JPH07188817A - 磁気特性および製造性に優れたNi−Fe系磁性合金およびその製造方法 - Google Patents

磁気特性および製造性に優れたNi−Fe系磁性合金およびその製造方法

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JPH07188817A
JPH07188817A JP5348719A JP34871993A JPH07188817A JP H07188817 A JPH07188817 A JP H07188817A JP 5348719 A JP5348719 A JP 5348719A JP 34871993 A JP34871993 A JP 34871993A JP H07188817 A JPH07188817 A JP H07188817A
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Makoto Yamada
誠 山田
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    • H01F1/147Alloys characterised by their composition
    • H01F1/14708Fe-Ni based alloys
    • H01F1/14716Fe-Ni based alloys in the form of sheets

Abstract

(57)【要約】 【目的】 950〜1150℃での絞り値が60%を超
える優れた熱間加工性を有し且つ磁気特性にも優れたN
i−Fe系磁性合金を得ること 【構成】 不純物元素たるP,S,O,N,C,Cr,
Siの各含有量の制御の下で、Ni:76.0〜82.
0wt%、Mo:3.0〜6.0wt%、Cu:1.0
〜6.0wt%、Mn:0.10〜1.10wt%、A
l:0.001〜0.050wt%、Sb:0.1wt
%以下、CaをSとの重量比Ca/Sで1.5〜6.0
の範囲で含有し、且つNi、Mo、Cu、Mn、Feの
成分バランスを特定範囲内とし、Moの成分偏析率を5
%以下としたNi−Fe系磁性合金である。その製造方
法は、上記成分組成の合金を1200〜1340℃に1
〜30時間加熱した後、950℃以上の仕上温度で1回
以上分塊圧延し、次いで1150〜1340℃に1〜5
時間加熱した後、950℃以上の仕上温度で熱間圧延す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、磁気特性および製造
性に優れたNi−Fe系磁性合金およびその製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】JISに規定されたPCに対応するNi
−Fe系合金(以下、PCパーマロイという)は、磁気
ヘッドのケースや磁芯、各種変圧器の磁芯、各種磁気遮
蔽材等として広く利用されている。
【0003】このPCパーマロイのインゴットは熱間加
工性に劣っているため、分塊圧延すると後述するような
理由によってスラブに多くの表面疵が発生する。PCパ
ーマロイのインゴットの熱間加工性は合金のNi含有量
によって変化し、Ni含有量が多くなるほど熱間加工性
が低下する。したがって、80wt%程度のNiを含有
するPCパーマロイのインゴットの熱間加工性は、35
〜45wt%程度のNiを含有するNi−Fe系合金の
インゴットのそれに較べて著しく劣っている。このため
従来では、PCパーマロイのインゴットからエッジ割れ
等の表面疵が少ない、すなわち、優れた表面性状を有す
るスラブを製造するには分塊圧延法は採用できず、鍛造
法を採用せざるを得なかった。鍛造法により表面疵が少
ないスラブを製造できるのは、分塊圧延法ではインゴッ
トに主として多軸応力および剪断応力が作用するのに対
し、鍛造法では主に圧縮応力が作用するためである。し
かしながら、鍛造法は分塊圧延法に較べて熱間加工能率
が低く、しかも、鍛造法によってもスラブの表面疵の発
生を大幅に低減することはできない。このため、鍛造法
においてもスラブの表面疵を除去する必要があり、スラ
ブの製造に余分な手間と時間を要するという問題があ
る。
【0004】PCパーマロイのインゴットに限らず、熱
間加工性に劣るインゴットを分塊圧延してスラブを製造
すると、スラブには多くの表面疵が発生する傾向があ
る。この理由は次の通りである。すなわち、インゴット
を分塊圧延するとインゴットは1×1/S以上の歪速度
で変形するが、この時のインゴットのエッジ部および表
層部の温度はインゴット中心部の温度に較べて低く、9
00℃程度にもなる。したがって、このような内外部で
温度差を有するインゴットに分塊圧延によって変形を加
えると、得られたスラブにエッジ割れ等の表面疵が発生
することになる。
【0005】特に、熱間加工性に劣るPCパーマロイの
インゴットを分塊圧延した場合には、インゴットの温度
降下時にオーステナイトの結晶粒界に不純物元素が偏析
し、結晶粒界が脆化するため、インゴットの温度が95
0〜1000℃になった時の延性が著しく低下し、スラ
ブに極めて多くの表面疵が発生することになる。また、
このような熱間加工性の問題はスラブを熱間圧延して合
金板を製造する際や、圧延された合金板を熱間プレスし
てプレス成形品を製造する場合等においても生じる。
【0006】従来、このような問題を解決するためのN
i−Fe系合金として、以下のような提案がなされてい
る。 (1)特公昭60−7017号公報; Ni:75.0〜84.9wt%、Ti:0.5〜5.
