JPH07166151A - 有機液状物のゲル化又は固化剤 - Google Patents

有機液状物のゲル化又は固化剤

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JPH07166151A
JPH07166151A JP34170393A JP34170393A JPH07166151A JP H07166151 A JPH07166151 A JP H07166151A JP 34170393 A JP34170393 A JP 34170393A JP 34170393 A JP34170393 A JP 34170393A JP H07166151 A JPH07166151 A JP H07166151A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 炭素数2〜28の直鎖状飽和脂肪酸を構成脂
肪酸とするトリグリセリドと、炭素数20〜28の脂肪
族飽和二塩基酸の低級アルコールジエステルとをエステ
ル交換せしめて得られる、前記二塩基酸と低級アルコー
ルとのエステル結合のうち一方を残存させた部分エステ
ル交換反応物を少なくとも含有する前記エステル交換反
応生成物を有効成分としてなる有機液状物のゲル化又は
固化剤。 【効果】 上記エステル交換反応生成物を有効成分とし
てなるゲル化又は固化剤は、常温で液状を呈するエステ
ル類、油脂類、炭化水素類、極性及び非極性有機溶剤等
に少量添加して、均一かつ滑らかで粘稠性のある安定な
ゲル化もしくは固化物を形成することができ、溶剤、油
剤の処理剤、潤滑剤、離型剤、接着剤、結着剤、シーリ
ング剤、滑剤等として活用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は常温で液状の有機物をゲ
ル化又は固形化するエステル交換反応生成物に関する。
本発明のゲル化又は固化剤は電気、電子、磁気用機器、
機械、自動車、日用雑貨、染料、インク、塗料、化粧
品、トイレタリー、医薬品、農業、水産、飼料、食品分
野や紙、繊維、皮革、樹脂、高分子、ゴム、金属等の加
工分野等において利用できる。
【0002】
【従来の技術】従来、油脂、炭化水素あるいは溶剤等を
ゲル状に固形化する機能を有するものとして、(1)高
級脂肪酸の金属石ケン、12−ヒドロキシステアリン
酸、ジベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンキシ
リトール、N−アシルアミノ酸誘導体、(2)デキスト
リン脂肪酸エステル、アクリル酸系ポリマー等が知られ
ている。
【0003】このうち(1)のタイプは、主に液状のエ
ステル類、油脂類に均一に溶解もしくは分散させ冷却す
ることにより、全体をゲル状に固形化するものである。
かかるゲル化剤は12−ヒドロキシステアリン酸の融
点:80℃、ジベンジリデンソルビトールの融点:16
0℃というように概して融点が高く、このため油脂類等
のいわゆる有機液状物を固形化するにあたっては、予め
加熱操作を施してゲル化剤そのものを融解させ、もしく
はゲル化剤と例えば油脂類とを溶融させることを必要と
した。またこのタイプのゲル化剤は、低沸点の溶剤とし
て工業的に汎用的なイソパラフィン、ヘキサン、エタノ
ール等の有機溶剤に対しては溶解し、極めて多量のゲル
化剤を添加することによりはじめて固形化できるもので
あり、かかる有機溶剤の固化には不適であった。
【0004】一方(2)のタイプのゲル化剤としては、
例えばアクリル酸系ポリマーとして日本触媒化学工業
(株)製の「アクアリックCA」があり、これはほとん
どの炭化水素系化合物を固形化するが、エステル系化合
物、とりわけアルキル基鎖長の大きい高級脂肪酸残基を
有する油脂類に対してはゲル状固化の効果を奏さない。
しかもこのタイプのものは、前記(1)タイプのものが
ゲル化剤と被ゲル化物とを溶融、固化させるものである
のに対し、いわゆる被ゲル化物をゲル化剤中に吸収させ
て固化するため、均一なゲル状物を得ることは困難であ
った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目
的は、常温で液状を呈するアルコール類、エステル類、
炭化水素類等の有機液状物を少量の添加で、均一かつ滑
らかな固体状物、好ましくはゲル状固形化物となすゲル
化又は固化剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定のエステ
ル交換反応生成物を用いることによりゲル状物又は固形
化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。すなわち本発明は、炭素数2〜28の直鎖状飽和脂
肪酸(以下、単に脂肪酸という)を構成脂肪酸とするト
リグリセリドと、炭素数20〜28の脂肪族飽和二塩基
酸(以下、単に二塩基酸という)の低級アルコールジエ
ステルとをエステル交換反応せしめて得られる、前記二
塩基酸と低級アルコールとのエステル結合のうち一方を
残存させた部分エステル交換反応物を少なくとも含有す
る前記エステル交換反応生成物を有効成分としてなる有
機液状物のゲル化又は固化剤である。
