JPH07109580A - 摺動部材及びその製造方法 - Google Patents

摺動部材及びその製造方法

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JPH07109580A
JPH07109580A JP27736793A JP27736793A JPH07109580A JP H07109580 A JPH07109580 A JP H07109580A JP 27736793 A JP27736793 A JP 27736793A JP 27736793 A JP27736793 A JP 27736793A JP H07109580 A JPH07109580 A JP H07109580A
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compound
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JP27736793A
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Toshiyuki Yamada
俊行 山田
Hidenori Kita
英紀 北
Yasuaki Unno
泰明 海野
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Isuzu Motors Ltd
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Isuzu Motors Ltd
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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、耐焼付き性に富み、低摩擦係数
で、摩耗量の少なく、ピストンスカート等に適用できる
摺動部材及びその製造方法を提供する。 【構成】 この摺動部材は、基体表面上に、SiとC,
N,Oの元素より少なくとも1種以上の元素との結合を
主鎖とする化合物被膜を形成したものである。従って、
この摺動部材は、三次元構造、非晶質構造、網目構造等
の化学的に活性な構造を持つことになり、潤滑油の吸着
性に優れ、油膜形成され易くなり、その結果、低摩擦係
数、耐摩耗性及び耐焼付き性を向上させることができ
る。この場合に、有機化合物としては、有機ケイ素ポリ
マー、金属アルコキシドを用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、基体表面に薄膜をコ
ーティングして低摩擦係数に構成した摺動部材及びその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属材料等の部品が潤滑油中にて
摺動部材として使用されている。潤滑油中での摺動に関
しては、焼き付き、摩耗等が問題になってくる。従来、
炭化ケイ素SiC、窒化硼素BNを窒化ケイ素Si3
4 中に分散させて摩擦係数を低減するものは、例えば、
特開昭59−30769号公報に開示されている。ま
た、焼結助剤として、Fe3 4 等の鉄Feの酸化物を
添加した窒化ケイ素Si34 は、例えば、特開昭58
−64268号公報、特開昭59−88374号公報、
特開昭61−72685号公報等に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、窒化ケイ素
のセラミックスについては、低い摩擦係数を持つものが
望まれている。一般に、Si3 4 中に、炭化ケイ素、
窒化ホウ素或いは酸化物の粒子を分散させた場合には、
結合界面での反応性に乏しく、材料自体の強度が低下す
る。また、窒化ホウ素を複合した材料では高温中その部
分が酸化され結晶構造が変化し、摩擦係数が上昇するこ
とがある。上記公報に開示されているように、焼結助剤
として、Fe3 4 等の金属酸化物を添加したもので
は、該添加量が少なく、また低摩擦の特性を得ることが
できない。
【0004】更に、セラミックスについて、境界潤滑域
においては、必ずしも低摩擦特性とはならず、また、窒
化ホウ素を複合した材料では、600℃以上で酸化ホウ
素となり、結晶構造が変化するため、特に摩擦係数が上
昇してしまうという問題がある。
【0005】また、Si3 4 と鉄Feの酸化物との複
合では、焼成時に還元反応が起こり、FeO,Fe2
3 ,Fe3 4 の形で混合段階で添加しても、焼成後に