0wt%、Mg:0.0010〜0.0020wt%、
残部Feおよび不可避不純物からなり、不可避不純物と
してのCおよびSの含有量が、C:0.03wt%以
下、S:0.003wt%以下である強磁性Ni−Fe
系合金(以下、先行技術1という)。
【0007】(2)特開昭62−227054号公報; Ni:70〜85wt%、Mn:1.2wt%以下、M
o:1.0〜6.0wt%、Cu:1.0〜6.0wt
%、Cr:1.0〜5.0wt%、B:0.0020〜
0.0150wt%、残部Feおよび不可避不純物から
なり、不可避不純物としてのS、PおよびCの含有量
が、S:0.005wt%以下、P:0.01wt%以
下、C:0.01wt%以下であり、且つB含有量の
S、PおよびCの合計含有量に対する重量比が0.08
〜7.0である強磁性Ni−Fe系合金(以下、先行技
術2という)。
【0008】また、以上述べたようなPCパーマロイは
高透磁率で且つ低保磁力であることが特徴であり、今日
実用化されているものには、80%Ni−5%Mo−F
e(スーパーマロイ)や、77%Ni−5%Cu−4%
Mo−Fe(Mo,Cuパーマロイ)等があり、これら
の合金で通常得られる透磁率のレベルは、初透磁率が1
50,000、最大透磁率が300,000程度であ
る。ところが、昨今におけるエレクトロニクスの発達か
ら各種機器の小型高性能化が進み、上記したような磁性
合金の特性についてもより一層の向上が望まれている。
そして、このような要求に対し、上記成分系の磁性合金
の磁気特性を、不純物元素の低減およびCrの添加によ
り向上させた技術としては上記の先行技術2がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た先行技術には以下のような問題がある。先ず、先行技
術1の特徴は、不純物元素の一つであるSを硫化物の形
成傾向の強いMgで固定することによって、合金の熱間
加工性を向上させることにある。しかしながら、先行技
術1の合金は、その実施例に開示されているように熱間
加工において特に重要な950〜1150℃での絞り値
が50〜60%と低く、このため合金素材に熱間加工を
施すと、得られたスラブに多くの表面疵が発生してしま
う。なお、上記絞り値とは、引張試験において試験片に
対して破断するまでの間に1×1/S以上の歪速度で引
張応力を加えた時、試験片の原断面積Aと破断時におけ
る最小断面積A´との差(A−A´)の、試験片の原断
面積Aに対する百分率〔(A−A´)/A×100〕を
指す。
【0010】次に、先行技術2の特徴は、不純物元素と
してのS、PおよびCの含有量を低減し、且つBを添加
してオーステナイトの結晶粒界に不純物元素が偏析する
のを抑制することにより、合金の熱間加工性を向上させ
ることにある。しかしながら、本発明者らによる実験の
結果から、この先行技術2の合金は熱間加工性が著しく
劣っていることが判明した。すなわち、本発明者らは先
行技術2の実施例に開示された合金No.5を真空溶解
炉内で溶解してインゴットに鋳造し、このインゴットか
ら直径5mm、長さ100mmの試験片を切り出した。
そして、この試験片を1200℃に加熱し、次いで95
0℃まで冷却した後、その絞り値を測定した結果、試験
片の絞り値は35%であった。
【0011】このように先行技術2の合金も、熱間加工
において特に重要な950℃における絞り値が低く、こ
のため合金素材に熱間加工を施した場合、得られたスラ
ブに多くの表面疵が発生してしまう。また、磁気特性に
関しても、先行技術2で特徴としている不純物元素の低
減化、Cr添加によっても、最終の水素雰囲気焼鈍(1
100℃×3時間)後の直流磁気特性は初透磁率で高々
100,000程度であり、それ以上の磁気特性が要求
される用途に対しては不十分である。また、先行技術1
でも最終の水素雰囲気焼鈍(1100℃×3時間)後の
直流磁気特性は初透磁率で26,000程度であり、上
記の先行技術2と同様、より高い磁気特性が要求される
用途には不十分である。
【0012】本発明は以上のような従来技術の問題に鑑
みなされたもので、950〜1150℃の温度域におけ
る絞り値が60%を超えるような優れた熱間加工性を有
し、且つ磁気特性にも優れたNi−Fe系磁性合金およ
びその製造方法を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るため、本発明は以下のような構成からなることをその
特徴とする。
【0014】(1) Ni:76.0〜82.0wt
%、Mo:3.0〜6.0wt%、Cu:1.0〜6.
0wt%、Mn:0.10〜1.10wt%、Cr:
0.10wt%以下、S:0.0030wt%以下、
P:0.010wt%以下、O:0.0050wt%以
下、N:0.0030wt%以下、C:0.020wt
%以下、Al:0.001〜0.050wt%、Si:
1.0wt%以下、Sb:0.10wt%以下を含有
し、CaをSとの重量比Ca/Sで1.5〜6.0の範
囲で含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、下
記(1)式を満足するとともに、下記(2)式により定
義されるMoの成分偏析率が5%以下である磁気特性お
よび製造性に優れたNi−Fe系磁性合金。 3.2≦(2.02×〔Ni〕−11.13×〔Mo〕−1.25×〔Cu〕 −5.03×〔Mn〕)/(2.13×〔Fe〕)≦3.8 …(1) 但し 〔Ni〕:Ni含有量(wt%) 〔Mo〕:Mo含有量(wt%) 〔Cu〕:Cu含有量(wt%) 〔Mn〕:Mn含有量(wt%) 〔Fe〕:Fe含有量(wt%) |(〔偏析域におけるMo濃度〕−〔Mo平均濃度〕)/〔Mo平均濃度〕| ×100(%) …(2)
【0015】(2) Ni:76.0〜82.0wt
%、Mo:3.0〜6.0wt%、Cu:1.0〜6.
