JPH07205828A - 車両横速度検出装置 - Google Patents

車両横速度検出装置

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JPH07205828A
JPH07205828A JP571394A JP571394A JPH07205828A JP H07205828 A JPH07205828 A JP H07205828A JP 571394 A JP571394 A JP 571394A JP 571394 A JP571394 A JP 571394A JP H07205828 A JPH07205828 A JP H07205828A
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Yoshiki Fukada
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Abstract

(57)【要約】 【目的】ヨーレートγと車両前後速度Vx との積から横
加速度Gy を引いた値の時間積分値を2自由度平面モデ
ルを想定した場合の理論横速度VyMで補正して実際の車
両横速度Vy を検出することにより、センサ値の積分誤
差による車両横速度Vy の精度低下を抑制する。 【構成】各センサ20〜24がGy ,γおよびVx を検出
し、コンピュータ30が(γ・Vx −Gy )を積分するこ
とによって実横速度Vy を演算する。一方、センサ26が
実舵角δを検出し、コンピュータ30が、そのδおよびV
x に基づき、2自由度平面モデルの下車両が定常円旋回
状態にあると仮定した場合の理論横速度V yMを演算す
る。そのVyMでVy を補正することによって最終的なV
y を求め、それをVx で割ることによって車両重心点に
おけるスリップ角βを求め、さらに、そのスリップ角β
とタイヤ横力Fの関係から路面の摩擦係数μを推定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の横速度を検出す
る装置に関するものであり、特に、その検出の精度を向
上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両の挙動推定や路面の摩擦係数推定な
どのために車体の重心点におけるスリップ角を検出する
ことが既に行われている。スリップ角の検出方式として
は例えば、車両の前後速度と横速度とをそれぞれ検出
し、横速度Vy を前後速度Vx で割ることによってスリ
ップ角β(=Vy /Vx )を検出する方式が既に存在す
る。そして、この方式では、前後速度の検出は比較的容
易であるが、横速度の検出は比較的困難である。横速度
については、車輪の回転を利用した車速センサでの検出
が不可能だからである。
【0003】横速度の検出方式として、波のドップラ効
果または空間フィルタの原理を利用した対地速度センサ
で検出する方式が既に知られているが、センサが比較的
高価であるという問題がある。
【0004】また、別の検出方式として、特開昭62−
83247号公報に記載されているように、車両ヨーレ
ートγと前後速度Vx と車両重心点における横加速度G
y とをそれぞれセンサで検出し、ヨーレートγと前後速
度Vx との積から横加速度G y を引いた値を時間tに関
して積分することによって横速度Vy を検出する方式も
既に存在する。これはすなわち、 Vy =∫(γ・VX −Gy )dt なる式を用いて横速度Vy を検出する方式である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この公報に記
載の検出方式には次のような問題がある。すなわち、こ
の検出方式では、センサによる各検出値がそのまま積分
されるため、各検出値に誤差が存在する場合にはその誤
差も積分されてしまう。そのため、その誤差が例えば、
センサの取付角度誤差等の定常的な誤差である場合に
は、時間の経過につれて誤差が累積されてしまい、横速
度の検出精度が低下するという問題があるのである。
【0006】この問題を解決するために本出願人は先に
次のような提案をした。すなわち、先の検出方式と各検
出値を積分する点では共通するが、先の検出方式とは異
なり、時間の経過につれて各センサで取得される複数の
生の検出値を単純に積分した場合に取得される横速度で
ある仮想横速度を定常成分と変動成分とに分解した場合
に変動成分の影響の方が定常成分の影響より相対的に大
きく横速度の検出値に現れるように生の各検出値を積分
する方式を提案したのである。この具体例については実
施例で詳述する。この提案した検出方式によれば、生の
各検出値に定常誤差が存在しても、その定常誤差の影響
が現れないようにして横速度を検出可能となり、各セン
サの検出誤差の累積による横速度の検出値の発散が回避
される。
【0007】しかし、この提案した検出方式にも問題が
ある。すなわち、この検出方式では、前記仮想横速度に
定常成分を生じさせた原因のいかんを問わず一律にその
定常成分を抑制するため、真の横速度が定常的である場
合であってセンサに定常誤差がない場合にも仮想横速度
の定常成分が抑制されてしまい、常には横速度を精度よ
く検出することが困難であるという問題があるのであ
る。
【0008】以上要するに、車両状態量の各検出値の積
分によって検出された横速度を用いるのみでは横速度を
常に精度よく検出することが困難なのであり、請求項1
の発明は、車両状態量の検出値を積分して横速度を推定
することのみならず車両状態量の検出値に基づいて積分
なしで横速度を推定することをも行い、それら両推定値
を総合的に用いることにより、各センサの定常誤差とは
無関係に横速度を常に精度よく推定可能とすることを課
題としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】その課題を解決するため
に請求項1の発明は、車両横速度検出装置を、(a) 車両
の重心点における横加速度を検出する横加速度センサ
