JPH07216482A - 排気バルブ用合金 - Google Patents

排気バルブ用合金

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JPH07216482A
JPH07216482A JP6038999A JP3899994A JPH07216482A JP H07216482 A JPH07216482 A JP H07216482A JP 6038999 A JP6038999 A JP 6038999A JP 3899994 A JP3899994 A JP 3899994A JP H07216482 A JPH07216482 A JP H07216482A
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俊治 野田
Michio Okabe
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Abstract

(57)【要約】 【目的】従来の高強度Ni基超合金排気バルブ材(NC
F751)よりも高強度かつ、耐高温腐食性に優れ、良
好な加工性を備えた高性能排気バルブ用合金を提供す
る。 【構成】本願高性能排気バルブ用合金は重量でC:0.
01〜0.20%、Si:2%以下、Mn:2%以下、
Cr:15〜25%、Mo+1/2W:0.5〜3.0
%、Nb+Ta:0.3〜3.0%、Ti:1.5〜
3.5%、Al:0.5〜2.5%、Fe:5%〜15
%、Zr:0.01〜0.10%、B:0.0010〜
0.02%、とCa:0.001〜0.03%、Mg:
0.001〜0.03%から選ばれる1種または2種を
含み、かつ原子%でAl+Ti+Nb+Ta=6.0〜
7.0%、残部Ni(Niの一部はCoで置換可能)か
らなる。また、必要に応じてV:0.2〜1.0%含有
させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車および舶用エンジ
ンの排気バルブ用材料のほか、高温用ばねおよび排気ガ
ス浄化触媒用メッシュ材用線材ならびに各種加熱炉用治
具部品に適用可能である。
【0002】
【従来技術】近年、エンジンの高出力・高回転化のた
め、エンジンバルブの多弁化(例えば1気筒毎に4本)
および細経化が進んでいる。これまで、ガソリンエンジ
ンでは、高Mn系のオーステナイト耐熱鋼SUH35
(Fe−9Mn−21Cr−4Ni−0.5C−0.4
N)が広く使用されてきた。
【0003】しかし、上記の理由により、最近では高強
度排気バルブとしてNi基超合金NCF751(Ni−
15.5Cr−0.9Nb−1.2Al−2.3Ti−
7Fe−0.05C)が使用されてきたが、近年の高出
力・高回転エンジンへの適用には800℃以上の高温強
度が十分でないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】現在、エンジンバルブ
に要求される重要な特性としては、高温引張強度、クリ
ープ強度、高温疲労強度および高温腐食特性がある。こ
の中でも、高温疲労強度は最も重要視される特性であ
る。
【0005】前述のNCF751はSUH35に比べ明
らかに800℃までは高温強度に優れているが、800
℃を越えると疲労強度が低下し、850℃になるSUH
35に近い強度に、900℃ではSUH35よりも強度
が低下するという問題がある。
【0006】また高温腐食においては、四エチル鉛を添
加して高オクタン化を図った有鉛ガソリンを使用する場
合に、燃焼生成物としてバルブ表面に生成するPbOお
よびPbSOによりPbOアタックおよびSアタック
の複合腐食を受ける。このような場合、NCF751の
ように73%ものNiを含む高Ni合金は鉄基合金のS
UH35に比べ腐食が大きいという問題がある。
【0007】さらに、NCF751は高価なNiを73
%も含み、SUH35等に比べ非常に高価な材料であ
る。そこで、本発明では、Ni基超合金NCF751よ
りも高強度かつ、耐高温腐食性に優れ、良好な加工性を
備え、さらにコストパーフォーマンスはNCF751と
同等あるいはそれ以上の排気バルブ用合金を開発するこ
とを目的とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような、問題点を
解決すべく本発明においては次のような観点から新しい
