JP3046061B2

JP3046061B2 - インクジェット記録ヘッドおよび該記録ヘッドを用いる記録装置

Info

Publication number: JP3046061B2
Application number: JP33523190A
Authority: JP
Inventors: 泰之田村
Original assignee: Canon Inc
Current assignee: Canon Inc
Priority date: 1990-11-30
Filing date: 1990-11-30
Publication date: 2000-05-29
Anticipated expiration: 2015-05-29
Also published as: JPH04201453A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は、熱エネルギーを利用したインクジェット記
録ヘッドおよび該記録ヘッドを用いる記録装置に関す
る。

〔従来の技術〕

プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は、画
像情報に基づいて、紙やプラスチック薄板等の被記録材
上にドットパターンから成る画像を記録していくように
構成されている。

前記記録装置は、記録方式により、インクジェット
式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等
に分けることができ、そのうちのインクジェット式（膜
沸騰方式など）およびサーマル式（熱転写方式または感
熱方式）では、電気熱変換体（発熱素子）で生じさせた
熱エネルギーによって画像を記録する記録ヘッドが使用
されている。

なお、上記インクジェット式（インクジェット記録装
置）では、記録ヘッドの吐出口からインク（記録液）滴
を吐出飛翔させ、これを被記録材に付着させて記録する
ように構成されている。

熱エネルギーによって記録する記録装置、例えば、イ
ンクを加熱することにより吐出させて記録するインクジ
ェット記録装置は、記録ヘッドに設けられる個々の吐出
口の構造が簡単であり、記録ヘッドの小型化が容易であ
り、多数の吐出口を一体に形成することが容易である。

なお、この場合、個々の吐出口（液路）に対応して、
通常、１個づつの発熱素子（電気熱変換体）が配列され
ている。

このため、従来より、インクジェット式の記録ヘッド
は、数十の吐出口を一体に形成し、高速かつ高密度の記
録を行なう記録装置に用いられている。

熱エネルギーを利用したこの種の記録ヘッドでは、効
率良くインクを吐出させるためには、発熱素子の加熱を
急速に、短時間で行なう必要があり、一般に、数μ秒程
度の短かい電流パルスで駆動される。

そのため、駆動の瞬間に流れる電流が大きく、複数の
発熱素子を微細な配線パターンで共通により接続する
と、共通配線の部分での電圧降下が大きく、同時に駆動
する素子の数に因って駆動条件が変化してしまうことに
なる。

そこで、従来では、個々の発熱素子ごとに正負２本の
配線パターンを設けることが行われている。

また、従来の熱エネルギーを利用したインクジェット
記録ヘッドでは、配線パターンおよび発熱素子面で電気
化学反応が起こり、これらが破壊されることを防ぐた
め、強固な絶縁体による保護層を設けることが行われて
いる。

〔発明が解決しようとする技術的課題〕

従来の熱エネルギーを利用したインクジェット記録ヘ
ッドにあっては、ヘッド内において、個々の発熱素子に
対して２本の配線が必要であるため、配線パターンを細
くせざるを得ず、配線パターンの電気抵抗が高く、ヘッ
ド内の発熱が大きいという課題があった。

さらに、配線パターンの本数が多いため、吐出口の密
度を大幅に高めることが困難であり、より高精細な画像
を得る上で大きな制約があった。

また、従来の熱エネルギーを利用したインクジェット
記録ヘッドにおいては、強固な絶縁体による保護層を必
要としているが、該保護層にピンホールがあると、それ
が極めて微細な場合でも、その点に正または負の一方の
電位が繰り返し印加されるため、腐食が起こり、記録ヘ
ッドの破壊の原因となる場合があった。

そのため、前記保護層は充分に厚く設ける必要があ
り、その結果、発熱素子を急激に加熱した場合でも、イ
ンクに対しては緩やかな加熱しか行なうことができず、
インクの吐出力を高める上で制約となっていた。

また、このため、粘度の高いインクを使用することが
できず、インク成分が蒸発によって変化した場合に吐出
しなくなることがあった。

特開昭64−38245号明細書には、バブル発生に必要な
エネルギーを複数のパルスに分割し、コモン電極に一定
の電位を与えつつ、セレクト電極にコモン電極に対して
正または負となる電位を与えて駆動する方法が記載され
ている。