と、(b) 車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ
と、(c) 車両の前後速度を検出する前後速度センサと、
(d) 車両の舵角を検出する舵角センサと、(e) 前後速度
の検出値とヨーレートの検出値との積から横加速度の検
出値を引いた値を時間に関して積分することによって車
両の実横速度の基本値を推定し、前後速度の検出値と舵
角の検出値とに基づき、車両が定常円旋回状態にあると
仮定した場合の車両の理論横速度を推定し、それら推定
した実横速度の基本値と理論横速度とに基づいて車両の
実横速度の最終値を推定する処理手段とを含むものとし
たことを特徴とする。
【0010】
【作用】車両が定常円旋回状態にある場合には、前後速
度と舵角と横速度との間に一定の関係が成立し、この関
係においては、前後速度および舵角の積分なしで横速度
を誘導することができる。センサの検出値に定常誤差が
存在してもそれが累積されない横速度を誘導することが
できるのである。
【0011】このように、各検出値の積分なしで車両の
理論横速度を推定可能であり、この理論横速度は各セン
サの定常誤差の影響を受け難いという利点がある反面、
車両が実際には定常円旋回状態にはない場合には十分に
は精度よく真の横速度に一致せず、また、タイヤのコー
ナリング特性が非線形領域にある場合にも十分には精度
よく真の横速度に一致しないという欠点がある。これに
対し、各検出値を積分して取得される実横速度は、各セ
ンサの定常誤差の影響を受け易いという欠点があるもの
の、各センサの定常誤差がない状況下では、車両が実際
に定常円旋回状態にあるか否かを問わず十分に精度よく
真の横速度に一致するという利点がある。
【0012】以上要するに、それら実横速度と理論横速
度とは一方の欠点を他方の利点とする関係にあるのであ
り、請求項1の発明に係る車両横速度検出装置において
は、それら実横速度と理論横速度とを総合的に用いて相
互に欠点を補うことにより、車両の実横速度の最終値が
推定される。具体的には、例えば、基本実横速度がそれ
の前記仮想横速度が定常的である状態では時間の経過に
つれて緩やかに減衰するように推定され、そのようにし
て推定された基本実横速度が、時間の経過につれてゼロ
に向かって減衰するのではなく、理論横速度に向かって
減衰するように補正され、その結果値が最終実横速度と
される。また、基本実横速度が、それと同じ時期に推定
された理論横速度との平均的な値に補正され、その結果
値が最終実横速度とされる。
【0013】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1の発明によれば、積分過程を経て推定される基本実横
速度と積分過程を経ることなく推定される理論横速度と
の双方を用いて最終実横速度が検出されるため、その検
出値がセンサの定常誤差の影響を受け難くなり、横速度
の検出精度が向上するという効果が得られる。
【0014】
【発明の望ましい態様】以下に請求項1の発明の望まし
い態様のいくつかを列挙する。 (1) 請求項1の発明であって、それの処理手段が、前後
速度の検出値とヨーレートの検出値との積から横加速度
の検出値を引いた値を時間に関して積分することによっ
て車両の実横速度の基本値を推定する基本実横速度推定
手段と、前後速度の検出値と舵角の検出値とに基づき、
車両が定常円旋回状態にあると仮定した場合の車両の理
論横速度を推定する理論横速度推定手段と、基本実横速
度推定手段によって推定された基本実横速度を理論横速
度推定手段によって推定された理論横速度によって補正
することにより、実横速度の最終値を決定する実横速度
補正手段とを含むもの。
【0015】(2) (1) の発明であって、それの基本実横
速度推定手段が、各センサの生の各検出値を単純に積分
することによって基本実横速度を推定するもの。
【0016】(3) (1) の発明であって、それの基本実横
速度推定手段が、時間の経過につれて各センサで取得さ
れる生の複数の各検出値を積分することによって基本実
横速度を推定し、かつ、その積分を、生の複数の各検出
値を単純に積分した場合に取得される横速度である仮想
横速度を定常成分と変動成分とに分解した場合に変動成
分の影響の方が定常成分の影響より相対的に大きく基本
実横速度に現れるように行うもの。
【0017】(4) (3) の発明であって、それの基本実横
速度推定手段が、基本実横速度を検出周期ごとに推定
し、基本実横速度の前回値と1より小さい係数との積
と、ヨーレートの今回値と前後速度の今回値との積から
横加速度の今回値を引いた値である横速度微分の今回値
と検出周期との積との和を基本実横速度の今回値とする
もの。
【0018】(5) (1) 〜(4) の各発明であって、それの
実横速度補正手段が、基本実横速度を、それと同じ時期
に推定された理論横速度との平均的な値に補正して最終
実横速度に決定するもの。
【0019】(6) (1) 〜(4) の各発明であって、それの
実横速度補正手段が、基本実横速度を、それの仮想横速
度が定常的である期間が進行するにつれて理論横速度に
近づくように推定するもの。
【0020】(7) (6) の発明であって、それの実横速度
補正手段が、最終実横速度の今回値を、理論横速度の今
回値と、基本実横速度と理論横速度との偏差である横速
度偏差の前回値と1より小さい係数との積と、基本実横
速度の時間微分値である横速度微分の今回値と横速度の
検出周期との積との和として演算するもの。
【0021】(8) (1) 〜(7) の各発明であって、それの
実横速度補正手段が、少なくとも横加速度,ヨーレー
ト,前後速度および舵角の各々の検出値を入力信号、基
本実横速度の補正値を出力信号とするニューラルネット
ワークであって、それを構成する複数のユニット間の結
合情報が実際の車両走行状況下において予め決定されて
いるものを有し、その出力信号に基づいて基本実横速度
を補正するもの。
【0022】(9) 請求項1または(1) 〜(8) の各発明で
あって、さらに、車体のローリング運動状態量を検出す
るローリング運動状態量センサと、そのローリング運動