合金を開発するに至った。
【0009】1)これまでNi基超合金の高温強化は、
強度の逆温度依存性を有するγ’相{Ni3(Al,T
i)}の析出によって行われてきた。しかし、γ’相を
多量に析出させると、塑性加工が不可能となり鍛造によ
って素材の加工ができなくなる不都合がある。現用高強
度エンジンバルブ合金NCF751においては、γ’が
14〜15体積%析出している。そこで、γ’相の体積
率と高温での熱間加工性について鋭意研究した結果、2
0体積%以上析出すると高温でエンジンバルブへの加工
が難しいことが明らかになった。そこで、本発明合金に
おいては、γ’相形成元素である、Al、Ti、Nbお
よびTaの添加量をコントロールして、γ’相が20体
積%以上にならないようにコントロールしている。
【0010】2)高温強度は上述のγ’相ばかりでな
く、マトリックスであるオーステナイトの固溶強化によ
っても図ることができる。そこで、本発明においては、
WおよびMoによる固溶強化を行っている。
【0011】3)前述のようにNCF751はPbO/
PbSOの複合腐食特性が悪い。そこで、この複合腐
食特性をFe、CrおよびWの積極的な添加により改善
した。また、Niに比べコストの低いFeの添加は合金
のコスト低減にも効果がある。そこで本発明では、高温
強度を害さいない範囲でFeを加え、コストの上昇を防
いでいるのが特長である。
【0012】すなわち、本発明の排気バルブ用合金は、
重量%で C:0.01〜0.20% Si:2%以下 Mn:2%以下 Cr:15〜25% Mo+1/2W:0.5〜3.0% Nb:0.3〜3.0%(Nbの一部はTaで置き換え
られる) Ti:1.5〜3.5% Al:0.5〜2.5% Fe:5%〜15% Zr:0.01〜0.10% B:0.0010〜0.02% Ca:0.001〜0.03%、Mg:0.001〜
0.030%の内、1種または2種原子%で Al+Ti+Nb+Ta=6.0〜7.0% 残:Ni(Niの一部はCoで置き換えられる) からなること特徴とする排気バルブ用合金
【0013】
【作用および発明の効果】この発明による排気バルブ用
合金の成分組成範囲の限定理由は以下の通りである。
【0014】C:0.01〜0.20% Cは、Ti、NbおよびCrと結合して炭化物を形成
し、高温強度を改善する。そして、このような効果を得
るためには少なくとも0.01%以上の添加が必要であ
る。しかし、多量の添加は延性低下をきたし、熱間加工
性を悪化させるため上限を0.20%とした。
【0015】Si:2%以下 Siは脱酸元素として添加されるばかりでなく、耐酸化
性を改善する元素でもある。しかし、多量に添加すると
延性の低下をきたすため、上限を2%とした。
【0016】Mn:2%以下 MnはSiと同様に脱酸元素として添加されるが、多量
に添加すると高温酸化特性が悪くなるばかりでなく、延
性を害するη相(NiTi)の析出を助長するため、
上限を2%とした。
【0017】Cr:15〜25% Crは、高温酸化および腐食を改善する元素である。十
分な耐高温酸化および腐食特性を維持するためには、1
5%以上が必要であるが25%以上を越えるとオーステ
ナイト相が不安定になり脆化相のσおよびα相が析出し
延性が低下する。そこで、上限を25%にした。
【0018】Mo+1/2W:0.5〜3.0% MoおよびWはオーステナイト相に固溶し、固溶強化に
よって高温強度を高める元素である。また、WはPbO
腐食ばかりでなく、PbO/PbSOによる複合腐食
を低減させる効果も有している。WはMoの原子量の2
倍を有しているため、固溶強化の効果は同一重量%では
1/2である。そしてこのような効果が現れるためには
最低0.5%以上の添加が必要である。一方添加し過ぎ
ると熱間加工性を低下させるばかりでなく、Crの場合
と同様に脆化相が析出し延性が低下するため上限を3%
とした。尚、本発明ではMoおよびWのいずれか一方が
有効量以下である場合も含まれる。すなわち、高耐食性
を必要とする場合はWを高めに、また低コストを必要と
する場合にはWの添加を省略する等、要求に応じて添加
量の調整が可能である。
【0019】Nb:0.3〜3.0% NbはNi基超合金の析出強化相であるγ’相(Ni
(Al、Ti、Nb、Ta)を形成する元素であり、
γ’相の強化を図るばかりでなく、γ’相の粗大化を防
ぐ効果がある。しかし、これらの効果を得るためには、
