JPH07138649A - 高炭素鋼板の加工方法 - Google Patents

高炭素鋼板の加工方法

Info

Publication number
JPH07138649A
JPH07138649A JP28907993A JP28907993A JPH07138649A JP H07138649 A JPH07138649 A JP H07138649A JP 28907993 A JP28907993 A JP 28907993A JP 28907993 A JP28907993 A JP 28907993A JP H07138649 A JPH07138649 A JP H07138649A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
annealing
high carbon
carbon steel
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP28907993A
Other languages
English (en)
Inventor
Kiyoshi Fukui
清 福井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP28907993A priority Critical patent/JPH07138649A/ja
Publication of JPH07138649A publication Critical patent/JPH07138649A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【目的】自動車用等の加工原板として高炭素鋼板を使用
しても、成形加工に際し優れた成形性を確保するととも
に、加工後の熱処理によって得られる高強度特性によっ
て優れた耐摩耗性を発揮する高炭素鋼製品の製造プロセ
スを提供する。 【構成】重量%で、C:0.20〜1.20%、Si:0.05〜1.00
%、Mn:0.20〜2.00%、Cr:1.20%以下および残部がFe
および不可避的不純物からなる熱延鋼板または、更に圧
下率20%以上で冷間圧延を施した冷延鋼板を、 600〜 7
80℃の範囲で焼鈍して球状化セメンタイトと直径が20μ
m以下のフェライト粒からなる組織とし、次いで 300〜
600℃に加熱しながら成形加工したのち、焼入れするこ
とを特徴とする高炭素鋼板の加工方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用等の高炭素鋼
板の曲げ、深絞り等の加工方法に関し、特にセメンタイ
トの球状化焼鈍と 300℃以上に加熱しつつ成形加工を行
う温間加工の採用によって、成形性と耐摩耗性に優れた
高炭素鋼板の加工方法を提供することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】深絞り性や曲げ性とともに耐摩耗性が必
要とされる自動車用鋼板として、高炭素鋼鋼板が使用さ
れている。この高炭素鋼鋼板は、成形加工後の熱処理に
よって得られる高強度特性によって所期の耐摩耗性を達
成することができるが、同時に曲げ、深絞り等の成形加
工時にも鋼板の強度が高く、成形加工が困難である。そ
のため、鋼板の引張強度を低減させ、伸びを増大させ
て、加工時の成形性を確保するために、通常、熱間圧延
後、または冷間圧延後に、箱型炉を用いてセメンタイト
の球状化焼鈍を実施している。
【0003】焼鈍処理によって、鋼中のセメンタイトを
球状化、さらには粗大化しても、成形加工用の原板であ
る高炭素鋼板の引張強度を、十分に低減させることは困
難である。即ち、鋼板の強度は組織中のセメンタイトの
体積率に依存し、例えばC含有量が0.20〜1.20%の範囲
では、鋼板の引張強度(TS)は次式で表される(但
し、Si: 0.2%、Mn: 0.5%として、その他の影響は無
視した)。