【0007】本発明のエステル交換反応生成物を製造す
るための必須原料成分のひとつは、特定脂肪酸のトリグ
リセリドすなわち炭素数が2〜28の直鎖状飽和脂肪酸
で構成されるトリグリセリドである。具体的な直鎖状飽
和脂肪酸として酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプ
リル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パル
ミチン酸、ステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン
酸、10−ケトステアリン酸、12−ヒドロキシステア
リン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等を例とし
てあげることができ、本発明ではこれらの単独あるいは
混合物のトリグリセリドとして使用してもさしつかえな
い。
【0008】かかるトリグリセリドは常法によりグリセ
リンとのエステル化反応で得ることができ、また天産品
由来のもの、例えば大豆油、菜種油、オリーブ油、綿実
油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、魚油、牛
脂、ラード等に水素添加、分別等の処理を施して得られ
るものでもよい。中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド、いわ
ゆるMCTは本発明に好適である。なお、グリセリド成
分としての不飽和脂肪酸、側鎖状脂肪酸やジグリセリ
ド、モノグリセリド等は若干量であれば含まれていても
かまわない。
【0009】また、もうひとつの原料成分である二塩基
酸の低級アルコールジエステルとしては、炭素数が20
〜28好ましくは22〜28の脂肪族飽和二塩基酸と、
炭素数が好ましくは1〜4より好ましくは1〜3の直鎖
状もしくは側鎖状アルコールとのジエスエルであること
を必要とする。二塩基酸が不飽和のものや炭素数が20
未満のもののエステル交換反応生成物はゲル化能が低下
し、また炭素数が28を超える二塩基酸は工業的原料と
して入手しにくい。したがって本発明では、エイコサジ
カルボン酸、ドコサコサジカルボン酸、テトラコサジカ
ルボン酸、ヘキサコサジカルボン酸、オクタコサジカル
ボン酸等の二塩基酸を単独もしくは混合して使用すれば
よく、このうちオクタコサジカルボン酸はゴマ種子をは
じめとする油糧種子から容易に単離することができ、好
適である。前記二塩基酸は、これを常法によりメタノー
ル、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブ
タノール等の低級アルコールでジエステル化して用い
る。
【0010】前記したトリグリセリドの構成脂肪酸と二
塩基酸とは、本発明において適宜に組合せて使用するこ
とができるが、とりわけ好ましい組合せは、二塩基酸の
炭素数が20のときトリグリセリドの構成脂肪酸の炭素
数は18〜28であり、また二塩基酸の炭素数が28の
ときトリグリセリドの構成脂肪酸の炭素数は2〜28で
ある。
【0011】前記原料を用いて本発明のエステル交換反
応生成物を得るには、次に述べる方法のいずれかを採用
すればよい。すなわちトリグリセリドと二塩基酸ジエス
テルとを、後述するように二塩基酸ジエステル1モルに
対してトリグリセリド10モル未満、好ましくは2モル
未満の配合比率で混合し、ナトリウムメトキサイド、リ
チウムエトキサイド等の金属アルコラートを触媒として
用い化学的エステル交換反応せしめるか、リパーゼを触
媒として用い酵素的エステル交換反応せしめる。
【0012】このうちリパーゼによるエステル交換法
は、グリセリドの位置に対する特異性の差から1,2,
3位ランダム型と1,3位選択型とに分けられるが、本
発明では1,3位に選択性のあるリパーゼを用いるエス
テル交換法が好ましい。かかるタイプの選択性リパーゼ
としては、微生物由来のものが至便であり、リゾプスデ
レマー(Rhizopus delemar)、ムコール ミーハイ(Mu
cor miehei)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus
nigar )等からのものを使用することができ、とりわけ
アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp. )起源の
リパーゼ、例えば名糖産業(株)製、商品名:リパーゼ
QLは好適である。
【0013】エステル交換反応は、例えば金属アルコラ
ートを用いる場合、原料を実質的に無水状態として80
〜140℃で約0.5〜5時間攪拌すればよく、またリ
パーゼを用いる場合には実質的に無水ないし極微量の水
分の共存状態で、反応に不活性な溶媒の存在下又は非存
在下、好ましくは無溶媒で、20〜130℃で約10分
〜100時間攪拌すればよい。なお前記リパーゼQLは
約80〜130℃という高温でエステル交換活性を発現
するため、本発明のような高融点の原料を用いる反応で
は極めて好都合に利用できる。
【0014】前記反応の経過は、副生してくる脂肪酸の
低級アルコールエステルの反応系中における含有量を例