この方法によれば、上記電気化学反応を防止する上で
は効果が期待できるが、前記配線パターンの抵抗に伴な
う電圧降下およびそれに伴なうヘッド内発熱の問題は解
決されない。

さらに、正および負の電位を与えるため、複数の駆動
電源を必要とし、装置が大型かつ複雑になるという問題
があった。

特開昭55−132256号明細書には、千鳥状の発熱素子を
使用することが記載されている。

このような発熱素子を駆動するには、例えば、特開昭
49−105544号明細書、特開昭51−94940号明細書に記載
された方法を用いることができ、配線本数を少なくする
上では有効である。

しかし、電位の印加方向が一方向に限定されるため、
上記電気化学反応に伴なう問題に対しては効果が無い。

さらに、ダイオードマトリックス回路等に特有のクロ
ストークのため、駆動されない素子が若干発熱し、記録
ヘッド内の発熱が大きくなる。

感熱記録等に使用される、所謂サーマルヘッドにおい
ては、本出願人が先に出願した特開昭62−290557号明細
書において、発熱素子の数より一本多いだけの配線によ
り、多数の発熱素子を駆動でき、しかも電流の方向が一
定しない駆動方法が開示されている。

この方法を、熱エネルギーを利用して記録するインク
ジェット記録ヘッドに適用する場合、配線に流れる電流
が一定しないため、配線による電圧降下が場合によって
変化し、発熱素子の駆動条件が一定にならないという問
題があった。

また、この方法では、全ての発熱素子を一斉に駆動す
る必要がある。

そのため、瞬時に流れる電流が大きいという問題が有
る。

感熱記録等では、発熱素子に比較的長いパルスを送っ
て小さい電流で駆動するので、瞬時に流れる電流はあま
り問題にならないが、熱エネルギーを利用したインクジ
ェット記録ヘッドの場合は、通常、数kHzの繰り返し周
波数で使用する場合でも、発熱素子の通電時間は数μ秒
乃至10μ秒程度が適当であり、その間にインクを吐出す
るのに充分なエネルギーを与えるため、瞬時に流れる電
流が極めて大きい。

本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされた
ものであり、配線パターンによる電圧降下を小さくして
ヘッド内の発熱を抑えることができ、吐出口を従来より
高密度に配列することができ、しかも、ヘッド寿命を長
くすることが可能であり、インクジェット式の場合のイ
ンク吐出力および吐出安定性を高めることができる熱エ
ネルギーを利用したインクジェット記録ヘッド、および
該記録ヘッドを用いる記録装置を提供することを目的と
する。

〔課題解決のための手段〕

請求項１のインクジェット記録ヘッドは、上記目的を
達成するため、熱エネルギーを利用してインクを吐出す
るための複数の発熱体と、前記発熱体を複数の異なった
タイミングで駆動するようブロック化して駆動させると
共に、隣接する発熱体を異なったブロックで駆動させる
ように、対応する複数の発熱素子に電流を与えてインク
を吐出させるための画像信号を少なくとも２つの異なっ
たタイミングで選択する選択手段と、前記発熱体の一端
部に接続されると共に該発熱体と隣接する発熱体の端部
に接続される複数の共通配線と、前記選択された画像信
号に応答して、各駆動タイミングで発熱させるべき発熱
素子の両端の一方に相対的にハイレベルの電位を加え、
他方に相対的にロウレベルの電位を加えて前記発熱体を
駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする。

請求項17のインクジェット記録装置は、上記目的を達
成するため、熱エネルギーを利用してインクを吐出する
ための複数の発熱体と、前記発熱体を複数の異なったタ
イミングで駆動するようブロック化して駆動させると共
に、隣接する発熱体を異なったブロックで駆動させるよ
うに、対応する複数の発熱素子に電流を与えてインクを
吐出させるための画像信号を少なくとも２つの異なった
タイミングで選択する選択手段と、前記発熱体の一端部
に接続されると共に該発熱体と隣接する発熱体の端部に
接続される複数の共通配線と、前記選択された画像信号
に応答して、各駆動タイミングで発熱させるべき発熱素
子の両端の一方に相対的にハイレベルの電位を加え、他
方に相対的にロウレベルの電位を加えて前記発熱体を駆
動する駆動回路とを有するインクジェット記録ヘッド
と、前記ロウレベルとハイレベルの信号を選択的に与え
るためのスイッチング素子と、を具備することを特徴と
する。

