JPH0718415A - 硬質被覆層がすぐれた密着性を有する表面被覆立方晶窒化ほう素基セラミックス製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた密着性を有する表面被覆立方晶窒化ほう素基セラミックス製切削工具

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 硬質被覆層の基体表面に対する密着性のすぐ
れた表面被覆ｃＢＮ基セラミックス製切削工具を提供す
る。 【構成】 表面被覆ｃＢＮ基セラミックス製切削工具
が、２０〜５０容量％のセラミックス結合相と、残部の
ｃＢＮ分散相からなる組成を有し、かつイオンエッチン
グ処理で上記セラミックス結合相が最表面から０．５〜
５μｍの深さに亘って除去され、残留したｃＢＮ分散相
によって粗面化された基体の表面に、ＴｉＣ，ＴｉＮ，
ＴｉＣＮ，ＴｉＣＯ，ＴｉＣＮＯ、およびＡｌ2 Ｏ3 の
うちの１種の単層または２種以上の複層からなる硬質被
覆層を５〜２０μｍの平均層厚で蒸着形成したものから
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、硬質被覆層の立方晶
窒化ほう素（以下、ｃＢＮで示す）基セラミックス基体
に対する密着性にすぐれた表面被覆ｃＢＮ基セラミック
ス製切削工具に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】従来、例えば特開昭５９−８６７９号公
報や特開平１−９６０８３号公報などに記載されるよう
に、ＴｉＣやＴｉＮ、あるいはＴｉＣＮ、さらにＡｌ2
Ｏ3 やＷＣ，ＴｉＢ2 などで構成されたセラミックス結
合相が２０〜５０容量％を占め、残りが実質的にｃＢＮ
分散相からなる組成を有するｃＢＮ基セラミックス基体
の表面に、物理蒸着法や化学蒸着法を用い、Ｔｉの炭化
物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、および炭窒酸化物、
並びに酸化アルミニウム（以下、それぞれＴｉＣ，Ｔｉ
Ｎ，ＴｉＣＮ，ＴｉＣＯ，ＴｉＣＮＯ、およびＡｌ2 Ｏ
3 で示す）のうちの１種の単層または２種以上の複層か
らなる硬質被覆層を５〜２０μｍの平均層厚で形成して
なる表面被覆ｃＢＮ基セラミックス製切削工具が知られ
ており、これが、例えば高硬度焼入鋼や鋳鉄などの切削
加工に用いられていることも知られている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の切削加工
は省力化の面から高速化の傾向にあるが、上記の従来表
面被覆ｃＢＮ基セラミックス製切削工具を用いて、例え
ば高硬度焼入鋼を切削加工する場合、通常切削速度が２
００ｍ／min.程度までの切削速度では問題はないが、こ
れを越えて４００ｍ／min.程度まで高速になると、硬質
被覆層に剥離が発生し易くなり、これが原因で比較的短
時間で使用寿命に至るのが現状である。
【０００４】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、上記の従来表面被覆ｃＢＮ基セ
ラミックス製切削工具に着目し、これを構成する硬質被
覆層の基体表面に対する密着性向上をはかるべく研究を
行なった結果、基体表面に対するイオンエッチング処理
で、ｃＢＮ分散相をそのまま残留させ、セラミックス結
合相だけを除去することができることを見出し、したが
って基体表面を、最表面から所定深さに亘ってセラミッ
クス結合相だけを除去した状態、すなわち残留したｃＢ
Ｎ分散相によって粗面化した状態とすることができ、こ
の状態の基体表面に、物理蒸着法あるいは化学蒸着法を
用い、通常の条件で硬質被覆層を形成すると、前記硬質
被覆層は前記基体表面に対してきわめて強固に密着する
ようになることから、この結果の表面被覆ｃＢＮ基セラ
ミックス製切削工具は、例えばこれを高硬度焼入鋼の切
削速度が４００ｍ／min.程度の高速切削に用いた場合に
も前記硬質被覆層に剥離の発生なく、長期に亘ってすぐ
れた切削性能を発揮するという研究結果を得たのであ
る。
【０００５】この発明は、上記の研究結果にもとづいて
なされたものであって、２０〜５０容量％のセラミック
ス結合相と、残部のｃＢＮ分散相からなる組成を有し、
かつイオンエッチング処理で上記セラミックス結合相が
最表面から０．５〜５μｍの深さに亘って除去され、残
留したｃＢＮ分散相によって粗面化された基体の表面
に、ＴｉＣ，ＴｉＮ，ＴｉＣＮ，ＴｉＣＯ，ＴｉＣＮ
Ｏ、およびＡｌ2 Ｏ3 のうちの１種の単層または２種以
上の複層からなる硬質被覆層を５〜２０μｍの平均層厚
で蒸着形成してなる、硬質被覆層がすぐれた密着性を有
する表面被覆ｃＢＮ基セラミックス製切削工具に特徴を
有するものである。