状態量センサにより検出されたローリング運動状態量に
基づき、前記横加速度センサにより検出された横加速度
からそのローリング運動状態量に基づく外乱を除去する
ことにより、検出された横加速度を補正する横加速度補
正手段とを含むもの。
【0023】(10)請求項1または(1) 〜(9) の各発明に
係る車両横速度検出装置と、車両の運動状態を変更する
車両運動状態変更装置と、少なくとも、前記車両横速度
検出装置により検出された最終横速度に基づき、前記車
両運動状態変更装置を介して車両の運動状態を制御する
コントローラとを含むことを特徴とする車両制御装置。
【0024】(11)車両の重心点における横加速度を検出
する横加速度センサと、車両のヨーレートを検出するヨ
ーレートセンサと、車両の前後速度を検出する前後速度
センサと、車両の舵角を検出する舵角センサと、前後速
度の検出値とヨーレートの検出値との積から横加速度の
検出値を引いた値を時間に関して積分することによって
車両の実横速度の基本値を推定し、前後速度の検出値と
舵角の検出値とに基づき、車両が定常円旋回状態にある
と仮定した場合の車両の理論横速度を推定し、それら推
定した実横速度の基本値と理論横速度とに基づいて車両
の実横速度の最終値を推定する処理手段と、推定された
実横速度の最終値を前記前後速度の検出値で割ることに
よって車体の重心点におけるスリップ角を推定するスリ
ップ角推定手段とを含むことを特徴とする車体スリップ
角検出装置。
【0025】(12) (11) の車体スリップ角検出装置と、
前後速度の検出値とヨーレートの検出値の時間微分値と
に基づいてタイヤに車両横方向において発生するタイヤ
横力を推定するタイヤ横力推定手段と、スリップ角の推
定値とタイヤ横力の推定値とに基づいて車両が走行する
路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段とを含
むことを特徴とする路面摩擦係数検出装置。
【0026】(13) (12) の発明であって、それの路面摩
擦係数推定手段が、スリップ角の推定値がスリップ角設
定値を超えた状態において路面摩擦係数の推定値の更新
を許可し、超えない状態においてその更新を禁止するも
の。
【0027】(14)(12)または(13)の発明であって、それ
の路面摩擦係数推定手段が、スリップ角の推定値がスリ
ップ角設定値を超えた状態において、そのスリップ角設
定値を超え続ける時間が第一設定時間を超えない期間に
おいては前記路面摩擦係数の推定値の更新を許可し、そ
の第一設定時間を超えた期間においてはその更新を禁止
し、また、スリップ角の推定値がスリップ角設定値を超
えた状態から超えない状態に移行したときから第二設定
時間が経過しないうちは、たとえスリップ角の推定値が
スリップ角設定値を超えた状態に移行しても路面摩擦係
数の推定値の更新を禁止するもの。
【0028】(15)(12)〜(14)のいずれかの路面摩擦係数
検出装置と、車両の運動状態を変更する車両運動状態変
更装置と、少なくとも路面摩擦係数検出装置により検出
された路面摩擦係数に基づき、前記車両運動状態変更装
置を介して車両の運動状態を制御するコントローラとを
含むことを特徴とする車両制御装置。
【0029】(16)(15)の車両制御装置であって、それの
車両運動状態変更装置が、車両制動時の車輪ロックを防
止するアンチロック制御装置,車両駆動時の車輪スリッ
プを防止するトラクション制御装置,車両の舵角を電気
的に制御する電気的操舵装置,駆動力の前後輪への配分
を制御する駆動力配分制御装置,制動力の前後輪または
左右輪への配分を制御する制動力配分制御装置およびロ
ール剛性の前後輪への配分を制御するロール剛性配分制
御装置の少なくとも一つを含むもの。
【0030】
【実施例】以下に請求項1の発明を図示の実施例に基づ
いて具体的に説明する。
【0031】図示の実施例は、車両運動状態変更装置と
してアンチロック制御装置を備えた車両制御装置であ
る。この車両制御装置は、車両の前後速度Vx と横速度
y とをそれぞれ検出し、横速度Vy を前後速度Vx
割ることによって車体のスリップ角β(=Vy /Vx
を検出し、それとタイヤ横力Fとに基づいて路面の摩擦
係数μを検出する路面摩擦係数検出装置を備えている。
【0032】車両制御装置は、図1に示すように、左右
前輪10および左右後輪12を有する4輪車両に搭載さ
れている。この車両制御装置のうちの路面摩擦係数検出
装置14は、同図に示すように、車両重心点における横
加速度Gy を検出する横加速度センサ20,車両のヨー
レートγを検出するヨーレートセンサ22,車両の前後
速度Vx を検出する前後速度センサ24,左右前輪10
の実舵角δを検出する実舵角センサ26およびコンピュ
ータ30を含むように構成されている。コンピュータ3
0は、CPU,ROMおよびRAMを含むように構成さ
れている。
【0033】車両制御装置はさらに、アンチロック制御
装置32を備えている。アンチロック制御装置32は、
車輪速センサ,電磁液圧制御弁,コンピュータ等を含
み、各輪の回転状況(車輪速度,車輪加速度,ロック傾
向等に関する状況)に基づいて車両制動時に各輪がロッ
クしないように各輪のブレーキ圧を電気的に制御するも
のである。アンチロック制御装置32は、そのブレーキ
圧制御特性(例えば、減圧開始時期,減圧時間,減圧勾
配,増圧勾配等)が路面の摩擦係数(以下、路面μとも
いう)に応じて変更可能とされている。
【0034】路面摩擦係数検出装置14の電気的な構成
を図2にブロック図で表す。路面摩擦検出装置14は、
同図に概念的に示すように、基本実横速度推定手段5
0,理論横速度推定手段52,実横速度補正手段54,
スリップ角推定手段56,微分手段58,タイヤ横力推
定手段60および路面摩擦係数推定手段62を含んでい
る。
【0035】基本実横速度推定手段50は、ヨーレート
γの検出値と前後速度Vx の検出値との積から横加速度
y の検出値を引いた値である横速度微分Vy ’を積分
することによって実横速度Vy を推定するものである。
そのため、基本実横速度推定手段50の入力側には、前
