JPH07296657A - がいし形避雷器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】弾性外被体の成形を充分に低い圧力で行い得、
避雷素子相互間の接触状態を避雷器製造時や使用時での
熱応力に対し安定に保持できるがいし形避雷器を提供す
る。 【構成】避雷素子群１，…の両端に内部電極２，２を配
した積層体Ａに、粘着剤層または潤滑剤層４を介して熱
収縮性絶縁チュ−ブ３を被覆し、該熱収縮性絶縁チュ−
ブ３上に繊維強化樹脂層５を被覆し、該繊維強化樹脂層
５の両端に外部電極７，７を固着し、上記の各内部電極
７と各外部電極２との間に弾性圧縮子９１を介在させ、
同繊維強化樹脂層５上に弾性外被体１０を被覆した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は送配電系統、電力機器、
鉄道車両等を雷サ−ジから保護するために使用するがい
し形避雷器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】酸化亜鉛を主成分とした非直線性抵抗素
子においては、抵抗の非直線性に優れ、かつ常規対地電
圧における抵抗分電流を絶縁物の漏れ電流に近いレベル
に抑制できるので、直列ギャップなしで避雷器に使用で
き、避雷器の構成の簡易化、小型化に好適であり、酸化
亜鉛を用いたがいし形避雷器が汎用されている。

【０００３】このがいし形避雷器の基本的構成は、酸化
亜鉛素子並びに両端内部電極を積層し、これらを碍管内
に気密に収容し、碍管両端の高電圧側外部電極並びに接
地側外部電極を上記酸化亜鉛素子積層体両端の各内部電
極に電気的に接触させて成り、酸化亜鉛素子の特性を保
持するために気密性・防湿性を保証すること、続流遮断
不能時の異常内圧を放圧して爆発飛散を防止すること等
が不可欠とされている。

【０００４】従来、上記のがいし形避雷器として、図４
に示すように、酸化亜鉛避雷素子群１’，…の両端に内
部電極２’，２’を配した積層体を熱収縮性絶縁チュ−
ブ３’の被覆により一括すると共に熱収縮性絶縁チュ−
ブ３’の上下端に引き出し端子２０１’，２０２’を固
着し、これらの各引き出し端子２１’と各内部電極２’
との間をバネ式接触子９１’により電気的に接続して避
雷器内側部材を構成し、ガス放圧孔５１’，…を有し、
上下端にそれぞれ外部電極７０１’，７０２’を固着し
た繊維強化樹脂絶縁筒５’内に前記の避雷器内側部材を
収容し、上側外部電極７０１’と上側引き出し端子２０
１’との間を螺合により電気的に接合し、下側外部電極
７０２’と下側引き出し端子２０２’との間を結合金具
７３’により電気的に接続し、更に、この繊維強化樹脂
絶縁筒５’の外周にゴム製外被体１０’をモ−ルドし、
このモ−ルド時に前記の絶縁筒５’内に上記のガス放圧
孔５１’を通してゴム外被体１０’のコム材を注入・充
填したものが公知である。

【０００５】このがいし形避雷器においては、酸化亜鉛
素子に対する気密・防湿性を熱収縮性絶縁チュ−ブ３’
の被覆と絶縁筒５’内へのゴム材の注入・充填等により
保証し、放圧・飛散防止を絶縁筒５’に設けた放圧孔５
１’とゴム外被体１０’の弾性とで保証している。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図４に
示すがいし形避雷器においては、ゴム外被体のモ−ルド
時に絶縁筒内にガス放圧孔を通してそのゴム外被体のコ
ム材を注入・充填する必要があり、その注入圧力を高く
しなければならず、また真空引きも必要なため、成形装
置の大規模化が避けられない。他方、この不具合を回避
するために、繊維強化樹脂絶縁筒のガス放圧孔を大きく
れば、当該絶縁筒の機械的強度が低下し、使用中での避
雷素子相互の安定な電気的接触を保証し難く作動不良が
招来され易い。

【０００７】また、図４に示すがいし形避雷器において
は、熱収縮性絶縁チュ−ブとゴム外被体と繊維強化樹脂
絶縁筒とが力学的に一体化されているために、これらの
複合体の長手方向の伸びに対するヤング率がバネ接触子
のヤング率よりも大となり、ゴム外被体のモ−ルド時や
使用中のヒ−トサイクルによる熱膨張に基づき避雷素子
間を引き離そうとする力がバネ接触子の圧縮応力よりも
大となって、避雷素子相互の接触が不安定化する畏れも
ある。

