JPH07177899A - 遺伝子の検出方法 - Google Patents

遺伝子の検出方法

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JPH07177899A
JPH07177899A JP32752893A JP32752893A JPH07177899A JP H07177899 A JPH07177899 A JP H07177899A JP 32752893 A JP32752893 A JP 32752893A JP 32752893 A JP32752893 A JP 32752893A JP H07177899 A JPH07177899 A JP H07177899A
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JP32752893A
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Michihiro Nakamura
通宏 中村
Toshimi Matsui
聡美 松井
Tadashi Hatanaka
唯史 畑中
Masao Tsuji
正男 辻
Mitsuru Ishikawa
満 石川
Masayuki Masuko
正行 増子
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BIO SENSOR KENKYUSHO KK
Original Assignee
BIO SENSOR KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 極めて簡便で迅速な遺伝子の検出方法を提供
する。 【構成】 蛍光色素で標識されたプライマを用いて、検
出対象となる遺伝子をポリメラーゼ・チェイン・リアク
ション(PCR)により増幅させる。増幅された遺伝子
が有する該蛍光色素の蛍光偏光解消度を時間分解的に測
定する。 【効果】 蛍光色素で標識されたプライマーを用いて、
検出対象となる遺伝子を鋳型としてPCRにより増幅さ
せることによって、蛍光色素で標識されたプライマーを
含む遺伝子が増幅、生成される。また、増幅遺伝子の塩
基配列上の該蛍光色素の蛍光を励起させ、該蛍光の偏光
解消度を時間分解的に測定することによって、該増幅遺
伝子の分子回転運動による蛍光異方性の消失を捉えるこ
とができる。したがって、PCRにより増幅された増幅
遺伝子の鋳型である検出対象遺伝子を極めて簡便に、か
つ短時間で検出することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微量の遺伝子の検出方
法に関するものであり、その主たる利用分野としては、
医学、法医学、獣医学などの分野における遺伝子検査、
および生化学、生物学、薬理学、農学、さらには考古学
の分野における遺伝子測定が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】ポリメラーゼ・チェイン・リアクション
(以下「PCR」という。)は、微量の遺伝子を指数関
数的に増幅させる反応であり、近年、遺伝子の検出やク
ローニングに多用されている。特に、数分子から数千分
子の極微量遺伝子の検出は、本法をもって初めて可能に
なったと言える。
【0003】検出対象となる遺伝子(以下「検出対象遺
伝子」ともいう。)を鋳型としてPCRにより増幅され
た遺伝子(以下「増幅遺伝子」という。)の測定につい
て、多数の方法が開発されているが、その中でも頻繁に
用いられる方法としては、ドットブロット法、ゲル
電気泳動法、およびサザンブロット法が挙げられる
(例えば、斉藤監訳、PCR実験マニュアル、HBJ出
版局、1991年発行を参照)。以下、上記〜の各
法について説明する。
【0004】ドットブロット法においては、まずPC
R反応終了後に、反応溶液中の増幅遺伝子を二本鎖から
一本鎖に変性させる。その後、反応溶液の一部を多孔性
のドットブロット膜に滴下し、増幅遺伝子を該膜上に付
着させ、次いで増幅遺伝子に特異的にハイブリダイズす
る標識プローブの溶液と該膜とを反応させる。ドットブ
ロット膜上に付着した増幅遺伝子と標識プローブとをハ
イブリダイズさせた後、該膜をよく洗浄してハイブリダ
イズしていない未反応の標識プローブを除去し、残存す