〔作用〕

上記構成によれば、記録ヘッド内の発熱素子よりも一
本だけ多い配線パターンを設ければ良いので、高密度の
熱記録ヘッドにおいても、配線パターンを幅広く（また
は太く）設計することができる。

また、各配線に流れる電流は従来と同じである。

したがって、配線抵抗による電圧降下を小さくするこ
とができる。

また、上記構成においては、各配線に印加される電圧
の極性は、一定ではなく、その瞬間に各配線の電位レベ
ルを決定する基準となる配線と各配線との間で発熱され
る素子の数によって異なる。

なお、前記基準となる配線は、必ずしも端部に設ける
必要は無い。

通常、電気化学反応による障害は、正極または負極の
一方の極のみで進行する。

いずれの極で進行するかは、電極の材質やインクの組
成等によって決まる。

本発明によれば、基準となる配線以外は、その極性が
ランダムに変化するので、電気化学反応による障害の進
行が遅く、記録ヘッドの寿命が長くなる。

基準となる配線およびそれに接続された発熱素子につ
いては、電気化学反応が進行するおそれが有るが、その
部分の保護膜にピンホール等の欠陥が無ければよいの
で、通常では寿命が長くなる。

さらに、基準となる配線の電位はハイレベルであって
もロウレベルであっても可能であるので、基準となる配
線の電位も逐時変化させてもよく、それにによって電気
化学反応の進行を遅くすることができる。

さらに、１つの駆動パルスの駆動時間より短かい時間
で基準となる配線の電位を変化させてもよい。

その場合には、全ての配線の電位が基準となる配線の
電位に応じて変化する。

このように高速で電位を変化させた場合には、電気化
学反応によって生じるイオンの拡散時間よりも電位の変
化が速くなるので、電気化学反応による障害は著しく小
さくなる。

〔実施例〕

以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。

第９図は、本発明による熱エネルギーを利用した記録
ヘッドを備えた記録装置の一実施例の要部構成を示す模
式的斜視図である。

第９図は、フルカラー記録が可能なライン型のインク
ジェット記録ヘッドを複数個（図示の例では４個）備え
たインクジェット記録装置の場合を示す。

第９図において、51および52は、用紙やプラスチック
薄板等の被記録材53を挟持し、矢印Ｆで示す副走査方向
（搬送方向）に搬送するためのローラ対である。

55Bk、55Y、55M、55Cは、それぞれ、被記録材53の略
全幅にわたって吐出口が配列されたフルマルチタイプの
インクジェット記録ヘッド55を示す。

フルカラー記録の場合は、上記４個の記録ヘッド55か
ら吐出されるインク色として、例えば、ブラック、イエ
ロー、マゼンタ、シアンが用いられ、図示の例では、４
個の記録ヘッド55が被記録材搬送方向上流側から（下か
ら）この順序で配置されている。

56は回復系であり、吐出回復処理に当たっては、被記
録材53に代わって前記各記録ヘッド55に対面する。

また、前記各記録ヘッド55は、ヘッド装着部57に、相
互位置関係を規制されて装着されている。

なお、前記各記録ヘッド55は、後述するように、本発
明を実施した熱エネルギーを利用したインクジェット記
録ヘッドである。

以上により、本発明による記録装置、すなわち、本発
明による記録ヘッド55を装着するためのヘッド装着部57
と、前記ヘッド装着部57に装着された前記記録ヘッド55
の記録位置へ前記被記録材53を搬送するための搬送手段
51、52と、を有する記録装置が構成されている。

第10図は、本発明による記録ヘッド55を、インクジェ
ット式の場合を例に挙げて示す模式的分解斜視図であ
る。

前記インクジェット記録ヘッド55は、熱エネルギーを
利用してインクを吐出する記録ヘッドであって、熱エネ
ルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものであ
る。

