JPH0717063B2 - 画像記録ヘツド - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、インク等の液状着色剤を飛翔させて、記録部
材上に画像の記録を行う画像記録ヘッドに関する。

「従来の技術」 いわゆるノンインパクト記録法は、記録時に発生する騒
音が少ないことから、電気信号化された画像情報をハー
ドコピー化する方法として関心を集めている。

それらのなかで、普通紙を使用することができ、しか
も、定着というような特別の処理無しに記録のできるイ
ンクジェット法は、きわめて有用な記録方法とされてい
る。

従来、実用化されているインクジェット法は、インクを
密閉した容器に収容しこれに圧力パルスを印加して、容
器の吐出口（オリフィス）からインクを噴射させて記録
するものであった。この方法は、動作機構上、インク吐
出装置を小型化する事ができないために、必要な画像密
度の記録を行おうとすると、インク吐出装置を機械的に
走査する必要があった。従って、記録速度の低速化を招
いていた。

一方、上述のインクジェット法の欠点を改良し、高速記
録を可能にする方法として、いくつかの技術が提案され
ている。

磁性電極アレイ近傍に磁性インクを配置し、磁界による
インクの盛り上がりを利用して、画素に対応するインク
吐出状態を形成し、静電界で磁性インクを飛翔させる磁
性インクジェット法もその一つである。この方法は、電
子走査が可能なため、高速記録が可能であるが、インク
の選定が容易でなく、インクジェット本来の特徴である
カラー化が難しい欠点を有している。

これとは別に、電極アレイと平行なスリット状のインク
溜めにインクを配し、記録紙を介して、対向する電極と
電極アレイ間に形成される電界パターンに応じて、イン
クを飛翔させる、いわゆる平面インクジェット法という
方法もよく知られている。この方法は、インクを溜める
ための微細なオリフィス等が不要となり、インク目詰ま
りを改善できるが、インク飛翔のためにかける電圧が高
いため、隣接、近傍電極間の電圧リークを防止するため
に、電極アレイを時分割駆動する必要があって、それ程
高速化が図れない欠点があった。

また、熱エネルギによって吐出口からインクを吐き出さ
せる、いわゆる熱バブルジェット法も提案されている。
この方法では、インクが急激に加熱されて膜面沸騰を生
じ、オリフィス内に気泡（バブル）が急激に形成される
事による圧力上昇で、インクをオリフィスから噴射する
ものである。ところが、膜面沸騰を起こす温度が５〜60
0℃と高温であるため、インクの熱変質や、加熱手段と
して設けられている発熱抵抗体保護層の熱劣化を生じ易
いという実用上の欠点を有していた。

「発明が解決しようとする問題点」 以上のように、従来開発されているインクジェット法
は、それぞれ記録速度を十分に高速化することが困難で
あること、特殊なインクを使用すること、駆動のために
一定の工夫を要すること、あるいはインクや加熱手段に
熱的な劣化が生じること等の問題点があり、いずれの方
法も実用化面で解決しなければならない問題点を残して
いた。

本発明は以上の点に着目してなされたもので、インクの
選定が容易で、高速記録を可能とした画像ヘッドを提供
することを目的とするものである。

「問題点を解決するための手段」 本発明では、スリット状の液状着色剤吐出部と、この吐
出部と所定間隔をもって対向する発熱素子と、この発熱
素子と吐出部の間に配置された電界形成用電極と、吐出
部と発熱素子との間に液状着色剤を収容する収容部と、
吐出部に対して発熱素子と反対側にあって電界形成用電
極と向かい合うように配置された対向電極と、発熱素子
に電圧を印加する第１の電圧印加手段と、電界形成用電
極と対向電極の間に電圧を印加する第２の電圧印加手段
とを画像記録ヘッドに具備させている。

「作用」 本発明の画像記録ヘッドは、液状着色剤に電気エネルギ
と熱エネルギを印加して、両者が共に印加された領域に
ある液状着色剤を飛翔させる原理を応用したものであ
る。

すなわち、例えば次のような態様で実現される。

ます、液状着色剤全体に一様な電界を加える。これだけ
では、液状着色剤の飛翔は生じない。ここで、この液状
着色剤に局部的に熱エネルギを印加する。これによっ
て、この熱エネルギの印加された領域の液状着色剤が飛
翔する。

