JPH07109619A - ポリエステルの溶融紡糸方法 - Google Patents

ポリエステルの溶融紡糸方法

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JPH07109619A
JPH07109619A JP27615393A JP27615393A JPH07109619A JP H07109619 A JPH07109619 A JP H07109619A JP 27615393 A JP27615393 A JP 27615393A JP 27615393 A JP27615393 A JP 27615393A JP H07109619 A JPH07109619 A JP H07109619A
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JP
Japan
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chips
polyester
melt
polymer
spinning
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Application number
JP27615393A
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English (en)
Inventor
Koji Nakatsuka
耕二 中塚
Shuichi Kitamura
秀一 北村
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Nippon Ester Co Ltd
Original Assignee
Nippon Ester Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 溶融させたポリマーでスクリューとシリンダ
内壁部をシールしながら加圧する部分と、その中間部に
ポリマー内水分を分離させ、かつ水分を系外に排出する
排出機構部を少なくとも一つ配設した二軸押出機を用
い、水分を含有したポリエステルを溶融紡糸するに際
し、供給するチップの水分率を300 ppm以下とし、二
軸押出機へのチップの供給量Q(kg/hr)とスクリ
ューの回転数N(rpm)の比、Q/Nを0.1 未満と
し、かつ少なくとも一つの排出機構部の減圧度を30トル
以下に減圧しながら押し出し、溶融紡糸する。 【効果】 水分含有チップを用い、その供給量が少ない
場合の溶融紡糸においても、紡糸糸条のIV保持率が98
%以上の優れた物性の繊維を得ることができ、安定した
製糸操業性が得られるため、極めて低いコストで少量多
品種生産が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二軸押出機を用いて水
分を含有したポリエステルを溶融紡糸する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルを溶融紡糸する工程におい
ては、供給するポリエステルのチップ中に水分が含まれ
ると、重合度が低下して繊維の物性が劣るようになるた
め、通常、溶融紡糸する前に一旦チップを予備乾燥し、
十分(溶融紡糸で問題とならない水分率は50ppm以
下)水分を除去した後、溶融紡糸工程に供給している。
【0003】また、チップを乾燥する場合、通常、徐々
に昇温(最終的な乾燥温度範囲を110 〜180 ℃)してい
き、昇温による結晶化を可塑化よりも優先させることに
より、チツプ同士の融着及び乾燥装置内壁部への融着等
が生じにくいようにして行い、得られる繊維の物性の低
下にほとんど影響を及ぼさない水分率としている。
【0004】近年、市場の多様化に伴い、特殊な機能を
繊維に付与する方法として、ポリエチレンテレフタレー
トに第三成分を共重合したり、脂肪族ポリエステルを用
いる試みが多くなされている。
【0005】これらの第三成分の共重合量が多いポリエ
ステルや脂肪族ポリエステルは、ガラス転移温度や融点
が低く、可塑化温度も非常に低いため、前記した通常の
乾燥方法では、乾燥機内を徐々に昇温しても温度上昇に
よる結晶化より可塑化の方が優先する。そのため、乾燥