は、Fe−Si系の化合物に変化する。このような化合
物も潤滑油との吸着性に優れるが、更に一層吸着性を高
め、低摩擦化するためには、酸化物の状態で残すことが
望ましいものである。
【0006】そこで、この発明の目的は、上記の課題を
解決することであり、基体表面に有機金属化合物を用い
ることにより、三次元構造、非晶質構造等の化学的に活
性な薄膜を摺動材表面に形成し、該薄膜が化学的に活性
なため、潤滑油の吸着性が優れ、耐焼付き性、耐摩耗性
を向上させ、摩擦係数の低い材料を得ると共に、薄膜中
に潤滑油吸着性の高い粉体、ウィスカー等を分散させ
て、耐焼付き性、耐摩耗性を一層向上させた摺動部材及
びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、基体表面上に、SiとC,N,Oの元素よ
り少なくとも1種以上の元素との結合を主鎖とする化合
物被膜を形成したことを特徴とする摺動部材に関する。
【0008】また、この摺動部材において、前記化合物
被膜中に金属化合物が分散した膜が前記基体上に形成さ
れている。前記金属化合物としては、酸化物、珪化物、
炭化物、窒化物、酸窒化物、リン化物、フッ化物、硼化
物のうち、少なくとも一種以上で構成されているまた、
前記金属化合物が粉体及びウィスカーであり、その大き
さが10μm以下である。
【0009】また、この摺動部材において、前記金属化
合物の金属がFeと、Cu,Cr,Ni,Mo,Co,
Mn,W,Pb,Agのうち少なくとも一種以上の元素
とから構成されている。
【0010】又は、この発明は、前記基体表面にSi,
P,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,
Nb,Mo,Wの元素群のうち、一種以上の元素を含む
薄膜が形成され、且つ前記薄膜が非晶質化合物であるこ
とを特徴とする摺動部材に関する。更に、この摺動部材
において、前記非晶質化合物が基体との間にメタロキサ
ン結合を持つものである。
【0011】また、この摺動部材において、Si,P,
Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,N
b,Mo,Wの元素群のうち二種以上の元素を含む薄膜
を形成した場合に、その薄膜中において二種以上の元素
が原子単位で混合されているものである。更に、この摺
動部材において、前記非晶質化合物が酸化物である。
【0012】また、この摺動部材において、前記基体が
金属材料であり、その場合には、前記金属材料が内燃機
関におけるピストンスカート部の構成材料に適用されて
好ましいものである。更に、前記金属材料が鋳鉄であ
る。
【0013】また、この摺動部材において、前記基体が
無機材料であり、前記無機材料が窒化ケイ素、及びその
複合材である。
【0014】又は、この発明は、金属化合物と有機ケイ
素ポリマー溶液の混合物を基体に付着させ、基体の融点
以下において不活性ガス、大気、アンモニア、水素ガス
の少なくとも一種以上のガス雰囲気で前記有機ケイ素ポ
リマーを熱転化させて膜を作製したことを特徴とする摺
動部材の製造方法に関する。
【0015】あるいは、この発明は、Si,P,Ti,
V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Nb,M
o,Wから選ばれた金属のアルコキシドを少なくとも一
種以上含んだコーティング溶液を基体に付着させ、基体
の融点以下において焼成を行うことによって得られた膜
を表面に形成したことを特徴とする摺動部材の製造方法
に関する。
【0016】
【作用】この発明による摺動部材及びその製造方法は、
上記のように構成されており、次のように作用する。即
ち、この摺動部材は、基体表面上に、SiとC,N,O
の元素より少なくとも1種以上の元素との結合を主鎖と
する化合物被膜を形成したので、三次元構造、非晶質構
造、網目構造等の化学的に活性な構造を持つことにな
り、潤滑油の吸着性に優れ、油膜形成され易くなり、そ
の結果、低摩擦係数、耐摩耗性及び耐焼付き性を向上さ
せることができる。この場合に、有機化合物としては、
有機ケイ素ポリマー、金属アルコキシドを用いることが
できる。
【0017】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明による摺動
部材及びその製造方法の実施例を説明する。この摺動部
材は、基体表面上に、SiとC,N,Oの元素より少な
