JPH07241336A - 血漿処理用中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents

血漿処理用中空糸膜およびその製造方法

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JPH07241336A
JPH07241336A JP6034494A JP6034494A JPH07241336A JP H07241336 A JPH07241336 A JP H07241336A JP 6034494 A JP6034494 A JP 6034494A JP 6034494 A JP6034494 A JP 6034494A JP H07241336 A JPH07241336 A JP H07241336A
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hollow fiber
fiber membrane
polymer
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plasma
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JP6034494A
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Takahide Shigehisa
隆秀 重久
Kazumitsu Nakatsuka
和光 中塚
Hiroyuki Akasu
弘幸 赤須
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 分画性に優れ、かつ透水性が高い血漿処理用
中空糸膜を提供する。 【構成】 エチレン・ビニルアルコール系共重合体9
9.5〜80重量%、第2重合体0.5〜20重量%か
らなり、少なくとも1方の表面に緻密層を有し、内部に
多孔層を有する血漿処理用中空糸膜であって、該緻密層
の微細孔は平均孔径が0.007〜0.045μmであ
り、該多孔層の微細孔は平均孔径が0.05〜1.5μ
mであり、かつ膜の空孔率が50%以上である。 【効果】 血漿中の有用成分であるアルブミンを失うこ
となく、有害成分であるIgMを選択的に除去すること
ができ、しかも血漿処理に要する時間を短くすることが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は血漿処理用中空糸膜、特
に血漿分離膜、血漿成分分離膜として有用なエチレン・
ビニルアルコール系共重合体からなる中空糸膜に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来よりエチレン・ビニルアルコール
(以下これをEVAと略称する)系共重合体からなる膜
は、適度な親水性を有し、かつ化学的安定性にも優れて
いることから、工業用、医療用の選択透過性分離膜とし
て利用されている。EVA系共重合体からなる膜は、と
りわけ抗溶血性や抗血栓性が良好であることから、血液
透析膜、血漿分離膜、血漿成分分離膜等の血液処理用の
膜として特に有用である。EVA系共重合体からなる血
漿分離膜および血漿成分分離膜としては、例えば、特開
昭58−155865号公報において、少なくとも一方
の表面に緻密層を有し、内部に多孔層を有する中空糸膜
であって、緻密層の微細孔の平均孔径が50〜450オ
ングストロ−ム、多孔層の微細孔の平均孔径が500〜
15000オングストロ−ム、膜の空隙率が50〜85
%以上であり、透水率80ml/m2・hr・mmHg
以上を示し、かつヒト血漿アルブミンの透過率85%以
上、ヒト血漿グロブリンGの透過率80%以上、ヒト血
漿グロブリンMの阻止率が40%以上を示す中空糸膜が
開示されており、また、特公平5−78372号公報に
は、アルブミン(分子量約6万7千)の透過係数が0.
55以上、高密度リポタンパク(分子量約19万5千〜
43万5千)の透過係数が0.2以下であり、低密度リ
ポタンパク(分子量約130万〜320万)の透過係数
が0.1以上である膜が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、医療技術の高度
化に伴って膜に対する要求性能が高くなってきている。
例えば、高ガンマ−グロブリン血症、高脂血症、慢性リ
ュウマチ、全身性エリトマトーデス等の治療に選択透過
性分離膜を利用した血漿交換療法が応用されるようにな
り、これに伴い分画性に優れ、かつ処理効率の高い分離
膜が要望されている。分画性に優れたEVA系共重合体
からなる血漿処理用分離膜としては、上記特開昭58−
155865号公報および特公平5−78372号に記
載された中空糸膜が既に公知であるが、これらの中空糸
膜に比べてさらに分画性に優れ、かつ処理効率の高い分
離膜を提供できれば、医療分野、特に血漿分離、血漿成
分分離等の血漿処理の分野における意味は大きい。従っ
て本発明の目的は、EVA系共重合体からなり、ヒト血
漿アルブミンの透過率が90%以上であり、免疫性物質
であるヒト血漿免疫グロブリンM(以下これをIgMと
略称する)の阻止率が80%以上であって、しかも透水
