JPH0730215Y2 - 円盤状金物の自動肉盛連続溶接装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、円盤状金物を旋回させ
つつその上面に溶接による肉盛を成形する円盤状金物の
自動肉盛連続溶接装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、潜水艦の耐圧殻やタンク、隔壁
等には図５に示す如き円盤状金物１が取付けられるが、
この円盤状金物１には図６に示すように、ステンレス又
はモネルメタル（Ｎｉ−Ｃｕ合金）の肉盛溶接２が必要
であり、その溶接法として従来被覆アーク溶接又はタン
グステンイナートガスアーク溶接（以下ＴＩＧ溶接と記
す）が採用されている。更にこの他に肉盛溶接方法とし
ては帯状電極を使用する溶接法がある。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】ステンレス又はモネル
メタルの被覆アーク溶接の場合、アークスタートおよび
エンド部にピット等の欠陥がはいりやすい欠点があり、
後戻り法、捨金法などの運棒法を採用して溶接欠陥が残
らないように施工するか、またはスタート及びエンド部
のビードをグラインダー除去する等の施工法が必要であ
り、作業能率が悪く不経済である。

【０００４】またＴＩＧ溶接の内、手動ＴＩＧ溶接の場
合は被覆アーク溶接に比べて品質は良好であるが能率が
悪く、また自動ＴＩＧ溶接の場合は回転するポジショナ
ーの被溶接物載置台の上に円盤状金物１を載せ、これを
回転させつつ、円形設置に順次溶接による肉盛を施すも
のであるが、この場合１周，１パス溶接ごとにアークを
切り、トーチの狙い位置をシフトし溶接速度（ポジショ
ナー回転速度（周速））が一定となるように調整する。

【０００５】この溶接速度は被溶接物である円盤形状金
物１の直径が小さいものほど１周１パスごとの周速の変
化が大きくなるため、１パスごとにきめ細かく調整が必
要である。

【０００６】また金物が小さい場合、溶接により金物自
体の温度が短時間で上昇するため、調質超高張力鋼のパ
ス間温度１５０℃以下の基準を守るためには２〜３パス
（２〜３周）溶接ごとに金物が冷えるのを持つ必要があ
り、非能率である。

【０００７】肉盛溶接方法の場合は直径の大きな金物表
面又は円筒胴の内面を施工する場合と異なり、直径の小
さい金物表面の溶接の場合、帯状電極の内径側と外径側
で溶接速度（周速）が極端に変化するため、溶接が不可
能である。また金物が小さいため、溶接時のフラックス
落下防止措置が必要で使用上不便である。

【０００８】本考案は上述の如き各溶接法の問題点にか
んがみ、円盤形状金物の長時間肉盛連続自動溶接を可能
ならしめ、溶接品質および能率の向上を図ることのでき
る自動肉盛連続溶接装置の提供を目的とするものであ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本考
案に係る自動肉盛連続溶接装置の構成は、円盤状金物の
連続自動肉盛溶接を行なう装置において、上下動機構付
支持具と、その支持具に支持され、トーチが保持される
自動シフト機構と、回転台を回転させる回転機構と、回
転台上に設けられ、被溶接物が載置される冷却板と、冷
却機より冷却板に冷却液を送るパイプを備えたことを特
徴とする。

【００１０】

【作用】上記装置において、被溶接物は冷却板上に載置
され、回転機構により回転される。自動シフト機構に保
持されたトーチにより被溶接物上に１パス目の肉盛溶接
が先ずなされる。１パス目の肉盛溶接が終了すると、自
動シフト機構により所定量トーチを移動し、２パス目の
肉盛溶接を行う。その際、冷却板の回転速度は各パスを
通じて回転機構により調節される。また、溶接による熱
は冷却板により速やかに奪われ、必要なパス間温度が得
られる。

【００１１】

【実施例】次に、本考案の一実施例に係る円盤状金物の
自動肉盛連続溶接装置を図面に基づき説明する。

【００１２】図１には一実施例装置の全体が示してあ
り、図中１０が回転機構としての回転ポジショナーであ
る。この回転ポジショナー１０は電動モータにより回転
駆動される回転台１１を有しており、この回転台１１の
上面には被溶接物である円盤状金物１をその中心を回転
中心に位置させて保持するチャック１２が備えられてい
る。