くとも1種以上の元素との結合を主鎖とする化合物被膜
即ち薄膜を形成したことを特徴とするものである。この
摺動部材では、前記化合物中に金属化合物が分散した膜
が前記基体上に形成されており、前記金属化合物として
は酸化物、珪化物、炭化物、窒化物、酸窒化物、リン化
物、フッ化物、硼化物のうち、少なくとも一種以上で構
成されており、また、前記金属化合物は粉体及びウィス
カーであり、その大きさが10μm以下で構成されてい
るものである。更に、この摺動部材において、前記金属
化合物の金属がFeと、Cu,Cr,Ni,Mo,C
o,Mn,W,Pb,Agのうり少なくとも一種以上の
元素とから構成されている。
【0018】又は、この摺動部材は、前記基体表面にS
i,P,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,C
u,Nb,Mo,Wの元素群のうち、一種以上の元素を
含む薄膜が形成され、且つ前記薄膜が非晶質化合物であ
ることを特徴とするものである。更に、この摺動部材に
おいて、前記非晶質化合物が基体との間にメタロキサン
結合を持つものである。
【0019】また、この摺動部材において、Si,P,
Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,N
b,Mo,Wの元素群のうち二種以上の元素を含む薄膜
を形成した場合に、その薄膜中において二種以上の元素
が原子単位で混合されているものである。更に、この摺
動部材において、前記非晶質化合物が酸化物である。
【0020】また、この摺動部材において、前記基体が
金属材料であり、その場合には、前記金属材料が内燃機
関におけるピストンスカート部の構成材料に適用されて
好ましいものである。更に、前記金属材料が鋳鉄であ
る。また、この摺動部材において、前記基体が無機材料
であり、前記無機材料が窒化ケイ素、及びその複合材で
ある。
【0021】次に、この摺動部材の製造方法の一実施例
について説明すると、この摺動部材は、金属化合物と有
機ケイ素ポリマー溶液の混合物を基体に付着させ、基体
の融点以下において不活性ガス、大気、アンモニア、水
素ガスの少なくとも一種以上のガス雰囲気で有機ケイ素
ポリマーを熱転化させて膜を得るによって作製できる。
この摺動部材の製造方法において、有機化合物として、
有機ケイ素ポリマーを用いた場合には、この摺動部材
は、具体的には、次のようにして作製できる。
【0022】まず、有機ケイ素ポリマーを溶媒に溶解さ
せ、所定濃度の溶液を作製する。有機ケイ素ポリマーと
しては、熱分解させることによってセラミックスに転化
させることができるポリカルボシラン、ポリシラザン等
のポリマープレカーサを使用することができる。この有
機ケイ素ポリマー溶液を摺動部材基体の表面にコーティ
ングする。有機ケイ素ポリマー溶液を基体表面にコーテ
ィングするには、例えば、スプレー、ディッピング、ス
ピンコート等で均一膜を形成する。基体表面に有機ケイ
素ポリマー溶液をコーティングした後、この構造物を所
定のガス雰囲気において乾燥、焼成する。この際に、雰
囲気ガスは、摺動部材を作製できるならば、不活性ガ
ス、NH3 ガス等の如何なる雰囲気で行ってもよいもの
である。焼成温度は、ポリマープレカーサによって異な
るが、三次元的、網目的な結合を用いる範囲で、しかも
基体の融点・分解点以下の温度にコントロールされるも
のである。これらの一連の工程を経ることによって、S
iを主成分とし、C,N,O等との結合を主鎖とする膜
を基体表面に形成することができる。
【0023】上記工程によって得られた膜は、図1の
(A),(B),(C),(D),(E)及び(F)に
示すような基本骨格構造を有するものである。また、焼
成雰囲気及び使用した有機ケイ素ポリマーによっては、
図中のCがN,O,CH等に、また、CHがN,O等に
一部、もしくは全部置換された構造を有するものであ
る。そして、図1に示すように、三次元的、網目的な結
合を持つことにより、Siを中心として結合手が多く出
ており、このことが化学的な吸着性を高めている。上記
のコーティング工程〜焼成工程を繰り返すことによっ
て、基体表面の膜を厚膜化及び多層化、傾斜材料化に構
成することができる。また、上記のように、基体表面に
膜を形成する際に、潤滑油吸着性の高いFe,Cu,C
r,Ni,Mo,Co,Mn,W,Pb,Agの少なく
とも1種以上の元素を混合することによって更に優れた
摺動特性を得ることができるものである。これらの化合
物としては、酸化物、珪化物、炭化物、窒化物、酸窒化