記横加速度センサ20,ヨーレートセンサ22および前
後速度センサ24が接続されている。以下に実横速度V
y の推定原理について詳しく説明する。
【0036】この基本実横速度推定手段50において
は、実横速度Vy の検出方式として基本的には、 Vy =∫(γ・VX −Gy )dt なる式を用いる方式が採用されている。すなわち、 Vy (n) =Vy (n-1) +Δt・Vy (n) なる式(ただし、Δtは横速度Vy の検出周期を表す)
を用いて実横速度Vy (前記基本実横速度の一例)が推
定されるのである。この式において、(n) が付された変
数の値は今回の値を意味し、(n-1) が付された変数の値
は前回の値を意味する。このことは他の変数についても
同じである。
【0037】しかし、上記の式をそのまま用いてセンサ
による各検出値をそのまま積分したのでは、各検出値に
誤差が存在する場合にはその誤差も積分されてしまう。
そのため、その誤差が例えばセンサの取付角度誤差等の
定常的な誤差である場合には、時間の経過につれてセン
サの定常誤差が横速度の検出値に累積されてしまう。そ
のため、このようにして検出した横速度を用いてスリッ
プ角を推定した場合には、推定スリップ角は例えば、図
3の上側に第一推定スリップ角としてグラフで表すよう
に、実測スリップ角(真のスリップ角)に対する誤差が
時間の経過につれて拡大するように変化することにな
る。
【0038】そこで、本実施例においては、横速度微分
y ’(=γ・VX −Gy )の積分が、時間の経過につ
れてセンサで取得される生の複数の検出値を単純に積分
した場合に取得される仮想横速度を定常成分と変動成分
とに分解した場合に変動成分の影響の方が定常成分の影
響より相対的に大きく実横速度Vy に現れるように行わ
れる。
【0039】この定常成分抑制型の横速度検出方式の一
例として、この基本実横速度推定手段50においては、
実横速度Vy の前回推定値と係数Cとの積と、横速度微
分V y ’の今回値と検出周期Δtとの積との和として実
横速度Vy の今回推定値を取得する方式が採用されてい
る。すなわち、 Vy (n) =C・Vy (n-1) +Δt・Vy (n)
【0040】この式においては、Vy (n-1) そのものに
Δt・Vy (n) が加算されるのではなく、Vy (n-1)
にCを掛けたものにΔt・Vy (n) が加算される。こ
こに、Cは、 C=1−Δt/T なる式で表され、0以上1以下の値をとる。したがっ
て、C・Vy (n-1) は、V y (n-1) をその取得直後から
比例的に減衰させた場合に検出周期Δtの経過時に到達
する値を意味し、結局、C・Vy (n-1) にΔt・Vy
(n) を加算することは、過去の情報をそのまま累積する
のではなく、減衰させつつ累積することを意味する。
【0041】したがって、この検出方式によれば、例え
ば、真の横速度が0である状況下で各検出値に定常的な
誤差が発生した場合には、仮想横速度が定常的となるた
め、実横速度の検出値がしだいに減衰してやがて0とな
り、各センサの検出誤差が累積されて発散することが回
避される。すなわち、横速度微分Vy (0) 〜Vy
(n-1) のすべてが0である場合には、Vy (n) がCn
0 となり、Cは1より小さいから、Vy (n) が0とな
るのである。
【0042】しかし、この提案した検出方式にも問題が
ある。真の横速度が0でないある値にほぼ定常的に保た
れている場合にも横速度の検出値が減衰してしまうので
ある。すなわち、この提案した検出方式では、仮想横速
度における定常成分が、それが真の横速度が定常値に保
たれることを原因とするのかセンサの定常誤差を原因と
するのかを区別せず、一律に減衰させられてしまうから
である。このようにして検出した横速度を用いてスリッ
プ角を推定した場合には、推定スリップ角は例えば、図
3の上側に第二推定スリップ角としてグラフで表すよう
に、実測スリップ角が0でない定常値に保たれる期間内
であるにもかかわらず減衰し、やがて0に収束してしま
う。この問題を解決するために理論横速度推定手段52
および実横速度補正手段54が設けられているのであ
る。
【0043】理論横速度推定手段52は、4輪車両に対
して平面2自由度2輪モデルを想定し、車両が常に定常
円旋回状態にあると仮定し、前後車速Vx および実舵角
δの現在値の下における車体の横速度Vy を理論横速度
yMとして推定する。具体的には、
【0044】
【数1】
【0045】ただし、 M :車体質量 a :前輪−重心点間距離(固定値) b :後輪−重心点間距離(固定値) L :ホイールベース(=a+b) I :車両のヨー慣性モーメント(固定値) Kf :前輪2個分のコーナリングパワー(固定値) Kr :後輪2個分のコーナリングパワー(固定値)
【0046】このように理論横速度VyMは積分操作なし
で推定することができ、各センサの検出誤差の累積とい
う心配はないという利点がある。しかし、理論横速度V
yMは、車両が実際に定常円旋回状態すなわち車速一定か
つ舵角一定の状態にあるときに限って真の横速度に精度
よく一致するものであり、車両が定常円旋回状態にない
とき、すなわち過渡状態にあるときには真の横速度に十
分には精度よく一致しないという欠点がある。さらに、
本実施例においては、コーナリングパワーKf,Kr
固定値とされているため、上記式は車輪スリップ角αと
タイヤ横力Fとの関係すなわちタイヤのコーナリング特
性が線形領域にある場合に限って成立し、非線形領域に
移行した後、すなわち、タイヤがグリップ限界を超えた
後は、理論横速度VyMが真の横速度に十分には精度よく
一致しないという欠点もある。なお、上記式が非線形領
域でも成立するように、上記コーナリングパワーKf
r としていわゆる等価的なコーナリングパワー∂F/
∂αを用いる手法が既に知られているが、非線形領域に
おける車両運動の動的特性は横加速度等によって変化す
るなどの理由から、その手法でも非線形領域では真の横
速度を十分には精度よく検出することができない。
【0047】これに対して、前述の実横速度Vy は、各