0wt%、Mn:0.10〜1.10wt%、Cr:
0.10wt%以下、S:0.0030wt%以下、
P:0.010wt%以下、O:0.0050wt%以
下、N:0.0030wt%以下、C:0.020wt
%以下、Al:0.001〜0.050wt%、Si:
1.0wt%以下、Sb:0.10wt%以下を含有
し、CaをSとの重量比Ca/Sで1.5〜6.0の範
囲で含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、且
つ下記(1)式を満足する成分組成を有する合金素材
を、1200〜1340℃の温度に1〜30時間加熱し
た後、950℃以上の仕上温度で1回以上分塊圧延し、
次いで、1150〜1340℃の温度に1〜5時間加熱
した後、950℃以上の仕上温度で熱間圧延することに
より、下記(2)式により定義されるMoの成分偏析率
が5%以下のNi−Fe系磁性合金を得ることを特徴と
する磁気特性および製造性に優れたNi−Fe系磁性合
金の製造方法。 3.2≦(2.02×〔Ni〕−11.13×〔Mo〕−1.25×〔Cu〕 −5.03×〔Mn〕)/(2.13×〔Fe〕)≦3.8 …(1) 但し 〔Ni〕:Ni含有量(wt%) 〔Mo〕:Mo含有量(wt%) 〔Cu〕:Cu含有量(wt%) 〔Mn〕:Mn含有量(wt%) 〔Fe〕:Fe含有量(wt%) |(〔偏析域におけるMo濃度〕−〔Mo平均濃度〕)/〔Mo平均濃度〕| ×100(%) …(2)
【0016】(3) 上記(1)の合金板からなる磁気
シールド用部材または構造体。
【0017】(4) 上記(2)の製造方法により得ら
れた合金板を磁気シールド用部材または構造体に加工す
ることを特徴とする磁気シールド用部材または構造体の
製造方法。
【0018】
【作用】本発明のNi−Fe系磁性合金は、不純物元素
の適正制御とAl、Caの適量添加の下で、Ni、M
o、Cu、MnおよびFeの各添加量を適正化し、且つ
これら元素の成分バランスを特定範囲内とし、さらにM
oの成分偏析率を特定値以下に制御することにより、同
じ成分系である従来のMo、Cuパーマロイやスーパー
マロイでは得られない高い透磁率を達成し、同時に熱間
加工性も向上させたものである。
【0019】以下、本発明の詳細をその限定理由ととも
に説明する。まず、本発明で目的とする磁気特性の向上
は、合金中の不純物元素たるP、S、O、N、C、C
r、Si、Sbの各含有量の制御の下で達成される。こ
れら各元素の限定理由は以下の通りである。
【0020】Pは本発明が対象とする高Ni−Fe系合
金の熱間加工性に有害な元素であり、しかも、最終の水
素雰囲気焼鈍時における立方体集合組織の形成傾向を弱
める作用がある。Pが0.010wt%を超えると初透
磁率が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、上限を
0.010wt%とする。なお、Pの下限は特に限定し
ないが、溶製上の経済性の面から0.0005wt%程
度が実質的な下限となる。
【0021】Sは熱間加工性に有害な元素であり、しか
も、硫化物の形成を通じて最終の水素雰囲気焼鈍時にお
ける粒成長を阻害し透磁率を劣化させるため、磁気特性
にとっても極めて有害な元素である。Sが0.0030
wt%を超えると、以下に述べるようなNi、Mo、C
u、Mn、Feの各添加量を適正化しても本発明が目的
とする磁気特性の向上は図れず、また、熱間加工性も著
しく劣化するため、0.0030wt%を上限とする。
なお、直流での初透磁率をさらに向上させるためには、
0.0010wt%以下とすることが好しい。Sの下限
は特に限定しないが、溶製上の経済性の面から0.00
01wt%程度が実質的な下限となる。
【0022】Oは本発明が対象とする合金中では酸化物
系介在物として存在し、その含有量が多いと最終の水素
雰囲気焼鈍時における粒成長性が阻害され、焼鈍後の粒
径が小さく透磁率が向上しないことから、磁気特性にと
って極めて有害な元素である。Oが0.0050wt%
を超えると、Ni、Mo、Cu、Mn、Feの各添加量
を適正化しても本発明が目的とする磁気特性の向上は図
れず、このため0.0050wt%を上限とする。な
お、初透磁率をさらに向上させるためには、0.002
0%以下とすることが好しい。Oの下限は特に限定しな
いが、溶製上の経済性の面から0.0001wt%程度
が実質的な下限となる。
【0023】Nは本発明が対象とする合金中においては
窒化物を形成し、この窒化物により磁気特性が著しく劣
化する。Nが0.0030wt%を超えると上記の理由
から磁気特性が著しく劣化するため、0.0030wt
%を上限とする。なお、初透磁率をさらに向上させるた
めには、0.0010%以下とすることが好しい。Nの
下限は特に限定しないが、溶製上の経済性の面から0.
0001wt%程度が実質的な下限となる。Cは本発明
が対象とする合金中では侵入型元素として存在し、その
含有量が多いと透磁率が低下するため、磁気特性にとっ
て有害な元素である。Cが0.020wt%を超えると
上記の理由により磁気特性の劣化が著しくなるため、
0.020wt%を上限とする。Cの下限は特に限定し
ないが、溶製上の経済性の面から0.0001wt%程
度が実質的な下限となる。
【0024】Crは本発明が対象とする合金中では不純
物として存在し、透磁率を劣化させる元素である。Cr
が0.10wt%を超えると本発明が目的とする初透磁
率の向上が図れないため、0.10wt%を上限とす
る。Crの下限は特に限定しないが、溶製上の経済性の
面から0.001wt%程度が実質的な下限となる。A
lは脱酸剤として有効な成分であり、0.001wt%
未満ではO量が本発明の規定する上限を超えてしまう。
一方、Alが0.050wt%を超えると透磁率が低下
する。このためAlは0.001〜0.050wt%と
する。
【0025】SiはAlと同様に脱酸剤として有効な成
分であるが、その含有量が1.0wt%を超えると初透
磁率が劣化する。一方、Siが1.0wt%以下では、
初透磁率を劣化させることなくOをより好しいレベルま
で低減させることができるので、Siは1.0wt%を
上限とする。Siの下限は特に限定しないが、溶製上の
経済性の面から0.001wt%程度が実質的な下限と
なる。Sbは、本発明合金においては不純物元素であ
り、磁気特性、熱間加工性に有害である。Sbが0.1
wt%を超えると本発明で意図する磁気特性、熱間加工
性が得られないため、Sbは0.1wt%以下とする。
Sbの下限は特に限定しないが、溶製上の経済性の面か
ら0.0001wt%程度が実質的な下限となる。
【0026】本発明が目的とする高い初透磁率を得るた
めには、上記のような不純物元素の制御の下でNi、M
o、Cu、MnおよびFeの各添加量を適正化するとと
もに、これら各元素の成分バランスを特定範囲内とし、
且つMoの成分偏析率を特定値以下とすることが必要で
ある。以下、これらの成分条件の限定理由について説明
する。
【0027】Niは、76.0〜82.0wt%の範囲
において本発明の目的とする高い磁気特性を得ることが
できる。Niが76.0wt%未満、82.0wt%超
のいずれの場合も透磁率が低下するため、Niは76.