【0004】 TS(N/mm2) = 325+375 ・C (%) ・・・ (1) (1)式から明らかなように、C含有量の増加に伴って
TSが上昇するので、フェライトおよびセメンタイトの
混合組織となる高炭素鋼板の場合に、成形性を確保する
ためにTSを400(N/mm2)以下へ低下させることは困難で
あった。従って、上記のように引張強度の低減に制限が
あることから、高炭素鋼板を用いて複雑な形状に成形加
工することは難しかった。
【0005】一方、高炭素鋼材を熱間鍛造によって加工
すれば、加工時の成形性は良好となり、複雑な形状への
成形加工が可能となるが、いわゆる相変態(γ→α)時
の変形等の影響で精密な加工が困難になる。そのため、
熱間鍛造による成形加工後、さらに加工物表面を切削す
る等の仕上げ加工が必要となり、加工コストが増加する
ことなる。また、熱間加工に伴う加熱によってエネルギ
ーコストが増大するという問題もある。
【0006】従来、熱間鍛造によらずに高炭素鋼の成形
性を確保する方法として、次のような提案がなされてい
るが、それぞれ問題点を含んでおり、広く利用されるま
でに至っていない。
【0007】 高炭素鋼中のC含有量を維持しなが
ら、引張強度を低減し、伸びを向上させる手段として黒
鉛化鋼板の提案がある(特開平4−124216号公報参
照)。これは、鋼中のMn、P、S等を低減したうえで、
B、Niの添加や冷間圧延を行った後に箱焼鈍をすること
によって、セメンタイトを黒鉛化してその体積率を低減
するというものである。しかし、この黒鉛化鋼板では、
加工製品を焼入れした後の鋼板の硬度はフェライト・セ
メンタイト鋼の硬度に近似したものとなるが、Mn等の合
金成分を抑制しているので焼戻し軟化抵抗が小さく、同
じ硬度のレベルであっても耐摩耗性が低くなる。
【0008】 0.45%炭素鋼を油焼入れして、マルテ
ンサイト組織としたのち、再加熱した状態で鍛造する、
いわゆる焼もどし温間鍛造によって、成形性を向上させ
る加工熱処理法が提案されている (塑性と加工、vol.2
4.No.271(1983-8)p.873〜 879)。しかし、薄鋼板の取
扱にあたっては、焼入れマルテンサイト組織の状態で
は、コイル状に巻き取ることができず、製品として運搬
および出荷等のハンドリングが難しくなることから、鋼
板の製造プロセスへの適用は困難である。
【0009】 球状化焼鈍した高炭素鋼(UHC鋼、
C:1〜2%含有)を、 600℃以上の高温で非常にゆっ
くりとした速度で加工することにより、高い成形性の超
塑性鋼が得られると報告されている (電気製鋼52、vol.
2(1981)p.73〜91、他) 。しかし、加工速度が極端に小
さいため、実用的な鋼板の成形加工法として採用はでき
ない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、自動
車用加工原板等として使用する高炭素鋼板において、曲
げ、深絞り等の成形加工に際し優れた成形性を確保する
とともに、加工後の熱処理によって得られる高強度特性
によって優れた耐摩耗性を発揮する高炭素鋼製品の製造
プロセスを確立することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の(1) 〜
(2) の高炭素鋼板の加工方法を要旨とする。
【0012】(1) 重量%で、C:0.20〜1.20%、Si:0.
05〜1.00%、Mn:0.20〜2.00%、Cr:1.20%以下および
残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、 6
00〜780℃の範囲で焼鈍して球状化セメンタイトと直径
が20μm以下のフェライト粒からなる組織とし、次いで
300〜 600℃に加熱しながら成形加工したのち、焼入れ
することを特徴とする高炭素鋼板の加工方法。
【0013】(2) 重量%で、C:0.20〜1.20%、Si:0.