中にチップ同士が融着して乾燥が困難となり、十分な水
分の除去ができない。また、乾燥機内を徐々に昇温する
速度をさらに遅くし、低温で乾燥を行う方法も考えられ
るが、乾燥に長時間を要するので生産性が低下し、十分
には水分を除去できないという問題があった。
【0006】上記のようにチップの乾燥が不十分である
と、溶融紡糸時の加熱時間(ポリマーの滞留時間)が長
くなる条件下においては、ポリマーの加水分解が増大す
る。第三成分の共重合量が多いポリエステルや脂肪族ポ
リエステルは加熱分解しやすいため、加水分解の増大と
の複合作用により、得られる繊維の物性が低下したり、
操業性が悪化するという問題があった。
【0007】また、二軸押出機を用いて溶融紡糸する方
法として、特公平3-73647 号公報、特公平3-73648 号公
報及び特開平3-356154号公報には、乾燥工程を省略し、
未乾燥チップをそのまま脱水機構を備えた二軸押出機へ
供給して溶融紡糸する方法が提案されている。しかし、
これらの方法では、チップの水分を通常の乾燥工程を経
て得られるチップの水分レベル(50ppm以下)まで到
達させることは難しく、したがって、これらの方法で第
三成分の共重合量が多いポリエステルや脂肪族ポリエス
テルの溶融紡糸を行うと、加熱分解や加水分解が増大
し、満足する物性の繊維を得ることができなかった。ま
た、極細繊維等を得るために、二軸押出機に供給するチ
ップの供給量を少なくする場合、二軸押出機以降の溶融
紡糸されるまでのポリマーの滞留時間が長くなり、前記
した加熱分解や加水分解がさらに多く発生し、とても満
足する物性の繊維を得ることができないという問題があ
った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した問題
を解決し、第三成分の共重合量が多いポリエステルや脂
肪族ポリエステルを低供給量で溶融紡糸を行っても、加
熱分解や加水分解の発生を減少でき、繊維の物性を低下
させることなく、操業性よく行うことができるポリエス
テルの溶融紡糸方法を提供することを技術的な課題とす
るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究の結果、溶融紡糸して得られ
る糸条の極限粘度(IV)が、溶融紡糸に供給するチッ
プのIVと同等、すなわち、IV保持率〔(紡出糸条の
IV/供給チップのIV)×100 〕を98%以上とすれ
ば、物性の低下のない繊維を操業性よく得ることができ
るという事実を見い出し、本発明に到達した。
【0010】すなわち、本発明は、シリンダ内のポリマ
ー供給部の下流部に設けられた絞り機構により、溶融さ
せたポリマーでスクリューとシリンダ内壁部をシールし
ながら加圧する部分と、その中間部にポリマー内水分を
分離させ、かつ水分を系外に排出する排出機構部を少な
くとも一つ配設した二軸押出機を用い、水分を含有した
ポリエステルを溶融紡糸するに際し、供給するチップの
水分率を300 ppm以下とし、二軸押出機へのチップの
供給量Q(kg/hr)とスクリューの回転数N(rp
m)の比、Q/Nを0.1 未満とし、かつ少なくとも一つ
の排出機構部の減圧度を30トル以下に減圧しながら押し
出し、溶融紡糸することを特徴とするポリエステルの溶
融紡糸方法を要旨とするものである。
【0011】以下、本発明について詳細に説明する。図
1は、本発明で用いる溶融紡糸装置の一実施態様を示す
概略図である。二軸押出機2のシリンダー内は上流側よ
りポリマー供給部、第1ゾーン、第2ゾーン及び第3ゾ
ーンの4つのゾーンからなっている。
【0012】まず、溶融紡糸に用いられるチップは、供
給装置1へ輸送され(輸送装置は図示せず)、一定量の
計量が行われた後、脱水機構を備えた二軸押出機2のシ
リンダー内のポリマー供給部へ供給される。ポリマー供
給部の下流側でチップは溶融され、続いてシリンダー及
びスクリューエレメントによる絞り機構により、溶融さ
れたポリマーでシールしながら加圧する第1ゾーンへ送
り出され、次いで第2ゾーン、さらに最後の第3ゾーン
(スクリュー最下流部)へと順次送られる。
【0013】また、第1ゾーンと第2ゾーンの中間部及
び第2ゾーンと第3ゾーンの中間部には、排出機構部V
1 、V2 が設けられており、ポリマー内の水分及びポリ