率が100ml/m2・hr・mmHg以上である血漿
処理用中空糸膜を提供することにある。また、本発明の
他の目的は上記のEVA系共重合体からなる中空糸膜の
製造方法を提供することにある。
【0004】
【問題点を解決するための手段】本発明によれば、上記
の目的の一つは、EVA系共重合体99.5〜80重量
%、第2重合体0.5〜20重量%からなり、少なくと
も1方の表面に緻密層を有し、内部に多孔層を有する血
漿処理用中空糸膜であって、該緻密層の微細孔は平均孔
径が0.007〜0.045μmであり、該多孔層の微
細孔は平均孔径が0.05〜1.5μmであり、かつ膜
の空孔率が50%以上であることを特徴とする血漿処理
用中空糸膜を提供することによって達成される。
【0005】また、本発明によれば、上記の目的の他の
一つはEVA系共重合体、第2重合体および溶媒からな
る紡糸原液を環状ノズルより凝固浴中に押し出し凝固さ
せる中空糸膜の製造方法であって、EVA系共重合体、
第2重合体および溶媒からなる紡糸原液の50℃におけ
る粘度をηAポイズ、該EVA系共重合体と該溶媒から
なり、その重量比が上記紡糸原液におけるEVA系共重
合体と溶媒の重量比と同一である溶液の50℃における
粘度をη0ポイズ、凝固浴温度をCT℃とするとき、
η0、ηAおよびCTが log(ηA−η0)+10<CT<log(ηA−η0
+40 なる関係式を満足することを特徴とする中空糸膜の製造
方法を提供することによって達成される。
【0006】本発明のEVA系共重合体からなる血漿処
理用中空糸膜の構造は、少なくとも一方の表面に緻密層
を有し、内部に多孔層を有する構造である。すなわち、
本発明のEVA系共重合体からなる血漿処理用中空糸膜
は、中空糸膜の外表面に緻密層を有し、中空糸膜の内部
および内表面に多孔層を有する構造の中空糸膜、または
中空糸膜の内表面に緻密層を有し、中空糸膜の内部およ
び外表面に多孔層を有する構造の中空糸膜、または中空
糸膜の内表面および外表面に緻密層を有し、中空糸膜の
内部に多孔層を有する構造の中空糸膜である。これらの
構造のなかでも、中空糸膜の一方の表面に緻密層を有
し、他方の表面および膜内部に多孔層を有する非対称構
造の中空糸膜は、該中空糸膜の多孔層を有する側の表面
に血液を流して処理を行うことにより、該多孔層が長大
なフィブリノ−ゲン等に対するプレフィルタ−的な役割
を果たし、緻密層の目詰まりを防止する効果を発揮し、
安定な分画性と高い透水性を示すので血漿処理用中空糸
膜として好ましい構造である。
【0007】本発明のEVA系共重合体からなる血漿処
理用中空糸膜における緻密層は透水性および尿素、無機
物等の低分子物質およびアルブミン領域の物質(分子量
4万〜6万)の透過と、IgM領域の物質(分子量90
万以上)の阻止に多大の影響を与えるものである。緻密
層における微細孔の平均孔径は0.007〜0.045
μm、好ましくは0.01〜0.04μmの範囲となる
ように制御する必要がある。微細孔の平均孔径が0.0
07μm未満であれば、アルブミンの透過率が低下し、
血漿中の有用成分であるアルブミン領域の物質が阻止さ
れてしまい、一方、微細孔の平均孔径が0.045μm
を越えると血漿中の免疫性物質であるIgMが阻止でき
なくなり、本発明において所望とする分画性を発揮する
ことができない。なお、本発明でいう緻密層における微
細孔の孔径は、標準タンパク質の阻止率の測定値から得
られる分子量分画曲線において50%阻止率を示す分子
量を求め、該分子量に対応する分子径を文献(D.M.Gree
n ら、アメリカン・ソサイアティ−・オブ・ア−ティフ
ィシャル・インタ−ナル・オ−ガン、第627頁、19
76年)に記載された方法によって計算し、得られた分
子径の値に基づき、文献記載の修正細孔理論の式(竹沢
ら、人工臓器第13巻第6号、第460頁、1984年
参照)に従って算出される。
【0008】緻密層の厚さは、高い透水性を達成するた
めには薄いほうが好ましいが、あまり薄くすると緻密層
における微細孔の孔径の制御が困難となり、また膜の強
度も低下するので好ましくない。緻密層の厚さは通常
0.01〜2μm、好ましくは0.01〜0.5μmの
範囲である。
【0009】本発明の血漿処理用中空糸膜は、上記緻密
層に続いて膜内部に多孔層を有する。かかる多孔層は、
緻密層に対して一種の障壁となるものであって、その構
造は透水性、分画性等の膜性能に多大な影響を与える。
かかる多孔層は、平均孔径0.05〜1.5μm、好ま
しくは0.1〜1.0μmの微細孔を有する。多孔層に
おける微細孔の平均孔径が0.05μm未満であれば、
膜全体としての抵抗が大きく、高い透水性を達成するこ
とは困難である。また、多孔層における微細孔の平均孔
径が1.5μmを越えると前述のプレフィルタ−効果が
発揮できず、膜の耐圧性も不足しがちである。なお、本
発明でいう多孔層における微細孔の孔径は走査型電子顕
微鏡写真に基づいて測定した。
【0010】多孔層中の微細孔の形状は網目構造、微細
多隙構造、ハニカム構造、粒子構造などであり、また多
孔層は空洞あるいはフィンガ−ライク状構造を有してい
てもよい。
【0011】また、本発明の血漿処理用中空糸膜は、空
