JPH0724076A - ビル緊急脱出装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、高層ビルにおける火災発生等の緊
急災害時に安全に脱出するビル緊急脱出装置に係り、高
層ビル内が停電しても上層階の人を安全に救出するもの
である。 【構成】 本発明は、高層ビル１に脱出用の降下路２を
垂直に穿設し、この降下路２に折畳み可能な耐熱性の救
命カプセル１０を降下路径より僅かに小径に形成して降
下するように設けたものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば、高層ビルにお
ける火災発生等の緊急災害時に安全に脱出するビル緊急
脱出装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、高層ビルにおける火災発生時、
高層階床より脱出するとき、約１５階程度の高さの場
合、消防用梯子車又は布製の緊急脱出用シュートを梯子
車で救出階床の窓枠へ取付け脱出するようにしているけ
れども、高層ビルにおける火災発生が約２０階以上の高
さになると、高層ビルの屋上にヘリコプター用エアポー
トがないと殆ど脱出が不可能であり、大災害を起すおそ
れがある。

【０００３】従来、高層ビルにおける火災発生等の緊急
災害時に安全に脱出するビル緊急脱出手段は、高層ビル
に吊りロープを吊し、この吊りロープにゴンドラを連結
して、このゴンドラの自重と機械的な摩擦力で緩速降下
するようにバランスさせるものがある（特開昭５４−１
５２３９８号、特開昭５９−１１８１６９号）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た吊りロープによるゴンドラのビル緊急脱出手段は、高
層ビルにおける火災発生時、高層ビル内は停電となり、
全ての動力源は停止してしまう関係上、安全性に問題が
ある。特に、高層ビルにおける火災発生階より上層階の
人を救出するのは困難である。

【０００５】又一方、非常階段からの脱出も約１００ｍ
以上の高層ビルのとき、非常階段に多数の人が殺到する
ばかりでなく、煙りによる一酸化炭素中毒をするおそれ
もあり、しかも、病人、老人、子供では脱出が困難であ
る。

【０００６】本発明は、上述した問題を解決するため
に、高層ビルにおける火災発生時、高層ビル内が停電し
ても上層階の人を安全に救出するようにしたビル緊急脱
出装置を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、高層ビルに脱
出用の降下路を垂直に穿設し、この降下路に折畳み可能
な耐熱性の救命カプセルを降下路径より僅かに小径に形
成して降下路内の空気抵抗を巧みに利用して安全に降下
して救出するように設けたものである。

【０００８】

【作用】本発明は、高層ビルにおける火災発生時、脱出
用降下路に折畳み可能な耐熱性の救命カプセルを全開し
て避難者を収容した後、上記脱出用の降下路と救命カプ
セルとの空隙による空気抵抗を利用して自然落下すると
共に、上記降下路の周壁で救命カプセルを転倒しないよ
うに案内して安全に地上に着地して救出するものであ
る。

【０００９】

【実施例】以下、本発明を図示のー実施例について説明
する。

【００１０】図１乃至図５において、符号１は、例えば
約２０階以上の高さによる高層ビルであって、この高層
ビル１には、脱出用の降下路２が垂直に穿設されてお
り、この降下路２の周壁２ａは、例えば、ガラス繊維の
ような耐熱性の材料で構成されている。又、この降下路
２の上部には、開閉扉３が開閉自在に設けられており、
この開閉扉３の内側の上記降下路２には、可動踏み板４
が開閉可能に枢着されており、この可動踏み板４は、後
述する救命カプセル１０の避難者が降下路２の周壁２ａ
に付設された作動釦（図示されず）を押すことにより、
垂直に開扉するようにしている。