えばガスクロマトグラフィーで測定することにより評価
でき、これにより反応の終了時点を決定すればよい。エ
ステル交換反応物には未反応の原料成分が残存すること
があり、その他に副生する脂肪酸の低級アルコールエス
テルが混在するため、これらを水洗、アルカリ脱酸、溶
剤分別、減圧蒸留、吸着剤、分子篩等の公知の方法で分
離除去し、さらに要すれば脱色、脱臭処理を施して精製
する。
【0015】かくして得られる本発明のエステル交換反
応生成物は、原料のトリグリセリドと二塩基酸ジエステ
ルとがモル比率で1:1、1:2及び2:1の割合でエ
ステル交換反応した成分を主要成分とし、このほかに前
記原料が直鎖状又は/及び網目状にモノないしオリゴエ
ステル化された成分を含む融点40〜90℃程度の混合
物であり、かつ二塩基酸ジエステルのうち一方のエステ
ル結合のみがエステル交換され、他方が低級アルコール
エステルのまま残存する、いわば部分エステル交換反応
された成分を少なくとも含有することを特徴とする。こ
のような組成となすためには、エステル交換反応の原料
配合比率を二塩基酸ジエステル1モルに対してトリグリ
セリドを10モル未満、好ましくは2モル未満に設定す
る。前記部分エステル交換反応成分を含まないエステル
交換反応生成物は有機液状物をゲル化又は固化しにくく
なる。
【0016】なお、本発明のエステル交換反応生成物中
に二塩基酸と低級アルコールとのエステル結合が残存す
ることの確認は、前記精製処理を施して未反応物及び副
生成物を除去したものを例えば塩酸加水分解し、分解物
中に生成する低級アルコールをガスクロマトグラフィー
により分析することによって行うことができる。
【0017】本発明のエステル交換反応生成物は、これ
を単独あるいは混合して有機液状物のゲル化又は固化剤
となすことができる。ここに有機液状物とは、常温で液
体状態を呈する有機化合物をいい、以下に具体例を示す
が、本発明はこれらに限定されるものではない。まずメ
タノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレン
グリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモ
ノエチルエーテル、2−エチルヘキサノール、ノナノー
ル、2−ヘプチルウンデカノール、2−オクチルドデカ
ノール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ジ
プロピレングリコール、グリセリン等の直鎖状又は側鎖
状、飽和又は不飽和のアルコール類、酢酸、プロピオン
酸、カプロン酸、カプリル酸、オレイン酸、各種イソス
テアリン酸等の脂肪酸類を対象とすることができる。
【0018】また、ミリスチン酸イソプロピル、ミリス
チン酸オクチルドデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グ
リセリド、混合中鎖脂肪酸グリセリド、酢酸エチル等の
エステル類、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー
油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、アマニ油、魚油等の
油脂類ならびにこれらの部分分解物、ジメチルエーテ
ル、ジエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、パラフ
ィン、イソパラフィン等の炭化水素類が好適である。こ
れらのほかに常温で液状のシリコーン油、灯油等も対象
とすることができる。
【0019】前記有機液状物に対して本発明のエステル
交換反応生成物を0.1〜10重量%、好ましくは0.
5〜3重量%添加し、要すれば約80℃程度に加温して
溶融後、軽く攪拌し、常温にてあるいは約5℃程度に冷
却して静置すれば、均一で粘稠性のある滑らかなゲル化
物又は固形化物、乃至ゲル状固形化物が得られる。この
ものは約40℃以下の温度で液体部分を発生することな
く、系全体が均一状態を保持する。
【0020】なお本発明のゲル化又は固化剤は、前記エ
ステル交換反応生成物の単独又は混合物のみでもさしつ
かえないが、本発明の目的を逸脱しないかぎり、これに
さらに適量の従来公知のワックス類例えばカルナウバワ
ックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の
ほかパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等のグリセ
リドからなる固体脂を配合してもよい。また前記公知の
ゲル化剤と併用してもよい。
【0021】
【実施例】以下の合成例及び実施例において、%は重量
基準である。 合成例1 攪拌機、温度計を取り付けたフラスコに、中鎖飽和脂肪
酸トリグリセリド(日清製油(株)製、商品名:OD
O、構成脂肪酸はカプリル酸75%、カプリン酸25
%)49.4g(0.1モル)と、本出願人が先に出願
した特願平5−230734号に記載の方法、すなわち
ゴマ原油の沈澱物(オリ)をエタノールに分散、溶解さ
せ、冷却して析出する不溶物を分離することにより得ら
れたオクタコサジカルボン酸のジメチルエステル49.
