JPH07224381A - 薄膜製造方法およびその装置 - Google Patents

薄膜製造方法およびその装置

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JPH07224381A
JPH07224381A JP3914694A JP3914694A JPH07224381A JP H07224381 A JPH07224381 A JP H07224381A JP 3914694 A JP3914694 A JP 3914694A JP 3914694 A JP3914694 A JP 3914694A JP H07224381 A JPH07224381 A JP H07224381A
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JP
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thin film
substrate
gas
cluster
film
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JP3914694A
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English (en)
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Hidehiko Fujimura
秀彦 藤村
Akihiko Yokoyama
晃彦 横山
Makoto Kameyama
誠 亀山
Mitsuharu Sawamura
光治 沢村
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Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基板を高温に加熱することなく、光学特性や
耐久性にすぐれた薄膜を成膜する。 【構成】 クラスタービーム蒸発源3から発生されたク
ラスター粒子はイオン化されることなく電気的に中性の
まま各基板W1 に照射される。同時にイオン源4からイ
オン化された不活性ガス、反応性ガスあるいは両者の混
合物をイオンアシストとして各基板W1 に照射し、各基
板W1 上に成膜される薄膜の密着性や充填率を高める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、比較的低温ですぐれた
耐久性と光学特性を有する薄膜を製造できる薄膜製造方
法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、基板を高温に加熱することなく光
学特性や密着性、耐摩耗性等の耐久性にすぐれた薄膜を
製造する方法としてクラスターイオンビーム蒸着法が知
られている。
【0003】図2は一般的なクラスターイオンビーム蒸
着装置を示すもので、排気口11aに接続された真空ポ
ンプによって所定の真空圧に制御される真空室11内に
密閉るつぼ131を設け、該密閉るつぼ131内の薄膜
材料を加熱用ボンバードフィラメント132によって加
熱し、発生した蒸気を密閉るつぼ131のノズル131
aから真空雰囲気中に噴出することでクラスター(塊状
原子集団)化し、クラスター化された蒸気(クラスター
粒子)にイオン化用フィラメント133から発生する電
子のシャワーを照射して少なくとも一部分のクラスター
粒子をイオン化し、加速電極134によって加速して基
板W0 に照射する。
【0004】このようなクラスターイオンビーム蒸着法
においては、薄膜材料の蒸気が多数の原子(通常は10
00個以上の原子)がゆるく結合したクラスター粒子と
して基板に被着するため、充填率の高い薄膜を成膜でき
るという長所があるが、イオン化されたクラスター粒子
の衝突によって基板の表面が損傷し、薄膜の光学特性等
が損なわれるおそれがある。
【0005】また、クラスターイオンビーム蒸着法によ
る成膜中に酸素等の反応性ガスを導入して化合物の薄膜
を成膜する場合には、クラスター粒子をイオン化するイ
オン化用フィラメントが反応性ガスによって劣化するお
それがあるため、真空室内に導入される反応性ガスの流