【００１１】他方、上記降下路２の下部には、脱出用の
開閉扉５が開閉自在に設けられており、この開閉扉５の
近傍の上記降下路２には、例えば、電磁排気弁のような
一対の排気弁６が降下時における降下路２の空気圧を制
御しながら排気するように付設されている。又、この各
排気弁６の上位の上記降下路２には、例えば、光電管に
よる位置検出センサのような検出センサ７と圧力センサ
８が救命カプセル１０の位置と降下路２の空気圧を検出
するようにそれぞれ付設されており、この検出センサ７
及び圧力センサ８はバッテリー９ａを内蔵した制御パネ
ル９を介して上記各排気弁６へ連結されており、この検
出センサ７と圧力センサ８は上記降下路２の救命カプセ
ル１０や路内空気圧を検出して制御パネル９による指令
により上記排気弁６の排気量を制御して上記救命カプセ
ル１０を軟着陸するようにしている。

【００１２】又一方、図２乃至図５に示されるように、
上記降下路２には、折畳み可能な耐熱性の救命カプセル
１０が降下路２の径より僅かに小径に形成して降下路２
内の空気抵抗を巧みに利用して安全に降下して救出する
ように設けられている。

【００１３】この救命カプセル１０は、図２乃至図５に
示されるように構成されている。

【００１４】即ち、図２乃至図５において、上記救命カ
プセル１０の密閉された内筒体１１内には、キャビン１
２が避難者１３を収容可能に形成されており、この内筒
体１１の外側には、外筒体１４が空気ばねの機能を備え
て仕切られた多数の空隙１５を存して設けられており、
上記内筒体１１と外筒体１４との両者には、ファスナー
１６が上記避難者１３を上記キャビン１２へ出入りする
ように垂直に付設されている。又、上記外筒体１４の下
部には、複数の空気吸込孔１７が上記空隙１５へ供給す
るように穿設されており、この上記内筒体１１の上部に
は、図５に示されるように、少なくとも１又は２以上の
逆止弁１８が空気をキャビン１２内へ負圧の際に空気を
流入するように付設されている。

【００１５】以下、本発明の作用について説明する。

【００１６】従って、高層ビルにおける火災発生時、開
閉扉３を開いて、予め、保管してある折畳み可能な耐熱
性の救命カプセル１０のフアスナー１６を全開して避難
者１３が入り、このフアスナー１６を閉じて避難者１３
を収容した後、救命カプセル１０の避難者が降下路２の
周壁２ａに付設された作動釦（図示されず）を押すこと
により、可動踏み板４が回動して垂直に開扉するから、
上記救命カプセル１０は自重により自然落下を開始す
る。すると、上記救命カプセル１０は上記脱出用の降下
路２と救命カプセル１０との空隙１９による空気抵抗を
利用して自然落下すると共に、上記降下路２の周壁で救
命カプセル１０を転倒しないように案内して降下する。
このときの上記救命カプセル１０の降下速度は、約５ｍ
／ｓ程度が望ましい。しかして、上記検出センサ７と圧
力センサ８が救命カプセル１０の位置を検出すると、こ
の検出センサ７及び圧力センサ８は上記降下路２の救命
カプセル１０や路内空気圧を検出し、この検出信号によ
り制御パネル９を作動し、この制御パネル９による指令
で上記排気弁６の排気量を制御して上記救命カプセル１
０を軟着陸して安全に地上に着地して救出する。

【００１７】なお、上記救命カプセル１０は上記脱出用
の降下路２と救命カプセル１０との空隙１９による空気
抵抗を利用して自然落下するけれども、これを数式で説
明すると、次のようになる。

【００１８】即ち、上記救命カプセル１０の降下に伴っ
て押し退けられる空気量は降下路２と救命カプセル１０
との空隙１９による空気量と等しいので、下記の式が成
立する。

【００１９】

【数１】 上記式（１）からの降下速度Ｕは降下路と救命カプセル
の空隙面積と圧力損失Δｐ、つまり、救命カプセルの重
量により一義的に決められることが理解されるであろ
う。

【００２０】他方、救命カプセルの重量が軽く、降下速
度が遅いとき、上記排気弁６の降下路の空気を積極的に
排気することにより、安全な降下速度で降下することが
できる。これを数式で説明すると、

