JPH0724049A - 救急絆創膏用粘着フィルムおよび該粘着フィルムを用いた救急絆創膏 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】スチレン系エラストマ−５０〜８０重量％と、
ポリオレフィン５０〜２０重量％からなる不織布に、粘
着剤を塗布した救急絆創膏用粘着フィルムおよび該粘着
フィルムを用いた救急絆創膏。 【効果】柔軟性に富み皮膚とのフィット性に優れ、物理
的な皮膚刺激を防止することができ、またその透湿性の
高さより皮膚呼吸を妨げず、ムレなどにより発生する皮
膚刺激も防止することができる。そしてポリオレフィン
をブレンドしたことにより不織布自体の強度を増加さ
せ、実用上何等支障のない強度を付与し、またさらに表
面を撥水処理する場合には、不織布への水の浸入および
パッド部への水の浸入を十分に防止することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、救急絆創膏用粘着フィ
ルムおよび該救急絆創膏用粘着フィルムを用いた救急絆
創膏に関し、さらに詳細には、支持体にスチレン系エラ
ストマ−５０〜８０重量％と、ポリオレフィン５０〜２
０重量％からなる不織布を使用した、皮膚刺激の少ない
救急絆創膏用の粘着フィルムおよび該粘着フィルムを用
いた救急絆創膏に関する。

【０００２】

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、救急絆創膏用粘着フィルムには、塩化ビニル、ポリ
エチレン、ポリプロピレンなどのフィルムに粘着剤を塗
布したものが多く使用されている。しかし塩化ビニル、
ポリエチレン、ポリプロピレンなどの素材は透湿性が小
さく、救急絆創膏に使用した場合には、皮膚に貼付した
ときに皮膚呼吸を妨げ、さらに皮膚刺激の原因となりが
ちである。

【０００３】これを防ぐためフィルムに通気孔をあける
などの対策が採られているが、それでも局部的には皮膚
呼吸を妨げ、さらにこの通気孔がパッド部への水の浸入
およびフィルムの強度低下の原因となっている。また上
記フィルムは、皮膚に比べて柔軟性に劣ることから、皮
膚に対する物理的な刺激の原因ともなっている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、フィルムおよ
び粘着剤に十分な透湿性を付与し、かつ十分な柔軟性を
付与することにより上記問題点を解決することを目的と
する。即ち、本発明はスチレン系エラストマ−５０〜８
０重量％と、ポリオレフィン５０〜２０重量％からなる
不織布に粘着剤、好ましくは多孔性の粘着剤を全面に塗
布するか、または粘着剤をパタ−ン化して塗布した救急
絆創膏用粘着フィルムを使用することにより、かかる問
題を解決するものである。

【０００５】本発明に使用するスチレン系エラストマ−
には、スチレンを共重合体モノマ−として、その他のコ
モノマ−と共重合体したエラストマ−を広く包含する。
該コモノマ−としては、ブタジエン、イソプレン、クロ
ロプレン等のジエン化合物、エチレン、プロピレン、ブ
テン、ヘキセン等のオレフィン、（メタ）アクリル酸ま
たは（メタ）アクリル酸とメタノ−ル、エタノ−ル、ブ
タノ−ル、ヘキサノ−ル等のアルコ−ルとのエステルな
どの、スチレンと共重合しうるモノマ−を使用すること
ができる。そしてハ−ド部とソフト部とのブロックから
構成されるブロック共重合体型のものが好ましく、特に
ハ−ド部がポリスチレン、ソフト部がポリイソプレン、
特に該ポリイソプレンを水素添加した水素添加ポリイソ
プレンからなるブロック共重合体が好ましい。ここに水
素添加反応は、非極性溶媒中、白金、パラジウム、ニッ
ケル、コバルト等の金属触媒を使用して実施することが
できる。水素添加率は、二重結合の総量に対し８０％以
上であることが好ましく、さらに好ましくは９０％以上
である。水素添加率が８０％未満では、不織布としたと
きに十分な耐候性のものが得られない場合がある。