孔率が50%以上であることを必要とする。空孔率が5
0%未満であれば膜抵抗が大きく、透水率100ml/
2・hr・mmHgを達成することが困難である。な
お、空孔率が85%を越えると膜の耐圧性が不足する。
好適な空孔率の範囲は50〜80%である。
【0012】なお本発明でいう空孔率(P)は下記の式
より求めた値である。 P=(1−ρb/ρa)×100
【0013】上記式中、ρa およびρb は以下のことを
意味する。 ρa :膜を構成するEVA系共重合体の比重。 ρb :膜の見かけの比重。
【0014】本発明の血漿処理用中空糸膜の膜厚は10
〜200μmの範囲内で適宜選択されるが、好ましくは
10〜50μmである。膜厚が薄くなればなるほど透水
性は高くなるが、膜厚が10μm未満になれば、膜の耐
圧性が低くなり、血液の体外循環処理時に必要とされる
耐圧性500mmHgの確保が困難となる。
【0015】また、本発明の血漿処理用中空糸膜の内径
は50〜800μmの範囲内で適宜選択されるが、好ま
しくは100〜500μmの範囲である。
【0016】本発明の血漿処理用中空糸膜は、EVA系
共重合体および第2重合体からなる。本発明において用
いられるEVA系共重合体としてはランダム、ブロッ
ク、グラフトいずれの共重合体でもよい。重合度として
は、高重合度のものほど好ましいが、少なくとも重合度
が800以上のものを使用する必要があり、好ましくは
重合度1000以上のものが用いられる。重合度が80
0未満のものを使用すると得られた膜の機械的強度が不
十分となり、製膜工程中での糸切れや変形、また臨床時
の耐圧不足等の問題が生じるため好ましくない。また、
EVA系共重合体としてはエチレン含有量が10〜60
モル%、なかでも20〜45モル%のものが好ましく使
用される。EVA系共重合体のエチレン含有量が10モ
ル%未満であれば、得られる中空糸膜の湿潤時の機械的
性質が不十分となり、溶出物の増大の恐れもあるので好
ましくない。また、エチレン含有量が60モル%を越え
ると、膜の透過性が低下するので好ましくない。さら
に、EVA系共重合体のケン化度としては、得られた中
空糸膜の湿潤時の機械的強度の点から95モル%以上の
ものを使用する必要があり、通常は99モル%以上の実
質的に完全ケン化のものが用いられる。
【0017】本発明において使用されるEVA系共重合
体としては、例えばメタクリル酸、ビニルクロライド、
メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルピロ
リドン等の共重合可能な重合性単量体が15モル%以下
の範囲で共重合されていてもよく、製膜前または製膜後
においてEVA系共重合体をホウ素化合物等の無機架橋
剤あるいはジイソシアナ−ト、ジアルデヒドなどの有機
架橋剤などによって処理することにより架橋が導入され
たものであってもよく、またEVA系共重合体のビニル
アルコール単位の官能性水酸基が30モル%以内の範囲
で、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアル
デヒド等のアルデヒドでアセタール化されていてもよ
い。なかでも、製膜後にアルデヒト化合物により架橋処
理を行うと膜の耐熱性と強度が大きく改善されるので好
ましい。
【0018】本発明の血漿処理用中空糸膜は、膜中に第
2重合体を0.5〜20重量%含有する。かかる第2重
合体は、中空糸膜における微細孔の孔径を微妙に制御
し、アルブミンの高い透過率を維持したままでIgMの
阻止率を高めるという作用を有する。さらに、かかる第
2重合体は、後述する中空糸膜の紡糸時において、紡糸
原液の粘度を好適な範囲に制御し、紡糸の安定性に貢献
するという役割も併せ有している。
【0019】上記の第2重合体としては、EVA系重合
体と相溶性がよく、かつ紡糸原液の粘度を増加させて好
適な範囲に制御するという役割を果たすことができるも
のであれば特に制限なく使用されるが、例えばポリビニ
ルピロリドン(以下これをPVPと略称する)、ポリエ
チレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリア
クリルアミド等の親水性高分子化合物を挙げることがで
きる。なかでもPVPはEVA系共重合体との相溶性が
よく、しかも少量の使用量で紡糸原液の粘度を効果的に
増加させることができ、しかも得られる中空糸膜の微細
孔の孔径を制御しやすいので特に好ましい。PVPとし
ては、通常分子量5万以上のものが用いられるが、分子
量の大きなものを使用する方が少量の使用で上記の各種
の効果を達成し得るので好ましく、分子量10万以上の
ものを使用することが好適である。
【0020】中空糸膜中の第2重合体の含有量が0.5
重量%未満であれば中空糸膜の分画性、すなわちアルブ
ミンの透過率とIgMの阻止率のバランスが低下する。
また第2重合体の含有量が20重量%を越えると膜の機
械的強度が低下するので好ましくない。なお、本発明で
いう中空糸膜中の第2重合体の含有量はNMR分析、元
素分析等の手段により測定することができる。
【0021】本発明の血漿処理用中空糸膜は、上記の構
造および組成を有することから、100ml/m2・h
r・mmHg以上の高い透水率を有しており、血漿処理
