JPH07150471A - 多孔質アクリロニトリル系繊維 - Google Patents

多孔質アクリロニトリル系繊維

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JPH07150471A
JPH07150471A JP5329711A JP32971193A JPH07150471A JP H07150471 A JPH07150471 A JP H07150471A JP 5329711 A JP5329711 A JP 5329711A JP 32971193 A JP32971193 A JP 32971193A JP H07150471 A JPH07150471 A JP H07150471A
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fiber
porous
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acrylonitrile
average pore
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JP5329711A
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Shiro Kawasaki
史朗 川崎
Mamoru Ashida
守 芦田
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Japan Exlan Co Ltd
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Japan Exlan Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 繊維の多孔質形態が熱的な耐久性に優れ、従
って形態保持性を有する繊維製品を与え得る多孔質繊維
を提供する。 【構成】 アクリロニトリルを95重量%以上結合含有
する重合体からなる繊維であって、多孔質構造を構成す
る繊維中の細孔が互いに連結し且つ繊維表面と連通して
なり、さらに架橋構造が導入され、特定の平均細孔径の
減少率を有する多孔質アクリロニトリル系繊維。 【効果】 繊維内の細孔が連結し且つ繊維表面に連通し
た多孔質構造を有し、繊維形態の保持性に優れた多孔質
アクリロニトリル系繊維を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔質アクリロニトリ
ル(以下アクリロニトリルをANという)系繊維に関す
るものであり、さらに詳しくは多孔質構造を有する繊維
の細孔が互いに連結してなり且つ繊維表面と連通するこ
とにより吸着、吸蔵等のデバイスとして用いることがで
き、さらに繊維に架橋構造を導入することにより耐熱性
に優れ、繊維形態および繊維細孔形態保持性に優れた多
孔質AN系繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から多孔質AN系繊維を得るために
種々の方法が試みられている。例えば特公昭60ー11
124号公報には、酢酸セルロースをAN紡糸原液に添
加することにより吸水性の多孔質AN系繊維を形成する
ことが開示されているが、酢酸セルロースを添加した紡
糸原液はAN系重合体単独の紡糸原液に較べて原液の安
定性および可紡性に劣るものであり、工業的に十分満足
されたものではなく、酢酸セルロースの変性のために紡
出糸条の耐熱性が低下し繊維製造工程中のトラブルの原
因になり、その上製品の品質も十分なものが得られな
い。また特公昭61ー42005号公報は非揮発性溶媒
を添加し、乾式紡糸した後に該溶媒を抽出することによ
り吸水性の多孔質のAN系繊維を形成することを開示し
ているが、一般にAN系繊維を湿式または乾式紡糸で製
造する製造工程では紡糸溶剤を回収することで製造コス
ト低減を図っているが、このような手法は溶剤の回収工
程に多大な負荷をかけるものであり、工業的に十分満足
されたものではない。
【0003】さらにまた、特開昭47ー25416号公
報、特公昭48ー8285号公報には製造工程中の膨潤
ゲルトウに水溶性化合物を充填し、乾燥、後処理の後
で、充填物を溶出させ、ボイドを再生する方法が記載さ
れており、また、特開昭47ー25418号公報には膨
潤ゲルトウを湿熱処理して微小なボイドを残存させて、
いずれもAN系繊維に吸湿性を付与する方法が記載され
ているが、従来のこの手段は繊維物性および繊維の染色
性を満足させるためにミクロボイドを温和な乾燥条件を
選択して残存させることにより、熱的に極めて不安定な
ものであり、沸水中処理、スチーミング処理、アイロン