物、硫化物、リン化物、フッ化物及び硼化物のうち一種
以上を含むものである。また、金属化合物は、粉体及び
ウィスカーであり、その大きさが10μm以下に構成さ
れているものである。
【0024】あるいは、この摺動部材の製造方法の別の
実施例について説明すると、この摺動部材は、Si,
P,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,
Nb,Mo,Wから選ばれた金属のアルコキシドを少な
くとも一種以上含んだコーティング溶液を基体に付着さ
せ、基体の融点以下において焼成を行うことによって得
られた膜を表面に形成したことによって作製できる。こ
の製造方法において、金属アルコキシドを用いる場合に
は、まず、コーティング用のアルコキシド溶液を作製す
る。この溶液は、使用金属アルコキシド、溶媒として
水、加水分解触媒(塩酸、酢酸等)等を所定量含んでい
る。これらの混合比及び混合種類は、用いるアルコキシ
ドの種類、アルコキシドに含まれる金属の価数によって
異なるものである。
【0025】この摺動部材を製造する工程において、使
用する金属アルコキシドは、潤滑油吸着性の良い膜を形
成可能なSi,P,Ti,V,Cr,Mn,Fe,C
o,Ni,Cu,Nb,Mo,Wのうち一種以上の金属
を含む金属アルコキシドを用いるものである。次いで、
コーティング用アルコキシド溶液を摺動部材表面にコー
ティングを行う。金属アルコキシド溶液を基体表面にコ
ーティングするには、例えば、スプレー、ディッピン
グ、スピンコート等で均一膜を形成する。基体表面に金
属アルコキシド溶液をコーティングした後、直ちに所定
のガス雰囲気において焼成する。基体表面に金属アルコ
キシドをコーティング後、直ちに焼成することによっ
て、形成される膜と基体間にメタロキサン結合が形成さ
れ、基体との密着性に優れた膜を作製することができ
る。
【0026】メタロキサン結合は、−M(基体金属)−
O−M(アルコキシド内の金属)−の構造を持ち、これ
は基体表面の−OH,−OR基とアルコキシド中の−O
H,−OR基間の縮合により形成される。この際に、焼
成雰囲気は、所望の膜質を作製できるならば、不活性ガ
ス、NH3 ガス、大気中等の如何なる雰囲気で行っても
よいものである。これらの一連の操作によって、基体表
面には、図1の(G)に示すような基本骨格構造を持っ
た膜が形成される。図1の(G)に示すように、基体原
子より多くの結合手が出た三次元的、網目的な結合を持
つことにより、化学的吸着性が高い膜となり、潤滑油吸
着性が上がり、低摩擦係数、耐摩耗性、耐焼付き性を向
上させることができる。また、上記コーティング工程〜
焼成工程を繰り返すことによって基体表面の膜を厚膜化
及び多層化、傾斜材料化に構成できる。また、金属酸化
物の膜形成、エッチング、有機基の付与等の基材表面改
質を行うことによって、膜質(密着性)を改善すること
ができる。しかも、用いるアルコキシドによってそれぞ
れの特性を有する有効なものを使用し所望な摺動部材を
得ることができる。
【0027】次に、この発明による摺動部材及びその製
造方法の一実施例を実施例1として説明する。 〔実施例1〕この摺動部材の製造方法において、まず、
ポリカルボシランをトルエンに溶解させ、10wt%溶
液を作製した。この溶液中に15×15×65mmの試
験片即ち鋳鉄材を浸し、一定速度で引上げ、N2 ガス中
にて乾燥を行った。次に、N2 ガス雰囲気中にて500
℃で2時間焼成を行った。これにより、鋳鉄材の表面に
約5μmの膜が形成された。得られた鋳鉄材を往復動摺
動試験機を用いて、合成油中にて摩擦係数、摩耗量、焼
付き荷重を測定した。相手材として、φ8×25mmで
試験面のアールはR18であるSi3 4 製ピンを用い
た。摩擦係数測定条件は、油温:150℃、荷重:1〜
6kgfである。摩耗量測定条件は、油温:150℃、
荷重:5kgf、時間:60minである。また、焼付
き荷重条件は、油温:200℃、荷重:1〜14kgf
である。また、ピン側摩耗は、ピン頂面面積より算出し
た。プレート側即ち鋳鉄材側摩耗は、摺動溝断面積より
算出した。これらの結果として、焼付き荷重(kgf)
の測定結果を図2に示し、摩擦係数μの測定結果を図3
に示し、また、摩耗量(×10- 3 mm3 )の測定結果
を図4に示す。図中の本発明品は鋳鉄材に本発明による
化合物被膜を形成したものであり、また、比較例の従来
品は鋳鉄材を用いたものである。また、焼付き荷重の測
