JPH071255B2 - 方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定方法及び装置 - Google Patents

方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定方法及び装置

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JPH071255B2
JPH071255B2 JP63235294A JP23529488A JPH071255B2 JP H071255 B2 JPH071255 B2 JP H071255B2 JP 63235294 A JP63235294 A JP 63235294A JP 23529488 A JP23529488 A JP 23529488A JP H071255 B2 JPH071255 B2 JP H071255B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定方法及
び装置に係り、特に、圧延方向に電磁特性の優れた方向
性珪素鋼板を製造する際に用いるのに好適な、方向性珪
素鋼板の結晶粒方位分布を、オンラインで非破壊的に測
定することが可能な、実用性の高い結晶粒方位分布測定
方法及び装置に関する。
【従来の技術】
交流電流の昇圧トランスのコア等への適用を目的とし
て、圧延方向に電磁特性の優れた方向性珪素鋼板が製造
されている。この方向性珪素鋼板は、(110)面が板面
に平行に、<100>方向が圧延方向と平行になる、所謂
ゴス方位を向いた結晶粒を工程的に作ることによって達
成される。 前記ゴス方位に近い結晶粒が多い程、電磁特性の優れた
方向性珪素鋼板となるわけであるが、実際の製造工程で
は、必ずしもゴス方位に近い結晶粒のみを作られるわけ
ではなく、製造条件の変化や外乱によつて、このゴス方
位から大きくずれた結晶粒、所謂異常粒ができてしま
う。 この異常粒10Aができた製品10の模式図を第14図に示
す。ゴス方位に近い正常粒10Bは粒径が数mm〜数十mmと
大きいが、異常粒10Aでは一般に粒径が数mm以下で、結
晶粒の方位はランダムな向きになつており、第14図に示
した如く、圧延方向に長く伸びて分布する。 このような方向性珪素鋼板の製造工程では、製品の電磁
気特性の検査装置として、オフラインではエプスタイン
試験器や単板試験器、オンラインでは連続鉄損計があ
り、鋼板の鉄損値や磁束密度を計測している。しかしな
がら、このような測定器は、鋼板の幅方向の平均的な電
磁気特性しか測定することができず、異常粒10Aの分布
は測定できない。 一方、珪素鋼の異常粒分布を測定する方法として、製品
を短冊状に切り出して、表面の絶縁被膜をはがし、ナイ
タールでエツチングすることにより、結晶粒の方向によ
つてエツチングのされ方が違うことを利用して、結晶粒
の分布を観測するマクロエツチ法がある。 しかしながら、このマクロエツチ法は、オフラインに限
られ、オンラインに適用するのが不可能である。又、製
品を切断して短冊状に切り出す必要がある。更に、絶縁
被膜をはがしてエツチングをしなければならず、手間が
大変である上、薬品の処理等、取扱いの問題がある。
又、破壊試験であり、抜き取り検査であるため、製品の
全長品質の保証には使えない。更に、作業の性質上、効
率が悪い等の問題点を有していた。 一方、本発明に関連する技術として、超音波の結晶内伝
播特性を利用した鋼板特性の非破壊検査方法も提案され
ている。 即ち、等軸晶系の物体の<n1、n2、n3>方向に伝播する縦
波超音波の音速vは、一般に、次の方程式の一根として
与えられる。 (ρv2-C44)−a(ρv2-C44+c(a+b)(n1 2
n2 2+n2 2n3 2+n3 2n1 2)(ρv2-C44) -c2(a+2b)n1 2n2 2n3 2=O …………(1) ここで、n1、n2、n3は、伝播方向と結晶主軸との方向余弦