【０００８】本発明の目的は、弾性外被体の成形を充分
に低い圧力で行い得、避雷素子相互間の接触状態を避雷
器製造時や使用時での熱応力に対し安定に保持できるが
いし形避雷器を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明に係るがいし形避
雷器は、図１に示すように、避雷素子群１，…の両端に
内部電極２，２を配した積層体Ａに、粘着剤層または潤
滑剤層４を介して熱収縮性絶縁チュ−ブ３を被覆し、該
熱収縮性絶縁チュ−ブ３上に繊維強化樹脂層５を被覆
し、該繊維強化樹脂層５の両端に外部電極７，７を固着
し、上記の各内部電極７と各外部電極２との間に弾性圧
縮子９１を介在させ、同繊維強化樹脂層５上に弾性外被
体１０を被覆したことを特徴とする構成であり、熱収縮
性絶縁チュ−ブ３上に繊維強化樹脂層５を粘着剤層また
は潤滑剤層６を介して被覆したり、繊維強化樹脂層５に
孔５１を設け、この孔５１に弾性外被体１０の弾性材を
充填したり、避雷素子１を環状とし、避雷素子群１，…
の中央に図３に示すように絶縁棒１２を挿着することも
できる。

【００１０】

【作用】図１において、積層体Ａと熱収縮性絶縁チュ−
ブ３との間に粘着剤層または潤滑剤層４が存在し、その
界面の剪断強さを弾性圧縮子９１の圧縮反力以下にでき
るから、避雷素子群１，…の両端に内部電極２を配した
積層体Ａに対し熱収縮性絶縁チュ−ブ３が長さ方向に熱
膨張しても、同積層体Ａと熱収縮性絶縁チュ−ブ３との
間にすべりを生じさせ、積層体Ａが熱収縮性絶縁チュ−
ブ３の熱膨張と共に移動することを排除して、弾性圧縮
子９１の圧縮反力により積層体Ａの接触状態を保持させ
得る。

【００１１】而して、積層体Ａと熱収縮性絶縁チュ−ブ
３とを密接状態のもとで力学的に分離でき、熱収縮性絶
縁チュ−ブ３を厚くしたり、熱収縮性絶縁チュ−ブに曲
げ剛性の大なるものを使用しても、加熱膨張下、積層体
の接触状態を安定に保持できる。従って、熱収縮性絶縁
チュ−ブ３に曲げ剛性の大なるものを使用し、繊維強化
樹脂層５をフィラメントワインディング法により成形す
ることにより避雷素子積層体Ａに繊維強化樹脂層５を密
着状態で被覆できる。その結果、従来例とは異なり、ゴ
ム外被体のモ−ルド時に繊維強化樹脂絶縁筒内にガス放
圧孔を経てそのゴム外被体のゴム材を注入・充填するこ
とが不要となり、ゴム外被体の成形圧力を低くできる。

【００１２】

【実施例】以下、図面を参照しつつ本発明の実施例につ
いて説明する。図１は本発明の実施例を示す説明図であ
る。図１において、Ａは酸化亜鉛避雷素子群１，…と両
端の内部電極２，２とからなる積層体、３は積層体Ａに
被覆した熱収縮性絶縁チュ−ブ、４は熱収縮性絶縁チュ
−ブ３と積層体Ａとの間に介在させた粘着剤層または潤
滑剤層であり、Ｂはこれらの部材から成る避雷器内側部
材を示している。

【００１３】５は避雷器内側部材Ｂ上にフィラメントワ
インディング法により成形した繊維強化樹脂層であり、
熱収縮性絶縁チュ−ブ３と繊維強化樹脂層５との界面に
は、必要に応じ粘着剤層または潤滑剤層６を介在させる
ことができる。７，７は繊維強化樹脂層５の上下端に接
着剤７１とピン７２等により固着したキャップ状外部電
極であり、各外部電極７と上記積層体上下端の各内部電
極２との間にスプリング等の弾性圧縮子９１を介在さ
せ、その圧縮反力により避雷素子相互、避雷素子と内部
電極、内部電極と外部電極との加圧接触を保証してい
る。９２は内部電極２と外部電極７との電気的接触を補
完するために設けた連結導体、例えば銅板である。５１
は繊維強化樹脂層５に穿設したガス放圧孔であり、通
常、図示のようなテ−パ孔が使用される。

【００１４】１０は繊維強化樹脂層５の外周並びに外部
電極７の外周上にモ−ルドした笠付きのゴム外被体であ
り、上記のガス放圧孔５１をこの外被体１０のゴムで充
填してある。この外被体のモ−ルド成形に代え、予め成
形した笠付きのゴム製筒を繊維強化樹脂層上に粘着剤層
を介して挿通することもできる。