ここで、例えば、複数の発熱素子をアレイ状に配列して
おく。そして、これらの発熱素子を液状着色剤に接触さ
せておく。そして、記録画素に対応する位置にある発熱
素子を選択的に発熱させ、かつ、液状着色剤全体に一様
な電界を加える。こうして、記録部材に向けて液状着色
剤を飛翔させる。１回の飛翔で１個の画素が記録でき
る。

これをくり返して、ライン状に画素列の記録を行いさら
に、上記記録部材を走査すれば、画像の記録を行うこと
ができる。

本発明においては、基板を水平に配置し、その上に例え
ば一本のスリットを有するカバーを被せる。このカバー
と発熱抵抗体との間に生じた隙間に液状着色剤を収容す
る。

発熱抵抗体が発熱すると、液状着色剤はカバーに設けら
れたスリットから吐き出され飛翔して記録部材に達す
る。液状着色剤は、このカバーの側方から連続的に吐出
部に向けて供給される。

「実施例」 （動作原理） ここであらかじめ、本発明の画像記録ヘッドの記録動作
原理を、第２図を用いて説明する。

まず、第２図ａに示すように、液状着色剤１をベース電
極２と対向電極３の間に配置する。液状着色剤１には、
例えば適当な電気抵抗を付与するよう配合を調整され
た、常温で液体のインクを使用する。以下、液状着色剤
１を単にインク１と表現して説明を続ける。ベース電極
２と対向電極３とは、いずれも単なる導電性の板であ
る。

この両電極２、３の間に直流電源４により所定の電圧を
印加する。このとき、インク１には一定の静電界が加わ
り、その静電誘導作用によって、インクの自由表面に
は、ここに生ずる誘導電荷と静電界の積で与えられるク
ーロン力が作用する。この力によって、インク１は矢印
５方向へ飛翔しようとする。

一方、ここには、インクの表面張力、界面張力、および
飛翔しようとするインクに対する粘性抵抗が抗力として
作用する。第２図ａは、上記クーロン力よりもこの抗力
が大きく、インク液面が水平に保たれている状態を示し
ている。

ここで、このインク１を局部的に加熱する。すなわち、
図中、領域S1の温度T1が他の領域の温度T0よりも高温に
される（第２図ｂ）。その結果、領域S1において、第２
図ｂに示すように、そのインク液面が盛り上がる。すな
わち、この領域S1において、インクの温度上昇により上
記抗力が低下して、局部的にクーロン力の作用が増大す
る。盛り上がったインク１′には、電界が集中し、さら
にクーロン力が強く作用する。こうして、ついには、第
２図ｃに示すように、領域S1にあったインク１′の一部
が柱状に成長し、ちぎれて対向電極３に向かって飛翔す
る。

この現象は、インクを膜面沸騰のような相変化に近いほ
ど急激に加熱しなくても引き起こすことができる。

すなわち、インクには上記電界によって電気エネルギが
印加され、さらに加熱によって熱エネルギが印加され
る。この、両エネルギを共に印加した領域でのみインク
の飛翔が生じるよう、印加する電気エネルギおよび熱エ
ネルギの量を選定する。これによって、インクの飛翔場
所および飛翔タイミングの実用的な制御が可能となる。

なお、この原理は、次のような実験で実証することがで
きた。

まず、第２図ａに示したようにインク１をベース電極２
上に配置し、その温度を一定に保ったまま、電源４の電
圧を徐々に上昇させていく。この電圧がある電圧を越え
ると、インク液面から第２図ｃに示したようなインク柱
１′が無秩序に対向電極３に向かって成長する。

この現象は、例えばJ.R.MELCHER著（米国M.I.T.PRESS社
発行）「FIELD・COUPLED SURFACE WAVES」（P61〜P66）
に記載された、不安定な電気流体力学波の成長現象と解
釈することができる。

すなわち、インク液面に垂直に、上方向に作用するクー
ロン力と下方向に作用する抗力とが一定の均衡を保って
いる場合に、自然に生じ得るある摂動（液面の変形や電
界の局部的な不均一さ）によって、クーロン力が局部に
集中する。そこで、クーロン力が抗力に打ち勝ってイン
ク柱が成長するのである。

本発明においては、例えば電界を、上記無秩序なインク
柱が成長するには不十分な強度に選定し、これをインク
に印加しておく。この状態で、インクを加熱すると、加
熱された領域のインクの表面張力や粘度等が低下する。
その結果、上記のような電界中においても、不安定な表
面波が発生し、その領域でインク柱が成長する。

こうして飛翔したインクを、記録用紙等の記録部材の表
面に導けば、１つのドットを記録することができる。さ
らに、このドットを規則的に配列すれば、画像の記録を
行うことができるのである。

