JPH0716903Y2 - 軸周式給油装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、二重反転プロペラを有する船舶の外側プロペ
ラ軸とその内周の内側プロペラ軸との間の軸受に対して
油を給排する軸周式給油装置に関する。

〔従来の技術〕

従来から、たとえば船尾管装置の一例として第８図に示
すものが知られている。

すなわち同図において、符号（３）は、船体（１）に貫
設した船尾管（２）の内側に軸受（４）（５）を介して
軸支された中空構造の外側プロペラ軸を示し、その内端
に連結した中空の中間軸（６）から伝わる動力を受けて
外端に固着した外側プロペラ（７）を回転させる。軸受
（４）（５）間の空間（８）内には該軸受（４）（５）
部を潤滑する油が注入されている。この油は、一般に、
船の吃水に相当する海水圧力より若干高い圧力に保持さ
れており、軸受（４）（５）の外側に設けたシール装置
（９）（10）により船尾管（２）外への漏洩が防がれて
いる。前記外側プロペラ軸（３）の内側には軸受（12）
（13）を介して中空構造の内側プロペラ軸（11）が軸支
され、その内端に連結した中間軸（14）から伝わる動力
によって外端に固着した内側プロペラ（15）を前記外側
プロペラ（７）と反対方向に回転させる。軸受（12）
（13）間の空間（16）には、前記外側の潤滑油と略同圧
になる潤滑油が注入され、軸受（12）（13）の外側に設
けたシール装置（17）（18）により該潤滑油の漏洩が防
止されている。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記船尾管装置において、外側および内側のプロペラ軸
（３）（11）は、それぞれ２個の軸受（４）（５）（1
2）（13）により支えられて回転するが、軸受（４）
（５）（12）（13）はいずれもプロペラ（７）（15）の
重量やプロペラ軸（３）（11）の自重を支えるのでかな
りの高負荷となり、とくに内側軸受（12）（13）は軸と
軸受が互いに反転するのでさらに高負荷となって潤滑油
の積極的な供給が不可欠となる。しかしながら、上記装
置には外側プロペラ軸（３）の内側に配される内側プロ
ペラ軸（11）の軸受（12）（13）に潤滑油を円滑に供給
する手段が確立されていない。

〔課題を解決するための手段〕

上述の問題を有効に解決するため、本考案に係る軸周式
給油装置は、タンクから、内側プロペラ軸の外周に配置
した第１の給油装置及びその内周位置で前記内側プロペ
ラ軸に半径方向に穿設した連通孔を経由して前記内側プ
ロペラ軸の中空部に至り、この中空部から前記連通孔と
は異なる位置で前記内側プロペラ軸に半径方向に穿設し
た他の連通孔を経由して前記内側プロペラ軸と外側プロ
ペラ軸との間の軸受を通り、さらに前記外側プロペラ軸
に半径方向に穿設した外側連通孔及びその外周位置で前
記外側プロペラ軸の外周に配置した第２の給油装置を介
して前記タンクに至る循環経路を有し、前記第１の給油
装置は、前記内側プロペラ軸に摺接される内周面に環状
溝が形成されるとともに該環状溝に臨んで半径方向の静
止側連通孔が穿設された非回転の環状ハウジングからな
り、前記第２の給油装置は、前記外側プロペラ軸に摺接
される内周面に環状溝が形成されるとともに該環状溝に
臨んで半径方向の静止側連通孔が穿設された非回転の環
状ハウジングからなるものである。

〔作用〕

上記構成の給油装置を用いて上記船尾管装置へ潤滑油を
供給する場合、潤滑油は船体内に固定的に配設される供
給配管から回転駆動するプロペラ軸を通してその内側へ
供給され、内側の軸受へ常に適量の潤滑油を供給してそ
の作動性および耐久性を向上させる。第１の給油装置の
静止側連通孔から内側プロペラ軸の連通孔を経由してこ
の内側プロペラ軸の中空部に送られる際に、内側プロペ
ラ軸の回転によって前記連通孔内で生じる遠心力による
抵抗は、前記中空部から内側プロペラ軸の他の連通孔を
外周側へ通過する際の遠心力による排出力と相殺され、
さらに、前記内側プロペラ軸と外側プロペラ軸との間の
軸受を通った潤滑油が前記外側プロペラ軸の外側連通孔
から第２の給油装置の静止側連通孔へ排出される際の遠
心力がポンプ力として加わるので、潤滑油が円滑に循環
される。

