JPH07138328A - 複層アクリル系重合体粒子及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

複層アクリル系重合体粒子及びその製造方法並びにその用途

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JPH07138328A
JPH07138328A JP30758693A JP30758693A JPH07138328A JP H07138328 A JPH07138328 A JP H07138328A JP 30758693 A JP30758693 A JP 30758693A JP 30758693 A JP30758693 A JP 30758693A JP H07138328 A JPH07138328 A JP H07138328A
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JP
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particles
acrylic rubber
polymer
polymer particles
resin
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Application number
JP30758693A
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English (en)
Inventor
Kunio Kamata
邦男 鎌田
Kuniaki Takada
邦章 高田
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SAN AROO KAGAKU KK
Original Assignee
SAN AROO KAGAKU KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】塩化ビニル樹脂に配合した際に、該樹脂に良好
な耐衝撃性及び耐候性を付与し、且つ透明性についても
良好に維持する耐衝撃性改良剤を開発すること 【構成】アクリルゴム粒子中に、芳香族ビニル重合体微
粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子が複数個存在し
ており、且つ該アクリルゴム粒子の外面が、ガラス転移
温度30℃以上である重合体で覆われてなり、平均粒子
径が0.05〜1.20μmである耐衝撃性改良剤とし
て有用な複層アクリル系重合体粒子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複層アクリル系重合体
粒子及びその製造方法並びにその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂の一つである塩化ビニル樹
脂は、その透明性、耐候性、加工性、機械的特性に優れ
ており汎用樹脂として広く使用されている。しかし、か
かる塩化ビニル樹脂は、耐衝撃性が実用範囲において充
分満足できるものではなく、これを改良するために例え
ば、該樹脂に、メチルメタクリレート/ブタジエン/ス
チレン共重合体(以下MBSと略す)のような重合体粒
子を耐衝撃性改良剤として配合することが知られてい
る。ところが、MBSのようなブタジエンを原料に使用
した耐衝撃性改良剤は、耐候性が悪く、屋外での使用に
おいては上記耐衝撃性が低下する問題がある。一方、耐
候性が良好な耐衝撃性改良剤としてアクリルゴムを主成
分としたゴム粒子が知られている。しかし、このゴム粒
子も塩化ビニル樹脂の耐衝撃性改良剤として使用した場
合、該樹脂の透明性を損なってしまう問題がある。
【0003】そこで、塩化ビニル樹脂の耐候性と透明性
を同時に満足させるべく、該樹脂に配合する耐衝撃性改
良剤に関して過去様々な検討がなされてきた。例えば、
特公昭57ー9389号公報、特公昭60ー27689
号公報、特開昭54ー78751号公報等には、上記耐
衝撃改良剤として、ポリスチレン微粒子の内核を有する
アクリルゴム粒子に、ポリアルキルメタクリレート及び
ポリスチレンをグラフト結合した複層構造の重合体粒子
が開示されている。しかし、この複層重合体粒子を用い
た場合、耐衝撃性の改良効果に関して充分でなく、より
改善が望まれていた。
【0004】こうした背景から、本発明は、塩化ビニル
樹脂に配合した際に、該樹脂に良好な耐衝撃性及び耐候
性を付与し、且つ透明性についても良好に維持する耐衝
撃性改良剤を開発することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる状
況に鑑み、前記課題を解決すべく鋭意研究を行ってき
た。その結果、アクリルゴム粒子中に、芳香族ビニル重