また、前記インクジェット記録ヘッド55は、前記電気
熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる
膜沸騰による気泡の成長によって、吐出口よりインクを
吐出させ、記録を行なうものである。

第10図において、61はシリコン（Si）製の基板、62は
該基板に所定配列を成して作り込まれている複数の吐出
用発熱素子（電気熱変換体）、63は該発熱素子のそれぞ
れに対応して設けられたインク滴吐出のための吐出口、
64は前記各々の発熱素子が設けられた液流路、65は液流
路64の天井を形成しているガラス等の天板、66は前記基
板61が接着材により取りつけられているAl等の支持板で
ある。

発熱素子62は、液流路64内のインクに対し、接触させ
て配置することもできるが、通常、極く薄い保護膜（絶
縁層）を介して配置される。

前記発熱素子62の配列密度は記録密度にもよるが、通
常、1mm当たり３〜30個程度である。

このようなインクジェット記録ヘッドを用いて実用的
な記録速度を得るために、各発熱素子62に対して、１秒
間に数百〜数万回程度の画像信号に応じてパルス状の駆
動用電気エネルギーが与えられる。該電気エネルギーに
より、各発熱素子が発熱し、前記液流路64内のインクに
気泡が生成される。該気泡の圧力により前記吐出口63か
らインクが吐出し、被記録材53の記録面に画像が記録さ
れる。

第１図は上記記録ヘッド55の駆動回路の一例を示し、
第２図および第３図はそれぞれ第１図中の出力段の回路
を示し、第４図は第１図の回路に与える信号のタイミン
グチャートである。

本実施例では、複数の発熱素子62は発熱せしめるタイ
ミングに応じて４つのブロックに分けてある。

画像信号はパラレルに入力され、４本のイネーブル入
力に対して順次パルスを印加すると、各ブロックの発熱
素子62が画像信号に応じて駆動される。

出力段は、第２図および第３図に示すように、デジタ
ル信号に対応して正負両方向の電流を出力し得る回路で
ある。

第２図および第３図中の＋V_OPは、発熱素子62に印加
すべき電圧を示し、該発熱素子の抵抗値および記録ヘッ
ドの設計条件等に応じて決められる。

駆動タイミングは、第４図に示すように、複数の画像
信号を同時に画像信号入力に与え、その間にイネーブル
１〜４に順次パルスを与える。

それぞれのパルスのパルス幅の時間だけ発熱素子62に
通電される。

イネーブル１〜４のパルス幅は、通常、１μ秒〜10μ
秒程度が最適である。

正負入力については、第４図中にケース１〜ケース４
として示すように、種々の与え方が可能である。

ケース１では、発熱素子62が駆動されている間、イネ
ーブルパルスのパルス幅の時間内に数回変化する程度の
高周波信号が印加されている。

この場合には、各発熱素子において、１つの駆動パル
スの間に電流の向きが数回変化するので、電気化学反応
を防止する上で極めて有効である。

しかし、高周波数で駆動するので、回路全体の応答速
度を充分速くする必要があり、駆動回路における電力損
失が大きくなる傾向がある。

ケース２では、イネーブルパルスに同期して正負入力
が変化している。

ケース３では、１回の画像信号の記録の度に正負入力
が変化している。

これらケース２およびケース３の方法は、駆動回路の
応答速度の点では問題が無い。

また、電気化学反応を防止する上では、ケース１より
も劣る場合もあるが、充分な効果が得られる。

ケース４では、画像信号およびイネーブル信号に関係
無くパルスが与えられている。

この場合は、発熱素子62が駆動されていない時でも、
配線の電位はハイレベルとロウレベルとの間で変化して
いる。

このような駆動を行なった場合、通常では配線および
発熱素子とインクとの間に若干の漏洩電流があるので、
インクの電位はハイレベルとロウレベルとの中間に保た
れ、それに対して電極が常に正負の間で変化することに
なるので、電気化学反応による障害は少ない。

上記正負入力の与え方には、その他多くの変形例が可
能である。

また、正負入力を一方に固定することも可能である
が、その場合は基準となる配線における電気化学反応が
発生し得るので、一般に、これを防止する手段を別に設
ける必要がある。

