JPH07127058A - 上向きアンカーの施工方法及びアンカー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は地下発電所の建設等地中空間の建設
に当り、地中空間の壁面保持に用いるアンカー、特に天
井部のアンカー施工に関する。 【構成】 アンカーの先端が上方に向っている上向きア
ンカーの施工において、アンカー孔１に挿入したＰＣ鋼
材Ｗの引張部端部に固着したブロッキングパイプ11の外
周と、孔壁の間に設置したパッカー12に、グラウトまた
は早強型の流体状樹脂を注入してパッカーを膨張し、こ
の膨張、固化によりブロッキングパイプを孔壁に固着
し、該挿入ＰＣ鋼材の落下を防止して、ＰＣ鋼材アンカ
ー体部2'' への１次グラウト注入他のアンカー工事を行
うことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は例えば地下発電所の建設
等の地中空間の建設に当り、土圧による岩盤のはらみ出
し、崩壊を防止するため、地中空間の壁面保持に用いる
アンカー、特に天井部のアンカー施工に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種技術としては例えば特公昭 64-16
11号が知られている。これは第５図に示す様に、上方傾
斜型アンカーの施工法で、地盤に穿ったアンカー孔１の
入口の大径部1'に、筒型のブロッキングパイプ保持具20
を挿入し、予め地盤Ａにドライモルタル等で固着したホ
ールインアンカー21と固定金具22で連結して、該保持具
が落ちない様に仮止めする。

【０００３】次いで該保持具と大径部孔壁との間にドラ
イモルタルＭ等を充填、固化して該保持具をしっかりと
孔壁に固着する。しかる後上記保持具と鍔部で接する鍔
10を備えたブロッキングパイプ11を含むグラウティング
用部材を備えたＰＣ鋼より線Ｗをアンカー孔内に挿入
し、該パイプの鍔と該保持具を関着して挿入したＰＣ鋼
線の落下を防止する。

【０００４】この状態で、アンカー孔内に１次、２次グ
ラウトを注入、固化する等の工事を施して、上方傾斜型
のアンカーを形成することが開示されている。また上記
ホールインアンカーによる仮止めに替えて、孔壁と保持
具の間に複数本のスプリング棒鋼を装填して、その押圧
力で仮止めする方法も提案されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記従来法は何れも筒
型ブロッキングパイプ保持具を、上向きのアンカー孔内
に差し上げて挿入、仮止めし、その保持具と孔壁の間に
ドライモルタル（セメントまたはレジン）を人手で差し
上げ充填するもので、作業性が悪るい。

【０００６】そのため充填が完全に行きわたらない懸念
があり、不完全になると後で挿入したＰＣ鋼より線が工
事中に脱落するおそれがある。また充填したモルタルの
固化に時間を要すると共に、上記保持具の装備固着のた
めアンカー孔入口に大径部を必要とする等、施工上、費
用上の問題を有している。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は敍上の問題を解
決しようとするもので、従来のアンカー孔壁と筒型ブロ
ッキングパイプ保持具の間の空間に、モルタルを充填し
てその固化により保持具を孔壁に固定するのに替え、該
空間に設置したパッカーに、グラウトまたは早強型の流
体状樹脂を注入して、パッカーを膨張させ、その膨張、
固化により該保持具を孔壁に固定することを特徴とする
ものである。

【０００８】また本発明においては、上記特徴に加え、
更に筒型ブロッキングパイプ保持具の仮止め乃至は同保
持具自体の使用を省き、地中空間天井部等の上向きアン
カーで重要な軽量化、小型化を含め、作業性を向上しよ
うとするものである。以下図示する実施例によりその内
容を詳述する。

【０００９】

【実施例】

（実施例１）図２において、１は地盤Ａに上向きに設け
たアンカー孔で、２は該アンカー孔に支持装置３により
引上げ挿入されるグラウティング用部材を具備したＰＣ
鋼材である。該鋼材の構成を図２に図3a，ｂ，ｃ，ｄを
併せて説明する。

【００１０】図３のａ，ｂ，ｃ，ｄは夫々図２における
ＰＣ鋼材２の引張部2'のＡ−Ａ断面、Ｂ−Ｂ断面、アン
カー体部2'' のＣ−Ｃ断面、Ｄ−Ｄ断面を示す。Ｗは中
心に１次グラウト排気パイプ４を置いて並行する４本の
ＰＣ鋼より線で、２次グラウト排気パイプ５と共にシー
ス６中に挿入されている。１次グラウト排気パイプの先
端を越した引張部の先端には止水板７が嵌め込まれる。
アンカー体部にはスペーサー８が嵌め込まれ、その先端
はバインド９されている。引張部の根本部には根本に鍔
10を設けたブロッキングパイプ11が取付けられ、このパ
イプはシース６の根本側端にレジンモルタルで密着固定
されている。該パイプの外周にはナイロン等の繊維布を
縫合して袋状に形成した空のパッカー12が、注入ホース
13に連結して取付けられている。

