JPH07278921A - 患者用衣服 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 着衣、脱衣及び注射、点滴等の治療、介護が
容易に行えるとともに、治療等の際に患者の身体を必要
以上に露出することがない患者用衣服を提供すること。 【構成】 前開きのゆかた状に形成され、身頃が前身頃
１と後身頃に、袖が前袖４と後袖にそれぞれ分離される
とともに、前身頃１と後身頃及び前袖４と後袖をそれぞ
れ結合する結合具（３）が所定の間隔を置いて複数個設
けられていることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ゆかた状に形成され、
いわゆる寝た切りの患者等に好適に使用される患者用衣
服に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、社会全体の高齢化が進行し、又、
福祉に対する関心が高まるのに伴って、いわゆる寝た切
り老人等の介護の問題が注目されている。係る介護にお
いては、患者本人の快適さに充分な注意が払われねばな
らないのは当然であるが、一方で介護人の人材不足等の
事情から、できるだけ介護の手間を少なくする必要があ
る。そこで、患者用衣服において、袖、襟及び身頃を身
体の表裏で分割し、ファスナーにて開閉できるようにし
たものが提案されている（実開昭63ー135914号公報参
照）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記の衣服において
は、着脱が容易になり、且つ、点滴等の治療を行う際に
ファスナーを開閉するのみで簡単に患者の身体の所望部
位を露出できるといった利点があるが、反面、上記ファ
スナーは端から順次開放していかねばならないので、点
滴等の際に患者の身体が必要以上に大幅に露出され、患
者等に困惑感を与えたり、患者の身体が冷え易い難点が
ある。

【０００４】又、患者のベッド上に点滴用の配管、尿採
取用のカテーテル、血圧計の配線等を這わせた場合、患
者にとっては身動きの障害となり、介護人にとっては上
記配線、配管の位置が分かりにくい問題があるばかりで
なく、複数の配線、配管が互いに絡み合う恐れがあっ
た。更に、配線又は配管が誤って患者の背中側に回り込
んで下敷きにされた場合は床ずれの原因となるものであ
った。

【０００５】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、着脱及び注射、点滴等の治療が容易に行えると
ともに、治療の際にも患者の身体を必要以上に露出する
ことがなく、且つ、各種医療機器に付属した配線、配管
の取り扱いを容易に行え、患者に床ずれの生じにくい患
者用衣服を提供することを技術的課題とするものであ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係る患者用衣服
は、上記技術的課題を達成するため、以下に示すように
構成したことを特徴とする。即ち、請求項１に係る患者
用衣服は、前開きのゆかた状に形成され、身頃が前身頃
と後身頃に、袖が前袖と後袖にそれぞれ分離されるとと
もに、上記前身頃と後身頃及び前袖と後袖をそれぞれ結
合する結合具が所定の間隔を置いて複数個設けられてい
ることを特徴とするものである。

【０００７】請求項２の患者用衣服は、上記前身頃及び
前袖の各表面に配線または配管を係止して保持するため
の複数の係止具が設けられ、各係止具はほぼ帯状に形成
されて、その一端が前身頃又は前袖の表面に固定される
一方、他端が前身頃又は前袖の表面に着脱自在とされて
いるものである。

【０００８】請求項３の患者用衣服は、上記前身頃表面
の腰部付近に帯が一体的に取り付けられているものであ
る。

【０００９】

【作用】上記請求項１の患者用衣服は、通常のゆかたと
同様に着衣、脱衣を行うことができるが、必要に応じて
上記結合具による結合を解除することにより前身頃と後
身頃、前袖と後袖をそれぞれ分離すれば、一層容易に着
脱が行える。又、注射、点滴等の治療、介護に際して
は、患者の身体の所望部位付近の結合具のみ結合を解除
することにより、上記所望部位のみを露出させれば良
い。

【００１０】請求項２の患者用衣服によれば、各種医療
機器における配線又は配管を上記前身頃又は前袖表面の
係止具に係止して保持させることができる。これによ
り、上記配線又は配管が患者の身体上のほぼ一定位置で
保持され、位置ずれが防止される。従って、介護人は配
線又は配管の位置を容易に知ることができて取り扱いに
便利になるばかりでなく、上記配線又は配管が患者の背
中側に回り込んで下敷きにされたり、複数の配線又は配
管が互いに絡み合うことはなくなる。

【００１１】なお、上記係止具により配線又は配管を保
持させる作業は、上記他端を前身頃又は前袖表面から分
離し、配線又は配管を位置決めして上記係止具により保
持させた後、上記他端を再度前身頃又は前袖表面に結合
するのみで簡単に行える。

【００１２】請求項３の患者用衣服は、通常のゆかたに
おいては別体に構成される帯を、前身頃上のみに一体的
に取り付けたので、この帯により本衣服を患者の身体に
密着させることができる一方、後身頃上には帯が存在し
ないため、帯が患者の身体に下敷きにされる突起物とし
て作用することがなくなる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明に係る患者用衣服の第１実施例
を図面に基づいて説明する。図１は、本衣服の正面図、
図２は縮小して示す背面図であり、本衣服は全体として
前開きのゆかた状に構成されている。

