JPH07155181A - 新規マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ、その製造方法、この酵素を用いたマルトビオン酸の定量用試薬及びその定量方法 - Google Patents

新規マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ、その製造方法、この酵素を用いたマルトビオン酸の定量用試薬及びその定量方法

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JPH07155181A
JPH07155181A JP5339144A JP33914493A JPH07155181A JP H07155181 A JPH07155181 A JP H07155181A JP 5339144 A JP5339144 A JP 5339144A JP 33914493 A JP33914493 A JP 33914493A JP H07155181 A JPH07155181 A JP H07155181A
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acid
maltobionic acid
maltobionic
enzyme
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JP5339144A
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Takao Shirokane
孝雄 白兼
Ayumi Arai
あゆみ 荒井
Riichiro Uchida
理一郎 内田
Ayako Nasu
綾子 那須
Nobuyuki Yamatsugu
信幸 山次
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Kikkoman Corp
Original Assignee
Kikkoman Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 マルトビオン酸に特異的に作用してβ−D−
グルコースとD−グルコン酸を生成する新規なマルトビ
オン酸グルコヒドロラーゼであり、またバチルス属に属
し、マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ生産能を有する
菌株を用いる該酵素の製造方法であり、そして該酵素を
用いるマルトビオン酸定量用試薬であり、さらにその定
量方法である。 【効果】 新規なマルトビオン酸グルコヒドロラーゼは
マルトビオン酸の酵素的定量方法にとって極めて有用で
あり、この酵素法による新規な定量方法を用いることに
より、マルトビオン酸を、従来になく簡便な操作で、容
易に、精度よく定量することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マルトビオン酸を加水
分解してβ−D−グルコースとD−グルコン酸を生成す
る新規なマルトビオン酸グルコヒドロラーゼ、その製造
方法、この酵素を用いた、例えば食品などに含有される
マルトビオン酸の定量用試薬、及びその定量方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】マルトビオン酸は、マルトースを臭素酸
化、電解酸化あるいは酵素酸化などにより、その還元基
がカルボキシル基に変換された酸化マルトースである。
このマルトビオン酸は、清涼な酸味を有する飲食物添加
用有機酸として、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リン
ゴ酸などと同等又はそれ以上の風味を有することが評価
されてきており、さらには食品の甘味度、粘度などの改
良剤として有用であり、経済的に大量生産が可能となっ
てからは、低甘味剤、色の保持剤、食品の味や物性の改
良剤などとして用いられているマルトースあるいはマル
チトール(還元マルトース)などと同様に、広く食品添
加物として使用されている。このようなことから、食品
中のマルトビオン酸含有量を定量することは、食品を評
価する上から、官能検査と同様に産業上非常に重要な意
義を有している。
【0003】従来、マルトビオン酸含有試料中のマルト
ビオン酸を定量する方法として、例えば、該試料中の
マルトビオン酸を二次元ペーパークロマトグラフィーに
より分離し、これを検出する方法[ジャーナル・オブ・
クロマトグラフィー(Journal of Chro
matography)、第55巻、第424頁、19
71年]、該試料中のマルトビオン酸をイオン交換ク
ロマトグラフィーにより分析する方法[ジャーナル・オ
ブ・クロマトグラフィー(Journal of Ch
romatography)、第30巻、第556頁、
1967年]、該試料中のマルトビオン酸をイオン交
換クロマトグラフィーを用いて分画し、過ヨウ素酸酸化
により生成するホルムアルデヒドあるいはグリオキシル
酸を定量する方法[カルボハイドレート・リサーチ(C
arbohydrate Research)、第42
巻、第209頁、1975年]などが知られている。
【0004】しかしながら、これらの方法は操作が非常
に煩雑で、しかも定量に長時間を要するという欠点を有
しており、特に、食品などのマルトビオン酸含有試料の
定量には不向きである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来のマルトビオン酸の定量方法が有する欠点を克服
し、マルトビオン酸を酵素法により、操作が簡単で、安
価に、短時間でしかも精度よく定量する新規な方法を提
供すること、すなわち、この酵素法に有効に用いられる
新規な酵素、この酵素を有効成分とするマルトビオン酸
の定量用試薬及びこの試薬を用いるマルトビオン酸の新