センサの検出誤差がない限り車両が定常円旋回状態にあ
るか否かを問わず、また、タイヤのコーナリング特性が
線形領域にあるか否かを問わず、真の横速度に十分に精
度よく一致するという利点があるが、各センサの検出誤
差がある場合にはそれが累積されて検出精度が低下する
という欠点がある。
【0048】このように、実横速度Vy と理論横速度V
yMとは一方の欠点を他方の利点として相互に補完し得る
関係にあるのであり、この事実に鑑み、本実施例におい
ては、相互に欠点を補って実横速度Vy の最終値の推定
精度を向上させるため、前記実横速度補正手段54が設
けられている。
【0049】この実横速度補正手段54は、その入力側
に基本実横速度推定手段50と理論横速度推定手段52
が接続されていて、理論横速度推定手段52から入力さ
れる理論横速度VyMに基づいて基本実横速度推定手段5
0から入力される実横速度V y を補正する。
【0050】この補正においては、具体的に、補正後の
実横速度Vy (前記最終実横速度の一例)の今回値が、
理論横速度VyMの今回値と、横速度偏差ΔVy の前回値
と係数Cとの積と、横速度微分Vy ’の今回値と検出周
期Δtとの積との和として演算される。すなわち、 Vy (n) =VyM (n)+C・ΔVy (n-1) +Δt・Vy (n) ただし、 ΔVy (n-1) :横速度偏差の前回値(=Vy (n-1) −V
yM (n-1)
【0051】この補正後の実横速度Vy を用いてスリッ
プ角を推定すれば、推定スリップ角は例えば図3の下側
に第三推定スリップ角としてグラフで表すように、実測
スリップ角がほぼ定常的に保たれる期間内において、時
間の経過につれて減衰はするが0に収束するのではな
く、理論横速度VyMを用いて推定した理論スリップ角に
収束する。すなわち、本実施例においては、実測横速度
(真の横速度)がほぼ定常的に保たれる期間内におい
て、補正後の実横速度は時間の経過につれて減衰はする
が0に収束するのではなく、理論横速度に収束するた
め、0に収束する場合より横速度の検出精度が向上し、
ひいてはスリップ角の推定精度が向上するのである。
【0052】前記車体スリップ角推定手段56は、実横
速度補正手段54と前後速度センサ24とに接続されて
おり、実横速度補正手段54から入力される実横速度V
y を前後速度センサ24から入力される前後速度Vx
割ることによって車体のスリップ角βを推定する。
【0053】前記微分手段58は、前記ヨーレートセン
サ22に接続されている。ヨーレートセンサ22から検
出周期Δtごとに逐次ヨーレートγが入力され、それの
今回値から前回値を引いた値を検出周期Δtで割ること
によって、ヨーレートγの時間微分値であるヨーレート
微分γ’を演算する。すなわち、 γ’(n) =(γ(n) −γ(n-1) )/Δt
【0054】前記タイヤ横力推定手段60は、微分手段
58と横加速度センサ20とに接続されており、ヨーレ
ート微分γ’と横加速度Gy とに基づいて4輪全体につ
いて発生するタイヤ横力Fを演算する。具体的には、 F=(b・M・Gy +I・γ’)/L ただし、 b:重心点−後輪間距離(固定値) M:車体質量(固定値) I:車両のヨー慣性モーメント(固定値) L:ホイールベース(固定値)
【0055】前記路面摩擦係数推定手段62は、タイヤ
横力推定手段60と車体スリップ角推定手段56とに接
続されている。スリップ角βとタイヤ横力Fと路面μと
の間には、例えば図4に実線グラフで表すように、スリ
ップ角が同じでも路面の摩擦係数が高いほどタイヤ横力
が大きくなる関係が成立する。路面摩擦係数推定手段6
2はこの関係に従い、スリップ角βとタイヤ横力Fとに
基づいて現在の路面μを推定する。
【0056】スリップ角βが0に十分に近い領域では、
同図の実線グラフから明らかなように、路面μが相違し
てもタイヤ横力Fが相違しないため、この領域では路面
μを十分に精度よく推定することが困難である。そこ
で、この路面摩擦係数推定手段62は、推定スリップ角
βがしきい値βth(前記スリップ角設定値の一例)を超
えた推定良好領域では路面μの推定を許可するが、しき
い値βthを超えない推定困難領域では路面μの推定を禁
止し、最後に推定した値に路面μを固定する。路面μの
推定値の更新を禁止するのである。なお、本実施例にお
いては、しきい値βthが同図に破線グラフで表すよう
に、推定タイヤ横力Fと共に増加するように設定される
が、固定値とすることもできる。
【0057】しかし、路面摩擦係数推定手段62は、推
定良好領域にあれば必ず路面μの更新を許可するわけで
ない。推定スリップ角βがしきい値βth以上の領域内に
長く維持された後には、実横速度Vy はそれに補正が加
えられたとはいえ、図3の下側のグラフから明らかなよ
うに、実測スリップ角からの誤差がやや大きくなる傾向
がある。そこで、本実施例においては、図5にグラフで
概念的に表すように、推定スリップ角βが増加してしき
い値βthに達し、路面μの推定が開始された後、推定ス
リップ角βがしきい値βthを超え続ける時間T1 がしき
い値T1th (前記第一設定時間の一例)を超えるまで
は、路面μの推定値の信頼度Rが高いと判定し、路面μ
の更新を許可する(図において禁止フラグOFFで示
す)が、しきい値T1th を超えた後は、路面μの推定値
の信頼度Rが低いと判定し、路面μの更新を禁止する
(図において禁止フラグONで示す)。
【0058】また、この路面摩擦係数推定手段62は、
上記のようにして路面μの更新が禁止された後に推定ス
リップ角βがしきい値βthを下回り、その後に再びしき
い値βthを超えたからといって直ちに路面μの更新を許
可することはしない。しきい値βthを超えた状態からし
きい値βthを下回った状態に移行したときから経過した
時間T2 がしきい値T2th (前記第二設定時間の一例)
を超えないうちは、たとえ推定スリップ角βがしきい値
βthを超えた状態に移行しても路面μの更新を禁止し続
け、時間T2 がしきい値T2th を超えた後にはじめて、
路面μの更新を許可するのである。この期間における路