最低0.3%以上の添加が必要である。一方、添加し過
ぎるとδ相(Ni(Nb、Ta))が析出して延性低
下をきたす。そこで、上限を3.0%とした。なお、T
aもNbと同様の効果を有しているが、高価な元素であ
るため本発明では対象としない。しかし、Nb原料中に
Taが含まれることがあるるため、Nbの一部をこの原
料中に含まれるTaで置き換えても良い。
【0020】Ti:1.5〜3.5% TiはNiと結合してγ’相を形成し、γ’相を強化す
る元素である。また、Tiの添加によってγ’相の時効
析出硬化が促進される。しかし、このような効果が十分
現れるためには最低1.5%の添加が必要である。ま
た、過剰な添加は脆化相のη相を析出させる結果とな
り、延性の低下をまねく。そこで添加の上限を3.5%
とした。
【0021】Al:0.5〜2.5% AlはNiと結合してγ’相を形成する最も重要な元素
である。しかし、添加量が少ないとγ’の析出量が十分
でなく、また、TiやNb、Taが多量に存在する場合
は、γ’相が不安定になりη相やδ相が析出し脆化を起
こすため、最低0.5%以上の添加が必要である。一
方、添加量が多くなると熱間加工性が悪くなり、バルブ
への成形が不可能になるためその上限を2.5%とし
た。
【0022】Fe:5〜15% Feは前述のPbO/PbSOによる高温複合腐食を
改善する効果を有する。また、合金のコスト低減の観点
からは必須の元素である。しかし、Feは高温強度の観
点からは積極的に添加する元素ではない。これまでの研
究の結果では、15%以上のFeの添加は高温強度を低
下させることが判明している。そこで、Feの上限を1
5%とした。また、添加量を5%以下にすると、高温複
合腐食が大きくなるばかりでなく、溶解原料として安価
なスクラップやW、Mo、Nb等のFeを含む安価な母
合金を多量に使用することができなくなり、製造コスト
が著しく高くなる。そこで下限を5%とした。
【0023】B:0.001〜0.02% Bは結晶粒界に偏析してクリープ強度を高めるほか、熱
間加工性を改善する効果を有する元素である。このよう
な効果が十分現れるためには0.001%以上の添加必
要である。しかし、過剰の添加は熱間加工性を害するた
め添加の上限を0.02%とした。
【0024】Zr:0.01から0.20% ZrはB同様粒界に偏析してクリープ強度を高める効果
を有する。このような効果が十分現れるためには0.0
1%以上の添加必要である。しかし、過剰の添加はクリ
ープ特性を害するため添加の上限を0.20%とした。
【0025】Mg:0.001〜0.03% Ca:0.001〜0.03% これらの元素は溶解時に脱酸、脱硫元素として添加され
る元素であり、Caは残留硫黄を硫化物として固定し、
熱間加工性を改善する効果がある。また、Mgはクリー
プ破断強度および延性を改善する効果を有する。しか
し、いずれの元素も添加し過ぎると熱間加工性を劣化さ
せるため、Mgについては0.001〜0.03%、C
aについては0.001〜0.03%の上限を設定し
た。
【0026】Ni:残 Niはマトリックスであるオーステナイトを形成する主
元素であり、耐熱性および耐食性を向上させる元素であ
る。また、析出強化相であるγ’相を形成する元素でも
ある。そこで、Niを残とした。この場合、Niの一部
をCoで置き換えても目標の特性を損なうことはない。
【0027】 Al+Ti+Nb+Ta:原子%で 6.0〜7.0% 前述したようにAl,Ti,NbおよびTaはγ’相の
構成元素である。したがって十分なNi量が存在する場
合、γ’相の析出体積率はこれら元素の原子%の総和に
比例する。 また、高温強度はγ’相の体積率に比例す
ることから、これら元素の原子%の総和に比例して高温
強度は増加する。しかし、γ’相の体積率が20%を越
えると熱間加工性が著しく低下する。そこで、これら元
素の総量の上限を7.0%に設定した。また、総量が
6.0%以下になると本発明が目的とする十分な強度を
発揮することができない。そこで下限を6.0%に設定
した。
【0028】V:0.2〜1.0% VはMoやWと同様にオーステナイト相に固溶し、固溶
強化によって高温強度を高める元素である。また、Cと
結合し安定なMC炭化物であるVCを形成し、炭化物の
安定化を図る。さらに、オーステナイト相の延性を高め
る効果がある。このような効果が現れるためには、0.
