JPH071538Y2 - 自走式歩行型作業車のトランスアクスル - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は自走式歩行型の芝刈機とか除雪車等の自走式
歩行型作業車において、作業車を走行させるためのトラ
ンスアクスルに関するものである。

〔従来の技術とその問題点〕 自走式歩行型作業車のトランスアクスルに設けるクラツ
チを例えば実開昭62−193815号公報に開示されているよ
うにボールクラツチ、或はそれに代わる噛合クラツチ、
抜差クラツチ等の一般の機械式クラツチとした場合、ク
ラツチ係合が急激に行なわれるため車両の発進がスムー
ズに行なわれずして、操縦者にシヨツクが加わると共に
伝動部材の保護上にも問題がある。また芝刈機の場合に
は、芝面をむしるという問題がある。

そこで考えられることは半クラツチ状態を経てクラツチ
係合を得ることができる摩擦クラツチを採用することで
あるが、摩擦クラツチとして最も普通に用いられる多板
式摩擦クラツチは部品点数が多く、製作費が特に重視さ
れる歩行型作業車のトランスアクスルに採用するには難
がある。また多板式のものに限らず摩擦クラツチは一般
に比較的嵩張るもので、歩行型作業車のトランスアクス
ル中にコンパクトに組込むことは必らずしも容易でな
い。

〔考案課題〕

この考案の目的とするところは例えば実公昭63−33685
号公報等から周知であるキー式変速装置を、自走式歩行
型作業車のトランスアクスルに組込んだ構造において、
半クラツチ状態を得ることができる摩擦クラツチを極く
コンパクトに設けてあるトランスアクスルを、提供する
にある。

〔課題を解決するための手段〕

そのためにこの考案は添付図に例示するようにキー式変
速装置２を備える自走式歩行型作業車のトランスアクス
ル１において、次のような技術的手段を講じた。

すなわち第１図、第５図、第８図及び第10図にそれぞれ
例示するように、キー式変速装置２の変速軸３を中空軸
に形成して車軸４上に遊嵌設置し、該変速軸３と車軸４
間にコーンクラツチ５を、このコーンクラツチにおける
位置固定側のクラツチ部材６を変速軸３の一端部上に固
定設置すると共に可動側のクラツチ部材７を車軸４上に
摺動のみ自在に設置して配設し、変速軸３の外周面に形
成されたシフトキー収容用の長溝穴８を延長して上記コ
ーンクラツチ５の内部に連通させる一方、上記した両ク
ラツチ部材6,7のうちコーンクラツチ５の外側クラツチ
部材を構成するクラツチ部材の周壁にコーンクラツチ５
の内外に開口する適当数の透孔９を設ける。

コーンクラツチ５において、第１図及び第５図にそれぞ
れ示すように位置固定側のクラツチ部材６を内側クラツ
チ部材、可動側のクラツチ部材７を外側クラツチ部材と
することも、また第８図及び第10図にそれぞれ示すよう
に位置固定側のクラツチ部材６を外側クラツチ部材、可
動側のクラツチ部材７を内側クラツチ部材とすること
も、任意である。

またこの考案は第５図及び第８図にそれぞれ例示するよ
うに、位置固定側のクラツチ部材６を変速軸３に一体形
成することも提案するものである。

さらにこの考案は第5,6図に例示するように両クラツチ
部材6,7のうちコーンクラツチ５の内側クラツチ部材を
構成するクラツチ部材の外周面に、軸線方向に沿う溝穴
10aを表面に有するライニング10を貼着することも提案
する。

〔作用〕

円錐面状のテーパー面同士の摩擦係合によりクラツチ係
合するコーンクラツチ５は、クラツチ操作力を加減して
可動側のクラツチ部材７の位置を調節することにより任
意の半クラツチ状態とでき、このため作業車の発進をス
ムーズに行なわせることができる。

トランスアクスル１内に収容される潤滑油が変速軸外周
面のシフトキー収容用の長溝穴８を介してコーンクラツ
チ５の内部に供給され、その油が外側クラツチ部材の回
転に基ずく遠心力で透孔９から外部へ放出されるから、
コーンクラツチ５の内外で潤滑油の循環が生じ、同クラ
ツチ５についての潤滑と冷却が十分に行なわれる。クラ
ツチ入りのために可動側クラツチ部材７が固定側クラツ
チ部材６に対し押付けられるとき、透孔９から油が外部
に逃がされるから、可動側クラツチ部材７の動きに抵抗
する背圧は生じない。