合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子が複数個
存在する特定の複層アクリル系重合体粒子を用いること
により、上記課題が解決できることを見いだし本発明を
提案するに至った。
【0006】即ち、本発明は、アクリルゴム粒子中に、
芳香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体
微粒子が複数個存在しており、且つ該アクリルゴム粒子
の外面が、ガラス転移温度30℃以上である重合体で覆
われてなり、平均粒子径が0.05〜1.20μmであ
ることを特徴とする複層アクリル系重合体粒子である。
【0007】本発明の複層アクリル系重合体粒子は、ま
ず、アクリルゴム粒子中に、芳香族ビニル重合体微粒子
または塩化ビニリデン重合体微粒子が複数個存在してい
る。通常、これらのアクリルゴム粒子において、芳香族
ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子
を形成する各重合体は、上記アクリルゴム粒子との界面
において、グラフト重合等により化学的に結合している
のが好ましい。
【0008】ここで、芳香族ビニル重合体とは、芳香族
ビニルの単独重合体の他、芳香族ビニルとこれと共重合
可能な他の単量体との共重合体であっても良い。また、
この重合体は、架橋されていても良い。本発明において
芳香族ビニルとは、特に制限されるものではないが、例
えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、
クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられ
る。また、かかる芳香族ビニルと共重合可能な他の単量
体とは、特に制限されるものではないが、一般的にはビ
ニル化合物、ビニリデン化合物等が挙げられる。具体的
には、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ブタジエ
ン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル
酸、ブチルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベ
ンジルアクリレート、フェニルエチルメタクリレート等
が挙げられ、また、この他の単量体は、ジビニルベンゼ
ン、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタ
クリレートのような架橋剤であっても良い。
【0009】一方、本発明において、塩化ビニリデン重
合体とは、塩化ビニリデンの単独重合体の他、塩化ビニ
リデンとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体で
あっても良い。また、この重合体は、架橋されていても
良い。この塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体と
しては、特に制限されるものではないが、一般的には、
上記した芳香族ビニルと共重合可能な他の単量体と同様
にビニル化合物、ビニリデン化合物等が挙げられる。こ
の場合、具体的には、塩化ビニル、臭化ビニル、ビニル
アセテート、アクリル酸、アクリロニトリル、ブチルア
クリレート、エチレン等や、また、ジビニルベンゼン、
エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリ
レートのような架橋剤を用いるのが好適である。
【0010】こうした芳香族ビニル重合体微粒子または
塩化ビニリデン重合体微粒子は、高屈折率を維持するた
めには、芳香族ビニルまたは塩化ビニリデンに基づく単
量体単位の含有量が50重量%以上であるのが好まし
い。
【0011】本発明において、アクリルゴム粒子中に存
在させる上記の芳香族ビニル重合体微粒子または塩化ビ
ニリデン重合体微粒子の数は、2個以上、好適には4〜
1000個であることが必要である。このようにアクリ
ルゴム粒子中に複数の上記重合体微粒子を存在させるこ
とにより、本発明の複層アクリル系重合体粒子は、粒子
の変形が容易となり樹脂への耐衝撃性の付与効果が著し
く向上する。また、塩化ビニル樹脂に配合した際には、
その透明性を良好に維持する。
【0012】本発明において、かかる芳香族ビニル重合
体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子の平均粒子
径は、特に制限されるものではない。該平均粒子径が小
さいほど塩化ビニル樹脂に配合した際の該樹脂の透明性
が良好になるため、通常は、120nm以下、好ましく
は80nm以下であるのが良い。この重合体微粒子は、
通常の乳化重合によれば平均粒子径が10nm程度のも
のまで容易に作ることができる。なお、アクリルゴム粒
