JPH07144466A - 記録シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 印刷画面が鮮明かつ高濃度で、高湿雰囲気下
においても印刷画面が滲んだり、表面のべとつきが生じ
ない記録シートを提供する。 【構成】 下記の特性（Ａ）〜（Ｃ）を備えたカルボキ
シメチルセルロースを主成分とする記録層を備えた記録
シートである。 （Ａ）カルボキシメチルセルロース中の遊離カルボン酸
の占める割合が、カルボン酸ナトリウムに対して０．１
〜２０重量％。 （Ｂ）エーテル化度が０．４５以上。 （Ｃ）２％水溶液粘度が１０００ｃＰ以下。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、インクジェット方式
用等の印字，複写に用いられる記録シートに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】一般に、インクジェット方式による印
字，複写等に用いられる転写用の記録シートは、基材と
基材面上に設けられた記録層とから構成される。上記記
録層形成用材料としては、例えば、澱粉類、ポリビニル
アルコール類、セルロース系の水溶性化合物、天然水溶
性ガム類、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸類、ポ
リエチレンオキシド類、ポリビニルピロリドン等があげ
られる。そして、上記記録層形成材料を用いて形成され
た記録層に水溶性インクを吸収させることにより印字，
複写が行われる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
記録層形成材料により形成された記録層では、多色イン
クの濡れ不良，吸収性不良のために、異色インクの混色
や飛散，流れ出しによる汚れが発生することがある。ま
た、高湿度下において、印刷画面が滲んだり、画面表面
がべとついたりするという問題が生じ、未だ満足のいく
記録シートが得られていないのが実情である。

【０００４】この発明は、このような事情に鑑みなされ
たもので、印刷画面が鮮明かつ高濃度で、高湿雰囲気下
においても印刷画面が滲んだり、表面のべとつきが生じ
ない記録シートの提供をその目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、この発明の記録シートは、カルボキシメチルセルロ
ースを主成分とする記録層を備えた記録シートであっ
て、上記カルボキシメチルセルロースが下記の特性
（Ａ）〜（Ｃ）を備えているという構成をとる。 （Ａ）カルボキシメチルセルロース中の遊離カルボン酸
の占める割合が、カルボン酸ナトリウムに対して０．１
〜２０重量％。 （Ｂ）エーテル化度が０．４５以上。 （Ｃ）２重量％水溶液粘度が１０００ｃＰ以下。

【０００６】

【作用】すなわち、この発明者は、印刷画面が鮮明かつ
高濃度で、高湿雰囲気下においても印刷画面が滲んだ
り、表面のべとつきが生じない記録シートを得るため
に、シートの記録層を形成する形成材料を中心に各種化
合物について研究を重ねた。その結果、前記に示すよう
な特性（Ａ）〜（Ｃ）を備えたカルボキシメチルセルロ
ース（以下「ＣＭＣ」と略す）を記録層形成材料として
用いると、所期の目的が達成されることを見出しこの発
明に到達した。

【０００７】つぎに、この発明を詳しく説明する。

【０００８】この発明の記録シートは、基材と、上記基
材表面に形成される記録層とから構成される。

【０００９】上記基材としては、特に限定するものでは
なく従来公知のもの、例えば、記録紙等の基材となる紙
製基材，ＯＨＰ（オーバーヘッドプロジェクター）シー
ト等の基材となる高分子材料製基材等があげられる。

【００１０】上記紙製基材としては、針葉樹晒クラフト
パルプ（ＮＢＫＰ），針葉樹晒亜硫酸パルプ（ＮＢＳ
Ｐ），広葉樹晒クラフトパルプ（ＬＢＫＰ），広葉樹晒
亜硫酸パルプ（ＬＢＳＰ）等の晒化学パルプに、必要に
応じて機械パルプ，半機械パルプ，澱粉，ポリアクリル
アミド樹脂およびこの誘導体，メラミンホルムアルデヒ
ド樹脂，尿素ホルムアルデヒド樹脂等の紙力増強剤、強
化ロジン合成ポリマー系またはアルキルケテンダイマー
等のサイズ剤、硫酸バンドその他の定着剤、タルク，ク
レー，重質炭酸カルシウム，軽質炭酸カルシウム，水酸
化アルミニウム，天然または合成珪酸塩，酸化チタン等
の無機質充填剤、粉末状の尿素ホルムアルデヒド樹脂等
の有機充填剤を添加し、公知の方法により抄造したもの
等があげられる。さらに、上記抄造したものに必要に応
じて酸化澱粉，その他の紙力増強剤を外添したものを使
用することもできる。なお、紙製基材自身の組成につい
ては特に限定するものではない。

【００１１】上記高分子材料製基材において、例えばベ
ースフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート系
等の通常のポリエステルフィルムを用いることができ
る。また、記録層形成材料となるＣＭＣとの接着性を考
慮して種々の他種ポリマーを混合したものからなるフィ
ルムを用いてもよいし、他種ポリマーと共重合させたも
のからなるフィルムを用いてもよい。そして、上記フィ
ルム表面を、化学薬品で表面処理したり、ガス火炎で酸
化処理したり、コロナ放電で処理する等によって表面処
理して、記録層との接着性の改善を向上したものも使用
することができる。

