JPH07130514A - 希土類ボンド磁石とその製造方法 - Google Patents

希土類ボンド磁石とその製造方法

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JPH07130514A
JPH07130514A JP5294770A JP29477093A JPH07130514A JP H07130514 A JPH07130514 A JP H07130514A JP 5294770 A JP5294770 A JP 5294770A JP 29477093 A JP29477093 A JP 29477093A JP H07130514 A JPH07130514 A JP H07130514A
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裕和 金清
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 iHcを向上させ、5kG以上の残留磁束密
度Brを有し安定した工業生産が可能なFe3P型Fe
−Cr−B−R系またはFe−Cr−B−R−M系磁石
の製造方法の確立とハードフェライト磁石に匹敵するコ
ストパフォーマンスを有する高性能ボンド磁石を安価に
提供すること。 【構成】 希土類元素の含有量が少ない特定組成のFe
−Cr−B−R(Nd,Pr)系あるいはFe−Cr−
B−R(Nd,Pr)−M(Al,Si,Pb)系合金
溶湯を超急冷法にて実質的に90%以上をアモルファス
組織となし、Fe3B相が析出する温度から1〜15℃
/分で昇温した後、600〜750℃で10秒〜6時間
保持する熱処理を施して、Fe3P型結晶構造相を有す
るFe3B相を主相として特定量のNd2Fe14B型結晶
構造相を有する構成相が同一粉末粒子中に共存し、特定
の結晶粒径を有する平均粒径の粉末を樹脂にて結合する
希土類ボンド磁石を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マグネットロール、
スピーカー、磁気センサー用磁気回路、各種メーターお
よびフォーカス用マグネットならびにモーターやアクチ
ュエーターなどに最適な希土類ボンド磁石とその製造方
法に係り、希土類元素の含有量が少ない特定組成のFe
−Cr−B−R、Fe−Cr−B−R−M(M=Al,
Si,Pb)合金溶湯を回転ロールを用いた超急冷法、
スプラット急冷法、ガスアトマイズ法あるいはこれらの
併用法にてアモルファス組織とし、特定の熱処理にて体
心正方晶Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とする
ホウ化物相とNd2Fe14B型結晶構造の構成相との微
細結晶集合体からなる合金粉末を得、これを樹脂にて結
合することにより、ハードフェライト磁石では得られな
かった5kG以上の残留磁束密度Brを有するFe−B
−R系ボンド磁石を得る希土類ボンド磁石とその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】家電用ステッピングモーター、電装品用
モーター、アクチュエーターなどに使用される永久磁石
は主にハードフェライト磁石に限定されていたが、低温
でのiHc低下に伴う低温減磁特性が有ること、セラミ
ックス材質のために機械的強度が低くて割れ、欠けが発
生し易いこと、複雑な形状が得難いことなどの問題があ
った。
【0003】今日、自動車は省資源のため車両の軽量化
による燃費の向上が強く要求されており、自動車用電装
品はより一層の小型、軽量化が求められている。また、
自動車用電装品以外の家電用モーターなどの用途におい
ても、性能対重量比を最大にするための設計が検討され
ており、現在のモーター構造では磁石材料としてBrが
5〜7kG程度のものが最適とされている。すなわち、
使用する磁石材料のBrが8kG以上の場合、現在のモ
ーター構造では磁路となる回転子やステーターの鉄板の
断面積を増大させる必要があり、重量の増大を招来する
が、Brが5〜7kGであれば性能対重量比を最大にす
