JPH07207414A - アルミ鍛造金型用鋼 - Google Patents

アルミ鍛造金型用鋼

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JPH07207414A JP1791094A JP1791094A JPH07207414A JP H07207414 A JPH07207414 A JP H07207414A JP 1791094 A JP1791094 A JP 1791094A JP 1791094 A JP1791094 A JP 1791094A JP H07207414 A JPH07207414 A JP H07207414A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 遷移温度以下で靭性、特に耐疲労特性に優れ
た金型表面温度が200℃以下で使用するアルミ鍛造金型
用鋼を提供する。 【構成】 金型表面温度が200℃以下で使用するアルミ
鍛造金型用鋼であって、重量%で、C 0.25〜0.60%、S
i 1.50%以下、Mn 1.5%以下、Cr 3.50〜5.65%、WとM
oの1種または2種を1/2W+Moで0.2〜4.0%、V 0.05
〜2.0%を含有し、かつSi,Cr量がSi<(18.7/Cr)-3.3
の関係式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物から
なり、焼入れ焼戻し硬さが46HRC以上、かつ常温の衝撃
値が4.8kgfm/cm2以上であることを特徴とするアルミ鍛
造金型用鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウムまたはア
ルミニウム合金(以下代表してアルミと記す)の鍛造に
用いられる金型鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年車輛軽量化のニーズの高まりによ
り、高比強度の部品が求められるようになり、アルミの
鍛造部材の適用が広がってきた。アルミの冷間・熱間鍛
造用の金型材としては、比較的小寸法の金型や特殊形状
金型を除いては、従来SKT4・SKD61などが使用
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】アルミ鍛造は、鉄系熱
間鍛造やアルミダイカスト型に比べ被加工の素材温度が
常温から高くても550℃と低いため、ヒートトラック、
塑性流動、摩耗のような型材の昇熱に起因する損耗はお
こらず、金型凹部底のR部で応力集中が発生するコーナ
・クラックにより廃却にいたる。そのため、型材の昇熱
に起因する損耗の抑制を主眼にした従来の熱間工具鋼で
は、耐コーナークラック性という面で十分効果を発揮で
きるものとはいえなかった。
【0004】フェライト・パーライト鋼、マルテンサイ
ト系鋼など一般の熱間工具鋼には100℃〜200℃付近に延
性脆性遷移温度(以下、単に遷移温度という)があること
は周知のとおりである。アルミ鍛造においては、特に被
加工素材の温度が低く、鍛造作業中に型材の自然昇温が
おこり難い大寸法金型では遷移温度以下で衝撃を受ける
ため、特に型材の硬さが46HRC以上の場合は靭性低下に
伴う疲労寿命の低下が顕著になる。本発明は、比較的低
温側で使用され、高硬度でありながら高靭性を有し、疲
労寿命の高いアルミ鍛造用鋼を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】先に述べたように、アル
ミ鍛造用型材は比較的低温で鍛造が行なわれるため、金
型の彫込み深さが深く、型底のコーナーR形状の曲率半
径が小さい部分にクラックが発生する。本発明者が多数
の廃却金型を調査した結果、アルミ鍛造用型材の主な廃
却原因はコーナークラックの発生が低サイクル疲労とし
て分類される疲労破壊であることを見いだした。疲労破
壊を防止する第1の手段は、高硬度化することである
が、例えば圧縮応力を受けるパンチ型などは60HRC以上
の高硬度域まで硬さを上げれば上げるほど疲労寿命は向
上する。しかし、一般にコーナーR部を有する金型の場
合、引張の応力集中が作用するため、46HRC以上になる
と、靭性不足によって逆に疲労寿命は低下する。第2の
手段は、高硬度を維持しつつ靭性の向上を図ることであ
るが、一般に熱間工具鋼をアルミ鍛造用として使用する
場合には、特に遷移温度以下の靭性不足が問題になる。
【0006】例えば、SKT4に代表される焼入強化型