規な定量方法を提供することを目的としてなされたもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、土壌より分離
した微生物がマルトビオン酸に特異的に作用してβ−D
−グルコースとD−グルコン酸に加水分解する新規な酵
素を生産すること、そしてこの酵素を用いれば、マルト
ビオン酸を酵素法により精度よく定量しうることを見出
し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、マルトビオン酸を加
水分解してβ−D−グルコースとD−グルコン酸を生成
する作用を有し、そしてマルトビオン酸に特異的に作用
してマルトース又はマルチトールには実質的に作用せ
ず、また至適pHは6.5〜8.0で、安定pH範囲
は、30℃、30分間処理で、pH5.5〜9.5であ
り、分子量(ゲルろ過法)が約150,000である新
規なマルトビオン酸グルコヒドロラーゼであり、バチル
ス属に属し、マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ生産能
を有する菌株を培地に培養し、その培養物からマルトビ
オン酸グルコヒドロラーゼを採取することを特徴とする
マルトビオン酸グルコヒドロラーゼの製造方法であり、
また(ア)マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ、及び
(イ)β−D−グルコース又はD−グルコン酸を定量す
るための試薬を含むマルトビオン酸の定量用試薬であ
り、さらにマルトビオン酸含有試料に、マルトビオン酸
グルコヒドロラーゼを作用させ、生成するβ−D−グル
コース又はD−グルコン酸を定量することを特徴とする
マルトビオン酸の定量方法である。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、本発明の新規な酵素、マルトビオン酸グルコヒドロ
ラーゼ(以下「本酵素」ということもある)の理化学的
性質は下記のとおりである。 (1) 作用:マルトビオン酸(ナトリウム塩)2.0
μmol及び本酵素16単位(U)を含有する40mM
リン酸緩衝液(pH7.0)3.0mlを反応系として
用いて、37℃で30分間反応を行い、反応後における
マルトビオン酸含有量及びD−グルコン酸含有量を高速
液体クロマトグラフィーにて、D−グルコース含有量を
後記の力価測定法に記載の発色試薬を用いて測定した。
その結果、マルトビオン酸は反応後に完全に消失し、マ
ルトビオン酸2.0μmol当り、D−グルコース生成
量は1.89μmol、D−グルコン酸生成量は1.9
5μmolであった。なお、生成するD−グルコースの
アノマー構造を酵素法により決定したところ、β−アノ
マーであった。この結果より、本酵素は次の反応式 マルトビオン酸 + H2O → β−D−グルコース
+ D−グルコン酸 すなわち、
【化1】 で示される反応を触媒することが認められた。なお、本
酵素はマルトビオン酸と同様に、勿論その塩(例えばナ
トリウム塩、カリウム塩などの金属塩など)にも作用す
る。
【0009】(2)基質特異性:マルトビオン酸に特異
的に作用し、マルトース又はマルチトールには実質的に
作用しない。本酵素の各種基質に対する相対活性を調べ
た結果の一例を表1に示す。
【表1】
【0010】(3)至適pH及び安定pH範囲:至適p
Hは、100mM酢酸ナトリウム−塩酸緩衝液(pH
4.8〜5.9)、100mMリン酸緩衝液(pH5.
6〜8.0)及び100mMグリシン−水酸化ナトリウ
ム緩衝液(pH7.6〜9.8)を用い、各pHにおけ
る本酵素の活性測定を行って求めた。その結果は図1に
示すとおりであり、本酵素の至適pHは6.5〜8.
0、特にpH7.0近辺である。また、安定pH範囲
は、100mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.
0〜5.5)、100mMリン酸緩衝液(pH5.6〜
8.0)、100mM塩化アンモニウム−アンモニア緩
衝液(pH7.9〜9.5)及び100mM炭酸ナトリ
ウム−炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.5〜10.
9)を用い、pH4.0〜10.9において30℃で3
0分間それぞれ処理したのち、本酵素の残存活性を測定
して求めた。その結果は図2に示すとおりであり、本酵
素の安定pH範囲はpH5.5〜9.5である。 (4)分子量:TSKgel G3000SWXL(東ソ
ー社製)によるゲルろ過法で、分子量は約150,00
0である。なお、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動法による分子量は約70,000であるため、本酵
素は二量体と考えられる。
【0011】(5)力価の測定方法:酵素の力価の測定
は下記の方法で行い、1分間に1μmolのβ−D−グ
ルコースを生成する酵素量を1Uとする。 A.試薬の調製; 基質溶液 マルトビオン酸(ナトリウム塩)2.0mmolを10
0mMリン酸緩衝液(pH7.0)100mlに溶解し
て調製する。 発色試薬 グルコースオキシダーゼ600U、ペルオキシダーゼ7
0U、フェノール1.0mmol及び4−アミノアンチ
ピリン0.05mmolを30mMリン酸緩衝液(pH
7.4)100mlに溶解して調製する。 B.測定法;基質溶液0.5mlを小試験管に分注し、
37℃で3分間予備加温したのち、酵素液0.1mlを
加え(基質・酵素混合液)、37℃で30分間反応さ
せ、その後沸騰水中で約2分間加温処理して反応を停止
する。沈澱が生じた場合には該沈澱物を遠心分離により
除去したのち、酵素反応液を得る。なお、対照液は、酵
素液0.1mlの代わりに100mMリン酸緩衝液(p
H7.0)0.1mlを添加する以外は、前記と同様に
したものである。次に、前記酵素反応液及び対照液0.
2mlをそれぞれ小試験管に分注し、前記発色試薬1.