〔実施例〕

図示の実施例は第２図に図示のような自走式歩行型芝刈
機において、この考案を実施した例に係る。

同芝刈機において駆動源となるエンジン21は車両機枠を
構成するデツキ22の上面側に設置され、出力軸21aを鉛
直下方向きとしている。左右の前輪23は遊転車輪とさ
れ、前記車軸４によつて回転駆動される左右の後輪24が
駆動車輪に構成されている。デツキ22には後上方向きに
延出する操縦ハンドル25が取付けられ、またエンジン出
力軸21aの下端にはデツキ22の下面側に位置させた刈刃2
6が取付けられている。

左右の後輪24間でデツキ22には前記トランスアクスル１
を支持させてあり、車軸４は該トランスアクスル１から
左右に延出している。トランスアクスル１は鉛直な入力
軸28を装備し、エンジン出力軸21a上のプーリー29と入
力軸28上のプーリー30間にベルト31が張設されている。
左右の後輪24はデツキ22に取付けた左右の支軸32に回転
自在に支承され、車軸４の端部に取付けたピニオン33を
車輪リム内周面の内歯34に噛合せて車軸４により減速駆
動されるものとされている。

上下の半部を重ね合せて連結してなるトランスアクスル
１のケーシング内には第１図に示すように、前記入力軸
28の下端に固定した小傘歯車（図示せず。）と噛合され
ている大傘歯車36を固定装備する駆動軸37を左右方向に
沿わせて設けてあり、前記キー式変速装置２は該駆動軸
37と前記変速軸３間に配設されている。

同変速装置２は駆動軸37上に固定設置した３個の駆動歯
車38I,38II,38IIIと変速軸３上に遊嵌設置した３個の変
速歯車39I,39II,39IIIとをそれぞれ噛合せて、３列の変
速歯車列を形成してあるものに構成されている。中空の
変速軸３の外周面には第１図では１個のみを図示した前
記長溝穴８が２個設けられており、各長溝穴８には自由
端にクラツチ突起40aを備えるシフトキー40が摺動自在
に収容されている。変速軸３上にはシフトキー40の基端
を取付けてあるシフタスリーブ41が摺動自在に設置さ
れ、また各シフトキー40はそれに取付けられた板ばね19
によつてクラツチ突起40aが各変速歯車39I,39II,39III
の内周面の溝穴42内に突入する方向に移動附勢されてい
る。なお図示の場合には中空の変速軸３をトランスアク
スル１内の幅方向中途で端を了える長さのものとし、変
速軸３と同形状のプラスチック製キー支軸3Aを変速軸３
と相接踵させて車軸４上に遊嵌設置している。第１図に
おいて43はキー支軸3Aの端面に結合した金属製リング
で、該リング43はプラスチック製キー支軸3Aの端面が該
キー支軸に加わるスラスト作用下でケーシング側と摺接
回転し摩耗することを防止する。

第１図において44はシフタスリーブ41に対し係合させて
あつて回動変位により該スリーブ41を摺動変位させるシ
フターであり、このシフター44は第２図に示すようにト
ランスアクスル１の上面側へと突出させてある操作軸45
に取付けられている。操作軸45には変速アーム46が取付
けられ、同アーム46と操縦ハンドル25に設けた変速レバ
ー47とが操作索条48によつて接続されている。

第1,3図に示すようにコーンクラツチ５方向へと延出さ
せてある変速軸端部3aは変速軸３の他部よりも外寸を小
さくした６角形状のものとされており、コーンクラツチ
５の内側クラツチ部材としてある位置固定側のクラツチ
部材６は対応する６角形状の中心穴でもつて変速軸端部
3aに外挿され変速軸３上に固定設置されている。同様に
第1,3図に示すように変速軸外周面の長溝穴８はそれと
内底面位置を等しくする変速軸端部3a外面の延長穴8aへ
と連らねてあり、この延長穴8aをコーンクラツチ５の内
部に開口させてある。延長穴8aへの油の流入を助長する
ように、クラツチ部材６の外端面には切欠き溝49を設け
てある。

コーンクラツチ５の外側クラツチ部材としてある可動側
のクラツチ部材７は第1,4図に示すように、ボス部7aに
て車軸４に対しスライドキー50によつて摺動のみ自在に
結合されている。このクラツチ部材７には前記透孔９
が、ドリル加工によつて形成されている。