第５図および第６図は、それぞれ、記録ヘッド55にお
ける発熱素子62およびその近傍の配線パターンを例示す
る模式図である。

第５図は発熱素子62内の電流の方向が配線パターンの
方向と平行している場合を示し、第６図はこれが直交し
ている場合を示す。

第５図および第６図から明らかなように、配線パター
ンの線幅を充分に大きく（太く）することができ、配線
の電気抵抗を小さくすることができる。

このような発熱素子62および配線パターンは、例え
ば、シリコンの基板51上に薄膜プロセスにより形成する
ことができる。

通常は、発熱素子62および配線パターンの上に、SiO₂
等より成る保護層およびTa等より成る耐キャビテーショ
ン層が設けられる。

本実施例においては、前述のように電気化学反応が起
こり難いので、保護層の厚みは従来よりも薄くすること
ができる。

さらに、発熱素子62として、例えば、TaAl合金等のよ
うに耐キャビテーション性の強い材料を使用すれば、保
護層および耐キャビテーション層を省略することもでき
る。

その結果、発熱素子62とインクとの間の熱伝達が向上
し、インクをより急激に加熱することができ、インクの
吐出力を高め得るのみならず、吐出の安定性および再現
性を向上させることができる。

また、第５図および第６図から明らかなように、本実
施例においては、配線パターンを太くできるので、従来
に比べて、発熱素子62を高密度に配置した場合でも、配
線抵抗を小さくすることができる。

さらに、発熱素子62の列の一方向にのみ配線パターン
を配置できるので、基板61の端部から発熱素子62までの
距離を短くすることができ、より高性能の熱記録ヘッド
を設計することが可能になる。

第７図は、本発明による記録ヘッドの他の実施例の駆
動回路を示す回路図であり、第８図は第７図の回路の信
号のタイミングチャートである。

第１図〜第４図の前述の実施例では、発熱させるべき
発熱素子62の両端において、一方に相対的にハイレベル
の電位を与え、他方に相対的にロウレベルの電位を与え
るように、信号変換手段で信号を並列処理したのに対
し、本実施例では直列処理するように構成されている。

本実施例では、画像信号を偶数番の画素と奇数番の画
素との２つのブロックに分けている。

第７図および第８図において、スタートパルスから画
像信号送信までの間に１クロックだけ間を置いている
が、この時の信号により、基準となる配線の電位が与え
られる。

本実施例では、ロジック回路は、画像信号のブロック
ごとに、基準となる配線の電位が変化するように構成さ
れている。

この回路においては、記録ヘッド55の全吐出口が１回
の記録を行なうために、同一の画像信号を２回送り込む
必要がある。

１回目の画像信号により偶数番の画像信号が記録さ
れ、２回目の画像信号により奇数番目の画像信号が記録
される。

第８図における１回目のイネーブルパルスの間だけ偶
数番目の画素に対応する発熱素子が発熱し、２回目のイ
ネーブルパルスにおいて奇数番目の画素に対応する発熱
素子が発熱する。

第７図における出力段の回路としては、第２図または
第３図に示した前述の実施例のものを使用することがで
きる。

また、発熱素子62および配線パターンとしては、第５
図または第６図に示した前述の実施例のものを使用する
ことができる。

以上説明した実施例によれば、記録ヘッド55の駆動回
路を、配線パターンの本数が発熱素子62の数より１本多
いだけの構成とすることができ、また、特定の配線パタ
ーンに電流が集中することが無いので、配線パターンに
よる電圧降下を小さくすることができ、熱記録ヘッド内
での発熱を小さくすることができた。

さらに、従来に比べて高密度で発熱素子を配置できる
ので、吐出口密度の高いインクジェット記録ヘッドを構
成することができ、高精細な画像を記録することが可能
になった。

また、配線パターンおよび発熱素子上での電気化学反
応の進行が抑えられるので、従来に比べて、記録ヘッド
の寿命を長くすることができた。

また、電気化学反応が抑えられるので、発熱素子等の
上に設けられる保護層の厚みを薄くしたり、廃止するこ
とが可能であり、その結果、インクの吐出力を高め、吐
出の安定性を向上させることができ、記録装置の信頼性
を高めることができた。