05〜1.00%、Mn:0.20〜2.00%、Cr:1.20%以下および
残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、圧
下率20%以上で冷間圧延した後 600〜 780℃の範囲で焼
鈍して球状化セメンタイトと直径が20μm以下のフェラ
イト粒からなる組織とし、次いで 300〜 600℃に加熱し
ながら成形加工したのち、焼入れすることを特徴とする
高炭素鋼板の加工方法。
【0014】上記の(1) または(2) に記載の熱延鋼板の
Crは必要に応じて添加する成分であるが、添加する場合
は0.05〜1.20%の含有量とするのが望ましい。
【0015】
【作用】発明者らは、セメンタイトを球状化させた高炭
素鋼の温間加工を詳細に検討した結果、次の知見を得る
ことができた。
【0016】(1) 高炭素薄鋼板のセメンタイトを球状化
し、その周囲のフェライトの粒径を20μm以下とすれ
ば、前記の従来技術で提案があったようにマルテンサ
イト組織でなくとも、 300〜600 ℃の温度範囲で高い伸
びが得られ、成形性が向上する。また、この高い伸び
は、10mm/min程度の引張速度で得られ、従来技術と比
較して伸び値は低く、成形性はやや劣るものの、大きな
加工速度の適用が可能であり、実用的な加工方法として
採用できる。即ち、高炭素鋼板をどのような複雑な形状
でも加工できるという優れた成形は、セメンタイトの球
状化およびフェライト粒径の調整と、 300〜600 ℃の温
度範囲を採用した温間加工で可能となる。
【0017】(2) セメンタイトの球状化の促進とフェラ
イト粒の微細化、さらに板厚精度を向上させるために
は、焼鈍前に冷間圧延を実施するのが有効である。ま
た、成形加工後の熱処理によって最終製品の耐摩耗性を
向上させるには、Crを0.05〜1.20%添加するのが望まし
い。
【0018】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものであるが、高炭素鋼板である素材鋼の化学組成お
よび採用される製造プロセスでの製造条件の限定理由に
ついて、以下に説明する。なお、成分含有量に関する
「%」は「重量%」を示している。
【0019】A.素材鋼の化学組成 C: Cは、一般的に低いほど加工時の伸び、即ち、成
形性は向上する。しかし、本発明の特徴とする加工後の
熱処理によって耐摩耗性を確保するには、所定以上のC
の添加が必要となる。特に自動車用鋼板として耐摩耗性
を確保するために、焼入れ後の硬度をHv 350以上とする
必要があるので、その下限を 0.2%とした。また、C量
が 1.2%を超えると、加工温度を 300℃以上としても、
十分な伸びが得られないことから、その含有量の上限を
1.2%とする。
【0020】Si: 固溶硬化による伸びの劣化を抑える
ため、含有量の上限は 0.5%とする。一方、焼入れ後の
疲労寿命を劣化させる鋼中の酸化物を抑制するため、一
定量のSiは必要であるから、下限を0.05%とする。
【0021】Mn: Mnは、鋼の焼入れ性を向上させると
ともに、焼入れ後の転動疲労寿命を劣化させる鋼中のS
の抑制に有効である。このため、 0.2%以上含有させる
こととした。しかし、Mnは焼鈍による鋼中のセメンタイ
トの球状化を促進し、成形性を向上させるが、ある程度
以上含有すると成形性を劣化することから含有量の上限
は 1.0%とする。
【0022】Cr: Crは、セメンタイトを微細化し、引
張強度を上昇させるほか、焼入れ時にセメンタイトを安
定化させ、マルテンサイト組織中にセメンタイトを残
留、分散させる効果がある。このため、焼鈍時のフェラ
イト粒径の微細化と、焼入れ後の耐摩耗性の向上を図る
ために一定量の添加をすることが望ましい。この場合に
は、Cr含有量の下限は0.05%とする。これ未満では上記
の効果が十分でないからである。一方、 1.2%を超える
と、セメンタイトが微細化しすぎるため、焼鈍後の温間
加工によって高い伸びが得られないことから上限を 1.2
%とする。
【0023】不可避的な不純物であるPとSは、高温で
の粒界強度を確保するために低く抑える必要がある。従
って、Pは0.02%以下、Sは0.01%以下にすることが望
ましい。Nは、フェライト中への固溶硬化による成形性
の劣化を防止するために100ppm以下にすることが望まし
い。
【0024】B.製造プロセス (a) 冷間圧延および圧下率:焼鈍によるセメンタイトの
球状化と焼鈍後のフェライト粒径の微細化を図るには、