処理等においてボイドが消滅する或いは繊維製品の形態
保持性の低下などの重大な品質低下がみられる。さらに
こうした微小なボイドは、ボイド同士がお互いに独立し
て存在しやすく、各々のボイド間が連続した通路となっ
ていない点で効果的ではない。
【0004】またさらに、特開昭63ー309613号
公報には未乾燥の標準湿式紡糸AN系繊維のTg以下の
沸点を有する有機液体と未乾燥繊維内に含まれている全
ての水とを実質的に置換し、繊維Tg以下の温度で乾燥
し、多孔質のAN系繊維を得る方法が記載されている
が、上述したように溶剤回収工程に多大な負荷をかける
うえに、沸点の低い有機液体の回収が伴うために工業的
に有利ではない。
【0005】一方、また従来から繊維の湿熱形態安定
性、捲縮安定性、防縮化、弾性向上等の性能を得るため
に架橋化反応に着目し、繊維に架橋構造を導入する方法
が取られている。例えば特開昭50−5649号公報に
は、架橋処理したアクリル繊維とポリアミド繊維からな
る複合材により架橋処理したアクリル繊維が高温の炎或
いは高温の物体に接触したときに速やかな炭化現象を呈
し、遮熱或いは遮炎効果を示すことにより複合材として
の耐熱性を向上させることが記載されている。
【0006】また、特開昭52−12153号公報には
アクリルアミドを共重合したポリアクリロニトリル共重
合物にアミノ樹脂をブレンドし、繊維形成過程或いは繊
維形成後に架橋結合を導入することにより、耐熱水性を
向上させ、繊維弾性率の向上と永久変化率の低下を得る
など、繊維の力学的特性、物理特性等の向上を図るため
に架橋構造の導入が試みられてきた。
【0007】以上のごとく、多孔質のAN系繊維は主に
吸水性、吸湿性の機能を有する衣料、寝装、インテリア
用途向けに改良されており、また架橋構造は繊維の力学
的特性、物理的特性改良の目的で施されてはいるもの
の、熱的に安定で且つ繊維製品の形態保持性および繊維
細孔形態の保持性が改良され、製造方法の経済性が考慮
された多孔質AN系繊維は得られていないのが現状であ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、熱的
に安定で且つ繊維製品および繊維細孔形態の保持性を有
し、多孔質構造を有する繊維の細孔が互いに連結し且つ
繊維表面と連通してなり、乾熱180℃で2時間処理し
た後の平均細孔径の減少率が10%以下であることによ
り吸着、吸蔵等のデバイスとして用いることができ、且
つ工業的に有利な多孔質AN系繊維を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような本発明の上記
目的は、95重量%以上のANを結合含有するAN系重
合体を湿式紡糸して得られる延伸後未乾燥繊維を120
〜150℃の温度で湿熱処理を行った後、架橋処理する
ことにより得られる多孔質構造を有する繊維であって、
該多孔質構造を構成する細孔は平均細孔径が100〜6
000Åで、該細孔は連結し且つ繊維表面に連通してな
り、乾熱180℃で2時間処理した後の平均細孔径の減
少率が10%以下であることを特徴とする多孔質AN系
繊維により達成することができる。
【0010】このような本発明によって得られる多孔質
AN系繊維は、繊維内に適切な径を有する細孔が存在し
てなり、各々の細孔が繊維内部で連結しており、且つス
キン層を形成しないが故に繊維表面と連通し、架橋構造
が導入されていることにより繊維内の細孔が熱的に安定
で且つ繊維製品の形態保持性を有することから吸着、吸
蔵等のデバイスとして用いることができるものである。
【0011】以下、本発明を詳述する。上述のごとき特
異構造を有する多孔質AN系繊維において、ANを95
重量%以上結合含有するAN系重合体を繊維構造に形成
することが重要である。ANの結合含有量が95重量%
に満たない場合は、各々の細孔が繊維内部で連結せず、
さらに繊維にスキン層を形成せしめ繊維表面と連通しな
いことになる。
【0012】また、本願発明では、AN系繊維に共存す
るニトリル基および/または他の官能基を用いて架橋構
造を導入でき、上記の結合含有量を満足するAN系重合
体であれば特に限定されるものではないが、例えば、所
定量のANと他にANと共重合可能な不飽和ビニル化合
物および/または架橋構造を導入し得る単量体とを共重
合することによって作製される。
【0013】なお、AN単独からなる重合体またはAN
と不飽和ビニル化合物とからなる共重合体を用いる場合
は、ニトリル基および/または他の官能基を被架橋対象
として利用することにより架橋構造を導入することがで
き、ANと架橋構造を導入し得る単量体とからなる共重
合体を用いる場合は、架橋剤を用いて架橋構造を導入す
ることができる。また上記AN系重合体は、周知の重合