面μの推定に用いられる推定スリップ角βは、それの信
頼度Rが低い期間において取得された過去の検出値の影
響を強く受けた信頼度Rの低いものであり、そのような
推定スリップ角βを用いたのでは路面μの推定精度も低
下してしまうから、この期間における路面μの更新も禁
止するのである。
【0059】以上の内容を実行するためにコンピュータ
30のROMに、図6にフローチャートで表される路面
摩擦係数検出ルーチンを始めとする各種ルーチン,テー
ブル,関数等が予め記憶されている。
【0060】図6のルーチンは、検出周期Δt(例え
ば、10ms程度)ごとに実行される。初回の実行に先
立って初期設定が行われ、OFF状態で路面μの更新を
許可することを示し、ON状態でそれを禁止することを
示す禁止フラグがOFFとされる。さらに、推定スリッ
プ角βがしきい値βth以上の領域にあり続ける時間T1
の値と、しきい値βth以下の領域にあり続ける時間T2
の値とがともに0とされる。
【0061】本ルーチンの各回の実行時には、まず、ス
テップS10(以下、単にS10で表す。他のステップ
についても同じ)において、各種センサから横加速度G
y ,ヨーレートγ,前後速度Vx および実舵角δのそれ
ぞれの今回値が入力され、RAMに記憶される。続い
て、S20において、それらのうちの横加速度Gy ,ヨ
ーレートγおよび前後速度Vx に基づき、前記のように
して基本実横速度Vy の今回値が推定される。
【0062】その後、S30において、ヨーレートγの
今回値から前回値を引いた値を検出周期Δtで割ること
によってヨーレート微分γ’の今回値が演算され、続い
て、S40において、そのヨーレート微分γ’と前記横
加速度Gy とに基づき、前記のようにしてタイヤ横力F
の今回値が推定される。その後、S50において、前記
前後速度Vx と実舵角δとに基づき、前記のようにして
理論横速度VyMの今回値が推定され、続いて、S60に
おいて、その理論横速度VyMに基づいて前記基本実横速
度Vy が補正されることによって最終実横速度Vy の今
回値が推定される。
【0063】その後、S70において、最終実横速度V
y を前後速度Vx で割ることによってスリップ角βの今
回値が推定される。続いて、S80においてはT1 が、
S90においてはT2 がともに検出周期Δtと同じ値だ
け増加させられる。
【0064】その後、S100において、推定スリップ
角βの今回値がしきい値βthを超えたか否かが判定され
る。今回は未だ超えていないと仮定すれば、判定がNO
となり、S110において、T1 が0とされる。T1
S80において推定スリップ角βとしきい値βthとの関
係とは無関係に検出周期Δtだけ増加させられるが、こ
のS110において推定スリップ角βがしきい値βth
超えない限り0に戻されるから、結局、T1 は推定スリ
ップ角βがしきい値βthを超えている状態の継続時間を
表すことになる。その後、S120において、路面μの
今回の推定値は信頼性Rが低いことを示すデータがRA
Mに記憶される。
【0065】続いて、S130において、T1 の今回値
がしきい値T1th を超えたか否かが判定される。T1
今回値は0であるから、判定がNOとなり、S140に
移行する。このS140においては、T2 の今回値がし
きい値T2th を超えたか否かが判定される。今回は未だ
超えていないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに
本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0066】その後、S10〜140の実行が何回も繰
り返されるうちにT2 の今回値がしきい値T2th を超え
たならば、S140の判定がYESとなり、S200に
おいて禁止フラグをOFFする指令が出されるが、今回
は禁止フラグがOFFであるため、S200の今回の実
行によって禁止フラグの状態は変化しない。
【0067】その後、さらにS10〜140の実行が何
回も繰り返されるうちに推定スリップ角βの今回値がし
きい値βthを超えたならば、S100の判定がYESと
なり、S150において、T2 が0とされる。T2 はS
90において推定スリップ角βとしきい値βthとの関係
とは無関係に検出周期Δtだけ増加させられるが、この
S150において推定スリップ角βがしきい値βthを超
えている限り0に戻されるから、結局、T2 は推定スリ
ップ角βがしきい値βthを超えていない状態の継続時間
を表すことになる。その後、S160において、今回の
禁止フラグがOFFであるか否かが判定される。今回は
OFFであると仮定されているから、判定がYESとな
り、S170において、推定スリップ角βと前記タイヤ
横力Fとの関係に基づいて路面μの今回値が推定され
る。その後、S180において、その推定値は信頼性R
が高いことを示すデータがRAMに記憶される。
【0068】その後、S130において、T1 の今回値
がしきい値T1th を超えたか否かが判定される。T1
今回値は未だしきい値T1th を超えてはいないと仮定す
れば、S130の判定がNOとなり、S140に移行す
る。S140において、T2の今回値がしきい値T2th
を超えたか否かが判定されれば、T2 の今回値はS15
0で0とされたから、判定がNOとなり、直ちに本ルー
チンの一回の実行が終了する。
【0069】その後、S10〜100,150〜18
0,130および140の実行が何回も繰り返されるう
ちにT1 の今回値がしきい値T1th を超えたならば、S
130の判定がYESとなり、S190において禁止フ
ラグをONする指令が出される。その結果、以後路面μ
の推定値の更新が禁止されることになる。以上で本ルー
チンの一回の実行が終了する。
【0070】続いてS10〜100および150が実行
されれば、今回は禁止フラグがONであるため、S16
0の判定がNOとなり、S170および180がスキッ
プされて路面μの推定値の更新が禁止される。その結
果、路面μの今回値は前回値のままに維持されることに
なる。その後、S120において、路面μの今回の推定