（記録ヘッドの実施例） 第１図は、本発明の画像記録ヘッドとその周辺部の実施
例を示す縦断面図である。

また、第３図はその要部の上面図である。

水平に配置した基板15上に、千鳥状にリード電極17、18
が形成され、その上にこれらのリード電極17、18と直交
するように帯状の発熱抵抗体16が形成されている。これ
らの上面には、耐熱絶縁層20が被覆されている。この構
成は、従来の熱転写型プリンタに使用されるサーマルヘ
ッドと同様のものである。その記録画素ピッチは例えば
8dot/mmのものとする。

また、耐熱絶縁層20の上面には、マスク蒸着によって、
厚さ1000Å、幅150μｍの金から成る電界形成用電極19
を形成した。また、この基板15の上方には、スリット10
を設けたカバー11が被せられている。このスリット10
は、ちょうど、電界形成用電極19の中央が上方から目視
できるような幅で、電界形成用電極19や発熱抵抗体16と
同程度の長さとされている。この基板15とカバー11との
間の隙間は10〜200μｍが適当である。

この隙間に液状着色剤13が収容され、上記スリット10
は、本発明において液状着色剤吐出部14と呼ぶことにす
る。

一方、この基板15の上方には一般の複写機等において記
録に使用される普通紙が記録部材12として配置され、そ
の背面には対向電極21が設けられ、これと電界形成用電
極19との間に電源22が接続されている。これらによって
電気エネルギ印加手段か形成される。

また、発熱抵抗体16の両端の電極17、18にも、電源23を
接続した。これらによって熱エネルギ印加手段が形成さ
れる。

インク13には、20℃において、体積抵抗率10⁷Ω・cm、
粘性率30cp、表面張力37dyne/cmの染料溶解型油性イン
クを使用した。また、対向電極21は、径4mmの金属ロー
ルとし、電界形成用電極19と対向電極21との間は300μ
ｍに設定した。

発熱抵抗体16は、従来一般に使用されているサーマルヘ
ッドと同様に、いわゆる分割駆動を行う。本実施例では
６分割駆動により、１ドットあたり17V、2msecの通電を
行った。この通電に同期させて、同一タイミングで同一
時間2000Vの電圧を、対向電極21と電界形成用電極19と
の間に印加した。

なお、電源22、23は、記録すべき画像の画信号により選
択的に電気パルスを出力するが、これらは、制御手段24
により制御される。この制御手段24は、既知のサーマル
ヘッド駆動用のシフトレジスタライバ等から成る回路で
構成される。

これによって、発熱部分でのみインク13が記録部材12に
向かって飛翔し、その記録面に直径約80μｍの円形のド
ットが記録された。

上記実施例の場合、電界形成用電極19は発熱抵抗体17の
直上のみに存在し、その左右のリード電極17、18に対向
しないように配慮されている。これは、電界形成用電極
19とリード電極17、18との間の容量結合によって、発熱
抵抗体16の駆動電流が増大するのを防止するためであ
る。

（インクの飛翔条件） なお、電界形成用電極19と対向電極21の間に電圧を印加
しないで上記の操作を行ったところ、インクの飛翔は生
じなかった。

また、逆に、発熱抵抗体16への通電を行うこと無く、電
界形成用電極19と対向電極21の間に印加する電圧を上昇
させていくと、この電圧が3000Vを越えたときに、吐出
部14のいたるところで無秩序にインク13の飛翔が見られ
た。

本発明は、液状着色剤に電気エネルギと熱エネルギを印
加してこれを飛翔させるものであるから、このインクの
飛翔する条件および、インクの飛翔の安定な制御を行う
ことができる限界値（閾値）を明確にする必要がある。

第４図はこの閾値を見出すために行った実験の結果を示
すグラフである。

第４図ａに示したデータによれば、インクの温度が上昇
する程、閾電界の値が低下していくことがわかる。

また、第４図ｂによれば、インクの粘度は、カーブを描
いているものの、上記閾電界と同様に、インクの温度上
昇と共に低下している。表面張力（同図ｃ）と体積抵抗
率（同図ｄ）についても同様の傾向がみられる。

従って、これらが、上記閾電界の値に大きく関与してい
ることが明白となっている。

すなわち、インクの粘度、表面張力および電気伝導度等
の物性値が変化する複合的な効果によって、閾電界の値
が温度上昇と共に低下していくものと考えられる。

このことから、室温ではインク飛翔を生じない程度の電
界を与えておき、インクを局部的に加熱すると、熱と静
電界の協同作用によってインクの飛翔が生じ、画素状の
記録を行うことができるのである。