【００１２】さらに、他の透明性フィルム、例えばポリ
オレフィン，ポリアミド，ポリエステルアミド，ポリカ
ーボネート等の一般的なものは全て用いることができ
る。

【００１３】上記基材表面に形成される記録層形成材料
は、ＣＭＣを主成分とするものである。そして、上記主
成分となるＣＭＣは、通常、粉末状であり、下記の特性
（Ａ）〜（Ｃ）を備えていなければならない。なお、こ
の発明において、主成分とするとは主成分のみからなる
場合も含める趣旨である。 （Ａ）ＣＭＣ中の遊離カルボン酸の占める割合が、カル
ボン酸ナトリウムに対して０．１〜２０重量％。 （Ｂ）エーテル化度が０．４５以上。 （Ｃ）２重量％水溶液粘度が１０００ｃＰ以下。

【００１４】上記特性（Ａ）〜（Ｃ）において、特性
（Ｂ）のエーテル化度は０．６〜３．０の範囲に設定す
ることが特に好ましい。すなわち、特性（Ａ）におい
て、遊離カルボン酸の占める割合が、カルボン酸ナトリ
ウムに対して０．１重量％（以下「％」と略す）未満で
は耐水性に劣るようになり、２０％を超えると水に対す
る溶解性が低下して高濃度の水溶液が得られない。ま
た、特性（Ｂ）において、エーテル化度が０．４５未満
では親水性が低いため、水に溶解しなくなったり、記録
時にインクの吸収速度が遅くなって画像品質が劣化す
る。そして、特性（Ｃ）において、２％水溶液粘度が１
０００ｃＰを超えると、高濃度の水溶液で処理して親水
性を高める際に、気泡が抜けきらない等の取扱い性に劣
る。また、被膜形成時に非常に薄い膜しか得られるない
からである。このように、上記３つの特性（Ａ）〜
（Ｃ）を全て備えたＣＭＣを主成分とする記録層形成材
料を用いることにより従来では得られなかった優れた印
刷画面が得られるようになる。

【００１５】上記記録層形成材料には、主成分となるＣ
ＭＣ以外に、必要に応じて他の添加剤、例えば酸化澱
粉，ポリビニルアルコール，ポリアクリルアミド，メチ
ルセルロース，ヒドロキシエチルセルロース，ヒドロキ
シプロピルセルロース等の高分子水溶液、重質炭酸カル
シウム，軽質炭酸カルシウム，タルク，カオリン，水酸
化アルミニウム，合成珪酸塩等の顔料を適宜配合するこ
ともできる。

【００１６】この発明の記録シートは、例えばつぎのよ
うにして製造することができる。すなわち、まず、ＣＭ
Ｃおよび必要に応じて他の添加剤を適宜配合し、水に溶
解させてＣＭＣを主成分とする水溶液を作製する。つい
で、基材に上記ＣＭＣを主成分とする水溶液を塗布す
る。そして、乾燥させ基材表面に記録層を形成すること
により目的とする記録シートを製造することができる。
上記塗布厚みは５〜３０μｍ（固形分）に設定すること
が好ましい。なお、基材がＯＨＰシート等透明性を考慮
する必要を有する場合には、他の添加剤として顔料を用
いることは、光の散乱が生じ好ましくない。したがっ
て、上記顔料を除去したＣＭＣを主成分とする水溶液を
用いて塗布が行われる。

【００１７】上記ＣＭＣを主成分とする水溶液の濃度
は、１〜２０％の範囲に設定することが塗布工程の容易
性等から好ましい。また、上記他の添加剤のみを下塗り
して、ＣＭＣ水溶液を上塗りするというように、２層に
分けて塗工してもよい。そして、上記塗布方法として
は、特に限定するものではなく従来公知の方法、例えば
ブレード，エアナイフ，ロールコーター等の塗工機を用
いてよいし、サイズプレスを用いてもよい。

【００１８】このようにして製造された記録シートを、
高温処理してＣＭＣを部分的に架橋させてもよい。この
ように、ＣＭＣを部分的に架橋させると、ＣＭＣの架橋
部分は親水性を保持してインクの吸水性は良好でありな
がら、異色インクの流れ出し、混色を制御しつつ印刷後
の乾燥が速められる効果がより向上し特に好ましい。上
記ＣＭＣの架橋度は、ＣＭＣ中の遊離カルボン酸の含有
量が多ければ多いほど高くなる傾向がある。

【００１９】上記ＣＭＣを部分的に架橋させるための工
程として、加熱処理工程があげられる。上記加熱処理条
件としては、具体的には、１００℃で０．５〜５時間、
１５０℃で０．２〜２時間の条件があげられる。

【００２０】この発明の記録シートにおいて、記録層の
形成態様としては、基材表面に記録層が設けられた２層
構造の態様はもちろん、前述のように、記録層が下塗り
層と上塗り層の２層から構成される態様、基材表面に記
録層が設けられ、かつ基材中に記録層形成材料が含浸さ
れた態様があげられる。

