JPH07216513A - 高温強度に優れた高靱性フェライト系耐熱鋼 - Google Patents
高温強度に優れた高靱性フェライト系耐熱鋼Info
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- JPH07216513A JPH07216513A JP1041194A JP1041194A JPH07216513A JP H07216513 A JPH07216513 A JP H07216513A JP 1041194 A JP1041194 A JP 1041194A JP 1041194 A JP1041194 A JP 1041194A JP H07216513 A JPH07216513 A JP H07216513A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 高温強度、熱疲労強度、常温での靭性に優
れ、蒸気タービンのロータ材として用いて好適なフェラ
イト系耐熱鋼を提供する。 【構成】 本発明による高温強度に優れた高靭性フェラ
イト系耐熱鋼は次の組成をもつ。重量比で、0.08乃
至0.25%の炭素、0.50%以下の珪素、0.10
%以下のマンガン、0.05乃至1.0%のニッケル、
10.0乃至12.5%のクロム、0.6%乃至3.5
%のモリブデン、0乃至1.0%のタングステン、0.
10乃至0.35%のバナジウム、0.02乃至0.1
0%のニオブ、0.01乃至0.08%の窒素、0.0
03乃至0.008%のボロン、3.0〜8.0%のコ
バルトを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物元素から
なる。
れ、蒸気タービンのロータ材として用いて好適なフェラ
イト系耐熱鋼を提供する。 【構成】 本発明による高温強度に優れた高靭性フェラ
イト系耐熱鋼は次の組成をもつ。重量比で、0.08乃
至0.25%の炭素、0.50%以下の珪素、0.10
%以下のマンガン、0.05乃至1.0%のニッケル、
10.0乃至12.5%のクロム、0.6%乃至3.5
%のモリブデン、0乃至1.0%のタングステン、0.
10乃至0.35%のバナジウム、0.02乃至0.1
0%のニオブ、0.01乃至0.08%の窒素、0.0
03乃至0.008%のボロン、3.0〜8.0%のコ
バルトを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物元素から
なる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蒸気タービン、特に、
蒸気温度が593℃またはこれよりさらに高温で使用さ
れる高中圧ロータ用鋼、車室材、ボルト材等として用い
て好適なフェライト系耐熱鋼に関し、550〜650℃
の温度範囲の高温におけるクリーブ破断強度と常温にお
ける靭性に優れたフェライト系耐熱鋼に関する。
蒸気温度が593℃またはこれよりさらに高温で使用さ
れる高中圧ロータ用鋼、車室材、ボルト材等として用い
て好適なフェライト系耐熱鋼に関し、550〜650℃
の温度範囲の高温におけるクリーブ破断強度と常温にお
ける靭性に優れたフェライト系耐熱鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、火力発電プラントは効率向上の観
点から高温高圧化がめざされており、蒸気タービンの蒸
気温度は現在最高の593℃から、600℃さらに究極
的には650℃が目標となっている。蒸気温度を高める
ためには、従来使われているフェライト系耐熱鋼よりも
高温強度の優れた耐熱材料が必要である。その対策のひ
とつとして、オーステナイト耐熱合金が候補にあげられ
る。しかしながら、オーステナイト耐熱合金の中には耐
熱強度の優れたものがあるものの、熱膨張係数が大きい
ために熱疲労強度が劣ること、高価であることなどの点
から実用化には問題があるのが現状である。
点から高温高圧化がめざされており、蒸気タービンの蒸
気温度は現在最高の593℃から、600℃さらに究極
的には650℃が目標となっている。蒸気温度を高める
ためには、従来使われているフェライト系耐熱鋼よりも
高温強度の優れた耐熱材料が必要である。その対策のひ
とつとして、オーステナイト耐熱合金が候補にあげられ
る。しかしながら、オーステナイト耐熱合金の中には耐
熱強度の優れたものがあるものの、熱膨張係数が大きい
ために熱疲労強度が劣ること、高価であることなどの点
から実用化には問題があるのが現状である。
【0003】一方、従来の大型蒸気タービンの高中圧ロ
ータには、いわゆるCr−Mo−V鋼および例えば特公
昭40−4137号公報に示される12Cr系鋼が使用
されてきた。Cr−Mo−V鋼の場合は、高温における
強度が低く、かつ、種々の性質を安定して得ることがで
きないため低温の蒸気によってロータを冷却している
が、現在計画されている前述の蒸気条件では使用限界を
越えてしまうので、Cr−Mo−V鋼をこのような計画
の高温ロータに用いることはできない。他方、これまで
用いられてきた12Cr系鋼の高温における強度はCr
−Mo−V鋼よりも高いが、蒸気温度593℃以上では
長時間クリープ破断強度が低下するので使用限界を越え
てしまう。
ータには、いわゆるCr−Mo−V鋼および例えば特公
昭40−4137号公報に示される12Cr系鋼が使用
されてきた。Cr−Mo−V鋼の場合は、高温における
強度が低く、かつ、種々の性質を安定して得ることがで
きないため低温の蒸気によってロータを冷却している
が、現在計画されている前述の蒸気条件では使用限界を
越えてしまうので、Cr−Mo−V鋼をこのような計画
の高温ロータに用いることはできない。他方、これまで
用いられてきた12Cr系鋼の高温における強度はCr
−Mo−V鋼よりも高いが、蒸気温度593℃以上では
長時間クリープ破断強度が低下するので使用限界を越え
てしまう。
【0004】このため、近年高温強度を改良した新しい
フェライト系耐熱鋼がこれまでにも多数提案されてい
る。その例としては特開昭62−103345号、特開