0mlを加え、37℃で20分間反応させたのち、50
5nmにおける吸光度を測定し、この酵素反応液と対照
液との吸光度の差より生成したβ−D−グルコースを定
量する。
【0012】本発明の酵素の主要な理化学的性質は前記
のとおりであるが、この酵素が新規なものである根拠を
次に示す。従来、アスペルギルス・ニガー(Asper
gillus niger)が生産するアミログルコシ
ダーゼ(グルコアミラーゼ)が、マルトビオン酸を加水
分解することが知られている[ジャーナル・オブ・バイ
オロジカル・ケミストリー(Journal of B
iological Chemistry)、第235
巻、第297頁、1960年(文献1)、及びジャーナ
ル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journ
al of Biological Chemistr
y)、第237巻、第1002頁、1962年(文献
2)]。しかしながら、表2から、本発明の酵素は、特
に基質特異性、至適pHにおいて、前記アミログルコシ
ダーゼ(該表において、AGという)とは全く異なるも
のであることがわかる。すなわち、本発明の酵素は、マ
ルトビオン酸に極めて特異的に作用し、かつ至適pHが
中性近辺であるという従来にない全く新規な酵素であ
り、この基質特異性の特徴より、マルトビオン酸グルコ
ヒドロラーゼと命名した。
【0013】
【表2】 注1:前記理化学的性質における値(相対活性は本酵素
の至適pH7.0での測定値) 注2:相対活性は本酵素におけると同様にして測定した
値(pH7.0での測定値、AGとしてはシグマ社製の
ものを使用した。) 注3:前記文献1及び文献2に記載の値(相対活性はA
Gの至適pH4.8での測定値)
【0014】次に、本酵素のその他の理化学的性質の1
例を示す。 (6)作用適温の範囲:前記力価の測定法におけると同
一の基質・酵素混合液を用い、種々の温度にて本酵素の
活性測定を行った。その結果は図3に示すとおりであ
り、本酵素の作用適温範囲は50℃〜57℃、特に55
℃近辺である。
【0015】(7)pH、温度などによる失活の条件:
本酵素は30℃で30分間の処理では、pH5.5〜
9.5で安定であり、図2からわかるように、それより
酸性側及びアルカリ性側では急速に失活し、pH4.5
以下及びpH10.0以上で完全に失活する。また、1
00mMリン酸緩衝液(pH7.5)を用いて、本酵素
を各温度で10分間処理した場合の熱安定性を調べた。
その結果は図4に示すとおりであり、本酵素は45℃ま
で安定であり、それを越えると失活し始め、55℃以上
で完全に失活する。
【0016】(8)阻害、活性化及び安定化:前記力価
の測定法におけると同一の基質・酵素混合液に、種々の
添加剤(金属塩及び金属キレート剤)を各2mMの濃度
になるように添加して酵素活性を測定した。その結果は
表3に示すとおりであり、本酵素はAgNO3、HgC
2により強く阻害されるが、活性化及び安定化に特別
に寄与する添加物は見当らない。
【表3】
【0017】(9)精製方法:本酵素の単離、精製は常
法にしたがって行うことができ、例えば硫安塩析法、有
機溶媒沈澱法、イオン交換体などによる吸着処理法、イ
オン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィ
ー、ゲルろ過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフ
ィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法
などが単独又は適宜組み合わせて用いられる。
【0018】(10)Km値:ラインウエーバー・バー
クのプロットから、Km値は1.6×10-3M(マルト
ビオン酸に対して)である。 (11)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動:ア
クリルアミド4〜20%(W/V)の濃度勾配を有するポ
リアクリルアミドゲルを用い、常法によりSDS−ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動を行った結果、図5に示す
ごとく単一のバンドが認められた。60mA、約60分
間通電後の相対移動度(Rf)は、0.48である。
【0019】次に、本発明の新規マルトビオン酸グルコ
ヒドロラーゼの製造方法について説明する。まず、使用
される微生物は、バチルス属に属し、マルトビオン酸グ
ルコヒドロラーゼ生産能を有する菌株であって、その具
体例としては、バチルス(Bacillus)sp.N
−1053が挙げられ、該菌株の変種又は変異株も用い
られる。このバチルス sp.N−1053は、本発明
者らが千葉県内の土壌中より分離した菌株であり、その
菌学的性質は以下に示すとおりである。なお、菌学的性
質の同定のための実験は、主として長谷川武治編著、
「微生物の分類と同定」、東京大学出版会(1975
年)によって行った。また、分類同定の基準として「バ
ージーズ・マニュアル・オブ・デターミネィティブ・バ