れに指向性を与えてイオン化用フィラメントとの接触を
少なくするために、以下のような工夫がなされている。
【0006】(1) 基板に向って反応性ガスを噴出す
るためのノズルを設けたもの(特開昭60−10066
8号参照)。
【0007】(2) 基板に向って反応性ガスを噴出す
るノズルと、反応性ガスをイオン化する装置を併用した
もの(特開昭60−100669号公報参照)。
【0008】(3) 反応性ガスをイオン源でイオン化
して真空室に導入するもの(特開昭60−262963
号公報参照)。
【0009】(4) 反応性ガスをクラスター粒子とと
もにイオン化用フィラメントによってイオン化して加速
するもの(特開昭62−260053号公報参照)。
【0010】(5) 反応性ガスを真空室内でグロー放
電によってイオン化して加速するもの(特開昭63−0
11662号公報参照)。
【0011】(6) 反応性ガスを真空室内で励起、活
性化する放電部と、活性化された反応性ガスを基板に向
って噴出させるオリフィスを設けたもの(特開昭63−
029925号公報参照)。
【0012】(7) 反応性ガスをイオン化して加速す
るイオン化装置と、イオン化された反応性ガスのエネル
ギーを制御(質量分離や減速)したうえで基板に照射す
るもの(特開昭63−230868号公報参照)。
【0013】(8) 基板の近傍で反応性ガスやこれと
不活性ガスあるいは特定の元素等の混合ガスを励起、解
離あるいはイオン化する装置を設けたもの(特開昭63
−235468号公報参照)。
【0014】(9) 反応性ガス(酸素)を高周波電圧
を印加した放電管によって無声放電させて励起中性原子
化(オゾン化や原子状ガス化)するもの(特開平1−1
39758号公報参照)。
【0015】また、クラスターイオンビーム蒸着法によ
って成膜される薄膜の密着性や硬度等をさらに向上させ
るために、不活性ガスをイオン源によってイオン化して
加速するイオンアシスト法(特開平2−104661号
公報参照)も開発されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の技術によれば、前述のように、薄膜材料の蒸気をクラ
スター化することで充填率の高い薄膜を得ることができ
るという長所がある反面、イオン化されたクラスター粒
子が高速度で基板に衝突することで基板の表面が損傷
し、薄膜の光学特性等が損なわれるおそれがある。ま
た、反応性ガスを導入して化合物の薄膜を成膜するとき
は、前述のように、ノズルから基板に向って噴出するこ
とで指向性を与えても、クラスター粒子をイオン化する
イオン化用フィラメントの劣化を充分に防ぐことは困難
であり、また、反応性ガスをイオン化装置やイオン源に
よってイオン化して加速すると、イオン化されたクラス
ター粒子のイオンエネルギーに反応性ガスのイオンエネ
ルギーが付加されるため、基板表面の異常放電や成膜中
の薄膜のチャージアップ(帯電)によって膜質が著しく
損なわれるおそれがあり、この問題は、クラスター粒子
をイオン化するイオン化用フィラメントや反応性ガスの
イオン化装置あるいはイオン源の近傍にそれぞれイオン
を中和するニュートラライザを設けても充分解決するに
は至らない。さらに、イオン化された不活性ガスをイオ
ン化されたクラスター粒子とともに基板に照射して薄膜
の密着性や充填率を高めるいわゆるイオンアシスト法を
採用する場合も、前述と同様に基板表面の異常放電や成
膜中の薄膜のチャージアップが問題となる。
【0017】加えて、反応性ガスのイオン化装置やイオ
ン源あるいは反応性ガスを基板に向かって噴出するノズ
ルやオリフィスのために成膜装置が複雑化し、その結
果、薄膜の製造コストが上昇するという難点もある。
【0018】本発明は、上記従来の技術の有する問題点
に鑑みてなされたものであり、極めてすぐれた耐久性と
光学特性等を有する薄膜を比較的低温で容易に製造でき
る薄膜製造方法およびその装置を提供することを目的と
するものである。
【0019】また、本発明の他の目的は、すぐれた耐久
性と光学特性等を有する化合物の薄膜を比較的低温で容
易にしかも安価に製造できる薄膜製造方法およびその装
置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め本発明の薄膜製造方法は、薄膜材料のクラスター粒子