【００２１】

【発明の効果】以上のように、この発明の記録シートに
は、前記特性（Ａ）〜（Ｃ）を備えたカルボキシメチル
セルロースを主成分とする記録層が設けられている。こ
のため、上記特殊な記録層はインクの濡れ性に優れ、吸
収性が向上した結果、異色インクの混色や飛散，流れ出
しによる汚れが生じない。しかも、高湿度雰囲気下にお
いて、印刷画面が滲んだり、画面表面がべとつくことも
無くなる。したがって、例えば、この発明の記録シート
を用いてのインクジェット方式によるカラーコピー等で
は、従来の記録シートでは得られ難かった画像、すなわ
ち、高画像濃度で、かつ鮮明な色調の画像が得られる。

【００２２】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。

【００２３】まず、実施例に先立って、下記の表１に示
す１１種類のＣＭＣ（ａ〜ｋ）を準備した。

【００２４】

【表１】

【００２５】

【実施例１〜７、比較例１〜４】紙製基材としてＬＢＫ
Ｐ９０重量部（以下「部」と略す）とＮＢＫＰ１０部を
叩解し、これにタルク７部，ロジン０．６部，硫酸バン
ド２．２部を添加して長網抄紙機で抄紙して秤量６５ｇ
／ｍ² とした。ついで、これに酸化澱粉を用いてサイズ
プレスしてコート原紙を作製した。一方、上記表１に示
すＣＭＣおよび下記の表２および表３に示す各種添加剤
を同表に示す割合で配合し、水に溶解させることにより
同表に示す水溶液濃度の記録層形成材料（ＣＭＣを主成
分とする水溶液）を作製した。そして、上記紙製基材表
面に、表２および表３に示す厚みとなるよう記録層形成
材料をエアーナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させ
た（乾燥条件：８０℃×１時間）。さらに、実施例４〜
７、比較例２〜３については、１３０℃×１時間の高温
条件下でＣＭＣを部分的に架橋させた。このようにし
て、目的とする記録シートを製造した。なお、下記の表
２および表３における配合量，添加量は固形分換算にお
ける値である。

【００２６】

【表２】

【００２７】

【表３】

【００２８】

【実施例８〜１４、比較例５〜８】紙製基材である上記
実施例１のコート紙に代えて厚み１００μｍのポリエス
テルフィルム（コロナ放電処理済み）を用いた。それ以
外は実施例１と同様にして目的とする記録シートを製造
した。上記製造工程において、実施例１１〜１２、比較
例６〜７については、上記と同様ＣＭＣを部分的に架橋
させた。なお、ＣＭＣの種類，他の添加剤，水溶液濃
度，塗布量を下記の表４および表５に示す。また、下記
の表４および表５における配合量，添加量は固形分換算
における値である。

【００２９】

【表４】

【００３０】

【表５】

【００３１】上記実施例品および比較例品の記録シート
を用いて、通常のインクジェット方式によるカラーコピ
ーを行い、得られたシートについて、多色インクの吸収
性，コピー画像の鮮明度，多色インクの流れ出し，高湿
度雰囲気下での複写画面のべとつきの有無を観察・評価
した。その結果を後記の表６〜表９に示す。なお、上記
各特性は下記の方法に従って評価した。

【００３２】〔多色インクの吸収性〕ドットを同一部分
に３回印字した時の画像の鮮明の度合いを目視により判
定した。その結果、鮮明な画像が得られたものを○、不
鮮明な画像のものを×として表示した。

【００３３】〔コピー画像の鮮明度〕インクジェット方
式による記録画像の色の鮮明の度合いを目視により判定
した。その結果、鮮明な画像が得られたものを○、不鮮
明な画像のものを×として表示した。

【００３４】〔多色インクの流れ出し〕ドットを同一部
分に３回印字し、その結果、目視により観察して、被記
録材（記録シート）表面上にインクの流出が認められた
ものを×、認められなかったものを○として表示した。

【００３５】〔高湿度雰囲気下での複写画面のべとつ
き〕インクジェット方式によるカラーコピーを行った記
録シートを、３０℃×９５％相対湿度の雰囲気下で２４
時間放置した。その後、記録シート表面を触指した。そ
の結果、タック感があったものを×、タック感の無かっ
たものを○として表示した。

【００３６】

【表６】

【００３７】

【表７】

【００３８】

【表８】

【００３９】

【表９】

【００４０】上記表６〜表９の結果から、実施例品は、
全てインク吸収性に優れ、鮮明度も高く、多色インクの
流れ出しおよびべとつきも発生しなかった。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 カルボキシメチルセルロースを主成分と
   する記録層を備えた記録シートであって、上記カルボキ
   シメチルセルロースが下記の特性（Ａ）〜（Ｃ）を備え
   ていることを特徴とする記録シート。 （Ａ）カルボキシメチルセルロース中の遊離カルボン酸
   の占める割合が、カルボン酸ナトリウムに対して０．１
   〜２０重量％。 （Ｂ）エーテル化度が０．４５以上。 （Ｃ）２重量％水溶液粘度が１０００ｃＰ以下。
2. 【請求項２】 カルボキシメチルセルロースが、部分的
   に架橋されている請求項１記載の記録シート。