ることができる。
【0004】従って、小型モーター用の磁石材料は磁気
特性的には特に5kG以上の残留磁束密度Brが要求さ
れているが、従来のハードフェライト磁石では得ること
ができない。例えばNd−Fe−B系ボンド磁石ではか
かる磁気特性を満足するが、金属の分離精製や還元反応
に多大の工程並びに大規模な設備を要するNd等を10
〜15at%含有しているため、ハードフェライト磁石
に比較して著しく高価であり、現在のところ大量生産が
可能で安価に提供できるBrが5〜7kG程度の磁石材
料は、見出されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一方、Nd−Fe−B
系磁石において、最近、Nd4Fe7719(at%)近
傍でFe3B型化合物を主相とする磁石材料が提案
(R.Coehoorn等、J.de Phys.,C
8,1988,669〜670頁)された。この磁石材
料はアモルファスリボンを熱処理することにより、準安
定なFe3Bと準安定相のNd2Fe14Bの結晶集合組織
を有する磁石材料が得られるが、iHcが2〜3kOe
程度と低く、またこのiHcを得るための熱処理条件が
狭く限定され、工業生産上実用的でない。
【0006】このFe3B型化合物を主相とする磁石材
料に添加元素を加えて多成分化し、性能向上を図った研
究が発表されている。その1つは希土類元素にNdのほ
かにDyとTbを用いてiHcの向上を図るものである
が、高価な元素を添加する問題のほか、添加希土類元素
はその磁気モーメントがNdやFeの磁気モーメントと
反平行して結合するため磁化が減少する問題がある
(R.Coehoorn、J.Magn,Magn,M
at.、83(1990)228〜230頁)。
【0007】他の研究(Shen Bao−genら,
J.Magn, Magn,Mat.、89(199
1)335〜340頁)として、 Feの一部をCoに
て置換してキュリー温度を上昇させ、iHcの温度係数
を改善するものであるが、Coの添加にともないBrを
低下させる問題がある。
【0008】いずれにしてもFe3B型Nd−Fe−B
系磁石は、超急冷法によりアモルファス化した後、熱処
理してハード磁石材料化できるが、iHcが低く、かつ
前記熱処理条件が狭く、安定した工業生産ができず、ハ
ードフェライト磁石の代替えとして安価に提供すること
ができない。
【0009】この発明は、Fe3B型Fe−B−R系磁
石(Rは希土類元素)に着目して、iHcを向上させ、
安定した工業生産が可能な製造方法の確立と、6kG以
上の残留磁束密度Brを有しハードフェライト磁石に匹
敵するコストパフォーマンスを有し、安価に提供できる
Fe3B型Nd−Fe−B系ボンド磁石とその製造方法
の提供を目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、Fe3B型
系Fe−B−R磁石のiHcを向上させ、安定した工業
生産が可能な製造方法を目的に種々検討した結果、希土
類元素の含有量が少なく、CrあるいはさらにAl、S
i、Pbの少なくとも1種を少量添加した鉄基の特定組
成の合金溶湯を超急冷法等にてアモルファス組織とな
し、特定の昇温速度による熱処理にて微細結晶集合体を
得ることにより、ハードフェライト磁石では得られなか
った5kG以上の残留磁束密度Brを有するボンド磁石
が得られることを知見し、この発明を完成した。
【0011】この発明は、組成式をFe100-x-y-zCrx
yz (但しRはPrまたはNdの1種または2種以
上)と表し、あるいはさらに、組成式をFe100-x-y-z
Crxyzw(但しRはPrまたはNdの1種また
は2種以上、MはAl、SiまたはPbの1種または2
種以上)と表し、組成範囲を限定する記号x、y、z、
wが下記値を満足し、体心正方晶Fe3P型結晶構造を
有する鉄を主成分とするホウ化物相とNd2Fe14B型
結晶構造を有する構成相とが同一粉末粒子中に共存し、
各構成相の平均結晶粒径が5nm〜100nmの範囲内
のとき、実用的に必要な4kOe以上の固有保持力を発