0〜82.0wt%とする。Moは、3.0〜6.0w
t%の範囲において本発明の目的とする高い磁気特性を
得ることができる。Moが3.0wt%未満、6.0w
t%超のいずれの場合も透磁率向上が達成されないた
め、Moは3.0〜6.0wt%とする。
【0028】Cuは、本発明の規定する成分組成の合金
において直流磁気特性を飛躍的に向上させる効果を有す
る。このようなCuの効果は、Ni:76.0〜82.
0wt%、Mo:3.0〜6.0wt%の時に表われ、
最適のCu量は1.0〜6.0wt%である。Cuが
1.0wt%未満ではCu添加による特性向上効果が得
られず、一方、6.0wt%を超えると逆に磁気特性が
劣化してしまう。このためCuは1.0〜6.0wt%
とする。Mnは、上記のMo、Cuと同様に本発明が対
象とする合金の磁気特性に影響を及ぼす元素である。M
nが1.10wt%を超えると透磁率の向上が図れず、
一方、0.10wt%未満では熱間加工性が劣化する。
このためMnは0.10〜1.10wt%とする。
【0029】次に、Ni、Mo、Cu、MnおよびFe
の成分バランスについて説明する。本発明者らは、上記
各成分元素の成分バランスに関して、初透磁率と極めて
良好な相関を有する下記のようなパラメータXを見出し
た。 X=(2.02×〔Ni〕−11.13×〔Mo〕−1.25×〔Cu〕 −5.03×〔Mn〕)/(2.13×〔Fe〕)
【0030】図1は、Ni、Mo、Cu、Mn、Cr、
P、S、O、N、C、Si、Ca、Alの各含有量とM
oの成分偏析率が本発明範囲にある合金について、上記
パラメータXと初透磁率との関係を調べたものである。
各供試材は、熱間加工後、冷延、焼鈍を繰り返して作成
された板厚1.0mmの薄板から外径45mm、内径3
3mmのJISリングを打ち抜き、それらに水素気流中
雰囲気下で1100℃×3時間の熱処理を施した後、1
00℃/hrで冷却したものである。
【0031】図1によれば、パラメータXが3.2未満
および3.8超では初透磁率は200,000未満であ
るのに対し、パラメータXが3.2〜3.8の範囲では
200,000以上の高い初透磁率が得られている。こ
のため本発明では、高い初透磁率が得られる成分バラン
スとして、上記パラメータXを3.2〜3.8と規定す
る。
【0032】次に、Moの成分偏析率について説明す
る。図2は、Ni、Mo、Cu、Mn、Cr、P、S、
O、N、C、Si、Ca、Al、Sbの各添加量とパラ
メータXが本発明範囲にある合金について、初透磁率と
Moの成分偏析率との関係を調べたものである。ここ
で、Moの成分偏析率は下式で定義される。 |(〔偏析域におけるMo濃度〕−〔Mo平均濃度〕)/〔Mo平均濃度〕| ×100(%) ここで、Moの偏析とは鋼塊が凝固する際の樹脂状晶間
に存在するミクロ的な偏析、または鋼塊内の位置の違い
によるセミマクロ的な偏析を意味し、偏析域とは平均濃
度に対して最も偏った濃度(最大または最小)の領域を
意味する。
【0033】図2によれば、Moの成分偏析率が5%以
下の範囲において、200,000以上の高い初透磁率
が得られている。このため本発明では、Moの成分偏析
率を5%以下と規定する。なお、本発明においてはCo
量は特に限定しないが、Coは通常Ni−Fe合金中に
不可避不純物としてある程度含まれている。Co量が
1.0%以下では初透磁率にほとんど影響を与えないの
で、本発明合金ではCoを1.0%以下の範囲で含有さ
せることができる。
【0034】本発明者らは上述した高い透磁率を有する
Ni−Fe系磁性合金において、優れた熱間加工性が得
られる成分条件を検討し、その結果、上述した成分条件
の下でCaをS量に応じて適量添加すること、具体的に
はCaをSとの重量比Ca/Sで1.5〜6.0の範囲
で添加することにより、上述した優れた磁気特性を確保
しつつ、熱間加工性を著しく改善できることを見出し
た。また、このようなCaの適量添加による熱間加工性
の著しい改善は、合金の凝固時に粒界に偏析するSをC
aが固定することによるものであることが判った。
【0035】CaはS量に対する重量比においてCa/
S:1.5〜6.0の範囲で添加される必要がある。C
a/Sが1.5未満ではSがCaによって十分に固定さ
れないため、Ca添加による効果を十分に得ることがで
きない。一方、Ca/Sが6.0を超えると過剰なCa
によって低融点の金属間化合物が形成されるため、粒界
脆化が生じ、その結果、合金の熱間加工性が低下する。
【0036】Caの添加効果を調べるため次のような試
験を行った。表1に示す合金No.3(Ca/S:3.