焼鈍の前に冷間圧延を実施するのが有効である。冷間圧
延を実施すると、熱延で得られたラメラー間隔の比較的
大きなパーライト組織のラメラーが分断され、球状化が
促進されるからである。但し、この場合において、20%
未満の圧下率では前記ラメラーの分断が十分になされ
ず、その後の焼鈍による球状化が十分に促進されないこ
とから、圧下率の下限を20%とする。しかし、熱延をし
たままで焼鈍する場合でも、所定のセメンタイトの球状
化とフェライト粒径の微細化が図れるので、必ずしも冷
間圧延を実施しなくても良い。
【0025】冷間圧延によって耳割れ等を生じるおそれ
がある場合には、熱延鋼板に軟化焼鈍を施してから冷間
圧延を行うのがよい。この場合の焼鈍においては、必ず
しもセメンタイトを球状化する必要がなく、 500℃以上
で焼鈍すれば十分である。
【0026】(b) 焼鈍条件:鋼中のセメンタイト組織を
球状化するには、 Ac1近傍の温度で長時間の均熱を行う
必要がある。本発明の方法では、球状化組織を確保する
ため焼鈍温度の下限を 600℃とする。 600℃未満では、
温間加工において十分な成形性が確保できないからであ
る(後述する図4参照)。また、焼鈍中のセメンタイト
のラメラー化を抑制するため焼鈍温度の上限を 780℃と
する(後述する図3参照)。ここで、セメンタイトのラ
メラー化とは、鋼が Ac3近傍またはそれ以上に加熱され
てオーステナイト化した後、冷却にともなって新たなラ
メラーパーライトが形成されることをいう。
【0027】均熱時間としては特に限定しないが、4時
間以上であって、24時間を超えると球状化作用が飽和す
ることから24時間以内とする。
【0028】(c) フェライトの粒径:高炭素鋼板のよう
にCを多く含む鋼において、鋼中のフェライト粒が粗大
化し過ぎると、温間加工によっても十分な伸びが得られ
ない。そこで、フェライトの粒径は20μmを上限とす
る。また、フェライトの粒径の下限については特に制限
はないが、本発明が規定する焼鈍条件では2μm程度と
なる。
【0029】フェライト粒径の上限は、鋼中のC含有量
の下限値と焼鈍条件のうち上限温度によって定められ
る。従って、フェライト粒径の上限20μmを確保するに
は、高炭素鋼板のC含有量の下限を 0.2%とし、焼鈍温
度の上限を 780℃とする必要がある。
【0030】(d) 温間加工温度:高炭素鋼板を温間加工
する温度は、 300〜 600℃とする。 300℃未満では引張
強度、伸びともに常温でのそれらと殆ど変わらない。 3
00℃以上に保持すると顕著に軟質化し、高い伸びが得ら
れる。このことから、鋼板を加熱する温度の下限は 300
℃とした。また、加熱温度が 600℃を超えると、Mn、Cr
等の合金成分の含有が少ない鋼板の場合に、加工時の伸
びが劣化することがあり、このため加熱温度の上限を 6
00℃とした。
【0031】加熱方式としては、製品の形状に応じて雰
囲気加熱、高周波加熱および通電加熱等のいずれの方式
も適用でき、特に加熱方式を限定する必要はない。
【0032】(e) 熱処理:自動車用鋼板として耐摩耗性
を確保するために、最終熱処理として温間加工後に焼入
れを行う。その条件は、 830〜880 ℃の範囲で加熱した
のち油焼入れを行い、引き続き焼戻しを実施する。
【0033】
【実施例】本発明の高炭素鋼板の加工方法を、実施例1
〜2に基づいて詳細に説明する。
【0034】(実施例1)素材鋼としては、表1に示す
A〜Fの8鋼種を用いた。本発明が規定する化学組成を
有する鋼種を発明鋼(A〜D鋼種)とし、素材鋼のうち
EおよびFの鋼種は、C含有量が本発明で規定する範囲
外となるため、比較鋼として使用した。
【0035】
【表1】
【0036】真空溶解炉で溶製し、20mm厚のスラブに鍛
造した素材鋼を、下記の1〜3の条件で、熱間圧延、脱
スケールおよびセメンタイト球状化焼鈍を実施し、諸特
性(焼鈍温度とフェライト粒径、引張加熱温度と伸びの
関係)の調査を行った。その後、下記4に示す条件で熱
処理を行い、この熱処理後の耐摩耗性の調査を行った。
【0037】1.熱間圧延:圧延仕上げ温度 850℃およ
び鋼板巻取相当温度 600℃で、仕上げ板厚5mmに圧延。
【0038】2.脱スケール:素材鋼の表面を、常温に
おける塩酸洗で完全デスケール。
【0039】3.セメンタイト球状化焼鈍:冷間圧延の
有無による下記(1) と(2) の2プロセスに区分して焼鈍
を行い、素材鋼を球状化セメンタイトとフェライトの混