現し、平均粒径が3μm〜500μmである粉末を樹脂
にて結合して所要形状に成型固化することにより、室温
付近で準安定な結晶構造相が分解することなく、ボンド
磁石として利用可能な形態として提供できる。 0.01≦x≦5at% 16≦y≦22at% 3≦z≦5.5at% 0.1≦w≦3at%
【0012】また、この発明は、(1)組成式をFe
100-x-y-zCrxyz (但しRはPrまたはNdの1
種または2種以上)と表し、あるいはさらに、組成式を
Fe100-x-y-zCrxyzw (但しRはPrまたは
Ndの1種または2種以上、MはAl、SiまたPbの
1種または2種以上)と表し、組成範囲を限定する記号
x、y、z、wが上述の値を満足する合金溶湯を回転ロ
ールを用いた超急冷法、スプラット急冷法、ガスアトマ
イズ法あるいはこれらを組み合せて急冷し、実質的に9
0%以上をアモルファス組織となし、(2)さらに熱処
理の際に、Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とす
るホウ化物相が析出する温度付近からの昇温速度を1℃
/分〜15℃/分で昇温して600℃〜750℃で10
秒間〜6時間保持する熱処理を施し、(3)Fe3P型
結晶構造を有する鉄を主成分とするホウ化物相と、Nd
2Fe14B型結晶構造を有す構成相とが同一粉末粒子中
に共存し、各構成相の平均結晶粒径が5nm〜100n
mの範囲にある微結晶集合体を得たのち、(4)平均粒
径3μm〜500μmに粉砕して得られた磁石合金粉末
を樹脂にて結合したことを特徴とする希土類ボンド磁石
の製造方法である。
【0013】組成の限定理由 希土類元素RはPrまたはNdの1種また2種以上を特
定量含有のときのみ、高い磁気特性が得られ、他の希土
類、例えばCe、LaではiHcが2kOe以上の特性
が得られず、またSm以降の中希土類元素、重希土類元
素は磁気特性の劣化を招来するとともに磁石を高価格に
するため好ましくない。Rは、3at%未満では4kO
e以上のiHcが得られず、また5.5at%を超える
とFe3B相が生成せず、硬磁性を示さない準安定相の
2Fe233相が折出しiHcは著しく低下するので好
ましくないため、3〜5.5at%の範囲とする。
【0014】Bは、16at%未満および22at%を
超えると4kOe以上のiHcが得られないため、16
〜22at%の範囲とする。
【0015】Crは、iHcの向上に有効であるが、
0.01at%未満ではかかる効果が得られず、5at
%を超えるとBrが低下し、6kG以上のBrが得られ
ないため、0.01〜5at%の範囲とする。
【0016】Al、Si、Pbは減磁曲線の角型性を改
善し、磁気特性のBr、(BH)maxを増大させる効
果を有し、かかる効果を得るには少なくとも0.1at
%以上の添加が必要であるが、3at%を超えるとかえ
って角型性を劣化させ、(BH)maxも低下するた
め、0.1〜3at%の範囲とする。
【0017】Feは、上述の元素の含有残余を占める。
【0018】粉末の構成相の限定理由 この発明によるボンド磁石構成する合金粉末は、1.6
Tという高い飽和磁化を持つ体心正方晶Fe3P型結晶
構造を有する鉄を主成分とするホウ化物相を主相とする
ことを特徴としている。このホウ化物相は特定の範囲で
準安定的に空間群P4/nmnのNd2Fe14B型結晶構
造を有する強磁性相と共存できる。これらのホウ化物相
と強磁性相が共存することが高い磁束密度と十分なiH
cを得るためには必須であり、同一組成であっても、例
えば鋳造法などではその製法に起因して、C16型結晶
構造を有するFe2B相と体心正方晶のα−Fe相とが
主相となると、高い磁化が得られるが、各相の結晶粒径
が数μmから数十μmと大きいため、iHcは1kOe
以下に劣化して磁石として使用できなくなり、好ましく
ない。
【0019】結晶粒径、粉末粒径の限定理由 この発明のボンド磁石を構成する合金粉末中に共存する
体心正方晶Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とす