る標識プローブの量を測定する。標識としては、放射性
同位元素または適当な酵素が用いられ、前者については
オートラジオグラフィで、後者については発色法、蛍光
法または化学発光法で測定される。
【0005】電気泳動法においては、PCR反応溶液
の一部が、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動に供
され、分子サイズに応じた分離を行った後、分離された
バンドを例えばエチジウムブロマイドのような蛍光色素
で染色し、バンド強度を肉眼またはデンシトメータで測
定する。
【0006】サザンブロット法においては、と同様
の電気泳動による分離を行った後、ゲルをNaOHで変
性させる。その後、ゲル上の遺伝子を多孔性の膜にトラ
ンスファさせ、該膜と標識プローブとをのドットブロ
ット法の場合と同じように反応させ、洗浄した後、残存
する標識プローブの量を定量する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、PCR
反応溶液中の増幅遺伝子の検出に関する従来の方法は、
いずれも繁雑である。特に、感度および特異性に優れた
サザンブロット法においては、電気泳動、膜への転写、
プローブとのハイブリダイゼーション、標識の測定など
と多くの工程、時間および繁雑な操作を要する。したが
って、本発明の目的は、従来の方法に比べて、簡便で迅
速な遺伝子の検出方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の遺伝子の検出方
法は、蛍光色素で標識されたプライマーを用いて、検出
対象遺伝子をPCRにより増幅させた後に、増幅遺伝子
が有する該蛍光色素の蛍光偏光解消度を時間分解的に測
定することを特徴とする。
【0009】本発明方法においては、まず(1)検出対
象となる遺伝子(PCRにより増幅される鋳型となる遺
伝子)に対して相補性を有するプライマーを作成し、該
プライマーを蛍光色素で標識して、蛍光標識プライマー
を準備することが必要である。次に、(2)該プライマ
ーを用いて、検出対象となる遺伝子を鋳型とするPCR
を実施し、(3)PCR終了後に、増幅遺伝子について
該蛍光色素の蛍光偏光解消度を時間分解的に測定する。
以下これらの各工程について詳しく説明する。
【0010】まず、蛍光標識プライマーの作成について
述べる。プライマーは、検出対象遺伝子の各一本鎖のD
NAにそれぞれ特異的にハイブリダイズして、PCRの
開始点(PCRによる増幅反応後の二本鎖の増幅遺伝子
の両末端)となる二種類の遺伝子断片であるので、以下
の条件を満足するものでなければならない。
【0011】検出対象遺伝子の塩基配列の中から該遺伝
子のみに特異的な塩基配列を検索し、その中から一組
(二種類)のプライマーを選択する。但し、プライマー
同士の相補鎖生成を避けるために、二種類のプライマー
の3’側が相補性を有しないこと、プライマー内にパリ
ンドロームを形成しないことなどに注意して、プライマ
ーの配列を選択することが必要である。プライマーの長
さは、特に限定されないが、通常は10塩基〜40塩
基、好ましくは15塩基〜30塩基である。
【0012】検出対象遺伝子の塩基配列のうち二種類の
プライマーに挟まれる塩基配列の領域が、PCRにより
増幅される領域(以下「PCR増幅領域」という。)と
なる。このPCR増幅領域の鎖長は、特に限定されない
が、通常は50塩基〜5000塩基、好ましくは100
塩基〜2000塩基となるように二種類のプライマーを
選択することが望ましい。なお、通常は、検出対象遺伝
子の一部の領域がPCR増幅領域となるが、特に検出対
象遺伝子が短鎖である場合には、その全領域がPCR増
幅領域となることもあり得る。
【0013】このように設計、作成されたプライマーに
蛍光色素を結合させる方法としては、プライマーの5’
末端にアミノ基などの官能基をまず導入し、該官能基と
結合できるように修飾された蛍光色素を反応させる方法
が、一般的に用いられる(上記“PCR実験マニュア
ル”89頁参照)。これとは別に、プライマーをDNA
合成装置で合成する際に、蛍光色素で標識されたヌクレ
オチド三リン酸を取り込ませる方法もある。前者の方法
では、蛍光色素が5’末端のみに導入されるのに対し
て、後者の方法では、プライマーの鎖の中にいくつかの
蛍光色素が導入される。なお、2種類のプライマーのう