値は信頼度Rが低いことを示すデータがRAMに記憶さ
れる。その後、S130において、T1 の今回値がしき
い値T1th を超えたか否かが判定されれば、T1の今回
値はしきい値T1th を超えていると仮定されているか
ら、判定がYESとなり、S190において、禁止フラ
グをONにする指令が出される。禁止フラグは既にON
であるから、このS190の今回の実行によって禁止フ
ラグの状態は変化しない。以上で本ルーチンの一回の実
行が終了する。
【0071】その後、S10〜100,150〜18
0,130および190の実行が何回も繰り返されるう
ちに推定スリップ角βがしきい値βth以下となったと仮
定すれば、S100の判定がNOとなり、S110にお
いてT1 が0に戻され、S120において、路面μの今
回値は信頼性Rが低いことを示すデータがRAMに記憶
される。続いて、S130において、T1 の今回値がし
きい値T1th を超えたか否かが判定されれば、T1 の今
回値はS110で0とされているから、判定がNOとな
り、S140に移行する。このS140において、T2
の今回値がしきい値T2th を超えたか否かが判定される
が、T2 の今回値は未だしきい値T2th を超えてはいな
いと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチン
の一回の実行が終了する。
【0072】その後、S10〜140の実行が繰り返さ
れるうちにT2 の今回値がしきい値T2th を超えたと仮
定すれば、S140の判定がYESとなり、S200に
おいて禁止フラグをOFFにする指令が出される。路面
μの更新の禁止が解除されるのである。以上で本ルーチ
ンの一回の実行が終了する。
【0073】したがって、その後、推定スリップ角βが
しきい値βthを超えたならば、禁止フラグがOFFであ
るから、S160の判定がYESとなり、S170にお
いて路面μの更新が再開されることになる。
【0074】以上のようにして推定された路面μは前記
アンチロック制御装置32に逐次供給される。アンチロ
ック制御装置32は、制御開始基準,減圧特性等のブレ
ーキ圧制御特性を変更可能とされており、路面μが低μ
路であると判定された場合には、高μ路であると判定さ
れた場合におけるより、アンチロック制御が早期に開始
されるようにブレーキ圧制御特性を変更したり、より長
い時間減圧し続けられるようにブレーキ圧制御特性を変
更するように設計されている。実際の路面μに合致した
ブレーキ圧制御特性でアンチロック制御が行われ、低μ
路でできる限りタイヤがロックしないことと、高μ路で
制動力が無駄に抑制されて制動距離が延びることがない
こととの双方が両立するように設計されているのであ
る。
【0075】以上の説明から明らかなように、コンピュ
ータ30のうち図6のS10および20を実行する部分
が図2の基本実横速度推定手段50に、S10および5
0を実行する部分が理論横速度推定手段52に、S60
を実行する部分が実横速度補正手段54に、S30を実
行する部分が微分手段58にそれぞれ対応しているので
ある。そして、それらのうち基本実横速度推定手段5
0,理論横速度推定手段52および実横速度補正手段5
4が請求項1の発明における「処理手段」の一例を構成
しているのである。また、コンピュータ30のうち図6
のS70を実行する部分が前記スリップ角推定手段に、
S30および40を実行する部分がタイヤ横力推定手段
に、S80〜200を実行する部分が路面摩擦係数推定
手段にそれぞれ対応している。
【0076】以上詳記した実施例においては、積分操作
を必要とする実横速度Vy と積分操作を必要とはしない
理論横速度VyMとの双方のみに基づいて実横速度Vy
最終値が推定されるようになっているが、他の変数にも
基づいて実横速度Vy の最終値を推定することが可能で
ある。以下にその一例を説明する。
【0077】先の実施例においては、補正後の実横速度
y の今回値が、理論横速度の今回値VyM(n) と、横速
度偏差の前回値ΔVy (n-1) (=Vy (n-1) −V
yM(n-1) )と係数Cとの積と、横速度微分の今回値
y (n) と検出周期Δtとの積との和として演算され
る。すなわち、 Vy (n) =VyM(n) +C・ΔVy (n-1) +Δt・Vy (n)
【0078】それに対し、本実施例においては、横速度
微分の今回値Vy (n) がニューラルネットワーク(以
下、単にネットワークという)を用いて演算した値Nを
用いて補正される。すなわち、 Vy (n) =Vy (n) +N(n) なる式を用いて横速度微分の今回値Vy (n) が演算さ
れ、それを用いて実横速度Vy の補正が行われるのであ
る。
【0079】ネットワークの構成は例えば次のものとす
ることができる。すなわち、図7にモデルで示すよう
に、実舵角δ,前後速度Vx ,横加速度Gy ,ヨーレー
トγ,ヨーレートγと前後速度Vx との積および前後加
速度Gx の各々が入力信号として各ユニットに入力され
る入力層と、複数のユニットを持つ中間層と、1個のユ
ニットを持ち、実横速度微分Vy ’と理論横速度微分V
yM’との誤差を表すNを出力信号として出力する出力層
とを含む階層型とすることができるのである。なお、入
力信号の数を増減させたり、種類を変えたり、中間層を
複数としたり、階層型に代えて相互結合型とすることも
できる。
【0080】各ユニット相互の結合荷重(前記結合情報
の一例)ωの学習すなわちネットワークの学習は、車両
の実走行状況を想定し、各入力信号を何回も提示するこ
とによって行われる。また、教師信号として例えば、実
測横速度(真の横速度)VyTの微分値と理論横速度VyM
の微分値との和から横速度微分Vy ’を引いた値、すな
ち、 VyT(n) −Vy (n) =VyT(n) −(γ(n) ・VX (n) −Gy (n) ) なる式で表される値を引いた値を選ぶことができる。学
習段階においては、出力と教師信号とが一致するように
各ユニットの結合荷重ωが調整されることになる。
【0081】車両横速度を推定するために使用される横