マーに内在するオリゴマー等が減圧ポンプ3の吸引によ
り排出機構部V1 、V2 から系外に排出される。
【0014】水分やオリゴマー等を除去された溶融ポリ
マーは、続いて加圧ポンプ4により一定圧力で計量ポン
プ5へ押し出され、所定の吐出量に計量送液されて、紡
糸ヘッド6に取り付けられた紡糸パック(図示せず)を
経て糸条として紡出される。
【0015】本発明においては、チップの供給量Q(k
g/hr)とスクリューの回転数N(rpm)の比、Q
/Nが0.1 未満であることが必要である。Q/Nが0.1
を超えると、供給と押出のバランスが崩れ、減圧シール
性が悪化したり、水分の分離不良やスクリュートルクの
増大による駆動制御不良等が生じ、好ましくない。Q/
Nの下限は特に限定されるものではないが、0.03未満で
は、回転数が高くなりすぎることによってポリマーが発
熱し、熱分解を起こすことがある。
【0016】上記のQ/Nを0.1 未満にすることに関連
して、本発明で良好な効果が得られる供給量としては、
チップの供給量Qを20kg/hr以下の低供給量とする
ことが好ましい。供給量の下限については特に限定され
るものではなく、二軸押出機の設計能力や繊維の繊度及
び滞留時間等を考慮して決定されるが、通常はシリンダ
内のポリマーによるシール性が維持される1kg/hr
以上が好ましい。また、スクリューの回転数Nは、回転
数が高くなり過ぎてポリマーが発熱しないように、上限
としては、370 rpmが好ましく、より好ましくは、20
0 rpmである。
【0017】さらに、本発明では、二軸押出機2に供給
するチップの水分率を300 ppm以下にすることが必要
である。水分率が300 ppmを超えると水分が多く、加
熱分解や加水分解が多く発生して、糸条のIVがチップ
のIVより低下することにより紡出糸条の物性が低下す
る。なお、ホモポリマーの場合は、チップの水分率が30
0 ppmを超えていても通常の衣料用としては特に問題
とはならない繊維が得られる場合もあるが、IV保持率
は98%未満の低い値となるため、切糸や毛羽が発生して
紡糸操業性が低下し、また、高強度の繊維が得られな
い。
【0018】供給チップの水分率を300 ppm以下とす
る予備乾燥の手段は、特に限定されるものではなく、タ
ンブラー型乾燥機を用いた加熱吸引乾燥や、除湿乾燥
(雰囲気乾燥)、フライスナー(連続式熱風乾燥機)等
を用いた低温熱風乾燥及び通常の乾燥方法における低温
吸引乾燥、低温流動乾燥等が挙げられる。
【0019】本発明で用いるポリエステルは、水分率が
300 ppm以下と比較的高水分率でよいため、予備乾燥
の温度は低温で、乾燥時間も短くてよい。したがって、
第三成分の共重合量の多いポリエステルや脂肪族ポリエ
ステルについても乾燥上のトラブル(チツプ同士の融着
等)の発生が回避できるので、品質のよいチップを溶融
紡糸工程に供給できる。
【0020】次に、少なくとも1つの排出機構部の減圧
度を30トル以下にすることが必要である。30トルを超え
る減圧度では、ポリエステルと分離した水分及びオリゴ
マー等の不純物を十分排出することができず、後に続く
溶融紡糸工程で加熱分解や加水分解が増大し、得られる
糸条のIVが低下する。また、減圧度調整装置を減圧吸
引系に設け、使用ポリマーの特性及び繊維の使用目的に
合わせて目標の減圧度にコントロールするのが望まし
い。なお、減圧度レベルの選定は、経験則データより求
めることができる。なお、多数の排出機構部を有する場
合は、少なくとも1つが30トル以下であればよく、その
他の箇所は状況に合わせて選定すればよいが、二軸押出
機の上流側を30トル以下としたほうが加水分解を抑えや
すいので好ましい。
【0021】本発明において使用する二軸押出機には、
シリンダの中間部の任意の位置に排出機構部を少なくと
も1つ設けることが必要である。排出機構部がない場合
は、チップに内在する水分及びオリゴマー等の不純物が
そのまま加熱溶融、スクリュー混練、加熱滞留等の処理
を受けるために、加熱分解や加水分解が多く発生し、実
用に耐える繊維を得ることができない。また、排出機構
部の設置数の上限は特に限定されるものではないが、装
置のコンパクト化等の面から5箇所以内とすることが好
ましい。