昭62−60845号、特開昭60−165360号、
特開昭60−165359号、特開昭62−16535
8号、特開昭63−89644号、特開昭62−297
436号、特開昭62−297435号、特開昭61−
231139号、特開昭61−69948号、特開昭5
7−207161号、特公昭57−25629号、特開
平4−147948号によって提案されたものなどであ
る。
フェライト系耐熱鋼がこれまでにも多数提案されてい
る。その例としては特開昭62−103345号、特開
昭62−60845号、特開昭60−165360号、
特開昭60−165359号、特開昭62−16535
8号、特開昭63−89644号、特開昭62−297
436号、特開昭62−297435号、特開昭61−
231139号、特開昭61−69948号、特開昭5
7−207161号、特公昭57−25629号、特開
平4−147948号によって提案されたものなどであ
る。
【0005】一方、近年、蒸気タービンはますます高効
率化と大容量化が図られるようになり、前者において
は、熱効率向上のために蒸気圧力および温度をそれぞれ
316kg/cm2 以上および593℃以上にまで上昇
させる方向にあり、従ってロータの温度も高くなり、前
記した既に提案されている高温強度を改良したフェライ
ト系耐熱鋼と言えども最高使用温度である650℃とい
う究極の蒸気温度で使用することは難しく、また後者に
おいては、設計上必要とされるロータの形状が大型化
し、ロータ用鍛造品の単体重量が50トン以上にもなっ
てきており、ロータ製造上の偏析防止ならびに靭性改善
などの問題が生じてきている。
率化と大容量化が図られるようになり、前者において
は、熱効率向上のために蒸気圧力および温度をそれぞれ
316kg/cm2 以上および593℃以上にまで上昇
させる方向にあり、従ってロータの温度も高くなり、前
記した既に提案されている高温強度を改良したフェライ
ト系耐熱鋼と言えども最高使用温度である650℃とい
う究極の蒸気温度で使用することは難しく、また後者に
おいては、設計上必要とされるロータの形状が大型化
し、ロータ用鍛造品の単体重量が50トン以上にもなっ
てきており、ロータ製造上の偏析防止ならびに靭性改善
などの問題が生じてきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、650℃
という究極の蒸気温度を達成するためには、前記した既
に提案されている高温強度を改良したフェライト系耐熱
鋼では未だ不十分であり、さらに高温強度の高いフェラ
イト系耐熱鋼を利用できることが望まれている。そこ
で、本発明は、以上の諸点に鑑み、前述の厳しい蒸気条
件においてもすぐれた長時間クリープ破断強度、切欠ク
リープ破断強度、クリープ破断伸びおよびクリープ破断
絞りを有するロータ材として用いて好適な高温強度に優
れた高靭性フェライト系耐熱鋼を提供することを課題と
している。
という究極の蒸気温度を達成するためには、前記した既
に提案されている高温強度を改良したフェライト系耐熱
鋼では未だ不十分であり、さらに高温強度の高いフェラ
イト系耐熱鋼を利用できることが望まれている。そこ
で、本発明は、以上の諸点に鑑み、前述の厳しい蒸気条
件においてもすぐれた長時間クリープ破断強度、切欠ク
リープ破断強度、クリープ破断伸びおよびクリープ破断
絞りを有するロータ材として用いて好適な高温強度に優
れた高靭性フェライト系耐熱鋼を提供することを課題と
している。
【0007】本発明のもう一つの課題は、高温での強度
がすぐれているだけでなく、常温での靭性がすぐれ、ロ
ータ材として好適な高靭性鋼を提供することにある。こ
れは火力発電用蒸気タービンにおいては、起動する場合
常温の靭性が低いと脆性破壊を起す危険があるからであ
る。本発明のもう一つの課題は、熱疲労による亀裂の発
生を防止するために高い延性を持つ耐熱鋼を提供するこ
とである。例えば火力発電用蒸気タービンでは昼間と夜
間の電力需要の変動に応じて停止、起動がしばしば繰返
され、特に起動時にロータ表面のみが急熱されて熱応力
が発生し、熱疲労による亀裂が発生するおそれがある。
このような熱疲労による亀裂の発生を防止するために
は、ロータ材は高い延性を有していることが必要であ
る。
がすぐれているだけでなく、常温での靭性がすぐれ、ロ
ータ材として好適な高靭性鋼を提供することにある。こ
れは火力発電用蒸気タービンにおいては、起動する場合
常温の靭性が低いと脆性破壊を起す危険があるからであ
る。本発明のもう一つの課題は、熱疲労による亀裂の発
生を防止するために高い延性を持つ耐熱鋼を提供するこ
とである。例えば火力発電用蒸気タービンでは昼間と夜
間の電力需要の変動に応じて停止、起動がしばしば繰返
され、特に起動時にロータ表面のみが急熱されて熱応力
が発生し、熱疲労による亀裂が発生するおそれがある。
このような熱疲労による亀裂の発生を防止するために
は、ロータ材は高い延性を有していることが必要であ
る。
【0008】本発明のもう一つの課題は、ロータ材とし
て用いた場合、その外周部のみでなく、中心部の諸性質
とくに長時間クリープ破断強度および常温の靭性がすぐ
れた耐熱鋼を提供することである。発電容量が600〜
1000MWにも及ぶ蒸気タービンでは高中圧ロータの
重量は数10トンにも達するために、溶体化処理後、油
あるいは水噴霧などで急冷してもロータ中心部の冷却速
度は100℃/Hr程度となる。このような遅い冷却速
度で焼入れされると、焼入れ途中に初析フェライトの析
出が生じて所定の強度および、靭性が得られないことが
あるが、本発明では後述するようにロータ中心部の冷却
条件をシミュレートした試験を行ないつゝ研究した結
果、大型ロータに用いた場合にその中心部の長時間クリ
ープ破断強度が高く、また靭性が非常にすぐれている鋼
を提供できたものである。
て用いた場合、その外周部のみでなく、中心部の諸性質
とくに長時間クリープ破断強度および常温の靭性がすぐ
れた耐熱鋼を提供することである。発電容量が600〜
1000MWにも及ぶ蒸気タービンでは高中圧ロータの
重量は数10トンにも達するために、溶体化処理後、油