に要する時間が短時間で済むという利点を有する。透水
率が100ml/m2・hr・mmHg未満であれば、
体外循環での血漿処理に長時間を要するため、患者の負
担が大きい。透水率は高い方が好ましいが、実用性の点
から150ml/m2・hr以上が好適である。また、
透水率の上限としては1500ml/m2・hr・mm
Hg程度が、血漿処理速度の制御を容易に行うことがで
きるので適当である。
【0022】本発明の血漿処理用中空糸膜はヒト血漿ア
ルブミンの透過率が90%以上、IgMの阻止率が80
%以上の分画性を有し、前述のとおり血漿中のアルブミ
ンを透過させ、かつIgMを阻止することができる。よ
り好ましい分画性としては、ヒト血漿アルブミンの透過
率が95%以上、IgMの阻止率が90%以上である。
【0023】次に、本発明の血漿処理用中空糸膜の製造
方法について説明する。
【0024】本発明の血漿処理用中空糸膜は、EVA系
共重合体、第2重合体および溶媒からなる紡糸原液を環
状ノズルより凝固浴中に押し出して凝固させることによ
って製造することができる。
【0025】本発明において使用する溶媒としては、E
VA系共重合体および第2重合体を溶解するものが使用
でき、両者に対する溶解性を考慮して適宜選択すればよ
い。かかる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノ
ール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、グリセリン等の多価アルコール、フェ
ノール、メタクレゾール、Nーメチルピロリドン、ギ酸
およびこれらの含水物など従来より公知のものを用いる
ことができるが、本発明が目的とする高い透水性および
優れた分画性を有する血漿処理用中空糸膜を得るために
はジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ピロ
リドン、Nーメチルピロリドン、ヘキサメチルホスホリ
ルアミドまたはこれらの混合物を溶媒として用いるのが
好ましい。なかでもEVA系共重合体に対し高い溶解性
を示すジメチルスルホキシドが特に好ましい。EVA系
共重合体を上記の溶媒、特にジメチルスルホキシドに溶
解する際には、水、メタノール、イソプロパノール、ジ
メチルホルムアミド等、該溶媒と混和性のよい液体また
は他の溶媒が存在してもよく、さらには無機塩を含んで
いてもよい。
【0026】紡糸原液中のEVA系共重合体の濃度は5
〜40重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範
囲となるように調製される。EVA系共重合体の濃度が
5重量%未満であれば得られた中空糸膜の機械的強度が
弱く、また、EVA系共重合体の濃度が40重量%を越
えると得られた中空糸膜の分画性が低下する。
【0027】また、紡糸原液中の第2重合体はEVA系
共重合体に対して0.1〜50重量%、好ましくは1〜
20重量%となるように添加される。第2重合体の含有
量がEVA系共重合体に対して0.1重量%未満であれ
ば、紡糸原液の粘度を充分に増加させることができず、
中空糸膜の膜構造の制御が困難である。また第2重合体
の含有量がEVA系共重合体に対して50重量%を越え
ると中空糸膜の空孔率を高めることができるものの、機
械的強度は小さくなる。
【0028】本発明における紡糸原液の調製法として
は、溶媒にEVA系共重合体を溶解した後、該溶液に第
2重合体を添加して溶解させる方法、これとは逆に溶媒
に第2重合体を溶解し、該溶液にEVA系共重合体を添
加して溶解させる方法、あるいはEVA系共重合体およ
び第2重合体を同時に溶媒に溶解させる方法のいずれの
方法を用いてもよい。
【0029】紡糸原液は、その粘度が50℃において5
0〜500ポイズの範囲になるように調製するのが好ま
しい。紡糸原液の粘度が50ポイズこれより低いと得ら
れる膜の空孔率は低くなり、水の透過率が低く、しかも
低分子量物質の透過性が悪くなる。また、紡糸原液の粘
度が500ポイズより高くなると中空糸膜の微細孔の孔
径を制御するのが困難になるとともに、EVA系共重合
体および第2重合体を溶媒に溶解させる際に高温を必要
とするようになりEVA系共重合体が変性してしまうお
それがあり好ましくない。
【0030】また、紡糸原液の温度は通常0〜120
℃、好ましくは5〜80℃に設定される。紡糸原液の温
度が120℃を越えるとEVA系共重合体が変質するお
それがあり、また0℃より低温になると紡糸原液の粘度
が高くなりすぎて紡糸が困難となるので好ましくない。
【0031】このようにして調製された紡糸原液は、通
常濾過、脱泡したのち環状ノズルより凝固浴中に押し出
され中空糸膜として成形される。
【0032】環状ノズルの内側には、該ノズルから吐出
された紡糸原液の形状を中空糸膜状に保持する目的で空
気、窒素等の気体、n−ヘキサン等の紡糸原液に対して
非凝固性の液体、または塩化カルシウム、硫酸ナトリウ
ム等の無機塩の水溶液、ジメチルスルホキシド、ジメチ
ルアセトアミド、ピロリドン、Nーメチルピロリドン、
アルコール等の水に可溶性の有機溶剤と水との混合溶媒
などが導入される。本発明の血漿処理用中空糸膜を製造