【０００６】かかるブロック共重合体は、ハ−ド部とソ
フト部を有する構造的特徴により、低モジュラスで柔軟
性に富み、永久圧縮歪特性、耐熱性、耐候性、低温特性
等に優れる、という特徴を有しており、その合成法は、
例えば、特開平４−１１０５９、特開平４−１３６２５
０等に記載されている方法を使用することができる。か
かるポリスチレンブロックの量は、全ブロック共重合体
中、１０〜５０重量％が好ましい。５０重量％を越える
と、伸縮性が不十分となる。また１０重量％未満では、
引張強度が不十分となる。

【０００７】本発明のポリオレフィンとしては、エチレ
ン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどのオレフィンの
単独重合体、または２種類以上のこれらオレフィンの共
重合体などを挙げることができる。これらのうち、ポリ
プロピレンが好ましい。

【０００８】本発明の救急絆創膏用粘着フィルムは、ス
チレン系エラストマ−と、ポリオレフィンからなる不織
布を使用する。即ち、スチレン系エラストマ−単独で構
成された不織布は、柔軟性に富むものの、機械的強度に
劣り、破断強度は低い値を示す場合がある。しかしこれ
にポリオレフィンをブレンドすると、機械的強度、破断
強度を大幅に向上させることができる。この場合、一般
に、ポリオレフィン含有量が増加するに従って、その柔
軟性は次第に低下する。

【０００９】本発明の救急絆創膏用粘着フィルムの、ポ
リオレフィン含有量は、２０〜５０重量％である。ポリ
オレフィン含量が、２０重量％未満では十分な強度を得
ることができない。また、５０重量％を越えると柔軟性
が不十分となる。本発明の救急絆創膏用フィルムには、
さらに必要に応じて、パラフィン系油などを添加して成
形加工性を向上させることができる。また、該素材の耐
候性、耐熱性等を向上させるために公知の各種添加剤を
使用することもできる。

【００１０】本発明の救急絆創膏用粘着フィルムに使用
する粘着剤は、皮膚に対する刺激が少なく、かつ皮膚に
対する粘着性を有するものであれば特に限定されず、ゴ
ム系粘着剤、アクリル系粘着剤，ＳＩＳブロック共重合
体等の粘着剤を使用することができる。かかる粘着剤
は、不織布の粘着面の全面に塗布することもできるが、
好ましくは、透湿性の低下を防止するため、多孔性にし
た粘着剤を塗布するか、または粘着剤を全面に塗布しな
いで、パタ−ン・コ−ティングすることが好ましい。

【００１１】粘着剤を多孔性にする方法としては、通気
剤として高吸水性ポリマ−を使用し、吸水させたのち、
粘着剤溶液中に分散させ、コ−ティング後水分を蒸発さ
せて多孔性にする方法を挙げることができるが、特にこ
の方法に限定されるものではない。

【００１２】パタ−ン・コ−ティングは、例えば、粘着
剤を支持体にコ−ティングする方法として、スクリ−ン
・コ−ティング法またはグラビア・コ−ティング法を使
用することにより実施することができるが、特にこれら
の方法に限定されるものではない。粘着剤を塗布する方
法としては、前記不織布に粘着剤を直接塗布する方法、
または粘着剤を剥離紙に塗布した後、該不織布に転写す
る方法などを採用することができる。

【００１３】本発明の救急絆創膏用粘着フィルムの支持
体として使用する不織布は、水を吸収しやすく、そのま
まではフィルム内に水が浸入するという問題が生じる場
合がある。このため、粘着剤塗布面の反対側の表面を撥
水処理することが好ましい。これにより、不織布への水
の浸入を、ほぼ完全に防止することができる。撥水剤と
しては、シリコン系撥水剤、フッ素系撥水剤などをあげ
ることができるが、特に上記の撥水剤に限定されるもの
ではない。本発明の救急絆創膏用粘着フィルムは、いか
なる方法により絆創膏としてもよいが、その方法として
は例えば、粘着剤塗布面の反対面が該粘着剤と接着しな
い場合には、適当な幅の長いフィルムとし、それを巻き
とって救急絆創膏とする方法、適当な大きさのシートと
し、その中央部分にパッドを保持させ、さらに剥離紙で
粘着面を覆い包装した絆創膏の個別包装体とする方法な
どを挙げることができる。