合組織とした。但し、箱焼鈍の雰囲気は、N2:H2 の比
率を3:1と調整した。
【0040】(1) 熱間圧延後、直ちに 550〜830 ℃×24
時間の箱焼鈍を実施(以下、「熱延」プロセスと表示す
る)。
【0041】(2) 熱間圧延後、更に圧下率60%で仕上げ
板厚2mmに冷間圧延したのち、 550〜830 ℃×24時間の
箱焼鈍を実施(以下、「冷延」プロセスと表示する)。
【0042】4.焼入れ: 850℃×15分均熱した後、油
焼入(冷却速度 100℃/sec)し、引き続き 500℃×30分
の焼戻しを実施。
【0043】セメンタイト球状化焼鈍後の組織について
調査した。素材鋼の組織は、熱間圧延後、または冷間圧
延後の箱焼鈍によって、球状化セメンタイトおよびフェ
ライトの混合組織となった。この時のセメンタイト組織
の形態を表2に示すが、熱延および冷延プロセスとも同
じ組織形態であった。
【0044】
【表2】
【0045】図1は、焼鈍温度によるフェライト粒径の
変化を示す図である。同図の(a)は熱延プロセスにお
ける場合を、(b)は冷延プロセスにおける場合を示し
ている。同図より明らかなように、本発明で規定する 7
80℃以下の焼鈍温度を採用すれば、C含有が低い比較鋼
(E鋼種)を除き、いずれの素材鋼もフェライト粒径は
20μmであった。
【0046】図2は、 690℃で24時間焼鈍した素材鋼
を、 100〜700 ℃の温度範囲で 100秒加熱ののち、引張
速度10mm/minで引張試験を行った時の引張加熱温度と伸
びとの関係を示す図であり、同図から温間加工の適正な
加熱温度が明らかとなる。(a)に示す熱延プロセスお
よび(b)に示す冷延プロセスとも、 300℃以上の温度
範囲で加熱した素材鋼は引張試験において高い伸びが得
られている。
【0047】図3は、 830℃で24時間焼鈍した素材鋼
を、 100〜700 ℃の温度範囲で 100秒加熱ののち、引張
速度10mm/minで引張試験を行った時の引張加熱温度と伸
びとの関係を示す図であり、図4は、 550℃で24時間焼
鈍した素材鋼を、図3と同様の条件で引張試験を行った
時の引張加熱温度と伸びとの関係を示す図である。図3
および図4から、(a)に示す熱延プロセスおよび
(b)に示す冷延プロセスのいずれにおいても、温間加
工前の焼鈍温度が 550℃と低い場合または 830℃と高い
場合には、成形加工時に 300〜600 ℃の温度範囲で加熱
した素材鋼であっても、引張試験における伸びが十分得
られないことががわかる。
【0048】なお、本発明で規定するC含有量より多い
比較鋼(F鋼種)は、図1に示すフェライト粒径は細粒
になるものの、図2〜4から明らかなように、発明鋼に
比べ、いずれの焼鈍温度においても、 300〜600 ℃の温
度範囲で加熱した引張試験における伸びが低くなること
がわかる。
【0049】成形加工後の耐摩耗性を調査するため、さ
らに油焼入した素材鋼の焼入れ硬度および焼戻し硬度
(ヴィッカース硬度)を測定した。また、各素材鋼の転
動疲労寿命も測定した。
【0050】図5は、転動疲労試験方法の概略要領を示
す図である。試験片1を潤滑油3中に浸漬して、試験片
1の表面を一定の回転数(1000rp)でボール2を転動さ
せ、その疲労寿命を測定した。それらの結果を表3にま
とめて示す。
【0051】
【表3】
【0052】表3から、比較鋼であるE鋼は、焼入れの
ままおよび焼戻し後において十分な硬度が得られなかっ
たが、その他の素材鋼、即ち、いずれの発明鋼も硬度が
確保されており、優れた耐摩耗性を示すことがわかる。
また、転動疲労試験結果についても同様のことがいえ
る。
【0053】以上、高炭素鋼板であっても、適正な化学
組成を選択し、セメンタイト球状化焼鈍と温間加工の組
み合わせによって優れた成形性と、その後の熱処理によ
って優れた耐摩耗性を発揮することが可能となる。
【0054】
【実施例2】素材鋼の化学組成、製造プロセス(焼鈍条
件、フェライト粒径および引張加熱温度)を、本発明が
規定する範囲内とする本発明例と規定する範囲外とする
比較例に区分して処理を行い、温間加工での引張特性と
最終熱処理後の硬度を調査した。
【0055】素材鋼は真空溶解炉で溶製し、20mm厚さの
スラブに鍛造した後、仕上げ温度 850℃、巻取り相当温
度 600℃で熱延し、表面脱スケールののち、一部は冷間
圧延(冷延)を施した。熱延および冷延仕上げのいずれ
の素材とも、最終板厚は 1.8mmとした。素材鋼の化学組
