JPH07283489A - 半導体発光素子 - Google Patents

半導体発光素子

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JPH07283489A
JPH07283489A JP16277094A JP16277094A JPH07283489A JP H07283489 A JPH07283489 A JP H07283489A JP 16277094 A JP16277094 A JP 16277094A JP 16277094 A JP16277094 A JP 16277094A JP H07283489 A JPH07283489 A JP H07283489A
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JP
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layer
znse
superlattice
mgs
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Akira Ishibashi
晃 石橋
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 半導体レーザーや発光ダイオードなどの半導
体発光素子のp型クラッド層の正孔濃度を十分に高く
し、また、クラッド層の材料の選択の範囲を広くする。 【構成】 クラッド層の少なくとも一部として、Zn、
Mg、CdおよびMnから成る群より選ばれた少なくと
も一種の元素と、S、SeおよびTeから成る群より選
ばれた少なくとも一種の元素とにより構成された少なく
とも二種類の化合物半導体から成る超格子、好適には基
板とほぼ格子整合する超格子を用いる。例えば、半導体
レーザーのn型クラッド層およびp型クラッド層として
それぞれn型ZnSe/MgS超格子クラッド層1およ
びp型ZnSe/MgS超格子クラッド層5を用いる。
p型ZnSe/MgS超格子クラッド層5の形成に際し
ては、MgS層を避けてZnSe層にのみアクセプタ不
純物をドープする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体発光素子に関
し、例えば、II−VI族化合物半導体を用いた、短波
長で発光可能な半導体レーザーに適用して好適なもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、光ディスクの記録密度の向上やレ
ーザープリンタの解像度の向上を図るために、短波長で
の発光が可能な半導体レーザーに対する要求が高まって
きており、その実現を目指して研究が活発に行われてい
る。
【0003】このような短波長での発光が可能な半導体
レーザーの製造に用いる材料としては、II−VI族化
合物半導体が有望である。特に、四元系のII−VI族
化合物半導体であるZnMgSSe系化合物半導体は、
波長400〜550nm帯の青色ないし緑色発光の半導
体レーザーをGaAs基板上に作製するときのクラッド
層や光導波層の材料に適していることが知られている
(例えば、Electron. Lett. 28(1992)1798)。
【0004】図18はこのような半導体レーザーの一例
を示し、図19はこの半導体レーザーのエネルギーバン
ド構造、特にその伝導帯を示す。図18に示すように、
この半導体レーザーにおいては、図示省略した基板上に
n型ZnMgSSeクラッド層101、n型ZnSSe
光導波層102、ZnSe層やZnCdSe層から成る
活性層103、p型ZnSSe光導波層104およびp
型ZnMgSSeクラッド層105が順次積層されてレ
ーザー共振器が形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
図18に示す半導体レーザーのようにZnMgSSe系
化合物半導体をクラッド層の材料として用いた場合に
は、ZnMgSSe系化合物半導体に対してアクセプタ
不純物、例えばNをドープしたときに、いわゆる自己補
償効果が生じ、SA(self-activated)センタが生成さ
れることにより、たとえNを高濃度にドープしてもp型
クラッド層の正孔濃度を十分に高くすることが困難であ
るという問題がある。
【0006】一方、図20に示すような半導体レーザー
においては、p型ZnMgSSeクラッド層の部分にお
いて、このp型ZnMgSSeクラッド層とp型ZnS
e光導波層との界面に存在する価電子帯の不連続ΔEv
の分だけフェルミ準位EF が価電子帯の頂上から大きく
離れている。すなわち、図20においてE2 =E1 +Δ
v である。このため、Nのドーピング濃度を高くして
も、正孔濃度を十分に高くすることは困難である。
【0007】したがって、この発明の目的は、p型クラ
ッド層の正孔濃度を十分に高くすることができる半導体
発光素子を提供することにある。
【0008】この発明の他の目的は、クラッド層の材料
の選択の範囲が広い半導体発光素子を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明による半導体発光素子は、Zn、Mg、C
dおよびMnから成る群より選ばれた少なくとも一種の
元素と、S、SeおよびTeから成る群より選ばれた少
なくとも一種の元素とにより構成された少なくとも二種
類の化合物半導体から成る超格子をクラッド層の少なく
とも一部として用いたものである。
【0010】ここで、超格子は、2元ないし7元の化合