るホウ化物相とNd2Fe14B型結晶構造は、いずれも
強磁性相であるが、前者相は単独では磁気的に軟質であ
り、後者相が共存することがiHcを発現するのに不可
欠である。しかし、単に両相が共存するだけでは不十分
であり、両者の平均結晶粒径が5nm〜100nmの範
囲にないと、減磁曲線の第2象限の角形性が悪化して、
永久磁石としては動作点において十分な磁束を取り出す
ことができないため、平均結晶粒径は5nm〜100n
mに限定する。複雑形状や薄肉形状の磁石が得られるボ
ンド磁石としての特徴を生かし、高精度の成型を行うに
は、粉末の粒径は十分小さいことが必要であるが、アト
マイズで得られる粒径が100μmを越える合金粉末は
急冷時に十分粉末内部まで冷却されず大部分がα−Fe
相となるため、熱処理を施してもFe3B並びにNd2
14B相が析出せずに、硬磁性材料となり得ない。ま
た、3μm未満の粒径では、比表面積増大に伴い多量の
樹脂を使用する必要があり、充填密度が低下して好まし
くないため、粉末粒径を3μm〜500μmに限定す
る。
【0020】この発明によるボンド磁石は等方性磁石で
あり、以下に示す圧縮成型、射出成型、押し出し成型、
圧延成型、樹脂含浸法など公知のいずれの製造方法であ
ってもよい。圧縮成型の場合は、磁性粉末に熱硬化性樹
脂、カップリング剤、滑剤等を添加混練したのち、圧縮
成型して加熱樹脂を硬化して得られる。射出成型、押し
出し成型、圧延成型の場合は、磁性粉末に熱可塑性樹
脂、カップリング剤、滑剤等を添加混練したのち、射出
成型、押し出し成型、圧延成型のいずれかの方法にて成
型して得られる。樹脂含浸法においては、磁性粉末を圧
縮成型後、必要に応じて熱処理した後、熱硬化性樹脂を
含浸させ、加熱して樹脂を硬化させて得る。また、磁性
粉末を圧縮成型後、必要に応じて熱処理した後、熱可塑
性樹脂を含浸させて得る。
【0021】この発明において、ボンド磁石中の磁性粉
末の重量比は、前記製法により異なるが、70〜99.
5wt%であり、残部0.5〜30wt%が樹脂その他
である。圧縮成型の場合、磁性粉末の重量比は95〜9
9.5wt%、射出成型の場合、磁性粉末の充填率は9
0〜95wt%、樹脂含浸法の場合、磁性粉末の重量比
は96〜99.5wt%が好ましい。この発明における
合成樹脂は、熱硬化性、熱可塑性のいずれの性質を有す
るものも利用できるが、熱的に安定な樹脂が好ましく、
例えば、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、弗
素樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂などを適宜選定でき
る。
【0022】製造条件の限定理由 この発明において、上述の特定組成の合金溶湯を超急冷
法にてアモルファスとなし、Fe3P型結晶構造を有す
る鉄を主成分とするホウ化物相が析出する温度付近から
の昇温速度を1℃/分〜15℃/分で昇温して600℃
〜750℃で10秒間〜6時間保持する熱処理を施すこ
とにより、熱力学的には準安定相であるFe3P型結晶
構造を持つFe3B相と、Nd2Fe14B型結晶構造を有
する強磁性相が共存し、各構成相の平均結晶粒径が5n
m〜100nmの範囲にある 微結晶集合体を得ること
が最も重要であり、合金溶湯の超急冷処理には公知の回
転ロールを用いた超急冷法を採用できるが、実質的に9
0%以上のアモルファスが得られれば、回転ロールを用
いた超急冷法の他にもスプラット急冷法、ガスアトマイ
ズ法あるいはこれらを組み合わせた急冷方法を採用して
もよい。例えば、Cu製ロールを用いる場合は、そのロ
ール表面周速度が10〜50m/秒の範囲が好適な組織
が得られるため好ましい。すなわち周速度が10m/秒
未満ではアモルファスとならずα−Fe相の析出量が増
大して好ましくなく、ロール表面周速度が50m/秒を
超えると、急冷された合金が連続的なリボンとして生成
せず、合金片が飛散し、装置から合金を回収する際の回
収率や回収能率が低下して好ましくない。ただし、少量
のα−Fe相が急冷薄帯中に存在しても特性を著しく低
下させるものでなく許容される。