である。又、a、b、cはそれぞれ次式で示される。 a=C11-C44 ……(2) b=C12+C44 ……(3) c=C11-C12-2C44 ……(4) ここで、Cijは弾性行列のij成分である。 従つて、物体として鋼を想定し、鋼の弾性定数を与え
て、前出(1)式より単結晶内各方向に伝播する縦波超
音波の音速vを求めることができる。 その計算結果例を第15図にステレオ投影図上の形式で示
す。この結果より、超音波の伝播方向によつて音速vが
異なるので、逆に音速vを測定することによつて、結晶
の方位を或る程度決めることができる。例えば板厚方向
をZ軸とし、Z軸方向の音速vを測定し、その値が6500
m/sであれば、この物体は結晶の[111]軸が板厚方向を
向いているといえる。 このような超音波の結晶内伝播特性を利用した材料特性
計測の従来例として、特開昭53−126992に開示された、
超音波による鋳造組織の判別法がある。この方法は、多
結晶物体の板厚方向の超音波の伝播時間を測定し、その
測定値から鋳造組織の柱状晶厚み、等軸晶厚みを推定し
ようとするものである。 この方法に限らず、一般に物体の板厚方向の音速を測る
場合、第16図に示す如く、超音波探触子12により被測定
体11の板厚方向に超音波を打ち込み、これによつて生じ
る、例えば第17図に示すような底面エコー例B1、B2、B3
時間間隔tを測定し、次式によつて音速vを求める方式
がとられる。 v=2d/t ……(5) ここで、dは被測定体11の板厚である。 又、第17図において、Sは表面反射波による信号であ
る。 しかしながら、この方式においても、板厚dが超音波の
波長近くになると底面エコー列B1、B2、B3が重なり合つて
しまうため、時間間隔tが測れなくなつてしまうという
問題点を有していた。 例えば、超音波の周波数が10MHzの場合、縦波の波長は
大体0.6mmであり、一方、測定対象となる珪素鋼板11の
板厚dは、0.1〜0.5mmであるため、この方法は適用でき
ない。 この方法を適用するとすれば、超音波の周波数を100MHz
以上で、且つ、短パルスにする必要があり、電気回路上
の問題や超音波の減衰が大きくなる等の問題があり、実
用的でなくなる。 一方、底面エコー列を利用しない方法、例えば第18図に
示す如く、被測定体11を挾んで超音波の送信子12Aと受
信子12Bを配置して、超音波の透過時間差tiを測定する
方法も考えられる。この場合、透過時間差tiと音速vの
関係は次式に示す如くとなる。 ti=d/v+(l1+l2)/v0 …(6) Δti=dΔv/v2 …(7) 従つて、例えば音速vを1%の精度で求めようとする
と、音速v=6000m/s、板厚d=0.3mm、Δv/v=0.01を
(7)式に代入して、Δti=5×10-10秒を得る。この
とき、超音波探触子12A、12B間を一定に保つ必要がある
が、許され得る変動は0.75μmである。この値は実験室
的に性格を期せば測定できない値ではないが、実用上は
問題となる。
【発明の課題】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたも
ので、マクロエツチ法のように、製品を短冊状に切り出
したり、絶縁被膜を剥したりする必要がなく、非破壊的
にオンラインで方向性珪素鋼板の異常粒分布を効率よく
検出し、全長に亘る品質保証を行なうことが可能であ
る、実用的な方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定方法
及び装置を提供することを課題とする。
【課題を達成するための手段】
本発明は、方向性珪素鋼板の結晶粒方位の分布を測定す
るに際して、鋼板板厚が、目的の方位を持つた結晶粒の
板厚方向へ伝播する超音波の半波長の略半整数倍又は略
半整数倍になるように超音波の励振周波数を設定し、こ
の周波数を持つた、2波以上の波を含むバースト状の超
音波パルスを、被測定体と相対運動する少なくとも1個
の超音波探触子により板厚方向に入射して、板表面から
の反射に引き続いて発生する底面及び上面からの多重反
射波同士を干渉させ、この干渉した多重反射波を検出
し、該多重反射波の振幅の大きさから珪素鋼板中の各結
晶粒の方位を推定し、超音波を入射した各部分の結晶粒