を発生させる工程と、発生したクラスター粒子をイオン
化手段によってイオン化することなくイオンアシストと
ともに基板に照射して薄膜を成膜する工程を有すること
を特徴とする。
【0021】イオンアシストが不活性ガスをイオン化し
たものであるとよい。
【0022】イオンアシストが反応性ガスまたはこれと
不活性ガスの混合ガスをイオン化したものであってもよ
い。
【0023】
【作用】上記方法によれば、薄膜材料のクラスター粒子
をイオンアシストとともに基板に被着させることで、基
板が比較的低温であっても極めて密着性や充填率の高い
薄膜を成膜できる。加えて、クラスター粒子をイオン化
することなく基板に照射するものであるため、クラスタ
ー粒子をイオン化して加速した場合のように衝突エネル
ギーによる基板表面の損傷や成膜中の薄膜のチャージア
ップによって薄膜の光学特性等が損われるおそれがな
い。その結果、耐久性や光学特性等にすぐれた薄膜を比
較的低温で容易に製造できる。
【0024】また、薄膜材料のクラスター粒子を発生さ
せる工程と、発生したクラスター粒子をイオン化手段に
よってイオン化することなく基板に照射するとともに、
該基板の近傍に反応性ガスを導入して化合物の薄膜を成
膜する工程を有すれば、クラスター粒子をイオン化手段
によってイオン化して基板に照射する場合のように、反
応性ガスによるイオン化手段の腐触を防ぐ目的で反応性
ガスに指向性を持たせる必要がないため装置が簡単であ
り、しかも、反応性ガスをイオン化する場合のように成
膜中の薄膜のチャージアップによって薄膜の光学特性等
が損われるおそれもない。その結果、耐久性や光学特性
等にすぐれた化合物の薄膜を比較的低温で容易にしかも
安価に製造できる。
【0025】
【実施例】本発明の実施例を図面に基いて説明する。
【0026】図1は第1ないし第6実施例による薄膜製
造方法に用いるクラスタービーム蒸着装置を説明する模
式断面図であって、これは、排気口1aに接続された図
示しない真空ポンプによって排気される真空室1と、そ
の内部に設けられたドーム形の基板ホルダ2と、その下
方に配設されたクラスタービーム蒸発源3と、不活性ガ
スまたは反応性ガスまたはこれらの混合物をイオン化す
るイオン源4と、ガス導入手段であるガス導入ライン5
を有し、基板ホルダ2は複数の基板W1 を保持し、図示
しない回転装置によって回転され、各基板W1 に成膜さ
れる薄膜の膜厚は膜厚モニタ2aによってモニタされ
る。
【0027】クラスタービーム蒸発源3は、図示上向き
に開口するノズル31aを有し、内部に薄膜材料を収容
する密閉るつぼ31と、その外側に巻かれた加熱用コイ
ル32と、ノズル31aから各基板W1 に向って噴出さ
れる蒸気流を遮断することの自在なシャッタ33からな
り、また、イオン源4は、これに反応性ガスあるいは不
活性ガスまたはこれらの混合物を導入するガス供給ライ
ン41と、これによって導入されたガスをイオン化する
RF励起型のイオン化装置42と、これから発生するイ
オン化ガスを中和するための図示しないニュートラライ
ザと、イオン化装置42から各基板W1 に向って照射さ
れるガス流を遮断することの自在なシャッタ43を有す
る。クラスタービーム蒸発源3は、前記蒸気流のみを通
過させる開口6aを有する遮蔽手段である防着壁6によ
って囲まれており、防着壁6は散乱粒子が真空室1の内
壁等によって反射されて基板W1 に入射し、膜質を低下
させるのを防ぐ。なお、クラスタービーム蒸発源3とイ
オン源4は、それぞれ必要に応じて複数設けてもよい。
【0028】上記クラスタービーム蒸着装置において、
密閉るつぼ31内の薄膜材料は加熱用コイル32によっ
て加熱されて蒸発し、ノズル31aから雰囲気圧力中に
噴出されてクラスター化し、イオン化手段によってイオ
ン化されることなく電気的に中性状態のままで、イオン
源4から発生するイオン化ガスとともに各基板W1 に照
射される。なお、ガス導入ライン5は、反応性ガスをイ
オン化することなく真空室1に導入してクラスター粒子
と反応させる場合(第3実施例)のみに使用される。
【0029】(第1実施例)図1のクラスタービーム蒸
着装置を用いてBK7ガラス製の基板の表面に厚さ略1
