JPH0647221Y2 - 自走式歩行型芝刈機の走行装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は自走式歩行型芝刈機の走行装置に関し、デツ
ドマン型の車軸クラツチのクラツチばねを利用して部材
の摩耗防止を図り耐久性を向上させてある走行装置を提
供するものである。

〔従来の技術〕

例えば実公昭58-32578号公報に開示されているように、
自走式歩行型芝刈機で集草バツグを機体後方に装備させ
る場合には機体を構成するデツキの内部からの草放出口
を、機体後ろ向きに開口させるため、車軸を装備するト
ランスアクスルは草放出口形成部と干渉しないように、
機体幅方向の一側に片寄せて配置される。そして機体幅
方向に中央位置に搭載したエンジンからトランスアクス
ル内へ入力伝動する機構を簡易なものとするため、トラ
ンスアクスルの入力軸を上方向きに突出させて入力プー
リーを装備させ、同入力プーリーとエンジン出力プーリ
ー間にベルトを捲回する構造を採用する場合が多い。

また芝刈機を引張つて後退させるときのため、及び押し
て自在に走行させるときのために、車軸の自由な回転を
可能とする車軸クラツチを設けるのが普通であり、この
車軸クラツチは一般に安全のため、クラツチばねによつ
て切り状態に維持され操縦ハンドルに附設のクラツチレ
バーを握ると入れられるデツドマン型のものとされてい
る。上記公報のものではデツドマン型車軸クラツチのク
ラツチばねを、トランスアクスルの外部に配置してい
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

前述のように機体幅方向の一側に片寄せて配置したトラ
ンスアクスルの入力プーリーと機体幅方向の中央に位置
するエンジン出力プーリーとの間に捲回されたベルト
は、その張力によつてトランスアクスルに対し機体前後
中心線側を向くスラストを加えることになる。このため
トランスアクスルはその逆向きの反力を発生し、この反
力によつてトランスアクスル内で車軸の軸線方向位置を
規制する止め輪とかリテーナワツシヤの摩耗が甚だし
く、走行装置の耐久性に難があつた。

そこでこの考案はデツドマン型の車軸クラツチのクラツ
チばねを利用した簡易な構造で、上記問題を解消してあ
る走行装置を提供しようとするものである。

〔問題点を解決するための手段〕

そのためにこの考案は第２図に示すように、車軸１を装
備するトランスアクスル２を機体幅方向の一側に片寄せ
て配置し、このトランスアクスル２から上方向きに突出
させた入力軸３に取付けた入力プーリー４と機体幅方向
の略中央位置に配置されたエンジン出力プーリー５との
間にベルト６を捲固してある自走式歩行型芝刈機の走行
装置において、次のような技術的手段を講じた。

すなわち第１図、第３図及び第４図にそれぞれ例示する
ようにトランスアクスル２の内部で車軸１上に、前記入
力軸３によつて回転駆動される位置固定側のクラツチ部
材７（第1,4図）或は7A（第３図）を遊嵌設置し、この
クラツチ部材7,7Aに対しトランスアクスル２を片寄せて
ある側から係合させる可動クラツチ部材８（第1,4図）
或は8A（第３図）を車軸１上に摺動のみ自在に設けて、
車軸クラツチ９を構成し、可動クラツチ部材8,8Aを位置
固定のクラツチ部材7,7A側から車軸クラツチ９の切り方
向に移動附勢するクラツチばね10を、可動クラツチ部材
8,8A反対方向への変位を阻止して車軸１上に設けたばね
受け部材11（第１図）,7A（第３図）或は11B（第４図）
に基端を受けさせて設けるのである。

上記ばね受け部材は、第１図の図例では車軸１に装着し
て可動クラツチ部材８反対方向への変位を阻止してある
止め輪とされ、また第３図の図例では車軸１に装着した
止輪13によつて可動クラツチ部材8A反対方向への変位を
阻止されている位置固定側のクラツチ部材7Aを、ばね受
け部材に兼用している。第４図の図例では、車軸１に装
着した止め輪14によつて可動クラツチ部材８反対方向へ
の変位を阻止してあるリング状のばね受け部材11Bを、
用いている。

〔作用〕

第２図に図示のようにトランスアクスル２を片寄せ配置
したときにベルト６の張力によりトランスアクスル２に
加わるスラストは矢印Ｂ方向のものとなり、トランスア
クスル２の反力はその逆方向である矢印Ａ方向のものと
なる。第１図，第３図及び第４図では第２図に対応させ
てトランスアクスル２の反力作用方向を矢印Ａで示して
いるが、上述のように設けたクラツチばね10は矢印Ａ反
対向きの変位を阻止して車軸１上に設けたばね受部材11
（第１図）、7A（第３図）或は11B（第４図）を介して
車軸１を矢印Ａ方向、つまりこれらの図に第２図に対応
させて加入した矢印Ｂ方向に、附勢することとなる。