鋼では、46HRC以上を得ようとすると、残留オーステナ
イトの分解により新たに生成したマルテンサイトの焼戻
しが完全でないため、靭性が低くなる。また、SKD6
1に代表される析出強化型鋼は、積極的な2次硬化をね
らうため、焼戻し温度が550℃以上でも46HRC以上の硬さ
が得られるので、残留オーステナイトの分解が進んで内
部歪の少ない安定した組織となり靭性が向上する。しか
し、これらの析出強化型鋼は、焼戻し温度が550〜600℃
間に存在するピーク硬さ(55HRC前後)付近でMC,M2
C型の微細炭化物が高密度に析出し、その影響はMC,
2C型炭化物が分解して完全にM73,M236型炭化
物になる46HRC程度の硬度域まで及ぶ。そのため、さら
に靭性を高めることができない問題があった。本発明者
が、特に遷移温度以下の硬さと靭性を共に高める方法に
ついて検討したところ、炭化物分布密度の制御にSi,
Crの含有量の関与が極めて大きく、かつSi量はCr量
によって制御する必要があることがわかった。
【0007】ところで、Si含有量を低く限定して合金
鋼の靭性を高める効果については、特開昭60-56055号、
同60-59053号、同61-213348号でも開示されている。し
かし、これらには、本発明で特定した組成範囲でHRC46
以上としたときの疲労特性についての記述はなく、また
Cr量との関係でSi量を限定する記述もない。また、特
開平4-308059号、特願平5-140695号にはSi<(18.7/
Cr)-3.3の関係式が規定されているが、前者はアルミ
鍛造用型材のような低温加工による型材に要求される特
性とSiとCrの関係が明らかでなく、ダイカストや熱間
プレス鍛造のように型材の表面温度が300℃以上を対象
とした熱間工具鋼である。後者も、アルミ押出ダイスへ
の適用に限定した鋼であり、アルミ押出ダイスは通常40
0℃以上に保持して使用することを前提としたものであ
り、いずれも金型使用温度域は、遷移温度以上を対象と
する。
【0008】これに対して本発明の金型用鋼は遷移温度
以下の200℃以下という温度で使用する金型を対象と
し、上記のダイカストや熱間プレス鍛造あるいはアルミ
押出とは損耗形態が異なり、型材に要求される特性も相
違する金型を対象とするものである。すなわち本発明
は、靭性の不足が顕著となる延性脆性遷移温度以下の使
用温度域での靭性を向上させるため、Si,Cr量を御
制しアルミ鍛造用金型に必要な200℃以下耐疲労特性の
向上を目的としたものである。
【0009】本発明は具体的には、金型表面温度が200
℃以下で使用するアルミ鍛造金型用鋼であって、重量%
で、C 0.25〜0.60%、Si 1.50%以下、Mn 1.5%以下、
Cr 3.50〜5.65%、WとMoの1種または2種を1/2W+
Moで0.2〜4.0%、V 0.05〜2.0%を含有し、かつSi,Cr
量がSi<(18.7/Cr)-3.3の関係式を満足し、残部Feお
よび不可避的不純物からなり、焼入れ焼戻し硬さが46HR
C以上、かつ常温の衝撃値が4.8kgfm/cm2以上であること
を特徴とするアルミ鍛造金型用鋼である。好ましくは、
金型表面温度が200℃以下で使用するアルミ鍛造金型用
鋼であって、重量%で、C 0.35%を越え0.50%以下、Si
1.00%以下、Mn 1.5%以下、Cr 4.35〜5.65%、WとMo
の1種または2種を1/2W+Moで0.5〜3.5%、V 0.2〜
1.5%を含有し、かつSi,Cr量がSi<(18.7/Cr)-3.3の
関係式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からな
り、焼入れ焼戻し硬さが46HRC以上、かつ常温の衝撃値
が4.8kgfm/cm2以上であることを特徴とするアルミ鍛造
金型用鋼である。さらに必要に応じて、Feの一部をNi
1.5%以下、Co 5.0%以下の範囲で単独または複合して
置換することができる。
【0010】
【作用】次に本発明の成分範囲の限定理由について述べ
る。Cは、本発明鋼の優れた焼入性、焼戻し硬さ、およ
び高温硬さを維持し、またW、Mo、V、Crなどの炭化
物形成素材と結合して炭化物を形成し、結晶粒の微細化
効果と硬さを与える効果を有する。また、アルミ鍛造金
型用鋼としてCの重要な作用は、耐力を高めてコーナー
R部底の局部的塑性変形を起こりにくくすることであ
る。低すぎると上記の効果が得られず、また多すぎると
過度の炭化物の析出をまねき靭性を低下させるのでCの
範囲を0.25〜0.60%とする。望ましくは、0.35%を越え0.