定は、図2で分かるように、摩擦係数μが急激に上昇し
た点、即ち、荷重6kgfで焼き付きが発生したと考え
られる。図から分かるように、本発明品は、従来品に比
較して耐焼付き性及び耐摩耗性が優れ、摩擦係数μが低
減されていることが確認された。
【0028】また、基材である鋳鉄材表面に前処理とし
て、SiO2 等の酸化物薄膜を形成した後、上記操作を
行うことにより、膜の密着性が向上された。SiO2
の酸化物の形成の他、鋳鉄材表面の酸化によっても同様
な効果が得られた。
【0029】更に、上記実施例1で調整を行ったポリカ
ルボシランとトルエン溶液を用い、鋳鉄材で作製された
ディーゼルエンジン用ピストンスカート部の表面に、実
施例1と同様な処理を行った。そこで、実施例1の処理
を行ったピストンスカートと未処理のものとのシリンダ
ライナに対するフリクションを比較したところ、実施例
1の処理を行ったピストンスカートは、未処理のものに
比較して、所定の回転数において、Pmfで0.4kg
f/cm2 低減されることが確認できた。
【0030】この発明による摺動部材及びその製造方法
の別の実施例を実施例2として説明する。 〔実施例2〕この摺動部材の製造方法において、ポリカ
ルボシランをトルエンに溶解させ、10wt%溶液を作
製した。この溶液中にFe3 4 粒子(〜1μm)を所
定量混合した。この混合溶液中に15×15×65mm
の試験片即ち鋳鉄材を浸し、一定速度で引上げ、N2
ス中にて乾燥を行った。次に、N2 ガス雰囲気中にて5
00℃で2時間焼成を行った。これにより、鋳鉄材の表
面に約5μmの膜が形成された。得られた鋳鉄材を往復
動摺動試験機を用いて、合成油中にて摩擦係数、摩耗
量、焼付き荷重を測定した。相手材として、φ8×25
mmで試験面のアールはR18であるSi3 4 製ピン
を用いた。摩擦係数測定条件は、油温:150℃、荷
重:1〜6kgfである。摩耗量測定条件は、油温:1
50℃、荷重:5kgf、時間:60minである。ま
た、焼付き荷重条件は、油温:200℃、荷重:1〜1
4kgfである。また、ピン側摩耗は、ピン頂面面積よ
り算出した。プレート側即ち鋳鉄材側摩耗は、摺動溝断
面積より算出した。これらの結果として、焼付き荷重
(kgf)の測定結果を図5に示し、摩擦係数μの測定
結果を図6に示し、また、摩耗量(×10- 3 mm3
の測定結果を図7に示す。図中の本発明品は鋳鉄材に本
発明による化合物被膜を形成したものであり、また、比
較例の従来品は鋳鉄材を用いたものである。また、焼付
き荷重の測定は、図5で分かるように、摩擦係数μが急
激に上昇した点、即ち、荷重6kgfで焼き付きが発生
したと考えられる。図から分かるように、本発明品は、
従来品に比較して耐焼付き性及び耐摩耗性が優れ、摩擦
係数μが低減されていることが確認された。
【0031】また、基材である鋳鉄材表面に前処理とし
て、SiO2 等の酸化物薄膜を形成した後、上記操作を
行うことにより、膜の密着性が向上された。SiO2
の酸化物の形成の他、鋳鉄材表面の酸化によっても同様
な効果が得られた。
【0032】更に、上記実施例2で調整を行ったポリカ
ルボシランとトルエン溶液を用い、鋳鉄材で作製された
ディーゼルエンジン用ピストンスカート部の表面に、実
施例2と同様な処理を行った。そこで、実施例2の処理
を行ったピストンスカートと未処理のものとのシリンダ
ライナに対するフリクションを比較したところ、実施例
2の処理を行ったピストンスカートは、未処理のものに
比較して、所定の回転数において、Pmfで0.6kg
f/cm2 低減されることが確認できた。
【0033】次に、この発明による摺動部材の更に別の
実施例を実施例3として説明する。 〔実施例3〕この摺動部材の製造方法において、Feア
ルコキシドコーティング溶液を作製した。トリイソプロ
ポキシ鉄〔Fe(O−i−C3 7 3 〕を0.05m
ol、メチルセルソルブ117mol、水0.075m
ol、酢酸1.44mol、イソプロピルアルコール1
00molの割合で混合し、コーティング溶液とした。
この溶液中に15×15×65mmの試験片即ち鋳鉄材
を浸し、一定速度で引上げ、大気中にて500℃で焼成
を行った。これらの一連の操作を6回行った。これによ
り、鋳鉄材の表面に約1.1μmの鉄酸化物膜を鋳鉄材
表面に形成された。得られた膜をX線回折測定結果によ
り、非晶質であることが確認できた。そこで、得られた
鉄酸化物膜を有する鋳鉄材を往復動摺動試験機を用い
て、合成油中にて摩擦係数、摩耗量、焼付き荷重を測定