さらに、従来では使用できなかった比較的高粘度のイ
ンク等を使用することも可能であるので、インクの設計
の自由度が増大し、より高品位の画像を記録することが
可能になった。

また、前述の実施例では、発熱素子62の駆動を複数の
ブロックに分けて行なうので、回路全体として瞬時に流
れる電流が小さくなり、該発熱素子を駆動するための電
源を小さなものにし得るという効果も得られた。

また、以上の実施例では、本発明を、被記録材53の紙
幅方向の一部または全部をカバーするライン型の記録ヘ
ッド55および該記録ヘッドを使用する記録装置に適用す
る場合を礼に挙げて説明したが、本発明は、被記録材の
紙幅方向に往復動するキャリッジに搭載されるシリアル
スキャン型の記録ヘッドおよび該記録ヘッドを用いるシ
リアルスキャン型の記録装置など、他の型式の記録装置
に対しても同様に適用でき、同様の作用効果を達成し得
るものである。

また、本発明は、記録装置に装着される記録ヘッドの
個数にも関係無く適用できるものである。

本発明は、特にインクを吐出するためにインクと直接
接触する抵抗体の駆動に対して有効であり、この種の抵
抗体は、いわゆる保護層を持たない高抵抗処理を施され
たもの等が挙げられる。

本発明は、特にインクジェット記録方式の中でもキヤ
ノン（株）が提唱するバブルジェット方式のインクジェ
ット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置におい
て、優れた効果をもたらすものである。

その代表的な構成や原理については、例えば、米国特
許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示され
ている基本的な原理を用いて行なうのが好ましい。

この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス
型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド
型の場合には、液体（インク）が保持されているシート
や液路に対して配置されている電気熱変換体に、記録情
報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与え
る少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、
電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッド
の熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一
対一対応し液体（インク）内の気泡を形成出来るので有
効である。

この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体
（インク）を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成す
る。

この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡
の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体
（インク）の吐出が達成でき、より好ましい。このパル
ス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細
書、同第4345262号明細書に記載されているようなもの
が適している。

尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特
許第4313124号明細書に記載されている条件を採用する
と、更に優れた記録を行なうことができる。

記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示さ
れているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わ
せ構成（直線状液流路又は直角液流路）の他に熱作用部
が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特
許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用
いた構成も本発明に含まれるものである。

加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリ
ットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開
昭59年第123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収す
る開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59年
第138461号公報に基づいた構成としても本発明は有効で
ある。

更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応
した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとして
は、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘ
ッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一
体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいず
れでも良いが、本発明は、上述した効果を一層有効に発
揮することができる。

加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との
電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能にな
る交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録
ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの
記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。

又、本発明の記録装置の構成として設けられる、記録
ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加
することは本発明の効果を一層安定できるので好ましい
ものである。

これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、
キャッピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手
段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれら
の組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を
行なう予備吐出モードを行なうことも安定した記録を行
なうために有効である。

更に、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色
のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に
構成するか複数個の組み合わせによってでもよいが、異
なる色の複色カラー又は、混色によるフルカラーの少な
くとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効であ
る。

以上説明した本発明実施例においては、インクを液体
として説明しているが、室温やそれ以下で固化するイン
クであって、室温で軟化もしくは液体、あるいは上述の
インクジェットではインク自体を30℃以上70℃以下の範
囲で温度調整を行なってインクの粘性を安定吐出範囲に
あるように温度制御するものが一般的であるから、使用
記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよ
い。

加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの
固形状態から液体状態への態変化のエネルギーとして使
用することで防止するか、または、インクの蒸発防止を
目的として放置状態で固化するインクを用いるかして、
いずれにしても、熱エネルギーの記録信号に応じた付与
によってインクが液化してインク液状として吐出するも
のや、被記録材に到達する時点で既に固化し始めるもの
等のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質
のインク使用も本発明には適用可能である。

このような場合、インクは、特開昭54−56847号公報
のように、多孔質シートの凹部または貫通孔に液状また
は固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対し
て対向するような形態としてもよい。

