JPH0721288B2 - トルク伝達継手 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （利用分野） 本発明は、トルク伝達継手に関するものであり、原動軸
に従動軸、あるいは、前記原動軸に取付ける歯車，プー
リ等の回転体をトルク伝達状態に連結又は取付けるため
の継手として利用できる。

（従来技術及びその問題点） この種継手として、すでに、特願昭59−145505号（昭和
59年７月12日出願）を提案したが、本発明はこれの改良
に関するものである。

上記従来のものを、原動軸（10a）と従動軸（10b）とを
トルク伝達状態に連結する軸継手を例にとって説明する
と、この軸継手は、継手主体（１）の両端に軸線方向の
スリット（12），（12）を開削した締付筒（11）を形成
し、この締付筒の外周をテーパネジ部（13）とし、この
テーパネジ部に同様のテーパネジ（雌ネジ）を具備する
締付ナット（２）を螺合させたものである。この従来の
ものでは、原動軸（10a）及び従動軸（10b）を各別に締
付筒（11）に挿入し、締付ナット（２）を締付けると、
テーパネジ部のテーパ嵌合効果により、締付筒（11）と
各軸とが圧接され、この圧接部の摩擦力により、原動軸
（10a）→締付筒（11）→継手主体（１）→締付筒（1
1）→従動軸（10b）の経路でトルクが伝達される。

このものでは、軸継手の装着、取外しが簡便であること
から、前記出願以前の従来の軸継手にくらべて便利に使
用できる。

ところが、上記出願発明を実施した軸継手においては、
伝達トルクをあまり大きくできないという問題があっ
た。

この問題は、結論的には、テーパネジ部のネジ山形状と
して一般的なネジ山（頂角が60゜のもの）を採用してい
たことに基因する。

すなわち、締付ナット（２）の締付けによって締付筒
（11）が原動軸の外周面に圧接されるメカニズムは締付
筒（11）の肉厚にネジ山に付加した断面（第７図）を持
つコイル状の楔が締付ナット（２）と原動軸（10a）又
は従動軸（10b）の外周面に圧入される場合と同一視で
きる。元来、ネジは軸線方向の締付力を確保するために
用いられるもので、ネジ山の形状も軸線方向の係合力を
高めるために鋭角的なものとなり、この鋭角的なネジ山
を相互にかみ合せているから、前記における楔と締付ナ
ット（２）側との接触面が、楔圧入面に平行な面から、
大幅に傾斜したものとなり、この接触面における圧接力
が効果的に楔側に伝達されず、この圧接力伝達部にロス
が生じる。従って、前記の楔圧入力に相当する締付ナッ
ト（２）の締付力が、締付筒を原動軸又は従動軸に圧接
させる力（軸圧接力）に効率よく変換されないこととな
る。これが既述の問題点の主たる原因である。

（技術的課題） 本発明は、このような、回転軸に外嵌する締付筒（11）
の外周にテーパネジ部（13）を形成してこのテーパネジ
部（13）に締付ナット（２）をネジ嵌合させる形式のも
のにおいて、締付ナット（２）の締付トルクが効率よく
継手部の伝達トルクに変換されるようにするため、締付
ナット（２）のネジ嵌合部における半径方向の圧接力が
効果的に締付筒（11）側に作用するようにすることをそ
の課題とする。

（技術的手段） 上記技術的課題を解決するために講じた本発明の技術的
手段は、『締付けナット（２）の内周及び締付け筒（1
1）の外周に設けたテーパネジ部（13）のネジ山におけ
る圧力側フランク（14）のネジ軸線（Ａ）に対する角度
を10度〜30度程度に設定した』ことである。

（作用） 本発明の上記技術的手段は次のように作用する。

締付けナット（２）を所定のトルクで締付けると、締付
け筒（11）とはテーパネジ部（13）で嵌合しているか
ら、締付けナット（２）のネジ山のフランクが相手側の
締付け筒（11）のフランクに圧接される。一般的には、
ネジ山の山部と、谷部に僅かの余裕（所謂バックラッシ
ュ）があることから、ネジ山の進み側フランク相互、つ
まり、圧力側フランク（14）（14）相互が他方の遊び側
フランク相互に比べて強く圧接される。

この圧力側フランク（14）の傾斜角度（ネジ軸線（Ａ）
に対する角度）が10度〜30度程度に設定されている。こ
の角度は通常のネジ山のそれに比べて大幅に小さいこと
から、締付けナット（２）を締付けたときの前記圧力側
フランク（14）（14）相互の圧接力の方向は、ネジ軸線
（Ａ）（回転軸の軸線）に対して直角な方向に近づいた
ものとなる。従って、通常のネジ山や、圧力側フランク
（14）の上記角度がネジ軸線に対して直角なノコ歯状ネ
ジ山の場合に比べて圧力側フランク（14）（14）相互の
圧接力が軸圧接力に効果的に交換されることとなる。

（効果） 締付けナット（２）を締付けることによって生じるネジ
山の圧力側フランク（14）（14）相互の圧接力が効果的
に軸圧接力に変換されるから、一般的なネジ山や圧力側
フランク（14）の傾斜角度が直角に近いノコ歯状のネジ
山の場合に比べて締付けナット（２）の締付けトルクが
同じであっても、伝達トルクが大きくなる。又、締付け
ナット（２）の締付けトルクの殆ど（ネジ嵌合部の抵抗
力を差し引いたトルク）が締付け筒（11）による軸締付
け力に効率的に変換されるから、締付けナット（２）の
締付けトルクの軸締付け力への変換効率が高いものとな
る。