00nmの光学薄膜であるAl膜を成膜した。クラスタ
ービーム蒸発源3の薄膜材料としてAlを投入し、真空
室1を1×10-4Paに排気したうえで、前記Alを加
熱、蒸発させ、ノズル31aから真空雰囲気中に噴出し
てクラスター化し、イオン化することなく電気的に中性
状態のままで基板に照射した。同時にイオン源4に不活
性ガスであるArガスを供給し、イオン化されたArガ
スをイオンアシストとして基板に照射した。イオンアシ
スト加速電圧は、200V、イオン電流密度は略10μ
A/cm2 に制御し、成膜中の真空室1の雰囲気圧力は
略1×10-2Pa、成膜レート(推積速度)は略3nm
/secであった。また、各基板は成膜中無加熱であっ
た。
【0030】このようにして成膜されたAl膜の成膜直
後の密着性と耐摩耗性をそれぞれ公知のテープ試験とシ
ルボン紙コスリ試験によって評価したところ極めて良好
であり、また、高温高湿状態(70℃〜85%)のもと
に100時間放置する耐環境テスト後に同様の試験によ
って密着性と耐摩耗性を評価した結果も良好であった。
さらに、成膜直後と耐環境テスト後の反射率を調べたと
ころ、耐環境テストによる波長500nmにおける反射
率の低下は約1%で、極めて微小であることが判明し
た。これは、クラスター粒子をイオン化することなく基
板に被着させることで基板表面の損傷や薄膜のチャージ
アップを防ぐとともに、イオンアシストによってAl膜
の密着性や充填率が向上した結果と推測される。
【0031】比較のために、イオンアシストを用いるこ
となく、成膜中の真空室1内の雰囲気圧力が略1×10
-4Paである以外はすべて第1実施例と同様の方法で同
じ厚さのAl膜を成膜し、成膜直後と前述と同様の耐環
境テスト後の密着性、耐摩耗性、反射率を測定したとこ
ろ、耐環境テスト後のAl膜には一部ハガレとキズ数本
が観察され、また、耐環境テストによる反射率の低下は
2%であった。
【0032】表1に、本実施例によるAl膜をサンプル
A−1、比較例によるAl膜をサンプルA−2として成
膜直後と耐環境テスト後の反射率と密着性と耐摩耗性を
調べた結果を示す。
【0033】
【表1】 (第2実施例)図1のクラスタービーム蒸着装置を用い
てBK7ガラス製の基板の表面に厚さ略90nmの光学
薄膜であるMgF2 膜を成膜した。
【0034】クラスタービーム蒸発源3の薄膜材料とし
てMgF2 を用いるとともに、イオン源4には不活性ガ
スであるArガスとN2 ガスを供給し、ArガスとN2
ガスのイオンアシストを発生させた。イオンアシストの
加速電圧は200V、イオン電流密度は略10μA/c
2 、成膜中の真空室1の雰囲気圧力は略1×10-2
a、成膜レートは略0.5nm/secであり、また、
各基板は無加熱であった。
【0035】前述と同様に、成膜直後と耐環境テスト後
の反射率、密着性、耐摩耗性を調べたところ、密着性と
耐摩耗性は極めて良好であり、耐環境テスト後のハガレ
やキズも観察されず、また、耐環境テストによる反射率
の極小値の波長シフトは約1nm以下であった。さら
に、成膜直後と耐環境テスト後のロス(透過率)を調べ
たところ、波長500nmで略0.2%であり、耐環境
テストによって増加することもなかった。ただし、Ar
ガスの比率が大きくなるにつれてロスが大きくなる傾向
がみられた。
【0036】比較のために、イオンアシストを用いるこ
となく成膜中の真空室1内の雰囲気圧力が略1×10-4
Paであった以外はすべて第2実施例と同様の方法で同
じ厚さのMgF2 膜を成膜し、成膜直後と耐環境テスト
後の密着性、耐摩耗性、反射率を測定したところ、耐環
境テストによる反射率の極小値の波長シフトは約2〜5
nmであり、また、耐環境テスト後のMgF2 膜にはハ
ガレとキズが観察された。これは、クラスター粒子をイ
オン化せずに基板に被着させるときはイオンアシストを
用いると密着性や充填率を向上させるのに大きく役立つ
ことを示すものである。
【0037】表2に、本実施例によるMgF2 膜をサン
プルB−1とし、比較例をサンプルB−2として成膜直
後と耐環境テスト後の波長シフトと密着性と耐摩耗性を
調べた結果を示す。
【0038】
【表2】 (第3実施例)図1のクラスタービーム蒸着装置を用い