成を表4に、製造プロセスの条件を表5に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】熱延および冷延仕上げ後、表5中に示した
条件で箱焼鈍を行い、セメンタイトとフェライトの混合
組織とした。その後、同表に示す引張加熱温度における
引張特性として降伏点(YP)、引張強度(TS)およ
び伸び(EL)を測定した。
【0059】更に、 870℃×20分均熱した後、60℃の油
焼入し、引き続き 200℃×60分の焼戻しの条件で熱処理
を行い、最終熱処理後の硬度を測定した。引張特性およ
び硬度の測定結果を表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】表6から明らかなように、本発明例ではい
ずれも温間加工において良好な伸びを示すとともに、最
終熱処理後は自動車用鋼板として耐摩耗性を確保するた
めに必要とされるHv 350以上の硬度が確保されている。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、鋼中の組織が球状化セ
メンタイトとフェライトからなる高炭素薄鋼板が得ら
れ、温間加工時に高い伸びが確保でき、その後の熱処理
によって表面硬度を上げることができる。このことか
ら、本発明は、優れた成形性と耐摩耗性を要求される自
動車用鋼板の製造プロセスに適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼鈍温度によるフェライト粒径の変化を示す図
である。
【図2】焼鈍( 690℃×24時間)後の引張試験における
引張加熱温度と伸びとの関係を示す図である。
【図3】焼鈍( 830℃×24時間)後の引張試験における
引張加熱温度と伸びとの関係を示す図である。
【図4】焼鈍( 550℃×24時間)後の引張試験における
引張加熱温度と伸びとの関係を示す図である。
【図5】転動疲労試験方法の概略要領を示す図である
【符号の説明】
1…試験片、 2…ボール、 3…潤滑油
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/38

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.20〜1.20%、Si:0.05〜
    1.00%、Mn:0.20〜2.00%、Cr:1.20%以下および残部
    がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、 600〜
    780℃の範囲で焼鈍して球状化セメンタイトと直径が20
    μm以下のフェライト粒からなる組織とし、次いで 300
    〜 600℃に加熱しながら成形加工したのち、焼入れする
    ことを特徴とする高炭素鋼板の加工方法。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.20〜1.20%、Si:0.05〜
    1.00%、Mn:0.20〜2.00%、Cr:1.20%以下および残部
    がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、圧下率
    20%以上で冷間圧延した後 600〜 780℃の範囲で焼鈍し
    て球状化セメンタイトと直径が20μm以下のフェライト
    粒からなる組織とし、次いで 300〜 600℃に加熱しなが
    ら成形加工したのち、焼入れすることを特徴とする高炭
    素鋼板の加工方法。
JP28907993A 1993-11-18 1993-11-18 高炭素鋼板の加工方法 Pending JPH07138649A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28907993A JPH07138649A (ja) 1993-11-18 1993-11-18 高炭素鋼板の加工方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28907993A JPH07138649A (ja) 1993-11-18 1993-11-18 高炭素鋼板の加工方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07138649A true JPH07138649A (ja) 1995-05-30

Family

ID=17738557