手段である懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等によ
って製造することができる。
【0014】ここで、かかる不飽和ビニル化合物として
は、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらのメチルエス
テル、エチルエステル等のエステル類;アクリルアミ
ド、メタクリルアミド又はこれらのNーアルキル置換
体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステ
ル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハ
ロゲン化ビニル又はビニリデン類;ビニルスルホン酸、
アクリル酸、メタクリル酸のジメチルアミノエチルエス
テル等を上げることができ、単独または併用して用いる
ことができる。また、架橋構造を導入し得る単量体とし
ては例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メ
チルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、アリ
ルアルコール、メタリルアルコール、β−ヒドロキシエ
チルメタクリレート、2−クロロ−3−ヒドロキシプロ
ピルメタクリレート、β−アミノエチルメタクリレー
ト、β−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、
イタコン酸等を上げることができ単独または併用するこ
とができ、さらに不飽和ビニル化合物単量体と併用して
もよい。
【0015】このようにして作製された重合体は、通常
の繊維溶剤に溶解して紡糸原液となし、公知のノズルで
湿式紡糸される。かかる紡糸において、各々の細孔が繊
維内部で連結し且つ繊維表面に連通するためには通常の
紡糸条件では作製が困難であり、下記の手段を選択する
ことによりなされ得る。
【0016】即ち、ロダン酸ソーダ等の無機塩を溶剤に
用いた場合では、上述の如くノズルから紡糸された繊維
を5℃〜15℃、好ましくは5℃〜10℃の凝固浴条件
下で凝固させ、水洗、7〜15倍の延伸、さらに120
℃〜150℃、好ましくは130℃〜150℃で湿熱処
理を行い、その後80℃以上で乾燥することにより作製
される。凝固浴温度が5℃に満たない場合は各々の細孔
が繊維内部で連結し、且つ繊維表面に連通してなる多孔
質AN系繊維を得るという所期の目的を達成することが
できず、またかかる上限を越えると可紡性が低下し好ま
しくない。延伸倍率がかかる範囲を満たさない場合は、
繊維に適度な強度が付与し得ない、単糸切れ等の問題が
惹起し好ましくない。一方湿熱処理がかかる温度下限に
満たない場合は熱的に安定な繊維を得ることができず、
150℃を越えると繊維形態を保つことができず発明が
達成されない。また乾燥条件において、かかる温度以下
の場合は繊維の乾燥に時間がかかり工業的に有利ではな
い。有機溶剤を用いる場合では、上記の凝固浴温度を4
0℃以上、好ましくは50℃以上に維持することが好ま
しい。
【0017】また、本願に係る平均細孔径は100Å〜
6000Åで有ることが必要であり、かかる下限範囲を
満たさない場合は吸着、吸蔵等のデバイスとして用いる
ことのできる耐熱性に優れ、且つ形態保持性のあるAN
系繊維を得ることができない。また、かかる上限範囲を
満たさない場合は、紡糸時の糸切れ、AN系繊維の強度
等の繊維物性を得ることができない。上述した平均細孔
径を有する多孔質繊維の細孔は独立したものでなく、各
々の細孔が連結し且つ繊維表面に連通していることが必
要である。かかる条件を満たさない場合は、繊維表面若
しくは繊維表面から繊維内部側の僅かな部分しか活用す
ることができず、多孔質繊維を吸着、吸蔵等のデバイス
として使用することができない。
【0018】特に、95重量%以上のANを結合含有す
るAN系重合体を湿式紡糸し、水洗、延伸後の未乾燥繊
維を120〜150℃、好ましくは130〜150℃の
温度で湿熱処理を行う条件を結合採択することにより、
得られる多孔質AN系繊維は、繊維内に熱的に安定且つ
平均細孔径が100〜6000Åで繊維中の細孔が互い
に連結し且つ繊維表面と連通した多孔質構造を有し、該
繊維は優れた吸着、吸蔵機能を有し且つ適度な繊維物性
を有するが故に、優れた繊維製品および繊維細孔形態の
保持性を有し、もって商品価値に富むものを与える。
【0019】また本発明の異なる実施態様として次の点
を挙げることができる。即ち、前記多孔質AN系繊維の
作製に際し、重合体成分中に下記吸水性樹脂を導入する
ことである。かかる吸水性樹脂とは、重合体反復単位4
00個あたり1〜15個、好ましくは2〜10個の架橋
結合を有し、絶乾状態で0.5μ以下、好ましくは0.
