JPH07138789A - プレス成形性およびパウダリング性に優れたZn−Ni系合金めっき鋼板 - Google Patents

プレス成形性およびパウダリング性に優れたZn−Ni系合金めっき鋼板

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JPH07138789A
JPH07138789A JP28672893A JP28672893A JPH07138789A JP H07138789 A JPH07138789 A JP H07138789A JP 28672893 A JP28672893 A JP 28672893A JP 28672893 A JP28672893 A JP 28672893A JP H07138789 A JPH07138789 A JP H07138789A
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勝俊 圓山
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は優れたプレス成形性を有し、自動車
や家電などにおける難成形品用の表面処理鋼板として好
適なZn−Ni系合金めっき鋼板を提供する。 【構成】 めっき表面に複数の凹部を設け、その凹部体
積を1mm2 当り0.8〜7.5×106 μm3 とし、
全めっき厚みの平均Ni含有率が9〜15重量%であ
り、かつ表面層のNi含有率が平均Ni含有率の1.0
1〜1.75倍であり、さらに1cm当り100〜50
00本のミクロクラックが形成されたZn−Ni系合金
めっき層を鋼板の両面もしくは片面に有することを特徴
とするプレス成形性およびパウダリング性に優れたZn
−Ni系合金めっき鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れたプレス成形性とパ
ウダリング性を有し、自動車や家電製品における難成形
品に用いられる表面処理鋼板として好適なZn−Ni系
合金めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】寒冷地帯における冬期の道路凍結防止用
の散布岩塩による自動車の車体腐食対策として、多種多
様な表面処理鋼板が使用されている。最も単純な表面処
理鋼板としては亜鉛めっき鋼板が挙げられるが、自動車
用途では高い耐食性が要求されるため、めっき量を厚く
する必要があり、溶接性や加工性など車体組立段階での
問題を生じる。そこでめっき量が薄くても高い耐食性を
有する、多くの合金めっきが提案され、その中でもF
e、Co、Niといった鉄族金属を合金成分として含有
するZn系合金めっきは、耐食性のみならず溶接性や加
工性が良好なことが認められ、広く実用されている。
【0003】一方、自動車や家電製品では、ニーズの多
様化に伴い、より高度で多彩な成形性が要求されるよう
になり、成分設計や圧延、焼鈍条件を駆使した材質の造
り込み技術により種々の成形特性を持つ鋼板が開発され
ている。しかしながら、めっき鋼板の場合には、単に成
形に優れる鋼板上にめっき皮膜を付与しても、母材であ
る鋼板とめっき皮膜の物性が著しく異なるため、鋼板自
体の成形特性が実際の成形段階では十分に発揮されない
ことがある。これはプレス型に実際に接触する面がめっ
き皮膜となりその特性の影響が大きくなるためであり、
めっき鋼板を深絞りや複雑な形状が要求される難成形品
に適用しようとすると、割れ、型かじりなど予期せぬ成
形不良が発生しやすい。このような問題に対して、特開
平2−274853〜6号公報の如く、合金化溶融亜鉛
めっき鋼板において鋼板表面の粗度を予め調節して成形
性の向上を図った技術や、特開平4−214877号公
報の如く亜鉛系めっき鋼板の表面に無機化合物を付与し
て摺動性を向上させる技術が開示されているが、いずれ
も満足できるレベルには達していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、Zn系
合金めっき鋼板は優れた耐食性を有しながら、プレス成
形性の点で用途が制約され、十分に活用されていないの
が現状である。特にZn−Ni系合金めっき鋼板は薄め
っきで耐食性が優れるため、自動車や家電製品への用途
拡大ニーズが大きく、プレス成形性の向上が望まれてい
る。本発明は、自動車,家電用途を中心とする高度なプ
レス成形性を満足できるZn−Ni系合金めっき鋼板を
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】Zn−Ni系合金めっき
鋼板表面に複数の凹部を設け、該凹部の最大さし渡し長