【0022】また、二軸押出機のスクリューの仕様は、
異方向、同方向回転及び非噛み合い、部分噛み合い、完
全噛み合い型等特に限定されるものではない。
【0023】本発明に用いられるポリエステルとして
は、第一に、テレフタル酸及びエチレングリコール(い
ずれもエステル形成性誘導体を含む。) を主成分とし、
イソフタル酸、デカン-1,10-ジカルボン酸、アジピン
酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、5-ナトリウム
スルホイソフタル酸、ジエチレングリコール、ポリエチ
レングリコール、プロピレングリコール、1,4-シクロヘ
キサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサ
ンジオール、ε- カプロラクトン、4-オキシ安息香酸等
を共重合成分としたものが挙げられる。
【0024】第二に、脂肪族ポリエステルが挙げられ
る。脂肪族ポリエステルとは、直鎖脂肪族ジカルボン酸
成分と脂肪族ジオール成分とからなるポリエステルであ
り、直鎖脂肪族ジカルボン酸成分の具体例としては、デ
カン-1,10-ジカルボン酸、テトラデカン-1,14-ジカルボ
ン酸、オクタデカン-1,18-ジカルボン酸及びこれらのエ
ステル形成性誘導体が挙げられ、脂肪族ジオール成分と
しては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等が
挙げられる。なお、本発明の方法は、上記のような共重
合ポリエステルや脂肪族ポリエステルの他、ポリエチレ
ンテレフタレートのような加熱分解や加水分解が少ない
ホモポリエステルに適用することも可能であり、乾燥工
程を簡略化することができ、低コスト化を図ることがで
きる。
【0025】
【作用】本発明においては、供給するチップの水分率を
300 ppm以下とし、二軸押出機へのチップの供給量Q
とスクリューの回転数Nの比、Q/Nを0.1 未満とし、
かつ少なくとも1つの排出機構部の減圧度を30トル以下
に減圧しながら押し出し、溶融紡糸するので、水分と同
時にポリマーに内在するオリゴマー等の不純物を除去
し、ポリマー純度を高めることができる。このため、チ
ップの供給量が少なく、二軸押出機以降のポリマーの滞
留時間が長くなる場合の溶融紡糸においても、加熱分解
や加水分解を減少させることができる。さらには、第三
成分の共重合量の多いポリエステルや脂肪族ポリエステ
ルを用いて、低供給量で溶融紡糸する場合も、加熱分解
や加水分解を減少させることができるので、溶融紡出糸
条のIVは、IV保持率98%以上となり、物性の低下の
ない繊維が得られ、乾燥工程、紡糸工程等における操業
性を向上させることができる。
【0026】
【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に説明す
る。
【0027】なお、実施例及び比較例におけるポリエス
テルの特性値は次の方法によって測定した。 (a)極限粘度(IV) フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし
て、20℃で測定した。 (b)ガラス転移点温度、結晶化温度、融点 パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC-2 型を用い
て、昇温速度10℃/分で測定した。 (c)強度、伸度 低速伸長型の引張試験機テンシロンUTM−III 型(オ
リエンテック社製)を用い、つかみ間隔100 mm、引張
速度100 mm/分の条件下で、切断時の強力、伸度を求
め、強度は強力を繊度で除して計算した。また、破断強
度を次の式で求めた。 強度×(伸度/100 +1) なお、二軸押出機は、日本製鋼所社製のTEX-30を用い
た。 スクリューの仕様:同方向回転の完全噛み合い型、排出
機構部:2個
【0028】実施例1 テレフタル酸とエチレングリコールとから得られたビス
(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重
合体に、デカン-1,10-ジカルボン酸を20モル%となる量
で添加し、触媒として全酸成分1モルに対して2×10-4
モルの三酸化アンチモンを加え、280 ℃、0.4 トルで2.