した。相手材として、φ8×25mmで試験面のアール
はR18であるSi3 4 製ピンを用いた。摩擦係数測
定条件は、油温:150℃、荷重:1〜6kgfであ
る。摩耗量測定条件は、油温:150℃、荷重:5kg
f、時間:60minである。また、焼付き荷重条件
は、油温:200℃、荷重:1〜14kgfである。ま
た、ピン側摩耗は、ピン頂面面積より算出した。プレー
ト側即ち鋳鉄材側摩耗は、摺動溝断面積より算出した。
これらの結果として、焼付き荷重(kgf)の測定結果
を図8に示し、摩擦係数μの測定結果を図9に示し、ま
た、摩耗量(×10- 3 mm3 )の測定結果を図10に
示す。図中の本発明品は鋳鉄材に本発明による化合物被
膜を形成したものであり、また、比較例の従来品は鋳鉄
材を用いたものである。また、焼付き荷重の測定は、図
8で分かるように、摩擦係数μが急激に上昇した点、即
ち、荷重6kgfで焼き付きが発生したと考えられる。
図から分かるように、本発明品は、従来品に比較して耐
焼付き性及び耐摩耗性が優れ、摩擦係数μが低減されて
いることが確認された。
【0034】また、基材である鋳鉄材表面に前処理とし
て、SiO2 等の酸化物薄膜を形成した後、上記操作を
行うことにより、膜の密着性が向上された。SiO2
の酸化物の形成の他、鋳鉄材表面の酸化によっても同様
な効果が得られた。
【0035】更に、上記実施例3で調整を行った鉄アル
コキシドコーティング溶液を用い、鋳鉄材で作製された
ディーゼルエンジン用ピストンスカート部の表面に、実
施例2と同様な処理を行った。そこで、実施例2の処理
を行ったピストンスカートと未処理のものとのシリンダ
ライナに対するフリクションを比較したところ、実施例
2の処理を行ったピストンスカートは、未処理のものに
比較して、所定の回転数において、Pmfで0.5kg
f/cm2 低減されることが確認できた。
【0036】
【発明の効果】この発明による摺動部材及びその製造方
法は、上記のように構成されており、次のような効果を
有する。即ち、この発明は、基体表面上に、SiとC,
N,Oの元素より少なくとも1種以上の元素との結合を
主鎖とする化合物被膜を形成したので、三次元構造、非
晶質構造、網目構造等の化学的に活性な構造を持つこと
になる。従って、この摺動部材は、潤滑油の吸着性に優
れ、油膜形成され易くなり、その結果、従来の被膜を形
成していない摺動部材に比較して低摩擦係数、耐摩耗性
及び耐焼付き性を向上させることができる。この場合
に、有機化合物としては、有機ケイ素ポリマー、或いは
金属アルコキシドを用いることができる。従って、この
摺動部材は、潤滑油中での金属部材から成る摺動部材に
適用して極めて好ましいものであり、特に、高温での摺
動部、内燃機関のピストンスカート部へ適用して極めて
好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による摺動部材の基本骨格構造の各種
の実施例の構造式を示す図である。
【図2】この摺動部材と従来の摺動部材との焼付き荷重
の測定結果についての比較の一例を示すグラフである。
【図3】この摺動部材と従来の摺動部材との摩擦係数の
測定結果についての比較の一例を示すグラフである。
【図4】この摺動部材と従来の摺動部材との摩耗量の測
定結果についての比較の一例を示すグラフである。
【図5】この摺動部材と従来の摺動部材との焼付き荷重
の測定結果についての比較の別の例を示すグラフであ
る。
【図6】この摺動部材と従来の摺動部材との摩擦係数の
測定結果についての比較の別の例を示すグラフである。
【図7】この摺動部材と従来の摺動部材との摩耗量の測
定結果についての比較の別の例を示すグラフである。
【図8】この摺動部材と従来の摺動部材との焼付き荷重
の測定結果についての比較の更に別の例を示すグラフで
ある。
【図9】この摺動部材と従来の摺動部材との摩擦係数の
測定結果についての比較の更に別の例を示すグラフであ
る。
【図10】この摺動部材と従来の摺動部材との摩耗量の
測定結果についての比較の更に別の例を示すグラフであ
る。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体表面上に、SiとC,N,Oの元素
    より少なくとも1種以上の元素との結合を主鎖とする化
    合物被膜を形成したことを特徴とする摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記化合物被膜中に金属化合物が分散し