さをdとした時の断面積をS、凹部深さをh、鋼板板厚
をt、鋼板表面1mm 2 当りの凹部個数をnとした時、
鋼板表面1mm2 当り凹部体積の合計VをV=S×h×
nで表わすVが0.8×106 μm3 〜7.5×106
μm3 を満足し、全めっき厚みの平均Ni含有率が9〜
15重量%であり、かつ全めっき厚みの1〜20%の厚
みでなる表面層のNi含有率が平均Ni含有率の1.0
1〜1.75倍であり、さらに1cm当り100〜50
00本のミクロクラックが形成されたZn−Ni系合金
めっき層を鋼板の両面もしくは片面に有することを特徴
とするプレス成形性およびパウダリング性に優れたZn
−Ni系合金めっき鋼板にある。
【0006】
【作用】本発明のプレス成形性に優れたZn−Ni系合
金めっき鋼板は、めっき表面に複数の凹部を設け、その
凹部体積を1mm2 当り0.8〜7.5×106 μm3
とし、合金の主成分であるNiの平均含有率が9〜15
重量%であり、その表面層のNi含有率が平均Ni含有
率より高目になるように改質されている。まためっき皮
膜にはミクロクラックが形成されている点に特徴があ
る。
【0007】プレス成形性に対しては、表面層の改質だ
けでも効果は大きいが、本発明のように、さらにミクロ
クラックを付与するとさらに効果が大きく、例えば円筒
成形試験において、より深い絞り領域まで効果が発揮さ
れるようになる。このようなめっき皮膜に改質する方法
としては、Zn−Ni系合金めっきを施した後、酸性水
溶液中で浸漬もしくはアノード電解によりめっき皮膜の
Znを優先溶解させる方法が挙げられるが、ミクロクラ
ック密度を増加させるために素地鋼板の材質に影響を及
ぼさぬ範囲で軽いロール圧下を組合せてもよい。
【0008】以下、本発明を図面を用いて詳細に説明す
る。図1は本発明によるめっき鋼板の片面の縦断面を模
式的に示したものである。また図2は図1の凹部1の配
列についてめっき鋼板表面の平面を模式的に示したもの
であるが、まず本発明に至るまでの研究結果について述
べる。図3はZn−Ni合金めっき鋼板の平均Ni含有
率とプレス成形性の関係について示すものである。試験
条件は以下の通りである。めっき原板としてTi添加極
低炭素鋼を用い、これに付着量20g/m2 、Ni含有
率5〜20重量%のZn−Ni合金めっきを施し、プレ
ス成形性試験に供した。
【0009】プレス成形性試験としては、ポンチ径50
mm、絞り比2.2の条件で低粘度油を塗布して円筒プ
レス成形を連続10個行ない、割れ、ポンチ荷重、及び
プレス品の側壁テーピングによるパウダリング程度によ
り評価した。 5:割れが無くポンチ荷重はほぼ原板レベル。パウダリ
ングの発生なし。 4:割れが無くポンチ荷重は原板よりやや高い。パウダ
リングは微小。 3:割れが無くポンチ荷重は原板よりかなり高い。パウ
ダリングはやや多い。 2:割れが6個以下。パウダリングは多い。 1:割れが7個以上。パウダリングは顕著に多い。
【0010】図3について説明すると、プレス成形性は
Ni含有率に依存し、Ni10%未満では、めっき層が
軟らかいために工具との疑着が強くなり、摩擦抵抗が大
きくなるため割れが発生し、またNi15%超では成形
性は良好であるが、パウダリングが多くなるために押し
疵が生じ易く、好ましくない。Ni10〜15%では、
ポンチ荷重が原板より高いレベルであるが、割れがない
ため実用上の問題はない。
【0011】図4はZn−Ni合金めっき鋼板の表面凹
部体積とプレス成形性との関係を示すものであり、プレ
ス成形性試験は図3で実施のものと同様である。図4を
説明すると、プレス成形性はめっき表面凹部の体積に依
存し、めっき表面1mm2 当りの凹部の体積を0.8〜
7.5×106 μm3 の範囲とすることが良い。めっき
表面1mm2 当りの凹部の体積を0.8×106 μm3
超としたのは、それ未満では潤滑剤の確保が少なく、成
形性および型かじりに対する効果が小さいからであり、
また7.5×106 μm3 未満としたのは、それより超
では突起が多くなるため、突起の損傷によるめっき粉の
発生により、押し疵が生じるために好ましくない。
【0012】次に本発明の最大の特徴である表面層の改
質およびミクロクラックの効果について説明する。めっ
き皮膜の改質状態は、オージェ電子分光分析法と電子顕
微鏡観察により改質程度を確認した。先に表面層のめっ
き皮膜の改質について説明する。図5はめっき皮膜の付
着量が20g/m2 、平均Ni含有率は9〜15重量
%、めっき表面凹部の体積が0.8×106 μm3
7.5×106 μm3 における表層部のNi%(N
S )と全めっき厚の平均Ni%(NiB )の比が0.