クテリオロジー(Bergey’s Manual o
f Determinative Bacteriol
ogy)」、第8版(1974年)を参考にした。なお
本菌株は、好アルカリ性細菌であるため、各実験におけ
る培地はpH8.0〜10.0に調整したものを用い
た。
【0020】バチルス sp.N−1053 の菌学的
性質 (A)形態的性質 顕微鏡的観察[肉汁寒天培地(pH9.0)、30℃、2
4〜48時間培養] (1)細胞の形及び大きさ:0.4〜0.6×1.5〜
4.0μmの直状桿菌である。 (2)細胞の多形性の有無:無し。 (3)運動性の有無:有り。周毛が認められる。 (4)胞子の有無:有り。胞子嚢は膨出し、胞子は
0.5〜0.7×0.8〜1.1μmの楕円形で、細胞
の亜端に形成される。 (5)グラム染色性:陽性 (6)抗酸性:陰性
【0021】(B)各培地(pH8.0)における生育
状態 (1)肉汁寒天平板培養:30℃、48時間の培養で、
直径2〜3mmの淡黄色の円形コロニーを形成する。表
面は平滑で光沢があり、周縁はなめらかである。色素の
産生は認められない。 (2)肉汁寒天斜面培養:30℃、48時間の培養で、
表面は平滑で、色沢は淡黄色を呈し、周縁はなめらかな
バター質の生育を示す。色素の産生は認められない。 (3)肉汁液体培養:30℃、48時間の静置培養で、
培地全体に生育(濁り)が認められ、沈渣(sedim
ent)を生成する。 (4)肉汁ゼラチン穿刺培養:20℃、30日間の静置
培養で、培地上部にのみ生育し、ゆっくりとゼラチンを
液化する。 (5)リトマスミルク培養:30℃、14日間の静置培
養で、リトマスミルクの凝固、液化は認められず、酸も
しくはアルカリの産生も認められない。
【0022】(C)生理学的性質 主にpH9.0に調整した培地を用いて試験したが、一
部の試験ではpH8.0〜10.0に適宜調整した培地
を用いた。 (1)硝酸塩の還元:還元しない。 (2)脱窒反応:無し。 (3)MRテスト:陰性 (4)VPテスト:陰性 (5)インドールの生成:生成しない。 (6)硫化水素の生成:弱いながら生成する。 (7)デンプンの加水分解:加水分解する。 (8)クエン酸の利用:利用しない。 (9)無機窒素源の利用:利用しない(硝酸塩及びアン
モニウム塩)。 (10)色素の生成:生成しない。 (11)ウレアーゼ:陰性 (12)オキシダーゼ:陰性 (13)カタラーゼ:陽性 (14)生育の範囲:温度15〜40℃、pH8.0〜
10.5 (15)酸素に対する態度:好気性。 (16)O−Fテスト(Hugh−Leifson
法):酸化 (17)糖類からの酸及びガスの生成:表4のとおり、
いずれからも酸の生成が認められるが、ガスの生成は認
められない。
【0023】
【表4】
【0024】(D)その他の性質 本菌株は、5%(W/V)及び7%(W/V)の食塩存在下で
も生育することが認められる。
【0025】前記のごとき菌学的性質を有し、新規マル
トビオン酸グルコヒドロラーゼ生産能を有する本菌株
は、桿菌であること、周毛が認められること、胞子を形
成すること、グラム陽性菌であること、カタラーゼ生産
能を有すること、好気性菌であることなどから、バチル
ス属に属するものと判定される。さらに、本菌株は、そ
の生育pH範囲が8.0〜10.5とアルカリ性側に片
寄っていることから、好アルカリ性細菌であるバチルス
・アルカロフィラス(Bacillus alcalo
philus)に近縁の菌株と認められるが、本菌株は
5%(W/V)あるいは7%(W/V)食塩存在下での生育が
認められること、上記した糖類からの酸の生成パターン
などから、バチルス・アルカロフィラスとは異なる菌と
認められる。以上の理由から、本菌株をバチルス(Ba
cillus)sp.N−1053と命名した。なお、
バチルス sp.N−1053は、工業技術院生命工学
工業技術研究所に、FERM P−13975として寄
託されている。
【0026】なお、本発明におけるマルトビオン酸グル
コヒドロラーゼとしては、前記した作用、基質特異性な
どの主要な理化学的性質を有するものであればよく、そ
の他の理化学的性質が多少の相違を示すものであって
も、本発明の酵素として包含される。そして前記の微生
物は、このようなマルトビオン酸グルコヒドロラーゼを
得るための使用菌の一例であって、本発明においてはバ
チルス属に属し、マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ生
産能を有するものであればすべて使用できる。
【0027】次に、マルトビオン酸グルコヒドロラーゼ
生産能を有する微生物を用いて、マルトビオン酸グルコ
ヒドロラーゼを製造するには、通常の固体培養法でもよ
いが、液体培養法が好ましい。そしてその培地として
は、炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を程よく
含有するものであれば、合成培地又は天然培地のいずれ
でも使用できる。炭素源としては、同化可能な炭素化合
物であればよく、例えばマルトビオン酸、マルトース、