【００２１】

【数２】 但し、Ｃ2 ；排気弁の流量係数 Ａv ；排気弁の開口面積 ここで、上記（２）式をみると、救命カプセルの外径
ｄ、降下路の内径Ｄが一定であると、降下速度は排気弁
の開口面積と圧力損失Δｐと平方根に比例して降下速度
が決定される。

【００２２】今、降下を開始した救命カプセルの下面の
圧力を測定し、排気弁の開口面積を変化させると、救命
カプセルの重量が変っても、ある一定の降下速度で救命
カプセルを降下させることができるので、安全な降下速
度で降下することができる。

【００２３】次に、図６及び図７に示される本発明の他
の実施例は、上記降下路２の下部に咽喉部２ｂ及び小径
降下路２ｃを救命カプセル１０の降下を減速するように
形成したものである。

【００２４】即ち、前述した具体例では、検出センサ７
と圧力センサ８が上記降下路２の救命カプセル１０や路
内空気圧を検出して制御パネル９による指令により上記
排気弁６の排気量を制御して上記救命カプセル１０を軟
着陸するけれども、本発明の他の実施例は、上記排気弁
６の排気量を制御する代りに、上記降下路２の下部に咽
喉部２ｂ及び小径降下路２ｃを救命カプセル１０との空
隙１９ａを通過することにより、救命カプセル１０の降
下速度を減速して軟着陸するものである。

【００２５】次に、図８乃至図１４に示される本発明の
他の実施例は、上記救命カプセル１０の変形例である。

【００２６】即ち、図８乃至図１４において、上記救命
カプセル１０の密閉された内筒体１１内には、キャビン
１２が避難者１３を収容可能に形成されており、この内
筒体１１の外側には、外筒体１４が空気ばねの機能を備
えて仕切られた多数の空隙１５を存して設けられてお
り、上記内筒体１１と外筒体１４との両者には、ファス
ナー１６が上記避難者１３を上記キャビン１２へ出入り
するように垂直に付設されている。又、上記外筒体１４
の下部には、複数の空気吸込孔１７が上記空隙１５へ空
気を供給するように穿設されており、この上記内筒体１
１の上部には、図１２に示されるように、少なくとも１
又は２以上の逆止弁１８が空気をキャビン１２内へ負圧
の際に流入するように付設されている。さらに、上記外
筒体１４の上部には、合成樹脂材による耐熱性の取っ手
２０ａを有する碗型頭部材２０が、図１３に示されるよ
うに、降下中に損傷して変形しないように設けられてお
り、上記外筒体１４の下部には、合成樹脂材による耐熱
性の碗型下部材２１が降下中に損傷して変形しないよう
に設けられている。さらに又、図１４に示されるよう
に、収納時には、この実施例の救命カプセル１０は提灯
状に折畳み可能に蛇腹型にして構成されている。

【００２７】次に、図１５乃至図１８に示される本発明
の他の実施例は、上記救命カプセル１０の変形例であ
る。

【００２８】即ち、図１５乃至図１８において、上記救
命カプセル１０の密閉された内筒体１１内には、キャビ
ン１２が避難者１３を収容可能に形成されており、この
内筒体１１の外側には、外筒体１４が空気ばねの機能を
備えて仕切られた多数の空隙１５を存して設けられてお
り、この各空隙１５は仕切られた内筒体１１に穿設され
た各連通孔１５ａで連通している。又、上記内筒体１１
と外筒体１４との両者には、ファスナー１６が上記避難
者１３を上記キャビン１２へ出入りするように垂直に付
設されており、上記外筒体１４の下部には、複数の空気
吸込孔１７が上記空隙１５へ供給するように穿設されて
いる。又、この上記内筒体１１の上部には、少なくとも
１又は２以上の逆止弁１８が空気をキャビン１２内へ負
圧の際に流入するように付設されており、上記外筒体１
４の上部には、合成樹脂材による耐熱性の碗型頭部材２
０が降下中に損傷して変形しないように設けられてい
る。さらに、上記外筒体１４の下部には、合成樹脂材に
よる耐熱性の碗型底部材２１が降下中に損傷して変形し
ないように設けられており、上記外筒体１４の上部に
は、図１８に示されるように、各チェック弁２３が各空
隙１５ごとに付設されている。従って、降下時、上記各
空隙１５が何等かの原因により低圧になったとき、この
各チェック弁２３は開弁して各空隙１５へ空気を入れて
圧力の調整を図るようにしている。又、上記キャビン１
２内には、空気ボンベ２４が圧縮空気を詰めて付設され
ており、この空気ボンベ２４は降下時に開弁して上記内
筒体１１を膨らませて所定の圧力になるようにしてい
る。