子中においてこの重合体微粒子の粒子径分布は、得に制
限されるものではないが、その粒子径が120nm以内
の粒子の数が多くなるほど、塩化ビニル樹脂の透明性を
良好に維持する傾向があるため、その割合が90重量%
以上であるのが好適である。
【0013】また、アクリルゴム粒子中における上記重
合体微粒子の重量割合は、特に制限されるものではない
が、耐衝撃性の向上効果を勘案すれば20〜70重量%
であるのが好ましい。複層アクリル系重合体粒子を塩化
ビニル樹脂に配合する際には、該粒子中の重合体微粒子
の重量割合が40〜65重量%であるのが、該樹脂を透
明性に優れたものとする上で好ましい。
【0014】次に、本発明において、アクリルゴム粒子
を形成するアクリルゴムとは、公知のものが特に制限さ
れることなく使用される。通常は、ブチルアクリレー
ト、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレ
ート等のアルキル基の炭素数が2〜8のアルキルアクリ
レートに基づく単量体単位を主成分とし、架橋剤により
架橋されてなるゴム粒子を用いるのが好適である。ま
た、こうしたアクリルゴム粒子は、スチレン、アクリロ
ニトリル、ビニルアセテート、ベンジルメタクリレー
ト、ブタジエン、メタクリル酸、メチルメタクリレー
ト、アクリル酸、エチレン等の上記アルキルアクリレー
トと共重合可能な他の単量体が共重合されていても良
い。なお、架橋剤としては、ジビニルベンゼン、エチレ
ングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート
等の公知のものが何等制限されることなく用いられる。
こうしたアクリルゴム粒子において、上記アルキルアク
リレートに基づく単量体単位は、50重量%以上である
のが好ましい。また、架橋剤は、0.1〜5重量%含ま
れていた場合に耐衝撃性改良効果が最も良好になり望ま
しい。
【0015】本発明において、上記アクリルゴム粒子の
平均粒子径は、特に制限されるものではないが、耐衝撃
性の向上効果を勘案すれば45〜1000nmであるの
が好ましい。塩化ビニル樹脂に配合した際に高い透明性
を得るためには、該平均粒子径45〜450nmである
のが好ましい。また、かかるアクリルゴム粒子の粒子径
分布については特に制限されないが、その粒子径が10
00nm以内の粒子の数が多くなるほど、塩化ビニル樹
脂の透明性を良好に維持する傾向があるため、その割合
が90重量%以上であるのが好適である。
【0016】本発明において、以上の芳香族ビニル重合
体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子がその粒子
中に複数個存在するアクリルゴム粒子は、その外面がガ
ラス転移温度30℃以上である重合体で覆われてなる。
このように上記アクリルゴム粒子の外面をガラス転移温
度30℃以上である重合体で覆うことにより、得られる
複層アクリル系重合体粒子は、塩化ビニル樹脂等の樹脂
成分との相溶性が良くなり、分散性等が向上し良好な耐
衝撃性向上効果が得られるようになる。また、粒子の表
面が固くなることで、粒子同士の粘着が無くなり、粒子
の粉末としての取扱性が向上する。なお、通常、これら
の複層アクリル系重合体粒子において、アクリルゴム粒
子を形成するアクリルゴムとその外面を覆うガラス転移
温度30℃以上である重合体との界面は、グラフト重合
等により化学的に結合しているのが好ましい。
【0017】本発明において、上記ガラス転移温度30
℃以上である重合体は、公知のものが得に制限されるこ
となく使用される。好適には、メチルメタクリレート、
アクリロニトリル、スチレン、ベンジルメタクリレート
等の単独重合体やこれらの共重合体、さらには、これら
の単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体
等が挙げられる。複層アクリル系重合体粒子を配合する
樹脂が塩化ビニル樹脂である場合においては、かかる重
合体は、メチルメタクリレートまたはアクリロニトリル
の単独重合体やこれを40重量%以上の含量で共重合さ
せた共重合体を使用するのが特に好ましい。メチルメタ
クリレートまたはアクリロニトリルと共重合可能な他の
単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレ
ン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレ
イミド、ブタジエン、ブチルアクリレート、2−エチル
ヘキシルアクリレート等が挙げられる。なお、これらの
重合体は、架橋剤により架橋されていても良い。こうし
た架橋剤としては、ジビニルベンゼン、アリルメタクリ
レート、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げ
られる。
【0018】本発明において、前記アクリルゴム粒子の