の方位の分布を2次元的に検出するようにして、前記課
題を達成したものである。 又、前記鋼板板厚が、超音波の半波長の整数倍又は半整
数倍より少しずれた値となるように設定したものであ
る。 又、本発明は、方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定装
置を、電気信号と超音波を相互に変換するための、被測
定体を挾んで相対する位置にそれぞれ配設された送信子
及び受信子としての超音波探触子と、前記送信子に、鋼
板板厚が、目的の方位を持つた結晶粒の板厚方向へ伝播
する超音波の半波長の略半整数倍又は略半整数倍になる
ような周波数を持つた、2波以上の連続したバースト波
の電気信号を送る送信手段と、前記受信子に発生した信
号を受信する受信手段と、該受信手段の受信信号から、
板表面からの反射に引き続いて発生する底面及び上面か
らの多重反射波同士の干渉による信号を取り出す手段
と、前記多重反射波の振幅の大きさから、超音波を入射
した部分の結晶粒の方位が正常か否かを判定する手段
と、を用いて構成したものである。 又、前記超音波探触子を、超音波を絞ることができる焦
点超音波探触子とし、その焦点位置を、被測定体の板厚
方向中心に略一致させたものである。 又、本発明は、方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定装
置を、電気信号と超音波を相互に変換するための、被測
定体の片側に配置された、送受信子としての超音波探触
子と、被測定体を挟んで、該超音波探触子の反対側に配
置された反射板と、前記超音波探触子に、鋼板板厚が、
目的の方位を持った結晶粒の板厚方向へ伝播する超音波
の半波長の略半整数倍又は略半整数倍になるような周波
数を持つた、2波以上の連続したバースト波の電気信号
を送る送信手段と、前記反射板で反射され、被測定体を
再び透過して前記超音波探触子に発生した信号を受信す
る受信手段と、該受信手段の受信信号から、板表面から
の反射に引き続いて発生する底面及び上面からの多重反
射波同士の干渉による信号を取り出す手段と、前記多重
反射波の振幅の大きさから、超音波を入射した部分の結
晶粒の方位が正常か否かを判定する手段と、を用いて構
成したものである。 又、前記反射板の超音波反射部を凹面とし、該凹面で反
射された超音波が、被測定体の厚み方向の略中心で再び
焦点を結ぶようにしたものである。 又、本発明は、方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定装
置を、電気信号と超音波を相互に変換するための、少な
くとも1個の超音波探触子と、該超音波探触子を2次元
方向に走査する走査装置と、前記超音波探触子に、鋼板
板厚が、目的の方位を持つた結晶粒の板厚方向へ伝播す
る超音波の半波長の略半整数倍又は略半整数倍になるよ
うな周波数を持つた、2波以上の連続したバースト波の
電気信号を送ると共に、超音波探触子からの信号を受信
するパルサ及びレシーバと、前記パルサの駆動を制御す
るタイミングコントロール回路と、該タイミングコント
ロール回路から出るパルスと同期して、板表面からの反
射波による信号を除き、板底面及び上面からの多重反射
波同士の干渉による信号のみを取り出すゲート回路と、
該干渉信号のピーク値を一定時間保持するピークホール
ド回路と、該ピークホールド回路の出力をアナログ/デ
ジタル変換するアナログ/デジタル変換器と、該アナロ
グ/デジタル変換器の出力を入力し、所定の演算を行な
うことにより、超音波を入射した部分の結晶粒の方位が
正常か否かを判定すると共に、前記走査装置の位置情報
を基に、異常な方位を持つた結晶粒分布を算出する演算
装置と該算出結果を表示する表示装置と、を用いて構成
したものである。
【発明の作用及び効果】
本発明者らは、従来の超音波法の欠点に鑑みて、超音波
の音速をそのまま検出するのではなく、超音波の干渉を
利用して、音速の変化を干渉の強弱に変換し、この強弱
を検出することにより、音速に対応した情報を取り出す
ことを考えた。即ち、接触媒質、例えば水を介して、第
2図に示す如く、或る板厚dをもつた被測定体(鋼板)