このため車軸１に対しトランスアクスル２から加わるス
ラスト反力が、クラツチばね11が車軸１に加える逆向き
の附勢力によつて相殺されることになる。

〔実施例〕

第２図は、第１図に示す第１の実施例を装備する自走式
歩行型芝刈機を示している。

機体を構成するデツキ20の上面上方に第２図に鎖線図示
のエンジン21を、その出力軸21aを下向きとして配置し
てあり、前記エンジン出力プーリー５は出力軸21aに嵌
着してある。デツキ20の下面側で出力軸21aの下端に刈
刃22が取付けられており、この刈刃22によつて刈取られ
た芝はデツキ20内の環状通路内にもたらされ、デツキ20
後端の略一半部を占める草放出口23から放出される。草
放出口23には鎖線で一部のみを示す集草バツク24が、取
付けられる。デツキ20の後端には後上方向きに延出する
操縦ハンドル25が取付けられ、このハンドル25にはクラ
ツチレバー26が附設されている。

トランスアクスル２は前述した配置で設けられ、ベルト
６にはテンシヨンプーリー28を有するテンシヨン・クラ
ツチが附設されている。左右の駆動車輪29はデツキ20の
側外面に取付けたブラケツト30に支持させてあり、駆動
車輪29のホイールデスクには内歯々車31を一体形成して
ある。トランスアクスル２内から左右に延出する車軸１
は各駆動車輪29内に位置するピニオン32を備え、このピ
ニオン32を内歯々車31に噛合せて減速機構が構成されて
いる。デツキ20の前端部には、遊転する左右の前輪33を
支持させてある。

トランスアクスル２は上下のケース半部を締結してな
り、第１図は両ケース半部の合せ面位置でトランスアク
スル２を切断して画いた平面図である。

ボルト35によつて締結するトランスアクスル２の上下の
ケース半部により抱持状に支持させる駆動軸36及び前記
車軸１が、左右方向に沿わせて設けられている。第１図
では位置をずらし位相を90°転回して鎖線図示している
前記入力軸３の下端には小傘歯車37を装備させてあり、
この小傘歯車37に噛合う大傘歯車38が駆動軸36上に固定
設置されている。

トランスアクスル２内で車軸１上に中空の変速軸40を遊
嵌設置してあり、駆動軸36と変速軸40間にキーシフト式
の変速装置41が配設されている。この変速装置41は、駆
動軸36上に固定設置の３個の歯車42I,42II,42IIIと変速
軸40上に遊嵌設置の３個の歯車43I,43II,43IIIとの対応
するもの同士を噛合せてなる３列の変速歯車列を有す
る。変速軸40の半部はプラスチツク製の中空支軸40Aで
もつて代用され、これらの軸40,40Aの外周面には長溝穴
44を形成してある。中空支軸40A上に摺動自在に設けた
シフタスリーブ45に、長溝穴44内に位置するシフトキー
46が取付けられ、自由端のクラツチ突起46aを長溝穴44
外に突出する向きに板ばね47で附勢されている。変速装
置41はシフタスリーブ45を摺動操作し、シフトキー46の
クラツチ突起46aにより１個宛の歯車43I,43II,43IIIを
選択的に変速軸40へと結合することにより、３段の変速
を行なう。

第１の実施例では車軸クラツチ９がコーンクラツチに構
成されており、コーンである位置固定側のクラツチ部材
７は、変速軸40の一端部40aを角形部として同端部40aに
嵌着されており、変速軸40を介して車軸１に遊嵌された
関係とされている。コーンケーブである可動クラツチ部
材８は車軸１上に、スライドキー49を用いて摺動のみ自
在に設置されている。クラツチ部材７側で前記のように
止め輪とされているばね受け部材11が車軸１に装着され
ており、クラツチばね10はこのばね受け部材11に基端を
受けさせて可動クラツチ部材８へと作用させてある。ば
ね受け部材11には、変速軸端部40aからのクラツチ部材
７の抜止めと可動クラツチ部材８方向への変速軸40の変
位阻止とを行なう規制リング50の押えを、兼ねさせてあ
る。

車軸クラツチ９の内部にはグリースＧを充填してある。
このグリースＧは組立て当初、両クラツチ部材7,8間に
規定量以上貯溜され、車軸クラツチ９の初回係合時に可
動クラツチ部材８の移動により外部に流出するとき、該
可動クラツチ部材８の移動に対し抵抗を附与して両クラ
ツチ部材7,8の摩擦係合面がスリツプ係合することと
し、これによつて両摩擦係合面が研磨されるようにも、
利用することとされている。この研磨によつては、摩擦
係合面各部の真円度が不足していた場合にも可動クラツ
チ部材８の噛込みが防止される実益が与えられる。