外面を覆うガラス転移温度30℃以上である重合体の層
は、得に制限されるものではないが、一般には、その厚
さが1〜100nmであるのが好適である。また、この
重合体層は、粒子表面の固定化を勘案すれば、複層アク
リル系重合体粒子中において5〜50重量%であるのが
好適である。
【0019】本発明において、以上の構造にある複層ア
クリル系重合体粒子は、その平均粒子径が0.05〜
1.20μmであることが必要である。この平均粒子径
が上記範囲にない場合、耐衝撃性改良の効果は充分でな
くなる。また、この複層アクリル系重合体粒子を塩化ビ
ニル樹脂に配合する際には、該平均粒子径は、50〜5
00nmであるのが高い透明性を得るためには好まし
い。
【0020】次に、本発明の複層アクリル系重合体粒子
は、如何なる方法により得ても良い。好適には、芳香族
ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子
の存在下に、アルキルアクリレート及び架橋剤を重合し
て、該芳香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン
重合体微粒子をアクリルゴムで被覆したアクリルゴム微
粒子を得、次いで、得られたアクリルゴム微粒子を凝集
させて肥大化したアクリルゴム粒子を得、さらに、該肥
大化したアクリルゴム粒子の存在下に、重合体のガラス
転移温度が30℃以上である単量体を重合させる方法に
より得るのが好ましい。以下、この製造方法について説
明する。
【0021】まず、上記の製造方法において使用する芳
香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微
粒子は、如何なる方法により得たものを使用しても良
い。通常は、芳香族ビニルや塩化ビニリデン、或いはこ
れらと、該単量体と共重合可能な他の単量体とを、イオ
ン系界面活性剤を乳化剤または分散剤として乳化重合ま
たは懸濁重合させたものを用いるのが好ましい。
【0022】ここで、イオン系界面活性剤としては、ド
デシル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムのような
高級アルコール硫酸エステル塩類、ステアリン酸ナトリ
ウム、オレイン酸カリウムのような脂肪酸塩類、コハク
酸ジオクチルエステル硫酸ナトリウムのようなニ塩基性
脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、ドデシルベンゼンス
ルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン
酸塩類などの陰イオン系界面活性剤や、テトラブチルア
ンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウ
ムブロマイド、ドデシルアンモニウムアセテートなどの
陽イオン系界面活性剤が挙げられる。これらイオン系界
面活性剤は、上記単量体等の乳濁成分に対して0.1〜
10重量%含有させるのが好ましい。また、いわゆるマ
イクロサスペンジョン重合、マイクロエマルジョン重合
で使用される様な物質を併用することも可能である。こ
うした物質には1−ペンタノール、1−オクタノール、
1−ヘキサデカノール等のアルコール類などが挙げられ
る。
【0023】こうした重合において反応媒体として使用
される水は、使用する単量体の全量に対して100〜3
000容量%、さらに好ましくは200〜1000容量
%であるのが好適である。重合に際し用いる重合開始剤
は、油溶性、水溶性を問わず如何なるものであっても良
い。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過
酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、2,
2’−アゾビスイソブチリロニトリル等があり、さらに
レドックス系の開始剤も利用できる。これらの重合開始
剤は、重合させる単量体の0.01〜0.5重量%を使
用するのが望ましい。さらに、かかる重合の重合温度
は、使用する開始剤の分解温度以上であれば良く、通常
は、40〜90℃の範囲から採択される。レドックス系
開始剤使用をする場合は室温付近またはそれ以下でも可
能である。
【0024】前記製造方法では、上記方法等により得た
芳香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体
微粒子の存在下に、アルキルアクリレート及び架橋剤を
重合して、該芳香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニ
リデン重合体微粒子をアクリルゴムで被覆したアクリル
ゴム微粒子を得る。かかるアルキルアクリレート及び架
橋剤の重合も、上記と同様のイオン系界面活性剤を乳化
剤または分散剤とした乳化重合または懸濁重合により行