物半導体の組み合わせにより構成される。半導体発光素
子の設計(発光波長など)に応じて、これらの化合物半
導体のうちから適切なものが選ばれる。
【0011】Zn、MgおよびCdはII族元素であ
り、S、SeおよびTeはVI族元素であるから、上記
の化合物半導体のうち、Zn、MgおよびCdから成る
群より選ばれた少なくとも一種の元素と、S、Seおよ
びTeから成る群より選ばれた少なくとも一種の元素と
により構成される化合物半導体は、II−VI族化合物
半導体である。
【0012】このようなII−VI族化合物半導体のう
ち2元または3元のものから成る超格子は、Zn=X
1 、Mg=X2 、Cd=X3 、S=Y1 、Se=Y2
Te=Y3 と書くと、2元のII−VI族化合物半導体
同士の組み合わせによるものに対しては、一般式で(X
i p m −(Xj q n と書くことができる。同様
に、3元のII−VI族化合物半導体と2元のII−V
I族化合物半導体との組み合わせによるものに対して
は、一般式で(Xi p q m −(Xj r nまた
は(Xi j p m −(Xk q n と書くことがで
き、3元のII−VI族化合物半導体同士の組み合わせ
によるものに対しては、一般式で(Xi jp m
(Xk l q n 、(Xi p q m −(Xj k
r n または(Xi p q m −(Xj r s
n と書くことができる。ただし、i、j、k、l、p、
q、r、s=1、2、3である。また、m、n=1、
2、3、…である。
【0013】上記の2元または3元のII−VI族化合
物半導体から成る超格子の具体例をいくつか挙げると、
2元のII−VI族化合物半導体同士の組み合わせによ
る例としては(ZnSe)m −(MgS)n や(Zn
S)m −(MgSe)n などであり、3元のII−VI
族化合物半導体と2元のII−VI族化合物半導体との
組み合わせによる例としては(ZnSSe)m −(Mg
S)n などである。
【0014】この発明による半導体発光素子の好適な一
実施形態においては、超格子が全体として基板とほぼ格
子整合している。ここで、全体としてとは、グローバル
にと言い換えることもできる。また、ほぼ格子整合して
いるとは、擬似的に格子整合していると言い換えること
もできる。このような超格子と基板との組み合わせの一
例を挙げると、GaAs基板に対して(ZnS)m
(MgSe)n 超格子などである。
【0015】この発明による半導体発光素子のさらに好
適な一実施形態においては、超格子を構成する複数の層
がそれぞれ基板とほぼ格子整合している。このような超
格子と基板との組み合わせの一例を挙げると、GaAs
基板に対して(ZnSe)m−(MgS)n 超格子など
である。
【0016】参考のために、代表的な2元のII−VI
族化合物半導体について、格子定数とバンドギャップと
の関係を図17に示す。
【0017】この発明による半導体発光素子の一実施形
態においては、超格子を構成する複数の層はMgを含む
層とMgを含まない層とを含み、Mgを含まない層にの
みアクセプタ不純物がドープされている。
【0018】この発明による半導体発光素子の他の一実
施形態においては、超格子を構成する複数の層はTeを
含む層とTeを含まない層とを含み、Teを含まない層
にのみドナー不純物がドープされている。
【0019】これらのアクセプタ不純物またはドナー不
純物は、好適には、界面付近を避けてドープされる。
【0020】この発明による半導体発光素子のさらに他
の一実施形態において、超格子はZnx Mg1-x y
1-y /Znp Mg1-p q Se1-q (ただし、0<
x、y<1、0≦p、q≦1)であり、その典型的な例
はZnx Mg1-x y Se1-y/ZnSe超格子(以下
「ZnMgSSe/ZnSe超格子」と略記する)であ
る。
【0021】この発明による半導体発光素子は、具体的
には、半導体レーザーや発光ダイオードである。
【0022】
【作用】この発明による半導体発光素子によれば、Z
n、Mg、CdおよびMnから成る群より選ばれた少な
くとも一種の元素と、S、SeおよびTeから成る群よ
り選ばれた少なくとも一種の元素とにより構成された少
なくとも二種類の化合物半導体から成る超格子は、その
構成に用いることができる化合物半導体の種類が多いこ
とから、極めて多種類のものを構成することができる。
このため、クラッド層の材料の選択の範囲が広くなる。
【0023】また、超格子は、それを構成する一部の層
にのみ不純物ドーピングを行う、いわゆる変調ドーピン
グが可能であることにより、この超格子を構成する複数
の層が、アクセプタ不純物のドーピングが難しいMgを
含む化合物半導体から成る層を含む場合にはその層を避
けてそれ以外の層にのみアクセプタ不純物をドープする
ことができ、また、この超格子を構成する複数の層が、
ドナー不純物のドーピングが難しいTeを含む化合物半
導体の層を含む場合にはその層を避けてそれ以外の層に
のみドナー不純物をドープすることができる。このた
め、自己補償効果を抑え、SAセンタの発生を抑えるこ
とができる。特に、これらの不純物を界面付近を避けて
ドープすることにより、自己補償効果を有効に抑え、S
Aセンタの発生をほぼ完全になくすことができる。これ
によって、不純物ドーピングを十分に高濃度に行うこと
により、p型クラッド層の正孔濃度を十分に高くするこ
とができる。
【0024】また、特に、クラッド層を構成する超格子
としてZnMgSSe/ZnSe超格子を用いた場合、
このZnMgSSe/ZnSe超格子を、その正孔の量
子準位は上昇させずに電子の量子準位のみ量子効果によ