するに当っては、空気、窒素等の気体を導入することが
好ましい。
【0033】凝固浴としては水性媒体が用いられ、好ま
しくは、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミ
ド、ピロリドン、Nーメチルピロリドン、アルコール等
の水に可溶性の有機溶剤と水との混合溶媒、さらには塩
化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の無
機塩等を含有する水溶液などが挙げられる。なかでもジ
メチルスルホキシドと水の混合溶媒が好ましい。
【0034】凝固に当っては、ノズルより吐出された紡
糸原液を一旦一定長の空気中(以下これをドライゾ−ン
と略称する)に通し、しかる後に凝固浴中に導入するい
わゆる乾湿式紡糸法、あるいはノズルより吐出された紡
糸原液を直接凝固浴中に導入するいわゆる湿式紡糸法の
いずれを採用してもよいが、本発明の血漿処理用中空糸
膜を製造するには湿式紡糸法の方が好適である。
【0035】なお、乾湿式紡糸法を使用して本発明の血
漿処理用中空糸膜を製造する場合には、所望とする膜構
造に応じてドライゾ−ンの長さ、温度および湿度を適宜
設定すればよい。
【0036】本発明において所望とする分画性および透
水性を有する中空糸膜を得るためには、凝固浴の温度を
厳密に制御する必要がある。すなわち、凝固浴の温度を
CT℃、EVA系共重合体、第2重合体および溶媒から
なる紡糸原液の50℃における粘度をηAポイズ、該E
VA系共重合体と該溶媒からなり、その重量比が上記紡
糸原液におけるEVA系共重合体と溶媒の重量比と同一
である溶液の50℃における粘度をη0ポイズとしたと
き、CT、ηAおよびη0が log(ηA−η0)+10<CT<log(ηA−η0
+40 なる関係式を満足する範囲に設定することが必要であ
る。凝固浴温度を紡糸原液の粘度に対して上記関係式を
満足する範囲に設定することにより、凝固速度を適度な
範囲に制御し、得られた中空糸膜の緻密層および多孔層
における微細孔の孔径を厳密に制御することが可能とな
り、優れた分画性と高い透水性を有する本発明の血漿処
理用中空糸膜を確実に製造することができる。なお、本
発明でいう粘度はB型粘度計により測定した値である。
【0037】紡糸を行う時のノズルドラフト(ノズル口
から紡糸原液を押し出す時の線速度と凝固浴からの巻取
速度の比)は通常1〜5である。好ましくは1〜3であ
る。ノズルドラフトがこの範囲からはずれると得られる
中空糸膜の分画性が低下するので好ましくない。
【0038】凝固完了後、延伸、湿熱処理を行うが、該
湿熱処理温度は40〜80℃、好ましくは55〜70℃
である。湿熱処理が不十分な場合、後工程における工程
通過性が損なわれ、乾燥後の寸法および性能の保存安定
性が低下する。また湿熱処理が過剰であった場合、膜構
造に変化が生じ、本発明において所望とする十分な性能
が得られない。湿熱処理は通常水洗を兼ねて水中に中空
糸膜を通過させるという方法により行われるが湿熱処理
と水洗は必ずしも同時に行われる必要はなく、湿熱処理
下の飽和水蒸気雰囲気中に中空糸膜を通過させ、湿熱処
理を行った後、必要な水洗を行うこともできる。また逆
に水洗後湿熱処理を行ってもよい。しかしながら、連続
工程においては工程簡素化という点から、湿熱処理と水
洗は同時に行うのが好ましい。
【0039】なお、第2重合体としてPVPなどの水溶
性高分子を使用した場合には、上記の水洗および/また
は湿熱処理工程の際に、凝固後の中空糸膜中に残存する
第2重合体の一部が溶出する。この場合、水洗および/
または湿熱処理を施す温度、時間等を適宜制御して第2
重合体の溶出量を調整すれば、中空糸膜中に残存する第
2重合体の量を調節することができる。通常、凝固後の
中空糸膜中に残存する第2重合体の1〜90%、好まし
くは1〜50%が溶出するような条件が選択される。
【0040】湿潤状態の膜は水混和揮発性有機溶媒に浸
漬し、膜の表面あるいは内部に存在する水を置換した
後、常圧ないし減圧にて乾燥させる。この場合の有機溶
媒としては炭素数1〜5の低級脂肪族アルコ−ルまたは
ケトンが好ましく、例えばメタノ−ル、エタノ−ル、ア
ミルアルコ−ル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエ
チルケトンなどが用いられる。なかでもアセトンが特に
好ましい。乾燥は常圧ないし減圧下で行われるが、その
温度、および水蒸気圧は、55℃以下、好ましくは50
℃以下で、水蒸気圧は20mmHg以下、好ましくは1
0mmHg以下である。このような条件下で溶媒置換お
よび乾燥を行うことにより、湿潤時の性能を維持したま
ま乾燥状態の中空糸膜を得ることが出来る。
【0041】乾燥された中空糸膜は、主に寸法安定性の
向上を目的として、乾熱処理を行う。乾熱処理温度は4
0〜70℃、好ましくは55〜65℃である。これ以上
では定長熱処理時において中空糸膜が偏平化する恐れが
ある。また、膜構造にも変化が生じ性能が低下する。こ
れ以下では十分な熱固定ができず、経時的に収縮が進行
し、膜の性能に変化をきたす。熱処理雰囲気下の水蒸気
圧は60mmHg以下である必要があり、これ以上では