グルコース、デンプン加水分解物、グリセリン、フラク
トース、糖蜜などが使用される。また窒素源としては、
利用可能な窒素化合物であればよく、例えば酵母エキ
ス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆
粉、アミノ酸、硫安、硝酸アンモニウムなどが使用され
る。その他、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、
塩化マンガン、硫酸第一鉄、リン酸第一カリウム、リン
酸第二カリウム、炭酸ナトリウムなどの種々の塩類、ビ
タミン類、消泡剤などが使用される。これらの栄養源は
それぞれ単独で用いることもでき、また組み合わせて用
いることもできる。
【0028】このようにして調製した液体培地を用いて
本酵素を製造するには、通気攪拌深部培養または振盪培
養などにより好気的に培養するのが好ましい。その際
に、培地の初発pHを7〜10程度に調整し、25〜3
7℃、好ましくは30℃前後の温度で10〜50時間、
好ましくは15〜25時間培養する。こうすることによ
って、培養物中に本酵素が生成蓄積する。この培養物か
ら本酵素を採取するには、通常の酵素採取手段を用いる
ことができる。
【0029】本酵素は、主に菌体内に存在する酵素であ
るため、培養物から、例えばろ過、遠心分離などの操作
により菌体を分離し、この菌体から本酵素を採取するの
が好ましい。この場合、常法、例えば超音波破砕機、フ
レンチプレス、ダイナミルなどの種々の破壊手段を用い
て菌体を破壊する方法、リゾチームなどの細胞壁溶解酵
素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−1
00などの界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する
方法などを単独又は組み合わせて採用することができ
る。次いで、ろ過又は遠心分離などにより不溶物を除
き、本酵素の粗酵素液を得る。このようにして得られた
粗酵素液から本酵素を必要により単離するには、前記精
製方法が適用できる。
【0030】以上のようにして得られた本酵素はマルト
ビオン酸の定量に極めて有用であり、これを用いること
によりマルトビオン酸を酵素的に定量することができ
る。マルトビオン酸を定量するための有利な系として
は、例えば反応試薬として、1〜20U/mlの本酵素
及び10〜200mMの緩衝剤を含有するpH5〜9の
系、そして生成するβ−D−グルコース又はD−グルコ
ン酸を定量するための試薬(後記に例示)及び10〜2
00mMの緩衝剤を含有するpH5〜9の系などが挙げ
られる。これらの系に用いられる緩衝剤としては、例え
ばリン酸塩、酢酸塩、トリス−塩酸塩などが挙げられ
る。このような系に、前記成分以外に、本発明の目的を
そこなわない範囲で、さらに必要に応じて慣用の種々の
添加成分、例えば溶解補助剤、安定化剤などとして、界
面活性剤(トリトンX−100、ブリッジ35、ツイー
ン80、コール酸塩など)、還元剤(ジチオスレイトー
ル、メルカプトエタノール、L−システインなど)、牛
血清アルブミン、糖類(グリセリン、乳糖、シュークロ
ースなど)などを添加することもできる。これらの添加
成分は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用
いてもよく、また前記系調製の適当な段階で加えること
ができる。
【0031】本発明の試薬は、乾燥物又は溶解した状態
で用いてもよいし、薄膜状の担体、例えばシート含浸性
の紙などに含浸させて用いてもよい。また使用酵素は、
常法により固定化させて反復使用してもよい。このよう
な本発明の試薬を用いることにより、各種の試料に含有
されるマルトビオン酸を簡単な操作で精度よく定量する
ことができる。
【0032】次に、本発明におけるマルトビオン酸の定
量は、前記のごとく、マルトビオン酸含有試料に本酵素
を添加、作用させて生成するβ−D−グルコース又はD
−グルコン酸を定量することにより行うのであるが、マ
ルトビオン酸含有試料としては、マルトビオン酸(その
塩でもよい)を含有するものであれば、いかなるもので
もよく、例えば液体あるいは粉末食品、ジュース、キャ
ンデー、菓子などの飲食物、マルトビオン酸を測定すべ
き診断用試料、マルトース脱水素酵素による反応物など
が挙げられる。そして、該試料は、そのままあるいはろ
過して定量に供してもよく、また例えば水、緩衝液など
でマルトビオン酸が適当な濃度になるように抽出(濃
縮)や希釈して定量に供してもよい。定量に際しては、
これらの試料のpHは無調整でもよいが、適当なpH調
整剤、例えば塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水
酸化カリウムなどにより、pH5〜9に調整するのが望
ましい。またマルトビオン酸含有試料に作用させる本酵
素の添加量は、該試料に含まれるマルトビオン酸含有
量、酵素反応条件などにより適宜選択される。
【0033】次に、前記酵素反応により生成するβ−D