てBK7ガラス製の基板の表面に厚さ略100nmのT
iO2 膜を成膜した。
【0039】薄膜材料にTi23 、反応性ガスとして
2 ガスをガス導入ライン5から導入し、イオン源4は
不使用であった。真空室1×10-4Paに排気したうえ
でガス導入ライン5からO2 ガスを導入して真空室1の
雰囲気圧力を1×10-2Paに制御した。成膜中、成膜
レートは略0.2nm/sec、基板は無加熱であっ
た。前述と同様に成膜直後と耐環境テスト後の反射率、
密着性、耐摩耗性を調べたところ、耐環境テスト後の反
射率の極小値の波長シフトは略1nm以下であり、耐環
境テスト後もハガレやキズも目視では観察されず、10
0倍の顕微鏡によって細かいスジ状のキズが認められた
のみであった。さらに成膜直後と耐環境テスト後のロス
を調べたところ、波長500nmで略0.3%と微小で
あり、また、耐環境テストによって増加することもなか
った。
【0040】比較のために、図2に示すクラスターイオ
ンビーム蒸着装置を用いてTi23 を薄膜材料、O2
ガスを反応性ガスとして同様の基板上に同じ厚さのTi
2膜を成膜した。クラスター粒子をイオン化するイオ
ン化用フィラメントのイオン化電圧は100V、イオン
電流は200mA、加速電圧は500Vに制御するとと
もに、成膜中の真空室の雰囲気圧力を略1×10-2
a、成膜レートは略0.2nm/secに制御し、基板
は無加熱であった。
【0041】成膜直後と耐環境テスト後の反射率、密着
性、耐摩耗性およびロスを調べたところ、第3実施例に
よるTiO2 膜とほとんど同じ結果が得られた。しかし
ながら、クラスター粒子をイオン化するイオン化用フィ
ラメントや加熱用ボンバードフィラメントの寿命が極め
て短く、クラスタービーム蒸着装置を約200時間操業
したときにフィラメント電圧の異常が観察され、約30
0時間後には操業不能となった。これは前記イオン化用
フィラメントや加熱用ボンバードフィラメントが反応性
ガスによって腐蝕して性能が劣化したためである。
【0042】本実施例によれば、クラスター粒子をイオ
ン化するイオン化用フィラメントを必要としないために
装置が簡単であり、化合物の薄膜であるTiO2 膜を容
易にかつ安価に製造できる。
【0043】(第4実施例)図1のクラスタービーム蒸
着装置を用いてガス導入ライン5からO2 ガスを導入す
る替わりにイオン源4に反応性ガスであるO2 ガスと不
活性ガスであるArガスを供給し、イオン化されたO2
ガスとArガスの混合ガスからなる反応性イオンアシス
トを用いた以外は第3実施例と同様に、厚さ100nm
の光学薄膜であるTiO2 膜を製造した。
【0044】混合ガスに含まれるArガスの比率は略3
0%であり、反応性イオンアシストの加速電圧は750
V、イオン電流密度は略10μA/cm2 、成膜時の雰
囲気圧力は10-2Pa、成膜レートは略0.2nm/s
ec、基板は無加熱であった。
【0045】成膜直後と耐環境テスト後の反射率、密着
性、耐摩耗性を調べたところ、極めて良好であり、耐環
境テストによる反射率の極小値の波長シフトは略1nm
以下であり、さらに、成膜直後と耐環境テスト後のロス
を調べたところ、波長500nmで略0.3%と微小で
あり、耐環境テストによって増加することもなかった。
【0046】比較のために、図2に示すクラスターイオ
ンビーム蒸着装置に本実施例の反応性イオンアシストを
用いて同様のTiO2 膜を成膜した。イオン化されたク
ラスター粒子の加速電圧は500V、イオン化電圧は1
00V、イオン化電流は200mA、反応性イオンアシ
ストの加速電圧は750V、イオン化電流密度は略10
μA/cm2 、成膜中の雰囲気圧力は1×10-2Pa、
成膜レートは略0.2nm/secで、基板は無加熱で
あった。成膜されたTiO2 膜の表面には、クラスター
粒子をイオン化したうえに反応性イオンアシストを用い
ているために成膜中のチャージアップが原因とみられる
異常放電の跡等の著しい損傷が観察された。しかしなが
ら、反応性ガスがイオン化されてイオン化用フィラメン
トを避ける指向性を与えられているため、第3実施例の
比較例よりはるかに長時間の操業が可能であった。
【0047】これによって、クラスターイオンビーム蒸
着装置のるつぼ加熱用コイルの替わりに加熱用ボンバー