EVA系共重合体への水分子の吸着が起こり、乾熱処理
後室温雰囲気下へ放出した際に、この水分子の脱離にと
もなって膜構造に変化が生じ性能が低下する。
【0042】かくして得られた中空糸膜は乾燥状態にお
ける寸法安定性に優れており、保存に便利である。また
乾燥させているため輸送等にも便利である。乾燥状態の
中空糸膜は使用前に水または生理食塩水等で再湿潤する
ことで乾燥前の性能を再現することができる。
【0043】乾燥状態の中空糸膜はボビンまたは枠に巻
き取るか、一定長に切断後一定本数を束ねて中空糸膜束
に成形される。中空糸膜束は公知の方法に従って中空糸
膜モジュ−ルに組み立てられ、γ線滅菌、EOG(エチ
レンオキサイドガス)滅菌等の公知の方法によって滅菌
処理が施された後、血漿分離、血漿成分分離等の血液処
理に使用される。なお、滅菌方法としてγ線滅菌を採用
すると、第2重合体として前述のPVPを使用した場合
に、中空糸膜中のPVPが架橋構造化して水に不溶とな
り、中空糸膜からの溶出が抑えられ、溶出物の問題をも
解決できるので好ましい。
【0044】本発明の中空糸膜を使用すれば、血漿中の
有用成分であるアルブミンを失うことなく、有害成分で
あるIgMを効率よく除去することができる。また、血
漿中の低密度リポタンパク(LDL)、免疫複合体、リ
ウマチ因子等もIgMと同様に除去することができる。
なお、本発明の中空糸膜を使用して血液処理を行う場合
には、処理すべき血液は中空糸膜の多孔層を有する表面
側に流す方が、処理に要する時間を短縮でき好ましい。
【0045】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれにより何ら限定されるものではな
い。
【0046】以下の実施例では、緻密層における微細孔
の孔径を求めるに際し、チトクロ−ムC(分子量124
00)、牛アルブミン(分子量66000)およびγ−
グロブリン(分子量157000)を標準タンパクとし
て使用し、これら各標準タンパクの0.02%生理食塩
水溶液を用いて、それぞれの阻止率を測定し、分子量分
画曲線を作成した。
【0047】実施例1 エチレン含量32モル%、重合度1300、ケン化度9
9モル%のエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体(株式
会社クラレ製、EVAL ECF100A)17重量%
をジメチルスルホキシド(以下これをDMSOと略称す
る)83重量%に溶解して均一な溶液を調製した。この
溶液の粘度は50℃において28ポイズであった。得ら
れた溶液にPVP(GAF社製、K−90)を該エチレ
ン・ビニルアルコ−ル共重合体に対して6重量%となる
ように添加し、溶解して均一な溶液を調製し、紡糸原液
とした。得られた紡糸原液の粘度は50℃において80
ポイズであった。かかる紡糸原液を濾過、脱泡したの
ち、55℃に保ち、外径0.5mm、内径0.2mmの
二重環状ノズルより凝固液であるDMSOを20重量%
含有する18℃の水溶液中へ直接押し出して凝固させ、
中空糸膜を形成させた。紡糸に際し、二重環状ノズルの
内側には窒素を供給した。凝固後の中空糸膜を水洗した
後、湿熱処理を行い、次いでアセトン置換して25℃に
て乾燥した後、定長乾熱処理を施すことにより、内径1
80μm、膜厚35μmの乾燥状態の中空糸膜を得た。
【0048】得られた中空糸膜の断面構造を示す電子顕
微鏡写真(2000倍)を図1に示す。図1から明らか
なように、上記で得られた中空糸膜は外表面に緻密層を
有し、膜の内部および内表面に多孔層を有する構造であ
った。外表面の緻密層は平均孔径0.01μmの微細孔
を有しており、その厚さは0.15μmであった。ま
た、多孔層は平均孔径0.23μmの微細孔を有してい
た。中空糸膜の空孔率は55%であった。また、得られ
た中空糸膜中の窒素の含有量を元素分析により測定し、
該測定値よりPVPの含有量を計算すると3.5重量%
であった。
【0049】上記で得られた乾燥状態の中空糸膜を使用
して有効面積0.2m2の中空糸膜モジュールを作製し
た。かかる中空糸膜モジュ−ルを使用し、37℃のヒト
血漿を中空糸膜の中空部に40ml/minの速度で供
給し、2ml/minの濾過速度で濾過を行った。な
お、中空糸膜の中空部を通過したヒト血漿は、再度中空
糸膜の中空部へと循環させた。かかる状態で1時間濾過
を継続し、中空糸膜の血漿入口におけるアルブミンおよ
びIgMの濃度Ci、および濾液中のアルブミンおよび
IgMの濃度Cfを測定し、次式により、透過率(S
c)および阻止率(R)を計算した。 Sc(%)=Cf/Ci×100 R(%)=(Cf−Ci)/Ci×100 なお、アルブミン、IgMの濃度は、それぞれアルブミ
ンB−テストワコ−(和光純薬製)、IgMII−テスト
ワコ−(和光純薬製)を使用して測定した。
【0050】また、透水率(F)は次式により求めた。 F(ml/m2 ・hr・mmHg)=2×60/(△P
×S) △P(mmHg)=(Pi+Po)/2−Pf
【0051】上記式中、△P、S、Pi、PoおよびP
fはそれぞれ以下のことを意味する。 △P:濾過圧(mmHg) S :中空糸膜内表面の有効膜面積(m2) Pi:血漿入口の圧力(mmHg) Po:血漿出口の圧力(mmHg) Pf:濾過液出口の圧力(mmHg)