−グルコース又はD−グルコン酸の含有量の定量方法
は、特に制限されず、いかなる方法を用いてもよい。β
−D−グルコースの定量方法としては、例えば β−D−グルコースにグルコースオキシダーゼを作用
させ、生成した過酸化水素を酵素的に比色定量する方法
[メソッヅ・オブ・エンザイマチック・アナリシス(M
ethods of Enzymatic Analy
sis)、第2版、第3巻、第1205頁、1974年
発行]、 β−D−グルコースにヘキソキナーゼ及びグルコース
−6−リン酸デヒドロゲナーゼを作用させ、この際の共
役反応、すなわち、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌ
クレオチドリン酸(NADP+)→還元型ニコチンアミ
ドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)で生成
したNADPH量を340nmにおける吸光度増加にて
測定する方法[メソッヅ・オブ・エンザイマチック・ア
ナリシス(Methods of Enzymatic
Analysis)、第2版、第3巻、第1196
頁、1974年発行]などが挙げられる。
【0034】またD−グルコン酸の定量方法としては、
例えばD−グルコン酸にグルコン酸キナーゼ及び6−ホ
スホグルコン酸デヒドロゲナーゼを作用させ、この際の
共役反応、すなわち、酸化型ニコチンアミドアデニンジ
ヌクレオチドリン酸(NADP+)→還元型ニコチンア
ミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)で生
成したNADPH量を340nmにおける吸光度増加に
て測定する方法[メソッヅ・オブ・エンザイマチック・
アナリシス(Methods of Enzymati
c Analysis)、第2版、第3巻、第1243
頁、1974年発行]などが挙げられる。
【0035】次に、本発明のマルトビオン酸の定量方法
の好適な1例を示す。まず、マルトビオン酸を含有する
試料に、本酵素を0.5〜50U/ml,好ましくは1
〜20U/ml及び緩衝剤を10〜200mMとなるよ
うに加え、pH6.5〜8.0、温度20〜40℃で酵
素反応させる。このときの反応時間はマルトビオン酸を
加水分解するに十分な時間であればよく、1〜60分
間、好ましくは2〜20分間である。次いで、生成する
β−D−グルコース又はD−グルコン酸を前記の方法に
よって定量し、予め同方法で定量して作成したマルトビ
オン酸の検量線を用いて、試料中のマルトビオン酸の定
量値を算出する。
【0036】
【発明の効果】本酵素は、マルトビオン酸に特異的に作
用する新規な酵素であり、該酵素を用いる本発明のマル
トビオン酸の定量方法によれば、従来のマルトビオン酸
の定量方法に比較して操作が極めて簡便であり、1試料
当りの測定時間も著しく短縮され、また精度も極めて優
れ、さらに多数の試料を同時に測定できるので産業上極
めて有意義である。
【0037】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。
【0038】実施例1 マルトース・1水和物0.5%(W/V)、ポリペプトン
1.5%(W/V)、酵母エキス0.5%(W/V)、KH2
PO4 0.1%(W/V)、MgSO4・7H2O 0.05
%(W/V)、MnCl2・4H2O 0.005%(W/
V)、FeSO4・7H2O 0.002%(W/V)及び水
道水からなる培地(pH 7.0)100mlを坂口コ
ルベンに入れて、120℃で10分間殺菌した。別に無
菌ろ過した20%(W/V)のNa2CO3 0.8mlを添
加することにより、最終的に初発pHを8.0に調整し
たのち、バチルス(Bacillus)sp.N−10
53(FERM P−13975)の保存スラントより
1白金耳接種し、これを30℃で約24時間、振盪数1
40opmで振盪培養して種培養液とした。次いで、前
記と同様の培地350lを含む500l容タンクに前記
種培養液700ml(坂口コルベン7本分)を接種し、
回転数110rpm、通気量350l/min、30℃
で約20時間攪拌培養した。培養終了後、培養液200
lから旭化成工業社製マイクローザ(PW−303)を
用いて菌体を集め、20mMリン酸緩衝液(pH7.
5)にて菌体を洗浄したのち、菌体を同緩衝液約30l
に懸濁した。本酵素の精製は、以下に示す操作により行
なった。
【0039】ステップ1(粗酵素液の調製):前記菌体
懸濁液に、トリトンX−100を150ml及び硫安7
90gを添加、混合し、5℃で一晩放置したのち、5%
(V/V)ポリエチレンイミン水溶液(pH7.5)12
00mlを攪拌しながら滴下して除核酸処理を行った。
この上澄液を限外ろ過膜を用いて前記緩衝液に対して透
析した。 ステップ2(DEAE−セルロース処理):透析液(約
28l)に、湿重量約9kgのDEAE−セルロースを
添加、混合して、本酵素を吸着させたのち、5%(V/
V)グリセリンと0.005%(V/V)2−メルカプトエ
タノールとを含有する20mMリン酸緩衝液(pH7.