50%以下であり、より望ましくは0.35%を越え0.45%未満
である。Siは、本発明鋼の特徴である46HRC以上の高い
硬さで高い靭性値を得るために1.50%以下添加する。Si
の望ましい範囲は1.0%以下である。詳細にはCr量の説
明の欄でまとめて述べる。なお、Siは切削性を高める
効果があり、複雑な金型の場合には0.1%以上が望まし
い。
【0011】Mnは、焼入性を向上させるが、多すぎる
とA1変態点を低下させ、焼なまし硬さを過度に高く
し、被切削性を低下させるので1.50%以下とする。望ま
しいMnの範囲は0.1〜1.50%である。Crは、適正な添加
量の設定により、MCやM2C(特殊)炭化物の生成を
抑制して靭性の低下を防止させるとともに、M73,M
236炭化物の形成を促進させて46HRC以上のピーク硬さ
を得、さらに焼入性の向上にも効果を有するため、3.50
%以上添加する。ただし、Crは本発明鋼のように46HRC
以上の高い硬さに焼入れ焼戻しして使用する用途の場
合、同時に高い靭性値を確保するためにはその含有量を
制限する必要がある。これは以下に述べる作用に基づく
ものである。
【0012】本発明鋼のように46HRC以上の高い硬さに
焼入焼戻しを施して使用される用途である場合には、焼
戻し温度は630℃より低くなるが、この温度域では焼戻
しによって基地中に極く微細に析出する特殊炭化物の分
布密度が極めて大きいので基地の靭性が著しく低下す
る。一方、Cr,Siは特殊炭化物が析出する温度よりも
低い450℃前後の温度で特殊炭化物の析出に先立って析
出するセメンタイト炭化物の析出を抑える作用があるの
で、逆にCr,Siの含有量を抑えることによってセメン
タイト炭化物を適量析出させることができて、基地の靭
性を低下させる特殊炭化物の分布密度を抑えることが可
能となる。このため、Si量は1.00%以下、Cr量は5.65%
以下とするが、CrとSiは上記の作用に複合的に作用す
るため、アルミ鍛造金型用鋼として必要な靭性値を得る
べく、Si<(18.7/Cr)-3.3%の関係式を満たすように添
加する。この関係式からも判るようにCr含有量を多く
したい場合(例えばCr>5.5%)には、Si量を0.1%以下と
しなければならない。
【0013】アルミ鍛造金型用鋼の場合には特に以下に
述べる2つの理由でCr量の設定が必要である。 (1) Cr量を多くしすぎると、焼戻しで析出した炭化
物の加熱時の凝集抵抗が小さくなりすぎ、特に旧オース
テナイト粒界で炭化物の粗大化がすすみやすくなる。こ
の理由からCr量は、他の合金元素量とのバランスで、
5.65%以下とする。 (2) Cr量を少なくすると、ベイナイト変態が短時間
側に移動するため焼入れ冷却時の冷却速度が遅い場合に
は200〜400℃の温度域を通過する際にベイナイトノーズ
にかかりやすくなるため、大寸法金型に適用しにくい。
ベイナイト組織が存在するようになると、遷移温度以下
の靭性低下を著しくする。この理由からCr量は、他の
合金量とのバランスで最低3.50%とする。Crの望ましい
範囲は、4.35〜5.65%であり、より望ましくは4.50〜5.6
5%である。
【0014】W,Mo量の設定は本発明鋼の場合、焼戻
し炭化物の凝集抵抗を遅くすることで、焼戻し時の旧オ
ーステナイト粒界での炭化物粗大化を抑制し、靭性劣化
を防ぐ。ただし、過度の添加は特殊炭化物の析出、焼入
冷却時に起こるオーステナイト粒界析出を招きやすくな
るため、かえって靭性が低下するので、焼入れ焼戻し条
件に応じて、1種または2種を1/2W+Moで0.2〜4.0%
添加する。望ましい範囲は0.5〜3.5%であり、より望ま
しくは1.0〜3.5%である。Vは焼入加熱時に未固溶の炭
化物を残留させ、オーステナイト粒界のピン止め効果を
有し、結晶粒の粗大化を防止して焼戻し時にPの粒界偏
析によっておこる高温焼戻し脆性を防止する。Vを過度
に添加すると凝固偏析が顕著となり、熱間加工方向に沿
う紐状炭化物の分布傾向を増大化させ、その方向のクラ
ック進展を助長するため2.0%以下とする。低すぎると上
記添加の効果が得られないので、0.05%以上とする。望
ましくは0.2〜1.5%であり、より望ましくは0.5〜1.0%で
ある。
【0015】NiはC, Cr, Mn, Mo, Wなどとともに
本発明鋼に優れた焼入性を付与し、緩やかな焼入冷却速
度の場合にも、マルテンサイト主体の組織を形成させ、
靭性の低下を防ぐ効果があり、また基地中に固溶したN
iは本質的な靭性向上に寄与するため、必要に応じて添