第５図は、本発明の画像記録ヘッドのより具体的な実施
例を示す斜視図である。

図において、台状の基板15には、第１図で説明した発熱
抵抗体16や、図示しないリード電極等が形成されてい
る。

この上方に被せられるカバー11は、コ字状とされ、その
両側方にインク供給用のパイプ30が取り付けられてい
る。また、カバー11の上面には、スリット10が設けられ
ている。

第６図にその組み立て後の断面図を示した。

ここでは、一方のパイプ30からインク13が圧送されて、
吐出部14を通り他方のパイプ30へ排出される。吐出部14
では、インク13が発熱抵抗体16によって加熱されるが、
インク13がここに満溜しないよう絶えずインクの流れを
維持すると、インク温度が次第に上昇して、誤飛翔が生
じてしまうというようなことも防止できる。また、記録
を停止し、再開したときに、その間に固化したインクを
流して除去したり、その他インクの固化防止にも効果が
ある。

なお、カバー11は、この吐出部近傍に電界を印加する関
係上非金属体であることが望ましい。また、飛翔するイ
ンク量を安定に保つため、スリット10の間隔に狂いを生
じない程度の高い剛性を有する材料でカバーを構成する
ことが好ましい。

「変形例」 しかし、カバーの厚さを厚くすると、電界形成用電極19
と対向電極21との間隔（第１図）が長くなってしまい、
所定の電界を形成するための電圧が高くなってしまう。
そこで、第７図のように、スリット10の周辺のみ絶縁体
の薄いパネル31を用いて形成することもできる。この場
合、スリット10から遠く離れたカバー11は、金属板等を
使用してさしつかえない。

また、パネル31の強度を保つため、パネル31を波状のも
のとしたり、第８図に示すように、下面に補強材32を貼
り付けたものを使用してもよい。このようにすれば、こ
のパネルを、高分子樹脂フィルム等により構成すること
も可能である。

「発明の効果」 以上説明した本発明の画像記録ヘッドによれば、インク
や発熱抵抗体等に著しい熱劣化が生じない程度の温度
と、電極間のリーク等が生じない程度の電界によって、
インクの飛翔を生じさせ、高速高密度の記録を行うこと
ができる。

しかも、インクを保持しておく手段は、比較的簡単な構
成でよく、複雑な精密な機構を必要としない。

また、吐出部と発熱素子の間に電界形成用電極を設けた
ので、液状着色剤が吐出部から突出する前から電界の作
用による力をその液面に及ぼすことができる。したがっ
て、液面に加わる電界の作用による力が液状着色剤の表
面張力による抗力よりも大きくなれば液状着色剤を飛翔
させることができる。発熱素子は、液状着色剤の粘度を
下げて表面張力を一定の値以下にするだけの熱エネルギ
を加えればよく、発熱量を比較的少なくすることができ
る。これにより、発熱素子の駆動回路を小型化できると
ともに、消費電力を少なくすることができる。さらに、
電界形成用電極を吐出部と発熱素子の間に配置したの
で、発熱素子が電界の作用を低下させることがない。す
なわち、印加した電圧によって生じる電界を液状着色剤
の飛翔のために効率良く作用させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の画像記録ヘッドの実施例縦断面図、第
２図は本発明の記録原理を説明する概略図、第３図は第
１図の実施例の要部の上面図、第４図は電界の閾値の温
度依存性と、インクの特性を表すグラフ、第５図は本発
明のさらに具体的な実施例を示す要部斜視図、第６図は
その使用状態の断面図、第７図はその変形例を示す断面
図、第８図はその要部の斜視図である。 10……スリット、11……カバー、14……吐出部、15……
基板、16……発熱抵抗体。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−12858（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−225358（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−70039（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】スリット状の液状着色剤吐出部と、 この吐出部と所定間隔をもって対向する発熱素子と、 この発熱素子と前記吐出部の間に配置された電界形成用
   電極と、 前記吐出部と前記発熱素子との間に前記液状着色剤を収
   容する収容部と、 前記吐出部に対して前記発熱素子と反対側にあって前記
   電界形成用電極と向かい合うように配置された対向電極
   と、 前記発熱素子に電圧を印加する第１の電圧印加手段と、 前記電界形成用電極と前記対向電極の間に電圧を印加す
   る第２の電圧印加手段とを具備することを特徴とする画
   像記録ヘッド。