〔実施例〕

つぎに本考案を図面にしたがってさらに詳細に説明す
る。

第３図に示すように、内側プロペラ軸（11）の軸受（1
2）（13）への給油は、タンク（19）内に貯えた潤滑油
をポンプ（20）により配管（21a）を経て第１の給油装
置（22）に送給し、内側プロペラ軸（11）に穿設した連
通孔（23）を経て該内側プロペラ軸（11）の中空部へ送
り込むことから始まる。中空部へ送り込まれた潤滑油
は、内側プロペラ軸（11）の後端近傍に穿設した他の連
通孔（24）から内側プロペラ軸（11）と外側プロペラ軸
（３）の間に送給されて軸受（12）（13）を潤滑し、外
側プロペラ軸（３）に穿設した連通孔（25）から第２の
給油装置（26）へ送給され、配管（21b）を経て前記タ
ンク（19）に戻される。第１の給油装置（22）から内側
プロペラ軸（11）の連通孔（23）を通ってその内周へ送
られる際に、前記連通孔（23）内では、内側プロペラ軸
（11）の回転による遠心力が、潤滑油の供給方向に対し
て逆向きになるので抵抗として作用するが、他の連通孔
（24）内で生じる遠心力は、潤滑油の供給方向に対して
順方向となるので、前記連通孔（23）内での抵抗を相殺
する。そして、軸受（12）（13）を通った潤滑油が外側
プロペラ軸（３）に開設した外側連通孔（25）から第２
の給油装置（26）へ向けて外周へ通過する際に、この外
側連通孔（25）内では、外側プロペラ軸（３）が内側プ
ロペラ軸（11）よりも大径であることによるさらに大き
な遠心力がポンプ力として加わるから、ポンプ（20）の
動力が小さいものであっても、潤滑油が円滑に循環され
る。

第１図および第２図は上記第１の給油装置（22）の一例
を拡大して示している。図示するように当該給油装置
（22）は、内側プロペラ軸（11）に外挿する二つ割式の
環状ハウジング（27）を備え、かつ下側のハウジング半
体に船体（１）の取付台（29）に固着される脚部（28）
を一体形成して内側プロペラ軸（11）を支持する軸受を
兼ねている。環状ハウジング（27）は、その内周面の軸
方向中央に環状溝（30）を形成され、その前後にホワイ
トメタル、樹脂類、カーボン等の潤滑性に優れた材料よ
りなる摺動材（31）（31）を嵌着されるとともに外側か
ら環状溝（30）に連なる連通孔（32）を形成されてい
る。配管（21a）から送られてきた潤滑油はこの連通孔
（32）から環状溝（30）へ送給され、該環状溝（30）か
らプロペラ軸（11）に形成した連通孔（23）・・・を介
して該プロペラ軸（11）の中空部へ送給される。プロペ
ラ軸（11）に等配形成された４本の連通孔（23）・・・
は該プロペラ軸（11）の回転により周方向の位置を変え
るが、いずれも常に環状溝（30）と接続しているため油
の供給を停止することはない。環状溝（30）に送給され
た油の一部は、プロペラ軸（11）と摺動材（31）（31）
の間に構成される微小な環状隙間（図示せず）に浸入し
て同摺動部の潤滑を行ない軸受としての役割を果たさせ
る。該摺動部を通過した油は油切り（33）とカバー（3
4）によって環状ハウジング（27）に形成した回収孔（3
5）に集められ、回収管（36）を介してタンク（19）に
戻される。外側プロペラ軸（３）に外挿される第２の給
油装置（26）も径寸法を異にし油の経路を反対にする外
は第１の給油装置と同じ構造になる。また本実施例にお
いて、外側プロペラ軸（３）の軸受（４）（５）への給
油は、タンク（37）からポンプ（38）、配管（39a）を
経て船尾管（２）内へ供給され、配管（39b）からタン
ク（37）へ戻される。

第４図は、上記摺動材（31）（31）が損耗したときの取
り替えに便ならしめるため、該摺動材（31）（31）に環
状ハウジング（27）と別体に構成した軸受裏金（40）の
内周面に取り付け、連通孔（41）と環状溝（42）を形成
したこの裏金（40）をハウジング（27）に嵌着したもの
を示している。これにより摺動材（31）（31）に摩耗や
焼付き等の損傷が発生した場合、ハウジング（27）から
裏金（40）を取り外して摺動材（31）（31）を取り替え
ることができる。裏金（40）は、これに連通孔（41）と
環状溝（42）を形成する代わりに第５図に示すごとく軸
方向に２分割したものでもよい。