本発明においては、上述したインクに対して最も有効
なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。

〔発明の効果〕

以上の説明から明らかなごとく、請求項１のインクジ
ェット記録ヘッドによれば、熱エネルギーを利用してイ
ンクを吐出するための複数の発熱体と、前記発熱体を複
数の異なったタイミングで駆動するようブロック化して
駆動させると共に、隣接する発熱体を異なったブロック
で駆動させるように、対応する複数の発熱素子に電流を
与えてインクを吐出させるための画像信号を少なくとも
２つの異なったタイミングで選択する選択手段と、前記
発熱体の一端部に接続されると共に該発熱体と隣接する
発熱体の端部に接続される複数の共通配線と、前記選択
された画像信号に応答して、各駆動タイミングで発熱さ
せるべき発熱素子の両端の一方に相対的にハイレベルの
電位を加え、他方に相対的にロウレベルの電位を加えて
前記発熱体を駆動する駆動回路と、を有する構成とした
ので、発熱素子に流れる電流の向きを逆転させて電気的
腐食を防止する場合でも一部配線に電流が集中すること
を防止できる他に、画像信号自体を少なくとも２つの異
なったタイミングで選択することから、画像信号の有無
に関係なく、同時に駆動可能な発熱素子の数を制限して
回路全体として瞬時に流れる電流を小さくすることがで
き、それによって、各発熱体の発熱量を安定させて記録
画像のむらを防止し、記録ヘッドの寿命を長くすること
ができるインクジェット記録ヘッドが提供される。