5)(以下緩衝液Aという)にてDEAE−セルロース
を洗浄し、次に、0.5M塩化カリウムを含有する緩衝
液Aにて本酵素を溶出し、限外濃縮した。 ステップ3(フェニル−セファロースCL−4B処
理):濃縮液(約9.5l)に、20%飽和になるよう
に硫安を添加、混合したのち、湿重量約3.2kgのフ
ェニル−セファロースCL−4Bを添加、混合し、本酵
素を吸着後、20%飽和硫安を含有する緩衝液Aにてフ
ェニル−セファロースCL−4Bを洗浄し、次に、緩衝
液Aにて本酵素を溶出し、限外濃縮した。 ステップ4(フェニル−セファロースCL−4B・クロ
マトグラフィー):濃縮液(約5.4l)に、20%飽
和になるように硫安を添加、混合したのち、フェニル−
セファロースCL−4Bのカラム(9.0×40cm)
に本酵素を吸着させ、20%飽和硫安を含有する緩衝液
Aにて洗浄し、次に、20%〜0%飽和硫安を含有する
緩衝液Aの逆直線濃度勾配法により溶出させ、15%〜
10%飽和硫安を含有する緩衝液Aにて溶出された活性
画分を限外濃縮し、緩衝液Aに対して透析した。 ステップ5(DEAE−セファセル・クロマトグラフィ
ー):透析液(580ml)をDEAE−セファセルの
カラム(5.0×34cm)に吸着させたのち、0.1
M塩化カリウムを含有する緩衝液Aにて洗浄し、次に、
0.1M〜0.5M塩化カリウムを含有する緩衝液Aの
直線濃度勾配法により溶出させ、約0.2M塩化カリウ
ムを含有する緩衝液Aにて溶出された活性画分を限外濃
縮した。 ステップ6(ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフ
ィー):濃縮液(100ml)をヒドロキシルアパタイ
トのカラム(2.5×33cm)に吸着させたのち、緩
衝液Aにて洗浄し、次に、緩衝液Aと、リン酸緩衝液の
濃度のみを150mMに変えた緩衝液Aとを用いて直線
濃度勾配法により溶出させ、約90mMリン酸緩衝液に
て溶出された活性画分を限外濃縮した。 ステップ7(Q−セファロース・クロマトグラフィ
ー):濃縮液(30ml)をQ−セファロースのカラム
(2.5×33cm)に吸着させたのち、0.1M塩化
カリウムを含有する緩衝液Aにて洗浄し、次に、0.1
M〜0.5M塩化カリウムを含有する緩衝液Aにて直線
濃度勾配法により溶出させ、約0.3M塩化カリウムに
て溶出された活性画分を限外濃縮した。 ステップ8(セファデックスG−200・クロマトグラ
フィー):濃縮液(約2ml)をセファデックスG−2
00のカラム(2.5×95cm)に通塔させたのち、
0.1M食塩を含有する緩衝液Aにてゲルろ過を行い、
溶出された活性画分46mlを採取した。該画分は、S
DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(図5)により
均一と判断された本酵素の精製標品であり、全タンパク
量が49.2mg、全活性が731U、比活性が14.
9U/mgのものであった。
【0040】実施例2 (1)マルトビオン酸の定量用試薬の調製(生成するD
−グルコン酸を定量する場合) 精製水に以下の成分を以下の濃度又は単位で溶解するこ
とにより、試薬A及び試薬Bを調製した。 (ア)試薬A 成 分 濃度又は単位 HEPES−NaOH緩衝液(pH7.5) 50mM MgCl2 6mM ATP 6mM NADP 2mM グルコン酸キナーゼ(シグマ社製) 0.32U/ml 6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ 2.75U/ml (シグマ社製) (イ)試薬B 成 分 濃度又は単位 HEPES−NaOH緩衝液(pH7.5) 50mM 本酵素 40U/ml
【0041】(2)マルトビオン酸の定量方法 後記参考例に記載の方法で得られたマルトビオン酸(ナ
トリウム塩)を120μmol/dlになるように溶解
した水溶液を希釈して種々の濃度に調製したマルトビオ
ン酸(ナトリウム塩)含有試料(0、20、40、6
0、80、100及び120μmol/dl)各0.1
mlに、前記試薬A0.8mlを添加し、37℃で5分
間保温した。次いで、それぞれの保温液に前記試薬B
0.1mlを添加し、37℃で10分間反応させた。そ
して、日立社製二波長分光光度計(557形)により、
反応開始前の340nmにおける吸光度と反応を開始し
て10分間後の340nmにおける吸光度を測定し、該
吸光度増加量(△OD)の値を求めた。この値とマルト
ビオン酸含有量との関係から検量線を作成した。その検
量線を図6に示す。該検量線の式は、 y=0.00605x+0.00009(r=0.99
9) となる。これから、△ODとマルトビオン酸含有量との
間には直線的な相関があって、検量線として有効である
ことがわかり、しかも試料中のマルトビオン酸を迅速か
つ正確に定量できた。
【0042】実施例3 (1)マルトビオン酸の定量用試薬の調製(生成するβ
−D−グルコースを定量する場合) 精製水に以下の成分を以下の濃度又は単位で溶解するこ
