℃残存活性に見られるように、NaN3 添加に
よる活性低下がアクレモニウム由来の酵素の方が多いと
は言えなかった。
【0075】この場合のアスコルビン酸オキシダーゼ活
性測定は次の通り行った。 アスコルビン酸の還元性消去の活性測定方法(NTB
法) 1mMアスコルビン酸と1mMエチレンジアミン四酢酸二ナ
トリウムを含んだ50mMリン酸二水素カリウム−水酸化
ナトリウム緩衝液(pH5.6)0.1mlを37℃で5分
間予備加温した後、被検体の酵素液0.02mlを加え、
37℃で正確に5分間反応させた後、2mMニトロブルー
テトラゾリウム(NTB)と4%ポリオキシエチレン
(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X
−100)を含んだ50mMリン酸二水素カリウム−水酸
化ナトリウム緩衝液(pH7.6)1.0mlを加え、酵素
反応を停止した上で、37℃で15分間NTBとアスコ
ルビン酸の反応を行う。この反応液に0.1%Trit
on X−100を含んだ0.1M塩酸を2.5ml加
え、530nmの吸光度を測定する。この時、酵素を加え
ない反応との吸光度の差から活性を求めた。
【0076】例9.(参考例) アスコルビン酸オキシ
ダーゼ安定性比較 精製されたアクレモニウム・エスピーHI−25由来の
アスコルビン酸オキシダーゼ(A.ASOD)と従来か
らあるキュウリ由来の天野製薬(株)製アスコルビン酸
オキシダーゼ(C.ASOD)との比較安定性試験を行
った。A.ASOD及びC.ASODとも0.2μmメ
ンブレンフィルターで除菌し、これを殺菌した所定量の
50mMリン酸緩衝液(pH6.0及び6.85)に加え
て、保存温度は4℃、30℃で、3日間保存した。その
結果、以下の表の通りとなった。
【0077】
【表12】
【0078】この場合のアスコルビン酸オキシダーゼ活
性は前記の酵素活性測定法によった。これらの結果よ
り、アクレモニウム由来のアスコルビン酸オキシダーゼ
(A.ASOD)はキュウリ由来のアスコルビン酸オキ
シダーゼ(C.ASOD)に比較し、1区から4区のど
の区においても残存活性が高く、安定であった。
【0079】例10.(参考例) 血清中のリン脂質の
測定 血清中のリン脂質の測定では検体にフォスホリパーゼD
(PLD)を作用させコリンを生成させ、このコリンを
コリンオキシダーゼで酸化し、過酸化水素を生成させ
る。この過酸化水素をパーオキシダーゼで酸化し、同時
に発生する酸素により、色原体を酸化し発色させて、リ
ン脂質を測定する。この測定では、検体中のアスコルビ
ン酸が発色に関与しているパーオキシダーゼ反応を阻害
し、正しいリン脂質の定量を妨害する。これを避けるた
めに、アスコルビン酸オキシダーゼが使用されている。
【0080】従来はこのアスコルビン酸オキシダーゼと
して、キュウリ由来のものが用いられている。しかし、
前項の安定性試験で示したごとく、キュウリ由来のアス
コルビン酸オキシダーゼは安定性の点で劣り、試薬を調
製した後での保存を長期に亙って行うことが出来ず、不
便であると共に、ロスにもつながり、結果として高価に
なる。アクレモニウム由来のアスコルビン酸オキシダー
ゼを用いることにより、これらの欠点が改善される。
【0081】「メルクタイプ試薬溶液−1」の調製 フォスホリパーゼD(PLD)(メルク酵素液−1(7
7037)1本)とアスコルビン酸オキシダーゼ(メル
ク77049 1本)を3,5−ジメトキシ−N−エチ
ル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−ア
ニリン0.5mmol溶液100ml(メルク緩衝液−1(7
7038)1本)で溶かす。
【0082】「アクレモタイプ試薬溶液−1」の調製 フォスホリパーゼD(PLD)(メルク酵素液−1(7
7037)1本)とアクレモニウム由来のアスコルビン
酸オキシダーゼ150unitとを3,5−ジメトキシ
−N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロ
ピル)−アニリン0.5mmol溶液100ml(メルク緩衝
液−1(77038)1本)で溶かす。
【0083】これらの「メルクタイプ試薬溶液−1」及
び「アクレモタイプ試薬溶液−1」を用いて、ヒト血清
を検体としてリン脂質の測定を実施した結果が次の表で
ある。実際の血清中のリン脂質量に換算はしていない
が、600nm吸光度からキュウリのアスコルビン酸オキ
シダーゼを用いても、アクレモニウム由来のアスコルビ