5、本発明合金)、合金No.13(Ca無添加、比較
合金)および合金No.19(Ca/S:7.0、比較
合金)を電気炉で溶解して炉外精錬した後、インゴット
に鋳造した。このインゴットから直径5mm、長さ10
0mmの試験片を切り出し、これら試験片を1280℃
の温度に20時間加熱した。次いで、上記試験片をそれ
ぞれ異なる引張試験温度まで冷却し、それぞれの引張試
験温度における試験片の絞り値を測定した。また、これ
とは別に合金No.3のインゴットを分塊圧延した後、
上記と同様の試験片を採取し、1200℃の温度に3時
間加熱した後、同様の引張試験を行った。
【0037】図3はその試験結果を示すもので、Ca/
S:3.5の合金No.3の絞り値は、Ca/S:0の
合金No.13およびCa/S:7.0の合金No.1
9の絞り値に較べて大きく、特に、熱間加工において重
要な950〜1150℃の温度域において著しく大きく
なっている。このことは合金No.3が熱間加工性に優
れていることを意味し、合金の熱間加工性を向上させる
ためには、Ca/Sが特定範囲になるような条件でCa
を添加する必要があることを示している。
【0038】次に、CaのSに対する最適重量比を調べ
るために、次のような試験を行った。表1に示す合金N
o.1〜No.10(いずれも、本発明合金)、合金N
o.13(比較合金)および合金No.19(比較合
金)を電気炉で溶解して炉外精錬した後、インゴットに
鋳造し、これらのインゴットから直径5mm、長さ10
0mmの試験片を切り出した。これらの試験片を128
0℃の温度に20時間加熱した後、950〜1150℃
の温度に冷却し、この温度範囲における試験片の最低絞
り値を測定した。その結果を図4に示す。これによれ
ば、Ca/Sが1.5〜6.0の範囲において本発明の
目標とする60%を超える絞り値が得られている。ま
た、Ca/Sが6.0を超えると初透磁率も劣化する。
以上の理由から、本発明におけるCaの添加量はS量と
の重量比Ca/Sで1.5〜6.0と規定する。
【0039】次に本発明の合金の製造方法について説明
する。本発明の合金を分塊圧延−熱間圧延により製造す
る場合、上記の成分組成(パラメータXを含む)の合金
素材を、1200〜1340℃の温度に1〜30時間加
熱した後、950℃以上の仕上温度で1回以上分塊圧延
し、次いで、1150〜1340℃の温度に1〜5時間
加熱した後、950℃以上の仕上温度で熱間圧延する。
これにより表面疵の発生が極めて少なく、且つ優れた磁
気特性を有するNi−Fe系合金を得ることができる。
【0040】まず、合金素材の分塊圧延では、上記の特
定の加熱条件と仕上温度で熱間加工することにより優れ
た表面性状を有するスラブを製造する必要がある。分塊
圧延時の最適加熱温度を調べるため、次のような試験を
行った。表1に示す合金No.3(本発明合金)を電気
炉で溶解して炉外精錬した後、インゴットに鋳造し、こ
のインゴットから直径5mm、長さ100mmの試験片
を切り出した。この試験片をそれぞれ異なる温度に20
時間加熱し、それぞれの加熱温度における試験片の絞り
値を測定した。図5はその結果を示すもので、加熱温度
1200〜1340℃の範囲において、本発明の目標と
する60%を超える絞り値が得られている。このように
1200〜1340℃の加熱温度において高い絞り値が
得られるのは、加熱温度が1250℃に達するまでは粒
界に偏析したSおよびPの再固溶によって絞り値は高く
なるが、加熱温度が1250℃を超えると再固溶したS
およびPの粒界再偏析が起こり、この結果、絞り値が小
さくなるためである。また、加熱温度が1200℃未満
ではMoの成分偏析率が5%を超えてしまう。以上の理
由から、分塊圧延時の加熱温度は1200〜1340℃
の範囲に限定される。
【0041】また、加熱時間については、これを1〜3
0時間の範囲とすることにより、後述する熱間圧延条件
の適正化の下で、本発明が意図するMoの成分偏析率の
制御と熱間加工性の改善が可能となる。加熱時間が1時
間未満ではMoの成分偏析率が5%を超え、一方、30
時間を超えると熱間加工性の劣化が著しくなる。以上の
理由から、分塊圧延時の加熱時間は1〜30時間に限定
される。なお、分塊圧延におけるヒート数はCa/Sが
本発明範囲内であれば1ヒート以上で圧延可能であり、
特にCa/Sが2.6〜6.0では1ヒートでの圧延が
可能である。なお、2ヒート以上の分塊圧延を行う場合
にも、各ヒートにおいて上記した加熱条件(加熱温度:
1200〜1340℃、加熱時間:1〜30時間)に従
えばよい。
【0042】次に、分塊圧延に続く熱間圧延では、11
50〜1340℃で1〜5時間加熱した後、950℃以
上の仕上温度で熱間圧延することにより優れた表面性状
を有する熱延コイルを製造する必要がある。この熱間圧
延時の最適加熱温度を調べるため、次のような試験を行
った。表1に示す合金No.3(本発明合金)を電気炉
で溶解して炉外精錬した後、インゴットに鋳造した。こ
のインゴットを上述した本発明条件で分塊圧延し、得ら
れたスラブから直径5mm、長さ100mmの試験片を
切り出した。この試験片をそれぞれ異なる温度に3時間
加熱し、それぞれの加熱温度における試験片の絞り値を
測定した。図6はその結果を示すもので、加熱温度11
50〜1340℃の範囲において、本発明の目標とする
60%を超える絞り値が得られている。このように11
50〜1340℃の加熱温度において高い絞り値が得ら
れるのは、加熱温度が1200℃に達するまでは粒界に
偏析したSおよびPの再固溶によって絞り値は高くなる
が、加熱温度が1200℃を超えると再固溶したSおよ
びPの粒界再偏析が起こり、この結果、絞り値が小さく
なるためである。また、加熱温度が1150℃未満では
Moの成分偏析率が5%を超えてしまう。以上の理由か
ら、熱間圧延時の加熱温度は1150〜1340℃の範
囲に限定される。
【0043】また、加熱時間については、これを1〜5
時間の範囲とすることにより、上述した分塊圧延条件の
適正化の下で、本発明で意図するMoの成分偏析率の制
御と熱間加工性の改善が可能となる。加熱時間が1時間
未満ではMoの成分偏析率が5%を超え、一方、5時間