先に述べたように上記給油装置（22）（26）は、該装置
が外挿するプロペラ軸（３）（11）の中空部に対して油
を給排する外にプロペラ軸（３）（11）を支持する軸受
としての機能を兼ねて備えており、第３図に示した本来
の船内側の軸受（４）（12）を省略できるものとして便
利な特徴を有しているが、これから軸受機能を取り去っ
たものも考えられる。すなわち第６図および第７図に示
すように環状ハウジング（27）に上記脚部（28）に代え
て固定金具（43）を取り付け該金具（43）を取付台（2
9）に取り付ける。この固定金具（43）は当該給油装置
（22）の自重を支えるとともに同装置（22）の廻り止め
および軸方向移動の規制を行なう。環状ハウジング（2
2）両端のカバー（34）（34）の内側にバッフルプレー
ト（44）（44）が備えられ、さらにその内側に油溜り
（45）（45）が形成されている。環状溝（30）からプロ
ペラ軸（11）と摺動材（31）（31）の間の微小隙間を通
過して両端に達した潤滑油はこの油溜り（45）（45）に
導かれ、回収孔（46）（46）から図示しない配管により
回収されて再使用に供される。万一、漏油が油溜り（4
5）（45）からカバー（34）（34）側へ溢れた場合には
該カバー（34）（34）の下部に設けた回収孔（47）（4
7）から該油を回収し、装置外へ油が漏れ出ることのな
いように構成されている。

上記各実施例に共通して当該給油装置に供給される油の
圧力が高い場合には圧力に比例して漏油量が多くなるた
め、前記環状隙間をさらに小さくするかまたは摺動材の
幅を広くとることが考えられ、逆に圧力が低い場合は摺
動材の幅を狭くして低圧から高圧まで広範囲にわたって
対応させることができる。また環状ハウジング（27）の
ほか当該装置を構成するすべての環状部品を二つ割構造
にすれば取り扱いに便利である。

〔考案の効果〕

本考案の軸周式給油装置は以上説明したように、内側プ
ロペラ軸の中空部を通ってこの内側プロペラ軸と外側プ
ロペラ軸との間の軸受に給油し、外側プロペラ軸に開設
した外側連通孔から排出するようにしたため、給油の過
程で内側プロペラ軸の外周側から内周側へ潤滑油が通過
する際の抵抗がなく、油の供給を円滑かつ確実に行なう
ことができ、内側の軸受の作動性や耐久性を向上させる
ことができる。また本考案の給油装置は上記二重反転プ
ロペラ装置への給油のほか、可変ピッチプロペラ装置へ
の作動油の給油や陸用として各種大型圧延機械等への給
油に適しており、とくに大口径の回転軸に好適な給油装
置を提供するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例に係る軸周式給油装置の第
１の給油装置の断面図、第２図は第１図におけるA-A線
断面図、第３図は同給油装置を装着した船尾管装置の概
略的な断面図、第４図は本考案の第２実施例に係る軸周
式給油装置の第１の給油装置の断面図、第５図は本考案
の第３実施例に係る軸周式給油装置の第１の給油装置の
断面図、第６図は本考案の第４実施例に係る軸周式給油
装置の第１の給油装置の断面図、第７図は第６図におけ
るB-B線断面図、第８図は従来の船尾管装置の一例を示
す概略的な断面図である。 （１）船体、（２）船尾管、（３）外側プロペラ軸 （４）（５）（12）（13）軸受、（６）（14）中間軸 （７）外側プロペラ、（11）内側プロペラ軸 （15）内側プロペラ、（19）（37）タンク （20）（38）ポンプ、（21a）（21b）（39a）（39b）配
管 （22）（26）給油装置 （23）（24）（25）（32）（41）連通孔 （27）環状ハウジング、（28）脚部、（29）取付台 （30）（42）環状溝、（31）摺動材、（33）油切り （34）カバー、（35）（46）（47）回収孔 （36）回収管、（40）軸受裏金、（43）固定金具 （44）バッフルプレート、（45）油溜り

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】中空の外側プロペラ軸とこの外側プロペラ
   軸の中空部に挿通された中空の内側プロペラ軸との間の
   軸受に潤滑油を給排する装置であって、 タンクから、内側プロペラ軸の外周に配置した第１の給
   油装置及びその内周位置で前記内側プロペラ軸に半径方
   向に穿設した連通孔を経由して前記内側プロペラ軸の中
   空部に至り、この中空部から前記連通孔とは異なる位置
   で前記内側プロペラ軸に半径方向に穿設した他の連通孔
   を経由して前記内側プロペラ軸と外側プロペラ軸との間
   の軸受を通り、さらに前記外側プロペラ軸に半径方向に
   穿設した外側連通孔及びその外周位置で前記外側プロペ
   ラ軸の外周に配置した第２の給油装置を介して前記タン
   クに至る循環経路を有し、 前記第１の給油装置は、前記内側プロペラ軸に摺接され
   る内周面に環状溝が形成されるとともに該環状溝に臨ん
   で半径方向の静止側連通孔が穿設された非回転の環状ハ
   ウジングからなり、 前記第２の給油装置は、前記外側プロペラ軸に摺接され
   る内周面に環状溝が形成されるとともに該環状溝に臨ん
   で半径方向の静止側連通孔が穿設された非回転の環状ハ
   ウジングからなる ことを特徴とする軸周式給油装置。