あるいは水噴霧などで急冷してもロータ中心部の冷却速
度は100℃/Hr程度となる。このような遅い冷却速
度で焼入れされると、焼入れ途中に初析フェライトの析
出が生じて所定の強度および、靭性が得られないことが
あるが、本発明では後述するようにロータ中心部の冷却
条件をシミュレートした試験を行ないつゝ研究した結
果、大型ロータに用いた場合にその中心部の長時間クリ
ープ破断強度が高く、また靭性が非常にすぐれている鋼
を提供できたものである。
【0009】本発明のもう一つの課題は、高い温度で長
時間使用されても強度が著しく低下しないように焼戻し
温度が使用温度より十分高く、蒸気タービンロータ材と
して用いて好適な耐熱鋼を提供することである。本発明
のもう一つの課題は、数10トンにも及ぶ鍛造品におい
て1050℃〜1150℃から焼入れされてもδ−フェ
ライトの発生がないロータ材として用いるのに適した耐
熱鋼を提供することである。このδ−フェライトが生成
すると高温使用時の疲労強度が著しく低下するので、δ
−フェライトを絶対に生成してはいけない。本発明のも
う一つの課題は、クリープ応力・破断時間線図において
勾配(対数で表示した応力/破断時間)が小さいロータ
材用として用いて好適なフェライト系耐熱鋼を提供する
ことである。
時間使用されても強度が著しく低下しないように焼戻し
温度が使用温度より十分高く、蒸気タービンロータ材と
して用いて好適な耐熱鋼を提供することである。本発明
のもう一つの課題は、数10トンにも及ぶ鍛造品におい
て1050℃〜1150℃から焼入れされてもδ−フェ
ライトの発生がないロータ材として用いるのに適した耐
熱鋼を提供することである。このδ−フェライトが生成
すると高温使用時の疲労強度が著しく低下するので、δ
−フェライトを絶対に生成してはいけない。本発明のも
う一つの課題は、クリープ応力・破断時間線図において
勾配(対数で表示した応力/破断時間)が小さいロータ
材用として用いて好適なフェライト系耐熱鋼を提供する
ことである。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者らは、
従来の合金の見直しを行ない、さらに高度強化をはかる
ために各元素の最適添加量を研究した。その結果、マル
テンサイト組織の安定化ならびに焼戻し軟化抵抗の増加
をねらいCo を従来の同系統の合金に比べて比較的多
く、積極的に添加すること、さらに、高温強度向上をね
らいMo単独添加あるいはMoとWを同時に添加する
が、Wに比べてMoを重視し、従来よりも多量のMo当
量(Mo+0.6W)を添加すること、およびその結果
としてMo当量とCoの相乗効果により高温強度を一段
と高められることを新規に見出し本発明に至ったもので
ある。
従来の合金の見直しを行ない、さらに高度強化をはかる
ために各元素の最適添加量を研究した。その結果、マル
テンサイト組織の安定化ならびに焼戻し軟化抵抗の増加
をねらいCo を従来の同系統の合金に比べて比較的多
く、積極的に添加すること、さらに、高温強度向上をね
らいMo単独添加あるいはMoとWを同時に添加する
が、Wに比べてMoを重視し、従来よりも多量のMo当
量(Mo+0.6W)を添加すること、およびその結果
としてMo当量とCoの相乗効果により高温強度を一段
と高められることを新規に見出し本発明に至ったもので
ある。
【0011】すなわち、本発明による高温強度に優れた
高靭性フェライト系耐熱鋼は、重量比で、0.08乃至
0.25%の炭素、0.50%以下の珪素、0.10%
以下のマンガン、0.05乃至1.0%のニッケル、1
0.0乃至12.5%のクロム、0.6乃至3.5%の
モリブデン、0乃至1.0%のタングステン、0.10
乃至0.35%のバナジウム、0.02乃至0.10%
のニオブ、0.01乃至0.08%の窒素、0.003
乃至0.008%のボロン、3.0〜8.0%のコバル
トを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物元素からなる
組成をもつ。
高靭性フェライト系耐熱鋼は、重量比で、0.08乃至
0.25%の炭素、0.50%以下の珪素、0.10%
以下のマンガン、0.05乃至1.0%のニッケル、1
0.0乃至12.5%のクロム、0.6乃至3.5%の
モリブデン、0乃至1.0%のタングステン、0.10
乃至0.35%のバナジウム、0.02乃至0.10%
のニオブ、0.01乃至0.08%の窒素、0.003
乃至0.008%のボロン、3.0〜8.0%のコバル
トを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物元素からなる
組成をもつ。
【0012】大型ロータを製造する場合、鋼塊製造段階
で溶融状態から凝固するときに塊状のNbCが生成(晶
出)することがある。この粗大NbCは機械的特性に有
害であり、従って、鋼塊製造時にこのNbCの生成を回
避することが不可欠である。本発明においてはニオブと
0.4倍の炭素の和をNb+0.4C≦0.12%に抑
制すればNbCの生成を回避できることが見い出され
た。従って、本発明による前記組成のフェライト系耐熱
鋼においては、ニオブと0.4倍の炭素の和、Nb+
0.4Cを0.12%以下とし、かつ、不可避的不純物
元素のうち、S0.01%以下、P0.02%以下に抑
えるのが好ましい。
で溶融状態から凝固するときに塊状のNbCが生成(晶
出)することがある。この粗大NbCは機械的特性に有
害であり、従って、鋼塊製造時にこのNbCの生成を回
避することが不可欠である。本発明においてはニオブと
0.4倍の炭素の和をNb+0.4C≦0.12%に抑
制すればNbCの生成を回避できることが見い出され
た。従って、本発明による前記組成のフェライト系耐熱
鋼においては、ニオブと0.4倍の炭素の和、Nb+
0.4Cを0.12%以下とし、かつ、不可避的不純物
元素のうち、S0.01%以下、P0.02%以下に抑
えるのが好ましい。
【0013】特開昭62−103345号ないし特開昭
61−69948号に開示される10種類の合金はいず
れもCoを含まないか、Coを含んでも1%以下であ