【0052】測定結果を表1に示す。表1から明らかな
ように、上記で得られた中空糸膜は血漿成分中のアルブ
ミンの回収率および免疫性物質であるIgMの阻止率が
ともに高く、IgMを選択的に除去することができ、血
漿成分分離用中空糸膜として有用である。
【0053】実施例2 エチレン含量38モル%、重合度1100、ケン化度9
9モル%のエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体(株式
会社クラレ製、EVAL EPH101A)15重量%
をDMSO85重量%に溶解して均一な溶液を調製し
た。この溶液の粘度は50℃において17ポイズであっ
た。得られた溶液にPVP(GAF社製、K−120)
を該エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体に対して5重
量%となるように添加し、溶解して均一な溶液を調製
し、紡糸原液とした。得られた紡糸原液の粘度は50℃
において120ポイズであった。かかる紡糸原液を濾
過、脱泡したのち、65℃に保ち、外径0.5mm、内
径0.2mmの二重環状ノズルより凝固液であるDMS
Oを20重量%含有する20℃の水溶液中へ直接押し出
して凝固させ、中空糸膜を形成させた。紡糸に際し、二
重環状ノズルの内側には窒素を供給した。凝固後の中空
糸膜を水洗した後、湿熱処理を行い、次いでアセトン置
換して25℃にて乾燥した後、定長乾熱処理を施すこと
により、内径180μm、膜厚40μmの乾燥状態の中
空糸膜を得た。
【0054】かかる中空糸膜は外表面に緻密層を有し、
膜の内部および内表面に多孔層を有する構造であった。
外表面の緻密層は平均孔径0.03μmの微細孔を有し
ており、その厚さは0.10μmであった。また、多孔
層は平均孔径0.52μmの微細孔を有していた。得ら
れた中空糸膜は空孔率が62%であり、膜中にPVPを
4.2重量%含有していた。また、上記で得られた中空
糸膜の透水率、アルブミンの回収率およびIgMの阻止
率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表1
に併せて示す。
【0055】実施例3 実施例1と同一の紡糸原液を使用し、紡糸に際して窒素
に代えてDMSOを20重量%含有する18℃の水溶液
を二重環状ノズルの内側に供給したこと以外は実施例1
と同様の方法により、内径180μm、膜厚42μmの
乾燥状態の中空糸膜を得た。
【0056】かかる中空糸膜は外表面および内表面に緻
密層を有し、膜の内部に多孔層を有する構造であった。
外表面の緻密層は平均孔径0.01μmの微細孔を有し
ており、その厚さは0.15μmであり、内表面の緻密
層は平均孔径0.01μmの微細孔を有しており、その
厚さは0.1μmであった。また、多孔層は平均孔径
0.65μmの微細孔を有していた。得られた中空糸膜
は空孔率が65%であり、膜中にPVPを3.7重量%
含有していた。また、上記で得られた中空糸膜の透水
率、アルブミンの回収率およびIgMの阻止率を実施例
1と同様の方法により測定した。結果を表1に併せて示
す。
【0057】比較例1 エチレン含量32モル%、重合度1300、ケン化度9
9モル%のエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体(株式
会社クラレ製、EVAL ECF100A)20重量%
をDMSO80重量%に溶解して均一な溶液を調製し、
紡糸原液とした。この溶液の粘度は50℃において80
ポイズであった。かかる紡糸原液を濾過、脱泡した後、
55℃に保ち、外径0.5mm、内径0.2mmの二重
環状ノズルより凝固液であるDMSOを25重量%含有
する20℃の水溶液中へ直接押し出して凝固させ、中空
糸膜を形成させた。紡糸に際し、二重環状ノズルの内側
には窒素を供給した。凝固後の中空糸膜を水洗した後、
湿熱処理を行い、次いでアセトン置換して10℃にて乾
燥した後、定長乾熱処理を施すことにより、内径180
μm、膜厚30μmの乾燥状態の中空糸膜を得た。
【0058】かかる中空糸膜は外表面に緻密層を有し、
膜の内部および内表面に多孔層を有する構造であった。
外表面の緻密層は平均孔径0.07μmの微細孔を有し
ており、その厚さは0.2μmであった。また、多孔層
は平均孔径0.17μmの微細孔を有していた。得られ
た中空糸膜の空孔率は40%であり、膜中のPVPの含
有量は0である。また、上記で得られた中空糸膜の透水
率、アルブミンの回収率およびIgMの阻止率を実施例
1と同様の方法により測定した。結果を表1に併せて示
す。
【0059】比較例2 エチレン含量32モル%、重合度1300、ケン化度9
9モル%のエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体(株式
会社クラレ製、EVAL ECF100A)13重量%
をDMSO87重量%に溶解して均一な溶液を調製し
た。この溶液の粘度は50℃において8ポイズであっ
た。得られた溶液にPVP(GAF社製、K−90)を
該エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体に対して25重