ン酸オキシダーゼを用いても変わらない値が出ることが
示された。
【0084】参考例3のリン脂質の測定以外に、アスコ
ルビン酸オキシダーゼが用いられる検査薬、例えばコレ
ステロール、トリグリセライド、尿酸、遊離脂肪酸など
の測定にも利用することができる。
【0085】
【表13】
【0086】例11.(参考例) 酵素センサーによる
アスコルビン酸の測定 アミノ化ポリアクリルニトリル(PAN)膜(1.5セ
ンチ平方)10枚を5mlの12.5%のグルタルアルデ
ヒド溶液に加え、0℃で20分間反応を行った。その後
500mlの0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.5)膜を洗浄
後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)10mlに溶解し
たキュウリ由来及び本件アスコルビン酸オキシダーゼ
(1200単位)を加え、30℃で1時間反応させ、膜
への酵素の固定化を行った。0.1Mリン酸緩衝液(pH
7.5)で洗浄後、固定化酵素膜を酸素電極表面に装着
し、アスコルビン酸の測定に供した。アスコルビン酸の
測定は1.5mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)に
アスコルビン酸を含む溶液30マイクロリットルを添加
し37℃での溶存酸素の減少量により行った。その結果
を図5(キュウリ由来酵素)、及び図6(アクレモニウ
ム由来酵素)に示した。
【0087】例12.(参考例) 例11で得られた2種類の固定化酵素膜を0.1Mリン
酸緩衝液(pH7.5)で37℃に保存し経時的に取り出
しアスコルビン酸の測定に供した。図7に示したように
キュウリ由来の酵素よりもアクレモニウム由来の酵素を
使用した時の方が安定性に優れていることが解った。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はアクレモニウムsp.HI−25が生産
するアスコルビン酸オキシダーゼの至適作用pHを示すグ
ラフである。
【図2】図2は同酵素のpH安定性を示すグラフである。
【図3】図3は同酵素の至適作用温度を示すグラフであ
る。
【図4】図4は同酵素の温度安定性を示すグラフであ
る。
【図5】図5は、キュウリ由来のアスコルビン酸オキシ
ダーゼを固定した膜を用いてL−アスコルビン酸を測定
した場合のサンプル中のL−アスコルビン酸濃度とシグ
ナルとの関係を示す(例11)。
【図6】図6は、本発明のアクレモニウム由来のアスコ
ルビン酸オキシダーゼを固定した膜を用いてL−アスコ
ルビン酸を測定した場合のサンプル中のL−アスコルビ
ン酸濃度とシグナルとの関係を示す(例12)。
【図7】図7は、本発明のアクレモニウム由来アスコル
ビン酸オキシダーゼを固定した膜、及びキュウリ由来の
アスコルビン酸オキシダーゼを固定した膜の貯蔵期間中
の性能の経時変化を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 矢嶋 孝久 愛知県豊橋市三ッ相町159番地の3 (72)発明者 福安 繁機 愛知県豊川市御油町五反34番地の3

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 飲食物にアスコルビン酸を酸化する酵素
    を添加するか、又はアスコルビン酸を酸化する酵素とそ
    の基質とを添加し、これによって飲食物中で脱酸素を行
    うことを特徴とする飲食物の劣化防止方法。
  2. 【請求項2】 飲食物と、アスコルビン酸を酸化する酵
    素及びその基質とを直接相互に接触しないように同一容
    器内に密封することを特徴とする飲食物の劣化防止方
    法。
  3. 【請求項3】 開口を有するか又は少なくとも一部分が
    気体透過性材料により構成されている容器に、アスコル
    ビン酸を酸化する酵素とその基質とが、使用前にはこれ
    らが相互に反応しないようにして収容されていることを
    特徴とする脱酸素剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015105112A1 (ja) * 2014-01-09 2015-07-16 味の素株式会社 改質された蛋白質含有食品の製造方法及び蛋白質含有食品改質用の製剤

Cited By (4)

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