同様に第1,4図に示すようにトランスアクスル１の内外
にまたがる鉛直な操作軸51が設けられていて、この操作
軸51に取付けたクラツチフオーク52を、リング53を介し
てクラツチ部材７に係合させてある。操作軸51の外端に
はクラツチアーム54を取付けてあり、このクラツチアー
ム54は第２図に示すクラツチばね55により、操作軸51及
びクラツチフオーク52を介し可動側クラツチ部材７を固
定側クラツチ部材６から遠去ける向きに回動附勢されて
いる。クラツチアーム54は操縦ハンドル25に設けたクラ
ツチレバー56に対し操作索条57により接続されていて、
クラツチレバー56が握られると前記クラツチバネ55に抗
してクラツチフオーク52が、回転中の固定側クラツチ部
材６に対して可動側クラツチ部材７を押付けるように摺
動変位させ、コーンクラツチ５が入れられるようにされ
ている。クラツチレバー56の握りを加減し車軸４上での
クラツチ部材７の摺動変位量ないしクラツチ部材６に対
する押付け力を適宜に規制することにより、コーンクラ
ツチ５の任意の半クラツチ状態を得ることができる。

第１の実施例は以上に説明して来たように構成されてい
て、第２図に図示の芝刈機を発進させるときはクラツチ
レバー56を解放した状態でエンジン21を始動し、クラツ
チレバー56を徐々に握ることによりコーンクラツチ５を
半クラツチ状態を経て係合させ、スムーズな車両発進を
得ることができる。芝刈機を走行させている状態からキ
ー式変速装置２についての変速操作を行なおうとすると
き、及び芝刈機を引張つて後退させようとするときは、
クラツチレバー56を解放することでコーンクラツチ５が
切られる。コーンクラツチ５が切られると変速軸３が接
地する車輪24を装備する車軸４との接続を断たれるか
ら、車軸４に対しフリーに回転変位しうることになる変
速軸３によつて変速操作が容易化され、また逆に芝刈機
を後退させるときは車軸４がフリーに回転することから
芝刈機を簡単に後退させうる。

第５−７図が第２の実施例を示している。

本実施例ではコーンクラツチ５の内側クラツチ部材を構
成している固定側クラツチ部材６が、中空の変速軸３の
端部に一体形成されている。このクラツチ部材６の外周
面には、前述した通りのライニング10を貼着してある。
変速軸外周面の長溝穴８はクラツチ部材６の端面位置ま
で延長し、該延長穴8aをライニング10の内面側でコーン
クラツチ５の内部に開口させてある。また本実施例では
コーンクラツチ５の外側クラツチ部材を構成している可
動側クラツチ部材７が焼結合金から製作され、前記透孔
９は第5,7図に示すようにクラツチ部材７の成形時に該
部材７の角部に同時形成したものとされている。

変速軸３と一体のクラツチ部材６はコーンクラツチ５の
部品点数を減らして組立てを容易とし、またライニング
10の溝穴10aはコーンクラツチ５の円錐状クラツチ面の
潤滑及び冷却効果を高める。焼結合金製クラツチ部材７
の透孔９はドリル加工を省略させる。第２の実施例の他
の部分は、第１の実施例に準じた構造とされている。

第8,9図は第３の実施例を示している。

本実施例ではコーンクラツチ５の外側クラツチ部材を構
成している位置固定側のクラツチ部材６が、中空の変速
軸３の端部に一体形成されて、組立ての容易化が図られ
ている。前記した透孔９は変速軸外周面の長溝穴８に連
続させてスリツト状に形成されており、また長溝穴８を
変速軸３の端面にそのまま開口させることで前述２実施
例の延長穴8aに対応する開口8aが附与されている。

第10図は変速軸３とは別体であつてコーンクラツチ５の
外側クラツチ部材を構成している位置固定側のクラツチ
部材６を、変速軸３の端部上に固定設置した第４の実施
例を示している。このクラツチ部材６の変速軸３に対す
る固定は、第１の実施例におけると同様に行なえる。