加する。Niは上記効果を有する反面、多すぎるとA1
態点を過度に低下させ、へたり寿命の低下をまねき、焼
なまし硬さを過度に高くして機械加工性を低下させるの
でNiを添加する場合には1.5%以下とする。Coは、使用
中の昇温時に、きわめて緻密で密着性の良い保護酸化皮
膜を形成しこれにより相手材との間の金属接触を防ぎ、
金型表面の温度上昇を防ぐとともに優れた耐摩耗性をも
たらすため必要に応じて添加する。ただし、この酸化皮
膜は厚くなりすぎると金型表面の肌あれをまねき逆効果
となるが、Coは酸化皮膜の形成速度や厚みを抑える効
果を持つ。本発明鋼のようにSi量の少ない鋼の場合酸
化皮膜が厚くなり過ぎるため、Coを添加することは、
保護酸化皮膜の特性の向上に特に有効である。Coは上
記効果を付与するために添加するが、多すぎると靭性を
低下させるので5.0%以下とする。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例に基づき詳細に説明す
る。表1に示す組成の金型用素材を準備し、これから図
3に示す金型を製作し、被加工材をJIS 6061のアルミニ
ウム合金とし、常温で実用テストを行った。直径が90mm
丸、高さ30mmの金型に概略15mm幅、65mm長さ、15mm深さ
の直方体形を作るように形彫がなされており、型中央部
にはノックアウト用の8mm丸のピン穴があいている。パ
ンチはSKH51で硬さ60HRCのものを使用し、金型形
状にはまり込むように加工している。寿命評価は、下型
のコーナーR部(曲率半径2mm)に発生するクラック
が、被加工材に転写して高さ1mmなるまでのショット数
で行った。なお、金型は意図的に加熱は行わず、2秒間
に1ショットで内圧が70Kgf/mになる条件で鍛造を行っ
た。表1において、No.1ないし20は本発明鋼であり、
No.31ないし38のうち、No.31はJIS SKD61で
あり、No.32〜38は、Si含有量を各レベルとするが、
Si<(17.8/Cr)-3.3を満足しないものである。
【0017】
【表1】
【0018】熱処理は金型に荒加工した後、1020℃加熱
後、200℃以下まで放冷する空冷焼入後、焼戻し温度を
変えて、表2に示すように48HRCから53HRCの各硬さとな
るごとく焼戻しを行った。同時に金型と同寸法の試料で
熱処理を行った試料から割りだした試験片でシャルピー
衝撃試験を行った。試験片は2mm深さのUノッチ試験片
(JIS3号試験片)である。これは、実際の金型と通
常の試験片での熱処理では、焼入れの冷却時に金型の冷
却速度の方が試験片の冷却速度よりも大幅に小さくな
り、またこの種の鋼の靭性値は焼入時の冷却速度の影響
を受けやすいので、金型と同寸法の試料に熱処理を施し
て、衝撃試験片を行なう必要があるためである。金型は
放電加工後表面の加工影響層をショットブラストによっ
て除去した。なお、窒化、浸炭等の表面硬化処理は行わ
なかった。
【0019】
【表2】
【0020】表2に、これらの金型の耐久寿命となるク
ラックの発生回数と、設定寿命(クラック開口部が徐々
にかけ落ちて被加工材に転写されたバリの高さが1mmに
なるショット数)、並びにシャルピー衝撃値を示す。こ
のクラックの発生部位は図1中の3に示されるコーナー
R部で、パンチ負荷方向に対し45℃をなし、金型側面側
へ伸びる。
【0021】本発明No.1ないし20で作成した金型は、
比較鋼No.31ないし38に比べ、クラック発生ショット
数、設定寿命ともに2〜9倍の長寿命化を示している。
またこの寿命の大小関係は、通常疲労寿命の大小を決め
ると言われている硬さよりも、シャルピー衝撃値に依存
していることがわかる。これは、黒島ら日本機会学会論
文集A56巻529号論文No.89-1390B (1990)にも述べられ
ているように、40〜50HRC以下の硬さでは、引張疲労寿
命は硬さ(強度)による依存性が大きいが、それ以上に
なると切欠感受性(靭性)による依存性が大きくなるた
め、このような結果となったことが推察される。これら
の論文は、この高硬度域での靭性依存要因を介在物に求
めているが、本発明では鋼中の母相の炭化物種類・分布
を改質しているためであることも確認した。
【0022】図2に示す組織写真は、本発明鋼No.9と
比較鋼No.31であり、抽出レプリカ法による電子顕微鏡
組織である。黒色部は炭化物析出の密度の高いところで
ある。比較鋼No.31は基地中に微細なMCやM2C炭化