ドフィラメントを用いたときは、反応性ガスをイオン化
すれば加熱用ボンバードフィラメントの劣化防止に効果
的であることが類推される。
【0048】(第5実施例)図1のクラスタービーム蒸
着装置を用いてBK7ガラス製の基板の表面に厚さ略1
00nmの光学薄膜であるSiN膜を成膜した。
【0049】Arガスによるイオンアシストの替わりに
反応性ガスであるN2 ガスを用いた反応性イオンアシス
トを用いた以外は第1実施例と同様であり、反応性イオ
ンアシストの加速電圧は200V、イオン電流密度は略
10μA/cm2 、成膜中の雰囲気圧力は略1×10-2
Pa、成膜レートは略0.5nm/sec、基板は無加
熱であった。
【0050】成膜直後と耐環境テスト後の反射率、密着
性、耐摩耗性を調べたところ極めて良好であり、耐環境
テストによる反射率の極小値の波長シフトは略2nm以
下であり、耐環境テストによるハガレやキズも観察され
ず、さらに、成膜直後と耐環境テスト後のロスを調べた
ところ、波長800nmで略0.5%以下と微小であ
り、耐環境テストによって増加することもなかった。
【0051】次に、本実施例によるSiN膜を、スパッ
タ法によって別装置で成膜されたGdTbFeの3元系
光磁気膜の上に成膜して、これをサンプルC−1とし、
比較のために、同様にスパッタ法によって成膜されたG
dTbFeの3元系光磁気膜上にひきつづきスパッタ法
でSiN膜を成膜してこれをサンプルC−2とし、両者
の成膜直後と耐環境テスト後の保磁力と外観を調べた結
果を表3に示す。
【0052】
【表3】 表3から、本実施例による化合物の薄膜であるSiN膜
は、スパッタ法によって得られたものと外観、性能の点
で大差ないことが解る。
【0053】本実施例によれば、成膜速度が速く、か
つ、より大面積の基板に成膜できるという点でスパッタ
法より有利である。
【0054】(第6実施例)図1のクラスタービーム蒸
着装置にそれぞれ一対ずつのクラスタービーム蒸発源と
イオン源を設け、一方のクラスタービーム蒸着源の薄膜
材料をSi、他方のクラスタービーム蒸着源の薄膜材料
をAlとし、一方のイオン源から反応性ガスであるN2
ガスの反応性イオンアシスト、他方のイオン源から反応
性ガスであるO2 ガスの反応性イオンアシストを発生さ
せて、BK7ガラス製の基板の表面に光学薄膜であるS
iAlON膜を成膜した。N2 ガスの反応性イオンアシ
ストの加速電圧は200V、イオン電流密度は略10μ
A/cm2 、O2 ガスの反応性イオンアシストの加速電
圧は150V、イオン電流密度は略8μA/cm2 、成
膜中の雰囲気圧力は略1.2×10-2Pa、成膜レート
は略0.3nm/sec、基板は無加熱であった。
【0055】成膜されたSiAlON膜の成膜直後の屈
折率は、1.9であり、SiN膜とAl23 膜の中間
である。成膜直後と耐環境テスト後の反射率、密着性、
耐摩耗性を調べたところ、結果は極めて良好であり、耐
環境テストによる反射率の極小値の波長シフトは略2n
m以下、ハガレやキズの発生は皆無であった。さらに、
成膜直後と耐環境テスト後のロスを調べたところ、波長
800nmで略0.2%以下と微小であり、耐環境テス
トによって増加することもなかった。
【0056】なお、本実施例のように複数のイオン源を
用いると、チャージアップによって成膜中の薄膜に損傷
を与えるおそれがあるが、これは、各イオン源を適切に
制御することによって避けることができる。
【0057】また、化合物の薄膜であるSiAlON膜
等の酸窒化物薄膜と同様に、例えば、TiC膜、SiC
膜等の炭化物の薄膜や、ZrN、AlN等の窒化物の薄
膜や、TaCN膜等の炭窒化物の薄膜等を成膜すること
ができることは言うまでもない。
【0058】なお、第1ないし第6実施例は光学薄膜の
製造方法であるが、本発明の薄膜製造方法およびその装
置は光学薄膜以外の薄膜についても適用できることは言
うまでもない。
【0059】
【発明の効果】本発明は上述のように構成されているの
で、以下に記載するような効果を奏す。
【0060】すぐれた耐久性と光学特性等を有する薄膜
を比較的低温で容易に製造できる。
【0061】請求項1記載の発明によれば、クラスター
粒子をイオン化する替わりにイオンアシストとともに基