を超えると熱間加工性の劣化が著しくなる。以上の理由
から、熱間圧延時の加熱時間は1〜5時間に限定され
る。
【0044】次に、分塊圧延および熱間圧延の仕上温度
の限定理由について説明すると、図3によれば、引張試
験温度が950℃未満では、本発明合金である合金N
o.3は鋳造材、分塊圧延材ともに絞り値が急激に低下
している。これは950℃未満の温度においては、結晶
粒内の強度が結晶粒界の強度よりも大きいためであると
考えられる。したがって、優れた表面性状を有するスラ
ブおよび熱延コイルを製造するためには、分塊圧延およ
び熱間圧延を950℃以上の仕上温度で行う必要があ
る。
【0045】通常、本発明による合金は、上記の熱間圧
延の後、冷間圧延および焼鈍を経て最終製品となるが、
熱延材のままで最終製品としてもよい。本発明の合金板
を加工して得られた磁気シールド材は地磁気のような低
磁場に対しても優れた磁気シールド性能を有する。な
お、本発明合金の製造方法は上記の製造方法に限定され
るものではなく、連続鋳造法を適用して製造することも
できる。また例えば、上述した成分組成の合金を薄鋳板
に鋳造し、これを熱間圧延するか、若しくは熱間圧延す
ることなく冷延素材としてもよい。また、薄鋳板を素材
とする場合には、熱間加工に代えて或いは冷間圧延の高
効能率化のために温間加工を施してもよい。本発明範囲
の成分を有する合金を用いれば、薄鋳板に鋳造する際の
表面疵の発生も抑制できる。
【0046】
【実施例】
〔実施例1〕表1〜表4に示す成分組成の高Ni−Fe
系合金(本発明合金:No.1〜No.10、比較合
金:No.11〜No.23)を電気炉にて溶解して炉
外精錬した後、インゴットに鋳造した。これらのインゴ
ットを手入れの後、分塊圧延(合金No.13以外は加
熱条件1280℃×20hr・圧延終了温度970℃、
合金No.13は加熱条件1200℃×10hr・圧延
終了温度950℃)によりスラブとした。この際、表面
疵が発生したスラブについては疵取りを行った。引き続
きスラブに酸化防止剤を塗布して熱間圧延(加熱条件1
200℃×3hr、圧延終了温度950℃)を行い、熱
延コイルとした。この熱延コイルを表面研削した後、冷
間圧延により厚さ1.0mmの冷延板とし、この冷延板
を焼鈍(930℃)して、製品コイルを得た。表5およ
び表6に本発明合金および比較合金の材料特性を示す。
【0047】本実施例において、950〜1150℃に
おける最低絞り値は、インゴットから採取した丸棒試験
片(直径5mm、長さ100mm)を1280℃に20
時間加熱した後、試験片をそれぞれ異なる引張試験温度
まで冷却し、それぞれの引張試験温度における試験片の
絞り値を測定することにより求めた。
【0048】分塊圧延後のスラブの表面疵については、
表面疵が分塊圧延時の応力分布のためにスラブエッジで
発生し易いことから、スラブエッジの表面疵について調
べた。スラブエッジの表面疵の定量化は、スラブの幅方
向におけるスラブエッジの単位表面積に生じた深さ2m
m以上の割れの長さを合計することによって行った。な
お、Ni−Fe系合金のインゴットは1100℃以上に
加熱されると粒界酸化が生じ、この粒界酸化は加熱温度
の上昇にしたがって著しくなる。しかしながら、粒界酸
化は酸化防止剤を使用し、且つ加熱温度を1350℃以
下にするとほとんど発生しない。この実施例(後述する
実施例2、実施例3も同様)でも酸化防止剤を使用し、
且つインゴットの加熱温度を1350℃以下としたた
め、粒界酸化に基づく表面疵は無視できる程度であっ
た。
【0049】また、熱延コイルのエッジ割れについて
は、熱延コイルの表面検査をコイル全長にわたり行い、
表5および表6の欄外に示す4種類のランクに分類し
た。Moの成分偏析率は、製品コイルの圧延方向と90
°の角度をなす方向(圧延直角方向)の板断面にてEP
MA(電子プローグマイクロアナライザー)による線分
析を行うことで測定し、下式により求めた。 |(〔偏析域におけるMo濃度〕−〔Mo平均濃度〕)/〔Mo平均濃度〕| ×100(%) 但し 〔偏析域におけるMo濃度〕:合金の断面の偏析
域におけるMo濃度(wt%) 〔平均Mo濃度〕:合金の断面でのMoの平均濃度(w
t%) 初透磁率は、製品コイルから外径45mm、内径33m
mのJISリングを打ち抜き、これに水素気流中雰囲気
下で1100℃×3時間の熱処理を施し、100℃/h
rで冷却した試料について測定した。
【0050】表5および表6において、材料No.1〜
No.10は成分組成およびMoの成分偏析率が全て本
発明条件を満足した本発明例である。これらは950〜
1150℃における最低絞り値(以下、単に絞り値とい
う)が60%を超え、分塊圧延後のスラブには表面疵は
見られず、また、熱延コイルのエッジ割れも全く発生し
ておらず、製造性が優れていることが明らかである。ま
た、これらの材料は初透磁率が200,000以上とい
う優れたレベルにある。また、材料No.1〜No.4
はパラメータXが3.35〜3.55で、S、O、Nが
より好しいレベルまで低減された本発明例であるが、こ
れらの初透磁率は470,000以上であり、本発明例
の中でも最も優れたレベルにある。
【0051】これに対して、材料No.11、No.1
2、No.20およびNo.22は、それぞれNi量お
よびパラメータXが本発明の上限を超えた比較例、Ni
量およびパラメータXが本発明の下限未満の比較例、A
l量が本発明の上限を超えた比較例、Mn量が本発明の
上限を超えた比較例であり、いずれも初透磁率が本発明
例と較べて低い。材料No.13はCa無添加の比較例
であり、絞り値は14%と著しく低く、分塊圧延後のス
ラブに表面疵が多く発生し、熱延コイルのエッジの割れ
も著しい。また、この材料のMoの成分偏析率は5%を
超えており、初透磁率は本発明例に較べて低い。
【0052】材料No.14、No.15、No.23
は、それぞれP量、S量、Sb量が本発明の上限を超え
た比較例であり、初透磁率は本発明例に較べて低い。ま
た、絞り値もそれぞれ23%、11%、18%と著しく
低く、分塊圧延後のスラブに表面疵が多く発生し、熱延
コイルのエッジ割れも著しい。材料No.16、No.