11に超音波のパルスを探触子12から垂直入射すると、板
の表裏面で超音波の反射、透過が起こり、多重反射波が
観測される。 超音波の波長と、板厚dが同程度の大きさになると、多
重反射波は互いに重なり、第3図に示す如く干渉が起こ
る。この干渉は、多重反射波同士の位相が180°で合つ
ていないとき(非共鳴又は非共振状態)に打消し合い
(干渉多重反射波信号Bb′)、一方、位相が0°で合つ
ているとき(共鳴又は共振状態)、最も強め合う(干渉
多重反射波信号Ba′)。第3図において、Sa′、Sb′
は、いずれも表面反射波信号である。 波と波が重なり合う干渉の条件は、超音波の励振周波数
fが次式を満足することである。 f={v/(2d)}・n …(8) 但し、nは整数 又、超音波が干渉するには、少なくとも2波長以上を含
むパルス波、即ちバースト波であることも必要である。 珪素鋼板で正常粒はゴス方位をとつており、このとき板
厚方向の結晶軸は<110>であり、その方向の音速は620
0m/sである。そこで、鋼板板厚d=0.3mm、超音波の励
振周波数f=10.33MHz、バースト波数を10としたとき、
音速vと干渉多重反射波の強度の関係を計算で求めてみ
ると、第4図に示す如くとなる。 方向性珪素鋼板の正常粒はゴス方位をとつており、方位
のずれは高々10°以内である。これを板厚方向の音速に
換算すると、6200±50m/sの分布になる。従つて、干渉
多重反射波の強度を監視し、或る値以下になつたら異常
粒であると判定することができる。実際には、異常粒10
Aの分布は前出第14図に示した如く、正常粒10Bの粒径に
比べて非常に小さく密集して分布し、且つ、各結晶粒の
方位が全くランダムとなるため、方位が<111>や<100
>となるような粒のみを検出するような閾値としても、
異常粒分布を検出することができる。 本発明を実施するにあたつて留意すべき第1の点は、干
渉多重反射波Ba′、Bb′が、前出第3図に示した如く、
入射波が最初に接触媒質(水)と被測定体(鋼板)の表
面の境界で反射する、振幅の大きな表面反射波Sa′、S
b′に引き続いて起こるので、この表面反射波を検出し
ないようにすることである。 このような被測定体の上表面反射波を検出しないで、干
渉多重波のみを検出し易くする方法として以下の方法が
ある。 (a)第5図に示す如く、被測定体11を挾んで、超音波
の送信子12Aと受信子12Bを配置し、透過超音波を検出す
る(透過法)。 このようにすれば、被測定体11の上表面で反射される、
強度の大きい表面反射波は受信子12Bに到達しないの
で、受信信号は、第6図に示すように干渉多重信号T1
みとなり、そのピークを検出するのが容易になる。 前記超音波探触子12としては、第5図に示した如く、超
音波を絞ることができる焦点型超音波探触子を用いて、
その焦点位置を、被測定体11の板厚方向中心に略一致さ
せることで、測定の空間的分解能を上げることができ
る。 (b)第7図に示す如く、被測定体11を挾んで、一方に
超音波の送受信子としての超音波探触子12を、他方に多
重反射波が干渉しない厚みを持つた反射板14を設けて、
被測定体11を透過した超音波が反射板14で反射し、該超
音波が再び被測定体11を透過した信号の大きさを検出す
る(反射板法)。 この場合、超音波探触子12の受信信号は、第8図のよう
になるが、このうち、R1が検出すべき信号となり、やは
り、被測定体11の上表面で反射される強度の大きい表面
反射波Bが含まれないので、第8図の下段に示したゲー
ト信号Bにより、目的とする干渉多重信号R1のピークを
検出するのが容易となる。第8図において、Saは被測定
体の表面で反射した信号、Baは、このSaに引続いて生じ
る干渉多重エコーであり、このBaは、第8図の中段に示
したゲート信号Aで取り出すことができる。 この反射板法では、第9図に示すように、反射板14上の
超音波が当る部分を凹面14A状に加工し、反射超音波が
被測定体11内の厚み方向の略中心で再び、焦点を結ぶよ
うにすれば、測定の空間的分解能を上げることができ
る。 上記に示した2つの方法は、干渉多重波のみを検出し易