とにより、試薬を調製した。 成 分 濃度又は単位 リン酸緩衝液(pH7.5) 50mM フェノール 10mM 4−アミノアンチピリン 0.5mM 本酵素 4U/ml グルコースオキシダーゼ(シグマ社製) 6U/ml ペルオキシダーゼ(東洋紡社製) 0.7U/ml
【0043】(2)マルトビオン酸の定量方法 後記参考例に記載の方法で得られたマルトビオン酸(ナ
トリウム塩)を120μmol/dlになるように溶解
した水溶液を希釈して種々の濃度に調製したマルトビオ
ン酸(ナトリウム塩)含有試料(0、20、40、6
0、80、100及び120μmol/dl)各0.1
mlに、前記試薬1.0mlを添加し、37℃で15分
間反応させた。そして、日立社製二波長分光光度計(5
57形)により、505nmにおける吸光度を測定し、
該吸光度増加量(△OD)の値を求めた。この値とマル
トビオン酸含有量との関係より検量線を作成した。その
検量線を図7に示す。該検量線の式は、y = 0.00
526x − 0.00040(r= 0.999)とな
る。これから、△ODとマルトビオン酸含有量との間に
は直線的な相関があって検量線として有効であることが
わかり、しかも試料中のマルトビオン酸を迅速かつ正確
に定量できた。
【0044】参考例 本発明において使用したマルトビオン酸(ナトリウム
塩)は、以下のごとくして製造したものである。市販の
マルトース(和光純薬工業社製)500g(1.39m
ol)を水5lに溶解し、炭酸バリウム550g(2.
79mol)及び臭素72ml(1.39mol)を加
え、室温遮光下で16時間反応させた。次いで、過剰の
硫酸を加えてバリウムイオンを硫酸バリウムとして沈澱
させ、該沈澱物をろ過したのち、ろ液に1Nの水酸化ナ
トリウム水溶液を加えて中和した。次に、中和した水溶
液を活性炭カラムクロマトグラフィーにより精製し、エ
タノール−水混液(容量比15:85)で溶出した目的
画分を濃縮し、マルトビオン酸(ナトリウム塩)271
g(0.71mol、収率51%)を得た。このように
して得られた化合物は、融点、赤外吸収スペクトル、核
磁気共鳴スペクトルなどにより、マルトビオン酸(ナト
リウム塩)であると同定した[メソッヅ・イン・カルボ
ハイドレート・ケミストリー(Methods in
Carbohydrate Chemistry)、第
2巻、第14頁、1963年]。なお、マルトビオン酸
は、常法、例えば陽イオン交換樹脂にマルトビオン酸の
塩を通液するなどにより、容易に得られる。また、マル
トトリオン酸(ナトリウム塩)、マルトテトラオン酸
(ナトリウム塩)、マルトペンタオン酸(ナトリウム
塩)及びそれらの遊離酸は、マルトースの代りにそれぞ
れマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペン
タオースを用いる以外は前記と同様にして得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本酵素の至適pHを示すグラフ。
【図2】 本酵素の安定pH範囲を示すグラフ。
【図3】 本酵素の作用適温の範囲を示すグラフ。
【図4】 本酵素の熱安定性を示すグラフ。
【図5】 本酵素の電気泳動図。
【図6】 実施例2における検量線を示すグラフ。
【図7】 実施例3における検量線を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 那須 綾子 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内 (72)発明者 山次 信幸 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性質を有するマルトビオ
    ン酸グルコヒドロラーゼ。 (1) 作用:マルトビオン酸を加水分解してβ−D−
    グルコースとD−グルコン酸を生成する。 (2)基質特異性:マルトビオン酸に特異的に作用し、
    マルトース又はマルチトールには実質的に作用しない。 (3)至適pH及び安定pH範囲:至適pHは6.5〜
    8.0であり、安定pH範囲は、30℃、30分間処理
    で、pH5.5〜9.5である。 (4) 分子量:約150,000(ゲルろ過法)。
  2. 【請求項2】 バチルス属に属し、マルトビオン酸グル
    コヒドロラーゼ生産能を有する菌株を培地に培養し、そ
    の培養物からマルトビオン酸グルコヒドロラーゼを採取
    することを特徴とするマルトビオン酸グルコヒドロラー
    ゼの製造方法。
  3. 【請求項3】 (ア)マルトビオン酸グルコヒドロラー
    ゼ、及び(イ)β−D−グルコース又はD−グルコン酸
    を定量するための試薬を含むマルトビオン酸の定量用試
    薬。
  4. 【請求項4】 マルトビオン酸含有試料に、マルトビオ
    ン酸グルコヒドロラーゼを作用させ、生成するβ−D−
    グルコース又はD−グルコン酸を定量することを特徴と
    するマルトビオン酸の定量方法。
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