り上昇させるように設計することにより、クラッド層を
ZnMgSSe系化合物半導体により構成した場合に比
べて、このクラッド層の部分における実質的な価電子帯
の頂上となる基底状態の正孔の量子準位は高くなる。こ
のため、このクラッド層をZnSe層と接合した場合、
このクラッド層の部分における実質的な価電子帯の頂上
となる正孔の基底状態の量子準位とフェルミ準位との差
は、クラッド層をZnMgSSe系化合物半導体により
構成した場合に比べて小さくなる。これによって、その
分だけ、p型クラッド層の正孔濃度を高くすることがで
きる。
【0025】
【実施例】以下、この発明の実施例について図面を参照
しながら説明する。
【0026】図1はこの発明の第1実施例による半導体
レーザーを示す。図2はこの第1実施例による半導体レ
ーザーのエネルギーバンド図、特にその伝導帯を示す。
この半導体レーザーは、いわゆるSCH(Separate Con
finement Heterostructure)構造を有するものである。
【0027】図1に示すように、この第1実施例による
半導体レーザーにおいては、図示省略した基板上に、n
型ZnSe/MgS超格子クラッド層1、n型ZnSS
e光導波層2、例えばZnSe層やZnCdSe層から
成る活性層3、p型ZnSSe光導波層4およびp型Z
nSe/MgS超格子クラッド層5が順次積層されてレ
ーザー共振器が形成されている。ここで、n型ZnSe
/MgS超格子クラッド層1およびp型ZnSe/Mg
S超格子クラッド層5は、ZnSe層から成る量子井戸
層とMgS層から成る障壁層とを交互に積層したもので
ある。
【0028】この場合、n型ZnSe/MgS超格子ク
ラッド層1を構成するZnSe層1aおよびMgS層1
bには、ドナー不純物として例えばClがそれぞれドー
プされていてn型となっている。一方、p型ZnSe/
MgS超格子クラッド層5においては、変調ドーピング
技術により、それを構成する層のうちアクセプタ不純物
のドーピングが難しいMgS層1bを避けてZnSe層
1aにのみアクセプタ不純物として例えばNがドープさ
れていてp型となっている。また、この場合、アクセプ
タ不純物としてのNは、ZnSe層1aの、隣接する層
との界面付近の部分を避けてその内部にのみドープされ
ている。このため、アクセプタ不純物のドーピングによ
る自己補償効果をほぼ完全に抑え、SAセンタの発生を
ほぼ完全に抑えることができる。これによって、アクセ
プタ不純物のドーピングを効率良く行うことができる。
【0029】図3に示すような、アクセプタ不純物とし
てNがドープされたp型のZnSe層(量子井戸層)と
アンドープのMgS層(障壁層)とを交互に積層したZ
nSe/MgS超格子において、障壁層の厚さを6原子
層に相当する厚さに固定し、量子井戸層の厚さを変化さ
せたときの電子の量子準位Ee および正孔の量子準位E
h を、ΔEc /ΔEg (ただし、ΔEc はZnSe層と
MgS層との界面における伝導帯の不連続の大きさを表
し、ΔEg はZnSe層とMgS層とのバンドギャップ
差を表す)がそれぞれ40%、50%および60%であ
る場合について計算した結果をそれぞれ図4、図5およ
び図6に示す。ここで、電子の量子準位Ee はZnSe
層の伝導帯の底を基準とし、正孔の量子準位Eh はZn
Se層の価電子帯の底を基準とする。また、この計算に
当たっては、ZnSe中の電子および正孔の有効質量と
してそれぞれ0.17m0 および0.60m0 (ただ
し、m0 は真空中の電子の質量)を用い、MgS中の電
子および正孔の有効質量としてそれぞれ0.27m0
よび0.62m0 を用いた。
【0030】図4、図5および図6からわかるように、
ZnSe層の厚さが8原子層に相当するZnSe/Mg
S超格子、すなわち(ZnSe)8 −(MgS)2 超格
子におけるバンドギャップ差ΔEg は、ΔEg 〜0.2
eV程度である。この(ZnSe)8 −(MgS)2
格子全体の正孔濃度は、例えば、ZnSe層中に正孔濃
度がその飽和値(約6×1017cm-3)に達するまでN
をドープした場合、6×1017×[(8/(8+2)]
〜5×1017cm-3とすることができる。したがって、
このような(ZnSe)8 −(MgS)2 超格子から成
るp型ZnSe/MgS超格子クラッド層5の正孔濃度
は、5×1017cm-3程度とすることができる。
【0031】一方、ΔEg は、図3に示すような超格子
における多重量子障壁(MQB)効果により、容易に大
きな値を得ることができる。すなわち、ΔEe 〜0.8
eVにもなることにより、MQB効果でΔEg 〜2ΔE
e とすることができる。
【0032】以上のように、この第1実施例によれば、
特に、p型クラッド層としてp型ZnSe/MgS超格
子クラッド層5を用い、アクセプタ不純物のドーピング
が難しいMgS層を避けてZnSe層にのみアクセプタ
不純物をドーピングしていることにより、アクセプタ不
純物のドーピングによる自己補償効果を有効に抑え、S
A欠陥の発生を有効に抑えることができる。このため、
p型クラッド層の材料としてp型ZnMgSSe層を用
いた場合に比べて、p型クラッド層の正孔濃度を高くす
ることができる。そして、これによって、例えば、青色
ないし緑色で発光可能な高性能の半導体レーザーを実現
することができる。
【0033】図7および図8はこの発明の第2実施例に
よる半導体レーザーを示し、図7はこの半導体レーザー
の共振器長方向に垂直な断面図、図8はこの半導体レー
ザーの共振器長方向に平行な断面図を示す。この半導体