る。従来Coはシャルピー衝撃値を低下させるため、特
に延性が低下しがちなW含有鋼においては、Coの多量
添加は不適当と考えられていたからである。ところが、
本発明者等の研究によれば後記する実施例で述べるよう
に、Coを3.0%以上添加してもこのような悪い傾向
は認められず、むしろ図4に示すようにCoを3.0%
以上、望ましくは6.0%程度添加すると高温強度の向
上には著しい効果があることがわかった。そこで、本発
明においてはCoを3.0%以上含有させることによっ
て、高温強度の一段の向上を達成することができたので
ある。
61−69948号に開示される10種類の合金はいず
れもCoを含まないか、Coを含んでも1%以下であ
る。従来Coはシャルピー衝撃値を低下させるため、特
に延性が低下しがちなW含有鋼においては、Coの多量
添加は不適当と考えられていたからである。ところが、
本発明者等の研究によれば後記する実施例で述べるよう
に、Coを3.0%以上添加してもこのような悪い傾向
は認められず、むしろ図4に示すようにCoを3.0%
以上、望ましくは6.0%程度添加すると高温強度の向
上には著しい効果があることがわかった。そこで、本発
明においてはCoを3.0%以上含有させることによっ
て、高温強度の一段の向上を達成することができたので
ある。
【0014】特開昭57−207161号の合金は、M
o0.5〜2.0%、W1.0〜2.5%、Co0.3
〜2.0%であり、MoとWを同等の重要性でみて利用
し、Coを低く抑えている。これに対し、本発明による
合金は、この特開昭57−207161号の合金が要求
するWの範囲外の低いWとし、むしろMoを重視し、い
ずれも高い含有量のMo当量(Mo+0.6W)とCo
の相乗効果によって高温強度を一段と高めたものであ
る。
o0.5〜2.0%、W1.0〜2.5%、Co0.3
〜2.0%であり、MoとWを同等の重要性でみて利用
し、Coを低く抑えている。これに対し、本発明による
合金は、この特開昭57−207161号の合金が要求
するWの範囲外の低いWとし、むしろMoを重視し、い
ずれも高い含有量のMo当量(Mo+0.6W)とCo
の相乗効果によって高温強度を一段と高めたものであ
る。
【0015】また、特公昭57−25629号に開示さ
れる材料は、内燃機関の燃焼室材料を対象にし、特に耐
熱疲労性を重視した鋳造材である。そのためSiは、脱
酸元素として有用であるほか、鋳込時の湯流性、高温酸
化性の改善効果を目的として0.2%〜3.0%の範囲
で積極的に添加するものであり、本発明合金とは、その
組成および用途を異にする。すなわち、本発明合金で
は、Siは延性を低下させる有害元素であり、0.50
%以下に制限する必要がある点で大きく異なる。
れる材料は、内燃機関の燃焼室材料を対象にし、特に耐
熱疲労性を重視した鋳造材である。そのためSiは、脱
酸元素として有用であるほか、鋳込時の湯流性、高温酸
化性の改善効果を目的として0.2%〜3.0%の範囲
で積極的に添加するものであり、本発明合金とは、その
組成および用途を異にする。すなわち、本発明合金で
は、Siは延性を低下させる有害元素であり、0.50
%以下に制限する必要がある点で大きく異なる。
【0016】また、特公昭57−25629号では、M
o,W,Nb,V,Tiの効果を同等としているので、
各元素は1種だけでもよいのに対し、本発明では、M
o,W,Nb,Vは後述するようにそれぞれ別々の役割
を担っているので、すべて同時に含有(Wについては0
%の場合もある)することが必要であり、この点で全く
技術思想が異なっている。このような合金組成の相異か
ら特性においては、特公昭57−25629号は、60
0℃−105 時間のクリープ破断強度が最大8〜10k
gf/mm2 であるのに対し、本発明合金のそれは後掲
の図2からわかるように、すべて12kgf/mm2 以
上となり、格段の強度の向上がはかれることが可能とな
った。
o,W,Nb,V,Tiの効果を同等としているので、
各元素は1種だけでもよいのに対し、本発明では、M
o,W,Nb,Vは後述するようにそれぞれ別々の役割
を担っているので、すべて同時に含有(Wについては0
%の場合もある)することが必要であり、この点で全く
技術思想が異なっている。このような合金組成の相異か
ら特性においては、特公昭57−25629号は、60
0℃−105 時間のクリープ破断強度が最大8〜10k
gf/mm2 であるのに対し、本発明合金のそれは後掲
の図2からわかるように、すべて12kgf/mm2 以
上となり、格段の強度の向上がはかれることが可能とな
った。
【0017】以下、本発明の低合金鋼の組成及びその含
有量について、前記のように限定した理由を説明する。
有量について、前記のように限定した理由を説明する。
【0018】[ 炭素 (C)]:Cは焼入性を確保
し、また焼戻し過程でM23C6 型炭化物を析出させて高
温強度を高め耐力や靭性を確保するためには必要不可欠
な元素であり、本発明のロータ材に適した耐熱鋼にとっ
て必要な耐力や靭性を発現させるためには、0.08%
以上必要であるが、あまり多量に添加すると、かえって
靭性を害するとともに、M23C6 型炭化物を過度に析出
させ、マトリックスの強度を低めてかえって長時間側の
高温強度を損なうので、0.08〜0.25%に限定す
る。望ましくは、0.09〜0.13%である。さらに
望ましくは、0.10〜0.12%である。
し、また焼戻し過程でM23C6 型炭化物を析出させて高
温強度を高め耐力や靭性を確保するためには必要不可欠
な元素であり、本発明のロータ材に適した耐熱鋼にとっ
て必要な耐力や靭性を発現させるためには、0.08%
以上必要であるが、あまり多量に添加すると、かえって
靭性を害するとともに、M23C6 型炭化物を過度に析出
させ、マトリックスの強度を低めてかえって長時間側の
高温強度を損なうので、0.08〜0.25%に限定す
る。望ましくは、0.09〜0.13%である。さらに
望ましくは、0.10〜0.12%である。
【0019】[珪素(Si)]:Siは溶鋼の脱酸剤と
して有効な元素である。しかし、Siは多く添加すると