うのが好ましい。通常は、前記芳香族ビニル重合体微粒
子または塩化ビニリデン重合体微粒子の重合を行った反
応液中に、続けて、アルキルアクリレート及び架橋剤、
さらには重合開始剤等を供給し、上記重合を行うのが好
ましい。
【0025】以上により得られた芳香族ビニル重合体微
粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子をアクリルゴム
で被覆したアクリルゴム微粒子は、次いで、凝集させ
る。この凝集により、接触しあった上記アクリルゴム微
粒子同士は順次一体化し、該アクリルゴム微粒子は肥大
化していく。それにより、芳香族ビニル重合体微粒子ま
たは塩化ビニリデン重合体微粒子が粒子中に複数個存在
するアクリルゴム粒子が得られる。この凝集は、如何な
る方法により行っても良いが、一般には、イオン系界面
活性剤を乳化剤または分散剤とした上記アクリルゴム微
粒子の乳濁液または懸濁液に水性電解質を添加すること
により行うのが好適である。その際の上記アクリルゴム
微粒子の乳濁液または懸濁液の諸条件は、前記した重合
の場合と同様であれば良い。通常は、前記アクリルゴム
微粒子を製造した重合液に水性電解質を添加することに
より行うのが一般的である。
【0026】こうした凝集操作において、上記水性電解
質は、特に制限されるものではなく、水溶性の酸、塩基
および塩が、無機物及び有機物の区別なく使用される。
具体的には、酸としては塩酸、硫酸、酢酸、リン酸など
が挙げられ、塩基としてはアンモニア、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カルシウムなどが挙げられ、塩としては塩化
ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、臭化カ
リウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸アン
モニウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウムなどが
挙げられる。なお、肥大化した粒子の粒子径は、この水
性電解質の使用量を変化させることにより容易に制御で
きる。この水性電解質の使用量は、通常、イオン系界面
活性剤に対して5〜300重量%の範囲から採択され
る。
【0027】なお、凝集肥大化させるため電解質を乳濁
液または懸濁液中に添加した際に乳濁或いは懸濁状態の
安定性が悪くなり、沈澱やスケール、時には巨大粒子が
発生したりすることがある。このような場合には、水性
電解質の添加前に非イオン系界面活性剤を適量添加し液
を安定化させるのが好ましい。こうした非イオン系界面
活性剤は、公知のものが得に制限されることなく使用で
きるが、具体的には、ポリオキシエチレン(23)ラウ
リルエーテル(括弧内の数字はオキシエチレン単位の数
の平均値、以下同じ)、ポリオキシエチレン(10)オ
レイルエーテルの様なポリオキシエチレンアルキルエー
テル類、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニル
エーテルの様なポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル類、ポリオキシエチレン(25)モノステアレー
トの様なポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソル
ビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエートの様
なソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン
(4)ソルビタントリオレエートの様なポリオキシエチ
レンソルビタンアルキルエステル類などが挙げられる。
乳濁液を安定化させ、続く重合に支障がなければ、特に
限定されないが、HLB価(親水性疎水性バランス)を
8以上とするのが望ましい。この非イオン性界面活性剤
は、通常は、乳濁液或いは懸濁液中のアクリルゴム微粒
子成分に対して0〜10重量%の範囲で使用するのが一
般的である。
【0028】以上の凝集により得られた、芳香族ビニル
重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子が粒子
中に複数個存在するアクリルゴム粒子は、後述するその
外面にガラス転移温度が30℃以上の重合体を被覆させ
る操作を施す前に、該表面に再度前記と同様にしてアル
キルアクリレート及び架橋剤を重合して、そのアクリル
ゴム層を厚くしても良い。その場合、アルキルアクリレ
ート及び架橋剤の種類や組成比は、前段のアクリルゴム
重合の場合と同じにせず、適宜変更しても良い。
【0029】また、こうしたアルキルアクリレート及び
架橋剤の重合は、前記凝集操作と併行して行っても良
い。