物が過剰に存在しているが、本発明鋼No.9の基地には
MCやM2C析出物が少ないために炭化物の分布に不均
一性が生じ、靭性向上を受け持つ、炭化物の少ない場所
と強度維持を受け持つ炭化物密度の多い微細複合組織と
なっている。そのため、写真上のコントラストも強く、
優れた強度と靭性の向上が発現したものと推察される。
これらの組織発現と最も相関の深いと考えられるCr,
Si量の設定のために行った実験結果を図1に示す。高
Si、高Cr側では靭性が低く、低Si、低Cr側では
靭性が高い。またシャルピー値4.0を越えるものと、4.0
以下を回帰計算で分別すると、Si=(18.7/Cr)-3.3
の境界線を引くことができる。
【0023】前述したようにCrは焼入性を向上させる
元素であるので、焼入性が問題となる大寸法の鋼につい
ては、多めに添加する。しかし、この場合、「作用」の欄
で述べたように焼戻し炭化物の析出分布、および挙動に
影響するため、これに応じてSi量を設定する必要が生
じる。図1に示す通り、焼戻し硬さ48.5HRC以上とした
場合、Cr,Si量がともに高い場合の衝撃値は低い。そ
の一例が比較鋼No.32である。またCr量が高い場合、
比較鋼No.34がそうであるようにSi量が低めであって
も衝撃値の低下をまねくのに対し、Cr量が比較的低い
場合は、本発明鋼No.6のように、ある程度のSiを含有
しても衝撃値は高い。さらに過度のSi量低減は、金型
の切削加工の低下をまねくため、上記靭性の影響を配慮
して必要とされるCr量に応じて、重量%でSi<(18.7/
Cr)-3.3を満たす程度に設定するとよい。
【0024】
【発明の効果】以上に記述したように、本発明の金型表
面温度が200℃以下で使用するアルミ鍛造金型用鋼は、
靭性を改善することにより46HRC以上の高硬度域での耐
疲労特性を向上させ、コーナー部の応力集中によるクラ
ック発生を抑制し、金型寿命を向上させることで、アル
ミ鍛造製品の製造コストの低下に寄与することができ、
工業上の効果が非常に大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明鋼No.1〜20と比較鋼No.31〜38をそれ
ぞれ空冷焼入れ後、焼戻し硬さ48.5〜53にしたときのシ
ャルピー衝撃値を各鋼のSi,Cr量で整理した図であ
る。
【図2】本発明鋼No.9と比較鋼No.31のそれぞれ空冷焼
入後焼戻し硬さ50〜52HRCにした時の金属組織写真であ
る。
【図3】実用テスト用に供した金型形状の一例を示す図
である。
【符号の説明】
1 金型、2 パンチ、3 クラック発生部、4 ノッ
クアウトピン穴

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金型表面温度が200℃以下で使用するア
    ルミ鍛造金型用鋼であって、重量%で、C 0.25〜0.60
    %、Si 1.50%以下、Mn 1.5%以下、Cr 3.50〜5.65%、
    WとMoの1種または2種を1/2W+Moで0.2〜4.0%、V
    0.05〜2.0%を含有し、かつSi,Cr量がSi<(18.7/C
    r)-3.3の関係式を満足し、残部Feおよび不可避的不純
    物からなり、焼入れ焼戻し硬さが46HRC以上、かつ常温
    の衝撃値が4.8kgfm/cm2以上であることを特徴とするア
    ルミ鍛造金型用鋼。
  2. 【請求項2】 金型表面温度が200℃以下で使用するア
    ルミ鍛造金型用鋼であって、重量%で、C 0.35%を越え
    0.50%以下、Si 1.00%以下、Mn 1.5%以下、Cr 4.35〜
    5.65%、WとMoの1種または2種を1/2W+Moで0.5〜
    3.5%、V 0.2〜1.5%を含有し、かつSi,Cr量がSi<(1
    8.7/Cr)-3.3の関係式を満足し、残部Feおよび不可避
    的不純物からなり、焼入れ焼戻し硬さが46HRC以上、か
    つ常温の衝撃値が4.8kgfm/cm2以上であることを特徴と
    するアルミ鍛造金型用鋼。
  3. 【請求項3】 Feの一部をNi 1.5%以下で置換する請
    求項1または2に記載のアルミ鍛造金型用鋼。
  4. 【請求項4】 Feの一部をCo 5.0%以下で置換する請
    求項1ないし3のいずれかに記載のアルミ鍛造金型用
    鋼。
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