5 時間重縮合し、チップを得た。得られたコポリエステ
ルの特性値は、IVは0.851 、ガラス転移温度22℃、結
晶化温度 138℃及び融点 210℃のポリマーであり、この
ポリマーチップの水分率は1590ppmであった。タンブ
ラー型乾燥機を用いて、このチップを乾燥温度70℃、乾
燥時間2時間の低温短時間条件で予備乾燥を実施し、水
分率295 ppmのチップを得た。このチップを図1に示
す溶融紡糸装置に供給した。この時のチップの供給量Q
は4.8 kg/hr、二軸押出機のスクリュー回転数Nは
50rpm及びQ/Nは0.096 であり、シリンダー温度26
0 ℃、シリンダ内の減圧度7トル(V1 、V2 とも)で
押し出した。二軸押出機以降の溶融紡糸されるまでのポ
リマーの滞留時間は約10分であった。次に、温度285 ℃
でオリフィス孔径0.3 mm、孔数36の紡糸口金を用いて
紡糸し、引取速度1400m/分で引き取り、130 デニール
/36フィラメントの糸条を得た。得られた未延伸糸のI
Vを測定した結果、IVは0.835 であり、IV保持率が
98.1%と極めて高い未延伸糸を得ることができた。な
お、この紡糸を6日間(4錘紡糸)連続して行なって操
業性を評価したところ、この間に紡糸糸切れは1回発生
したのみであり、良好であった。
【0029】比較例1 予備乾燥を行わずにチップの水分率1590ppmのまま、
供給チップとした以外は実施例1と同様に行った。その
結果、得られた未延伸糸のIVは0.785 で、IV保持率
は92.2%と低く、また、紡糸操業性は糸切れが8回/日
と非常に多かったので、紡糸を1日で中止した。
【0030】実施例2〜5、比較例2〜4 テレフタル酸とエチレングリコールとから得られたビス
(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重
合体に、平均分子量6000のポリエチレングリコールを理
論ポリマー量に対して15重量%添加し、触媒として全酸
成分1モルに対して三酸化アンチモンを2×10-4モル、
酢酸コバルトを0.4 ×10-4モル加え、次いで、3,5-ジ
(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホ
ン酸ナトリウムと5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメ
チルを60:40のモル比で混合した混合物2モル%となる
量と、酢酸ナトリウム15×10-4モルを加えて、275 ℃、
0.1トルで4時間重縮合し、チップを得た。得られたコ
ポリエステルの特性値はIVが0.630 、融点248 ℃、ガ
ラス転移点温度及び結晶化温度は観測されないポリマー
であり、このポリマーチップの水分率は3300ppmであ
った。フライスナーを用いて、温度55〜80℃、2〜8時
間の範囲で予備乾燥を実施し、表1に示す各水分率のチ
ップを得た。このチップを図1に示す溶融紡糸装置に供
給した。二軸押出機のシリンダー温度を275 ℃とし、チ
ップの供給量Q、スクリューの回転数N及びQ/Nの値
を表1に示すように変更し、排出機構部の減圧度
(V1 、V2 とも同じ値)も表1に示すように変更し
た。なお、二軸押出機以降の溶融紡糸されるまでのポリ
マーの滞留時間は約7分であった。次に、紡糸温度288
℃でオリフィス孔径0.25mm、孔数24の紡糸口金を用い
て紡糸し、引取速度3500m/分で引き取った。得られた
未延伸糸のIV及びIV保持率を表1に示す。
【0031】なお、実施例4及び比較例3の条件で溶融
紡糸を1日間(4錘紡糸)行って、操業性を評価した。
その結果、実施例4では、糸切れは巻取り開始後1時間
以内に1回発生したのみで、良好な紡糸調子であった。
一方、比較例3では糸切れが5回発生し、紡糸不調であ
った。また、得られた未延伸糸の色調もポリマー分解に
よる黄色味が強くなっており、満足されるものではなか
った。
【0032】実施例6 ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその
低重合体(BHET)の存在するエステル化反応槽にテレフ
タル酸とエチレングリコールとのスラリー(エチレング
リコール/テレフタル酸のモル比1.6 )を連続的に供給
し、250 ℃、0.05kg/cm2 Gで滞留時間8時間で反
応させ、反応率95%のBHETを連続的に得た。得られたBH
ETを重合槽に移送し、280 ℃に加熱し、触媒として酸成
分1モルに対して2×10-4モルの三酸化アンチモンを加
え、285 ℃、0.1 トルで4時間重縮合し、チップを得
た。得られたホモポリエステルは、IVが0.695 、ガラ
ス転移点温度75℃、結晶化温度195 ℃及び融点255 ℃の
ポリマーであり、このポリマーチップの水分率は1030p
pmであった。フライスナーを用いて、このチップに予
備乾燥を行い、水分率110 ppmのチップとした以外
は、実施例4と同様に実施し、未延伸糸を得た。 得ら