2μ以下の粒子径及び20〜300cc/g、好ましくは
30〜150cc/gの水膨潤度を有し、水及びAN系重
合体の溶剤に不溶性の樹脂である。かかる吸水性樹脂の
配合割合は、AN系重合体重量に対して1〜6重量%未
満、好ましくは1〜5重量%の範囲から選択できる。か
かる吸水性樹脂の導入は、重合体紡糸原液に上記割合を
満足するように添加混合すればよい。紡糸以降は前記し
た手段を採用して多孔質AN系繊維が製造される。な
お、かかる吸水性樹脂の作製方法については、前記特性
を満足するものが得られるならば何ら限定されないが、
かかる特性を有する樹脂を工業的有利に作製し得る点で
例えば次のような方法を挙げることができる。
【0020】即ち、粒子径0.5μ以下、好ましくは
0.2μ以下であり、重合体を構成する単量体全量に対
して好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重
量%以上のAN、所定量の架橋性モノマーおよびANと
共重合し得る他のビニルモノマーとの架橋AN系共重合
体の水分散体に、常法に従ってアルカリ物質を作用させ
てカルボキシル基を導入することにより20〜300cc
/g、好ましくは30〜150cc/gの水膨潤度を有す
る樹脂または該樹脂の水分散体を工業的有利に作製する
ことができる。なお、かかる吸水性樹脂を水分散体の形
態で作製、使用する場合には、該水分散体が下記数1を
有するとき水分散体全体がゼリー状に固化するため、予
めアルカリ処理する媒体中に水混和性有機溶媒或いは電
解質塩類を共存させるなどの手段により、樹脂を収縮さ
せて水分散体の形態を維持させることが好ましい。
【0021】
【数1】
【0022】但し、C;水分散体中の吸水性樹脂濃度
(重量%) S;吸水性樹脂の水膨潤度(cc/g) W;水分散体中の水の割合(重量%)
【0023】なお、上記架橋性モノマーとしては、例え
ばアクリル酸もしくはメタクリル酸のジエステル類、ト
リエステル類もしくはテトラエステル類や、不飽和カル
ボン酸のアリルエステル類、多価カルボン酸のジアリル
エステル類、ジビニル系酸無水物類、ジビニルスルホ
ン、メチレンビスアクリルアミド、或いはジビニルベン
ゼン及びそのアルキル又はハロゲン置換体の如き分子内
に共重合可能な二重結合を2個以上有する架橋性単量体
及び/又は上記不飽和カルボン酸もしくは不飽和スルホ
ン酸のグリシジルエステルや、不飽和グリシジルエーテ
ルの如き分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する
架橋性単量体を例示することができ、前記共重合成分と
して使用して重合時もしくは重合終了後に架橋せしめる
ことにより容易に目的の吸水性樹脂を作製することがで
き、なかでも、分子内に共重合可能な二重結合を2個以
上有し、アルカリ耐性の大きいジビニルスルホン、メチ
レンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの架橋
性単量体を共重合成分として使用することが望ましい。
なお、上記微細粒子径の架橋AN系共重合体でなる吸水
性樹脂の作製方法については例えば本出願人に係る特許
第1009923号発明を採用して有利に実施すること
ができる。
【0024】また、かかる吸水性樹脂として架橋AN系
共重合体が共存する樹脂を使用することにより、繊維形
成マトリックスポリマー(AN系重合体)との混和性或
いは曳糸性等が一段と改善されるので望ましい。このよ
うに吸水性樹脂を導入してなる多孔質AN系繊維は、前
記した吸水性樹脂を含有しない多孔質AN系繊維と同様
繊維内に熱的に安定で且つ繊維製品の形態保持性を有
し、また多孔質構造を有する繊維の細孔がミクロとマク
ロの細孔を有し、各々の細孔が繊維内部で連結し、且つ
繊維表面と連通して優れた吸着、吸蔵機能を有し、適度
な繊維物性を有するが故に良好な商品価値に富むものと
なる。
【0025】次いで、係る多孔質構造を有するAN系繊
維を架橋剤で処理する手段としては、公知乃至周知の方
法を採択することができる。即ち、工程中の延伸後未乾
燥段階にある繊維に付与する方法、紡糸、延伸、熱処
理、必要に応じて捲縮処理そして乾燥を経て最終的な糸
条、紡績糸或いはこれらを編織した製品、不織布等を溶
液中で加熱して行う方法等を上げることができる。
【0026】不飽和ビニル化合物単量体を共重合したア
クリル系重合体を用いる場合に、ニトリル基および/ま
たは他の官能基を被架橋対象として利用する方法として
は、例えばアクリル繊維をヒドロキシルアミン或いはそ
の無機又は有機酸塩で処理する、またはヒドラジン或い