【0023】この発明において、上述の特定組成の合金
溶湯を超急冷法にて実質的に90%以上をアモルファス
となした後、磁気特性が最高となる熱処理は組成に依存
するが、熱処理温度が600℃未満ではNd2Fe14
相が析出せず、4kOe以上のiHcが得られず、また
750℃を超えると熱平衡相であるα−Fe相とFe2
BまたはNd1.1Fe44相が生成してiHcが発現し
ないため、熱処理温度は600〜750℃以下に限定す
る。熱処理雰囲気はArガスなどの不活性ガス雰囲気も
しくは10-3Torr以上の真空中が好ましい。熱処理
時間は短くてもよいが、10秒未満では十分なミクロ組
織の生成が行われず、iHc及び減磁曲線の角型性が劣
化し、また6時間を超えると4kOe以上のiHcが得
られないので、熱処理保持時間を10秒〜6時間に限定
する。
【0024】この発明において重要な特徴として、熱処
理に際してFe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とす
るホウ化物相が析出する温度からの昇温速度であり、1
℃/分未満の昇温速度では、昇温中にNd2Fe14B相
とFe3B相の結晶粒径が大きく成長しすぎてiHcが
劣化し、4kOe以上のiHcが得られない。また、1
5℃/分を超える昇温速度では、600℃を通過してか
ら生成するNd2Fe14B相の析出が十分に行われず、
α−Fe相の析出量が増大して、磁化曲線の第2象限に
Br点近傍に磁化の低下のある減磁曲線となり、(B
H)maxが劣化するため好ましくない。ただし、少量
のα−Fe相の存在は許容できる。なお、熱処理に際し
てFe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とするホウ化
物相が析出する温度未満まではその昇温速度は任意であ
り、急速加熱などを適用して処理能率を高めることがで
きる。
【0025】結晶構造 この発明による希土類磁石並びに希土類磁石合金粉末の
結晶相は、Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とす
るホウ化物を主相とし、Nd2Fe14B型結晶構造を有
する強磁性相を有し、平均結晶粒径が5nm〜100n
mの微細結晶集合体からなることを特徴としている。こ
の発明において、磁石合金の平均結晶粒径が100nm
を超えると、減磁曲線の角型性が著しく劣化し、Br≧
6kG、(BH)max≧7MGOeの磁気特性を得る
ことができない。また、平均結晶粒径は細かいほど好ま
しいが、5nm未満の平均結晶粒径を得ることは工業生
産上困難であるため、下限を5nmとする。
【0026】
【作用】この発明は、希土類元素の含有量が少ない特定
組成のFe−Cr−B−R合金溶湯(RはNdまたはP
r)あるいはFe−Cr−B−R−M合金溶湯(MはA
l、Si、Pbの1種もしくは2種以上)を前述の超急
冷法にて実質的に90%以上をアモルファス組織とな
し、得られたリボン、フレーク、球状粉末をFe3B析
出温度以上から1〜15℃/分の昇温速度で昇温した
後、600〜750℃で10秒〜6時間保持する熱処理
を施すことにより、熱力学的には、準安定相であるFe
3P型結晶構造をもつFe3B相とNd2Fe14B型結晶
構造を有する強磁性相が共存し、各構造相の平均結晶粒
径が5nm〜100nmの範囲にある微結晶集合体を得
る。この際、Crを加えることでCrの一部が硬磁性相
であるNd2Fe14B相のFe原子と置換することでN
2Fe14B相の異方性定数が向上すること、残部のC
rがiHcを低減する軟磁性相であるα−Feとの間に
非磁性の金属間化合物を作ることにより、Crを含有し
ない組成より高いiHcが発現する。さらにCrと同時
にAl、Si、Pbを1種あるいは2種以上含有するこ
とにより、Cr含有時のBr、減磁曲線の角形の劣化を
改善することができ、iHc≧4kG、Br≧6kG、
(BH)max≧6MGOeの磁気特性を有するボンド
磁石を得ることができる。
【0027】
【実施例】実施例1 表1のNo.1〜5の組成となるように、純度99.5