加速度Gy は理論上、車両に作用する加速度のうち路面
に対して水平かつ車両進行方向に対して直角な方向にお
ける成分である。したがって、横加速度センサ20は、
路面に対して水平かつ車両進行方向に対して直角な方向
を検出方向として車両に固定的に搭載される。しかし、
車両旋回中には、車体のロール角φの存在により、横加
速度センサ20の検出方向が、厳密には、路面に対して
水平ではなくなるため、横加速度センサ20の検出値
に、真の横加速度GyTのみならず車両に作用する重力の
影響も及ぶことになる。さらに、車体旋回中には、車体
のロール角加速度φ”の存在により、横加速度センサ2
0の検出値に、真の横加速度GyTのみならずロール角加
速度φ”の影響も及ぶことになる。
【0082】すなわち、車両旋回中には、真の横加速度
yTと横加速度センサ20による検出横加速度Gy との
間に次式で表される関係が成立するのである(図8参
照)。 Gy =GyT・cos φ+g・sin φ−h・φ” ただし、 g:重力加速度 h:車両重心点のロール軸からの高さであるロールアー
【0083】ここに、φは十分に0に近いという事実を
考慮すれば、cos φは1、sin φはφに近似できるか
ら、上記の式は、 Gy =GyT+g・φ−h・φ” に変形でき、結局、真の横加速度GyTは、 GyT=Gy −g・φ+h・φ” なる式で記述されることになる。
【0084】したがって、車両の横速度Vy の推定精度
を向上させるためには、検出横加速度Gy をそのまま用
いて車両横速度を推定するのではなく、上記の式に基づ
いて補正を加えて真の横加速度GyTを求め、それを用い
て横速度Vy を推定することが望ましい。
【0085】なお、上記の式では、ロール角φおよびロ
ール角加速度φ”を求めることが必要であるが、そのた
めには例えば次のような手法を採用することができる。
【0086】すなわち、車両の右側と左側とのそれぞれ
における路面からの高さを直接にまたは間接に検出する
センサ(例えば、車高センサ)を設け、右側の高さと左
側の高さとの相対的な関係からロール角φおよびロール
角加速度φ”を直接に検出する手法を採用することがで
きるのである。また、車体のローリング運動に関する運
動方程式を利用してロール角φ等を間接に検出する手法
も採用することができる。その運動方程式には例えば次
式を採用することができる。 I・φ”+C・φ’+G・φ=ms ・Gy ・h ただし、 I:車両のばね上部材の慣性モーメント(固定値) C:ロール減衰(固定値) G:ロール剛性(固定値) φ’:ロール角速度 ms :ばね上部材の質量(固定値) Gy :検出横加速度 h:ロールアーム(固定値)
【0087】この式は次式に変形できる。 φ”=4π2 /Tr 2 ・(Ga ・Gy −φ)−φ’/T
g ただし、 Tr :ロール周期(固定値) Ga :ゲイン(固定値) Tg :ロール減衰時間(固定値)
【0088】したがって、この式を時間に関して離散化
するとともに検出横加速度Gy を用いることにより、ロ
ール角φおよびロール角加速度φ”を逐次間接に検出す
ることができる。すなわち、この態様においては、横加
速度センサ20が前記ローリング運動状態量センサの一
例なのである。
【0089】以上、請求項1の発明を図示の実施例に基
づいて具体的に説明したが、この他にも特許請求の範囲
を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変
形,改良を施した態様で請求項1の発明を実施すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の一実施例である車両制御装置
の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1における路面摩擦係数検出装置14の電気
的な構成を概念的に示すブロック図である。
【図3】各種の推定手法による推定スリップ角の時間的
推移と実測スリップ角との関係を説明するためのグラフ
である。
【図4】上記路面摩擦係数検出装置14が路面の摩擦係
数μの推定に用いるスリップ角βとタイヤ横力Fとの関
係を説明するためのグラフである。
【図5】上記路面摩擦係数検出装置14が路面の摩擦係
数μの更新を許可する時期と禁止する時期とを推定スリ
ップ角の時間的推移との関係において説明するためのグ
ラフである。
【図6】上記路面摩擦係数検出装置14が路面の摩擦係
数μの推定に用いるルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図7】請求項1の発明の別の実施例である車両横速度
検出装置における各種信号の流れを概念的に示すブロッ
ク図である。
【図8】車体ロール時に検出横加速度が車体のロール角
およびロール角加速度の影響を受ける様子を説明するた
めの正面図である。
【符号の説明】
14 路面摩擦係数検出装置 20 横加速度センサ 22 ヨーレートセンサ 24 前後速度センサ 26 実舵角センサ 30 コンピュータ 32 アンチロック制御装置

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両の重心点における横加速度を検出する
    横加速度センサと、 車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、 車両の前後速度を検出する前後速度センサと、 車両の舵角を検出する舵角センサと、 前後速度の検出値とヨーレートの検出値との積から横加
    速度の検出値を引いた値を時間に関して積分することに
    よって車両の実横速度の基本値を推定し、前後速度の検
    出値と舵角の検出値とに基づき、車両が定常円旋回状態
    にあると仮定した場合の車両の理論横速度を推定し、そ
    れら推定した実横速度の基本値と理論横速度とに基づい
    て車両の実横速度の最終値を推定する処理手段とを含む
    ことを特徴とする車両横速度検出装置。
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