レーザーも、SCH構造を有するものである。
【0034】図7および図8に示すように、この第2実
施例による半導体レーザーにおいては、例えばドナー不
純物としてSiがドープされた例えば(100)面方位
のn型GaAs基板11上に、例えばドナー不純物とし
てClがドープされたn型ZnSeバッファ層12、そ
のZnSe層およびMgS層にそれぞれ例えばドナー不
純物としてClがドープされたn型ZnSe/MgS超
格子クラッド層13、例えばドナー不純物としてClが
ドープされたn型ZnSe光導波層14、活性層15、
例えばアクセプタ不純物としてNがドープされたp型Z
nSe光導波層16、そのZnSe層にのみ例えばアク
セプタ不純物としてNがドープされたp型ZnSe/M
gS超格子クラッド層17、例えばアクセプタ不純物と
してNがドープされたp型ZnSv Se1-v 層18、例
えばアクセプタ不純物としてNがドープされたp型Zn
Seコンタクト層19、例えばアクセプタ不純物として
Nがそれぞれドープされたp型ZnTeから成る量子井
戸層とp型ZnSeから成る障壁層とを交互に積層した
p型ZnTe/ZnSe多重量子井戸(MQW)層20
および例えばアクセプタ不純物としてNがドープされた
p型ZnTeコンタクト層21が順次積層されている。
p型ZnTe/ZnSeMQW層20については後に詳
細に説明する。
【0035】ここで、p型ZnSv Se1-v 層18の上
層部、p型ZnSeコンタクト層19、p型ZnTe/
ZnSeMQW層20およびp型ZnTeコンタクト層
21はストライプ形状にパターニングされている。この
ストライプ部の幅は例えば5μmである。
【0036】上述のストライプ部以外の部分のp型Zn
v Se1-v 層18上には、例えば厚さが300nmの
アルミナ(Al23 )膜から成る絶縁層22が形成さ
れている。そして、ストライプ形状のp型ZnTeコン
タクト層21および絶縁層22上にp側電極23が形成
されている。このp側電極23がp型ZnTeコンタク
ト層21とコンタクトした部分が電流の通路となる。こ
こで、このp側電極23としては、例えば、厚さが10
nmのPd膜と厚さが100nmのPt膜と厚さが30
0nmのAu膜とを順次積層した構造のPd/Pt/A
u電極が用いられる。一方、n型GaAs基板11の裏
面には、例えばIn電極のようなn側電極24がコンタ
クトしている。
【0037】この半導体レーザーにおいては、いわゆる
端面コーティングが施されている。すなわち、図8に示
すように、共振器長方向に垂直な一対の共振器端面のう
ちレーザー光が取り出されるフロント側の端面にはAl
23 膜25とSi膜26とから成る多層膜がコーティ
ングされ、共振器長方向に垂直な一対の共振器端面のう
ちレーザー光が取り出されないリア側の端面にはAl2
3 膜25とSi膜26とを2周期積層した多層膜がコ
ーティングされている。ここで、Al23 膜25とS
i膜26とから成る多層膜の厚さは、それに屈折率をか
けた光学的距離が、レーザー光の発振波長の1/4に等
しくなるように選ばれる。このような端面コーティング
が施されていることにより、例えば、フロント側の端面
の反射率を70%、リア側の端面の反射率を95%にす
ることができる。
【0038】また、この半導体レーザーにおいては、活
性層15は、好適には厚さが2〜20nm、例えば厚さ
が7nmのi型Zn1-z Cdz Se量子井戸層から成る
単一量子井戸構造を有する。この場合、n型ZnSe光
導波層14およびp型ZnSe光導波層16が障壁層を
構成する。この活性層15を構成するi型Zn1-z Cd
z Se量子井戸層のCd組成比zは例えば0.19であ
り、そのときのバンドギャップEg は77Kで約2.5
4eVである。
【0039】この場合、n型ZnSe光導波層14の厚
さは0〜120nm、例えば60nmであり、ND −N
A (ただし、NA はアクセプタ濃度、ND はドナー濃度
を表す)は例えば5×1017cm-3である。一方、p型
ZnSe光導波層16の厚さは0〜120nm、例えば
60nmであり、NA −ND は例えば5×1017cm-3
である。p型ZnSeコンタクト層19の厚さは例えば
45nmであり、NA−ND は8×1017cm-3であ
る。また、p型ZnSv Se1-v 層18の厚さは例えば
0.6μmであり、NA −ND は例えば8×1017cm
-3である。p型ZnTeコンタクト層21の厚さは例え
ば70nmであり、NA −ND は例えば1×1019cm
-3である。
【0040】n型ZnSeバッファ層12の厚さは、Z
nSeとGaAsとの間にはわずかではあるが格子不整
合が存在することから、この格子不整合に起因してこの
n型ZnSeバッファ層2およびその上の各層のエピタ
キシャル成長時に転位が発生するのを防止するために、
ZnSeの臨界膜厚(〜100nm)よりも十分に小さ
く選ばれるが、ここでは例えば33nmに選ばれる。
【0041】なお、p型ZnSe/MgS超格子クラッ
ド層17上のp型ZnSv Se1-v層18は、場合に応
じて、p型ZnSe/MgS超格子クラッド層17に加
えた第2のp型クラッド層としての機能、p型ZnSe
/MgS超格子クラッド層17との格子整合をとる機
能、ヒートシンク上へのレーザーチップのマウントの際
のチップ端面におけるはんだの這い上がりによる短絡を
防止するためのスペーサ層としての機能などのうちの一
または二以上の機能を有する。p型ZnSe/MgS超
格子クラッド層17との兼ね合いもあるが、このp型Z
nSv Se1-v 層18のS組成比vは、0<v≦0.