【００１５】上記において、熱収縮性絶縁チュ−ブ３と
積層体Ａとの間に介在させた粘着剤層または潤滑剤層４
は、熱収縮性絶縁チュ−ブ３が長さ方向に熱膨張して
も、その加熱温度のもとで粘着剤層または潤滑剤層４に
弾性圧縮子９１の圧縮反力以下の剪断応力ですべりを生
じさせるものであればよく、常温で固体であっても、そ
の加熱温度のもとで当該すべりを生じるものであれば、
使用可能である。

【００１６】上記熱収縮性絶縁チュ−ブ３と繊維強化樹
脂層５との間に介在させる粘着剤層または潤滑剤層６
は、繊維強化樹脂層５の硬化温度や外被体１０のモ−ル
ド温度において、熱収縮性絶縁チュ−ブ３と繊維強化樹
脂層５との長さ方向の熱膨張差に対し、低剪断応力のも
とで滑りを生じさせて界面での応力発生を緩和できるも
のであればよく、常温で固体であっても、その加熱温度
のもとで当該すべりを生じるものであれば、使用可能で
ある。

【００１７】而して、上記の粘着剤層には、エチレン酢
酸ビニル共重合体樹脂，ブチルゴム，ホリイソブチレ
ン，石油系粘着付与剤等を主成分としたホットメルト系
粘着剤を使用でき、潤滑剤には液状石油系ポリブテンオ
イル、シリコ−ングリ−ス等を使用できる。

【００１８】上記キャップ状外部電極７内には、弾性圧
縮子９１の弾性変形（避雷器構成材料の膨張収縮に応じ
ての弾性変形）を阻害しない粘度のシ−ル剤、例えば、
液状シリコ−ンゴムや液状ポリブタジエン等の液状ゴム
を充填することもできる。

【００１９】上記熱収縮性絶縁チュ−ブ３には、後述す
るようにフィラメントワインディング時での素子群の機
械的保持並びに素子群の外気からの遮断の双方を充足さ
せる必要があり、機械的強度とガス遮断性に優れたもの
が使用される。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体，
低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレ−ト共
重合体等の熱可塑性樹脂よりなるものを使用できる。

【００２０】上記繊維強化樹脂層５の繊維には絶縁性の
繊維、例えば、ガラス繊維を使用でき、繊維形態として
は、フィラメントワインディングが可能であれば、特に
制限はなく、例えばロ−ビング、クロス等を使用でき
る。また、繊維強化樹脂層の樹脂には、硬化性樹脂を使
用することが好ましく、例えば、エポキシ樹脂が使用さ
れる。

【００２１】上記ゴム外被体１０においては、避雷器内
部に続流遮断不能下、ガスが発生し、そのガス内圧が繊
維強化樹脂層のガス放圧孔から放出される際、そのガス
圧を緩和して避雷器の細断飛散を防止し得ることの他、
優れた沿面絶縁強度が要求され、例えば、変性シリコ−
ンゴムに金属水和物等を添加した耐トラッキング性ゴム
を過酸化物で架橋するものを使用できる。

【００２２】図２の（イ）乃至図の（ホ）は、上記実施
例避雷器の製造方法を示している。この実施例品を製造
するには、図２の（イ）に示すように、内面に粘着剤ま
たは潤滑剤４を塗布した熱収縮性絶縁チュ−ブ３内に、
酸化亜鉛避雷素子群１，…とその両端の内部電極２，２
からなる積層体の両端に軸棒１１，１１を配したものを
挿入し、更に、図２の（ロ）に示すように、熱収縮性絶
縁チュ−ブ３を加熱収縮させて組立コアを得る。

【００２３】次いで、この組立コアの熱収縮性絶縁チュ
−ブ外面に粘着剤または潤滑剤を塗布したうえで、コア
両端の軸棒において、フィラメントワインディング機の
軸受に装着し、フィ−ドアイからの硬化性樹脂含浸繊維
を組立コアを回転させ、かつフィ−ドアイをトラバ−ス
させつつほぼ一様厚みの層状に巻き付け、而るのち、硬
化炉にて樹脂を硬化させて図２の（ハ）に示すように、
組立コアの熱収縮性絶縁チュ−ブ３上に粘着剤層または
潤滑剤層６を介して繊維強化樹脂層５を成形する。

【００２４】このようにして繊維強化樹脂層を成形すれ
ば、図２の（ニ）に示すように、軸棒を抜脱し、繊維強
化樹脂層５の両端をトリミングし、また、繊維強化樹脂
層５に放圧孔５１を加工する。この場合、軸棒の抜脱に
より（なお、軸棒にはこの抜脱を容易に行い得るように
抜き勾配を付けておくことが望ましい）、繊維強化樹脂
層両端部が周方向引っ張り応力から解放されて縮径し、
内部電極の固定がより一層強化される。