くするばかりでなく、本発明をオンライン計測に適用す
る場合に、被測定体11が上下に変動しても、その影響が
小さくてすむという利点もある。なお、被測定体11の上
表面で反射される強度の大きい表面反射波の影響が問題
とならない場合や、ゲート回路等、他の手段で除去でき
る場合には、第2図に示したような、単純な反射法の構
成をとることもできる。 これまでの説明では、被測定板厚が、正常な方位を持つ
た結晶粒の板厚方向へ伝播する超音波の半波長の整数倍
となるようにして、正常方位粒で干渉が大きくなり(共
鳴状態)、異常な方位を持つた結晶粒に対して多重反射
の干渉が小さくなる条件の場合を示してきたが、方向性
珪素鋼板では、大部分の結晶粒はほぼ同じ方向を向いて
おり、この正常方位結晶粒に対して、その分布を検出す
る場合には、被測定板厚を超音波の半波長の整数倍(共
鳴状態)より若干ずらした値にするのが良いことが理論
的にも実験的にも確認できた。即ち、第4図では、被測
定板厚(0.3mm)が、[110]方向に伝播する超音波の半
波長(0.3mm)の1倍になるように超音波の周波数(10.
33MHz)を決定したが、この場合、正常方位結晶粒の音
速(6200m/s)に対し、干渉多重反射波の強度が最大と
なると共に、停留点になつており、該音速の微小変化に
対して、該反射強度の変化は小さく、感度が良くないこ
とを示している。これに対して、超音波の周波数を少し
ずらして10.66MHz(波長にして、0.58mm)にした場合
(共鳴状態に近い状態)の、音速と反射波の強度との関
係の例を第10図に示す。正常方位結晶粒の音速(6200m/
s)付近の変化に対して、干渉多重反射波の強度の変化
も大きく、正常方位結晶粒に対して感度の良い測定が可
能である。 本発明を実施するにあたつて留意すべき第2の点は、干
渉を起こり易くさせるため、入射波は単一パルスでな
く、第11図に示すような、2波以上の連続したパルス波
(バースト波)とすることである。干渉の点から言え
ば、バースト波数は大きい程良いが、表面反射波も持続
時間が長くなることや、測定時間の問題があるので、現
実には10〜20波程度とすることができる。 なお、前記説明においては、鋼板板厚が超音波の半波長
の略整数倍となるように超音波の周波数が設定され、位
相が合つて干渉する共鳴状態に近い干渉条件にて測定さ
れていたが、鋼板板厚が超音波の半波長の略半整数倍と
なるように超音波の周波数を設定して、位相が180°違
つて干渉した非共鳴状態に近い干渉条件で測定しても良
い。 本発明によれば、珪素鋼板の方位異常粒の分布を、非接
触、非破壊で迅速に検出することができる。従つて、従
来法であるマクロエツチ法の欠点、即ち絶縁被膜の剥離
作業、エツチングのための薬品処理作業が不必要とな
る。又、検査の処理時間が大幅に短縮される。又、従来
はオンラインに適用できる実用的な手法がなかつたが、
本発明をオンラインに適用することで、製品の異常粒に
関する全長検査が可能となり、且つ、後工程のスリツタ
工程等で、異常粒部を取り除き、正常粒部のみを製品と
すれば、優れた製品を出荷できるようになる。
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明す
る。 本発明に係る反射板法による装置の実施例は、第1図に
示す如く構成されている。 タイミングコントロール回路22は、走査装置26の探触子
走査速度に対応して、例えば1〜10KHzのレートで繰返
しパルスを出力する。 パルサ20は、前記タイミングコントロール回路22からの
パルスに同期して、f=v/2dで与えられる周波数fの10
波数程度のバースト波の電気信号を発生する。 前出第7図に示したような、送受信子としての超音波探
触子12は、前記パルサ20からの電気信号を超音波信号に
変換して被測定体11に打ち込む。この超音波探触子12
は、被測定体11と共に、例えば全体が水没されている。
この超音波探触子12は、更に、走査装置(スキヤナ)26
により、被測定体11の表面を2次元方向に走査されるよ
うになつている。 前記被測定体11の下方には、前出第7図に示したような