ち少なくとも一方のプライマーに蛍光色素を結合させれ
ばよい。
【0014】蛍光色素としては、フルオレシン、ローダ
ミンなどが例示され、例えばフルオレシン・イソチオシ
アネートは、チオクルドミド結合を介してプライマーに
結合する。
【0015】次に、蛍光標識プライマーを用いたPCR
法について説明する。まず、検出対象遺伝子を92℃〜
96℃で10秒〜3分間加熱して熱変性させ、一本鎖の
DNAとする。その後、蛍光標識プライマーを一本鎖の
DNAにアニーリングする。アニーリングは、55℃〜
72℃で10秒〜3分間加熱して行われる。さらに、塩
基の存在下で、上記のポリメラーゼを用いて、70℃〜
73℃で30秒〜3分間加熱して、プライマーの伸長反
応を行う。
【0016】伸長反応に用いられるポリメラーゼとして
は、特に限定されるものではないが、通常はTaq DNA
ポリメラーゼが用いられる。また、ポリメラーゼの基質
となる塩基は、デオキシヌクレオチド5'−トリフォスフ
ェート[dNTP]、すなわち、アデニン、グアニン、シトシ
ンおよびチミンである。
【0017】以上の工程を経ることによって、検出対象
遺伝子の一部または全領域(PCR増幅領域)の遺伝子
の複製が行われ、さらに上記の熱変性、アニーリングお
よびプライマーの伸長反応を順次複数回行うことによっ
て、PCR増幅領域の遺伝子の増幅が行われる。PCR
のサイクル数は、通常は10回〜50回、好ましくは2
0回〜35回である。
【0018】標準的なPCR仕込み液の組成は以下の通
りである。 所定量の検出対象遺伝子 0.5mM〜500mMのKCl 100mMのTris−HCl緩衝液(pH8.3) 0.25mM〜15mMのMgCl2 0.1重量%ゼラチン 20μM〜200μMの各dNTP 0.01μM〜1μMの蛍光標識プライマー 1unit〜3unitのTaqDNAポリメラーゼ
【0019】PCRが終了した後の反応溶液は、そのま
ま、あるいは必要ならばエタノール沈殿によってDNA
分画のみを分離した後、適当な溶媒に再溶解して、時間
分解的な蛍光偏光解消度の測定に供される。また、適当
なカラムによって未反応の蛍光標識プライマーを分離除
去し、増幅遺伝子のみを該測定に供することも可能であ
る。多くの場合、PCR反応溶液をそのまま該測定に供
することが可能である。
【0020】次に、蛍光偏光解消度を時間分解的に測定
する方法について説明する。図1は、時間分解蛍光偏光
解消度測定装置の基本構成の一例を示す図である。モー
ド同期アルゴンイオンレーザ1によって駆動されたCW
色素レーザ2とキャビティーダンパ3とから、ピコ秒単
位でパルスを発振できる波長可変な色素レーザ共振器が
構成される。該共振器のパルス幅は、通常、5ピコ秒〜
20ピコ秒であり、パルスの繰り返し周期は、通常、8
2MHz〜0.8MHzである。
【0021】該共振器から発せられたレーザ光の一部
が、ビームスプリッタ4によって分岐されて、PINホ
トダイオード5に入射する。入射したレーザ光は、PI
Nホトダイオード5によって光電変換され、入射光と同
期したトリガ信号として、時間遅延ケーブルユニット6
を経由して、シンクロスキャンストリークカメラ16に
送信される。時間遅延ケーブルユニット6は、該トリガ
信号と後述の蛍光信号との時間関係の調節に用いられ
る。
【0022】一方、該共振器から発せられたレーザ光の
うちビームスプリッタ4を透過したレーザ光は、ND
(neutral density )フィルタ7によって適当な強度に
減衰された後、パビネソレイユ補償板8によって偏光化
され、集光レンズ9によって、PCR反応溶液が充填さ
れた試料室10に入射する。入射したレーザ光は、蛍光
標識プライマーを含む増幅遺伝子の蛍光を励起させる励
起光として作用する。
【0023】試料室10から出射した蛍光は、蛍光集光
レンズ11によって集められて平行ビームとなる。平行
化された蛍光ビームは、偏光子12を透過することによ
って、蛍光ビームの偏光方向が励起光の偏光方向と平行
な場合と垂直な場合の二通りに分光可能となる。
【0024】偏光子12を透過したビームは、蛍光フォ
ーカス用レンズ13によって、入射口側に偏光解消板1
4が設けられた分光器15の入射スリットに集光され
る。分光器15によって分光された蛍光は、分光器15
の出射口を経てシンクロスキャンストリークカメラ16
の入射スリットに結像される。なお、偏光解消板14