【００１４】以下実施例をあげて本発明をさらに具体的
に説明する。

【実施例】本実施例において、各物性の評価は、下記の
方法に従って実施した。

【００１５】（１）モジュラス：試料を幅２５．４ｍｍ
（１インチ）に裁断し、間隔５０ｍｍとして引張試験機
に取り付ける。引張速度を毎分１００ｍｍとして、試料
片が、５％、１０％、１００％延伸したときの荷重を測
定した。

【００１６】（２）引張破壊強度、引張破壊伸び：試料
を幅２５．４ｍｍ（１インチ）に裁断し、間隔５０ｍｍ
として引張試験機に取り付ける。引張速度を毎分１００
ｍｍとして、試料片が、切断したときの荷重および伸び
を測定した。

【００１７】（３）対ガラス粘着力：試料を幅２５．４
ｍｍ（１インチ）に裁断し、アセトンでよく洗浄したガ
ラスに貼付し、重量４．５ｋｇの鉄芯にゴムを巻いたロ
−ラ−で１往復荷重を加え、引張試験機に取り付ける。
引張速度は、毎分３００ｍｍとし、試験片がガラス面か
ら剥がれるときの荷重を測定した。

【００１８】（４）透湿度：ＪＩＳ２０２０８に規定す
る透湿カップのリングに試料を貼付し、水を入れたシャ
−レの入ったガイドに確実に取り付ける。これを３２
℃、３０ＲＨ％の恒温・恒湿器に入れ、１時間毎に重量
を測定し、１時間毎の重量の差が安定するまでくり返
す。１時間での重量の減少値から、透湿度を計算した。

【００１９】（５）撥水度：試料表面に、水または０．
７５％洗剤溶液の０．１ｍｌを２ｃｍの高さから落と
す。液を落としたときから、液が試料中に完全にしみこ
むまでの時間を測定した。

【００２０】（６）皮膚刺激評価：パッチテストにより
評価した。評価条件を以下に示す。 ａ．検体 本発明の救急絆創膏用粘着フィルムを使用した救急絆創
膏（実施例）。塩化ビニルフィルムを使用した市販の救
急絆創膏（比較例）。 ｂ．被検者 年齢が２５から５０才までの健常成人男女、４４名。

【００２１】ｃ．試験方法 各被検者の上腕内側部に２種類の検体を貼付し、その上
に東京衛材研究所製粘着伸縮ガ−ゼ包帯（商品名：シル
キ−ポア）を貼付して４８時間閉鎖貼付試験を実施し
た。皮膚反応の判定は、剥離後１時間経過後に下記の基
準に従って行った。 陰性：全く反応を認めないもの・・・・・（−） 偽陽性：境界不明確な軽微な紅斑・・・・（±） 陽性：境界明確な紅班・・・・・・・・・（＋） 強陽性：紅班および浮腫、小水泡・・・・（＋＋）

【００２２】実施例１〜５、比較例１ スチレン系エラストマ−として、ポリスチレンと水素添
加ポリイソプレンのブロック共重合体、ポリオレフィン
としてポリプロピレンを使用し、表１に示すポリプロピ
レン含有量の不織布をメルトブロ−法により作成し、そ
こに通気剤として高吸水性ポリマ−を分散させたアクリ
ル系粘着剤をリバ−スロールコ−ト方式によって塗布
し、乾燥後多孔性とし、救急絆創膏用粘着フィルムとし
た。撥水処理は、フッ素系樹脂を主成分とする撥水剤
を、水または水：イソプロピルアルコ−ル（１：１）
に、表１の濃度に希釈した後、フィルムに塗布し、実施
例１〜５とした。塩化ビニルフィルムを支持体とし、粘
着剤として生ゴムを使用した市販の救急絆創膏に使用さ
れている粘着フィルムを比較例１とした。この救急絆創
膏用粘着フィルムの物性測定結果を表１にまとめた。