【０００６】なお、この発明の切削工具において、これ
を構成する基体のセラミックス結合相の含有量を２０〜
５０容量％と限定したのは、その含有量が２０容量％未
満では所望の強度を確保することができず、一方その含
有量が５０容量％を越えると、基体の耐摩耗性が低下す
るようになるばかりでなく、ｃＢＮ分散相の割合が相対
的に少なくなりすぎて、イオンエッチング処理後の面粗
さのピッチが大きくなりすぎ、これに形成される硬質被
覆層に所望のすぐれた密着性を確保することができなく
なるという理由によるものであり、またセラミックス結
合相の除去深さを０．５〜５μｍとしたのは、その深さ
が０．５μｍ未満では、硬質被覆層に所望のすぐれた密
着性を確保することができず、一方その深さが５μｍを
越えると、基体表面が粗面となりすぎ、この粗面はこれ
に形成される硬質被覆層の平滑性を損ない、切刃に欠損
やチッピングが発生する原因になるという理由によるも
のであり、さらにこれの除去深さに関連して、原料粉末
として使用されるｃＢＮは、その粒度が平均粒径で０．
５〜３μｍであるのが望ましい。また、この発明の切削
工具において、これを構成する硬質被覆層の平均層厚を
５〜２０μｍと限定したのは、その平均層厚が５μｍ未
満では所望のすぐれた耐摩耗性を長期に亘って保持する
ことができず、一方その平均層厚が２０μｍを越える
と、切刃に欠損やチッピング（微小欠け）が発生し易く
なるという理由にもとづくものである。
【０００７】
【実施例】つぎに、この発明の切削工具を実施例により
具体的に説明する。基体として、それぞれ表１に示され
る組成を有し、かつＴＰＧＡ３２２のスローアウェイチ
ップ形状をもったｃＢＮ基セラミックス基体を用意し、
これに通常のイオンシンニング装置を用い、通常の条件
でイオンエッチング処理を施して、同じく表１に示され
る深さでセラミックス結合相を除去した後、物理蒸着装
置を用い、通常の条件で同じく表１に示される組成およ
び平均層厚の硬質被覆層を形成することにより本発明表
面被覆ｃＢＮ基セラミックス製切削工具（以下、本発明
被覆切削工具という）１〜６をそれぞれ製造した。ま
た、比較の目的で、上記基体表面に対するイオンエッチ
ング処理を行なわない以外は同一の条件で従来表面被覆
ｃＢＮ基セラミックス製切削工具（以下、従来被覆切削
工具という）１〜６をそれぞれ製造した。
【０００８】ついで、この結果得られた各種の被覆切削
工具について、 被削材：ＳＣＭ４１５（硬さ：ＨR Ｃ６５）の丸棒、 切削速度：４００ｍ／min.、 切込み：０．２mm、 送り：０．１mm／rev.、 切削時間：３０分、 の条件で高硬度焼入鋼の乾式連続高速切削試験を行な
い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。これらの測定結果
を表２に示した。
【０００９】
【表１】
【００１０】
【表２】
【００１１】
【発明の効果】表１，２に示される結果から、本発明被
覆切削工具１〜６は、いずれも硬質被覆層の基体表面に
対する密着性にすぐれているので、高硬度焼入鋼の高速
切削でも硬質被覆層に剥離の発生なく、すぐれた耐摩耗
性を示すのに対して、従来被覆切削工具１〜６は、いず
れも硬質被覆層の基体表面に対する密着性が不十分であ
るために、切削加工開始後比較的短時間で硬質被覆層に
剥離が発生し、これが原因で使用寿命に至ることが明ら
かである。上述のように、この発明の表面被覆ｃＢＮ基
セラミックス製切削工具は、通常の切削速度（例えば高
硬度焼入鋼の場合は２００ｍ／min.、鋳鉄の場合は４０
０ｍ／min.）では勿論のこと、上記のように高速切削
（例えば鋳鉄の場合は６００ｍ／min.程度）でも硬質被
覆層に剥離の発生なく、すぐれた切削性能を長期に亘っ
て発揮し、切削加工の高速化に十分対応することができ
るものである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 ２０〜５０容量％のセラミックス結合相
    と、残部の立方晶窒化ほう素分散相からなる組成を有
    し、かつイオンエッチング処理で上記セラミックス結合
    相が最表面から０．５〜５μｍの深さに亘って除去さ
    れ、残留した立方晶窒化ほう素分散相によって粗面化さ
    れた基体の表面に、Ｔｉの炭化物、窒化物、炭窒化物、
    炭酸化物、および炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウム
    のうちの１種の単層または２種以上の複層からなる硬質
    被覆層を５〜２０μｍの平均層厚で蒸着形成してなる硬
    質被覆層がすぐれた密着性を有する表面被覆立方晶窒化
    ほう素基セラミックス製切削工具。
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