れた未延伸糸のIV及びIV保持率を表1に示す。
【0033】比較例5 実施例6と同じチップを用い、予備乾燥を行わずに、水
分率1030ppmのチップを供給した以外は、実施例4と
同様に実施し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸のI
V及びIV保持率を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】表1から明らかなように、実施例2〜5は
IV保持率98%以上の高い保持率を示す糸条が得られ
た。実施例6では、チップ内水分及び不純物が十分に吸
引排出されたため、ポリマー純度が高められ、また、加
熱分解や加水分解も減少したことによって、糸条のIV
が供給チップのIVよりも向上した糸条が得られた。一
方、比較例2は、減圧度が40トル、Q/Nが0.12であっ
たため、チップ内の水分の吸引排出が十分に行われず、
加熱分解や加水分解が多く発生し、得られた糸条は満足
するIV保持率を示すことができなかった。比較例3及
び比較例4は、供給チップ水分率が高いため、比較例5
は、チップを予備乾燥せずに用いたため、これらはチッ
プ内の水分の吸引排出が十分に行われず、加熱分解や加
水分解が多く発生し、IV保持率98%以上の糸条は得ら
れなかった。
【0036】実施例7〜8、比較例6〜7 実施例6のホモポリエスルチップを用いて(チップの水
分率110 ppm)、2箇所の排出機構部V1 、V2 の減
圧度を表2のように変更した以外は、実施例4と同様に
溶融紡糸し、巻取り、得られた未延伸糸のIVを測定し
た。次に、得られた未延伸糸を供給原糸として、延伸熱
ローラ温度85℃、熱処理板温度140 ℃、延伸倍率1.607
の条件で通常の延伸を行い、42デニール/24フィラメン
トの延伸糸を得た。IV保持率が低下するほど、得られ
た延伸糸の伸度が高くなり、かつ強度は低下するため、
延伸糸の強度については破断強度をもって比較評価し
た。
【0037】この時変更した、排出機構部V1 、V2
減圧度及び得られた糸条の特性値を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】表2から明らかなように、実施例7〜8は
1 、V2 の減圧度が、30トル以下をどちらか一方を満
足するので極めて高いIV保持率が得られた。また、延
伸糸の破断強度も十分満足できるものであった。一方、
比較例6は、減圧度が大きかったため、得られた糸条の
IV保持率は98%未満であり、また、延伸糸の破断強度
も小さかった。さらに、比較例7は吸引排出を行わずに
実施したが、供給チップ水分率が比較的小さい場合でも
加熱分解や加水分解が多く発生し、得られる糸条のIV
保持率は低く、また、延伸糸の破断強度も大きく低下
し、繊維として使用できるレベルの物性ではなかった。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、通常乾燥が困難であ
り、かつ加水分解や加熱分解しやすい第三成分の共重合
量が多いポリエステルや脂肪族ポリエステルを低供給量
で溶融紡糸を行っても、簡単な予備乾燥を行ったチップ
を脱水機構を備えた二軸押出機に供給し、二軸押出機へ
のチップの供給量Qとスクリューの回転数Nの比、Q/
Nを0.1 未満として溶融押出しすることによって、紡糸
糸条のIV保持率が98%以上の優れた物性の繊維を得る
ことができる。その結果、安定した製糸操業性が得られ
るため、極めて低いコストで特殊な機能を持った繊維が
製造でき、かつ、少量多品種生産の対応も極めて容易な
ものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる溶融紡糸装置の一実施態様
を示す概略図である。
【符号の説明】
1 供給装置 2 二軸押出機 3 減圧ポンプ 4 加圧ポンプ 5 計量ポンプ 6 紡糸ヘッド V1 、V2 排出機構部

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダ内のポリマー供給部の下流部に
    設けられた絞り機構により、溶融させたポリマーでスク
    リューとシリンダ内壁部をシールしながら加圧する部分
    と、その中間部にポリマー内水分を分離させ、かつ水分
    を系外に排出する排出機構部を少なくとも一つ配設した
    二軸押出機を用い、水分を含有したポリエステルを溶融
    紡糸するに際し、供給するチップの水分率を300 ppm
    以下とし、二軸押出機へのチップの供給量Q(kg/h
    r)とスクリューの回転数N(rpm)の比、Q/Nを
    0.1 未満とし、かつ少なくとも一つの排出機構部の減圧
    度を30トル以下に減圧しながら押し出し、溶融紡糸する
    ことを特徴とするポリエステルの溶融紡糸方法。
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