1、好ましくは0.06≦v≦0.08の範囲内に選ば
れる。
【0042】上述のp型ZnTe/ZnSeMQW層2
0が設けられているのは、p型ZnSeコンタクト層1
9とp型ZnTeコンタクト層21とを直接接合する
と、接合界面において価電子帯に大きな不連続が生じ、
これがp側電極23からp型ZnTeコンタクト層21
に注入される正孔に対する障壁となることから、この障
壁を実効的になくすためである。
【0043】すなわち、p型ZnSe中の正孔濃度は通
常は5×1017cm-3程度が上限であり、一方、p型Z
nTe中の正孔濃度は1018cm-3以上とすることが可
能である。また、p型ZnSe/p型ZnTe界面にお
ける価電子帯の不連続の大きさは約0.5eVである。
このようなp型ZnSe/p型ZnTe接合の価電子帯
には、接合がステップ接合であると仮定すると、p型Z
nSe側に W=(2εφT /qNA 1/2 (1) の幅にわたってバンドの曲がりが生じる。ここで、εは
ZnSeの誘電率、φTはp型ZnSe/p型ZnTe
界面における価電子帯の不連続の大きさ(約0.5e
V)を表す。
【0044】(1)式を用いてこの場合のWを計算する
と、W=32nmとなる。このときに価電子帯の頂上が
p型ZnSe/p型ZnTe界面に垂直な方向に沿って
どのように変化するかを示したのが図9である。ただ
し、p型ZnSeおよびp型ZnTeのフェルミ準位は
価電子帯の頂上に一致すると近似している。図9に示す
ように、この場合、p型ZnSeの価電子帯はp型Zn
Teに向かって下に曲がっている。この下に凸の価電子
帯の変化は、p側電極23からこのp型ZnSe/p型
ZnTe接合に注入された正孔に対してポテンシャル障
壁として働く。
【0045】この問題は、p型ZnSeコンタクト層1
9とp型ZnTeコンタクト層21との間にp型ZnT
e/ZnSeMQW層20を設けることにより解決する
ことができる。このp型ZnTe/ZnSeMQW層2
0は具体的には例えば次のように設計される。
【0046】図10は、p型ZnTeから成る量子井戸
層の両側をp型ZnSeから成る障壁層によりはさんだ
構造の単一量子井戸におけるp型ZnTeから成る量子
井戸の幅LW に対して第1量子準位(基底量子準位)E
1 がどのように変化するかを有限障壁の井戸型ポテンシ
ャルに対する量子力学的計算により求めた結果を示す。
ただし、この計算では、量子井戸層および障壁層におけ
る電子の質量としてp型ZnSeおよびp型ZnTe中
の正孔の有効質量mh を想定して0.60m0を用い、
また、井戸の深さは0.5eVとしている。
【0047】図10より、量子井戸の幅LW を小さくす
ることにより、量子井戸内に形成される第1量子準位E
1 を高くすることができることがわかる。p型ZnTe
/ZnSeMQW層20はこのことを利用して設計され
る。
【0048】この場合、p型ZnSe/p型ZnTe界
面からp型ZnSe側に幅Wにわたって生じるバンドの
曲がりは、p型ZnSe/p型ZnTe界面からの距離
xの二次関数 φ(x)=φT {1−(x/W)2 } (2) で与えられる(図9参照)。したがって、p型ZnTe
/ZnSeMQW層20の設計は、(2)式に基づい
て、p型ZnTeから成る量子井戸層のそれぞれに形成
される第1量子準位E1 がp型ZnSeおよびp型Zn
Teの価電子帯の頂上のエネルギーと一致し、しかも互
いに等しくなるようにLW を段階的に変えることにより
行うことができる。
【0049】図11は、p型ZnTe/ZnSeMQW
層20におけるp型ZnSeから成る障壁層の幅LB
2nmとした場合の量子井戸幅Lw の設計例を示す。こ
こでは、p型ZnSeコンタクト層19のNA −ND
5×1017cm-3とし、p型ZnTeコンタクト層21
のNA −ND は1×1019cm-3としている。図11に
示すように、この場合には、合計で7個ある量子井戸の
幅Lw を、その第1量子準位E1 がp型ZnSeおよび
p型ZnTeのフェルミ準位と一致するように、p型Z
nSeコンタクト層19からp型ZnTeコンタクト層
21に向かってLw =0.3nm、0.4nm、0.5
nm、0.6nm、0.8nm、1.1nm、1.7n
mと変化させている。
【0050】なお、量子井戸の幅Lw の設計に当たって
は、厳密には、それぞれの量子井戸の準位は相互に結合
しているためにそれらの相互作用を考慮する必要があ
り、また、量子井戸層と障壁層との格子不整合による歪
みの効果も取り入れなければならないが、多重量子井戸
の量子準位を図11に示すようにフラットに設定するこ
とは原理的に十分可能である。
【0051】図11において、p型ZnTeに注入され
た正孔は、p型ZnTe/ZnSeMQW層20のそれ
ぞれの量子井戸に形成された第1量子準位E1 を介して
共鳴トンネリングによりp型ZnSe側に流れることが
できるので、p型ZnSe/p型ZnTe界面のポテン
シャル障壁は実効的になくなる。
【0052】次に、この第2実施例による半導体レーザ
ーの製造方法について説明する。すなわち、まず、n型
GaAs基板11上に、後述のような成長原料を用いた
MBE法により、n型ZnSeバッファ層12、n型Z
nSe/MgS超格子クラッド層13、n型ZnSe光
導波層14、i型Zn1-z Cdz Se量子井戸層から成
る活性層15、p型ZnSe光導波層16、p型ZnS
e/MgS超格子クラッド層17、p型ZnSv Se
1-v 層18、p型ZnSeコンタクト層19、p型Zn
Te/ZnSeMQW層20およびp型ZnTeコンタ
クト層21を順次エピタキシャル成長させる。
【0053】上述のMBE法によるエピタキシャル成長
においては、例えば、Zn原料としては純度99.99
99%のZnを用い、Mg原料としては純度99.9%
のMgを用い、S原料としては99.9999%のZn
Sを用い、Se原料としては純度99.9999%のS
eを用いる。また、n型ZnSeバッファ層12、n型
ZnSe/MgS超格子クラッド層13およびn型Zn
Se光導波層14のドナー不純物としてのClのドーピ
ングは、例えば、純度99.9999%のZnCl2
ドーパントとして用いて行う。一方、p型ZnSe光導
波層16、p型ZnSe/MgS超格子クラッド層1
7、p型ZnSv Se1-v 層18、p型ZnSeコンタ
クト層19、p型ZnTe/ZnSeMQW層20およ
びp型ZnTeコンタクト層21のアクセプタ不純物と
してのNのドーピングは、電子サイクロトロン共鳴(E
CR)により発生されたN2 プラズマを照射することに