【００１１】次に図１を加えて、上記ＰＣ鋼材２をアン
カー孔１に挿入、固定してアンカー体を施工する方法を
説明する。図２の様に該鋼材を支持装置３の滑車14にか
けられたワイヤーロープＲをウインチ14' によって牽引
することによって上向きのアンカー孔内に引き込まれ
る。Ｒ₁ は鋼材２をワイヤーロープＲに取り付け，取り
外しするホルダーである。ＰＣ鋼材２の先端がアンカー
孔内端の所定位置に達すれば、図１に示す様に注入ホー
ス13から、パッカー12にグラウトまたは早強型の流体状
樹脂を加圧注入して、パッカーを膨張さす。此の樹脂と
してはエポキシ又はウレタンなどを用いた。

【００１２】この柔軟なパッカーの膨張により、孔壁の
隅々までとブロッキングパイプの外周との間の空隙は完
全に埋まり、かつこの加圧注入は２〜５kgf/cm² 程度
で、膨張圧によりブロッキングパイプはこの位置で孔壁
に固定される。それにより支持装置３を取り除いても、
ブロッキングパイプに固着されている鋼材はアンカー孔
内に挿入されたまま保持される。尚13' は注入ホースに
取付けたコックで、グラウトの注入が終れば密閉し、グ
ラウトはパッカーを膨張した状態で固化する。

【００１３】ブロッキングパイプ11が固定されれば、同
パイプに取付けられた１次グラウト注入パイプ15より１
次グラウトを注入する。１次グラウトはアンカー孔壁と
シース６の間の隙間から上方先端に達し、バインド９を
含むアンカー体部2'' を充填固化して孔壁に固着され
る。シース６内は止水板７によりグラウトは注入され
ず、またこの１次グラウトは上向の孔壁に沿って行われ
るが、アンカー孔入口部は、パッカーにより、ブロッキ
ングパイプと１体に固着されているので、入口部より下
方に漏れ落ちることはない。アンカー孔内の空気は１次
グラウト排気パイプ４を通って排出される。

【００１４】１次グラウトが固化すると、ベアリングプ
レート16、アンカープレート17を取りつけて緊張装置に
よりＰＣ鋼より線Ｗを緊張し、グリップ18によってアン
カー固定し、ベアリングプレートを地盤に締めつける。

【００１５】次いで、２次グラウト注入パイプ19から２
次グラウトをシース６の内側に注入する。その際２次グ
ラウト排気パイプ５によってシース内の空気が排出され
る。２次グラウトがＰＣ鋼より線を包んで固化するとア
ンカー施工は完了する。

【００１６】（実施例２）図４は、筒型のブロッキンク
パイプ保持具20を用いた場合の実施例２を示し、実施例
１がブロッキングパイプ11を直接パッカー12で固定した
のに対し、上記保持具をパッカー12で固定する点が異な
るものである。

【００１７】従って、当実施例２においては、保持具20
をアンカー孔１に挿入保持するため、アンカー孔１の入
口部には大径部1'を設けねばならないが、この保持具を
用いることにより鋼材のアンカー孔への引込み固定はよ
り安全、確実なものになる。

【００１８】図４において、大径部1'に上記保持具20を
挿入し、孔壁と該保持具20の外周との間に設置した空の
パッカー12に、注入ホース13よりグラウトまたは早強型
の流体状樹脂を加圧、注入してパッカーを膨張し、その
膨張圧により該保持具を孔壁に固定する。注入物は固化
し、膨張圧による固定はより確実な固着となる。尚１次
グラウト注入パイプ15は該保持具に取りつけておくこと
が好ましい。

【００１９】ついで図２に示す実施例１の要領で、グラ
ウティング用部材を具備した鋼材２を、該保持具20を通
してアンカー孔１内に引上げ挿入する。鋼材２に具備し
たブロッキングパイプ11をその鍔10で該保持具の入口端
部に関着して、鋼材２を落下しない様にアンカー孔内に
保護する。この状態で、１次グラウト、緊張固定、２次
グラウトのアンカー施工を実施例１と同様に行う。

【００２０】

【作用】本発明は、柔軟な袋状の１個乃至複数個のパッ
カー内にグラウト又は早強型の流体状樹脂を加圧注入
し、パッカーの膨張によりアンカー孔壁とブロッキング
パイプまたは筒型ブロッキングパイプ保持具との間の空
隙を完全に埋めて押圧し、その摩擦力により該パイプま
たは保持具を孔壁に固着、固定するものである。このパ
ッカーの使用により、注入されるグラウト等は予めゴム
パッキングその他の漏れ落ち防止の手当をする必要はな
く、注入自体はホースにより行なわれ、注入による膨
張、固化で固着、固定が行なわれるので、別の落下防止
のための手段を用いずに施工することができる。