脱酸による生成物であるSiO2 が鋼中に残存し、鋼の
清浄度を害し、靭性を低下させる。また、Siはラーベ
ス相の生成を促し、また粒界偏析等によりクリープ破断
伸び(延性)を低下させ、更に、高温使用中において
も、焼もどし脆性を助長するので、有害元素としてその
含有量を0.50%以下とした。なお、近年、真空カー
ボン脱酸法やエレクトロスラグ再溶解法が適用され必ず
しも、Si脱酸を行なう必要がなくなって来ており、そ
のときの含有量は0.05%以下でありSi量は低減で
きる。
して有効な元素である。しかし、Siは多く添加すると
脱酸による生成物であるSiO2 が鋼中に残存し、鋼の
清浄度を害し、靭性を低下させる。また、Siはラーベ
ス相の生成を促し、また粒界偏析等によりクリープ破断
伸び(延性)を低下させ、更に、高温使用中において
も、焼もどし脆性を助長するので、有害元素としてその
含有量を0.50%以下とした。なお、近年、真空カー
ボン脱酸法やエレクトロスラグ再溶解法が適用され必ず
しも、Si脱酸を行なう必要がなくなって来ており、そ
のときの含有量は0.05%以下でありSi量は低減で
きる。
【0020】[マンガン(Mn)]:Mnは溶鋼の脱
酸、脱硫剤として有効であり、また、焼入性を増大させ
て強度を高めるのに有効な元素である。また、Mnは、
δ−フェライトの生成を抑制し、M23C6 型炭化物の析
出を促進する元素として有効な元素であるが、Mn量増
加とともにクリープ破断強度を低下させるので、その含
有量を最大0.1%に限定する。望ましくは、0.05
〜0.1%である。
酸、脱硫剤として有効であり、また、焼入性を増大させ
て強度を高めるのに有効な元素である。また、Mnは、
δ−フェライトの生成を抑制し、M23C6 型炭化物の析
出を促進する元素として有効な元素であるが、Mn量増
加とともにクリープ破断強度を低下させるので、その含
有量を最大0.1%に限定する。望ましくは、0.05
〜0.1%である。
【0021】[ニッケル(Ni)]:Niは鋼の焼入性
を増大させ、δ−フェライトの生成を抑制し、室温にお
ける強度及び靭性を高める有効な元素で、最低0.05
%必要であるが特に靭性向上に有効である。また、これ
らの効果はNi及びCr両元素の含有量の多い場合に
は、その相乗効果により著しく増加する。しかし、Ni
は1.0%を越えると、高温強度(クリープ強さ、クリ
ープ破断強さ)を低下させ、また、焼もどし脆性を助長
するので、その含有量を0.05〜1.0%とした。望
ましくは、0.1〜0.5%である。
を増大させ、δ−フェライトの生成を抑制し、室温にお
ける強度及び靭性を高める有効な元素で、最低0.05
%必要であるが特に靭性向上に有効である。また、これ
らの効果はNi及びCr両元素の含有量の多い場合に
は、その相乗効果により著しく増加する。しかし、Ni
は1.0%を越えると、高温強度(クリープ強さ、クリ
ープ破断強さ)を低下させ、また、焼もどし脆性を助長
するので、その含有量を0.05〜1.0%とした。望
ましくは、0.1〜0.5%である。
【0022】[クロム(Cr)]:Crは耐酸化性を付
与し、M23C6 型炭化物を析出させて高温強度を高める
ために不可欠の元素である。本発明鋼の場合には最低1
0%必要であるが、12.5%を越えるとδ−フェライ
トを生成し、高温強度および靭性を低下させるので1
0.0〜12.5%に限定する。望ましくは、10.5
〜11.5である。
与し、M23C6 型炭化物を析出させて高温強度を高める
ために不可欠の元素である。本発明鋼の場合には最低1
0%必要であるが、12.5%を越えるとδ−フェライ
トを生成し、高温強度および靭性を低下させるので1
0.0〜12.5%に限定する。望ましくは、10.5
〜11.5である。
【0023】[モリブデン(Mo)]:Moは、Crと
同様にフェライト鋼の添加元素として重要な元素であ
る。Moを鋼に添加すると、焼入性を増大し、また、焼
もどし時の焼もどし軟化抵抗を大きくして、常温の強度
(引張強さ,耐力)および高温強度の増大に有効であ
る。また、Moは固溶体強化元素として、又、M23C6
型炭化物の微細析出を促進し、凝集を妨げる作用がある
とともに、その他の炭化物を生成して析出強化作用元素
として、クリープ強さやクリープ破断強さなどの高温強
度の向上に非常に有効な元素である。
同様にフェライト鋼の添加元素として重要な元素であ
る。Moを鋼に添加すると、焼入性を増大し、また、焼
もどし時の焼もどし軟化抵抗を大きくして、常温の強度
(引張強さ,耐力)および高温強度の増大に有効であ
る。また、Moは固溶体強化元素として、又、M23C6
型炭化物の微細析出を促進し、凝集を妨げる作用がある
とともに、その他の炭化物を生成して析出強化作用元素
として、クリープ強さやクリープ破断強さなどの高温強
度の向上に非常に有効な元素である。
【0024】更に、Moは0.5%程度以上添加する
と、鋼の焼もどし脆性を阻止する元素として非常に有効
な元素である。しかし、あまり多く添加すると、その効
果は飽和し、かえって靭性を害する。また、Moはδ−
フェライトを生成し易くする元素のひとつであるが、本
発明鋼の場合、Coとの共存によりその傾向が抑制され
ている。従って、Mo添加量の上限は3.5%まで高め
られる。そこで、Mo量は0.6〜3.5%とした。
と、鋼の焼もどし脆性を阻止する元素として非常に有効
な元素である。しかし、あまり多く添加すると、その効
果は飽和し、かえって靭性を害する。また、Moはδ−
フェライトを生成し易くする元素のひとつであるが、本
発明鋼の場合、Coとの共存によりその傾向が抑制され
ている。従って、Mo添加量の上限は3.5%まで高め
られる。そこで、Mo量は0.6〜3.5%とした。
【0025】[タングステン(W)]:Wは、固溶体強
化元素として、クリープ強さやクリープ破断強さなどの
高温強度の向上に有効な元素であり、その効果はMoと
の複合添加の場合に顕著である。しかし、Wを多く添加
すると靭性を害し、かつ、δ−フェライトやラーベス相
を生成しやすくなるとともに、凝固偏析等大型鋳造品と
して好ましくない現象もでてくるので、W量は0〜1.