は、分光器15中の回析格子やカメラ16の光電変換面
が有する望ましくない偏光特性をキャンセルする。
【0025】カメラ16によって光電変換された蛍光信
号は、時間遅延ケーブルユニット6によって時間分解さ
れる。すなわち、ユニット6からのトリガー信号が、カ
メラ16をストリーク掃引させることによって、レーザ
光発振(励起光照射)後、予め定められた時間経過毎に
分解された蛍光信号が、それぞれ選択される。励起光照
射後の分解時間幅としては、後述の蛍光偏光解消度が1
となる時間よりも短ければ特に限定されないが、通常
は、0.1ナノ秒〜1000ナノ秒、好ましくは1ナノ
秒〜100ナノ秒である。
【0026】時間分解された蛍光信号は、二次元画像
(時間−波長)としてSIT(Silicon Intensified Ta
rget) カメラ17により撮像された後、デジタル信号と
してデータプロセッサ18中のメモリやフロッピーディ
スク駆動装置19中のフロッピーディスクの記憶領域に
蓄えられる。このデータは、データ処理を行うためのコ
ンピュータ20によって演算解析され、その演算結果
は、図示しないディスプレイ、プリンタなどの出力装置
に出力される。
【0027】蛍光偏光解消度測定装置によって求められ
る偏光解消度は、1−r(t)と定義される。r(t)
は、励起光照射後の経過時間に依存する蛍光異方性を示
し、次式で表される。 r(t)={IW (t)−IVH(t)}/{IW (t)
+2IVH(t)} 但し、IW (t)は蛍光強度のうち励起偏光と同じ方向
の偏光の強度を、IVH(t)は励起偏光と垂直方向の偏
光の強度を、tは励起光照射後の経過時間をそれぞれ示
す。
【0028】検出対象遺伝子は、蛍光標識されたプライ
マーに比して長鎖であるので、PCRにより増幅され、
蛍光標識プライマーを含む増幅遺伝子も、該プライマー
に比して長鎖となる。長鎖の遺伝子分子が1回転するの
に要する時間は、アニーリングしていない未反応の短鎖
プライマーのそれよりも長いので、励起光照射後、蛍光
異方性が消失するまでの時間は、該未反応プライマーよ
りも該増幅遺伝子の方が長く残存する。すなわち、PC
R反応溶液中に検出対象遺伝子が存在する場合、偏光解
消度が1となるまでの励起光照射後の経過時間は、検出
対象遺伝子が存在しない場合の経過時間よりも長くな
る。したがって、予めブランク試験を行って、偏光解消
度が1となるまでの励起光照射後の経過時間を求め、ブ
ランク試験の結果と比較することによって、PCR反応
溶液中に検出対象遺伝子が存在するか否かを判定するこ
とができる。
【0029】
【作用】本発明の遺伝子の検出方法によれば、蛍光色素
で標識されたプライマーを用いて、検出対象となる遺伝
子をPCRにより増幅させることによって、蛍光色素で
標識されたプライマーを含む遺伝子が増幅、生成され
る。また、増幅遺伝子の塩基配列上の該蛍光色素の蛍光
を励起させ、該蛍光の偏光解消度を時間分解的に測定す
ることによって、該増幅遺伝子の分子回転運動による蛍
光異方性の消失を捉えることが可能となり、該増幅遺伝
子の有無を判定できる。したがって、PCRにより増幅
された増幅遺伝子の鋳型である検出対象遺伝子を極めて
簡便に、かつ短時間で検出することができる。
【0030】
【実施例】以下、本発明を詳細に説明するため実施例を
挙げるが、本発明はこれら実施例によって何ら限定され
るものではない。
【0031】実施例1プライマーの合成 成人T細胞白血病ウイルス(HTLV−I)のプロウイ
ルス遺伝子の検出について説明する。HTLV−Iプロ
ウイルスは9032塩基よりなる遺伝子である。ここで
は、該プロウイルス遺伝子の塩基配列のうちenv領域
からpX領域にわたる162塩基対を増幅するよう一組
のプライマー、A(TTCTCCTGCAGCAACT
TCCT)およびB(GAACGCGAGTGCCGC
GAGG)を選択した。プライマーBについては、Appl
ied Biosystems社の自動DNA合成装置380B型を用
いて合成し、エタノール沈殿の後、HPLCで精製して
得た。
【0032】一方、プライマーAについては、その合成
および5’末端へのアミノリンク(アミノ基導入試薬、
Applied Biosystems社製)の結合を上記の自動DNA合
成装置によって行った後、エタノール沈殿した。このプ
ライマーAに、0.5MのNaHCO3 /Na2 CO3