【００２５】このようにして、繊維強化樹脂層両端のト
リミングを終了すれば、図に示すように、キャップ状外
部電極７を、弾性圧縮子９１としてのスプリング並びに
電気連結体９２としての銅板を内蔵させたうえで、繊維
強化樹脂層５の両端にピン止め７２と接着剤（例えば、
エポキシ系接着剤）７１とにより固定し（この際、キャ
ップ状外部電極７内に液状ゴム等の液状シ−ル剤を充填
することもできる）、更に、図１に示すように、笠付き
のゴム外被体１０をモ−ルド成形し、繊維強化樹脂層５
の放圧孔５１をこの成形材で充填し（この場合、図４に
示した従来例とは異なり、繊維強化樹脂筒５’内部への
放圧孔５１’を通してゴムの注入が不要となり、トラン
スフア−成形を使用できる）、これにてがいし形避雷器
の製作を終了する。

【００２６】図３は本発明に係るがいし形避雷器の別実
施例を示し、避雷素子１が環状であり、避雷素子群１，
…の中央に絶縁棒１２、例えば、繊維強化樹脂製棒を密
接に挿着してあり、これ以外の構成については、上記図
１に示した実施例に実質的に同じである（なお、図３に
おいて、図１と同一の符号は図１と同一の構成部分を示
している）。

【００２７】この別実施例においては、絶縁棒１２によ
っても避雷素子群１，…の機械的保持を行い得るので、
避雷素子の寸法、重量が大となる大型のがいし形避雷器
の製作に有利である。また、熱収縮性絶縁チュ−ブ３に
曲げ剛性の比較的小さなもの、例えば、エチレン−プロ
ピレン等のゴム系熱収縮性絶縁チュ−ブの使用も可能と
なる。

【００２８】

【発明の効果】本発明に係るがいし形避雷器は、上述し
た通りの構成であり、繊維強化樹脂層の加熱硬化時やゴ
ム外被体の加熱架橋時に熱収縮性絶縁チュ−ブが長手方
向に熱膨張しても、弾性圧縮子による内部電極並びに避
雷素子の押圧下、熱収縮性絶縁チュ−ブとこれらの避雷
素子等との間にすべりが生じて弾性圧縮子による内部電
極並びに避雷素子相互の接触状態が安定に保持されるか
ら、熱収縮性絶縁チュ−ブの曲げ剛性が大（ヤング率が
大、厚みが大等）であっても、内部電極並びに避雷素子
相互の安定な接触状態を保証できる。

【００２９】而して、熱収縮性絶縁チュ−ブの曲げ剛性
を大にして、繊維強化樹脂層のフィラメントワインディ
ング成形を良好に行うことができ、繊維強化樹脂層を避
雷器内側部材に密接して形成でき、従来例とは異なり、
繊維強化樹脂筒内への放圧孔を通してのゴム外被体のゴ
ム材の注入が不要となり、外被体の成形が容易になる。

【００３０】従って、本発明によれば、成形が容易で、
避雷素子相互並びに避雷素子と内部電極との安定な接触
を確保できるがいし形避雷器を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す説明図である。

【図２】図１に示す実施例の製造手順を示す説明図であ
る。

【図３】本発明の別実施例を示す説明図である。

【図４】従来例を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 避雷素子 ２ 内部電極 Ａ 積層体 ３ 熱収縮性絶縁チュ−ブ ４ 粘着剤層または潤滑剤層 ５ 繊維強化樹脂層 ５１ 孔 ６ 粘着剤層または潤滑剤層 ７ 外部電極 ９１ 弾性圧縮子 １０ 弾性外被体 １２ 絶縁棒

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 園田 実信 大阪府茨木市下穂積１丁目１番２号 日東 電工株式会社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】避雷素子群の両端に内部電極を配した積層
   体に、粘着剤層または潤滑剤層を介して熱収縮性絶縁チ
   ュ−ブを被覆し、該熱収縮性絶縁チュ−ブ上に繊維強化
   樹脂層を被覆し、該繊維強化樹脂層の両端に外部電極を
   固着し、上記の各内部電極と各外部電極との間に弾性圧
   縮子を介在させ、同繊維強化樹脂層上に弾性外被体を被
   覆したことを特徴とするがいし形避雷器。
2. 【請求項２】熱収縮性絶縁チュ−ブ上に繊維強化樹脂層
   を粘着剤層または潤滑剤層を介して被覆した請求項１記
   載のがいし形避雷器。
3. 【請求項３】繊維強化樹脂層に孔を設け、この孔を弾性
   外被体の弾性材で充填した請求項１または２記載のがい
   し形避雷器。
4. 【請求項４】避雷素子が環状であり、避雷素子群の中央
   に絶縁棒を挿着した請求項１乃至３いずれか記載のがい
   し形避雷器。