反射板14(図示省略)が配置されている。 前記被測定体11の表面及び底面からの超音波反射波は、
前記反射板14で反射され、再び超音波探触子12に入射し
て電気信号に変換される。 レシーバ28は、前記探触子12からの電気信号を受信した
後、適当に増幅してゲート回路30に出力する。 該ゲート回路30は、前記タイミングコントロール回路22
からのパルスと同期して、一定の遅れをもつてゲート回
路30を開くことによつて、第8図の干渉多重反射波信号
R1のみをピークホールド回路32に通過させる。 該ピークホールド回路32は、前記タイミングコントロー
ル回路22からのパルスに同期して、次のパルスが来るま
での1繰返し期間、ゲート回路30からの信号のピーク値
を検出すると共に、1繰返し期間ホールドする。 このピークホールド回路32は、超音波信号の持続時間が
1μ秒のオーダであるので、検出信号の持続時間を長く
させ、アナログ/デジタル(A/D)変換器34によるA/D変
換を容易としている。 A/D変換器34は、前記タイミングコントロール回路22か
らのパルスに同期して、前記ピークホールド回路32から
のアナログ信号をデジタル信号に変換して、マイクロプ
ロセッサ36に出力する。 該マイクロプセッサ36は、前記A/D変換器34からのデジ
タル信号及び前記走査装置26からの探触子位置信号を入
力し、干渉多重反射波信号R1の大きさから、異常粒、正
常粒の判断を行なつて、結果を表示装置38に出力する。 なお本発明に係る結晶粒方位分布測定装置を、例えば前
工程又は後工程の制御装置に組み込んで、測定結果によ
り直接オンライン制御することも可能であり、この場合
には表示装置38を省略することもできる。 以下、前記実施例により板厚d=0.3mmの珪素鋼板を測
定する場合を例にとつて、実施例の作用を説明する。 本実施例では、走査装置26により、超音波探触子12を、
鋼板11の表面に沿つて、第12図に示す如く2次元方向に
走査する。今、走査時の相対速度を1m/s、走査ピッチを
0.5mm、タイミングコントロール回路22のパルスの繰返
し周波数を2KHzとすれば、超音波は、0.5mm四方に1個
の割合で鋼板11に入射される。 方向性珪素鋼板の板面内の結晶粒径は、異常粒部で0.5
〜1mm、正常粒部ではそれ以上であるので、ほとんどす
べての結晶粒について、1個以上の超音波パルスが入射
されることになり、すべての結晶粒についての干渉多重
信号の大きさを測定できる。 又、超音波探触子12として、超音波を絞ることができる
焦点型超音波探触子を用い、その焦点位置を鋼板11の板
厚方向中心に略一致させれば、容易に直径0.5mm程度の
超音波ピームを得ることができ、又、鋼板11と探触子12
の距離を、その焦点距離(数mm〜数十mm)だけ離すこと
ができる。 次に、このような走査をしながら、本実施例により、次
々に干渉多重反射波R1の強度を検出する。 超音波の周波数fを10.33MHzに設定しておけば、反射強
度と各結晶粒内の音速との関係は、前出第4図に示した
如くとなるので、この反射強度を走査位置に同期させて
表示すれば、この強度分布図形は、各結晶粒の方位分布
を表わすことになる。したがつて、この測定値の分布か
ら製品の良否を判定できる。 第13図は、超音波のバースト波数を10としたとき、本実
施例による測定結果の一例として、異常粒部のみを黒く
描かせたものである。この測定結果は、従来のマクロエ
ツチ法の測定結果とよく対応しているのが確認できてい
る。このように、本発明によつて異常粒部を非破壊的に
精度よく検出することができる。 本実施例においては、単一の超音波探触子12を、第7図
に示した如く、反射板14と組み合わせて用いる構成(反
射板法)としており、片側からの測定が可能であるの
で、特にオンライン測定に有利である。なお、超音波を
送受信する構成は、これに限定されず、例えば第5図に
示した如く、被測定体11を挾んで、送信子12Aとして機
能する超音波探触子と、受信子12Bとして機能する超音
波探触子を、それぞれ相対する位置に設ける構成(透過
法)としても良い。又、第2図に示した如く、反射板14