より行う。なお、p型ZnSe/MgS超格子クラッド
層17においては、変調ドーピング技術を用いて、Zn
Se層にのみNをドープする。
【0054】次に、p型ZnTeコンタクト層21上に
所定幅のストライプ形状のレジストパターン(図示せ
ず)を形成した後、このレジストパターンをマスクとし
て、p型ZnSv Se1-v 層18の厚さ方向の途中まで
ウエットエッチング法によりエッチングする。これによ
って、p型ZnSv Se1-v 層18の上層部、p型Zn
Seコンタクト層19、p型ZnTe/ZnSeMQW
層20およびp型ZnTeコンタクト層21がストライ
プ形状にパターニングされる。
【0055】次に、上述のエッチングに用いたレジスト
パターンを残したまま全面にAl23 膜を真空蒸着し
た後、このレジストパターンを、その上に形成されたA
23 膜とともに除去する(リフトオフ)。これによ
って、ストライプ部以外の部分のp型ZnSv Se1-v
層18上にのみAl23 膜から成る絶縁層22が形成
される。
【0056】次に、ストライプ形状のp型ZnTeコン
タクト層21および絶縁層22の全面にPd膜、Pt膜
およびAu膜を順次真空蒸着してPd/Pt/Au電極
から成るp側電極23を形成し、その後必要に応じて熱
処理を行って、このp側電極23をp型ZnTeコンタ
クト層21にオーミックコンタクトさせる。一方、n型
GaAs基板11の裏面にはIn電極のようなn側電極
24を形成する。
【0057】この後、以上のようにしてレーザー構造が
形成されたn型GaAs基板11をバー状に劈開して両
共振器端面を形成した後、真空蒸着法により、フロント
側の端面にAl23 膜25とSi膜26とから成る多
層膜を形成するとともに、リア側の端面にAl23
25とSi膜26とを2周期繰り返した多層膜を形成す
る。このように端面コーティングを施した後、このバー
を劈開してチップ化し、パッケージングを行う。
【0058】以上のように、この第2実施例によれば、
特に、p型クラッド層としてp型ZnSe/MgS超格
子クラッド層17を用いているので、第1実施例と同様
に、アクセプタ不純物のドーピングが難しいMgS層を
避けてZnSe層にのみアクセプタ不純物をドープする
ことができ、そのため自己補償効果を抑え、SAセンタ
の発生を有効に抑えることができる。これによって、p
型クラッド層の正孔濃度の向上を図り、p型クラッド層
の低抵抗化を図ることができ、半導体レーザーの高性能
化を図ることができる。
【0059】以上により、例えば、室温において連続発
振可能な緑色発光でしかも低しきい値電流密度のSCH
構造を有する半導体レーザーを実現することができる。
【0060】図12はこの発明の第3実施例による半導
体レーザーを示す。また、図13はこの半導体レーザー
のエネルギーバンド図を示す。
【0061】図12に示すように、この第3実施例によ
る半導体レーザーにおいては、図示省略した基板上に、
n型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層31、
n型ZnSe光導波層32、例えばZnCdSe層から
成る活性層33、p型ZnSe光導波層34およびp型
ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層35が順次
積層されてレーザー共振器が形成されている。ここで、
n型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層31お
よびp型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層3
5は、ZnMgSSe層から成る障壁層とZnSe層か
ら成る量子井戸層とを交互に積層したものである。
【0062】この場合、n型ZnMgSSe/ZnSe
超格子クラッド層31を構成するZnMgSSe層およ
びZnSe層には、ドナー不純物として例えばClがそ
れぞれドープされていてn型となっている。一方、p型
ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層35を構成
するZnMgSSe層およびZnSe層には、アクセプ
タ不純物として例えばNがドープされていてp型となっ
ている。
【0063】この第3実施例において、p型ZnMgS
Se/ZnSe超格子クラッド層35は、その正孔の量
子準位は上昇させずに電子の量子準位のみ量子化により
上昇させるように設計されている。このため、図13に
示すように、p型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラ
ッド層35における正孔の基底状態の量子準位と電子の
基底状態の量子準位との間のエネルギー差、すなわち有
効バンドギャップEg eff が、図20に示す従来の半導
体レーザーにおけるバンドギャップEg A とほぼ同一で
も、p型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層3
5における実質的な価電子帯の頂上となる正孔の基底状
態の量子準位とフェルミ準位EF との間のエネルギー差
2 ´を小さくすることができ、それによって図20の
場合に比べて正孔濃度をはるかに高くすることができ
る。
【0064】図14および図15はこの発明の第4実施
例による半導体レーザーを示し、図14はこの半導体レ
ーザーの共振器長方向に垂直な断面図、図15はこの半
導体レーザーの共振器長方向に平行な断面図を示す。図
14および図15に示すように、この第4実施例による
半導体レーザーは、n型クラッド層がドナー不純物とし
て例えばClがドープされたn型ZnMgSSe/Zn
Se超格子クラッド層41であり、p型クラッド層がア
クセプタ不純物として例えばNがドープされたp型Zn
MgSSe/ZnSe超格子クラッド層42であること
を除いて、第2実施例による半導体レーザーと同様な構
成を有する。ここで、特に、p型ZnMgSSe/Zn
Se超格子クラッド層42は、第3実施例におけるp型
ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層35と同様
に、その正孔の量子準位は上昇させずに電子の量子準位
のみ量子化により上昇させるように設計されている。な
お、n型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層4
1の厚さは例えば0.8μmであり、p型ZnMgSS
e/ZnSe超格子クラッド層42の厚さは例えば0.