〔考案の効果〕

この考案はキー式変速装置２を備える自走式歩行型作業
車のトランスアクスルにおいて、変速装置２の変速軸３
を中空軸とし車軸４上に遊嵌設置してこれらの２軸3,4
が同心状でコンパクトに配置されることとした上で、中
空変速軸３とそれを貫通する車軸４との上に変速軸３の
一端側でクラツチ部材6,7を配置してコーンクラツチ５
を構成設置したから、トランスアクスル内で空間的に余
裕のある場所にコーンクラツチ５をコンパクトに設けて
いる。そして作用の項で前述したようにコーンクラツチ
５の内外で潤滑油の循環が行なわれ半クラツチ状態でも
クラツチ５の十分な潤滑と冷却が行なわれること、可動
側のクラツチ部材７の透孔９によつてクラツチ入れ時に
クラツチ部材７の動きに抵抗する背圧が逃がされクラツ
チ部材の押付け力のロスが無くされることから、コーン
クラツチ５でのエネルギー損失が少なく同クラツチ５を
小寸法のものとできる。

したがつてこの考案は半クラツチ状態をうることができ
車両の発進をスムーズとする摩擦クラツチであるコーン
クラツチ５を、自走式歩行型作業車のトランスアクスル
に極くコンパクトに設けたものとなつている。

そしてコーンクラツチが部品点数が少ないものであるこ
と、キー式変速装置の変速軸外周面に設けられている長
溝穴８を延長して該長溝穴８と同時形成できる延長部に
よりクラツチ内部への油の供給路を構成していることか
ら、この考案は自走式歩行型作業車のトランスアクスル
に低コストで済む構造によつてクラツチを組込んだもの
となつている。

位置固定側のクラツチ部材６を変速軸３と一体形成する
構造（請求項２）によれば、コーンクラツチ５において
固定側クラツチ部材を変速軸３に固定するための構造部
を含めての部品点数が減らされ、加工及び組立てが簡単
となつて製作コストが一層低減される。

内側クラツチ部材を構成するクラツチ部材の外周面に溝
穴10aを備えるライニング10を貼着する構造（請求項
３）によれば、コーンクラツチ５の摩擦面に対する油の
供給が十分に行なわれてエネルギー損失の一層の低減、
したがつてコーンクラツチ５の一層の小型化を達成でき
る。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の第１の実施例を示す横断平面図、第
２図は同実施例を装備する自走式歩行型芝刈機を示す概
略斜視図、第３図及び第４図はそれぞれ、第１図のIII
−III線及びIV−IV線に沿う断面図、第５図は第２の実
施例の要部を示す横断平面図、第６図は同実施例の一部
材を示す斜視図、第７図は同実施例の他部材の一部分を
示す斜視図、第８図は第３の実施例の要部を示す横断平
面図、第９図は同実施例の一部材を示す斜視図、第10図
は第４の実施例の要部を示す横断平面図である。 １…トランスアクスル、２…キー式変速装置、３…変速
軸、3a…変速軸端部、４…車軸、５…コーンクラツチ、
６…位置固定側のクラツチ部材、７…可動側のクラツチ
部材、7a…ボス部、８…長溝穴、8a…延長穴、９…透
孔、10…ライニング、10a…溝穴、40…シフトキー、41
…シフタスリーブ、50…スライドキー、51…操作軸、52
…クラツチフオーク、54…クラツチアーム、55…クラツ
チばね、56…クラツチレバー、57…操作索条。

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】キー式変速装置２を備える自走式歩行型作
   業車のトランスアクスルにおいて、キー式変速装置２の
   変速軸３を中空軸に形成して車軸４上に遊嵌設置し、該
   変速軸３と車軸４間にコーンクラツチ５を、このコーン
   クラツチにおける位置固定側のクラツチ部材６を変速軸
   ３の一端部上に固定設置すると共に可動側のクラツチ部
   材７を車軸４上に摺動のみ自在に設置して配設し、変速
   軸３の外周面に形成されたシフトキー収容用の長溝穴８
   を延長して上記コーンクラツチ５の内部に連通させる一
   方、上記した両クラツチ部材6,7のうちコーンクラツチ
   ５の外側クラツチ部材を構成するクラツチ部材の周壁に
   コーンクラツチ５の内外に開口する適当数の透孔９を設
   けたことを特徴とするトランスアクスル。
2. 【請求項２】請求項１に記載のトランスアクスルにおい
   て、前記した位置固定側のクラツチ部材６を、前記変速
   軸３に一体形成したことを特徴とするトランスアクス
   ル。
3. 【請求項３】請求項１または２に記載のトランスアクス
   ルにおいて、前記した両クラツチ部材6,7のうちコーン
   クラツチ５の内側クラツチ部材を構成するクラツチ部材
   の外周面に、軸線方向に沿う溝穴10aを表面に有するラ
   イニング10を貼着したことを特徴とするトランスアクス
   ル。