4〜2.3とプレス成形性の関係を示すものであり、プ
レス成形性試験は図3で実施のものと同様である。
【0013】図5を説明すると、プレス成形性はNiP
が1.01〜1.75の範囲が良い。NiP を1.01
以上としたのは、それ未満ではめっき表層部の硬化上昇
が小さくプレス成形性の効果が小さい、また1.75以
下としたのは、それ超ではプレス成形性は良いが、パウ
ダリングが増加し、好ましくない。なお、より好ましい
範囲は、表面層厚みは全めっき厚みの5〜15%、表面
層のNi含有率は1.1〜1.5倍である。次にミクロ
クラックについて説明する。
【0014】図6はめっき皮膜の付着量が20g/m
2 、平均Ni含有率は9〜15重量%、めっき表面凹部
の体積が0.8×106 μm3 〜7.5×106 μm
3 、表層部のNi%(NiS )と全めっき厚の平均Ni
%(NiB )の比(NiP )が1.05〜1.7におけ
るミクロクラック密度とプレス成形性の関係を示すもの
であり、プレス成形性試験は図3で実施のものと同様で
ある。
【0015】図6から明らかなように、ミクロクラック
密度が100本未満ではプレス成形性の向上効果がほと
んど無い。逆に5000本超の領域ではプレス成形性は
向上するものの耐食性が低下する。このような理由から
ミクロクラックは1cm当り100〜5000本と限定
される。より好ましい範囲は500〜2000本であ
る。また平均Ni含有率との関係で言えば、9〜15重
量%の範囲がプレス成形性と耐食性を両立できる良好範
囲である。なお、ミクロクラックの形状、巾、深さには
特に制約は無く、1cm長さを横切るミクロクラックの
本数が所定範囲にあればよい。
【0016】本発明の対象は、平均Ni含有率が9〜1
5重量%であり、上記のような改質された表面層を有す
るZn−Ni系合金めっき鋼板であり、めっき成分とし
てZn、Niの他に、例えばCo、Fe、Mn、Cr、
Pb、Snなどの金属;SiO2 、Al2 3 、BaC
rO4 などの難溶性の無機化合物;あるいは有機物など
が1種もしくは複数含有されたものを含む。Ni以外の
成分の合計は5重量%以下が好ましく、この範囲であれ
ば本発明の効果は何ら支障なく発揮される。また本発明
においては、めっき付着量は特に制約されるものではな
いが、耐食性、製造コストの点から10〜60g/m2
が実用的な範囲である。本発明の如き、改質された表面
層を有するZn−Ni系合金めっき皮膜は鋼板の片面の
み、あるいは両面に形成されてよく、成形対象に応じて
適宜選択できる。
【0017】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明は、Zn−Ni
系合金めっき鋼板の表面をNi含有率の高い表面層に改
質することにより、Zn−Ni系合金めっきが本来有す
る優れた耐食性を何ら損なうこと無く、そのプレス成形
性およびパウダリング性を向上させることに成功したも
のであり、Zn−Ni系合金めっき鋼板の用途を自動車
や家電製品の難成形部品などに拡大でき工業的に実用価
値が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるZn−Ni系合金めっき鋼板の縦
断面、
【図2】図1の凹部の配列の一例を示す図、
【図3】Zn−Ni系合金めっき鋼板の平均Ni含有率
とプレス成形性およびパウダリング性の関係を示す図、
【図4】Zn−Ni合金めっき鋼板の表面凹部体積とプ
レス成形性およびパウダリング性との関係を示す図、
【図5】Zn−Ni合金めっき鋼板の表層部のNi%
(NiS )と全めっき厚の平均Ni%(NiB )の比
(NiP )に対するプレス成形性およびパウダリング性
との関係を示す図、
【図6】Zn−Ni合金めっき鋼板の表層部における1
cm当りのミクロクラック本数とプレス成形性およびパ
ウダリング性の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 本発明によるめっき鋼板の凹部 t めっき鋼板の板厚 h めっき鋼板の凹部の深さ d めっき鋼板の凹部の最大さし渡し長さ S めっき鋼板の凹部の断面積 P1 めっき鋼板の圧延方向に隣接する凹部間中心距離 P2 めっき鋼板の圧延方向の列間中心距離
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23C 30/00 B C25D 5/36 (72)発明者 圓山 勝俊 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 藤井 将之 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zn−Ni系合金めっき鋼板表面に複数
    の凹部を設け、該凹部の最大さし渡し長さをdとした時
    の断面積をS、凹部深さをh、鋼板板厚をt、鋼板表面
    1mm2 当りの凹部個数をnとした時、鋼板表面1mm
    2 当り凹部体積の合計VをV=S×h×nで表わすVが
    0.8×106 μm3 〜7.5×10 6 μm3 を満足
    し、全めっき厚みの平均Ni含有率が9〜15重量%で
    あり、かつ全めっき厚みの1〜20%の厚みでなる表面
    層のNi含有率が平均Ni含有率の1.01〜1.75
    倍であり、さらに1cm当たり100〜5000本のミ
    クロクラックが形成されたZn−Ni系合金めっき層を
    鋼板の両面もしくは片面に有することを特徴とするプレ
    ス成形性およびパウダリング性に優れたZn−Ni系合
    金めっき鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009097030A (ja) * 2007-10-15 2009-05-07 Toyota Motor Corp 鉛フリーめっき層を有するめっき基材

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