【００１４】本衣服の身頃は前身頃１と後身頃２とから
成り、両身頃１、２は両肩上部の範囲Ａのみにおいて互
いに連結されている。換言すれば、両脇下から裾に至る
範囲は前身頃１側と後身頃２側とで分割され、これら分
割部分は所定の間隔を置いて設けられた複数のホック３
（結合具）により互いに結合されるように構成されてい
る。

【００１５】本衣服の袖は前袖４と後袖５とに分割さ
れ、前袖４は前身頃１と縫製等により一体化されるとと
もに、後袖５は後身頃２と一体化されている。そして、
前袖４と後袖５は所定の間隔を置いて設けられた複数の
ホック３により結合されるようになっている。

【００１６】前袖４の表面上部、前身頃１表面における
胸部、太腿部等には複数の係止具６が設けられている。
各係止具６は長さ数ｃｍ程度、幅 0.8ｃｍ程度の帯状の
布等から成り、一端が縫付け等により前袖４又は前身頃
１に固定される一方、他端がホック７により前袖４又は
前身頃１に着脱自在とされている。

【００１７】前身頃１表面における腰部付近には布製の
帯８が一体的に取り付けられている。図３に示すよう
に、帯８は右帯８ａと左帯８ｂとが分離して構成され、
右帯８ａ及び左帯８ｂはそれぞれ前身頃１の右側部位及
び左側部位に縫付け等により一体的に取り付けられてい
る。

【００１８】右帯８ａは図１中左側の端部８ｃのみが前
身頃１に縫い付けられて固定されている。この端部８ｃ
から図１中右側に延びる部分における右帯８ａは、前身
頃１に縫い付けられた身体の横方向に延びる袋状のカバ
ー９により支持され、前身頃１に対して移動可能とされ
ている。なお、図２から明らかなように、帯８は前身頃
１側のみに設けられ、後身頃２側には設けられていな
い。

【００１９】前身頃１表面の肩部から胸部に掛けての範
囲には、図４に示すように、首の周囲がほぼ半円状に切
り欠かれた胸当て１０が着脱自在に取り付けられるよう
になっている。胸当て１０はキルティング生地等から成
る母材１０ａの裏側上部に、図４中に便宜上ハッチング
で示すように、ナイロン等から成り、防湿性を有する裏
張り１０ｂを張り合わせて構成されている。裏張り１０
ｂ表面及び前身頃１表面における対応位置には、ハッチ
ングで示すように、胸当て１０を本衣服に取り付けるた
めのマジックテープ片１１が設けられている。

【００２０】本衣服は、通常は前身頃１と後身頃２及び
前袖４と後袖５をそれぞれ結合させた状態で、一般のゆ
かた同様に着脱させることができるが、状況に応じてホ
ック３を外すことにより、前身頃１と後身頃２及び前袖
４と後袖５をそれぞれ分離すれば、一層容易に着衣、脱
衣が行える。

【００２１】着衣時には帯８を結ぶことにより、衣服を
患者の身体に密着させ、衣服の乱れを防止できるが、帯
８は前身頃１側のみに設けられているので、帯８によっ
て患者に床ずれが生じることはない。なお、右帯８ａは
端部８ｃのみが前身頃１に固定され、カバー９に覆われ
た端部８ｃ以外の部分は前身頃１に対して移動自在とな
っているので、右帯８ａと左帯８ｂを結ぶために右帯８
ａを引くと、右帯８ａがカバー９から滑り出して本衣服
の要部周辺を効果的に引き締めることができ、通常の帯
と同様に衣服と身体の密着性を確保できるものである。

【００２２】又、注射、点滴等の治療、介護のため、患
者の身体の一部を露出させる必要がある場合、露出が必
要な部位のホック３のみを外すことにより上記の治療、
介護を行える。この際、患者の身体が必要以上に大幅に
露出されることがないので、患者等に困惑感を与えるこ
とがなく、且つ、患者の身体を冷やすことがない。な
お、検温も脇下の部位のホック３を外すのみで容易に行
える。

【００２３】又、例えば、心電図の測定を行う場合、図
５に示す如く、心電図測定装置における配線１２を前袖
４上部における２個の係止具６により保持させることが
できる。その他、血圧計の配線、点滴の配管、尿採取用
カテーテル等を患者の身体に適用する際にも、適宜の位
置の係止具６を選んで上記配線又は配管を保持させれば
良い。例えば、尿採取用カテーテルであれば、下半身側
に位置する係止具６を使用できる。

【００２４】同時に複数の配線又は配管を適用する際に
は、これらを同一箇所の係止具６により一括して保持さ
せても良く、適用箇所が異なる場合はそれぞれ異なる係
止具６により保持させても良い。このように前身頃１表
面に係止具６を設けたので、配線又は配管同志が絡み合
うこともなく、又、医師、介護人等は配線又は配管の位
置が分からなくなることもないので、取り扱いに便利に
なる。