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP28907993A Pending JPH07138649A (ja) 1993-11-18 1993-11-18 高炭素鋼板の加工方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07138649A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013133295A1 (ja) * 2012-03-08 2013-09-12 日立金属株式会社 炭素工具鋼鋼帯
CN115572891A (zh) * 2021-06-21 2023-01-06 上海梅山钢铁股份有限公司 一种美工刀片用屈服强度420MPa级冷轧退火钢带

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013133295A1 (ja) * 2012-03-08 2013-09-12 日立金属株式会社 炭素工具鋼鋼帯
CN104160053A (zh) * 2012-03-08 2014-11-19 日立金属株式会社 碳工具钢钢带
US10294545B2 (en) 2012-03-08 2019-05-21 Hitachi Metals, Ltd. Method of producing a carbon tool steel strip
CN115572891A (zh) * 2021-06-21 2023-01-06 上海梅山钢铁股份有限公司 一种美工刀片用屈服强度420MPa级冷轧退火钢带
CN115572891B (zh) * 2021-06-21 2023-09-05 上海梅山钢铁股份有限公司 一种美工刀片用屈服强度420MPa级冷轧退火钢带

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4018905B2 (ja) 機械構造用熱間圧延線材・棒鋼およびその製造方法
JP3215891B2 (ja) 冷間加工用棒鋼線材の製造方法
JP5030280B2 (ja) 焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板及びその製造方法
JPH03188217A (ja) 高炭素薄鋼板の製造方法
JPH0892690A (ja) 耐疲労特性に優れた浸炭部品およびその製造方法
JP3468048B2 (ja) 成形性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法
JPH01230715A (ja) プレス成形性の優れた高強度冷延鋼板の製造方法
JPH04124216A (ja) 成形性の良好な高炭素薄鋼板の製造方法
JPH039168B2 (ja)
JP2000328172A (ja) 深絞り面内異方性の小さい高炭素冷延鋼帯とその製造方法
JP4061003B2 (ja) 高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材
JP3422865B2 (ja) 高強度マルテンサイト系ステンレス鋼部材の製造方法
KR20190078129A (ko) 냉간압조용 선재, 이를 이용한 가공품 및 이들의 제조방법
JPH07188858A (ja) 冷間鍛造用鋼
JPH059588A (ja) 成形性の良好な高炭素薄鋼板の製造方法
JPH07138649A (ja) 高炭素鋼板の加工方法
JP3371952B2 (ja) 酸洗工程を省略できる軟質な加工用高炭素鋼板の製造法
JP6610067B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法及び冷延鋼板
JPH08246051A (ja) 加工性に優れた中炭素鋼板の製造方法
JPH0598356A (ja) 焼き戻し省略型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法
JPH0949065A (ja) 伸びフランジ性にすぐれる耐摩耗用熱延鋼板及びその製造方法
JPH0717968B2 (ja) 成形性の良好な高炭素薄鋼板の製造方法
JPH0598357A (ja) 焼き戻し省略型高炭素薄鋼板の製造方法
JPH04116137A (ja) 高靭性高炭素冷延鋼板とその製造方法
JP2919642B2 (ja) 靱性と耐疲労性に優れた調質用高炭素鋼材の製造方法