6g(0.1モル)とを原料とし、アルカリゲネス エ
スピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼ(名糖産業
(株)製、リパーゼQL)を対原料1%添加して、90
℃で攪拌しながら、副生する脂肪酸メチルエステルの含
量をガスクロマトグラフィーで分析し、その増加が認め
られなくなるまで72時間エステル交換反応を行った。
反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び
真空蒸留処理してエステル交換反応物を精製し、本発明
のエステル交換反応生成物(試料記号:Aとする)8
2.5gを得た。このものは酸価:4.7、水酸基価:
3.4、融点:57〜64℃であった。
【0022】上記エステル交換反応生成物を多量のテト
ラヒドロフランに溶解し、ポリスチレン・ジビニルベン
ゼン系ポリマーゲル(ポリマーラボラトリー社製、商品
名:PL−gel)を充填したカラムを用いた高速液体
クロマトグラフィーに供して分子篩処理を行い、組成を
定量したところ、原料の中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド
とオクタコサジカルボン酸ジメチルエステルとがモル比
率で1:1、1:2及び2:1の割合でエステル交換反
応した成分が、ほぼ2:3:2であり、この三成分が全
体の83%を占めていた。残りの成分は両原料がエステ
ル交換反応を繰り返したと考えられるものであった。ま
た、上記エステル交換反応生成物を1N−塩酸を用いて
常法により加水分解し、その分解物をガスクロマトグラ
フィーに供したところ、メタノールを検出した。これに
より上記エステル交換反応生成物中にメチルエステルが
残存することを確認した。
【0023】合成例2 常法によりエステル合成したベヘン酸トリグリセリド1
14g(0.1モル)とエイコサジカルボン酸のジメチ
ルエステル37g(0.1モル)とを、合成例1と同様
にエステル交換反応せしめ、反応物をシリカゲルカラム
クロマトグラフィーに供して不純物(未反応原料及び副
生物)を分離除去し、本発明のエステル交換反応生成物
(試料記号:Bとする)92.4gを得た。このものは
酸価:3.2、水酸基価:2.9、融点:57〜61℃
であった。
【0024】合成例3 合成例1において、リパーゼ1%をナトリウムメトキサ
イド0.5%に置き換え、減圧下、80℃で30分間、
化学的ランダム型エステル交換反応を行い、反応物を同
様に精製処理して本発明のエステル交換反応生成物(試
料記号:Cとする)79.8gを得た。このものは酸
価:0.7、水酸基価:1.8、融点:58〜64℃で
あった。
【0025】合成例4(比較合成例1) 合成例1において、原料として酢酸を構成脂肪酸とする
トリグリセリド(和光純薬(株)製、商品名:トリアセ
チン)109g(0.5モル)とテトラデカジカルボン
酸((株)日鉱共石製、商品名:テトラデカンジオイッ
クアシッド)のメチルエステル142g(0.5モル)
とを用い、同様にエステル交換反応せしめ、精製処理を
施してエステル交換反応生成物(試料記号:Dとする)
182gを得た。このものは酸価:4.9、水酸基価:
5.0であり、常温で液状であった。
【0026】実施例1 合成例1〜4で得たエステル交換反応生成物(試料記
号:A〜D)、12−ヒドロキシステアリン酸及びカル
ナウバワックスの大豆油に対するゲル化能を試験した。
その結果を表1に示す。なお試験法は、ビーカーに大豆
油とその3%の各試料を採り、攪拌しながら80℃に加
熱して溶融し、そのまま1時間、常温で放冷した後、得
られたゲル状物の状態を観察した。評価は、◎:硬く、
均一で滑らかなゲル状物、○:均一で滑らかなゲル状
物、△:一部が固液分離するもの、×:固形化しないも
のとした。
【0027】
【表1】
【0028】表1から、本発明のエステル交換反応生成
物(試料記号:A〜C)は、大豆油に対し、従来のゲル
化剤やワックスに比べて少量の添加であるにもかかわら
ず、均一なゲル状固形化物を形成することが明らかにな
った。また、これらを常温にて1ヵ月間保存したとこ
ろ、本発明のエステル化生成物を添加したものは均一状
態を維持しており、安定であることを認めた。なお、1
2−ヒドロキシステアリン酸は大豆油を固形化させるも