0%とした。
化元素として、クリープ強さやクリープ破断強さなどの
高温強度の向上に有効な元素であり、その効果はMoと
の複合添加の場合に顕著である。しかし、Wを多く添加
すると靭性を害し、かつ、δ−フェライトやラーベス相
を生成しやすくなるとともに、凝固偏析等大型鋳造品と
して好ましくない現象もでてくるので、W量は0〜1.
0%とした。
【0026】[バナジウム(V)]:Vは、Moと同様
に常温における強度(引張強さ,耐力)の向上に有効な
元素である。固溶体強化元素として、又、Vの炭窒化物
を生成して析出硬化作用元素としてクリープ強さやクリ
ープ破断強さなど高温強度を向上させる重要な元素であ
る。更に、Vはある程度の添加範囲(0.03〜0.3
5%)の添加量であれば、結晶粒を微細化させて、靭性
向上にも有効である。しかし、あまりに多量添加する
と、靭性を害するとともに、炭素を過度に固定し、M23
C6 型炭化物の析出量を減じ、逆に高温強度が低下する
ので、その含有量は0.10〜0.35%とした。望ま
しくは、0.15〜0.25%である。
に常温における強度(引張強さ,耐力)の向上に有効な
元素である。固溶体強化元素として、又、Vの炭窒化物
を生成して析出硬化作用元素としてクリープ強さやクリ
ープ破断強さなど高温強度を向上させる重要な元素であ
る。更に、Vはある程度の添加範囲(0.03〜0.3
5%)の添加量であれば、結晶粒を微細化させて、靭性
向上にも有効である。しかし、あまりに多量添加する
と、靭性を害するとともに、炭素を過度に固定し、M23
C6 型炭化物の析出量を減じ、逆に高温強度が低下する
ので、その含有量は0.10〜0.35%とした。望ま
しくは、0.15〜0.25%である。
【0027】[ニオブ(Nb)]:Nbは、Vと同様に
引張強さや耐力などの常温強度、並びにクリープ強さや
クリープ破断強さなどの高温強度の増大に有効な元素で
あると同時に、NbCを生成して結晶粒を微細化させ、
靭性向上に非常な有効な元素である。また、一部は焼入
れの際、固溶して焼もどし過程でNb炭窒化物を析出
し、高温強度を高める作用があり、最低0.02%であ
るが、0.10%を越えるとVと同様炭素を過度に固定
してM23C6 型炭化物の析出量を減少し、高温強度の低
下を招くので0.02〜0.10%に限定する。望まし
くは、0.02〜0.05%である。
引張強さや耐力などの常温強度、並びにクリープ強さや
クリープ破断強さなどの高温強度の増大に有効な元素で
あると同時に、NbCを生成して結晶粒を微細化させ、
靭性向上に非常な有効な元素である。また、一部は焼入
れの際、固溶して焼もどし過程でNb炭窒化物を析出
し、高温強度を高める作用があり、最低0.02%であ
るが、0.10%を越えるとVと同様炭素を過度に固定
してM23C6 型炭化物の析出量を減少し、高温強度の低
下を招くので0.02〜0.10%に限定する。望まし
くは、0.02〜0.05%である。
【0028】[窒素(N)]:Nは、Vの窒化物を析出
したり、また固溶した状態でMoやWと共同でIS効果
(侵入型固溶元素と置換型固溶元素の相互作用)により
高温強度を高める作用があり、最低0.01%は必要で
あるが、0.08%を越えると延性を低下させるので、
0.01〜0.08%に限定する。望ましくは、0.0
2〜0.04%である。
したり、また固溶した状態でMoやWと共同でIS効果
(侵入型固溶元素と置換型固溶元素の相互作用)により
高温強度を高める作用があり、最低0.01%は必要で
あるが、0.08%を越えると延性を低下させるので、
0.01〜0.08%に限定する。望ましくは、0.0
2〜0.04%である。
【0029】[ボロン(B)]:Bは粒界強化作用とM
23C6 中に固溶し、M23C6 型炭化物の凝集粗大化を妨
げる作用により高温強度を高める効果があり、最低0.
003%低下すると有効であるが、0.008%を越え
ると溶接性や鍛造性を害するので、0.003〜0.0
08%に限定する。望ましくは、0.003〜0.00
8%である。
23C6 中に固溶し、M23C6 型炭化物の凝集粗大化を妨
げる作用により高温強度を高める効果があり、最低0.
003%低下すると有効であるが、0.008%を越え
ると溶接性や鍛造性を害するので、0.003〜0.0
08%に限定する。望ましくは、0.003〜0.00
8%である。
【0030】[コバルト(Co)]:Coは本発明を従
来の発明から区別して特徴づける重要な元素である。本
発明においてはCoの添加により高温強度が著しく改善
される。これはおそらく、Moとの相互作用によるもの
と考えられ、Moを1.5%以上含む本発明合金におい
て特徴的な現象である。このようなCoの効果を明確に
実現するために、本発明合金におけるCoの下限は3.
0%とする。一方、Coを過度に添加すると延性が低下
し、またコストが上昇するので、上限は8%に限定す
る。従って、Coの含有量は3.0〜8.0%とする。
望ましくは、4.0〜6.0%である。
来の発明から区別して特徴づける重要な元素である。本
発明においてはCoの添加により高温強度が著しく改善
される。これはおそらく、Moとの相互作用によるもの
と考えられ、Moを1.5%以上含む本発明合金におい
て特徴的な現象である。このようなCoの効果を明確に
実現するために、本発明合金におけるCoの下限は3.
0%とする。一方、Coを過度に添加すると延性が低下
し、またコストが上昇するので、上限は8%に限定す
る。従って、Coの含有量は3.0〜8.0%とする。
望ましくは、4.0〜6.0%である。
【0031】[その他]:P,S,Cuなどは不純物を
元素として製鋼の原材料より混入され避けられないもの
であるが、これらはできるだけ低い方が望ましい。しか
し、原材料を厳選するとコスト高となるので、Pは0.