【００２９】このように上述した本発明の他の実施例
は、救命カプセル１０の変形例であり、上述した具体例
と同じ構成及び効果を有するものである。

【００３０】

【発明の効果】以上述べたように本発明は、高層ビルに
脱出用の降下路を垂直に穿設し、この降下路に折畳み可
能な耐熱性の救命カプセルを降下路径より僅かに小径に
形成して降下するように設けてあるので、高層ビルにお
ける火災発生時、高層ビル内が停電しても上層階の人を
安全に救出することができるばかりでなく、上記救命カ
プセルを二重構成にして空気ばねの機能を備えているか
ら、衝撃を受けることなく、軟着地できると共に構成も
簡素であるから保守点検や故障の発生もないし、しか
も、駆動源を必要としないで有効に作動できるし、折畳
み可能であるため小嵩に収納できる等の優れた効果を有
する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のビル緊急脱出装置を示す線図。

【図２】本発明のビル緊急脱出装置に使用される救命カ
プセルの拡大側面図。

【図３】図２の鎖線Ａ−Ａに沿う断面図。

【図４】図２の鎖線Ｂ−Ｂに沿う断面図。

【図５】図２の鎖線Ｃ−Ｃに沿う断面図。

【図６】本発明の他の実施例を示す図。

【図７】図６の他の実施例の要部を示す拡大図。

【図８】本発明の他の実施例を示す図。

【図９】図８の鎖線Ｄ−Ｄに沿う断面図。

【図１０】図８の鎖線Ｅ−Ｅに沿う断面図。

【図１１】図８の鎖線Ｆ−Ｆに沿う断面図。

【図１２】図８の鎖線Ｇ−Ｇに沿う断面図。

【図１３】本発明の他の実施例の作動を説明するための
図。

【図１４】本発明の他の実施例の作動を説明するための
図。

【図１５】本発明のさらに他の実施例を示す図。

【図１６】図１５の鎖線Ｈ−Ｈに沿う断面図。

【図１７】図１５の鎖線Ｉ−Ｉに沿う断面図。

【図１８】図１５の鎖線Ｊ−Ｊに沿う断面図。

【符号の説明】

１ 高層ビル ２ 降下路 ６ 排気弁 ７ 検出センサ ８ 圧力センサ １０ 救命カプセル １１ 内筒体 １２ キャビン １４ 外筒体 １５ 空隙

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】高層ビルに垂直に穿設された脱出用の降下
   路と、この降下路に降下路径より僅かに小径に形成して
   降下するように設けられた折畳み可能な耐熱性の救命カ
   プセルとを具備したことを特徴とするビル緊急脱出装
   置。
2. 【請求項２】降下路の下部に検出センサを救命カプセル
   を検出するように付設し、この検出センサに排気弁を路
   内空気の排気量を制御して上記救命カプセルを軟着陸す
   るように設けたことを特徴とする請求項１記載のビル緊
   急脱出装置。
3. 【請求項３】降下路の下部に咽喉部を救命カプセルの降
   下を減速するように形成したことを特徴とする請求項１
   記載のビル緊急脱出装置。
4. 【請求項４】救命カプセルはキャビンを形成した内筒体
   に外筒体を空隙を存して設け、この両者にファスナーを
   上記キャビンへ出入りするように付設したことを特徴と
   する請求項１記載のビル緊急脱出装置。
5. 【請求項５】救命カプセルのキャビンに空気ボンベを付
   設したことを特徴とする請求項１記載のビル緊急脱出装
   置。