【0030】こうして得られた上記アクリルゴム粒子
は、該粒子の存在下、重合体のガラス転移温度が30℃
以上である単量体を重合させる反応に供される。それに
より、かかるアクリルゴム粒子の外面は、そのガラス転
移温度が上記温度である重合体で覆われ、前記した本発
明の複層アクリル系重合体粒子が得られる。その際、こ
のガラス転移温度が上記温度である重合体の重合も、上
記と同様のイオン系界面活性剤を乳化剤、分散剤とした
乳化重合や懸濁重合により行うのが好ましい。通常は、
前記アクリルゴム微粒子の凝集に行った乳濁液または懸
濁液に、続けて、重合体のガラス転移温度が該値である
単量体及び重合開始剤等を供給し、この重合を行うのが
好ましい。
【0031】なお、以上の製造方法において、各製造段
階で使用する単量体、重合開始剤、界面活性剤等は必ず
しも一括して反応液に加える必要はなく、分割または連
続等して添加しても良い。
【0032】このようにして得られた複層アクリル系重
合体粒子は、反応液に水性電解質を加えて塩析沈澱、ま
たはメタノール中に沈澱させるなどして乾燥するか、ス
プレー乾燥等の方法により回収する。
【0033】本発明の複層アクリル系重合体粒子は、樹
脂に良好な耐衝撃性を付与する耐衝撃性改良剤として使
用される。かかる樹脂は、得に制限されるものではない
が、塩化ビニル樹脂が得に好適である。この塩化ビニル
樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニ
ルを80重量%以上含むエチレン、プロピレン、酢酸ビ
ニル等との共重合体が使用できる。こうした塩化ビニル
樹脂に配合される場合、本発明の複層アクリル系重合体
粒子は、他の耐衝撃改良剤、各種安定剤、滑剤、加工助
剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機フィラー、顔料等の添
加剤と併用されて、該樹脂に配合されても良い。なお、
ここで上記本発明の複層アクリル系重合体粒子以外の耐
衝撃改良剤としては、例えば、該本発明の複層アクリル
系重合体粒子において、アクリルゴム粒子中に、芳香族
ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子
が1個しか存在しないものが挙げられる。こうしたアク
リルゴム粒子中に、芳香族ビニル重合体微粒子または塩
化ビニリデン重合体微粒子が1個しか存在しない粒子
は、前記した本発明の複層アクリル系重合体粒子の代表
的製造方法においては、通常、前記アクリルゴム微粒子
の凝集操作時に未凝集であったもの等として、上記複層
アクリル系重合体粒子と共に副生してくるのが一般的で
ある。
【0034】本発明において、複層アクリル系重合体粒
子の樹脂への添加量は、得に制限されるものではない
が、一般には、樹脂100重量部に対し2〜30重量部
であるのが好適である。なお、本発明の複層アクリル系
重合体粒子の樹脂への配合や、該粒子を配合した樹脂の
加工は、通常の樹脂の配合や加工に用いられている方法
が、何等制限なく採用できる。
【0035】
【発明の効果】本発明の複層アクリル系重合体粒子は、
樹脂に良好な耐衝撃性を付与する耐衝撃性改良剤として
使用される。そして、この耐衝撃性は、樹脂を屋外で使
用する等の外的環境に晒しても耐候性良く持続される。
さらに、本発明の複層アクリル系重合体粒子は、塩化ビ
ニル樹脂に配合しても、該樹脂の透明性を損なうことが
なく、極めて有用である。
【0036】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明するが、本発明は、これらの実施例に何等限定され
るものではない。なお、実施例中の部及び%は重量基準
である。また、平均粒子径は光子相関分光法(Broo
k−haven Instruments Corpo
lation製 BI−90型)で測定した。
【0037】実施例1 ガラス容器中でイオン交換水250部、ドデシル硫酸ナ
トリウム2部、過硫酸カリウム0.5部を良くかきまぜ
て、温度を70℃に固定した。これに第一段階としてス
チレン50部とジビニルベンゼン0.5部の混合溶液を
1時間かけて滴下し、滴下終了後さらに2時間重合を継
続した。反応液に乳濁するポリスチレン微粒子の平均粒
子径は55nmであった。また、このポリスチレン微粒
子は、すべてその粒子径が120nm以下にあった。
【0038】第二重合段階として、上記反応液に過硫酸
カリウム0.5部を含むイオン交換水20部を加えて、
ブチルアクリレート35部とエチレングリコールジメタ
クリレート0.35部の混合溶液を10分かけて滴下
し、滴下終了後さらに1時間重合を継続した。得られた
アクリルゴム微粒子の平均粒子径は、65nmであっ
た。
【0039】上記で得られたアクリルゴム微粒子にポリ
オキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2.