板に照射することで、極めて耐久性や光学特性等にすぐ
れた薄膜を成膜できる。
【0062】請求項4記載の発明によれば、化合物の薄
膜を比較的低温で容易にしかも安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1〜第6実施例の薄膜製造方法に用いるクラ
スタービーム蒸着装置を示す模式断面図である。
【図2】クラスターイオンビーム蒸着装置の一般例を示
す模式断面図である。
【符号の説明】
1 真空室 2 基板ホルダ 3 クラスタービーム蒸発源 4 イオン源 5 ガス導入ライン 6 防着壁 31 密閉るつぼ 31a ノズル 32 加熱用コイル 33,43 シャッタ 42 イオン化装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 沢村 光治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄膜材料のクラスター粒子を発生させる
    工程と、発生したクラスター粒子をイオン化手段によっ
    てイオン化することなくイオンアシストとともに基板に
    照射して薄膜を成膜する工程を有する薄膜製造方法。
  2. 【請求項2】 イオンアシストが不活性ガスをイオン化
    したものであることを特徴とする請求項1記載の薄膜製
    造方法。
  3. 【請求項3】 イオンアシストが反応性ガスまたはこれ
    と不活性ガスの混合ガスをイオン化したものであること
    を特徴とする請求項1記載の薄膜製造方法。
  4. 【請求項4】 薄膜材料のクラスター粒子を発生させる
    工程と、発生したクラスター粒子をイオン化手段によっ
    てイオン化することなく基板に照射するとともに、該基
    板の近傍に反応性ガスを導入して化合物の薄膜を成膜す
    る工程を有する薄膜製造方法。
  5. 【請求項5】 薄膜が光学薄膜であることを特徴とする
    請求項1ないし4いずれか1項記載の薄膜製造方法。
  6. 【請求項6】 基板に向って薄膜材料のクラスター粒子
    を発生させるクラスタービーム蒸発源と、前記基板に向
    ってイオンアシストを発生させるイオン源を有する薄膜
    製造装置。
  7. 【請求項7】 基板に向って薄膜材料のクラスター粒子
    を発生させるクラスタービーム蒸発源と、前記基板の近
    傍に反応性ガスを導入するガス導入手段を有する薄膜製
    造装置。
  8. 【請求項8】 クラスタービーム蒸発源のまわりを、ク
    ラスター粒子の通路を除いて包囲する遮蔽手段が設けら
    れていることを特徴とする請求項6または7記載の薄膜
    製造装置。
JP3914694A 1993-11-08 1994-02-14 薄膜製造方法およびその装置 Pending JPH07224381A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007154274A (ja) * 2005-12-06 2007-06-21 Canon Inc クラスタビームを用いた弗化物膜形成方法およびこれによって得られた弗化物膜を用いた光学素子
EP2365513B1 (fr) * 2010-03-09 2013-10-30 ESSILOR INTERNATIONAL (Compagnie Générale d'Optique) Enveloppe de protection pour canon à ions, dispositif de dépôt de matériaux par évaporation sous vide comprenant une telle enveloppe de protection et procédé de dépôt de matériaux
WO2018190268A1 (ja) * 2017-04-10 2018-10-18 株式会社シンクロン 成膜装置
WO2022091848A1 (ja) * 2020-10-27 2022-05-05 東海光学株式会社 表面保護膜、照明カバー、及び表面保護膜の製造方法

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