02%以下、好ましくは0.015%以下、Sは0.0
1%以下、好ましくは0.005%以下、Cuは0.5
0%以下が望ましく、その他の不純物元素として、A
l,Sn,Sb,Pb,Asなどがある。
元素として製鋼の原材料より混入され避けられないもの
であるが、これらはできるだけ低い方が望ましい。しか
し、原材料を厳選するとコスト高となるので、Pは0.
02%以下、好ましくは0.015%以下、Sは0.0
1%以下、好ましくは0.005%以下、Cuは0.5
0%以下が望ましく、その他の不純物元素として、A
l,Sn,Sb,Pb,Asなどがある。
【0032】なお、本発明の低合金鋼の組成の限定理由
は上記の通りであるが、第1の特徴は従来の9〜12%
Cr鋼に特にCo,Mo,Wの合金元素の最適添加によ
り、フェライト相の安定化を図り焼もどし軟化抵抗を強
くした点である。第2の特徴は、第1の特徴に含まれる
Co,Mo,Wの合金添加の調整を、フェライト相の安
定化、クリープ破断強度の向上および靭性の向上の観点
から、Coとの関係からWに比較してMo添加を重視し
ている点である。その理由は、Wに比較してMoの方
が、δ−フェライトやラーベス相を生成しにくくフェラ
イト相の安定化が図り易いことおよび、Moは焼入性向
上に対して有効に働く元素であり、靭性の向上に大きく
貢献するためである。
は上記の通りであるが、第1の特徴は従来の9〜12%
Cr鋼に特にCo,Mo,Wの合金元素の最適添加によ
り、フェライト相の安定化を図り焼もどし軟化抵抗を強
くした点である。第2の特徴は、第1の特徴に含まれる
Co,Mo,Wの合金添加の調整を、フェライト相の安
定化、クリープ破断強度の向上および靭性の向上の観点
から、Coとの関係からWに比較してMo添加を重視し
ている点である。その理由は、Wに比較してMoの方
が、δ−フェライトやラーベス相を生成しにくくフェラ
イト相の安定化が図り易いことおよび、Moは焼入性向
上に対して有効に働く元素であり、靭性の向上に大きく
貢献するためである。
【0033】
【実施例】図1の表に示す合金A〜Hの化学組成の本発
明のフェライト合金鋼を実験室的規模の真空溶解炉にて
溶解し、50kg鋼塊を溶製した。これらの鋼塊を実機
のロータ材を想定して加熱・鍛造工程(据込1/2.8
U,鍛伸3.7Sの鍛練)を行って、小型鍛造材を製作
した。その後、この鍛造材を結晶粒度調整を目的に予備
熱処理(例えば、1050℃空冷及び650℃空冷)を
施した。この鍛造材を直径1200mmの大型蒸気ター
ビンロータの中心部の焼入冷却速度をシミュレートした
熱処理を行なった。
明のフェライト合金鋼を実験室的規模の真空溶解炉にて
溶解し、50kg鋼塊を溶製した。これらの鋼塊を実機
のロータ材を想定して加熱・鍛造工程(据込1/2.8
U,鍛伸3.7Sの鍛練)を行って、小型鍛造材を製作
した。その後、この鍛造材を結晶粒度調整を目的に予備
熱処理(例えば、1050℃空冷及び650℃空冷)を
施した。この鍛造材を直径1200mmの大型蒸気ター
ビンロータの中心部の焼入冷却速度をシミュレートした
熱処理を行なった。
【0034】1090℃で15h加熱して完全にオース
テナイト化後、ロータ中心部の焼入冷却速度:100℃
/hの冷却速度で焼入れした後、550℃で15hの1
次焼もどしと725℃で23hの2次焼もどしを行なっ
た。なお、上記供試材は、焼もどし処理により、ロータ
材の設計に必要な強度すなわち室温における0.2%耐
力が〜60kg/mm2 になるように調整した。また、
前記の本発明のフェライト合金鋼の他に、従来合金鋼を
前記と同じようにして溶製し(比較合金IおよびJ)、
両者性状を比較した。
テナイト化後、ロータ中心部の焼入冷却速度:100℃
/hの冷却速度で焼入れした後、550℃で15hの1
次焼もどしと725℃で23hの2次焼もどしを行なっ
た。なお、上記供試材は、焼もどし処理により、ロータ
材の設計に必要な強度すなわち室温における0.2%耐
力が〜60kg/mm2 になるように調整した。また、
前記の本発明のフェライト合金鋼の他に、従来合金鋼を
前記と同じようにして溶製し(比較合金IおよびJ)、
両者性状を比較した。
【0035】供試材A〜Hおよび比較合金I,Jの引張
試験及び衝撃試験の結果を図2に示す。また、供試材A
〜Hおよび比較合金I,Jを600℃および650℃の
各温度でクリープ破断試験を実施し、その結果から60
0℃および650℃の105hにおけるクリープ破断強
さを推定した。結果を図2に合わせて示す。図2から明
らかなように、いずれの供試材の場合も室温における
0.2%耐力は70kg/mm2 以上の強度レベルとな
っており、蒸気タービンロータ材として十分な強度を有
している。また、伸び・絞りも一般のロータ材で要求さ
れる伸び16%以上、絞り45%以上を十分に満足して
いる。一方、衝撃特性であるが、蒸気タービンロータ材
の50%FATTの目標値は+80℃以下であるが、本発明
鋼である供試材A〜Hおよび比較合金I,Jはいずれの
場合も目標値以下であり、充分な靭性を有していること
がわかる。
試験及び衝撃試験の結果を図2に示す。また、供試材A
〜Hおよび比較合金I,Jを600℃および650℃の
各温度でクリープ破断試験を実施し、その結果から60
0℃および650℃の105hにおけるクリープ破断強
さを推定した。結果を図2に合わせて示す。図2から明
らかなように、いずれの供試材の場合も室温における
0.2%耐力は70kg/mm2 以上の強度レベルとな
っており、蒸気タービンロータ材として十分な強度を有
している。また、伸び・絞りも一般のロータ材で要求さ
れる伸び16%以上、絞り45%以上を十分に満足して
いる。一方、衝撃特性であるが、蒸気タービンロータ材
の50%FATTの目標値は+80℃以下であるが、本発明
鋼である供試材A〜Hおよび比較合金I,Jはいずれの
場合も目標値以下であり、充分な靭性を有していること
がわかる。
【0036】図2から合金A〜Hの本発明合金は、合金
IおよびJの比較合金に比べて約1.2倍クリープ破断
強度が改善されており、格段にクリープ破断寿命が長い
ことがわかる。また、図3には本発明合金におけるクリ
ープ破断強度およびFATTに及ぼすMo,W量の関係で整
理した結果を示す。本発明合金の実施例のMoとW複合
添加の範囲はMo当量でMo+2Wが上限となってい
る。これから明らかなように、室温における0.2%耐
力が70kg/mm2 で比較的常温強度がすぐれかつ靭
性も改善され更に、クリープ破断強さは、従来の高温強
度を改良した12%Cr鋼材の約1.2倍の高温強度レ