を省略する構成(単純な反射法)としても良い。 又、前記実施例では、超音波探触子12が1個用いられて
いたが、オンライン測定のように被測定体11が移動し、
高速の測定が要求される場合には、複数(又は複数対)
の超音波探触子を用いて、測定速度を高めることも可能
である。 又、前記実施例では、<110>方向の速度の時、位相が
合つた共鳴状態の干渉条件となるように超音波の周波数
fを決めていたが、位相が180度ずれた非共鳴状態の干
渉条件となるように周波数を決めたり、逆に異常方位の
速度に合わせて周波数を決めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る方向性珪素鋼板の結晶粒方位分
布測定装置の実施例の構成を示す、一部斜視部を示すブ
ロツク線図、 第2図は、本発明の原理を説明するための、干渉多重反
射を利用した音速測定の模式図、 第3図は、該干渉多重反射による測定波形の例を示す線
図、 第4図は、本発明の原理を説明するための、干渉多重反
射波の強度と音速との関係の例を示す線図、 第5図は、透過法を利用した本発明法の一例の要部を示
す断面図、 第6図は、第5図に示した本発明法で得られる受信波形
の例を示す線図、 第7図は、反射板法を利用した本発明法の他の例の要部
を示す断面図、 第8図は、第7図に示した本発明法で得られる受信波形
の例を示す線図、 第9図は、反射板法を利用した本発明法の改良例の要部
を示す断面図、 第10図は、第4図の条件に対して、超音波の周波数を少
しずらした場合の効果を示すための線図、 第11図は、本発明による入射波の波形の例を示す線図、 第12図は、第1図の実施例における超音波探触子の走査
方法の例を示す斜視図、 第13図は、前記実施例による異常粒分布測定結果の一例
を示す線図、 第14図は、異常粒を含んだ珪素鋼板を模式的に示す斜視
図、 第15図は、珪素鋼単結晶中の方位による音速の変化のス
テレオ投影図、 第16図は、従来の多重反射を利用した音速測定を模式的
に示す断面図、 第17図は、該多重反射を利用した音速測定による測定波
形の例を示す線図、 第18図は、従来の透過法を利用した音速測定を模式的に
示す断面図である。 10……製品、10A……異常粒、10B……正常粒、11……被
測定体(鋼板)、12……超音波探触子、12A……送信
子、12B……受信子、f……励振周波数、 14……反射板、14A……凹面、Sa′Sb′……表面反射波
信号、Ba′、Bb′、R1、T1……干渉多重反射波信号、20
……パルサ、22……タイミングコントロール回路、26…
…走査装置、28……レシーバ、30……ゲート回路、32…
…ピークホールド回路、34……A/D変換器、36……マイ
クロプロセツサ。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】方向性珪素鋼板の結晶粒方位の分布を測定
    するに際して、 鋼板板厚が、目的の方位を持つた結晶粒の板厚方向へ伝
    播する超音波の半波長の略整数倍又は略半整数倍になる
    ように超音波の励振周波数を設定し、 この周波数を持つた、2波以上の波を含むバースト状の
    超音波パルスを、被測定体と相対運動する少なくとも1
    個の超音波探触子により板厚方向に入射して、板表面か
    らの反射に引き続いて発生する底面及び上面からの多重
    反射波同士を干渉させ、 この干渉した多重反射波を検出し、 該多重反射波の振幅の大きさから珪素鋼板中の各結晶粒
    の方位を推定し、超音波を入射した各部分の結晶粒の方
    位の分布を2次元的に検出することを特徴とする方向性
    珪素鋼板の結晶粒方位分布測定方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記超音波の励振周波
    数を、鋼板板厚が、超音波の半波長の整数倍又は半整数
    倍より少しずれた値となるように設定することを特徴と
    する方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定方法。