【００１３】回転台１１の上面には銅製の冷却板１３が
載置されており、冷却機１４からパイプ１５，１６を通
して冷却液が供給されるようになっている。即ち、冷却
板１３内には、冷却流路１７が形成され、その両端部１
７ａ，１７ｂが回転ジョイント１８及びこれに連結した
パイプコネクタ１９，２０を介して冷却機１４からのパ
イプ１５，１６が連結され、そのパイプの一方から冷却
液が注入され、他方から冷却機１４に戻され、これによ
って冷却板１３が冷却されるようにしている。

【００１４】一方、ＴＩＧ溶接トーチ２１は自動シフト
機構付きのトーチスタンド２２に支持されている。この
トーチスタンド２２は支柱２３に沿って上下動自在なブ
ーム２４を有し、そのブーム２４に支持された自動シフ
ト機構２５にトーチ２１を支持させるようにしている。

【００１５】この自動シフト機構２５は、溶接条件制御
ボックス２６内の制御機構からの指示により、自動的に
トーチ２１の水平方向の位置をシフトさせるようにして
いる。なお、図中、２７は溶接ワイヤ供給ガイドであ
り、２８はワイヤ送給装置である。

【００１６】このように構成される装置を使用し、回転
ポジショナー１０上の冷却板１３上に円盤状金物１を載
せ、回転台１１を回転させながら円盤状金物１の上面の
肉盛溶接面の端部から溶接を開始する。

【００１７】そして１層目の１パス目２ａの全周の溶接
が完了したら、トーチのシフト機構２５により、あらか
じめ設定したピッチ量（例えば４±２mm）だけトーチ２
１をシフトさせ、２パス目２ｂの溶接を行う。

【００１８】この場合シフト速度の遅速は各パス継目３
０のビード外観に影響を与えるため、シフト速度は１パ
ス目の溶接速度に一致させる。また、トーチシフトのピ
ッチ量Ｐは肉盛幅を等分に分割した数値（mm単位）と
し、そのピッチ量は前パス２ａのビード幅の半分を連続
パス２ｂが再溶融するピッチ量とする。

【００１９】２パス目以降の溶接についても１パス目の
溶接速度（周速）と一致するように回転ポジショナー１
０の回転速度を制御する。これによって溶接ビードの大
きさを均一化し、ステンレス又はモネルメタル等の肉盛
溶接時の母材の希釈を小さくすることが可能となる。

【００２０】また、円盤状金物１を冷却板１３の上に設
置して溶接を行うことにより、溶接により蓄熱されてい
く熱が奪われ、パス間温度の低下が図れる。溶接の際、
冷却板１３には、回転ジョイント１８を介してパイプ１
５，１６がパイプコネクタ１９，２０により連結され、
冷却機１４から冷却液が循環供給されるので、溶接部の
パス間温度が迅速に得られる。

【００２１】上記溶接内容の条件等の一例を示せば、外
径４００mm以下の円盤状金物に対しては、電流１８０±
７０（Ａ）、電圧１５±５（Ｖ）、溶接速度１５０±７
０（mm／分）、ワイヤ送給量７００±４００（mm／
分）、送りピッチ量４±２（mm）、冷却液温度−２０℃
で行った。

【００２２】

【考案の効果】本考案に係る溶接装置によれば、被溶接
物の載置台として冷却板を使用したことによって、溶接
部のパス間温度基準を守るための冷却時間を持つことな
く長時間の連続肉盛溶接が可能となり、また冷却板の回
転速度をトーチのシフトごと、即ち１パスごとに制御
し、溶接速度が一定になるようにしたことによって、均
一な自動肉盛溶接を連続して行うことができ、溶接品質
および溶接作業能率の向上が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例装置の全体斜視図である。

【図２】回転ポジショナーの回転台部分の縦断面図であ
る。

【図３】肉盛溶接状態の部分断面図である。

【図４】ピッチ部を示す部分溶接線図である。

【図５】円盤状金物の一例の斜視図である。

【図６】円盤状金物への肉盛溶接状態の縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 円盤状金物 ２ 肉盛溶接 １０ 回転ポジショナー １１ 回転台 １３ 冷却板 ２１ ＴＩＧ溶接トーチ ２２ トーチスタンド ２５ 自動シフト機構

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 円盤状金物の連続自動肉盛溶接を行なう
   装置において、上下動機構付支持具と、その支持具に支
   持され、トーチが保持される自動シフト機構と、回転台
   を回転させる回転機構と、回転台上に設けられ、被溶接
   物が載置される冷却板と、冷却機より冷却板に冷却液を
   送るパイプを備えたことを特徴とする円盤状金物の自動
   肉盛連続溶接装置。