%以上のFe、Cr、B、Nd、Pr、Al、Siの金
属を用いて、総量が30grとなるように秤量し、底部
に直径0.8mmのオリフィスを有する石英るつぼ内に
投入し、圧力56cmHgのAr雰囲気中で高周波加熱
により溶解し、溶解温度を1400℃にした後、湯面を
Arガスにより加圧して室温にてロール周速度20m/
秒にて高速回転するCu製ロールの外周面に0.7mm
の高さから溶湯を噴出させて、幅2〜3mm、厚み30
〜40μmの超急冷薄帯を作製した。得られた超急冷薄
帯をCuKαの特性X線によりアモルファスであること
を確認した。
【0028】この超急冷薄帯をArガス中で590℃ま
で急速加熱した後、590℃以上を表1に示す昇温速度
で昇温し、表1に示す熱処理温度で7分間保持し、その
後室温まで冷却して薄帯を取り出し、幅2〜3mm、厚
み30〜40μm、長さ3〜5mmの試料を作製し、V
SMを用いて磁気特性を測定した。測定結果を表2に示
す。なお、試料の測定結果は、正方晶と斜方晶が混在す
るFe3B相が主相で、Nd2Fe14B相とα−Fe相が
混在する多相組織であり、平均結晶粒径はいずれも10
0nm以下であった。なお、Crはこれらの各相でFe
の一部を置換するが、Al、Si、Pbについては添加
量が少ない上、超微細結晶であるため分析不能であっ
た。この薄帯を粉砕して、粒径が5〜120μmにわた
って分布する平均粒径60μmの粉末を得たのち、粉末
98wt%に対してエポキシ樹脂を2wt%の割合で混
合したのち、6ton/cm2の圧力で圧縮成型し、1
50℃で硬化処理してボンド磁石を得た。このボンド磁
石の密度は6.0gr/cm3であり、磁石特性を表2
に示す。
【0029】比較例 表1のNo.6の組成となるように純度99.5%以上
のFe、B、Ndを用いて実施例1と同条件で超急冷薄
帯を作製した。得られた薄帯を実施例1と同一条件の熱
処理を施し、冷却後に実施例1と同条件で粉砕して、平
均粒径60μmの粉末を得たのち、実施例1と同一条件
にてボンド磁石を作成した。得られたボンド磁石の磁石
特性を表2に示す
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】この発明は、希土類元素の含有量が少な
い特定組成のFe−Cr−B−R合金溶湯(RはNdま
たはPr)あるいはFe−Cr−B−R−M合金溶湯
(MはAl、Si、Pbの1種もしくは2種以上)を前
述の超急冷法にて実質的に90%以上をアモルファス組
織となし、得られたリボン、フレーク、球状粉末を得、
これに特定条件の熱処理を施すことにより、熱力学的に
は準安定相であるFe3P型結晶構造をもつFe3B相と
Nd2Fe14B型結晶構造を有する強磁性相が共存し、
各構成相の平均結晶粒径が5nm〜100nmの範囲に
ある微結晶集合体を得る。この際、Crを加えることで
Crの一部が硬磁性相であるNd2Fe14B相のFe原
子と置換することでNd2Fe14B相の異方性定数が向
上すること、残部のCrがiHcを低減する軟磁性相で
あるα−Feとの間に非磁性の金属間化合物を作ること
により、Crを含有しない組成より高いiHcが発現す
る。さらにCrと同時にAl、Si、Pbを1種あるい
は2種以上含有することにより、Cr含有時のBr、減
磁曲線の角形の劣化が改善されることにより、iHc≧
4kG、Br≧6kG、(BH)max≧6MGOeの
磁気特性を有するボンド磁石を得ることができる。ま
た、この発明は、希土類元素の含有量が少なく、製造方
法が簡単で大量生産に適しているため、5kG以上の残
留磁束密度Brを有し、ハードフェライト磁石を超える
磁気的性能を有するボンド磁石を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 1/08 7/02 A

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式をFe100-x-y-zCrxyz
    (但しRはPrまたはNdの1種または2種)と表し、
    組成範囲を限定する記号x、y、zが下記値を満足し、