17、No.18は、それぞれO量、N量、C量が本発
明の上限を超えた比較例であり、初透磁率は本発明例に
較べて低い。材料No.19はCr量およびCa/Sが
本発明の上限を超えた比較例であり、初透磁率は本発明
例に較べて低い。また、絞り値も18%と著しく低く、
分塊圧延後のスラブに表面疵が多く発生し、熱延コイル
のエッジ割れも著しい。また、材料No.21はMn量
が本発明の下限未満の比較例であり、絞り値は20%と
著しく低く、分塊圧延後のスラブに表面疵が多く発生
し、熱延コイルのエッジ割れも著しい。さらに、比較例
である材料No.13、No.14、No.15、N
o.19、No.21、No.23は、材料の歩留りが
本発明例に較べて著しく低かった。
【0053】〔実施例2〕実施例1で用いた合金No.
3、No.6、No.13、No.19のインゴットを
表7に示す条件で1ヒートで分塊圧延し、スラブとし
た。また、合金No.10材(材料No.28)は表7
に示す条件で2ヒート(1ヒート、2ヒートとも表5に
示す条件)で分塊圧延し、スラブとした。この際、表面
疵が発生したスラブについては疵取りを行った。引き続
きスラブに酸化防止剤を塗布して熱間圧延(加熱条件1
200℃×3hr、圧延終了温度970℃)を行い、熱
延コイルを得た。以降は実施例1と同様の製造工程を実
施し、製品コイル(板厚1.0mm)を得た。分塊圧延
後のスラブの表面疵、熱延コイルのエッジ割れ、Moの
成分偏析率および初透磁率を実施例1と同様の方法で調
べた。その結果を表7に併せて示す。
【0054】表7において、材料No.24〜No.2
8は本発明成分条件の合金を本発明で規定した分塊圧延
および熱間圧延条件により製造したものであり、いずれ
もMoの成分偏析率は5%以下で、初透磁率は200,
000以上という優れた値を示し、また、分塊圧延後の
スラブに表面疵の発生はなく、熱延コイルのエッジ割れ
も全くなく、製造性にも優れている。これに対して、材
料No.29〜No.31はいずれも本発明の成分条件
の合金であるが、これらの材料は分塊圧延条件に関し
て、それぞれ加熱温度が本発明の上限を超えた比較例、
加熱温度と加熱時間が本発明の下限未満の比較例、圧延
終了温度が本発明の下限未満の比較例であり、いずれも
分塊圧延後のスラブに表面疵が多く発生している。特
に、材料No.30では分塊圧延時の加熱温度および加
熱時間が本発明の下限未満であるため、Moの成分偏析
率が5%を超え、初透磁率が本発明例に較べて低い。
【0055】材料No.32、No.33は比較合金を
用いた例であり、分塊圧延および熱間圧延の条件は本発
明範囲内であるが、分塊圧延後のスラブに表面疵が多く
発生しており、特に、材料No.33(合金No.19
を用いたもの)は初透磁率も本発明例に較べて低い。さ
らに、材料No.29〜No.33は、材料の歩留りが
本発明例に較べて著しく低かった。
【0056】〔実施例3〕実施例1で用いた合金No.