緩衝液(pH9.0)中にて、N−ヒドロキシサクシミ
ド化ROX蛍光色素(以下「ROX−NHS」と略称す
る。Applied Biosystems社製)を反応させ、エタノール
沈殿の後、HPLCによって精製した。このようにし
て、5’末端にROX色素を有するプライマー(A−R
OX)を得た。
【0033】MT−1細胞からのゲノム遺伝子の抽出 HTLV−I感染株化細胞であるMT−1からHTLV
−Iプロウイルス遺伝子を含むゲノム遺伝子を以下のよ
うに抽出した。7×106 個のMT−1細胞を含む10
mMのTris−HClと1mMのEDTAとを含む緩
衝液(pH8.0)0.1mlに、蛋白分解用緩衝液
(100mMのNaCl、10mMのTris−HC
l、25mMのEDTA、0.5%ドデシル硫酸ナトリ
ウム、0.1mg/mlプロテナーゼK、pH8.0)
1mlを添加し、70℃で15分間インキュベートし
た。
【0034】その後、ドデシル硫酸ナトリウムを含まな
い上記蛋白分解用緩衝液1mlを添加し、37℃で16
時間さらに反応を行った。反応後の溶液からDNA以外
をまずフェノール、ついでフェノール/クロロホルム/
イソアミルアルコールの混液、さらにクロロホルム/イ
ソアミルアルコールの混液で十分に抽出し、水層を別チ
ューブに移した後、7.5Mの酢酸アンモニウム1/2
容と100%エタノール2容とを添加し、遠心分離によ
ってゲノム遺伝子を得た。70%エタノールで洗浄した
後、ペレットを乾燥し、10mMのTris−HClと
1mMのEDTAとを含む緩衝液(pH8.0)0.1
mlに再溶解した。260nmの吸収から計算したDN
Aの濃度は、1.3mg/mlであった。
【0035】PCR PCRは、5ピコモルの蛍光標識プライマー(A−RO
X)、100ピコモルの未標識プライマー(B)、2.
5unitのTaqDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)
を用い、10ngのMT−1ゲノム遺伝子を鋳型とし
て、20mMのTris−HCl、1.5mMのMgC
2 、25mMのKCl、0.05%Tween20、
100μg/mlのBSA、および50μMのdNTP
を含む反応液(pH8.3)100μl中で行われた。
反応条件は、変性が94℃で1分間、アニーリングが5
5℃で2分間、伸長が72℃で1分間であり、これを3
5サイクル行った。一方、ブランク試験として、鋳型と
なるMT−1ゲノム遺伝子を含まない溶液を用い、その
他の反応条件は上記と全く同一でPCRを行った。
【0036】時間分解蛍光偏光解消度の測定 ROX−NHSは、579nmに吸収ピーク(分子吸光
係数は約95,000cm-1・M-1)を、602nmに
蛍光ピークを有する。蛍光偏光解消度の測定を行う前
に、上記の二つのPCR反応液についてROX色素の蛍
光寿命を測定した。すなわち570nm、10ピコ秒の
励起光パルスを照射した後の602nmの蛍光の減衰を
測定した。その結果、いずれの試料も単一指数関数的減
衰を示し、その寿命(励起光照射直後の強度の1/eと
なるまでの経過時間)は、ブランク試験液が4.6ナノ
秒、MT−1ゲノム遺伝子を含む増幅液が5.2ナノ秒
であった。すなわち未反応のプライマー上のROX色素
と、増幅遺伝子上のROX色素とは、ほぼ同一の蛍光寿
命を有することが確認された。
【0037】次に、蛍光偏光解消度の測定を行った。蛍
光偏光解消度測定装置として図1に示される装置を用
い、励起光パルス幅約10ピコ秒、繰り返し周期4MH
z、励起光平均出力100mWで20秒間行った。
【0038】偏光解消度は、上述の通り、1−r(t)
と定義されるが、ここでは蛍光異方性を用いて説明す
る。表1に、ブランク試験液およびMT−1ゲノム遺伝
子を含む増幅液のr(t)の測定結果を示した。表1か
ら明らかなように、ブランク試験液では、7.7ナノ秒
の時点で蛍光異方性が消失しているのに対して、MT−
1ゲノム遺伝子を含む増幅反応液においては、11.5
ナノ秒の時点でも約0.11の蛍光異方性が残存してい
る。
【0039】
【表1】
【0040】表1の結果から、本実施例においては、時
間分解的に、すなわち励起光照射後、約10ナノ秒の分
解時間毎に、または約10ナノ秒を2以上の自然数で除
した分解時間毎に蛍光異方性を測定することによって、