5部を含むイオン交換水30部を加えた後、良く攪拌し
ながら塩化カルシウム2部を含むイオン交換水80部を
30分かけて滴下し、ラテックスを凝集した。肥大化し
たアクリルゴム粒子の平均粒子径は206nmであっ
た。また、このアクリルゴム粒子はすべて、その粒子径
が1000nm以下であった。さらに、この肥大化した
アクリルゴム粒子において、この粒子中に存在するポリ
スチレン微粒子の数を、アクリルゴム平均粒子径から換
算すると、約32個となった。
【0040】温度を再び70℃に固定し、第三重合段階
として過硫酸カリウム0.3部を含むイオン交換水20
部を加え、ブチルアクリレート15部とエチレングリコ
ールジメタクリレート0.15部の混合溶液を10分か
けて滴下し、滴下終了後さらに1時間重合を継続した。
【0041】第四重合段階として過硫酸カリウム0.5
部を含むイオン交換水20部を加えて、メチルメタクリ
レート25部、スチレン20部、ジビニルベンゼン1部
の混合溶液を10分かけて滴下し、滴下終了後さらに2
時間重合を継続した。得られた反応液中に乳濁する複層
アクリル系重合体粒子の平均粒子径は235nmであっ
た。
【0042】反応液にメタノールを加えて固形分を沈殿
させ、濾過、洗浄して複層アクリル系重合体粒子を得
た。得られた複層アクリル系重合体粒子の、乾燥後の収
率は98%であった。
【0043】塩化ビニル樹脂(平均重合度700:サン
・アロー化学株式会社製、SA700K)100部に、
上記で得られた複層アクリル系重合体粒子7部、ジブチ
ル錫マレート(安定剤)4部を十分に混合した。これを
160℃の熱ロールで5分混練した後、180℃の熱プ
レスを用い50kg/cm2 で10分間加圧し、厚さ3
mmの板に成形した。このようにして得た塩化ビニル樹
脂製板についてアイゾッド衝撃強度(JIS−7110
に準じて、2号試験片A切欠きを採用)、全光線透過率
(JIS−7105に準じた方法)、曇価(JIS−7
105に準じた方法)を測定した。耐候性試験について
は、サンシャインウェザーメーターによる促進暴露50
0時間後のアイゾッド衝撃強度を測定した。結果を表1
に示した。
【0044】実施例2〜6 実施例1において、各重合段階の単量体組成を表1の様
に変える以外は実施例1と同じようにして多段重合を行
い、多段重合の二段目及び四段目終了後の平均粒子径、
複層アクリルゴム粒子中の高屈折率樹脂微粒子の平均個
数など、実施例1と同様の方法で求めた。結果を表1に
示した。
【0045】比較例1〜3 実施例1と同様の操作において、第一重合段階のスチレ
ン/ジビニルベンゼンの重合を省略した場合(比較例
1)について、および第二重合段階終了後のアクリルゴ
ム微粒子の凝集工程を省略して、アクリルゴム粒子中に
ポリスチレン微粒子を一つしか存在させない場合(比較
例2)について、同様の評価を行った。また、こうした
複層アクリル系重合体粒子を配合しない塩化ビニル樹脂
製板についても、同様の評価を行った。結果を表1に示
した。
【0046】
【表1】
【0047】実施例7〜13 実施例1において、重合開始剤である過硫酸カリウム、
イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、非
イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(10)
オクチルフェニルエーテル、水性電解質である塩化カル
シウム及びその各使用量を、表2に示すように変える以
外は実施例1と同様にして複層アクリル系重合体粒子を
合成した。実施例1と同様にして得た塩化ビニル樹脂製
板について、アイゾッド衝撃強度、全光線透過率を測定
した。結果を表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】実施例14〜21、比較例4〜9 表3で示すような各種樹脂に(塩化ビニル系樹脂には安
定剤として別にジブチル錫マレート4部添加)、実施例
1で合成した複層アクリル系重合体粒子を配合して、実
施例1と同様の板に成形した。これらの樹脂製板につい
て実施例1と同様の測定を行った。結果を表3に示し
た。
【0050】また、上記複層アクリル系重合体粒子を配
合しないそれぞれの樹脂製板について、実施例1と同様
の測定を行った結果も、表3に併せて示した。
【0051】
【表3】
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年12月7日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】 本発明において、かかる芳香族ビニル重
合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子の平均粒
子径は、特に制限されるものではない。該平均粒子径が
小さいほど塩化ビニル樹脂に配合した際の該樹脂の透明
性が良好になるため、通常は、120nm以下、好まし
くは80nm以下であるのが良い。この重合体微粒子
は、通常の乳化重合によれば平均粒子径が10nm程度
のものまで容易に作ることができる。なお、アクリルゴ
ム粒子中においてこの重合体微粒子の粒子径分布は、特