3、No.6のインゴットを分塊圧延(加熱条件128
0℃×20hr、圧延終了温度970℃)し、スラブと
した。この際、表面疵が発生したスラブについては疵取
りを行った。引き続きスラブに酸化防止剤を塗布して表
8に示す条件で熱間圧延を行い、熱延コイルを得た。以
降は実施例1と同様の製造工程を実施し、製品コイル
(板厚1.0mm)を得た。熱延コイルのエッジ割れ、
Moの成分偏析率および初透磁率を実施例1と同様の方
法で調べた。その結果を表8に併せて示す。表8におい
て、材料No.34〜No.37は本発明成分条件の合
金を本発明で規定した分塊圧延および熱間圧延条件によ
り製造したものであり、いずれもMoの成分偏析率は5
%以下で、初透磁率は200,000以上という優れた
値を示し、また、熱延コイルのエッジ割れも全くなく、
製造性にも優れている。
【0057】これに対して、材料No.38〜No.4
0はいずれも本発明の成分条件の合金であるが、これら
の材料は熱間圧延条件に関して、それぞれ加熱時間が本
発明の上限を超えた比較例、加熱温度が本発明の上限を
超え且つ加熱時間が本発明の下限未満の比較例、圧延終
了温度が本発明の下限未満の比較例であり、いずれも熱
延コイルのエッジ割れが著しく、特に、材料No.39
は熱間圧延の加熱時間が本発明の下限未満であるため、
Moの成分偏析率が5%を超え、初透磁率が本発明例に
較べて低い。さらに、材料No.38〜No.40は、
材料の歩留りが本発明例に較べて著しく低かった。な
お、上記した実施例1〜実施例3における本発明例の磁
気遮蔽度は、実施例1における比較例と較べて著しく高
く、これを磁気シールド用部材または磁気シールド用構
造体とした場合にも優れた性能を発揮し得ることが確認
された。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【発明の効果】以上述べたように本発明のNi−Fe系
磁性合金は、スラブの表面疵や熱延コイルのエッジ割れ
が全く発生しないという優れた製造性を有し、しかも、
従来のPCパーマロイに較べて著しく高い初透磁率を有
し、このため従来材では対応できなかったより高い磁気
特性が要求される用途にも十分に対応することができ
る。すなわち、従来よりもさらに高い磁気シールド特性
の要求される各種磁気シールド部材や磁気ヘッドケー
ス、コア材、さらには磁気増幅器や磁気シールドルーム
のような構造体とした場合でも所要の性能を発揮するこ
とができ、近時におけるエレクトロニクス産業の要請に
対して適切に対応し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で規定するパラメータXと初透磁率との
関係を示すグラフ
【図2】Moの成分偏析率と初透磁率との関係を示すグ
ラフ
【図3】CaとSの重量比Ca/Sが異なるNi−Fe
系合金について、引張試験温度と絞り値との関係を示す
グラフ
【図4】CaとSの重量比Ca/Sと950〜1150
℃での最低絞り値との関係を示すグラフ
【図5】Ni−Fe系合金のインゴットから切り出した
試験片の加熱温度と絞り値との関係を示すグラフ
【図6】Ni−Fe系合金のスラブから切り出した試験
片の加熱温度と絞り値との関係を示すグラフ
フロントページの続き (72)発明者 山田 誠 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 沖本 伸一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山村 直一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 見崎 裕之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni:76.0〜82.0wt%、M
    o:3.0〜6.0wt%、Cu:1.0〜6.0wt
    %、Mn:0.10〜1.10wt%、Cr:0.10
    wt%以下、S:0.0030wt%以下、P:0.0
    10wt%以下、O:0.0050wt%以下、N:
    0.0030wt%以下、C:0.020wt%以下、
    Al:0.001〜0.050wt%、Si:1.0w
    t%以下、Sb:0.10wt%以下を含有し、Caを
    Sとの重量比Ca/Sで1.5〜6.0の範囲で含有
    し、残部Feおよび不可避不純物からなり、下記(1)
    式を満足するとともに、下記(2)式により定義される
    Moの成分偏析率が5%以下である磁気特性および製造
    性に優れたNi−Fe系磁性合金。 3.2≦(2.02×〔Ni〕−11.13×〔Mo〕−1.25×〔Cu〕 −5.03×〔Mn〕)/(2.13×〔Fe〕)≦3.8 …(1) 但し 〔Ni〕:Ni含有量(wt%) 〔Mo〕:Mo含有量(wt%) 〔Cu〕:Cu含有量(wt%) 〔Mn〕:Mn含有量(wt%) 〔Fe〕:Fe含有量(wt%) |(〔偏析域におけるMo濃度〕−〔Mo平均濃度〕)/〔Mo平均濃度〕| ×100(%) …(2)
  2. 【請求項2】 Ni:76.0〜82.0wt%、M
    o:3.0〜6.0wt%、Cu:1.0〜6.0wt
    %、Mn:0.10〜1.10wt%、Cr:0.10
    wt%以下、S:0.0030wt%以下、P:0.0
    10wt%以下、O:0.0050wt%以下、N:
    0.0030wt%以下、C:0.020wt%以下、
    Al:0.001〜0.050wt%、Si:1.0w
    t%以下、Sb:0.10wt%以下を含有し、Caを
    Sとの重量比Ca/Sで1.5〜6.0の範囲で含有
    し、残部Feおよび不可避不純物からなり、且つ下記
    (1)式を満足する成分組成を有する合金素材を、12
    00〜1340℃の温度に1〜30時間加熱した後、9
    50℃以上の仕上温度で1回以上分塊圧延し、次いで、
    1150〜1340℃の温度に1〜5時間加熱した後、
    950℃以上の仕上温度で熱間圧延することにより、下
    記(2)式により定義されるMoの成分偏析率が5%以
    下のNi−Fe系磁性合金を得ることを特徴とする磁気
    特性および製造性に優れたNi−Fe系磁性合金の製造
    方法。 3.2≦(2.02×〔Ni〕−11.13×〔Mo〕−1.25×〔Cu〕 −5.03×〔Mn〕)/(2.13×〔Fe〕)≦3.8 …(1) 但し 〔Ni〕:Ni含有量(wt%) 〔Mo〕:Mo含有量(wt%) 〔Cu〕:Cu含有量(wt%) 〔Mn〕:Mn含有量(wt%) 〔Fe〕:Fe含有量(wt%) |(〔偏析域におけるMo濃度〕−〔Mo平均濃度〕)/〔Mo平均濃度〕| ×100(%) …(2)
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の合金板からなる磁気シ
    ールド用部材または構造体。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の製造方法により得られ
    た合金板を磁気シールド用部材または構造体に加工する
    ことを特徴とする磁気シールド用部材または構造体の製
    造方法。
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