はヒドラジンヒドラートで処理する方法を上げることが
でき、ニトリル基以外の他の官能基を被架橋対象として
利用する方法としては、例えばナトリウムアルコラート
とエタノール系或いはナトリウムグリコラートとエタノ
ールの系で処理する方法、等を上げることができる。
【0027】また、架橋構造を導入し得る単量体を共重
合させた共重合体を用いる場合は、架橋剤としてホルム
アルデヒド、アセトアルデヒド、テトラオキサン、トリ
クロルアルデヒド、グリセリンジエポキサイド、ジメチ
ロール尿素、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリ
トールビスアセタール等があげられ、この1種単独およ
び/または数種を混用してもよい。さらにまた、架橋促
進剤として酢酸、硫酸、リン酸等の有機および無機酸、
硫安、塩化アンモン等の無機塩を添加してもよい。
【0028】本発明において架橋剤で処理を行う際の処
理液の濃度は繊維に共重合する単量体種類、該単量体の
量、処理温度、処理時間等によって異なるが、0.01
モル/l以上が好ましく、特に好ましくは0.01モル
/l以上1.0モル/l以下が採択される。処理温度は
20℃以上特に40℃〜100℃が好ましい。本来なら
ば、上述した処理濃度、温度範囲では架橋反応が進行し
ないのであるが、本願発明の特徴として繊維内の細孔が
連結し且つ表面と連通しているためにかかる低い処理濃
度、処理温度を採択することができるのである。
【0029】上述した処理により架橋構造が導入された
本願に係る多孔質AN系繊維の細孔径は、乾熱180℃
で2時間処理した後の平均細孔径の減少率が10%以下
であることが必要である。係る範囲を満たさない場合
は、繊維中に存在する多孔質構造が小さくなる、或いは
連結していた多孔質繊維の細孔が閉塞して各々独立して
存在する形態となり、吸着、吸蔵等のデバイスとして用
いることができない。係る温度条件は、繊維の形態保持
性を加速的に評価するために用いており、例えば、18
0℃に満たない温度を採択すれば上記より平均細孔径の
減少率が低下し、また180℃を越える温度を採択すれ
ば上記より平均細孔径の減少率が増加することが考えら
れるが、上記温度、時間範囲を越えると繊維の着色が著
しく進み細孔が表面と連通しているか否かが判定し難く
なるので、かかる条件を採択した。
【0030】
【作用】本願に係る多孔質AN系繊維は、湿式紡糸で繊
維形成される凝固過程で、より積極的に多孔質構造を繊
維内部に形成または導入し、また繊維を形成するAN系
重合体のAN%が必須とされる範囲にあることと、未乾
燥繊維を必須の条件で湿熱処理を行うこととにより該細
孔が連結してなり且つ繊維表面に連通した多孔質構造に
架橋構造を導入することにより耐熱性に優れ、繊維形態
および繊維内の細孔形態の保持性を有する多孔質AN系
繊維として使用することができると考えられる。
【0031】
【実施例】以下に本発明の理解を容易にするため実施例
を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発
明の要旨はこれらにより限定されるものではない。な
お、実施例中、部及び百分率は特に断りのない限り重量
基準で示す。なお、実施例において記述する平均細孔
径、透明性、染料吸着状態および平均細孔径減少率は下
記の方法で測定したものである。 (1)平均細孔径(Å) 島津ーマイクロメリティックス ポアサイザー 931
0形 を使用して、繊維内の平均細孔径を測定した。 (2)透明性 ジメチルフタレートにエチルアルコールを添加して、屈
折率を1.506(アクリル繊維と同じ屈折率)に調整
した液に繊維を浸漬させて透明状態の観察を実施した
(繊維内部が緻密化している或いは繊維の細孔が互いに
連結し且つ繊維表面に連通している場合は透明に見え、
繊維の細孔が互いに連結せず単独に存在する場合および
/または該細孔が繊維表面に連通していない場合は溶液
が白濁して見える)。透明に見える場合は○、白濁して
見える場合は×で表示する。 (3)染料吸着状態 マエダ化成(株)製クリスタルバイオレットブルーを用
いて濃度1000ppm 溶液に調整し、繊維を室温(20
℃)で該溶液に30分間浸漬して染料の吸着状態を顕微
鏡で観察した(繊維の細孔が互いに連結せず単独に存在
する場合および/または該細孔が繊維表面に連通してい
ない場合は染料が繊維内に浸透しない)。染料が繊維内
に浸透している場合は○、染料が繊維内に浸透していな
い場合は×で表示する。 (4)平均細孔径減少率(%) 熱処理実施前の試料と、乾熱180℃×2時間処理実施