2%以上の添加が必要であり、1%を越えると逆に延性
が低下する。そこで添加量の上限を1.0%とした。
【0029】
【実施例】表1に示す本発明合金10種と比較合金4種
および従来材NCF751について、真空誘導炉溶解を
行い、30kgのインゴットに鋳造した。これらのイン
ゴットを1160℃で16時間ソーキング処理後、鋳肌
部を皮削りし、1160から900℃の温度範囲で鍛造
および圧延を実施して直径16mmの丸棒にした。
【0030】この丸棒に1050℃x30分/油冷の固
溶化熱処理を実施し、750℃x4hr/空冷の時効熱
処理を行った後、高温高速引張試験、高温引張試験、回
転曲げ疲労試験および高温腐食試験を行った。その結果
を表2に示す。
【0031】なお、合金12については鍛造時に割れが
発生、さらに合金15については圧延時に一部割れが発
生したため、これらの残材より試験片を採取し各種試験
を実施した。
【0032】1)高温高速引張試験 高温高速引張試験は、50℃間隔で800℃〜1250
℃の間で、50mm/sの引張速度で実施した。表1に
発明合金、従来合金および実験合金の高温高速引張試験
結果をもとに、バルブ傘部の鍛造加工に必要な60%以
上の絞が得られる加工温度範囲を示した。
【0033】これによると本発明合金、従来合金および
実験合金の13、14は250℃以上の良好な加工温度
範囲を有しているが、Al+Ti+Nb+Ta量が7.
0原子%よりも大きい合金12ではγ’相が多量に析出
し、加工温度範囲が150℃と小さく鍛造時に割れが発
生した。
【0034】また、熱間加工性を改善するBの添加を行
わなかった合金15も加工温度範囲が230℃と小さ
く、圧延時に一部に割れが発生した。さらに、Vを添加
した本発明合金10は発明合金の中で最も大きな加工温
度範囲を示した。
【0035】2)高温引張試験および回転曲げ疲労試験
結果 表1に850℃における引張試験結果および回転曲げ疲
労試験結果を示す。これによれば、本発明合金は従来合
金よりも0.2%耐力、引張強度および10回回転曲
げ疲れ強さが高いことがわかる。合金12は本発明合金
よりも高い強度を示しているが前述したようにγ’相析
出量が多いため熱間加工性が悪く鍛造時に割れが発生し
ている。また合金15は本発明合金と同程度の強度を示
しているが、前述したようにBの添加がないため熱間加
工性が悪く圧延時に割れが発生している。
【0036】また、比較合金13はAl+Ti+Nb+
Ta量が6.0以下のため析出γ’相が少なく従来合金
と同程度の強度しか示していないのがわかる。
【0037】3)高温腐食試験結果 高温腐食試験はPbOとPbSOを4対6の割合で配
合した混合灰を用い、920℃で1時間の腐食試験を行
った後、腐食減量を測定して行った。試験結果を表2に
示した。
【0038】これによれば本発明合金は従来合金に比べ
腐食減量が少なく高温腐食特性に優れているのがわか
る。一方Feの少ない比較合金14は、本発明合金と同
程度の熱間加工性および強度を示したが、高温腐食特性
は従来合金よりも劣っていることがわかる。
【0039】表1
【0040】表2
【0041】
【発明の効果】したがって、本発明においては従来の排
気バルブ用超合金Incone1751よりも高強度で
かつ耐食性に優れた排気バルブ用超合金を提供すること
ができ、高性能、高出力エンジンの排気バルブに適用し
て極めて有効である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】本発明の排気バルブ用合金は、重量%で C:0.01〜0.20% Si:2%以下 Mn:2%以下 Cr:15〜25% Mo+1/2W:0.5〜3.0% Nb:0.3〜3.0%(Nbの一部はTaで置き換え
    られる) Ti:1.5/3.5% Al:0.5〜2.5% Fe:5%〜15% Zr:0.01〜0.20% B:0.0010〜0.02% Ca:0.001〜0.03%、Mg:0.001〜
    0.03%の内、1種または2種原子%で Al+Ti+Nb+Ta=6.0〜7.0% 残:Ni(Niの一部はCoで置き換えられる) からなること特徴とする排気バルブ用合金
  2. 【請求項2】請求項1の排気バルブ用合金において、V
    を0.2〜1.0重量%含有させたことを特徴とする排
    気バルブ用合金
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