6μmである。
【0065】この第4実施例によれば、第3実施例と同
様に、p型クラッド層の正孔濃度を高くすることができ
ることにより、このp型クラッド層の低抵抗化を図るこ
とができる。そして、例えば、室温において連続発振可
能な緑色発光でしかも低しきい値電流密度のSCH構造
を有する半導体レーザーを実現することができる。
【0066】図16はこの発明の第5実施例による半導
体レーザーを示し、その共振器長方向に垂直な断面図で
ある。図16に示すように、この第5実施例による半導
体レーザーにおいては、ドナー不純物として例えばCl
がドープされたn型Znp Mg1-p q Se1-q クラッ
ド層51とその上に積層されたドナー不純物として例え
ばClがドープされたn型ZnMgSSe/ZnSe超
格子クラッド層52とによりn型クラッド層が構成さ
れ、アクセプタ不純物として例えばNがドープされたp
型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層53とそ
の上に積層されたアクセプタ不純物として例えばNがド
ープされたp型Znp Mg1-p q Se1-q クラッド層
54とによりp型クラッド層が構成されている。すなわ
ち、第4実施例による半導体レーザーにおいては、n型
クラッド層の全体がn型ZnMgSSe/ZnSe超格
子クラッド層41により構成され、p型クラッド層の全
体がp型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層4
2により構成されているのに対し、この第5実施例によ
る半導体レーザーにおいては、n型クラッド層のうちの
n型ZnSe光導波層14に隣接する一部分だけがn型
ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層52により
構成され、p型クラッド層のうちのp型ZnSe光導波
層16に隣接する一部分だけがp型ZnMgSSe/Z
nSe超格子クラッド層53により構成されている。
【0067】この場合、特に、p型ZnMgSSe/Z
nSe超格子クラッド層53は、好適には、その厚さ方
向に電子がトンネリングするのを抑えることができる厚
さ、具体的には10〜20nm程度以上でかつ可能な限
り小さい厚さに選ばれる。一方、n型ZnMgSSe/
ZnSe超格子クラッド層52については、もっぱら活
性層15の両側の構造を光学的に対称にする見地より、
p型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層53と
同じ厚さに選ばれる。このとき、通常は、p型ZnMg
SSe/ZnSe超格子クラッド層53の厚さ方向の正
孔のトンネリングも抑えられる。なお、n型Znp Mg
1-p q Se1-q クラッド層51の厚さは例えば0.8
μmであり、p型Znp Mg1-p q Se1-q クラッド
層54の厚さは例えば0.6μmである。
【0068】この第5実施例による半導体レーザーの上
記以外の構成は、第2実施例による半導体レーザーと同
様である。ここで、p型ZnMgSSe/ZnSe超格
子クラッド層53は、第3実施例におけるp型ZnMg
SSe/ZnSe超格子クラッド層35と同様に、その
正孔の量子準位は上昇させずに電子の量子準位のみ量子
化により上昇させるように設計されている。
【0069】この第5実施例によれば、同じ厚さで比較
したときにp型Znp Mg1-p qSe1-q クラッド層
よりも抵抗が高いp型ZnMgSSe/ZnSe超格子
クラッド層53はp型クラッド層のうちのp型ZnSe
光導波層16に隣接する一部分だけに用いられているの
で、このp型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド
層53を用いたことによる抵抗の増加を十分に小さく抑
えつつ、その正孔の量子準位は上昇させずに電子の量子
準位のみ量子化により上昇させるように設計されたp型
ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッド層52の正孔
濃度の増大によりp型クラッド層の抵抗の減少を十分に
図ることができ、これによって第4実施例に比べてp型
クラッド層のより一層の低抵抗化を図ることができる。
そして、例えば、室温において連続発振可能な緑色発光
でしかも低しきい値電流密度のSCH構造を有する半導
体レーザーを実現することができる。
【0070】以上、この発明の実施例について具体的に
説明したが、この発明は、上述の実施例に限定されるも
のではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形
が可能である。
【0071】例えば、上述の第2実施例、第4実施例お
よび第5実施例において用いられているn型ZnSe光
導波層14およびp型ZnSe光導波層16の代わり
に、それぞれn型ZnSu Se1-u 光導波層およびp型
ZnSu Se1-u 光導波層を用いてもよい。また、活性
層15としてZnSe層を用いてもよい。
【0072】また、上述の第5実施例においては、p型
クラッド層のうちのp型ZnSe光導波層16に隣接す
る一部分がp型ZnMgSSe/ZnSe超格子クラッ
ド層53により構成されているが、場合によっては、p
型クラッド層の厚さ方向の中央部をこのp型ZnMgS
Se/ZnSe超格子クラッド層53により構成しても
よい。すなわち、p型クラッド層をp型Znp Mg1-p
q Se1-q クラッド層/p型ZnMgSSe/ZnS
e超格子クラッド層/p型Znp Mg1-p qSe1-q
クラッド層の三層構造としてもよい。n型クラッド層に
ついても同様である。
【0073】また、上述の第1実施例〜第5実施例にお
いては、SCH構造を有する半導体レーザーにこの発明
を適用した場合について説明したが、この発明は、例え
ば、DH構造(Double Heterostructure)を有する半導
体レーザーに適用することも可能である。
【0074】さらに、上述の第1実施例〜第5実施例に
おいては、半導体レーザーにこの発明を適用した場合に