車軸クラツチ９を入れるためには鉛直軸線まわりで回動
可能に支持された板金製フオーク52を、ベアリング部材
53を介して可動クラツチ金物８に対し係合させてある。
フオーク52の上端は第２図に示すようにトランスアクス
ル２の上面へと突出させてあり、そこでクラツチアーム
54を取付けてある。クラツチアーム54は、スプリング55
aを含む操作索条55によつて前記クラツチレバー26に接
続されている。車軸クラツチ９はクラツチレバー26を操
縦ハンドル25と一体に握り引上げることで入れられる
が、上記スプリング55aとしては高初張力の引つ張りコ
イルスプリングが用いられ、クラツチレバー26を引上げ
る力がクラツチアーム54をクラツチ入り位置まで移動さ
せる値に達するまで、スプリング55aが伸びないように
セットしておくことにより、操作索条55の引張り力が不
十分なときにも車軸クラツチ９がスリツプしないように
図られている。

第３図は第２の実施例を示しており、本実施例では入力
軸３下端の小傘歯車37に噛合された大傘歯車を車軸１上
に遊嵌設置し、この大傘歯車を位置固定側のクラツチ部
材7Aとして用いている。このクラツチ部材7Aにはクラツ
チ爪57が一体的に設けられ、このクラツチ爪57に対し噛
合せうるクラツチ爪58を備えた可動クラツチ部材8Aが車
軸１上に、スプライン嵌めによつて摺動のみ自在に設け
られている。

前述したように位置固定側のクラツチ部材7Aが車軸１上
で、該車軸１に装着した止め輪13により可動クラツチ部
材8A反対方向への変位を阻止されているのに対し、該ク
ラツチ部材7Aをばね受け部材として利用しクラツチばね
10の基端を受けさせている。可動クラツチ部材8Aは外周
面に環状溝59を有するものに形成され、該環状溝59内に
臨んで可動クラツチ部材8Aに対し係合するフオーク60
を、トランスアクスル２の内外にまたがらせて回転自在
に支持してある水平な操作軸61に取付けてある。操作軸
61は図外のクラツチアームと操作索条とを介し、第２図
に図示のクラツチレバー26同様のクラツチレバーへと接
続される。

第４図は、第１図に図示の構造を若干変更した第３の実
施例を示している。本実施例では前述したように、車軸
１に装着した止め輪14によつて車軸１上での可動クラツ
チ部材８反対方向への変位を阻止してあるリング状のば
ね受け部材11Bに、クラツチばね10の基端を受けさせて
いる。位置固定側のクラツチ部材７は、変速軸端部40a
に装着した止め輪63によつて抜止めされている。他の構
造は第１図に図示のものと同様である。

〔考案の効果〕

この考案はデツドマン型の車軸クラツチ９においてクラ
ツチ切り状態を維持するためのクラツチばね10を、該ば
ね10の基端を受けさせるばね受け部材11,7A,11Bを介し
て車軸１を附勢するように設け、その車軸附勢方向を、
機体幅方向で一側に片寄せ配置のトランスアクスル２が
ベルト６の張力によって受けるスラストの反力を車軸１
に対し加える方向とは逆方向に設定したから、デツドマ
ン型車軸クラツチのクラツチばね10を利用した極く単純
な構造で車軸に加わるトルク反力を相殺して、車軸上の
止め輪とかリテーナワツシヤの摩耗を防止し芝刈機走行
装置の耐久性を高める効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は第１の実施例を装備する芝刈機トランスアクス
ルの横断平面図、第２図は同実施例を装備する自走式歩
行型芝刈機の一部横断概略平面図、第３図は第２の実施
例の要部を示す縦断背面図、第４図は第３の実施例の一
部分を示す横断平面図である。 １……車軸、２……トランスアクスル、３……入力軸、
４……入力プーリー、５……エンジン出力プーリー、６
……ベルト、7,7A……位置固定側のクラツチ部材、8,8A
……可動クラツチ部材、９……車軸クラツチ、10……ク
ラツチばね、11,11B……ばね受け部材、13……止め輪、
14……止め輪、21……エンジン、26……クラツチレバ
ー、36……駆動軸、40……変速軸、41……変速装置、49
……スライドキー、52……フオーク、54……クラツチア
ーム、55……操作索条、57……クラツチ爪、58……クラ
ツチ爪、60……フオーク、61……操作軸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】車軸１を装備するトランスアクスル２を機
   体幅方向の一側に片寄せて配置し、このトランスアクス
   ル２から上方向きに突出させた入力軸３に取付けた入力
   プーリー４と機体幅方向の略中央位置に配置されたエン
   ジン出力プーリー５との間にベルト６を捲回してある自
   走式歩行型芝刈機の走行装置において、 トランスアクスル２の内部で車軸１上に、前記入力軸３
   によつて回転駆動される位置固定側のクラツチ部材7,7A
   を遊嵌設置し、このクラツチ部材7,7Aに対しトランスア
   クスル２を片寄せ配置してある側から係合させる可動ク
   ラツチ部材8,8Aを車軸１上に摺動のみ自在に設けて、車
   軸クラツチ９を構成し、可動クラツチ部材8,8Aを位置固
   定のクラツチ部材7,7A側から車軸クラツチ９の切り方向
   に移動附勢するクラツチばね10を、可動クラツチ部材8,
   8A反対方向への変位を阻止して車軸１上に設けたばね受
   け部材11,7A,11Bに基端を受けさせて設けたことを特徴
   とする走行装置。