に制限されるものではないが、その粒子径が120nm
以内の粒子の数が多くなるほど、塩化ビニル樹脂の透明
性を良好に維持する傾向があるため、その割合が90重
量%以上であるのが好適である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】 本発明において、上記ガラス転移温度3
0℃以上である重合体は、公知のものが特に制限される
ことなく使用される。好適には、メチルメタクリレー
ト、アクリロニトリル、スチレン、ベンジルメタクリレ
ート等の単独重合体やこれらの共重合体、さらには、こ
れらの単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重
合体等が挙げられる。複層アクリル系重合体粒子を配合
する樹脂が塩化ビニル樹脂である場合においては、かか
る重合体は、メチルメタクリレートまたはアクリロニト
リルの単独重合体やこれを40重量%以上の含量で共重
合させた共重合体を使用するのが特に好ましい。メチル
メタクリレートまたはアクリロニトリルと共重合可能な
他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルス
チレン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシル
マレイミド、ブタジエン、ブチルアクリレート、2−エ
チルヘキシルアクリレート等が挙げられる。なお、これ
らの重合体は、架橋剤により架橋されていても良い。こ
うした架橋剤としては、ジビニルベンゼン、アリルメタ
クリレート、エチレンゲリコールジメタクリレート等が
挙げられる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正内容】
【0033】 本発明の複層アクリル系重合体粒子は、
樹脂に良好な耐衝撃性を付与する耐衝撃性改良剤として
使用される。かかる樹脂は、特に制限されるものではな
いが、塩化ビニル樹脂が得に好適である。この塩化ビニ
ル樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビ
ニルを80重量%以上含むエチレン、プロピレン、酢酸
ビニル等との共重合体が使用できる。こうした塩化ビニ
ル樹脂に配合される場合、本発明の複層アクリル系重合
体粒子は、他の耐衝撃改良剤、各種安定剤、滑剤、加工
助剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機フィラー、顔料等の
添加剤と併用されて、該樹脂に配合されても良い。な
お、ここで上記本発明の複層アクリル系重合体粒子以外
の耐衝撃改良剤としては、例えば、該本発明の複層アク
リル系重合体粒子において、アクリルゴム粒子中に、芳
香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニリデン重合体微
粒子が1個しか存在しないものが挙げられる。こうした
アクリルゴム粒子中に、芳香族ビニル重合体微粒子また
は塩化ビニリデン重合体微粒子が1個しか存在しない粒
子は、前記した本発明の複層アクリル系重合体粒子の代
表的製造方法においては、通常、前記アクリルゴム微粒
子の凝集操作時に未凝集であったもの等として、上記複
層アクリル系重合体粒子と共に副生してくるのが一般的
である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明するが、本発明は、これらの実施例に何等限定され
るものではない。なお、実施例中の部及び%は重量基準
である。また、平均粒子径は光子相関分光法(Broo
k−haven Instruments Corpo
ration製 BI−90型)で測定した。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アクリルゴム粒子中に、芳香族ビニル重合
    体微粒子または塩化ビニリデン重合体微粒子が複数個存
    在しており、且つ該アクリルゴム粒子の外面が、ガラス
    転移温度30℃以上である重合体で覆われてなり、平均
    粒子径が0.05〜1.20μmであることを特徴とす
    る複層アクリル系重合体粒子。
  2. 【請求項2】芳香族ビニル重合体微粒子または塩化ビニ
    リデン重合体微粒子の存在下に、アルキルアクリレート
    及び架橋剤を重合して、該芳香族ビニル重合体微粒子ま
    たは塩化ビニリデン重合体微粒子をアクリルゴムで被覆
    したアクリルゴム微粒子を得、次いで、得られたアクリ
    ルゴム微粒子を凝集させて肥大化したアクリルゴム粒子
    を得、さらに、該肥大化したアクリルゴム粒子の存在下
    に、重合体のガラス転移温度が30℃以上である単量体
    を重合させることを特徴とする請求項1記載の複層アク
    リル系重合体粒子の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1記載の複層アクリル系重合体粒子
    からなる耐衝撃性改良剤。
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