    体心正方晶Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とす
    るホウ化物相と、Nd2Fe14B型結晶構造を有する構
    成相とが同一粉末粒子中に共存し、各構成相の平均結晶
    粒径が5nm〜100nmの範囲にあり、平均粒径が3
    μm〜500μmである粉末を樹脂にて結合したことを
    特徴とする希土類ボンド磁石。 0.01≦x≦5at% 16≦y≦22at% 3≦z≦5.5at%
  2. 【請求項2】 組成式をFe100-x-y-z Crxyz
    w (但しRはPrまたはNdの1種または2種、Mは
    Al,SiまたはPbの1種または2種以上)と表し、
    組成範囲を限定する記号x、y、z、wが下記値を満足
    し、体心正方晶Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分
    とするホウ化物相と、Nd2Fe14B型結晶構造を有す
    る構成相とが同一粉末粒子中に共存し、各構成相の平均
    結晶粒径が5nm〜100nmの範囲にあり、平均粒径
    が3μm〜500μmである粉末を樹脂にて結合したこ
    とを特徴とする希土類ボンド磁石。 0.01≦x≦5at% 16≦y≦22at% 3≦z≦5.5at% 0.1≦w≦3at%
  3. 【請求項3】 組成式をFe100-x-y-zCrxyz
    (但しRはPrまたはNdの1種または2種以上)と表
    し、組成範囲を限定する記号x、y、zが下記値を満足
    する合金溶湯を回転ロールを用いた超急冷法、スプラッ
    ト急冷法、ガスアトマイズ法あるいはこれらを組み合せ
    て急冷し、実質的に90%以上をアモルファス組織とな
    し、さらに熱処理の際に、Fe3P型結晶構造を有する
    鉄を主成分とするホウ化物相が析出する温度付近からの
    昇温速度を1℃/分〜15℃/分で昇温して600℃〜
    750℃で10秒間〜6時間保持する熱処理を施し、F
    3P型結晶構造を有する鉄を主成分とするホウ化物相
    と、Nd2Fe14B型結晶構造を有する構成相とが同一
    粉末粒子中に共存し、各構成相の平均結晶粒径が5nm
    〜100nmの微結晶集合体からなる平均粒径3μm〜
    500μmの磁石合金粉末を樹脂にて結合したことを特
    徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 0.01≦x≦5at% 16≦y≦22at% 3≦z≦5.5at%
  4. 【請求項4】 組成式をFe100-x-y-z Crxyz
    w (但しRはPrまたはNdの1種または2種以上、
    MはAl、SiまたはPbの1種または2種以上)と表
    し、組成範囲を限定する記号x、y、z、wが下記値を
    満足する合金溶湯を回転ロールを用いた超急冷法、スプ
    ラット急冷法、ガスアトマイズ法あるいはこれらを組み
    合せて急冷し、実質的に90%以上をアモルファス組織
    となし、さらに熱処理の際に、Fe3P型結晶構造を有
    する鉄を主成分とするホウ化物相が析出する温度付近か
    らの昇温速度を1℃/分〜15℃/分で昇温して600
    ℃〜750℃で10秒間〜6時間保持する熱処理を施
    し、Fe3P型結晶構造を有する鉄を主成分とするホウ
    化物相と、Nd2Fe14B型結晶構造を有す構成相とが
    同一粉末粒子中に共存し、各構成相の平均結晶粒径が5
    nm〜100nmの範囲にある微結晶集合体からなる平
    均粒径3μm〜500μmの磁石合金粉末を樹脂にて結
    合したことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 0.01≦x≦5at% 16≦y≦22at% 3≦z≦5.5at% 0.1≦w≦3at%
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