【００２１】

【発明の効果】注入ホースよりグラウト等をパッカーに
加圧、注入し、パッカーの膨張によってパイプまたは保
持具が固定されるので、従来の様な人手作業によるドラ
イモルタルの上向き充填作業が無くなり、作業性が向上
する。そのためドライモルタルの充填不足などのおそれ
もなくなる。また、膨張により固定されるので、従来の
様にドライモルタルの固化、固定を待つことなく、次の
１次グラウト注入の作業に入ることができるので工事期
間が短縮できる。

【００２２】また、ブロッキングパイプ保持具を使わな
い場合は、アンカー孔における入口の大径部の径の程度
は比較的小さいか、地盤の状態によってはなくても可能
なので、該保持具の省略に基づく、入口部分の部材の小
型化、軽量化ができ、これは上向きアンカーとしては極
めて望ましいことである。これらにより、作業性、工事
期間、経費の何れもが改善される。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１実施例におけるアンカー定着部の構成を示
す断面図。

【図２】第１実施例における鋼材をアンカー孔に引込む
状態を示す模式図。

【図３】図２における鋼材の各部分の断面構成を説明す
る断面図でａはＡ−Ａ断面、ｂはＢ−Ｂ断面、ｃはＣ−
Ｃ断面、ｄはＤ−Ｄ断面。

【図４】実施例２におけるアンカー定着部の構成を示す
断面図。

【図５】従来のアンカー定着部の構成を示す断面図。

【符号の説明】

Ａ 地盤 １ アンカー孔 1' アンカー孔の大径部 ２ ＰＣ鋼材 2' ＰＣ鋼材の引張部 2'' ＰＣ鋼材のアンカー体部 ３ 支持装置 Ｗ ＰＣ鋼より線 ４ １次グラウト排気パイプ ５ ２次グラウト排気パイプ ６ シース ７ 止水板 ８ スペーサー ９ バインド 10 ブロッキングパイプの鍔 11 ブロッキングパイプ 12 パッカー 13 注入ホース 13' 注入ホースのコック 14 支持装置の滑車 14' 支持装置のウインチ 15 １次グラウト注入パイプ 16 ベアリングプレート 17 アンカープレート 18 グリップ 19 ２次グラウト注入パイプ 20 ブロッキングパイプ保持具 21 ホールインアンカー 22 固定金具 Ｍ ドライモルタル Ｒ ワイヤーロープ Ｒ₁ ホルダー

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 沖田 克尚 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目１番１号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 三上 泰治 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目１番１号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アンカーの先端が上方に向っている上向
   きアンカーの施工において、地盤に穿ったアンカー孔
   に、引張部端部に固着したブロッキングパイプを含むグ
   ラウティング用部材を具備したＰＣ鋼材のアンカー体部
   及び引張部を挿入した後、アンカー孔壁とブロッキング
   パイプの間に設置したパッカーに、グラウトまたは早強
   型の流体状樹脂を注入してパッカーを膨張させ、この膨
   張、固化によりブロッキングパイプを孔壁に固着し、該
   挿入ＰＣ鋼材の落下を防止して、所定のアンカー工事を
   施すことを特徴とする上向きアンカーの施工方法。
2. 【請求項２】 アンカーの先端が上方に向っている上向
   きアンカーの施工において、入口に大径部を設けたアン
   カー孔を地盤に穿ち、該大径部に筒型のブロッキングパ
   イプ保持具を挿入した後、地盤の大径部壁とブロッキン
   グパイプ保持具との間に設置したパッカーに、グラウト
   または早強型の流体状樹脂を注入してパッカーを膨張さ
   せ、この膨張固化によりブロッキングパイプ保持具を孔
   壁に固着し、該アンカー孔内に、引張部端部に固着した
   鍔を有するブロッキングパイプを含むクラウティング用
   部材を具備したＰＣ鋼材のアンカー体部及び引張部を挿
   入し、該ブロッキングパイプの鍔をブロッキングパイプ
   保持具に関着して、該挿入ＰＣ鋼材の落下を防止して所
   定のアンカー工事を施すことを特徴とする上向きアンカ
   ーの施工方法。
3. 【請求項３】 アンカー孔壁とブロッキングパイプとの
   間、またはアンカー孔壁と筒型ブロッキングパイプ保持
   具との間に設置したパッカーに、グラウトまたは早強型
   の流体状樹脂が注入されてパッカーが膨張、固化し、こ
   の膨張固化によりブロッキングパイプまたは筒型ブロッ
   キングパイプ保持具がアンカー孔壁に固着されたことを
   具備してなることを特徴とする上向きアンカー。