後の試料とを上記(1)平均細孔径測定方法により測定
を行い、下記数2により求める。
【0032】
【数2】
【0033】但し、D ;平均細孔径減少率(%) D1;熱処理実施前平均細孔径(μ) D2;熱処理実施後平均細孔径(μ)
【0034】実施例 1 表1に示すようにAN、アクリル酸メチル(MA)及び
メタアリルスルホン酸ソーダ(MAS)を用いて重合体
組成を種々変化して作成したNo.1〜No.7のAN
系重合体を用い、それぞれロダン酸ソーダ水溶液に溶解
して紡糸原液を作成した。これらの紡糸原液を用いて、
紡糸を行い7種類のAN系繊維を作成した。凝固は5℃
の12%ロダン酸ソーダ水溶液中で行い、次いで水洗、
10倍延伸を施し、得られた未乾燥繊維を130℃×1
0分間の条件でスチームを用いて湿熱処理を行い、さら
に100℃で20分間乾燥して7種類のAN系繊維を作
成した。各々のAN系繊維の性能を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】次いで、透明性および染料吸着状態で良好
な結果を示したNo.4、5、6および7について下記
に示す架橋処理を施した。繊維10grを3%ヒドラジ
ン水溶液に浸漬し、100℃×1.5時間処理を行った
後、水洗を実施して80℃で乾燥を行い、多孔質繊維を
作成した。作成した繊維を60℃のジメチルホルムアミ
ドを用いて、不溶性である即ち架橋されていることを確
認した。該繊維を乾熱処理を行った後、平均細孔径を測
定した結果を表2のNo.8〜11に示す。併せて、上
記で作成したNo.3に同上の処理を行ったNo.12
および架橋処理前のNo.5に架橋処理を施すこと無く
乾熱処理したNo.13を表2に併記する。
【0037】
【表2】
【0038】表2に示したように、本願発明であるN
o.4,5,6および7からの試料であるNo.8〜1
1は、透明性、染料吸着状態が良好であることを保持
し、且つ細孔径が保持されていることが明瞭に理解され
る。また、AN%が本願発明の範囲を外れるNo.3か
らの試料No.12、架橋構造を導入していないNo.
5からの試料No.13はいずれも乾熱処理で細孔形態
の保持性が認められない。
【0039】実施例2 実施例1のNo.5と同一の条件で作成した未乾燥繊維
を用いて、表3に示す温度で各々湿熱処理を10分間行
い、100℃で20分間乾燥してNo.14〜18のA
N系繊維を作成した。各々のAN系繊維の性能を表3に
示す。
【0040】
【表3】
【0041】表3に示したように、本願発明の湿熱処理
範囲内であれば、良好な透明性および染料吸着状態を示
すことが理解される。湿熱処理温度が低い場合には充分
な細孔形態が発現せず、さらに繊維乾燥時に細孔が閉塞
することから連通した細孔が得られず、また該温度が本
願発明の範囲を越える場合にはAN系繊維が形態を保つ
ことができない。
【0042】
【発明の効果】本発明によって得られる多孔質AN系繊
維は、従来の吸水性繊維などとは異なる特異な多孔質構
造に起因して多くの用途に採用される。さらに、多孔質
構造を形成する細孔が互いに連結し且つ繊維表面に連通
してなり、しかも耐熱性を有することから繊維形態およ
び繊維細孔形態の保持性を有し、以て殺虫剤、抗菌剤、
土壌改良剤等種々の薬剤を含浸、担持させることも可能
であり、また吸着剤、触媒担体等のデバイスとしても適
用することができ、各種担持用素材分野に展開できるこ
とは特筆すべき効果である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // D06M 101:28

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 95重量%以上のアクリロニトリルを結
    合含有するアクリロニトリル系重合体を湿式紡糸して得
    られる延伸後未乾燥繊維を120〜150℃の温度で湿
    熱処理を行った後、架橋処理することにより得られる多
    孔質構造を有する繊維であって、該多孔質構造を構成す
    る細孔は平均細孔径が100〜6000Åで、該細孔は
    連結し且つ繊維表面に連通してなり、乾熱180℃で2
    時間処理した後の平均細孔径の減少率が10%以下であ
    ることを特徴とする多孔質アクリロニトリル系繊維。
JP5329711A 1993-11-30 1993-11-30 多孔質アクリロニトリル系繊維 Pending JPH07150471A (ja)

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