更に、テーパネジ（13）相互の対偶によって軸締付け力
を発揮させるものであるから、締付けナット（２）の締
付け力を増大させるに従って、締付け筒（11）による軸
締付け力を確実に増大させられ、所定の軸締結力を得よ
うとする場合にその取扱が簡単で且操作性が良い。

本発明の実施態様は圧力側フランジ（14）の反対側のフ
ランクとネジ軸線との角度をも小さく設定し、フランク
相互の角度を鈍角に設定したことである。

この実施態様によれば、締付ナット（２）と締付筒（1
1）のネジ山の進み側のフランク相互の圧接力（圧力側
フランクと反対側のフランク相互の圧接力）も軸線に直
角な方向に近似するから、圧力側のフランクの圧接力と
ともに効果的に軸締付力に変換され、一層伝達トルクが
大きくなる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を第１図〜第５図に基づいて説明
する。

第１図，第２図に示す第１実施例は、ユニバーサルジョ
ントの一種であるベロー継手に実施したもので、継手主
体（１）としてのベローの両端に外周面にテーパネジ部
（13）を形成した締付筒（11）を連設し、この締付筒部
に４つの軸線方向のスリット（12），（12）を開削する
とともに同様のテーパネジ部（13）を有する締付ナット
（２）をそれぞれの締付筒部に外嵌螺合させたものであ
る。

また、この締付筒部及び締付ナットに形成したテーパネ
ジ部（13），（13）は第２図の如く圧力側フランク（1
4）がネジ軸線（Ａ）に対して10度〜20度傾斜した逆ノ
コ歯ネジとしてある。

この実施例のものでは、締付ナット（２）を締付筒（1
1）に螺合させて締付けると、ネジ山相互が上記傾斜角
度（10度〜20度）に相当するかみ合いで締め込まれ、最
終締付状態において締付ナット（２）側から締付筒（1
1）の外周に作用する圧接力の大部分は圧力側フランク
相互の圧接を介して伝達される。従って、既述した楔効
果による圧接力（Ｐ）の方向は、ネジ軸線すなわち、原
動軸（10a）又は従動軸（10b）の軸線に直角な方向に対
して10〜20度の角度ズレがあるだけとなる。

次に、第３図に示す第２実施例のものは、回転体の一種
としての歯車（３）に第１実施例の締付筒部と同様の締
付筒（11）を連設し、この締付筒に締付ナット（２）を
螺合させるようにしたもので、この場合には、テーパネ
ジ部（13）のネジ山を、第４図のようにネジ山角度を鈍
角に設定してある。

この第２実施例のものでは、実施態様の項において既述
したように、一層伝達力が向上する。

この第２実施例のネジ山角度は締付ナット（２）と締付
筒（11）とがかみ合うかぎり大きい程伝達トルクが大き
くなる。

例えば、第４図の各値を同じにしてネジ山角度を60度,1
20度,150度に設定し、このネジ山がネジ軸線に対して垂
直方向に形成されたものについて比較したところ、次の
結果が得られた。

但し、締付ナットの締付トルクは40kgmとする。

このことから、上記した、ネジ山角度を大きくしたこと
による効果が、実証できるとともに、ネジ山角度が一定
以上になると、締付ナット（２）の締付トルク以上の伝
達トルクが生まれることが明らかである。

従って、例えば、150度のネジ山角度とした場合には、
締付ナット（２）を仮り締めするときに主体側を保持す
る必要があるが、最終締付時には保持しなくてもすべり
が生じないこととなり、締付ナット（２）が締付やすく
なる。

また、ピッチ一定の条件下では、ネジ山角度が大きくな
るにつれて、締付筒（11）の断面におけるネジ山高さが
その分低くなり、ネジ山の谷底から締付筒（11）の内周
面までの肉厚（実質肉厚）を厚く設定できる。言い換え
れば、同一寸法の締付筒（11）にテーパネジ部（13）を
加工する場合を考えれば、前記理由から、締付筒（11）
の実質肉厚を厚くできることとなり、この部分の強度が
増し、この点で有益である。すなわち、締付ナット
（２）の外径を小さくしても所定の伝達トリクが得られ
ることとなる。

上記第２実施例では、ネジ山がネジ軸線に対して直立す
るようにしたが、これを第５図の如く、テーパ面に対し
て直立する構成としてもよい。この場合も上記実施例と
同様の効果が得られた。

また、本発明のトルク伝達継手は、上記のように、軸継
手や回転体固定具等の軸との連結又は取付部に使用でき
るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１実施例の分解断面図，第２図はテ
ーパネジ部（13）の拡大図，第３図は第２実施例の使用
状態の断面図，第４図はこの場合のテーパネジ部（13）
の拡大図，第５図はテーパネジ部（13）の他の変形例の
拡大図，第６図は従来例の説明図，第７図は楔作用説明
用の断面図であり、図中 （１）……継手主体、（11）……締付筒 （12）……スリット、（13）……テーパネジ部 （14）……圧力側フランク

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸に外嵌する締付け筒（11）の外周に
   テーパネジ部（13）を形成してこのテーパネジ部（13）
   に締付けナット（２）をネジ嵌合させる形式のトルク伝
   達継手において、締付けナット（２）の内周及び締付け
   筒（11）の外周に設けたテーパネジ部（13）のネジ山に
   おける圧力側フランク（14）のネジ軸線（Ａ）に対する
   角度を10度〜30度程度に設定したトルク伝達継手。
2. 【請求項２】圧力側フランク（14）の反対側のフランク
   とネジ軸線（Ａ）との角度をも10度〜30度程度に設定し
   た特許請求の範囲第１項記載のトルク伝達継手。
3. 【請求項３】締付け筒（11）に先端に向かって開放する
   軸線方向のスリット（12）を形成した特許請求の範囲第
   １項又は第２項に記載のトルク伝達継手。