量%となるように添加し、溶解して均一な溶液を調製
し、紡糸原液とした。得られた紡糸原液の粘度は50℃
において500ポイズであった。かかる紡糸原液を濾
過、脱泡した後、60℃に保ち、外径0.5mm、内径
0.2mmの二重環状ノズルより凝固液であるDMSO
を30重量%含有する8℃の水溶液中へ直接押し出して
凝固させ、中空糸膜を形成させた。紡糸に際し、二重環
状ノズルの内側には窒素を供給した。凝固後の中空糸膜
を水洗した後、湿熱処理を行い、次いでアセトン置換し
て25℃にて乾燥した後、定長乾熱処理を施すことによ
り、内径180μm、膜厚35μmの乾燥状態の中空糸
膜を得た。
【0060】かかる中空糸膜は外表面に緻密層を有し、
膜の内部および内表面に多孔層を有する構造であった。
外表面の緻密層は平均孔径0.005μmの微細孔を有
しており、その厚さは1.5μmであった。また、多孔
層は平均孔径0.07μmの微細孔を有していた。得ら
れた中空糸膜は空孔率が36%であり、膜中にPVPを
15.7重量%含有していた。また、上記で得られた中
空糸膜の透水率、アルブミンの回収率およびIgMの阻
止率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表
1に併せて示す。
【0061】比較例3 実施例1と同一の紡糸原液を使用し、紡糸に際して凝固
浴としてDMSOを20重量%含有する0℃の水溶液中
に押し出して凝固させた以外は実施例1と同様の方法に
より、内径180μm、膜厚27μmの乾燥状態の中空
糸膜を得た。
【0062】得られた中空糸膜は、平均孔径0.003
μmの微細孔を有していたが、緻密層と多孔層を電子顕
微鏡によって明瞭に判別することができなかった。ま
た、得られた中空糸膜は空孔率が32%であり、膜中に
PVPを4.3重量%含有していた。また、上記で得ら
れた中空糸膜の透水率、アルブミンの回収率およびIg
Mの阻止率を実施例1と同様の方法により測定した。結
果を表1に併せて示す。
【0063】比較例4 実施例1と同一の紡糸原液を使用し、該紡糸原液を凝固
浴としてDMSOを20重量%含有する50℃の水溶液
中に直接押し出して凝固させた。しかしながら、この条
件下では連続して中空糸膜を紡糸することはできなかっ
た。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、分画性に優れ、かつ透
水率が高い血漿処理用中空糸膜およびその製造方法が提
供される。本発明の血漿処理用中空糸膜によれば、血漿
中の有用成分であるアルブミンを失うことなく、有害成
分であるIgMを選択的に除去することができ、しかも
血漿処理に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた中空糸膜の断面構造を示
す2000倍の電子顕微鏡写真である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン・ビニルアルコール系共重合体
    99.5〜80重量%、第2重合体0.5〜20重量%
    からなり、少なくとも1方の表面に緻密層を有し、内部
    に多孔層を有する血漿処理用中空糸膜であって、該緻密
    層の微細孔は平均孔径が0.007〜0.045μmで
    あり、該多孔層の微細孔は平均孔径が0.05〜1.5
    μmであり、かつ膜の空孔率が50%以上であることを
    特徴とする血漿処理用中空糸膜。
  2. 【請求項2】透水率が100ml/m2・hr・mmH
    g以上であることを特徴とする請求項1に記載の血漿処
    理用中空糸膜。
  3. 【請求項3】ヒト血漿アルブミンの透過率が90%以
    上、ヒト血漿免疫グロブリンMの阻止率が80%以上で
    ある請求項1または2に記載の血漿処理用中空糸膜。
  4. 【請求項4】第2重合体がポリビニルピロリドンである
    請求項1ないし3に記載の血漿処理用中空糸膜。
  5. 【請求項5】 エチレン・ビニルアルコール系共重合
    体、第2重合体および溶媒からなる紡糸原液を環状ノズ
    ルより凝固浴中に押し出し凝固させる中空糸膜の製造方
    法であって、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、
    第2重合体および溶媒からなる紡糸原液の50℃におけ
    る粘度をηAポイズ、該エチレン・ビニルアルコール系
    共重合体と該溶媒からなり、その重量比が上記紡糸原液
    におけるエチレン・ビニルアルコール系共重合体と溶媒
    の重量比と同一である溶液の50℃における粘度をη0
    ポイズ、凝固浴温度をCT℃とするとき、η0、ηAおよ
    びCTが log(ηA−η0)+10<CT<log(ηA−η0
    +40 なる関係式を満足することを特徴とする中空糸膜の製造
    方法。
  6. 【請求項6】第2重合体がポリビニルピロリドンである
    請求項5に記載の中空糸膜の製造方法。
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