のの、固形物は固く、非常にボソついた感触であり、こ
れを一且破砕すると元の固形物を再生しなかった。これ
に対して本発明のエステル交換反応生成物は極めて滑ら
かで粘稠性のあるものであり、これを破砕しても容易に
元のゲル状態に復帰した。試料Dはゲル化能が劣ってい
た。
【0029】実施例2 合成例1で得たエステル交換反応生成物(試料記号:
A)の各種有機液状物に対するゲル化又は固化能を実施
例1と同様の方法で調べた。その結果を表2に示す。な
お評価の符号は実施例1と同じ基準である。表2から、
本発明のエステル交換反応生成物は、各種液状物に対し
て少量で固形化能をもち、しかも固形物は均一で滑らか
な粘稠性のある性状を呈し、この特性は幅広い極性物質
に対して有効であることがわかった。
【0030】
【表2】
【0031】実施例3 合成例1の方法に従って種々のエステル交換反応生成物
(試料記号:1〜11)を合成し、菜種油に3%添加し
てゲル化又は固化能を調べた。その結果を表3に示す。
なお評価の符号は実施例1と同じ基準である。表3か
ら、トリグリセリドの構成脂肪酸及び二塩基酸の種類を
適宜に組合せることによって好ましいゲル化又は固化剤
を調製できることが明らかになった。
【0032】
【表3】 注 1)炭素数をC数値で表示した。例えば脂肪酸のC
22はヘベン酸、二塩基酸のC28はオクタコサジカル
ボン酸である。 2)試料記号Aと同じ。 3)試料記号Bと同じ。 4)試料記号Dと同じ。 5)高エルシン酸なたね極硬油(ミヨシ油脂(株)
製):脂肪酸組成はパルミチン酸(4.7%)、ステア
リン酸(74.6%)、アラキン酸(5.0%)、ベヘ
ン酸(15.7%)
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、炭素数2〜28の直鎖
状飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドと、炭
素数20〜28の脂肪族飽和二塩基酸の低級アルコール
ジエステルとのエステル交換反応生成物であって、前記
脂肪族飽和二塩基酸と低級アルコールとのエステル結合
のうち一方を残存させた部分エステル交換反応物を少な
くとも含有する前記エステル交換反応生成物を有効成分
としてなるゲル化又は固化剤が得られ、これを常温で液
状を呈するエステル類、油脂類、炭化水素類、極性及び
非極性有機溶剤等に少量添加するのみで、均一かつ滑ら
かで粘稠性のある安定なゲル化又は固形化物を形成する
ことができる。したがって本発明のエステル交換反応生
成物は、従来のものに比べて低融点の、ゲル化能に優れ
た有機液状物のゲル化又は固化剤となすことができ、か
かるゲル化又は固化剤は溶剤、油剤の処理剤、潤滑剤、
離型剤、接着剤、結着剤、シーリング剤、滑剤、被膜
剤、塗膜剤、揮発成分調節剤等として有効に活用でき
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数2〜28の直鎖状飽和脂肪酸を構
    成脂肪酸とするトリグリセリドと、炭素数20〜28の
    脂肪族飽和二塩基酸の低級アルコールジエステルとをエ
    ステル交換反応せしめて得られる、前記脂肪族飽和二塩
    基酸と低級アルコールとのエステル結合のうち一方を残
    存させた部分エステル交換反応物を少なくとも含有する
    前記エステル交換反応生成物を有効成分としてなる有機
    液状物のゲル化又は固化剤。
  2. 【請求項2】 低級アルコールが炭素数1〜4の直鎖状
    もしくは側鎖状アルコールである請求項1に記載のゲル
    化又は固化剤。
  3. 【請求項3】 脂肪族飽和二塩基酸の炭素数が20であ
    るとき、直鎖状飽和脂肪酸の炭素数が18〜28である
    請求項1に記載のゲル化又は固化剤。
  4. 【請求項4】 脂肪族飽和二塩基酸の炭素数が28であ
    るとき、直鎖状飽和脂肪酸の炭素数が2〜28である請
    求項1に記載のゲル化又は固化剤。
  5. 【請求項5】 有機液状物が常温で液状を呈するアルコ
    ール、脂肪酸、エステル、エーテルもしくは炭化水素で
    ある請求項1、2、3又は4に記載のゲル化又は固化
    剤。
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