ついて説明したが、この発明は、II−VI族化合物半
導体などを用いた発光ダイオードに適用することも可能
である。
【0075】
【発明の効果】以上述べたように、この発明による半導
体発光素子によれば、Zn、Mg、CdおよびMnから
成る群より選ばれた少なくとも一種の元素と、S、Se
およびTeから成る群より選ばれた少なくとも一種の元
素とにより構成された少なくとも二種類の化合物半導体
から成る超格子をクラッド層の少なくとも一部として用
いていることにより、p型クラッド層の正孔濃度を十分
に高くすることができ、また、クラッド層の材料の選択
の範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例による半導体レーザーを
示す断面図である。
【図2】この発明の第1実施例による半導体レーザーの
エネルギーバンド図である。
【図3】ZnSe/MgS超格子を示すエネルギーバン
ド図である。
【図4】図3に示すZnSe/MgS超格子における電
子の量子準位を量子井戸幅を変化させて計算した結果の
一例を示す略線図である。
【図5】図3に示すZnSe/MgS超格子における電
子の量子準位を量子井戸幅を変化させて計算した結果の
一例を示す略線図である。
【図6】図3に示すZnSe/MgS超格子における電
子の量子準位を量子井戸幅を変化させて計算した結果の
一例を示す略線図である。
【図7】この発明の第2実施例による半導体レーザーを
示す断面図である。
【図8】この発明の第2実施例による半導体レーザーを
示す断面図である。
【図9】p型ZnSe/p型ZnTe界面の近傍の価電
子帯を示すエネルギーバンド図である。
【図10】p型ZnTeから成る量子井戸の幅Lw に対
する量子井戸の第1量子準位E1の変化を示すグラフで
ある。
【図11】この発明の第2実施例による半導体レーザー
におけるp型ZnTe/ZnSeMQW層の設計例を示
す略線図である。
【図12】この発明の第3実施例による半導体レーザー
を示す断面図である。
【図13】この発明の第3実施例による半導体レーザー
のエネルギーバンド図である。
【図14】この発明の第4実施例による半導体レーザー
を示す断面図である。
【図15】この発明の第4実施例による半導体レーザー
を示す断面図である。
【図16】この発明の第5実施例による半導体レーザー
を示す断面図である。
【図17】代表的な2元のII−VI族化合物半導体の
格子定数とバンドギャップとの関係を示す略線図であ
る。
【図18】従来の半導体レーザーを示す断面図である。
【図19】従来の半導体レーザーのエネルギーバンド図
である。
【図20】他の従来の半導体レーザーのエネルギーバン
ド図である。
【符号の説明】
1、13 n型ZnSe/MgS超格子クラッド層 2 n型ZnSSe光導波層 3、15、33 活性層 4 p型ZnSSe光導波層 5、17 p型ZnSe/MgS超格子クラッド層 11 n型GaAs基板 12 n型ZnSeバッファ層 14 n型ZnSe光導波層 16 p型ZnSe光導波層 18 p型ZnSv Se1-v 層 19 p型ZnSeコンタクト層 20 p型ZnTe/ZnSeMQW層 21 p型ZnTeコンタクト層 22 絶縁層 23 p側電極 24 n側電極 31、41、52 n型ZnMgSSe/ZnSe超格
子クラッド層 35、42、53 p型ZnMgSSe/ZnSe超格
子クラッド層 51 n型Znp Mg1-p q Se1-q クラッド層 54 p型Znp Mg1-p q Se1-q クラッド層

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zn、Mg、CdおよびMnから成る群
    より選ばれた少なくとも一種の元素と、S、Seおよび
    Teから成る群より選ばれた少なくとも一種の元素とに
    より構成された少なくとも二種類の化合物半導体から成
    る超格子をクラッド層の少なくとも一部として用いた半
    導体発光素子。
  2. 【請求項2】 上記化合物半導体は2元または3元のI
    I−VI族化合物半導体であることを特徴とする請求項
    1記載の半導体発光素子。
  3. 【請求項3】 上記超格子が全体として基板とほぼ格子
    整合していることを特徴とする請求項1記載の半導体発
    光素子。
  4. 【請求項4】 上記超格子を構成する複数の層がそれぞ
    れ基板とほぼ格子整合していることを特徴とする請求項
    3記載の半導体発光素子。
  5. 【請求項5】 上記超格子を構成する複数の層はMgを
    含む層とMgを含まない層とを含み、上記Mgを含まな
    い層にのみアクセプタ不純物がドープされていることを
    特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  6. 【請求項6】 上記超格子を構成する複数の層はTeを
    含む層とTeを含まない層とを含み、上記Teを含まな
    い層にのみドナー不純物がドープされていることを特徴
    とする請求項1記載の半導体発光素子。
  7. 【請求項7】 上記超格子はZnx Mg1-x y Se
    1-y /Znp Mg1-pq Se1-q (ただし、0<x、
    y<1、0≦p、q≦1)超格子であることを特徴とす
    る請求項1記載の半導体発光素子。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007067454A (ja) * 1997-01-09 2007-03-15 Nichia Chem Ind Ltd 窒化物半導体素子
JP2009032817A (ja) * 2007-07-25 2009-02-12 Sony Corp 半導体素子
US8541794B2 (en) 1997-01-09 2013-09-24 Nichia Chemical Industries, Ltd. Nitride semiconductor light-emitting devices

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