請求項17のインクジェット記録装置によれば、熱エネ
ルギーを利用してインクを吐出するための複数の発熱体
と、前記発熱体を複数の異なったタイミングで駆動する
ようブロック化して駆動させると共に、隣接する発熱体
を異なったブロックで駆動させるように、対応する複数
の発熱素子に電流を与えてインクを吐出させるための画
像信号を少なくとも２つの異なったタイミングで選択す
る選択手段と、前記発熱体の一端部に接続されると共に
該発熱体と隣接する発熱体の端部に接続される複数の共
通配線と、前記選択された画像信号に応答して、各駆動
タイミングで発熱させるべき発熱素子の両端の一方に相
対的にハイレベルの電位を加え、他方に相対的にロウレ
ベルの電位を加えて前記発熱体を駆動する駆動回路とを
有するインクジェット記録ヘッドと、前記ロウレベルと
ハイレベルの信号を選択的に与えるためのスイッチング
素子と、を具備する構成としたので、発熱素子に流れる
電流の向きを逆転させて電気的腐食を防止する場合でも
一部配線に電流が集中することを防止できる他に、画像
信号自体を少なくとも２つの異なったタイミングで選択
することから、画像信号の有無に関係なく、同時に駆動
可能な発熱素子の数を制限して回路全体として瞬時に流
れる電流を小さくすることができ、それによって、各発
熱体の発熱量を安定させて記録画像のむらを防止し、記
録ヘッドの寿命を長くすることができるインクジェット
記録ヘッドを具備するインクジェット記録装置が提供さ
れる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による記録ヘッドの一実施例の駆動回路
を示す回路図、第２図は第１図中の出力段の回路を示す
図、第３図は第１図中の出力段の回路の別の構成例を示
す図、第４図は第１図の駆動回路の信号のタイミングチ
ャート、第５図は本発明による記録ヘッドの発熱素子お
よびその近傍の配線パターンの一例を示す模式的部分平
面図、第６図は本発明による記録ヘッドの発熱素子およ
びその近傍の配線パターンの他の例を示す模式的部分平
面図、第７図は本発明による記録ヘッドの他の実施例の
駆動回路を示す回路図、第８図は第７図の駆動回路の信
号のタイミングチャート、第９図は本発明による記録装
置の一実施例を示す模式的斜視図、第10図は本発明によ
る記録ヘッドの一実施例を示す模式的分解斜視図であ
る。以下に、図面中の主要な構成部分を表す符号を列挙す
る。 51、52……被記録材搬送手段、53……被記録材、55……
記録ヘッド、56……ヘッド装着部、61……基板、62……
発熱素子、63……吐出口、64……液流路、66……支持
板。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】熱エネルギーを利用してインクを吐出する
ための複数の発熱体と、前記発熱体を複数の異なったタイミングで駆動するよう
ブロック化して駆動させると共に、隣接する発熱体を異
なったブロックで駆動させるように、対応する複数の発
熱素子に電流を与えてインクを吐出させるための画像信
号を少なくとも２つの異なったタイミングで選択する選
択手段と、前記発熱体の一端部に接続されると共に該発熱体と隣接
する発熱体の端部に接続される複数の共通配線と、前記選択された画像信号に応答して、各駆動タイミング
で発熱させるべき発熱素子の両端の一方に相対的にハイ
レベルの電位を加え、他方に相対的にロウレベルの電位
を加えて前記発熱体を駆動する駆動回路と、を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項２】前記各共通配線の電位レベルを決定する基
準となる配線の電位を変化させることを特徴とする請求
項１のインクジェット記録ヘッド。
【請求項３】前記基準となる配線の電位レベルを駆動中
に変化させることを特徴とする請求項２のインクジェッ
ト記録ヘッド。
【請求項４】前記複数のブロックは選択信号によって駆
動される特定のブロックが選択されると共に、前記基準
となる配線の電位は前記選択信号に同期して変化するこ
とを特徴とする請求項２のインクジェット記録ヘッド。
【請求項５】前記基準となる配線の電位は画像信号の記
録毎に変化することを特徴とする請求項２のインクジェ
ット記録ヘッド。
【請求項６】前記発熱体によって印加される熱エネルギ
ーによって膜沸騰による気泡を発生させて吐出口よりイ
ンクを吐出させることを特徴とする請求項１のインクジ
ェット記録ヘッド。
【請求項７】前記複数のブロックは選択信号によって駆
動されるブロックが選択されることを特徴とする請求項
１のインクジェット記録ヘッド。
【請求項８】前記選択信号はイネーブル信号であること
を特徴とする請求項７のインクジェット記録ヘッド。
【請求項９】前記発熱素子と配線は基板上に設けられる
ことを特徴とする請求項１のインクジェット記録ヘッ
ド。
【請求項１０】前記基板はSiで構成されることを特徴と
する請求項９のインクジェット記録ヘッド。
【請求項１１】前記発熱素子はTaAlで構成されることを
特徴とする請求項９のインクジェット記録ヘッド。
【請求項１２】前記発熱素子と配線の上に保護層が設け
られることを特徴とする請求項９のインクジェット記録
ヘッド。
【請求項１３】前記発熱素子と配線の上には保護層が設
けられずインクに直接接することを特徴とする請求項９
のインクジェット記録ヘッド。
【請求項１４】前記記録ヘッドは複数の色のインクを吐
出することを特徴とする請求項１のインクジェット記録
ヘッド。
【請求項１５】前記記録ヘッドは被記録材の幅と等しい
幅を有することを特徴とする請求項１のインクジェット
記録ヘッド。
【請求項１６】前記記録ヘッドは被記録材を相対的に走
査することを特徴とする請求項１のインクジェット記録
ヘッド。
【請求項１７】熱エネルギーを利用してインクを吐出す
るための複数の発熱体と、前記発熱体を複数の異なった
タイミングで駆動するようブロック化して駆動させると
共に、隣接する発熱体を異なったブロックで駆動させる
ように、対応する複数の発熱素子に電流を与えてインク
を吐出させるための画像信号を少なくとも２つの異なっ
たタイミングで選択する選択手段と、前記発熱体の一端
部に接続されると共に該発熱体と隣接する発熱体の端部
に接続される複数の共通配線と、前記選択された画像信
号に応答して、各駆動タイミングで発熱させるべき発熱
素子の両端の一方に相対的にハイレベルの電位を加え、
他方に相対的にロウレベルの電位を加えて前記発熱体を
駆動する駆動回路とを有するインクジェット記録ヘッド
と、前記ロウレベルとハイレベルの信号を選択的に与えるた
めのスイッチング素子と、を具備することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項１８】前記発熱体によって印加される熱エネル
ギーによって膜沸騰による気泡を発生させて吐出口より
インクを吐出させることを特徴とする請求項17のインク
ジェット記録装置。
【請求項１９】前記インクジェット記録ヘッドを搭載す
るための搭載手段と、被記録材を搬送する手段とを有す
ることを特徴とする請求項18のインクジェット記録装
置。