【００２３】

【表１】

【００２４】また、実施例１の本救急絆創膏用粘着フィ
ルム、および比較例１の粘着フィルムを使用した救急絆
創膏のパッチテストによる皮膚刺激の評価結果を表２に
示す。

【００２５】

【表２】 表１および表２の結果から、本発明の救急絆創膏用粘着
フィルムは、柔軟性に富み、皮膚とのフィット性に優れ
るため、皮膚刺激が小さく、またその優れた通気性のた
め皮膚呼吸を妨げず、ムレなどによる弊害を防止するこ
とができる。

【００２６】実施例６および７ 実施例１と同一組成の救急絆創膏用粘着フィルムについ
て、撥水処理の効果を見た。尚、撥水剤としては、フッ
素系樹脂を主成分とするものを使用した。結果を表３に
示す。

【００２７】

【表３】

【００２８】表３に見るように、撥水処理により透湿度
はほとんど変化しない。また水での撥水度は、スチレン
系エラストマ−が疎水性であるため撥水処理による差は
認められないが、石鹸水での撥水度では撥水処理により
明らかに差が出ている。

【００２９】

【発明の効果】本発明の救急絆創膏用粘着フィルムを使
用した救急絆創膏は、スチレン系エラストマ−の構造的
特徴により、柔軟性に富み、皮膚とのフィット性に優
れ、物理的な皮膚刺激を防止することができる。またそ
の透湿性の高さより皮膚呼吸を妨げず、ムレなどにより
発生する皮膚刺激も防止する。そしてポリオレフィンを
ブレンドしたことにより不織布自体の強度を増加させ、
実用上何等支障のない強度を付与し、またさらに表面を
撥水処理する場合には、不織布への水の浸入およびパッ
ド部への水の浸入を十分に防止することができる。

フロントページの続き (72)発明者 岩本 俊昭 大阪府大阪市北区梅田１丁目12番39号 株 式会社クラレ内 (72)発明者 新井田 康朗 大阪府大阪市北区梅田１丁目12番39号 株 式会社クラレ内

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 スチレン系エラストマ−５０〜８０重量
   ％と、ポリオレフィン５０〜２０重量％からなる不織布
   に、粘着剤を塗布した救急絆創膏用粘着フィルム。
2. 【請求項２】 ポリオレフィンがポリプロピレンであ
   る、請求項１記載の救急絆創膏用粘着フィルム。
3. 【請求項３】 スチレン系エラストマ−が、ポリスチレ
   ンブロックとポリイソプレンブロックからなるブロック
   共重合体である、請求項１または２に記載の救急絆創膏
   用粘着フィルム。
4. 【請求項４】 ポリイソプレンブロックに、水素添加ポ
   リイソプレンを含有する請求項３に記載の救急絆創膏用
   粘着フィルム。
5. 【請求項５】 スチレン系エラストマ−が、Ａ−Ｂ−Ａ
   型のトリブロック共重合体である請求項１から４までの
   いずれか１項に記載の救急絆創膏用粘着フィルム。
6. 【請求項６】 ポリイソプレンブロックの水素添加率が
   ８０％以上である、請求項４に記載の救急絆創膏用粘着
   フィルム。
7. 【請求項７】 粘着剤が、ゴム系重合体、アクリル系重
   合体またはＳＩＳ型ブロック共重合体である、請求項１
   から６までのいずれか１項に記載の救急絆創膏用粘着剤
   フィルム。
8. 【請求項８】 粘着剤が多孔性である、請求項１から７
   までのいずれか１項に記載の救急絆創膏用粘着フィル
   ム。
9. 【請求項９】 粘着剤をパタ−ンコ−ティングした、請
   求項１から７までのいずれか１項に記載の救急絆創膏用
   粘着フィルム。
10. 【請求項１０】 粘着剤塗布面の反対側表面を撥水処理
    した、請求項１から９までのいずれか１項に記載の救急
    絆創膏用粘着フィルム。
11. 【請求項１１】 請求項１から１０までのいずれか１項
    に記載の救急絆創膏用粘着フィルムを用いた救急絆創
    膏。