    た膜が前記基体上に形成されていることを特徴とする請
    求項1に記載の摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記金属化合物は、酸化物、珪化物、炭
    化物、窒化物、酸窒化物、リン化物、フッ化物、硼化物
    のうち、少なくとも一種以上で構成されていることを特
    徴とする請求項2に記載の摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記金属化合物は、粉体及びウィスカー
    であり、その大きさが10μm以下であることを特徴と
    する請求項2に記載の摺動部材。
  5. 【請求項5】 前記金属化合物の金属がFeと、Cu,
    Cr,Ni,Mo,Co,Mn,W,Pb,Agのうち
    少なくとも一種以上の元素とから構成されていることを
    特徴とする請求項2に記載の摺動部材。
  6. 【請求項6】 前記基体表面にSi,P,Ti,V,C
    r,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Nb,Mo,Wの
    元素群のうち、一種以上の元素を含む薄膜が形成されて
    おり、且つ前記薄膜が非晶質化合物であることを特徴と
    する摺動部材。
  7. 【請求項7】 前記非晶質化合物が基体との間にメタロ
    キサン結合を持つことを特徴とする請求項6に記載の摺
    動部材。
  8. 【請求項8】 Si,P,Ti,V,Cr,Mn,F
    e,Co,Ni,Cu,Nb,Mo,Wの元素群のうち
    二種以上の元素を含む薄膜を形成した場合に、その薄膜
    中において二種以上の元素が原子単位で混合されている
    ことを特徴とする請求項6又は7に記載の摺動部材。
  9. 【請求項9】 前記非晶質化合物が酸化物であることを
    特徴とする請求項6又は7に記載の摺動部材。
  10. 【請求項10】 前記基体が金属材料であることを特徴
    とする請求項1,2及び6のいずれかの項に記載の摺動
    部材。
  11. 【請求項11】 前記金属材料が内燃機関におけるピス
    トンスカート部の構成材料に使用されているることを特
    徴とする請求項10に記載の摺動部材。
  12. 【請求項12】 前記金属材料が鋳鉄であることを特徴
    とする請求項10に記載の摺動部材。
  13. 【請求項13】 前記基体が無機材料であることを特徴
    とする請求項1,2及び6のいずれかの項に記載の摺動
    部材。
  14. 【請求項14】 前記無機材料が窒化ケイ素、及びその
    複合材であることを特徴とする請求項13に記載の摺動
    部材。
  15. 【請求項15】 金属化合物と有機ケイ素ポリマー溶液
    の混合物を基体に付着させ、基体の融点以下において不
    活性ガス、大気、アンモニア、水素ガスの少なくとも一
    種以上のガス雰囲気で前記有機ケイ素ポリマーを熱転化
    させて膜を作製したことを特徴とする摺動部材の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 Si,P,Ti,V,Cr,Mn,F
    e,Co,Ni,Cu,Nb,Mo,Wから選ばれた金
    属のアルコキシドを少なくとも一種以上含んだコーティ
    ング溶液を基体に付着させ、基体の融点以下において焼
    成を行うことによって得られた膜を表面に形成したこと
    を特徴とする摺動部材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006087114A2 (de) * 2005-02-15 2006-08-24 Ks Kolbenschmidt Gmbh Schutzschicht gegen heissgaskorrosion im verbrennungsraum einer brennkraftmaschine
US10079439B2 (en) 2014-02-19 2018-09-18 Autonetworks Technologies, Ltd. Metal surface coating composition and terminal-equipped covered electrical wire using same

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