  3. 【請求項3】電気信号と超音波を相互に変換するため
    の、被測定体を挾んで相対する位置にそれぞれ配設され
    た送信子及び受信子としての超音波探触子と、 前記送信子に、鋼板板厚が、目的の方位を持つた結晶粒
    の板厚方向へ伝播する超音波の半波長の略整数倍又は略
    半整数倍になるような周波数を持つた、2波以上の連続
    したバースト波の電気信号を送る送信手段と、 前記受信子に発生した信号を受信する受信手段と、 該受信手段の受信信号から、板表面からの反射に引き続
    いて発生する底面及び上面からの多重反射波同士の干渉
    による信号を取り出す手段と、 前記多重反射波の振幅の大きさから、超音波を入射した
    部分の結晶粒の方位が正常か否かを判定する手段と、 を含むことを特徴とする方向性珪素鋼板の結晶粒方位分
    布測定装置。
  4. 【請求項4】請求項3において、前記超音波探触子を、
    超音波を絞ることができる焦点型超音波探触子とし、そ
    の焦点位置を、被測定体の板厚方向中心に略一致させた
    ことを特徴とする方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定
    装置。
  5. 【請求項5】電気信号と超音波を相互に変換するため
    の、被測定体の片側に配置された、送受信子としての超
    音波探触子と、 被測定体を挾んで、該超音波探触子の反対側に配置され
    た反射板と、 前記超音波探触子に、鋼板板厚が、目的の方位を持つた
    結晶粒の板厚方向へ伝播する超音波の半波長の略整数倍
    又は略半整数倍になるような周波数を持つた、2波以上
    の連続したバースト波の電気信号を送る送信手段と、 前記反射板で反射され、被測定体を再び透過して前記超
    音波探触子に発生した信号を受信する受信手段と、 該受信手段の受信信号から、板表面からの反射に引き続
    いて発生する底面及び上面からの多重反射波同士の干渉
    による信号を取り出す手段と、 前記多重反射波の振幅の大きさから、超音波を入射した
    部分の結晶粒の方位が正常か否かを判定する手段と、 を含むことを特徴とする方向性珪素鋼板の結晶粒方位分
    布測定装置。
  6. 【請求項6】請求項5において、前記反射板の超音波反
    射部を凹面とし、該凹面で反射された超音波が、被測定
    体の厚み方向の略中心で再び焦点を結ぶようにしたこと
    を特徴とする方向性珪素鋼板の結晶粒方位分布測定装
    置。
  7. 【請求項7】電気信号と超音波を相互に変換するため
    の、少なくとも1個の超音波探触子と、 該超音波探触子を2次元方向に走査する走査装置と、 前記超音波探触子に、鋼板板厚が、目的の方位を持つた
    結晶粒の板厚方向へ伝播する超音波の半波長の略整数倍
    又は略半整数倍になるような周波数を持つた、2波以上
    の連続したバースト波の電気信号を送ると共に、超音波
    探触子からの信号を受信するパルサ及びレシーバと、 前記パルサの駆動を制御するタイミングコントロール回
    路と、 該タイミングコントロール回路から出るパルスと同期し
    て、板表面からの反射波による信号を除き、板底面及び
    上面からの多重反射波同士の干渉による信号のみを取り
    出すゲート回路と、 該干渉信号のピーク値を一定時間保持するピークホール
    ド回路と、 該ピークホールド回路の出力をアナログ/デジタル変換
    するアナログ/デジタル変換器と、 該アナログ/デジタル変換器の出力を入力し、所定の演
    算を行なうことにより、超音波を入射した部分の結晶粒
    の方位が正常か否かを判定すると共に、前記走査装置の
    位置情報を基に、異常な方位を持つた結晶粒分布を算出
    する演算装置と、 該算出結果を表示する表示装置と、 を含むことを特徴とする方向性珪素鋼板の結晶粒方位分
    布測定装置。
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