増幅遺伝子の有無を極めて簡易に、かつ短時間で判定で
きることが判る。なお、本実施例で用いたMT−1細胞
のゲノム遺伝子10ngは、約500個のMT−1細胞
に相当する。
【0041】比較例1 次に、実施例1と同じ試料を用いて、定常光による蛍光
偏光解消度を測定した。測定装置としては、日立製作所
製の蛍光分光光度計650−60型を使用し、偏光特性
P=(IW −IVH)/(IW +IVH)を測定した。ここ
でIW は励起光の偏光面を測定蛍光偏光面と平行にした
ときの蛍光強度であり、IVHは同じく垂直にしたときの
蛍光強度である。励起光波長、蛍光測定波長、HTLV
−Iプロウイルス遺伝子を含む増幅反応液の調製、ブラ
ンク試験液の調製などの条件は、実施例1とまったく同
一である。但し、Pの値は試料の濃度によって若干変化
するので、いずれの試料もIW の値が0.2付近となる
濃度で測定を行った。
【0042】その結果、ブランク試験液およびHTLV
−Iプロウイルス遺伝子を含む増幅反応液についてのP
値として、それぞれ0.235±0.023および0.
254±0.033という値が得られ、両者に有意差は
認められなかった。
【0043】このように定常光蛍光偏光解消度の測定で
は、増幅されたHTLV−Iプロウイルス遺伝子の分子
回転運動による蛍光異方性の消失を捉えることができ
ず、偏光特性が平均化されて測定されるので、該プロウ
イルス遺伝子とブランク試験液中の未反応プライマーと
を区別することは困難である。
【0044】
【発明の効果】以上のように、本発明の遺伝子の検出方
法によれば、極めて容易に、かつ短時間で遺伝子を検出
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピコ秒時間分解蛍光偏光解消度測定システムの
基本構成を例示する。
【符号の説明】
1:モード同期アルゴンイオンレーザ 2:CW色素レーザ 3:キャビティーダンパ 4:ビームスプリッタ 5:PINホトダイオード 6:時間遅延ケーブルユニット 7:NDフィルタ 8:パビネソレイユ補償板 9:集光レンズ 10:試料室 11:蛍光集光レンズ 12:偏光子 13:蛍光フォーカス用レンズ 14:偏光解消板 15:分光器 16:シンクロスキャンストリークカメラ 17:SITカメラ 18:データプロセッサ 19:フロッピーディスク駆動装置 20:コンピュータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻 正男 岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社 クラレ内 (72)発明者 石川 満 茨城県つくば市東光台5−9−2 浜松ホ トニクス株式会社内 (72)発明者 増子 正行 茨城県つくば市東光台5−9−2 浜松ホ トニクス株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛍光色素で標識されたプライマーを用い
    て、検出対象となる遺伝子をポリメラーゼ・チェイン・
    リアクションにより増幅させた後に、増幅された遺伝子
    が有する該蛍光色素の蛍光偏光解消度を時間分解的に測
    定することを特徴とする遺伝子の検出方法。
JP32752893A 1993-12-24 1993-12-24 遺伝子の検出方法 Pending JPH07177899A (ja)

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JP32752893A Pending JPH07177899A (ja) 1993-12-24 1993-12-24 遺伝子の検出方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02295496A (ja) * 1989-02-07 1990-12-06 Imperial Chem Ind Plc <Ici> 検定方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH02295496A (ja) * 1989-02-07 1990-12-06 Imperial Chem Ind Plc <Ici> 検定方法

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