ベルの優れた性状を有していることが判明した。
IおよびJの比較合金に比べて約1.2倍クリープ破断
強度が改善されており、格段にクリープ破断寿命が長い
ことがわかる。また、図3には本発明合金におけるクリ
ープ破断強度およびFATTに及ぼすMo,W量の関係で整
理した結果を示す。本発明合金の実施例のMoとW複合
添加の範囲はMo当量でMo+2Wが上限となってい
る。これから明らかなように、室温における0.2%耐
力が70kg/mm2 で比較的常温強度がすぐれかつ靭
性も改善され更に、クリープ破断強さは、従来の高温強
度を改良した12%Cr鋼材の約1.2倍の高温強度レ
ベルの優れた性状を有していることが判明した。
【0037】以上、本発明を図示した実施例に基づいて
具体的に説明したが、本発明がこれらの実施例に限定さ
れず特許請求の範囲に示す本発明の範囲内で、種々の変
更を加えてよいことはいうまでもない。例えば、上記実
施例では本発明による耐熱鋼を蒸気タービンの高中圧ロ
ータ材として用いる場合について説明したが、本発明に
よる耐熱鋼はこのようなロータ材以外に車室材、ボルト
材、又はガスタービン用ロータやディスク材等に用いて
よい。
具体的に説明したが、本発明がこれらの実施例に限定さ
れず特許請求の範囲に示す本発明の範囲内で、種々の変
更を加えてよいことはいうまでもない。例えば、上記実
施例では本発明による耐熱鋼を蒸気タービンの高中圧ロ
ータ材として用いる場合について説明したが、本発明に
よる耐熱鋼はこのようなロータ材以外に車室材、ボルト
材、又はガスタービン用ロータやディスク材等に用いて
よい。
【0038】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明によれば、室温
強度、高温強度及び靭性に優れ、従来のものよりも信頼
性が高く、又より大型で高温の蒸気タービンのロータ
材、車室材およびディスク材に用いて好適な高靭性フェ
ライト系耐熱鋼を得ることができる。
強度、高温強度及び靭性に優れ、従来のものよりも信頼
性が高く、又より大型で高温の蒸気タービンのロータ
材、車室材およびディスク材に用いて好適な高靭性フェ
ライト系耐熱鋼を得ることができる。
【図1】供試体として用いた本発明の実施例による合金
鋼と従来の合金鋼の組成を示す図表。
鋼と従来の合金鋼の組成を示す図表。
【図2】図1に示す供試体を用いて行ったクリープ破断
試験の結果を示す図表。
試験の結果を示す図表。
【図3】本発明による合金鋼におけるクリープ破断強度
とFATTに及ぼすMo,W量の関係を示す図表。
とFATTに及ぼすMo,W量の関係を示す図表。
【図4】Cr−Co成分調整におけるクリープ破断強度
等応力線図。
等応力線図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比で、0.08乃至0.25%の炭
素、0.50%以下の珪素、0.10%以下のマンガ
ン、0.05乃至1.0%のニッケル、10.0乃至1
2.5%のクロム、0.6%乃至3.5%のモリブデ
ン、0乃至1.0%のタングステン、0.10乃至0.
35%のバナジウム、0.02乃至0.10%のニオ
ブ、0.01乃至0.08%の窒素、0.003乃至
0.008%のボロン、3.0〜8.0%のコバルトを
含有し、残部が鉄及び不可避的不純物元素からなる高温
強度に優れた高靱性フェライト系耐熱鋼。 - 【請求項2】 前記フェライト系耐熱鋼のニオブと0.
4倍の炭素の和、Nb+0.4Cが0.12%以下であ
り、かつ、不可避的不純物元素のうち、硫黄0.01%
以下、リン0.02%以下に抑えることを特徴とする請
求項1に記載の高温強度に優れた高靱性フェライト系耐
熱鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1041194A JPH07216513A (ja) | 1994-02-01 | 1994-02-01 | 高温強度に優れた高靱性フェライト系耐熱鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1041194A JPH07216513A (ja) | 1994-02-01 | 1994-02-01 | 高温強度に優れた高靱性フェライト系耐熱鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07216513A true JPH07216513A (ja) | 1995-08-15 |
Family
ID=11749411
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1041194A Pending JPH07216513A (ja) | 1994-02-01 | 1994-02-01 | 高温強度に優れた高靱性フェライト系耐熱鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07216513A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0828010A2 (en) * | 1996-09-10 | 1998-03-11 | Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. | High strength and high-toughness heat-resistant cast steel |
-
1994
- 1994-02-01 JP JP1041194A patent/JPH07216513A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0828010A2 (en) * | 1996-09-10 | 1998-03-11 | Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. | High strength and high-toughness heat-resistant cast steel |
EP0828010A3 (en) * | 1996-09-10 | 1998-09-02 | Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. | High strength and high-toughness heat-resistant cast steel |
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