【００２５】しかも、係止具６の位置決め機能により、
上記配線又は配管が患者の背中側に回り込んで下敷きに
されることがなくなるので、配線又は配管に起因する患
者の床ずれは確実に防止できる。ここで付け加えれば、
図２から明らかなように、後身頃２側には床ずれの原因
となる突起物が一切設けられていない。なお、上記係止
具６による保持及び開放はホック７の着脱のみで簡単に
行える。

【００２６】図６に示すように、胸当て１０は必要に応
じて前身頃１の肩部から胸部に渡る位置にマジックテー
プ片１１により簡単に取り付けることができる。この胸
当て１０により、患者の肩部の冷えを防止できるととも
に、防湿性の裏張り１０ｂを設けたことにより、よだれ
掛けとしての機能も兼備する。

【００２７】なお、上記第１実施例においては、前身頃
１と後身頃２の結合及び係止具６の着脱をホック３及び
７により行うようにしたが、これに代えて、例えばマジ
ックテープ片又はボタンとボタン穴を使用しても良い。

【００２８】図７に第２実施例を示す。この実施例で
も、患者用衣服が前開きのゆかた状に構成されている。
前身頃１と図７には表れない後身頃は、両肩上部におけ
る範囲Ａ及び裾部における範囲Ｂのみで連結されてい
る。又、第１実施例同様、前袖４と図には表れない後袖
が互いに分離されるとともに、前袖４は前身頃１と、後
袖は後身頃とそれぞれ一体化されている。

【００２９】前身頃１と後身頃との分離部位における対
応位置及び前袖４と後袖における対応位置にはそれぞれ
ひも１３（結合具）が設けられ、これらのひも１３によ
り前身頃１と後身頃及び前袖４と後袖が結合されるよう
になっている。

【００３０】又、前身頃１の胸部にはマジックテープ片
１１が設けられ、図４の胸当て１０が着脱自在に取付け
られるようになっている。その他、第１実施例と同様の
構成部位には同一の参照番号を付して説明を省略する。

【００３１】

【発明の効果】以上のように本発明に係る患者用衣服
は、通常は一般のゆかたと同様に着衣、脱衣を行うこと
ができるが、必要に応じて結合具による結合を解除する
ことにより前身頃と後身頃、前袖と後袖をそれぞれ分離
すれば、着脱を一層容易に行える。又、注射、点滴等の
治療、その他必要な介護に際しては、患者の身体の所望
部位付近の結合具のみ結合を解除することにより、簡単
に上記所望部位を露出させることができるので、治療、
介護が容易になる。しかも、ファスナーを使用した場合
と異なり、所望部位のみを露出させることができるの
で、患者等に不要な困惑感を与えたり、患者の身体を冷
やすこともない。

【００３２】又、前身頃及び前袖表面に配線又は配管を
係止して保持させる係止具を設ければ、各種医療機器の
配線又は配管を上記係止具によりほぼ一定位置で保持で
きるので、医師、介護人等は上記配線又は配管を容易に
取り扱えるようになる。しかも、上記配線又は配管が患
者の背中側に回り込んで下敷きにされることが阻止され
るので、配線又は配管により床ずれが生じることもな
く、且つ、配線又は配管が複数ある場合にも互いに絡み
あうことがない。

【００３３】なお、上記係止具はほぼ帯状としてその一
端を前身頃又は前袖表面に固定し、他端を前身頃又は前
袖表面に着脱自在とすれば、上記他端を前身頃又は前袖
表面から分離し、配線又は配管を位置決めして係止具に
より保持させた後、上記他端を再度前身頃又は前袖表面
に結合することにより簡単に保持作業が行える。

【００３４】又、前身頃表面の腰部周辺に帯を一体的に
設ければ、後身頃上には帯が存在しなくなるため、帯が
患者の背中側で突起物として作用し、床ずれを生じさせ
ることがなくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例に係る患者用衣服の正面
図。

【図２】上記衣服の縮小背面図。

【図３】上記衣服の帯を解いた状態での正面図。

【図４】上記衣服に取り付ける胸当ての背面図。

【図５】配管を保持した状態での上記衣服の正面図。

【図６】胸当てを取り付けた状態での上記衣服の正面
図。

【図７】本発明の第２実施例に係る患者用衣服の正面
図。

【符号の説明】

１ 前身頃 ２ 後身頃 ３ ホック（結合具） ４ 前袖 ５ 後袖 ６ 係止具 ８ 帯 １２ 配線 １３ ひも（結合具）

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 前開きのゆかた状に形成され、身頃が前
   身頃と後身頃に、袖が前袖と後袖にそれぞれ分離される
   とともに、上記前身頃と後身頃及び前袖と後袖をそれぞ
   れ結合する結合具が所定の間隔を置いて複数個設けられ
   ていることを特徴とする患者用衣服。
2. 【請求項２】 上記前身頃及び前袖の各表面に配線また
   は配管を係止して保持するための複数の係止具が設けら
   れ、各係止具はほぼ帯状に形成されて、その一端が前身
   頃又は前袖の表面に固定される一方、他端が前身頃又は
   前袖の表面に着脱自在とされている請求項１記載の患者
   用衣服。
3. 【請求項３】 上記前身頃表面の腰部付近に帯が一体的
   に取り付けられている請求項１又は２記載の患者用衣
   服。